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特開2024-126760メチレンビスナフタレン化合物、メチレンビスナフタレン樹脂組成物、硬化物、成形体および光学材料
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  • 特開-メチレンビスナフタレン化合物、メチレンビスナフタレン樹脂組成物、硬化物、成形体および光学材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126760
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】メチレンビスナフタレン化合物、メチレンビスナフタレン樹脂組成物、硬化物、成形体および光学材料
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/36 20060101AFI20240912BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20240912BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20240912BHJP
   C07C 233/73 20060101ALI20240912BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240912BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C08F20/36
C08L33/14
C08F2/50
C07C233/73
G02B1/04
G02C7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035370
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 比捺
(72)【発明者】
【氏名】塚田 裕以智
【テーマコード(参考)】
2H006
4H006
4J002
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
2H006BA01
4H006AA01
4H006AB46
4H006BJ50
4H006BT16
4H006BV72
4J002BG071
4J002GP01
4J011QA03
4J011QA12
4J011QA38
4J011QA46
4J011SA02
4J011SA14
4J011SA16
4J011SA20
4J011UA01
4J011VA01
4J011VA04
4J011WA07
4J100AL08Q
4J100AL66P
4J100BA02Q
4J100BA15P
4J100BA34P
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100BC49P
4J100CA01
4J100CA03
4J100DA63
4J100JA33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高屈折率および低硬化収縮性の性能バランスが向上した硬化物、成形体および光学材料を得ることができるメチレンビスナフタレン化合物およびメチレンビスナフタレン樹脂組成物、並びに前記樹脂組成物を硬化させてなる硬化物、成形体および光学材料を提供する。
【解決手段】下記一般式(X)で表されるメチレンビスナフタレン化合物を提供する。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(X)で表されるメチレンビスナフタレン化合物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】

(一般式(X)中、R~RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、メタクリロイルオキシ基またはアクリロイルオキシ基を表し、Rはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ベンジルエーテル、メタクリロイルオキシ基またはアクリロイルオキシ基を表し、Rはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メタクリロイルオキシ基またはアクリロイルオキシ基を表し、Rはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表す。mは0以上15以下を表し、nは0または1を表す。但し、nが0のときmは0を表し、nが1のときmは1以上15以下を表す。
一般式(X)中、Rは、一般式(I)で表される基、一般式(II)で表される基、式(III)で表される基、式(IV)で表される基、メチル基または炭素数2~17の飽和炭化水素基を表す。
一般式(I)中、aは0または1を表し、Yは炭素数3~6の飽和脂肪族炭化水素環を表す。
一般式(II)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルコキシ基、またはフェニル基を表し、R10は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~7のアルコキシ基を表し、R11は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルコキシ基、フェニル基、または炭素数1~10のアルキル基を表し、R12は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルコキシ基、またはフェニル基を表し、R13は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~7のアルコキシ基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(X)中のmが0であり、nが0である、請求項1に記載のメチレンビスナフタレン化合物。
【請求項3】
前記一般式(X)中のRが、前記一般式(II)で表される基である、請求項1または2に記載のメチレンビスナフタレン化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のメチレンビスナフタレン化合物を含むメチレンビスナフタレン樹脂組成物。
【請求項5】
光重合開始剤をさらに含む、請求項4に記載のメチレンビスナフタレン樹脂組成物。
【請求項6】
重合性化合物をさらに含む、請求項4または5に記載のメチレンビスナフタレン樹脂組成物。
【請求項7】
前記重合性化合物は(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項6に記載のメチレンビスナフタレン樹脂組成物。
【請求項8】
前記メチレンビスナフタレン化合物の含有量が、前記メチレンビスナフタレン化合物の含有量および前記重合性化合物の含有量の合計を100質量部としたときに、3質量部以上99質量部以下である、請求項4~7に記載のメチレンビスナフタレン樹脂組成物。
【請求項9】
前記メチレンビスナフタレン樹脂組成物の、下記<硬化膜の作製>に従って作製した硬化膜の、ASTM D542に準拠して測定される、25℃におけるd線波長光に対する屈折率nDが、1.607以上である、請求項4~8のいずれかに記載のメチレンビスナフタレン樹脂組成物。
<硬化膜の作製>
(1)フッ化シラン系コーティング剤を用いて離型処理した無アルカリガラス基板上に、前記メチレンビスナフタレン樹脂組成物0.5mLを塗布し、厚みが250μmのスペーサーを介してもう一枚の離型処理したガラス基板で挟み込み、端部をクリップで固定し、積層体を得る。
(2)得られた積層体の片面から無電極ランプ(Hバルブ)を用いて365nmにおける露光量が3000mJ/cmになるよう紫外線を照射した後、硬化物をガラス基板から離型させ、得られた硬化物を窒素ガス雰囲気下、80℃で30分間加熱して、厚さ250μmの硬化膜を得る。
【請求項10】
前記メチレンビスナフタレン樹脂組成物の、下記<硬化膜の作製>に従って作製した硬化膜の、ASTM D542に準拠して測定される、25℃におけるアッベ数νdが20以上40以下である、請求項4~9のいずれかに記載のメチレンビスナフタレン樹脂組成物。
<硬化膜の作製>
(1)フッ化シラン系コーティング剤を用いて離型処理した無アルカリガラス基板上に、前記メチレンビスナフタレン樹脂組成物0.5mLを塗布し、厚みが250μmのスペーサーを介してもう一枚の離型処理したガラス基板で挟み込み、端部をクリップで固定し、積層体を得る。
(2)得られた積層体の片面から無電極ランプ(Hバルブ)を用いて365nmにおける露光量が3000mJ/cmになるよう紫外線を照射した後、硬化物をガラス基板から離型させ、得られた硬化物を窒素ガス雰囲気下、80℃で30分間加熱して、厚さ250μmの硬化膜を得る。
【請求項11】
前記メチレンビスナフタレン樹脂組成物の、下記<硬化膜の作製>に従って作製した硬化膜の、下記<硬化収縮率>に従って測定される硬化収縮率(%)が8.0%以下である、請求項4~10のいずれかに記載のメチレンビスナフタレン樹脂組成物。
<硬化収縮率>
(1)前記メチレンビスナフタレン樹脂組成物の比重dを、JIS 8804:2012に基づいて、比重瓶を用いて測定する。
(2)前記硬化膜の比重dをアルキメデス法(JIS 8807:2012)により測定する。
(3)得られた比重dおよび比重dの値を用い、下記式により硬化収縮率(%)を算出する。
式:硬化収縮率(%)=(1-d/d)×100
<硬化膜の作製>
(1)フッ化シラン系コーティング剤を用いて離型処理した無アルカリガラス基板上に、前記メチレンビスナフタレン樹脂組成物0.5mLを塗布し、厚みが250μmのスペーサーを介してもう一枚の離型処理したガラス基板で挟み込み、端部をクリップで固定し、積層体を得る。
(2)得られた積層体の片面から無電極ランプ(Hバルブ)を用いて365nmにおける露光量が3000mJ/cmになるよう紫外線を照射した後、硬化物をガラス基板から離型させ、得られた硬化物を窒素ガス雰囲気下、80℃で30分間加熱して、厚さ250μmの硬化膜を得る。
【請求項12】
請求項4~11のいずれかに記載のメチレンビスナフタレン樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項13】
請求項12に記載の硬化物を含む成形体。
【請求項14】
請求項13に記載の成形体を含む光学材料。
【請求項15】
ガラス基板をさらに含み、
前記成形体と前記ガラス基板との積層体である、請求項14に記載の光学材料。
【請求項16】
光学レンズである、請求項14または15に記載の光学材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチレンビスナフタレン化合物、メチレンビスナフタレン樹脂組成物、硬化物、成形体および光学材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学材料としては、屈折率の多様性や温度、湿度による変動が小さいことから、ガラスが好適に使われてきた。しかし、近年、軽量化や低コスト化等の要求により、樹脂硬化物が用いられるようになってきた。
例えば、スマートフォンに搭載されるカメラレンズモジュールは、小型化や低背化のためにウェハレベルレンズが用いられるようになってきている。ウェハレベルレンズにおいては屈折率が高く、耐熱性に優れる樹脂硬化物が求められている。また、ガラス基板上に樹脂レンズを形成する、いわゆるハイブリッド型のウェハレベルレンズにおいては、残留応力よるガラス基板-樹脂レンズ間の剥離を抑制するため、組成物が硬化する際の硬化収縮率が低いことが求められている。
より屈折率が高い樹脂硬化物を得る方法として、チオ(メタ)アクリレート等を含有する組成物を光硬化させて得られる透明性を有する材料を用いる方法が、特許文献1や特許文献2に報告されている。
【0003】
特許文献1には、光学部品の分野において、優れた機械特性を維持しつつ、高反射率、高剛性、極低密度および良好な色味を実現することを目的として、特定の構造を有するアクリルまたはメタアクリル、ジまたはポリチオールモノマーを有効量含む、架橋可能な高分子注型組成物が記載されている。
【0004】
特許文献2には、目に着用するレンズの分野で有用であり、且つ熱に関する機械的特性が良好で、黄色度が低く、高い屈折率を持つ、特定のモノマーからなる透明なポリマー組成物と、該ポリマー組成物の製造方法と、該ポリマー組成物を用いて製造される目に着用するレンズ等およびその製造方法を提供することを目的として、少なくとも一つのチオアクリレート基、もしくは、チオメタクリレート基を含むモノマー(I)もしくはモノマー(I)の混合物を少なくとも10重量%と、ラジカル反応により共重合可能な一つもしくはそれ以上のモノマー(II)、モノマー(II)の中でも好ましくは単官能もしくは多官能のビニル基、アクリレート基、もしくはメタクリレート基を0~90重量%とを含有する構成成分Aと、;芳香族系には寄与しない不飽和エチレンを含み、該不飽和エチレンに対してα位にフリーな水酸基を持つ炭素原子を有する、一つもしくはそれ以上のモノマー(III)を、構成成分Aの重量に関し0.1~15重量%含有する構成成分Bと;を含有する透明なポリマー組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第98/24761号
【特許文献2】特開平8-325337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光学材料に用いられる樹脂組成物は、屈折率および硬化収縮率の性能バランスについて改善の余地があることが明らかになった。
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、高屈折率および低硬化収縮性の性能バランスが向上した硬化物、成形体および光学材料を得ることができるメチレンビスナフタレン化合物およびメチレンビスナフタレン樹脂組成物、並びに、高屈折率および低硬化収縮性の性能バランスが向上した硬化物、成形体および光学材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、特定の構造を有するメチレンビスナフタレン化合物を用いることによって、得られる硬化物の高屈折率および低硬化収縮性の性能バランスを向上できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明によれば、以下に示すメチレンビスナフタレン化合物、メチレンビスナフタレン樹脂組成物、硬化物、成形体および光学材料が提供される。
【0009】
[1]下記一般式(X)で表されるメチレンビスナフタレン化合物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】

(一般式(X)中、R~RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、メタクリロイルオキシ基またはアクリロイルオキシ基を表し、Rはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ベンジルエーテル、メタクリロイルオキシ基またはアクリロイルオキシ基を表し、Rはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メタクリロイルオキシ基またはアクリロイルオキシ基を表し、Rはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表す。mは0以上15以下を表し、nは0または1を表す。但し、nが0のときmは0を表し、nが1のときmは1以上15以下を表す。
一般式(X)中、Rは、一般式(I)で表される基、一般式(II)で表される基、式(III)で表される基、式(IV)で表される基、メチル基または炭素数2~17の飽和炭化水素基を表す。
一般式(I)中、aは0または1を表し、Yは炭素数3~6の飽和脂肪族炭化水素環を表す。
一般式(II)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルコキシ基、またはフェニル基を表し、R10は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~7のアルコキシ基を表し、R11は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルコキシ基、フェニル基、または炭素数1~10のアルキル基を表し、R12は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルコキシ基、またはフェニル基を表し、R13は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~7のアルコキシ基を表す。)
[2]
前記一般式(X)中のmが0であり、nが0である、[1]に記載のメチレンビスナフタレン化合物。
[3]
前記一般式(X)中のRが、前記一般式(II)で表される基である、[1]または[2]に記載のメチレンビスナフタレン化合物。
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載のメチレンビスナフタレン化合物を含むメチレンビスナフタレン樹脂組成物。
[5]
光重合開始剤をさらに含む、[4]に記載のメチレンビスナフタレン樹脂組成物。
[6]
重合性化合物をさらに含む、[4]または[5]に記載のメチレンビスナフタレン樹脂組成物。
[7]
前記重合性化合物は(メタ)アクリレート化合物を含む、[6]に記載のメチレンビスナフタレン樹脂組成物。
[8]
前記メチレンビスナフタレン化合物の含有量が、前記メチレンビスナフタレン化合物の含有量および前記重合性化合物の含有量の合計を100質量部としたときに、3質量部以上99質量部以下である、[4]~[7]に記載のメチレンビスナフタレン樹脂組成物。
[9]
前記メチレンビスナフタレン樹脂組成物の、下記<硬化膜の作製>に従って作製した硬化膜の、ASTM D542に準拠して測定される、25℃におけるd線波長光に対する屈折率nDが、1.607以上である、[4]~[8]のいずれかに記載のメチレンビスナフタレン樹脂組成物。
<硬化膜の作製>
(1)フッ化シラン系コーティング剤を用いて離型処理した無アルカリガラス基板上に、前記メチレンビスナフタレン樹脂組成物0.5mLを塗布し、厚みが250μmのスペーサーを介してもう一枚の離型処理したガラス基板で挟み込み、端部をクリップで固定し、積層体を得る。
(2)得られた積層体の片面から無電極ランプ(Hバルブ)を用いて365nmにおける露光量が3000mJ/cmになるよう紫外線を照射した後、硬化物をガラス基板から離型させ、得られた硬化物を窒素ガス雰囲気下、80℃で30分間加熱して、厚さ250μmの硬化膜を得る。
[10]
前記メチレンビスナフタレン樹脂組成物の、下記<硬化膜の作製>に従って作製した硬化膜の、ASTM D542に準拠して測定される、25℃におけるアッベ数νdが20以上40以下である、[4]~[9]のいずれかに記載のメチレンビスナフタレン樹脂組成物。
<硬化膜の作製>
(1)フッ化シラン系コーティング剤を用いて離型処理した無アルカリガラス基板上に、前記メチレンビスナフタレン樹脂組成物0.5mLを塗布し、厚みが250μmのスペーサーを介してもう一枚の離型処理したガラス基板で挟み込み、端部をクリップで固定し、積層体を得る。
(2)得られた積層体の片面から無電極ランプ(Hバルブ)を用いて365nmにおける露光量が3000mJ/cmになるよう紫外線を照射した後、硬化物をガラス基板から離型させ、得られた硬化物を窒素ガス雰囲気下、80℃で30分間加熱して、厚さ250μmの硬化膜を得る。
[11]
前記メチレンビスナフタレン樹脂組成物の、下記<硬化膜の作製>に従って作製した硬化膜の、下記<硬化収縮率>に従って測定される硬化収縮率(%)が8.0%以下である、[4]~[10]のいずれかに記載のメチレンビスナフタレン樹脂組成物。
<硬化収縮率>
(1)前記メチレンビスナフタレン樹脂組成物の比重dを、JIS 8804:2012に基づいて、比重瓶を用いて測定する。
(2)前記硬化膜の比重dをアルキメデス法(JIS 8807:2012)により測定する。
(3)得られた比重dおよび比重dの値を用い、下記式により硬化収縮率(%)を算出する。
式:硬化収縮率(%)=(1-d/d)×100
<硬化膜の作製>
(1)フッ化シラン系コーティング剤を用いて離型処理した無アルカリガラス基板上に、前記メチレンビスナフタレン樹脂組成物0.5mLを塗布し、厚みが250μmのスペーサーを介してもう一枚の離型処理したガラス基板で挟み込み、端部をクリップで固定し、積層体を得る。
(2)得られた積層体の片面から無電極ランプ(Hバルブ)を用いて365nmにおける露光量が3000mJ/cmになるよう紫外線を照射した後、硬化物をガラス基板から離型させ、得られた硬化物を窒素ガス雰囲気下、80℃で30分間加熱して、厚さ250μmの硬化膜を得る。
[12]
[4]~[11]のいずれかに記載のメチレンビスナフタレン樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
[13]
[12]に記載の硬化物を含む成形体。
[14]
[13]に記載の成形体を含む光学材料。
[15]
ガラス基板をさらに含み、
前記成形体と前記ガラス基板との積層体である、[14]に記載の光学材料。
[16]
光学レンズである、[14]または[15]に記載の光学材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明のメチレンビスナフタレン化合物およびメチレンビスナフタレン樹脂組成物によれば、高屈折率および低硬化収縮性の性能バランスが向上した硬化物、成形体および光学材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例における、メチレンビスナフタレン化合物の配合量と屈折率nDのプロットを示す。
図2】実施例における、メチレンビスナフタレン化合物の配合量と硬化収縮率のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。
【0013】
本実施形態では、数値範囲を示す「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0014】
<メチレンビスナフタレン化合物>
本実施形態のメチレンビスナフタレン化合物は、下記一般式(X)で表される。
【0015】
【化6】
【0016】
【化7】
【0017】
【化8】
【0018】
【化9】
【0019】
【化10】
【0020】
一般式(X)中、R~RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、メタクリロイルオキシ基またはアクリロイルオキシ基を表し、Rはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ベンジルエーテル、メタクリロイルオキシ基またはアクリロイルオキシ基を表し、Rはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メタクリロイルオキシ基またはアクリロイルオキシ基を表し、Rはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表す。mは0以上15以下を表し、nは0または1を表す。但し、nが0のときmは0を表し、nが1のときmは1以上15以下を表す。
一般式(X)中、Rは、一般式(I)で表される基、一般式(II)で表される基、式(III)で表される基、式(IV)で表される基、メチル基または炭素数2~17の飽和炭化水素基を表す。
一般式(I)中、aは0または1を表し、Yは炭素数3~6の飽和脂肪族炭化水素環を表す。
一般式(II)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルコキシ基、またはフェニル基を表し、R10は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~7のアルコキシ基を表し、R11は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルコキシ基、フェニル基、または炭素数1~10のアルキル基を表し、R12は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルコキシ基、またはフェニル基を表し、R13は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~7のアルコキシ基を表す。
【0021】
一般式(X)中、mは0以上15以下を表し、好ましくは0以上12以下を表し、より好ましくは0以上6以下を表し、さらに好ましくは0以上3以下を表し、さらに好ましくは0以上1以下を表し、さらに好ましくは0を表す。
一般式(X)中、nは0または1を表し、好ましくは0を表す。
但し、nが0のときmは0を表し、nが1のときmは1以上15以下を表し、好ましくは1以上10以下を表し、より好ましくは1以上4以下を表す。
【0022】
一般式(X)中、R~RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、メタクリロイルオキシ基またはアクリロイルオキシ基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基を表し、より好ましくは水素原子を表す。
一般式(X)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ベンジルエーテル、メタクリロイルオキシ基またはアクリロイルオキシ基を表し、より好ましくは水素原子またはメチル基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。
一般式(X)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メタクリロイルオキシ基またはアクリロイルオキシ基を表し、好ましくは水素原子、メチル基またはメトキシ基を表し、より好ましくは水素原子またはメチル基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。
一般式(X)中、Rはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、好ましくはメチル基を表す。
【0023】
一般式(X)中、Rは、一般式(I)で表される基、一般式(II)で表される基、式(III)で表される基、式(IV)で表される基、メチル基または炭素数2~17の飽和炭化水素基を表し、好ましくは一般式(II)で表される基、および一般式(III)で表される基を表し、より好ましくは一般式(II)で表される基を表す。
【0024】
一般式(I)中、aは0または1を表し、より好ましくは0を表し、Yは炭素数3~6の飽和脂肪族炭化水素環を表し、より好ましくは炭素数4~6の飽和脂肪族炭化水素環を表し、さらに好ましくは炭素数5~6の飽和脂肪族炭化水素環を表す。
【0025】
一般式(II)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルコキシ基、またはフェニル基を表し、好ましくは水素原子または炭素数1~7のアルコキシ基を表し、より好ましくは水素原子または炭素数1~5のアルコキシ基を表し、さらに好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルコキシ基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。
一般式(II)中、R10は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~7のアルコキシ基を表し、好ましくは水素原子または炭素数1~7のアルコキシ基を表し、より好ましくは水素原子または炭素数1~5のアルコキシ基を表し、さらに好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルコキシ基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。
一般式(II)中、R11は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルコキシ基、フェニル基、または炭素数1~10のアルキル基を表し、好ましくは水素原子またはフェニル基を表し、より好ましくは水素原子を表す。
一般式(II)中、R12は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルコキシ基、またはフェニル基を表し、好ましくは水素原子またはフェニル基を表し、より好ましくは水素原子を表す。
一般式(II)中、R13は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~7のアルコキシ基を表し、好ましくは水素原子または炭素数1~7のアルコキシ基を表し、より好ましくは水素原子または炭素数1~5のアルコキシ基を表し、さらに好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルコキシ基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。
【0026】
一般式(II)中のRにおける炭素数2~17の飽和炭化水素基としては、例えば、2価の鎖状飽和炭化水素基が挙げられる。2価の鎖状飽和炭化水素基としては、例えば、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基、ヘプタデカン-1,17-ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基;およびこれらの直鎖状アルカンジイル基に、炭素数1~2のアルキル基からなる側鎖を1個または複数個付加してなる分枝鎖状アルカンジイル基が挙げられる。
【0027】
メチレンビスナフタレン化合物の分子量は、硬化物の高屈折率および低硬化収縮性の性能バランスを向上させる観点から、好ましくは470以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは530以上、さらに好ましくは560以上であり、そして好ましくは1500以下、より好ましくは1200以下、さらに好ましくは900以下、さらに好ましくは700以下である。
【0028】
メチレンビスナフタレン化合物は、硬化物の高屈折率および低硬化収縮性の性能バランスを向上させる観点から、下記式(X-1)で表される化合物Aを含むことが好ましい。
【0029】
【化11】
【0030】
化合物Aは、下記の合成スキームによって合成することができる。より具体的には、実施例に記載の合成例1の方法によって合成することができる。
また、合成スキーム中の途中段階の化合物および化合物Aの構造は、H-NMRにて分析することができる。
【0031】
【化12】
【0032】
【化13】
【0033】
【化14】
【0034】
<メチレンビスナフタレン樹脂組成物>
本実施形態のメチレンビスナフタレン樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」とも呼ぶ)は、上述したメチレンビスナフタレン化合物を含む。
【0035】
本実施形態のメチレンビスナフタレン樹脂組成物は、重合開始剤をさらに含んでもよい。重合開始剤は、例えば、熱ラジカル重合開始剤および光ラジカル重合開始剤からなる群から選択される一種または二種以上を含み、メチレンビスナフタレン樹脂組成物の硬化性をより向上させる観点から、好ましくは光重合開始剤を含む。
【0036】
熱ラジカル重合開始剤として、例えば、ジクミルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)2,5-ジメチルヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキシド、イソプロピルクミル-t-ブチルパーオキシド、ビス(α-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキシド類;1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、エチル-3,3-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブチレート、3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトラオキシシクロノナン等のパーオキシケタール類;ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル類;t-ブチルハイドロパーオキシド、t-ヘキシルハイドロパーオキシド、クミンハイドロパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、p-メンタンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド類;2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等のビベンジル化合物類;3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン等が挙げられる。
【0037】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォーメート、イソプロピルチオキサントンおよびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。また、これらの光ラジカル重合開始剤とともに増感剤を使用することもできる。増感剤としては、例えば、アントラキノン、1,2-ナフトキノン、1,4-ナフトキノン、ベンズアントロン、p,p'-テトラメチルジアミノベンゾフェノン、クロラニル等のカルボニル化合物;ニトロベンゼン、p-ジニトロベンゼン、2-ニトロフルオレン等のニトロ化合物;アントラセン、クリセン等の芳香族炭化水素;ジフェニルジスルフィド等の硫黄化合物;ニトロアニリン、2-クロロ-4-ニトロアニリン、5-ニトロ-2-アミノトルエン、テトラシアノエチレン等の窒素化合物等を挙げることができる。
【0038】
本実施形態のメチレンビスナフタレン樹脂組成物中の重合開始剤の含有量は、メチレンビスナフタレン樹脂組成物中のメチレンビスナフタレン化合物および後述する重合性化合物の合計量を100質量部としたとき、得られる硬化物の高屈折率および低硬化収縮性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上、さらに好ましくは2.0質量部以上、さらに好ましくは2.5質量部以上、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下、さらに好ましくは5.0質量部以下、さらに好ましくは4.0質量部以下である。
【0039】
本実施形態のメチレンビスナフタレン樹脂組成物の、E型粘度計を用いて回転数2.5rpmの条件で測定される25℃における粘度は、得られる硬化物の高屈折率、低硬化収縮性および成形性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは50mPa・s以上、さらに好ましくは100mPa・s以上、さらに好ましくは500mPa・s以上であり、そして、好ましくは10000mPa・s以下、より好ましくは8000mPa・s以下、さらに好ましくは6500mPa・s以下、さらに好ましくは5000mPa・s以下、さらに好ましくは3500mPa・s以下である。
【0040】
本実施形態のメチレンビスナフタレン樹脂組成物は、重合性化合物をさらに含んでもよい。より具体的には、本実施形態のメチレンビスナフタレン樹脂組成物は、重合性化合物により希釈する事ができる。これにより樹脂組成物の成膜時の取り扱い性を向上させることができる。
希釈に用いる重合性化合物は、好ましくはエチレン性不飽和基を有する化合物である。エチレン性不飽和基としては、好ましくはビニル基、(メタ)アリル基および(メタ)アクリロイル基からなる群から選択される1種または2種以上を含み、より好ましくは(メタ)アクリロイル基を含む。
また、重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。これにより、メチレンビスナフタレン化合物および重合性化合物との間で、さらに架橋が形成しやすくなり、樹脂組成物から得られる硬化物の耐熱性および強度の性能バランスをさらに向上させることができる。
【0041】
重合性化合物としては、モノマー、プレポリマー、オリゴマーなどの化学的形態のいずれであってもよいが、好ましくはモノマーである。
重合性化合物の分子量は、樹脂組成物の取り扱い性をより向上させる観点から、好ましくは100以上、より好ましくは150以上、さらに好ましくは200以上、さらに好ましくは250以上であり、そして好ましくは3,000以下、より好ましくは2,000以下、さらに好ましくは1,500以下、さらに好ましくは1,000以下、さらに好ましくは500以下、さらに好ましくは350以下である。
【0042】
重合性化合物は、好ましくは(メタ)アクリレート化合物を含む。
(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、NKエステルA-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、および、これらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)が好ましい。
また、(メタ)アクリレート化合物としては、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM-460;東亞合成(株)製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルA-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)、RP-1040(日本化薬(株)製)、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)、NKオリゴUA-7200(新中村化学工業(株)製)、8UH-1006、8UH-1012(大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A(共栄社化学(株)製)などを用いることもできる。
【0043】
また、(メタ)アクリレート化合物として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート化合物を用いることも好ましい。3官能の(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アロニックスM-309、M-310、M-321、M-350、M-360、M-313、M-315、M-306、M-305、M-303、M-452、M-450(東亞合成(株)製)、NKエステル A9300、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、TMPT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD GPO-303、TMPTA、THE-330、TPA-330、PET-30(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0044】
重合性化合物は、イソシアヌレート骨格を有する化合物を用いることもできる。イソシアヌレート骨格を有する重合性化合物を用いることにより、得られる膜の耐溶剤性を向上させることができる。イソシアヌレート骨格を有する重合性化合物の具体例としては、イソシアヌル酸トリス(2-アクリロイルオキシエチル)、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。市販品としては、ファンクリルFA-731A(日立化成(株)製))、NKエステルA9300、A9300-1CL、A9300-3CL(新中村化学工業(株)製)、アロニックスM-315(東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0045】
重合性化合物は、酸基を有する化合物を用いることもできる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基を有する重合性化合物の市販品としては、アロニックスM-305、M-510、M-520、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)等が挙げられる。
酸基を有する重合性化合物の酸価としては、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/gであり、そして好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/gである。重合性化合物の酸価が上記下限値以上であれば、現像液に対するメチレンビスナフタレン樹脂組成物の溶解性をより向上させることができ、上記上限値以下であれば、メチレンビスナフタレン樹脂組成物の製造や取扱い上、有利である。
【0046】
重合性化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物を用いることもできる。カプロラクトン構造を有する重合性化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120等が挙げられる。
【0047】
重合性化合物は、アルキレンオキシ基を有する重合性化合物を用いることもできる。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物は、好ましくはエチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基を有する重合性化合物であり、より好ましくはエチレンオキシ基を有する重合性化合物であり、さらに好ましくはエチレンオキシ基を4個~20個有する3官能~6官能(メタ)アクリレート化合物である。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR-494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA-330などが挙げられる。
【0048】
重合性化合物は、フルオレン骨格を有する重合性化合物を用いることもできる。フルオレン骨格を有する重合性化合物の市販品としては、オグソールEA-0200、EA-0300(大阪ガスケミカル(株)製、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートモノマー)などが挙げられる。
【0049】
重合性化合物としては、トルエンなどの環境規制物質を実質的に含まない化合物を用いることも好ましい。このような化合物の市販品としては、KAYARAD DPHA LT、KAYARAD DPEA-12 LT(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0050】
重合性化合物としては、特公昭48-041708号公報、特開昭51-037193号公報、特公平02-032293号公報、特公平02-016765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-049860号公報、特公昭56-017654号公報、特公昭62-039417号公報、特公昭62-039418号公報に記載されたエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物も好適である。また、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平01-105238号公報に記載された分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する重合性化合物を用いることも好ましい。また、重合性化合物は、UA-7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600、LINC-202UA(共栄社化学(株)製)などの市販品を用いることもできる。
【0051】
この中でも、重合性化合物は、好ましくは、下記式(Y)で表されるo-フェノキシベンジルアクリレート(POB-A)を含む。
【0052】
【化15】
【0053】
本実施形態のメチレンビスナフタレン樹脂組成物中の、メチレンビスナフタレン化合物の含有量は、メチレンビスナフタレン化合物の含有量および重合性化合物の含有量の合計を100質量部としたときに、高屈折率および低硬化収縮性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは8質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは25質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは35質量部以上、さらに好ましくは40質量部以上、さらに好ましくは45質量部以上であり、樹脂組成物の成膜時の取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは99質量部以下、より好ましくは95質量部以下、さらに好ましくは90質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以上である。
【0054】
メチレンビスナフタレン樹脂組成物の硬化膜の、ASTM D542に準拠して測定される、25℃におけるd線波長光に対する屈折率nDは、好ましくは1.607以上、より好ましくは1.608以上、さらに好ましくは1.609以上、さらに好ましくは1.610以上、さらに好ましくは1.615以上、さらに好ましくは1.620以上、さらに好ましくは1.623以上であり、また好ましくは、1.650以下、より好ましくは1.640以下、さらも好ましくは1.630以下である。d線波長光に対する屈折率nDが上記範囲内であることにより、この屈折率範囲において、光が優れた直進性を示す。
【0055】
メチレンビスナフタレン樹脂組成物の硬化膜の、ASTM D542に準拠して測定される、25℃におけるアッベ数νdは、得られる光学材料の色収差をより低減する観点から、好ましくは20以上、より好ましくは23以上、さらに好ましくは25以上であり、また屈折率をより向上させる観点から、好ましくは40以下、より好ましくは35以下、さらに好ましくは30以下である。
【0056】
メチレンビスナフタレン樹脂組成物の硬化膜の硬化収縮率は、成形性をより向上させる観点から、好ましくは8.0%以下、より好ましくは7.5%以下、さらに好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは6.5%以下、さらに好ましくは6.0%以下、さらに好ましくは5.5%以下、さらに好ましくは5.0%以下である。硬化収縮率の下限に制限はないが、例えば0%以上であり、1.0%以上であってもよく、3.0%以上であってもよく、4.0%以上であってもよい。
なお、メチレンビスナフタレン樹脂組成物の硬化膜の硬化収縮率は、以下のように測定される。
(1)メチレンビスナフタレン樹脂組成物の比重dを、JIS 8804:2012に基づいて、比重瓶を用いて測定する。
(2)メチレンビスナフタレン樹脂組成物の硬化膜の比重dをアルキメデス法(JIS 8807:2012)により測定する。
(3)得られた比重dおよび比重dの値を用い、下記式により硬化収縮率(%)を算出する。
式:硬化収縮率(%)=(1-d/d)×100
【0057】
上記d線波長光に対する屈折率nD、アッベ数νdおよび硬化収縮率の測定において用いられる硬化膜は、下記のとおり作製されるものである。
(1)フッ化シラン系コーティング剤を用いて離型処理した無アルカリガラス基板上に、前記メチレンビスナフタレン樹脂組成物0.5mLを塗布し、厚みが250μmのスペーサーを介してもう一枚の離型処理したガラス基板で挟み込み、端部をクリップで固定し、積層体を得る。
(2)得られた積層体の片面から無電極ランプ(Hバルブ)を用いて365nmにおける露光量が3000mJ/cmになるよう紫外線を照射した後、硬化物をガラス基板から離型させ、得られた硬化物を窒素ガス雰囲気下、80℃で30分間加熱して、厚さ250μmの硬化膜を得る。
【0058】
<メチレンビスナフタレン樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、メチレンビスナフタレン化合物に対し、必要に応じて、重合性化合物、光重合開始剤やその他の成分を、従来公知の方法で混合することにより得ることができる。
【0059】
本実施形態のメチレンビスナフタレン樹脂組成物中の、メチレンビスナフタレン化合物の含有量および重合性化合物の含有量の合計は、メチレンビスナフタレン樹脂組成物全体を100質量%としたときに、樹脂組成物の成形性および強度の性能バランスをより向上させる観点から、、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、そして好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99質量%以下、さらに好ましくは98質量%以下である。
【0060】
<硬化物>
本実施形態の硬化物は、本実施形態のメチレンビスナフタレン樹脂組成物を硬化させてなるものである。本実施形態の硬化物は高屈折率および低硬化収縮性の性能バランスが向上しているため、光学材料に好適に用いることができる。
【0061】
<成形体>
本実施形態の成形体は、本実施形態の硬化物を含む成形体であり、例えば、本実施形態の樹脂組成物を硬化させながら、所定の形状に成形することにより得ることができる。
本実施形態の成形体は、本実施形態の硬化物を含むため、高屈折率および低硬化収縮性の性能バランスが向上しているため、光学材料に好適に用いることができる。
【0062】
本実施形態の成形体中の本実施形態の硬化物の含有量は、高屈折率および低硬化収縮性の性能バランスをより向上させる観点から、当該成形体の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下である。
【0063】
<光学材料>
本実施形態の光学材料は、本実施形態の成形体を含むものであり、例えば、本実施形態の樹脂組成物を硬化させながら、所定の形状に成形することにより得ることができる。
本実施形態の光学材料は、本実施形態の硬化物や成形体を含むため、高屈折率および低硬化収縮性の性能バランスが向上しているため、例えば、各種センサー用レンズ、ピックアップレンズ、プロジェクタ用レンズ、プリズム、fθレンズ、撮像用レンズ、カメラレンズ、導光板、ヘッドマウントディスプレイ用レンズ、プラスチック眼鏡レンズ、ゴーグル、視力矯正用眼鏡レンズ、撮像機器用レンズ、液晶プロジェクター用フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、コンタクトレンズ等の各種光学レンズ、発光ダイオード(LED)用封止材、光導波路、ウェハレベル光学部品(WLO)や光導波路の接合に用いる光学用接着剤、光学レンズ等に用いる反射防止膜、液晶表示装置部材(基板、導光板、フィルム、シート等)に用いる透明性コーティング、車のフロントガラスやバイクのヘルメットに貼り付けるシートやフィルム、透明性基板等を挙げることができる。
本実施形態の光学材料は、高屈折率および低硬化収縮性の性能バランスが向上しているため、各種光学レンズとして、より好適に用いることができる。
さらに、本実施形態の光学材料は、高屈折率および低硬化収縮性の性能バランスが向上しているため、ガラス基板をさらに含み、本実施形態の成形体とガラス基板との積層体として好適に用いることができ、さらに、ガラス基板上に樹脂レンズを形成する、いわゆるハイブリッド型の光学レンズとして好適に用いることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0065】
以下、本実施形態を、実施例等を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0066】
<合成例1:化合物Aの合成>
(N-(2,2-ジエトキシエチル)ベンズアミドの合成)
500mLの4径フラスコに、10g(75.1mmol)の2,2-ジエトキシエタン-1-アミン(下記反応式にて化合物(1)と示す)を装入し、200mLのジクロロメタンを加え、溶解させた。得られた溶液を0℃まで冷却し、12.6mL(90.1mmol)のトリエチルアミン、および9.2mL(78.9mmol)のベンゾイルクロライドを添加した。その後、この溶液を室温で3時間攪拌し、反応液を得た。
次に、上記反応液に90mLの1M塩酸、および100mLの水を加え、10分間撹拌し、混合物を得た。上記フラスコ内の混合物をジクロロメタン(200mL×1回)で抽出した。抽出液を合わせて400mLの飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(カラム:Biotage SfarD(Duo)200g、溶出溶媒:酢酸エチル-ヘキサン系グラジエント(酢酸エチル8%→64%))にて精製し、無色オイルとして、N-(2,2-ジエトキシエチル)ベンズアミド(下記反応式にて化合物(2)と示す)を13.5g得た(収率76%)。
化合物(1)から化合物(2)への合成スキームを以下に示す。
【0067】
【化16】
【0068】
N-(2,2-ジエトキシエチル)ベンズアミド(化合物(2))のNMR分析結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:7.77(2H,dt,J=7.1Hz,1.5Hz),7.50(1H,tt,J=7.1Hz,1.5Hz),7.44(2H,td,J=7.1Hz,1.5Hz),6.40(1H,brd.s),4.63(1H,t,J=5.4Hz),3.72-3.79(2H,m),3.60(2H,q,J=7.0Hz),3.58(2H,q,J=7.0Hz),1.24(6H,t,J=7.0Hz).
【0069】
(N-(2,2-ビス(2-ヒドロキシナフタレン-1-イル)エチル)ベンズアミド(3)の合成)
500mLの4径フラスコに、11g(46.4mmol)のN-(2,2-ジエトキシエチル)ベンズアミド(化合物(2))、および14.7g(102mmol)2-ナフトールを装入し、232mLのクロロホルムを加え、これらを溶解させた。得られた溶液を0℃まで冷却し、3.6mL(46.4mmol)のトリフルオロ酢酸を添加した。その後、この溶液を室温で7日間攪拌し、反応液を得た。
次に、上記反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(カラム:Biotage SfarD(Duo) 350g、溶出溶媒:酢酸エチル-ヘキサン系グラジエント(酢酸エチル8%→66%))にて精製し、黄色結晶として、N-(2,2-ビス(2-ヒドロキシナフタレン-1-イル)エチル)ベンズアミド(下記反応式にて化合物(3)と示す)を10.3g得た(収率51%)。
化合物(2)から化合物(3)への合成スキームを以下に示す。
【0070】
【化17】
【0071】
N-(2,2-ビス(2-ヒドロキシナフタレン-1-イル)エチル)ベンズアミド(化合物(3))のNMR分析結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:9.04(2H,s),8.21(2H,d,J=8.2Hz),7.65(2H,dd,J=8.2Hz,1.2Hz),7.53(2H,d,J=7.3Hz),7.46(2H,d,J=8.8Hz),7.42(1H,t,J=7.3Hz),7.36(2H,td,J=8.2Hz,1.2Hz),7.29(2H,t,J=8.2Hz),7.26(2H,t,J=7.3Hz),7.11(2H,d,J=8.8Hz),6.86(1H,t,J=6.9Hz),6.00(1H,t,J=6.9Hz),4.60(1H,d,J=6.9Hz),4.58(1H,d,J=6.9Hz).
【0072】
((2-ベンズアミドエタン-1,1-ジイル)ビス(ナフタレン-1,2-ジイル)ビス(2-メチルアクリレート)(4)の合成)
500mLの4径フラスコに、10.3g(23.7mmol)のN-(2,2-ビス(2-ヒドロキシナフタレン-1-イル)エチル)ベンズアミド(化合物(3))を装入し、237mLのジクロロメタンを加え、これらを溶解させた。得られた溶液を0℃まで冷却し、7.3mL(52.1mmol)のトリエチルアミン、および5.0mL(52.1mmol)のメタクリル酸クロライドを添加した。その後、この溶液を45分間攪拌し、反応液を得た。
次に、上記反応液に55mLの1M塩酸、および150mLの水を加え、10分間撹拌した。上記フラスコ内の混合物をジクロロメタン(250mL×1回)で抽出した。抽出液を合わせて400mLの飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(カラム:Biotage SfarD(Duo) 200g、溶出溶媒:酢酸エチル-ヘキサン系グラジエント(酢酸エチル6%→49%))にて精製し、白色結晶として、(2-ベンズアミドエタン-1,1-ジイル)ビス(ナフタレン-1,2-ジイル)ビス(2-メチルアクリレート)(下記反応式にて化合物(4)と示す。またこれを化合物Aとする)を11.5g得た(収率85%)。
化合物(3)から化合物(4)への合成スキームを以下に示す。
【0073】
【化18】
【0074】
化合物AのNMR分析結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:8.32(2H,d,J=7.8Hz),7.83(2H,d,J=7.8Hz),7.77(2H,d,J=9.1Hz),7.58(2H,dt,J=6.8Hz,1.6Hz),7.43-7.46(2H,m),7.40(2H,t,J=7.8Hz),7.33(2H,t,J=6.8Hz),7.31(1H,t,J=6.8Hz),7.07(2H,d,J=9.1Hz),6.51(1H,t,J=7.4Hz),6.14(2H,s),6.03(1H,t,J=7.4Hz),5.71(2H,s),4.45(1H,d,J=7.4Hz),4.43(1H,d,J=7.4Hz),1.92(6H,s).
【0075】
<合成例2:化合物Bの合成>
(1,1'-メチレンビス(ナフタレン-2-オール)(6)の合成)
500mLの4径フラスコに、21.0g(146mmol)の2-ナフトール(下記反応式にて化合物(5)と示す)、および4.81g(160mmol)のパラホルムアルデヒドを装入し、150mLの酢酸を加え、これらを溶解させた。その後90℃まで昇温し、3時間攪拌し、反応液を得た。
次に、上記反応液を5℃以下になるまでし氷冷し、120mLのジクロロメタンを装入して30分間撹拌し、懸濁液を得た。この懸濁液を冷時ろ過し、合計90mLのジクロロメタンを3回に分けて加えて、洗浄した。茶褐色固体として、1,1'-メチレンビス(ナフタレン-2-オール)(下記反応式にて化合物(6)と示す)を12.9g得た(収率59%)。
化合物(5)から化合物(6)への合成スキームを以下に示す。
【0076】
【化19】
【0077】
1,1'-メチレンビス(ナフタレン-2-オール)(化合物(6))のNMR分析結果を以下に示す。
H-NMR(270MHz,DMSO-d6)δ:10.1(2H,s),8.19(2H,d,J=7.8Hz),7.64(2H,d,J=7.8Hz),7.59(2H,d,J=8.8Hz),7.26(2H,d,J=8.8Hz),7.18(2H,t,J=7.8Hz),7.11(2H,t,J=7.8Hz),4.70(2H,s).
【0078】
(3,3-((メチレンビス(ナフタレン-1,2-ジイル))ビス(オキシ))ビス(プロパン-1-オール)(7)の合成)
窒素雰囲気下にて、200mLの4径フラスコに、1.58g(5.26mmol)の1,1'-メチレンビス(ナフタレン-2-オール)(化合物(6))を装入し、16mLのN,N-ジメチルホルムアミドを加え、これらを溶解させた。得られた溶液に、1.42g(10.8mmol)のカリウムtert-ブトキシド、87.4mg(0.526mmol)のヨウ化カリウム、および1.13g(11.6mmol)の3-クロロプロパノールを添加した。その後70℃で2時間攪拌し、反応液を得た。
次に、上記反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣に30mLの酢酸エチルおよび30mLの水を加えた。上記フラスコ内の混合物を酢酸エチル(30mL×2回)で抽出した。抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(カラム:Biotage SfarD(Duo) 25g、溶出溶媒:酢酸エチル-ヘキサン系グラジエント(酢酸エチル8%→66%))にて精製し、黄褐色結晶として、3,3-((メチレンビス(ナフタレン-1,2-ジイル))ビス(オキシ))ビス(プロパン-1-オール)(下記反応式にて化合物(7)と示す)を0.91g得た(収率42%)。
化合物(6)から化合物(7)への合成スキームを以下に示す。
【0079】
【化20】
【0080】
3,3-((メチレンビス(ナフタレン-1,2-ジイル))ビス(オキシ))ビス(プロパン-1-オール)(化合物(7))のNMR分析結果を以下に示す。
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:8.08(2H,d,J=7.4Hz),7.78(2H,d,J=9.1Hz),7.75(2H,d,J=7.4Hz),7.48(2H,d,J=9.1Hz),7.25(2H,t,J=7.4Hz),7.20(2H,t,J=7.4Hz),4.83(2H,s),4.56(2H,t,J=5.8Hz),4.31(4H,t,J=5.8Hz),3.63(4H,q,J=5.8Hz),1.95(4H,q,J=5.8Hz).
【0081】
(((メチレンビス(ナフタレン-1,2-ジイル))ビス(オキシ))ビス(プロパン-3,1-ジイル)ビス(2-メチルアクリレート)(8)の合成)
窒素雰囲気下にて、1000mLの4径フラスコに、12.5g(29.9mmol)の3,3-((メチレンビス(ナフタレン-1,2-ジイル))ビス(オキシ))ビス(プロパン-1-オール)(化合物(7))を装入し、299mLのN,N-ジメチルホルムアミド、および150mLのテトラヒドロフランを加え、これらを溶解させた。得られた溶液を0℃まで冷却し、10.4mL(120mmol)のトリエチルアミン、および6.4mL(106mmol)のメタクリル酸クロライドを添加した。その後、室温で8.5時間攪拌し、反応液を得た。
次に、上記反応液に120mLの1M塩酸、および200mLの水を加え、10分間撹拌した。上記フラスコ内の混合物を酢酸エチル(300mL×2回)で抽出した。抽出液を合わせて500mLの飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(カラム:Biotage SfarD(Duo)200g、溶出溶媒:酢酸エチル-ヘキサン系グラジエント(酢酸エチル5%→31%))にて精製し、赤褐色結晶として、((メチレンビス(ナフタレン-1,2-ジイル))ビス(オキシ))ビス(プロパン-3,1-ジイル)ビス(2-メチルアクリレート)(下記反応式にて化合物(8)と示す。またこれを化合物Bとする)を4.93g得た(収率30%)。
化合物(7)から化合物(8)への合成スキームを以下に示す。
【0082】
【化21】
【0083】
化合物BのNMR分析結果を以下に示す。
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:8.17(2H,d,J=8.5Hz),7.69(4H,d,J=8.5Hz),7.25(4H,t,J=8.5Hz),7.24(2H,d,J=8.5Hz),6.08(2H,s),5.54(2H,s),4.91(2H,s),4.16(4H,t,J=6.3Hz),4.10(4H,t,J=6.3Hz),1.72-2.12(4H,m),1.93(6H,s).
【0084】
H-NMR測定>
合成例1および2における、合成スキーム中の途中段階および最終的に得られた化合物の構造は以下の示すH-NMRスペクトルにより分析した。
測定機器:日本電子社製ECZ400型核磁気共鳴装置または日本電子社製JNM-EX270型核磁気共鳴装置
溶媒:重水素化クロロホルムまたは重水素化ジメチルスルホキシド
サンプル濃度:10mg/0.7mL
パルス繰り返し時間:5.5秒
積算回数:8回
測定温度:25℃
【0085】
<実施例1>
(メチレンビスナフタレン樹脂組成物の調製)
サンプル瓶中に、メチレンビスナフタレン化合物として上記で得られた化合物A(下記式(X-1)で表される構造の化合物)10質量部、重合性化合物としてPOB-A(o-フェノキシベンジルアクリレート、共栄社化学株式会社製)90質量部、光重合開始剤としてOmnirad184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF社製)3質量部を加え、ミックスローターを用いて外観が均一になるまで混合し、樹脂組成物を得た。得られたメチレンビスナフタレン樹脂組成物には相分離は観察されなかった。
【0086】
【化22】
【0087】
<実施例2~3、比較例1~3>
メチレンビスナフタレン樹脂組成物の配合組成を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして評価を行なった。得られた結果を表1に示す。
【0088】
(硬化膜の作製)
Novec1720(3M社製フッ化シラン系コーティング剤)を用いて離型処理したEagle-XG(CORNING社製無アルカリガラス基板、70×70×0.7mmT)上に、0.5mLの各例で得られたメチレンビスナフタレン樹脂組成物を塗布し、厚みが250μmのスペーサーを介してもう一枚の離型処理したガラス基板で挟み込み、端部をクリップで固定し、積層体を得た。
得られた積層体の片面から無電極ランプ(Hバルブ)を用いて365nmにおける露光量が3000mJ/cmになるよう紫外線を照射した後、硬化物をガラス基板から離型させ、得られた硬化物を窒素ガス雰囲気下、80℃で30分間加熱して、厚さ250μmの硬化膜を得た。
得られた硬化膜の屈折率とアッベ数、硬化時の収縮率を下記に示す方法で測定した。得られた結果を表1に示す。
なお、比較例1については、メチレンビスナフタレン化合物が溶解せず、均一な樹脂組成物が得られなかったため、硬化膜を作成できなかった。
【0089】
<相溶性の評価>
メチレンビスナフタレン樹脂組成物の調製直後に、組成物が均一に溶解し相分離が見られなかった場合をA(良好)、溶解しない成分があり均一な組成物が得られなかった場合をB(不良)とした。
【0090】
<屈折率nDおよびアッベ数の測定>
得られた硬化膜の屈折率およびアッべ数をASTM D542に準拠して測定した。
まず、硬化膜の屈折率を、アッベ屈折計(DR-M4/1550、株式会社アタゴ製)を用いて測定した。干渉フィルターとしてD線(589nm、株式会社アタゴ製;RE-16501)、F線(486nm、株式会社アタゴ製;RE-16502)、C線(656nm、株式会社アタゴ製;RE-16503)、中間液としてRE-1196(モノブロモナフタレン、株式会社アタゴ製)を使用し、サンプル温度は25℃になるよう設定して測定を行なった。
得られた測定結果より、以下の計算式によってアッベ数を求めた。
式:アッベ数=(nD-1)/(nF-nC)
nD:D線における屈折率
nF:F線における屈折率
nC:C線における屈折率
【0091】
<硬化収縮率の測定>
得られたメチレンビスナフタレン樹脂組成物の比重dを、JIS 8804:2012に基づいて、比重瓶を用いて測定した。また、硬化膜の比重dをアルキメデス法(JIS 8807:2012)により測定した。得られた比重dおよび比重dの値を用い、下記式により硬化収縮率(%)を算出した。
式:硬化収縮率(%)=(1-d/d)×100
【0092】
【表1】
【0093】
<実施例4および比較例4>
表1で得られた結果を元にして、外挿法を用いてメチレンビスナフタレン化合物を単独で硬化させた場合の屈折率と硬化収縮率を推算した。得られた結果を表2に示す。
外挿に用いたメチレンビスナフタレン化合物の配合重量部と屈折率のプロットを図1に示す。また、メチレンビスナフタレン化合物の配合重量部と硬化収縮率のプロットを図2に示す。
【0094】
【表2】
図1
図2