(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126741
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】キャリングケース、測色システム
(51)【国際特許分類】
G01J 3/46 20060101AFI20240912BHJP
G01J 3/06 20060101ALI20240912BHJP
A45C 11/00 20060101ALI20240912BHJP
G01D 11/24 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G01J3/46 Z
G01J3/06
A45C11/00 E
G01D11/24 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035336
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】木下 芳樹
【テーマコード(参考)】
2G020
3B045
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020CC23
2G020CC26
2G020CD03
2G020CD06
2G020DA12
2G020DA22
2G020DA24
2G020DA32
2G020DA35
3B045AA51
3B045BA21
3B045DA21
3B045EA02
3B045EB10
3B045FC02
3B045FC04
3B045FC08
3B045GA01
3B045GB01
3B045GC02
3B045GD01
(57)【要約】
【課題】走査型測色装置は試料台を備える為全体的なサイズが大きく、キャリングケースに収容したり、キャリングケースに収容された状態から装置を取り出して使用するのは使い勝手が悪い。また測色中に装置が動いてしまうと、測色精度が低下する為、使用時に載置面に対して装置が動き難い様に配慮されることも望まれる。
【解決手段】走査用ステージに置かれた測色対象を走査する測色用走査装置を収容可能なキャリングケースであって、測色用走査装置の底部と一体化されるケース本体と、測色用走査装置を覆う状態と開放する状態とに切り換え可能な蓋部と、を備え、ケース本体は、底部と対向する本体板を備え、測色用走査装置を使用する際に底部を支持する脚部が、本体板の外側から、本体板を挟んで底部に対して取り付け可能である。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査用ステージに置かれた測色対象を走査する測色用走査装置を収容可能なキャリングケースであって、
前記測色用走査装置の底部と一体化されるケース本体と、
前記ケース本体に接続される蓋部であって、前記測色用走査装置を覆う状態と開放する状態とに切り換え可能な前記蓋部と、を備え、
前記ケース本体は、前記底部と対向する本体板を備え、
前記測色用走査装置を使用する際に前記底部を支持する脚部が、前記本体板の外側から、前記本体板を挟んで前記底部に対して取り付け可能である、
ことを特徴とするキャリングケース。
【請求項2】
請求項1に記載のキャリングケースにおいて、前記測色用走査装置は、前記走査用ステージに対し第1方向及び前記第1方向に交差する第2方向に移動可能な走査部を備え、
前記測色用走査装置が前記キャリングケースに収容された状態において、前記走査部の前記第1方向及び前記第2方向の少なくともいずれかへの移動を規制する移動規制体が、前記走査部の移動領域を利用して配置される、
ことを特徴とするキャリングケース。
【請求項3】
請求項2に記載のキャリングケースにおいて、前記第1方向が鉛直方向に沿った状態で前記キャリングケースを把持する為の把持部を備え、
前記移動規制体は、前記走査部が鉛直下方の移動限度に位置する状態で前記走査部を避ける形状を成す、
ことを特徴とするキャリングケース。
【請求項4】
請求項2に記載のキャリングケースにおいて、前記移動規制体は、物品を収容可能な凹部を備える、
ことを特徴とするキャリングケース。
【請求項5】
請求項4に記載のキャリングケースにおいて、前記蓋部が前記測色用走査装置を覆う状態において前記移動規制体と前記蓋部との間に位置し、前記凹部を覆う覆い部材を備える、
ことを特徴とするキャリングケース。
【請求項6】
請求項1に記載のキャリングケースにおいて、前記蓋部が、前記ケース本体に対して着脱可能である、
ことを特徴とするキャリングケース。
【請求項7】
請求項1に記載のキャリングケースにおいて、前記ケース本体と前記蓋部とを接続するファスナーを備え、
前記ファスナーは、前記ケース本体を前記キャリングケースの載置面に載置した際に、鉛直方向において、前記走査用ステージのステージ面よりも低い位置に設けられる、
ことを特徴とするキャリングケース。
【請求項8】
請求項1に記載のキャリングケースにおいて、前記ケース本体と前記蓋部とを接続するファスナーを備え、
前記ファスナーは、前記測色用走査装置の側面に設けられたコネクタ接続部を覆わない位置に設けられる、
ことを特徴とするキャリングケース。
【請求項9】
走査用ステージに置かれた測色対象を走査する測色用走査装置と、
前記測色用走査装置に設けられる測色装置と、
前記測色用走査装置を収容可能なキャリングケースと、を含む測色システムであって、
前記キャリングケースは、
前記測色用走査装置を収容するケース本体と、
前記測色用走査装置を覆う状態と開放する状態とに切り換え可能な蓋部と、を備え、
前記ケース本体は、前記走査用ステージの底部と対向する本体板を備え、
前記測色用走査装置を使用する際に前記底部を支持する脚部が、前記本体板の外側から、前記本体板を挟んで前記底部に対して取り付け可能である、
ことを特徴とする測色システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測色用走査装置を持ち運ぶ為のキャリングケースに関する。また本発明は測色システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から特許文献1に示される様に、複数のカラーパッチがマトリクス状に配置されて成るカラーチャートを走査して前記カラーパッチを順次測色する走査型測色装置が提案されている。
特許文献1記載の走査型測色装置は、カラーチャートを載置する為の試料台と、試料台に載置されたカラーチャートを測色する測色ヘッドとを備えている。測色ヘッドは、モーターの動力を得てX方向に移動する。測定試料は、試料台に設けられたチャート給送機構によってY方向に給送される。測色ヘッドのX方向への移動とカラーチャートのY方向への移動とによって、マトリクス状に配置されたカラーパッチが測色される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の様な走査型測色装置は持ち運び難い形状であり、持ち運びを考慮すると、専用のキャリングケースが用意されることが望ましい。カメラその他の電子機器では、その機器を持ち運ぶ為の専用のキャリングケースが用意されることがある。
ここで上述の様な走査型測色装置は試料台を備える為全体的なサイズが大きく、キャリングケースに収容したり、またキャリングケースに収容された状態から装置を取り出して使用するのは使い勝手が悪い。
また測色中に装置が動いてしまうと、測色精度が低下する為、使用時に載置面に対して装置が動き難い様に配慮されることも望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明のキャリングケースは、走査用ステージに置かれた測色対象を走査する測色用走査装置を収容可能なキャリングケースであって、前記測色用走査装置の底部と一体化されるケース本体と、前記ケース本体に接続される蓋部であって、前記測色用走査装置を覆う状態と開放する状態とに切り換え可能な蓋部と、を備え、前記ケース本体は、前記底部と対向する本体板を備え、前記測色用走査装置を使用する際に前記底部を支持する脚部が、前記本体板の外側から、前記本体板を挟んで前記底部に対して取り付け可能であることを特徴とする。
【0006】
また本発明の測色システムは、走査用ステージに置かれた測色対象を走査する測色用走査装置と、前記測色用走査装置に設けられる測色装置と、前記測色用走査装置を収容可能なキャリングケースと、を含む測色システムであって、前記キャリングケースは、前記測色用走査装置を収容するケース本体と、前記ケース本体に接続される蓋部であって、前記測色用走査装置を覆う状態と開放する状態とに切り換え可能な蓋部と、を備え、前記ケース本体は、前記走査用ステージの底部と対向する本体板を備え、前記測色用走査装置を使用する際に前記底部を支持する脚部が、前記本体板の外側から、前記本体板を挟んで前記底部に対して取り付け可能であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】測色用走査装置を収容したキャリングケースを裏側から見た斜視図。
【
図4】蓋部を開き、覆い部材を開いた状態の斜視図。
【
図11】キャリングケースと測色用走査装置の断面図。
【
図13】測色用走査装置の側面に設けられたコネクタ接続部の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係るキャリングケースは、走査用ステージに置かれた測色対象を走査する測色用走査装置を収容可能なキャリングケースであって、前記測色用走査装置の底部と一体化されるケース本体と、前記ケース本体に接続される蓋部であって、前記測色用走査装置を覆う状態と開放する状態とに切り換え可能な蓋部と、を備え、前記ケース本体は、前記底部と対向する本体板を備え、前記測色用走査装置を使用する際に前記底部を支持する脚部が、前記本体板の外側から、前記本体板を挟んで前記底部に対して取り付け可能であることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、前記ケース本体は、前記底部と対向する本体板を備え、前記測色用走査装置を使用する際に前記底部を支持する脚部が、前記本体板の外側から、前記本体板を挟んで前記底部に対して取り付け可能であることから、前記蓋部を開放すれば、前記ケース本体から前記測色用走査装置を取り出すことなく装置を載置する装置載置面に前記測色用走査装置を載置して使用することができ、使い勝手が向上する。
【0010】
そしてまた、前記脚部を、前記本体板の外側から、前記本体板を挟んで前記底部に対して取り付けることで、前記測色用走査装置と、前記本体板と、前記脚部とが一体化された状態となる。従って前記装置載置面と前記脚部との間の摩擦により、前記装置載置面に対して前記測色用走査装置が動き難くなる。加えて前記測色用走査装置と前記本体板とのずれも無くすことができ、より一層前記測色用走査装置を安定して使用することができる。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記測色用走査装置は、前記走査用ステージに対し第1方向及び前記第1方向に交差する第2方向に移動可能な走査部を備え、前記測色用走査装置が前記キャリングケースに収容された状態において、前記走査部の前記第1方向及び前記第2方向の少なくともいずれかへの移動を規制する移動規制体が、前記走査部の移動領域を利用して配置されることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記測色用走査装置が前記ケース本体に収容された状態において、前記走査部の前記第1方向及び前記第2方向の少なくともいずれかへの移動を規制する移動規制体を備えることから、前記測色用走査装置を前記キャリングケースに収容して持ち運ぶ際に前記キャリングケース内で前記走査部が意図せず動くことを抑制できる。そしてその結果、前記走査部の破損等を抑制できる。
【0013】
第3の態様は、第2の態様に従属する態様であって、前記第1方向が鉛直方向に沿った状態で前記キャリングケースを把持する為の把持部を備え、前記移動規制体は、前記走査部が鉛直下方の移動限度に位置する状態で前記走査部を避ける形状を成すことを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、前記第1方向が鉛直方向に沿った状態で前記キャリングケースを把持する為の把持部を備え、前記移動規制体は、前記走査部が鉛直下方の移動限度に位置する状態で前記走査部を避ける形状を成すことから、前記把持部を把持して前記キャリングケースを持ち運ぶ際、前記走査部が鉛直下方の移動限度に位置することとなり、前記走査部の鉛直方向における位置が安定し易い構成とすることができる。
【0015】
第4の態様は、第2の態様に従属する態様であって、前記移動規制体は、物品を収容可能な凹部を備えることを特徴とする。
本態様によれば、前記移動規制体は、物品を収容可能な凹部を備えることから、前記キャリングケースの利便性が向上する。
尚、本態様は上記第2の態様に限らず、上記第3の態様に従属する態様であっても良い。
【0016】
第5の態様は、第4の態様に従属する態様であって、前記蓋部が前記測色用走査装置を覆う状態において前記移動規制体と前記蓋部との間に位置し、前記凹部を覆う覆い部材を備えることを特徴とする。
本態様によれば、前記蓋部が前記測色用走査装置を覆う状態において前記移動規制体と前記蓋部との間に位置し、前記凹部を覆う覆い部材を備えることから、前記蓋部を開いた際に前記凹部に収容した物品が前記凹部から直ちに抜け出てしまうことを抑制できる。
【0017】
第6の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記蓋部が、前記ケース本体に対して着脱可能であることを特徴とする。
本態様によれば、前記蓋部が、前記ケース本体に対して着脱可能であることから、前記測色用走査装置を使用する際に前記蓋部が邪魔になり難く、前記測色用走査装置の使い勝手が向上する。
尚、本態様は上記第1の態様に限らず、上記第2から第5の態様のいずれかに従属する態様であっても良い。
【0018】
第7の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記ケース本体と前記蓋部とを接続するファスナーを備え、前記ファスナーは、前記ケース本体を前記キャリングケースの載置面に載置した際に、鉛直方向において、前記走査用ステージのステージ面よりも低い位置に設けられることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、前記ケース本体と前記蓋部とを接続するファスナーを備え、前記ファスナーは、前記ケース本体を前記キャリングケースの載置面に載置した際に、鉛直方向において、前記走査用ステージのステージ面よりも低い位置に設けられることから、前記走査用ステージのステージ面に前記測色対象を置く際に前記ファスナーが邪魔になり難い。
尚、本態様は上記第1の態様に限らず、上記第2から第6の態様のいずれかに従属する態様であっても良い。
【0020】
第8の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記ケース本体と前記蓋部とを接続するファスナーを備え、前記ファスナーは、前記測色用走査装置の側面に設けられたコネクタ接続部を覆わない位置に設けられることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、前記ケース本体と前記蓋部とを接続するファスナーを備え、前記ファスナーは、前記測色用走査装置の側面に設けられたコネクタ接続部を覆わない位置に設けられることから、前記コネクタ接続部に接続されるコネクタ、或いは前記コネクタが取り付けられたケーブルと前記ファスナーとの干渉を抑制できる。
尚、本態様は上記第1の態様に限らず、上記第2から第7の態様のいずれかに従属する態様であっても良い。
【0022】
第9の態様に係る測色システムは、走査用ステージに置かれた測色対象を走査する測色用走査装置と、前記測色用走査装置に設けられる測色装置と、前記測色用走査装置を収容可能なキャリングケースと、を含む測色システムであって、前記キャリングケースは、前記測色用走査装置を収容するケース本体と、前記ケース本体に接続される蓋部であって、前記測色用走査装置を覆う状態と開放する状態とに切り換え可能な蓋部と、を備え、前記ケース本体は、前記走査用ステージの底部と対向する本体板を備え、前記測色用走査装置を使用する際に前記底部を支持する脚部が、前記本体板の外側から、前記本体板を挟んで前記底部に対して取り付け可能であることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、前記キャリングケースの前記ケース本体は、前記底部と対向する本体板を備え、前記測色用走査装置を使用する際に前記底部を支持する脚部が、前記本体板の外側から、前記本体板を挟んで前記底部に対して取り付け可能であることから、前記蓋部を開放すれば、前記ケース本体から前記測色用走査装置を取り出すことなく装置を載置する装置載置面に前記測色用走査装置を載置して使用することができ、使い勝手が向上する。
そしてまた、前記脚部を、前記本体板の外側から、前記本体板を挟んで前記底部に対して取り付けることで、前記測色用走査装置と、前記本体板と、前記脚部とが一体化された状態となる。従って前記装置載置面と前記脚部との間の摩擦により、前記装置載置面に対して前記測色用走査装置が動き難くなる。加えて前記測色用走査装置と前記本体板とのずれも無くすことができ、より一層前記測色用走査装置を安定して使用することができる。
【0024】
以下、本発明を具体的に説明する。
尚、
図1、
図3、
図4、
図5において符号100は後述する測色用走査装置1を使用する際に測色用走査装置1を載置する装置載置面であり、一例として水平な平坦面である。また各図において示すX-Y-Z座標系のうち、Z軸方向は測色用走査装置1を使用する為に測色用走査装置1を装置載置面100に載置した場合に、鉛直方向に沿った方向となる。Z軸方向のうち、+Z方向は鉛直上方、-Z方向は鉛直下方となる。以下、測色用走査装置1、測色装置50、及びキャリングケース30の構成を上記X-Y-Z座標系を用いて説明する場合がある。
【0025】
図1~
図6において、測色用走査装置1はキャリングケース30に収容される。キャリングケース30は、測色用走査装置1を収容して持ち運ぶ為に設計された専用のケースである。測色用走査装置1、キャリングケース30、及び測色装置50(
図7参照)は、測色システム60を構成する。
【0026】
キャリングケース30は、測色用走査装置1の底部を構成するステージ下部材4と一体化されるケース本体31と、測色用走査装置1を覆う状態と開放する状態とに切り換え可能な蓋部32と、を備えている。
本実施形態においてケース本体31は、X-Y平面に沿った板状の本体板31aの外周が僅かに+Z方向に立ち上がる様なトレイ状を成している。ケース本体31は、形状を維持できる範囲で或る程度柔軟性を有する材料で形成されており、例えば可撓性を有する樹脂板等のベースを内側に有し、表面がナイロン、ポリエステル、布等の素材で構成することができる。
尚、測色用走査装置1の底部を構成するステージ下部材4は、樹脂材料で形成されているとともに厚みがケース本体31の本体板31aより厚い。従ってケース本体31の本体板31aは、ステージ下部材4よりも剛性が低い。
【0027】
蓋部32は閉じた際に測色用走査装置1の周囲を覆う様に、第1側面32a、第2側面32b、第3側面32c(
図11参照)、及び第4側面32dを備える。第1側面32aと第4側面32dは、X-Z平面に平行な面である。第2側面32bと第3側面32cは、Y-Z平面に平行な面である。また蓋部32は、X-Y平面に平行な表面32eを備える。蓋部32は、
図3に示す様に内側から視た場合ケース本体31よりも深さの深いトレイ状を成している。
蓋部32は、形状を維持できる範囲で或る程度柔軟性を有する材料で形成されており、例えば可撓性を有する樹脂板等のベースを内側に有し、表面をナイロン、ポリエステル、布等の素材で構成することができる。
【0028】
第1側面32aには把持部40が設けられており、キャリングケース30を持ち運ぶユーザーが把持部40を把持することができる。ユーザーが把持部40を把持した場合、第1側面32aが上面となり、第4側面32dが下面となる。
【0029】
蓋部32はファスナー37(
図12も参照)によってケース本体31と接続される。ファスナー37は一例として線ファスナーであり、キャリングケース30の側面の全周に亘って設けられている。ファスナー37を開くことで、
図1から
図3への変化で示す様に内部を露呈させることができる。またこの状態から更にファスナー37を全て開くことで、
図3から
図5への変化で示す様に蓋部32をケース本体31から取り外すことができる。図示は省略するが、ファスナー37の接続開始位置となる蝶棒(不図示)は蓋部32の第4側面32dに設けられており、前記蝶棒(不図示)が嵌合する箱(不図示)は、ケース本体31において第4側面32dと接続される位置に設けられている。
【0030】
蓋部32の表面32eに対し反対の裏面は、ケース本体31の本体板31aにより構成される。本体板31aには、
図2に示す様に脚部の一例であるゴム脚35が本体板31aの四隅に設けられる。ゴム脚35は、本体板31aよりも僅かに-Z方向に突出し、装置載置面100と接触する。ゴム脚35が設けられることで、装置載置面100に多少の凹凸が存在していても、測色用走査装置1の姿勢を安定させることができる。
ゴム脚35と装置載置面100との間の摩擦係数は、本体板31aと装置載置面100との間の摩擦係数より高くなる。よって本構成によれば、ゴム脚35を備えずに本体板31aが直接装置載置面100と接触する構成に比べて、測色用走査装置1が装置載置面100に対して滑りにくく、安定した状態で使用できる。
尚、本実施形態ではゴム脚35本体板31aの四隅に設けられるが、ゴム脚35の配置位置や配置数はこれに限られず、適宜変更できる。
【0031】
ファスナー37を開き、蓋部32を開くと、
図3に示す様に覆い部材33、移動規制体34の一部、及び測色用走査装置1の一部が露呈する。
覆い部材33は移動規制体34の上面を覆う板状の部材であり、可撓性を有している。覆い部材33には収納ポケット33aが設けられており、後述するカラーチャート19や装置の取り扱い説明書等のシート材を収納ポケット33aに収納することができる。
【0032】
移動規制体34は、一例としてスポンジ等の弾性材で形成することができる。
図4に示す様に移動規制体34には第1収容部34a、第2収容部34b、及び第3収容部34cが凹む様に形成されている。第1収容部34aには、一例として測色用走査装置1に使用するケーブル等の備品を収容することができる。第2収容部34bと第3収容部34cには、一例として後述する測色装置50を収容することができる。従って第2収容部34bと第3収容部34cは、大きさ、形状、深さが測色装置50の収容を想定して設計されている。これにより測色装置50を第2収容部34b或いは第3収容部34cに収容した際に、測色装置50と各凹部の内壁との間で大きな隙間が形成されないとともに、測色装置50が移動規制体34から上に飛び出さない様になっている。
【0033】
移動規制体34は、後述する測色用走査装置1のガントリー10及びキャリッジ16の移動領域を利用する様に走査用ステージ2の上部に配置される。
移動規制体34には切り欠き部34dが形成されており、切り欠き部34dの内側にキャリッジ16が配置される。
また、移動規制体34に対し+X方向にガントリー10が配置される。
覆い部材33と移動規制体34は、蓋部32と一体に設けられており、蓋部32をケース本体31から取り外すと、蓋部32とともに測色用走査装置1から離間する。
【0034】
ここで
図5、
図10を参照して測色用走査装置1の構成について概説する。測色用走査装置1は、大略的にはキャリッジ16に測色装置50(
図7参照)をセットし、走査用ステージ2のステージ面2aに測定対象の一例であるカラーチャート19を載置した状態で、キャリッジ16即ち測色装置50が走査用ステージ2上のカラーチャート19を走査する装置である。
一例としてカラーチャート19は、複数のカラーパッチ(不図示)がマトリクス状に配置されて成る。複数のカラーパッチには異なる色が付されている。
【0035】
走査用ステージ2のステージ面2aはX-Y平面に平行な面である。走査用ステージ2は、
図10に示す様にステージ面2aを形成するステージ上部材3と、ステージ上部材3に対し下側に位置するステージ下部材4とで構成される。ステージ下部材4は、測色用走査装置1の底部を構成する。
詳しくは後に説明するが、ステージ下部材4は、キャリングケース30のケース本体31と一体化される。
【0036】
測色用走査装置1は、走査用ステージ2のステージ面2aをY軸方向で跨ぐガントリー10を備える。ガントリー10は、ガントリーモーター18の動力を受けてX軸方向に移動する。
ガントリー10には、キャリッジ16が設けられる。キャリッジ16は、不図示のキャリッジモーターの動力を受けて、ガントリー10においてY軸方向に移動する。
ガントリー10のX軸方向への移動とキャリッジ16のY軸方向への移動とにより、キャリッジ16にセットされた測色装置50(
図7参照)がカラーチャート19を走査することができる。このことによりキャリッジ16は、走査用ステージに対しY軸方向及びX軸方向に移動可能な走査部の一例となる。Y軸方向は、第1方向の一例であり、X軸方向は、第1方向に交差する第2方向の一例である。
【0037】
次に、
図7を参照して測色装置50について概説する。
測色装置50はカラーチャート19を測色し、測色結果を不図示のコンピューターに送信する装置である。
本実施形態に係る測色装置50はユーザーが片手でつかんで取り扱うことが可能なハンドタイプとされている。測色装置50は、装置本体51の内部に、装置の電力供給源であるバッテリー(不図示)や、入射光を処理する入射光処理部54を備えている。入射光処理部54についての詳細な説明は省略するが、本実施形態において入射光処理部54は不図示の光学フィルターを備える。
【0038】
この光学フィルターは、装置内部に入射した光から、任意の波長成分を選択的に透過させる。この光学フィルターを透過した光は、不図示の受光素子、具体的にはフォトダイオードに入射する。そして入射した光の強度が電圧値に変換されて、制御部(不図示)に出力される。測色装置50は、上記光学フィルターによる波長選択と受光強度の取得とを繰り返し行うことで、測色対象のスペクトルを測定する。光学フィルターは、本実施形態では波長可変型のファブリペローエタロンであり、二つの対向する反射面の多重干渉を利用した波長フィルターである。勿論、入射光処理部54はこの様な光学フィルターを備える構成に限られない。波長可変型のファブリペローエタロンは、光軸方向に間隔を空けて対向配置された一対のミラー(不図示)の光軸方向間隔を制御することで波長選択する構成である。
【0039】
装置の底面51aには開口部51bが形成されており、測色対象から入射光処理部54に向かう入射光は、開口部51bを介して装置内部に取り入れられる。開口部51bの内部には不図示の発光部が設けられており、この発光部から発せられる光は、開口部51bを介して装置外部に向かい、底面51aと対向する測色対象を照射する。
装置本体51の上面51cには各種操作を行う為の操作部57と、各種情報を表示する表示部58とが設けられている。
以上の様に構成された測色装置50が、測色用走査装置1のキャリッジ16に収容される。キャリッジ16は、測色装置50を収容可能な大きさ及び形状に形成されている。
【0040】
続いて
図6、
図8、
図10を参照して脚部の一例であるゴム脚35について詳説する。ゴム脚35はキャリングケース30の構成要素であるとともに、測色用走査装置1を使用する際に測色用走査装置1の底部を構成するステージ下部材4を支持する。
ゴム脚35は、ケース本体31の本体板31aの外側から、本体板31aを挟んでステージ下部材4に対して取り付け可能である。このことは、
図10に最も良く表れている。
図10に示す様にステージ下部材4にはねじ穴4aが形成されており、ねじ穴4aにはねじ36が嵌合する。ねじ36がねじ穴4aに嵌合することで、ゴム脚35が本体板31aを挟んでステージ下部材4に対して取り付けられた状態となる。本体板31aには、ねじ36を挿通させる穴(不図示)が本実施形態では四箇所形成されている。
【0041】
この様な構成により、蓋部32を開放すれば、ケース本体31から測色用走査装置1を取り出すことなく装置載置面100に測色用走査装置1を載置することができ、使い勝手が向上する。
そしてまた、ゴム脚35を、本体板31aの外側から本体板31aを挟んで測色用走査装置1のステージ下部材4に対して取り付けることで、測色用走査装置1と、本体板31aと、ゴム脚35とが一体化された状態となる。従って装置載置面100とゴム脚35との間の摩擦により、装置載置面100に対して測色用走査装置1が動き難くなる。加えて測色用走査装置1と本体板31aとのずれも無くすことができ、より一層測色用走査装置1を安定して使用することができる。
【0042】
尚、本実施形態では上述した様に従ってケース本体31の本体板31aは、ステージ下部材4よりも剛性が低いが、これに限られず、ケース本体31の本体板31aが、ステージ下部材4と剛性が同じか或いは高くても良い。本体板31aとステージ下部材4とは一体化される為、本体板31aの剛性が高いほど、ステージ下部材4即ち走査用ステージ2の剛性を高めることができる。これにより、凹凸のある装置載置面100に測色用走査装置1を載置した際に、走査用ステージ2の変形を抑制できる。
【0043】
また測色用走査装置1は、走査用ステージ2に対しY軸方向及びX軸方向に移動可能な走査部であるキャリッジ16を備え、測色用走査装置1がキャリングケース30に収容された状態において、キャリッジ16のX軸方向とY軸方向の移動を規制する移動規制体34が、キャリッジ16の移動領域を利用して配置される。
このことにより、測色用走査装置1をキャリングケース30に収容して持ち運ぶ際にキャリングケース30内でキャリッジ16が意図せず動くことを抑制できる。そしてその結果、キャリッジ16の破損等を抑制できる。
【0044】
尚、本実施形態においてキャリッジ16のホームポジションは、X軸方向において+X方向の移動限度にあり、Y軸方向において+Y方向の移動限度にある。測色用走査装置1がキャリングケース30に収容される際、キャリッジ16がホームポジションに位置することを前提とする。
そして移動規制体34は、測色用走査装置1がキャリングケース30に収容された状態において、第1規制面34e(
図4、
図5参照)によってキャリッジ16の-X方向への移動を規制し、第2規制面34f(
図4、
図5参照)によってキャリッジ16の-Y方向への移動を規制する。これにより、キャリッジ16がホームポジションに保持される。
【0045】
この状態においてガントリー10は不図示の+X方向の移動限度位置にある為、ガントリー10は不図示の移動規制部によって+X方向への移動が規制される。またキャリッジ16は+Y方向への移動限度位置にある為、キャリッジ16は+Y方向への移動が規制される。キャリッジ16の+Y方向への移動を規制する手段については、後に改めて説明する。
尚、Y軸方向が鉛直方向に沿う方向となった場合には、移動規制体34は第2規制面34fによってキャリッジ16の鉛直上方への移動を規制することとなるが、これについても後に改めて説明する。
【0046】
尚、キャリッジ16のホームポジションは、その他の位置であっても良い。また移動規制体34がキャリッジ16の移動を規制する際のキャリッジ16の位置は、ホームポジションに限られず、その他の位置であっても良い。
また測色用走査装置1がキャリングケース30に収容された状態において、移動規制体34により、本実施形態ではキャリッジ16の-X方向への移動を規制するが、+X方向への移動を規制しても良いし、+X方向と-X方向の双方向の移動を規制しても良い。
同様に本実施形態では、移動規制体34によりキャリッジ16の-Y方向への移動を規制するが、+Y方向への移動を規制しても良いし、+Y方向と-Y方向の双方向の移動を規制しても良い。
また、本実施形態において移動規制体34は、箱状に形成されたキャリッジ16の側面と当接する構成であるが、これに限らず、例えばキャリッジ16が箱状に形成されていなくともキャリッジ16の一部と係わり合ってキャリッジ16の移動を規制できれば良い。
【0047】
またキャリングケース30は、Y軸方向が鉛直方向に沿った状態でキャリングケース30を把持する為の把持部40を備え、移動規制体34は、キャリッジ16が鉛直下方の移動限度即ちホームポジションに位置する状態でキャリッジ16を避ける形状を成し、具体的には切り欠き部34dによってキャリッジ16を避ける。このことにより、把持部40を把持してキャリングケース30を持ち運ぶ際、キャリッジ16が鉛直下方の移動限度に位置することとなり、キャリッジ16の鉛直方向における位置が安定し易い構成とすることができる。
【0048】
図9は、キャリッジ16の+Y方向の移動限度を規定する部位を示すものであり、符号11はガントリー10の基体を構成するフレームである。フレーム11は、Y軸方向に延びる形状を成す。フレーム11にはスライダ15がY軸方向にスライド可能に設けられており、スライダ15に対しキャリッジ16が取り付けられている。
符号17は無端ベルトであり、スライダ15は無端ベルト17の一部に固定される。無端ベルト17はキャリッジモーター20の動力を受けて周回し、これによりスライダ15がY軸方向に移動し、即ちキャリッジ16がY軸方向に移動する。
【0049】
フレーム11において+Y方向の端部には規制部材12が設けられている。スライダ15の当接部15aが規制部材12に当接することで、スライダ15即ちキャリッジ16の+Y方向への移動が規制される。
この様な構成により、Y軸方向が鉛直方向に沿った状態でキャリングケース30が把持されると、スライダ15即ちキャリッジ16は、規制部材12によって鉛直下方への移動が規制されることとなる。
【0050】
また移動規制体34は、物品を収容可能な凹部である第1収容部34a、第2収容部34b、及び第3収容部34cを備える。このことにより、キャリングケース30の利便性が向上する。
【0051】
またキャリングケース30は、蓋部32がケース本体31を覆う状態において移動規制体34と蓋部32との間に位置し、第1収容部34a、第2収容部34b、及び第3収容部34cを覆う覆い部材33を備える。このことにより、蓋部32を開いた際に各凹部に収容した物品が各凹部から直ちに抜け出てしまうことを抑制できる。
尚、覆い部材33は省略することもできる。
【0052】
またキャリングケース30において、蓋部32が、ケース本体31に対して着脱可能である。これにより、測色用走査装置1を使用する際に蓋部32が邪魔になり難く、測色用走査装置1の使い勝手が向上する。
但し、蓋部32がケース本体31から取り外しできない構造であっても良いことは勿論である。
【0053】
またキャリングケース30は、ケース本体31と蓋部32とを接続するファスナー37を備える。ファスナー37は、ケース本体31を装置載置面100に載置した際に、鉛直方向において、走査用ステージ2のステージ面2aよりも低い位置に設けられる。このことは、
図10の開示内容から明らかである。これにより、走査用ステージ2のステージ面2aに測色対象を置く際にファスナー37が邪魔になり難い。
【0054】
また
図13に示す様に、ファスナー37は、測色用走査装置1の側面に設けられたコネクタ接続部41を覆わない位置に設けられる。コネクタ接続部41は、本実施形態において走査用ステージ2の+X方向の側面に設けられている。ファスナー37がコネクタ接続部41を覆わないことで、コネクタ接続部41に接続されるコネクタ(不図示)、或いは前記コネクタが取り付けられたケーブル(不図示)とファスナー37との干渉を抑制できる。
【0055】
また、
図12に示す様にケース本体31にはファスナー37より内側に内側縁部31bが設けられており、同様に蓋部32にはファスナー37より内側に内側縁部32fが設けられている。そしてファスナー37によってケース本体31と蓋部32とが接続されると、ケース本体31の内側縁部31bと蓋部32の内側縁部32fとが密着する。このことにより、ファスナー37から内側への水の侵入を抑制できる。
【0056】
本発明は上記において説明した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
1…測色用走査装置、2…走査用ステージ、2a…ステージ面、3…ステージ上部材、4…ステージ下部材、10…ガントリー、11…フレーム、12…規制部材、15…スライダ、16…キャリッジ、17…無端ベルト、18…ガントリーモーター、19…カラーチャート、20…キャリッジモーター、30…キャリングケース、31…ケース本体、31a…本体板、31b…内側縁部、32…蓋部、32a…第1側面、32b…第2側面、32c…第3側面、32d…第4側面、32e…表面、32f…内側縁部、33…覆い部材、33a…収納ポケット、34…移動規制体、34a…第1収容部、34b…第2収容部、34c…第3収容部、34d…切り欠き部、34e…第1規制面、34f…第2規制面、35…ゴム脚、36…ねじ、37…ファスナー、40…把持部、50…測色装置、51…装置本体、51a…底面、51b…開口部、51c…上面、54…入射光処理部、57…操作部、58…表示部、60…測色システム、100…装置載置面