(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126767
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】吸収性物品用スパンレース不織布及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 1/495 20120101AFI20240912BHJP
D04H 1/425 20120101ALI20240912BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
D04H1/495
D04H1/425
A61F13/15 355Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035381
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高津 陽大
(72)【発明者】
【氏名】寒川 裕太
【テーマコード(参考)】
3B200
4L047
【Fターム(参考)】
3B200BA02
3B200BA07
3B200BA08
3B200BA09
3B200BA10
3B200BB03
3B200DC02
3B200DC04
3B200DC05
3B200DC06
3B200EA07
3B200EA27
4L047AA08
4L047AB02
4L047BA04
4L047CA10
4L047CA12
4L047CC04
4L047CC05
4L047EA19
(57)【要約】
【課題】クッション性に優れる吸収性物品用スパンレース不織布を提供すること。
【解決手段】本発明の吸収性物品用スパンレース不織布1は、第1面1a及びその反対側に位置する第2面1bを有し、少なくとも第1面1aに複数の凸部2が間欠配置されているとともに、隣り合う凸部2,2どうしの間に凹部3が配置されている。不織布1は、凸部2の繊維配向度が50%以上60%以下である点で特徴付けられる。凹部3の底部には、不織布1を厚み方向に貫通する開孔部4が複数形成されていてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品用スパンレース不織布であって、
第1面及びその反対側に位置する第2面を有し、少なくとも第1面に複数の凸部が間欠配置されているとともに、隣り合う該凸部どうしの間に凹部が存在し、
前記凸部の下記方法により測定される繊維配向度が50%以上60%以下である、吸収性物品用スパンレース不織布。
<繊維配向度の測定方法>
電子顕微鏡を用いて、測定試料である前記不織布を前記第1面より平面視した状態で観察し、測定対象部位である前記凸部の観察画像を取得する。取得した前記観察画像に、互いに平行な2本の第1基準線と該2本の第1基準線に直交する2本の第2基準線とからなる正方形を付す。前記第1基準線の延在方向は、測定試料の不織布の製造時の機械方向に一致させ、前記第2基準線の延在方向は、該機械方向に直交する垂直方向に一致させる。前記4本の基準線の長さはそれぞれ0.5mmとする。前記4本の基準線それぞれについて、当該基準線を通過する繊維の数を数え、前記2本の第1基準線についての該数の総和を「第1繊維数」、前記2本の第2基準線についての該数の総和を「第2繊維数」とする。両繊維数のうち、数が多い方をA、数が少ない方をBとし、下記式により繊維配向度を算出する。
繊維配向度(%)=[A/(A+B)]×100
同一の測定試料について、3か所の前記観察画像を取得し、各該観察画像に基づいて繊維配向度を算出し、その算出された複数の繊維配向度の平均値を、当該測定試料の測定対象部位の繊維配向度とする。
【請求項2】
前記凹部の底部に、前記不織布を厚み方向に貫通する開孔部が複数形成されており、
前記第1面の面積に対する、前記開孔部の該第1面側の開孔面積の合計の割合が、20%以上50%以下である、請求項1に記載の吸収性物品用スパンレース不織布。
【請求項3】
前記開孔部の前記第1面側の開孔面積が1mm2以上5mm2以下である、請求項2に記載の吸収性物品用スパンレース不織布。
【請求項4】
前記凸部と平面視で重なる部位の坪量と、前記凹部の底部における前記開孔部の非形成部と平面視で重なる部位の坪量との比率が、前者/後者として、3以上5以下である、請求項2又は3に記載の吸収性物品用スパンレース不織布。
【請求項5】
セルロース繊維を含有する、請求項1~4の何れか1項に記載の吸収性物品用スパンレース不織布。
【請求項6】
吸収性物品用スパンレース不織布の製造方法であって、
複数の突起が形成された凹凸面を有する凹凸支持体の該凹凸面に、ウェブを載置した状態で、該ウェブに水流を噴射することで、該ウェブに含有される繊維どうしを交絡させるとともに、該ウェブに前記凸部を形成する水流噴射工程を有し、
前記凹凸支持体は、該凹凸支持体の前記ウェブが載置される面を形成するベースプレートと、該ベースプレートにおける前記凹凸面に対応する面に配置された複数の前記突起と、該ベースプレートを厚み方向に貫通する複数の貫通孔とを有し、該突起及び該貫通孔は該凹凸面に散在しており、
前記貫通孔の前記凹凸面側の開孔面積が3.5mm2以上20mm2以下であり、
前記ベースプレートの厚みが2.5mm以上である、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の構成部材として好適なスパンレース不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
スパンレース不織布は、繊維集合体であるウェブに水流を噴射して、該ウェブに含有される繊維どうしを交絡させる工程を経て製造されるものである。スパンレース不織布は、他の不織布に比べて柔軟性、風合い等に優れており、その特長を活かして、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品の構成部材として使用されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献2には、表面の凹凸状態の保持性が良好で拭き布として好適なスパンレース不織布として、綿繊維を主体とし、多数の凸部と、該凸部間を繋ぐ凹部とを具備し、該凸部1個の面積が0.5~6mm2であるものが記載されている。特許文献2に記載のスパンレース不織布は、ウェブを目開き6~10メッシュの粗目織物よりなる孔開き支持体に載置した状態で、該ウェブに水流を噴射し、該孔開き支持体の開孔部に該ウェブの構成繊維を移動させながら、該構成繊維どうしを交絡させる工程を経て製造される。
【0004】
特許文献3には、開孔部を有するスパンレース不織布の製造装置として、ウェブを搬送するコンベアベルトと、該コンベアベルト上に配置される支持体とを備え、該支持体上にウェブを載置した状態で該コンベアベルトによりウェブを搬送しつつ、該ウェブに水流を噴射するように構成されたものが記載されている。特許文献3に記載の前記支持体は、ウェブの載置面に配置された複数のピラミッド状の突起と、該突起の周囲に配置され該支持体を厚み方向に貫通する複数の孔とを有している。特許文献3に記載の装置により製造されたスパンレース不織布は、同文献の
図1に示されているように、製造時に前記支持体の前記突起に対応した位置に比較的大きな開孔部を有するもので、全体的に凹凸感に乏しく実質的に平坦であり、凹凸不織布とは言い難いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2020-536707号公報
【特許文献2】特開2003-183968号公報
【特許文献3】特表平8-502100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スパンレース不織布は、柔軟性、風合い等に優れる反面、ウェブに高圧水流を吹き付ける工程を経て製造されることに起因して、比較的厚みの薄いものが多く、クッション性の点で改善の余地がある。吸収性物品用スパンレース不織布には、クッション性に優れることが要望されている。
【0007】
本発明の課題は、クッション性に優れる吸収性物品用スパンレース不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1面及びその反対側に位置する第2面を有し、少なくとも第1面に複数の凸部が間欠配置されているとともに、隣り合う該凸部どうしの間に凹部が配置されている吸収性物品用スパンレース不織布である。
本発明の吸収性物品用スパンレース不織布の一実施形態では、前記凸部の下記方法により測定される繊維配向度が50%以上60%以下であることが好ましい。
【0009】
また本発明は、前記の本発明の吸収性物品用スパンレース不織布の製造方法であって、複数の突起が形成された凹凸面を有する凹凸支持体の該凹凸面に、ウェブを載置した状態で、該ウェブに水流を噴射することで、該ウェブに含有される繊維どうしを交絡させるとともに、該ウェブに前記凸部を形成する水流噴射工程を有している、製造方法である。
本発明の吸収性物品用スパンレース不織布の製造方法の一実施形態では、前記凹凸支持体は、該凹凸支持体の前記ウェブが載置される面を形成するベースプレートと、該ベースプレートにおける前記凹凸面に対応する面に配置された複数の前記突起と、該ベースプレートを厚み方向に貫通する複数の貫通孔とを有し、該突起及び該貫通孔は該凹凸面に散在していることが好ましい。
本発明の吸収性物品用スパンレース不織布の製造方法の一実施形態では、前記貫通孔の前記凹凸面側の開孔面積が3.5mm2以上20mm2以下であることが好ましい。
本発明の吸収性物品用スパンレース不織布の製造方法の一実施形態では、前記ベースプレートの厚みが2.5mm以上であることが好ましい。
本発明の他の特徴、効果及び実施形態は、以下に説明される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クッション性に優れる吸収性物品用スパンレース不織布が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の吸収性物品用スパンレース不織布の第1面側の模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のA-A線断面(機械方向MD及び厚み方向に沿う断面)を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る繊維配向度の測定方法の説明図であり、電子顕微鏡による不織布の観察画像の模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の吸収性物品用スパンレース不織布の製造方法の実施に使用可能な装置の一実施形態の要部(水流交絡装置)の概略構成図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す凹凸支持体の凹凸面(ウェブが載置される面)側の模式的な斜視図である。
【
図6】
図6(a)は、
図5に示す凹凸支持体の凹凸面(ウェブが載置される面)側の模式的な平面図、
図6(b)は、
図6(a)のB-B線断面(機械方向MD及び厚み方向に沿う断面)を模式的に示す断面図、
図6(c)は、
図6(a)のC-C線断面(垂直方向CD及び厚み方向に沿う断面)を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7(a)~
図7(c)は、それぞれ、
図4に示す装置を用いた水流噴射工程の一実施形態を模式的に示す図であり、凹凸支持体の機械方向及び厚み方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
【0013】
図1及び
図2には、本発明の吸収性物品用スパンレース不織布(以下、単に「不織布」とも言う。)の一実施形態である不織布1が示されている。不織布1は、第1面1a及びその反対側に位置する第2面1bを有し、少なくとも第1面1aに複数の凸部2が間欠配置されているとともに、隣り合う凸部2,2どうしの間に凹部3が存在している。凹部3は、複数の凸部2と、該複数の凸部2どうしを繋ぐ繊維層(後述する低坪量部6)とで画成された空間部であり、該繊維層が凹部3の底部を形成する。
【0014】
第1面1aは、凸部2と凹部3とによる凹凸形状を有する凹凸面である。
一方、第2面1bは、実質的に平坦である。ここで言う「実質的に平坦」には、凹凸の無い平坦な形態と、第1面1aに比べて凹凸の程度が明確に小さい微小な凹凸が存在する形態とが包含される。後者の形態において、第2面1bにおける凸部2と平面視で重なる部位(後述する低坪量部6の配置位置)には、凸部2とは反対側に凹の微小窪み部(図示せず)が存在し得る。前記微小窪み部は、典型的には、窪み深さが一定ではなく、凸部2の頂部と平面視で重なる部位に最大深さを有し、その最大深さを有する部位から該微小窪み部の開口縁部に向かうに従って窪み深さが順次減少する。
【0015】
凸部2は、内部が繊維で満たされており、中実構造を有する。
凸部2は、ドーム状をなし、第1面1aの平面視において円形状を有している。本発明では、凸部2の形状は特に制限されず、任意の形状を選択し得る。また、複数の凸部2どうしで形状が異なっていてもよい。
【0016】
不織布1は、凸部2の下記方法により測定される繊維配向度が50%以上60%以下である点で特徴付けられる。前記繊維配向度は、不織布1の平面視における互いに直交する二方向(MD及びCD)における繊維の配列(延在)方向のばらつき程度を示すもので、「該二方向のうちの一方に配列する繊維と他方に配列する繊維との総数に占める、該二方向のうちで相対的に繊維の数が多い方向に延びる繊維の数の割合」である。
【0017】
<繊維配向度の測定方法>
電子顕微鏡を用いて、測定試料の不織布をその一方の面より平面視した状態で観察し、測定対象部位の観察画像を取得する。測定試料が本発明の不織布の場合、不織布1を例に取ると、測定対象部位は第1面1aの凸部2であるので、第1面1a側からの凸部2の観察画像を取得する。取得した前記観察画像に、互いに平行な2本の第1基準線と該2本の第1基準線に直交する2本の第2基準線とからなる正方形を付す。前記第1基準線の延在方向は、測定試料の不織布の製造時の機械方向(MD;Machine Direction)に一致させ、前記第2基準線の延在方向は、該機械方向に直交する垂直方向(CD;Cross machine Direction)に一致させる。前記の4本の基準線の長さはそれぞれ0.5mmとする。前記4本の基準線それぞれについて、当該基準線を通過する繊維の数(以下、「通過繊維数」とも言う。)を数え、前記2本の第1基準線についての通過繊維数の総和を「第1繊維数」、前記2本の第2基準線についての通過繊維数の総和を「第2繊維数」とする。両繊維数のうち、数が多い方をA、数が少ない方をBとし、下記式により繊維配向度を算出する。
繊維配向度(%)=[A/(A+B)]×100
同一の測定試料について、3か所の前記観察画像を取得し、各該観察画像に基づいて繊維配向度を算出し、その算出された複数の繊維配向度の平均値を、当該測定試料の測定対象部位(不織布1の凸部2)の繊維配向度とする。
【0018】
図3には、前記<繊維配向度の測定方法>において取得した、電子顕微鏡による不織布の観察画像の一例である観察画像50が模式的に示されている。観察画像50には、繊維Fbが複数存在し、各繊維Fbは、MD及びCDを含む様々な方向に延在している。また、観察画像50には、MDに延在する互いに平行な2本の第1基準線51と、CDに延在する互いに平行な2本の第2基準線52とが付されており、これら4本の基準線51,52によって、一辺の長さが0.5mmの正方形が形成されている。各基準線51,52上に付されている「黒丸」は、当該基準線と繊維Fbとの交点53を示している。
前記第1繊維数は、2本の第1基準線51,51それぞれと重なる交点53の総数であり、前記第2繊維数は、2本の第2基準線52,52それぞれと重なる交点53の総数である。両繊維数は、それぞれ、延べ数である。例えば、1本の繊維Fbが1本の基準線(第1基準線51又は第2基準線52)を2回通過している場合において、該1本の基準線の通過繊維数を数える際には、該1本の繊維Fbの通過数「2」を該1本の基準線の通過繊維数「2」として数える。また、1本の繊維Fbが複数の基準線(第1基準線51及び/又は第2基準線52)を通過する場合において、各基準線の通過繊維数を数える際には、各基準線それぞれにおいて該1本の繊維Fbの通過数を当該基準線の通過繊維数として数える。また、繊維Fbが第1基準線51と第2基準線52との交点(前記正方形の角部)を通過する場合は、通過繊維数として数えないこととする。
【0019】
本明細書において「MD」は、不織布の製造時の機械方向、すなわち当該不織布又はその原材料若しくは中間品(例えばウェブ)の走行方向を指す。
【0020】
凸部2においてMDに配列する繊維とCDに配列する繊維とが同数である場合の該凸部2の繊維配向度は50%である。また、凸部2においてMD及びCDの何れか一方のみに繊維が配列している場合の該凸部2の繊維配向度は100%である。つまり、繊維配向度の数値が50%に近いほど、凸部2では、MDに配列(延在)する繊維数とCDに配列(延在)する繊維数との差が少なく、繊維配向の偏りが少ない。
不織布1は、凸部2の繊維配向度が50%以上60%以下であり、凸部2における繊維配向の偏りが比較的少ないため、クッション性に優れる。これは、凸部2において繊維どうしの接触点が比較的多く、凸部2自体がクッション性に優れることによるものと推察される。このことは、後述する実施例によって実証されている。
凸部2の繊維配向度は、好ましくは50%以上、より好ましくは53%以上、そして、好ましくは60%以下、より好ましくは58%以下である。
【0021】
不織布1の凸部2の繊維配向度を前記特定範囲に設定することは、不織布1の製造工程で実施される水流交絡処理の条件を適宜調整することで調整可能である。すなわち、不織布1に代表される本発明の不織布は、該不織布の前駆体であるウェブ(繊維間未結合の繊維集合体)に水流を噴射する水流交絡処理を施し、該ウェブの構成繊維を再配列・再絡合することによって製造されるところ、該水流交絡処理の条件、具体的には例えば、水流の水圧、該水流交絡処理時に水流の吹き付け側とは反対側からウェブを支持する支持体の形状等を適宜調整することで、最終的に得られる不織布1の凸部2の繊維配向度を前記特定範囲に設定することが可能である。水流交絡処理に供されるウェブは、典型的には、従来公知のカード法によって形成されるところ、カード法によって形成されたウェブの前記方法により測定される繊維配向度は、通常61~80%である。後述する本発明の不織布の製造方法は、前記支持体の特徴的な構成により、カード法によって形成されたウェブを用いて、不織布1を効率良く製造することができる。
【0022】
前記<繊維配向度の測定方法>の測定試料は、以下の手順で作製する。
まず、不織布試料として、測定対象の不織布(例えば不織布1)から平面視5cm四方の領域を切り出したものを用意する。測定対象の不織布の面積が小さい等の理由で前記領域を確保できない場合は、できるだけ大きな面積の領域を切り出して不織布試料とする。
次に、接着剤を用いて、前記不織布試料の両面(例えば不織布1から切り出したものであれば、第1面1a及び第2面1b)それぞれに台紙を固定し、不織布試料の両面に台紙が接着固定された構造の測定試料を得る。
【0023】
なお、測定対象の不織布が、吸収性物品等の複数の部材からなる物品において接着剤によって他の部材と接着されている場合は、その接着部の接着力を低下させてから該不織布を取り出すことが好ましい。前記の接着力の低下方法としては、例えば、有機溶媒を用いて接着剤を除去する方法、接着部にコールドスプレーを吹き付ける方法を例示できる。この手法は、本明細書中の全ての測定において適宜適用可能である。
【0024】
前記<繊維配向度の測定方法>において、観察画像の取得に用いる電子顕微鏡としては、例えば、走査型電子顕微鏡を用いることができる。前記走査型電子顕微鏡の具体例として、日本電子株式会社製、商品名「JCM-5100」を例示できる。電子顕微鏡による不織布の観察方法の一例として、不織布1を第1面1aより平面視した状態で、倍率100倍で観察する方法が挙げられる。
前記<繊維配向度の測定方法>については、特開2019-44321号公報に記載の繊維配向度の測定方法を適宜適用できる。
【0025】
図示の形態では、凹部3の底部に、不織布1を厚み方向に貫通する開孔部4が複数形成されている。開孔部4は、不織布1の構成繊維が存在しない部位である。開孔部4は、不織布の如き繊維集合体の構成繊維間に自然に形成され、微細な孔径を有するいわゆる繊維間空隙とは異なり、水流交絡処理等の加工により意図的に形成される孔であり、該繊維間空隙よりも遥かに大きい開孔面積を有している。
複数の開孔部4は、それぞれ、平面視において一方向(方向X)に長い楕円形状を有している。本発明では、開孔部4の形状は特に制限されず、任意の形状を選択し得る。また、複数の開孔部4どうしで形状が異なっていてもよい。
【0026】
不織布1では、
図1に示すように、第1面1aにおいて、凸部2と開孔部4とが方向Xに交互に配置されているとともに、方向Xと直交する方向Yに交互に配置されている。方向Xは、不織布1のMDに一致し、方向Yは、CDに一致する。
【0027】
不織布1の立体形状は、ウェブに水流交絡処理を施すことによって形成されている。前記立体形状は、少なくとも凸部2及び凹部3の底部を含んで構成され、図示の形態では更に開孔部4を含む。また、不織布1の第2面1bに存在し得る前記微小窪み部も前記立体形状に含まれる。例えば、図示の形態の不織布1の製造方法における水流交絡処理では、典型的には、ウェブにおける凹部3の底部及び開孔部4の形成予定部位の繊維が、水流によって凸部2の形成予定部位に移動し、その結果、該繊維の移動元に凹部3の底部又は開孔部4が形成され、該繊維の移動先に凸部2が形成される。前記水流噴射工程では例えば、
図5に示す凹凸支持体20の凹凸面である第1面20aにウェブ11を載置した状態で、該第1面20a側から凹凸支持体20の第2面20b側に向けて、すなわち凹凸支持体20上に載置されたウェブ11における第2面1bに対応する面側から第1面1aに対応する面側に向けて、水流を噴射することで、ウェブ11の構成繊維を再配列・再絡合する(
図7参照)。このような繊維の再配列・再絡合によって形成された凸部2、凹部3の底部及び開孔部4は、それぞれ、それ自体でその形態を維持し得る。
【0028】
不織布1は、構成繊維の坪量が不均一であり、相対的に坪量が大きい高坪量部5と、相対的に坪量が小さい低坪量部6とを有する。図示の形態では更に、坪量がゼロである開孔部4を有する。凸部2は、高坪量部5における不織布1の第1面1aに存在する部分(第1面1aの表面から突出する部分)であり、凹部3の底部は、低坪量部6からなる。なお、不織布1は、典型的には、繊維のみから構成されるところ、その場合、「不織布の坪量」は「不織布の構成繊維の坪量」と同じである。
【0029】
第1面1aの面積に対する、開孔部4の第1面1a側(凸部配置面側)の開孔面積の合計の割合(以下、「開孔部面積率」とも言う。)、すなわち「不織布1の第1面1aの面積を100とした場合の、第1面1aに形成された全ての開孔部4の第1面1a側の開孔面積の合計値の割合」は、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、そして、好ましくは50%以下、より好ましくは48%以下である。
凸部2(高坪量部5)は前述したとおり、不織布1の前駆体であるウェブの水流交絡処理において、該ウェブにおける開孔部4の形成予定部位から移動してきた繊維を含んで構成され得るものであるところ、開孔部面積率が大きいことは、不織布1の構成繊維の凸部2への偏在の程度が大きいことを示す。そして、凸部2に繊維が比較的多く存在することは、不織布1のクッション性の向上にとってプラスである。したがって、不織布1のクッション性の向上の観点からは、開孔部面積率は大きいほど好ましい。一方、開孔部面積率が大きすぎると、不織布1の強度の低下等が懸念される。前記の開孔部面積率の好ましい範囲は、このような観点から設定されたものである。
【0030】
開孔部4の第1面1a側の開孔面積は特に制限されないが、前記の開孔部面積率の好ましい範囲と同様の観点から、好ましくは1mm2以上、より好ましくは2mm2以上、更に2.3mm2以上、そして、好ましくは5mm2以下、より好ましくは4mm2以下、更に3mm2以下である。1個の開孔部4の開孔面積が前記の好ましい範囲にあることで、不織布1に実用上十分な強度を付与しつつ、不織布1のクッション性を一層向上させることが可能となる。開孔部4の開孔面積は以下の方法により測定される。
【0031】
<不織布の開孔部の開孔面積の測定方法>
マイクロスコープを用いて測定対象の不織布(例えば不織布1)の一方の面を観察し、その観察画像に基づいて開孔部の開孔面積を測定する。本測定に好適なマイクロスコープの一例として、株式会社キーエンス製「VHX6000」が挙げられる。
例えば、不織布1の開孔部4の第1面1a側の開孔面積をVHX6000によって測定する場合、VHX6000の台座上に不織布1をその第1面1a側が上になるように載置し、VHX6000の観察倍率を50倍にして不織布1にピントを合わせ、VHX6000の内蔵機能を用いて開孔部4を特定するとともにその開孔面積を測定する。具体的には、まず、VHX6000が内蔵する自動面積計測機能によって、開孔部4の縁を判定する。斯かる判定処理では、しきい値を0として、不織布1における輝度が高い部分(白色部分)を抽出し、その抽出部分(白色部分)と抽出されない部分との境界を開孔部4の縁と判定する。そして、前記抽出部分(白色部分)の面積(単位:mm2)を測定し、その測定値を開孔部4の開孔面積とする。
【0032】
凸部2と平面視で重なる部位(すなわち高坪量部5)の坪量Pと、凹部3の底部における開孔部4の非形成部と平面視で重なる部位(すなわち低坪量部6)の坪量Qとの比率は、坪量P/坪量Qとして、好ましくは2.8以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは3.3以上、そして、好ましくは5以下、より好ましくは4.5以下である。前記比率が前記の好ましい範囲にあることで、凸部2に繊維が適度に偏在するようになり、不織布1は、クッション性と強度とのバランスに一層優れたものとなり得る。
【0033】
不織布1の各部の坪量は特に制限されないが、クッション性の向上、実用上十分な強度の確保等の観点から、以下のように設定することが好ましい。
高坪量部5の坪量Pは、低坪量部6の坪量Qに比べて大きいことを前提として、好ましくは30g/m2以上、より好ましくは50g/m2以上、そして、好ましくは110g/m2以下、より好ましくは90g/m2以下である。
低坪量部6の坪量Qは、高坪量部5の坪量Pに比べて小さいことを前提として、好ましくは10g/m2以上、より好ましくは15g/m2以上、そして、好ましくは40g/m2以下、より好ましくは35g/m2以下である。
高坪量部5、低坪量部6等の不織布の一部の坪量は以下の方法により測定される。
【0034】
<不織布の一部の坪量の測定方法>
測定対象の不織布(例えば不織布1)から平面視5cm四方の領域を切り出して測定試料とする。測定対象の不織布の面積が小さい等の理由で前記領域を確保できない場合は、できるだけ大きな面積の領域を切り出して測定試料とする。測定試料から測定対象部分を切り出し、電子天秤を用いて、該測定対象部分の質量をg単位で測定し、その測定値を該測定対象部分の面積で割って、該測定対象部分の坪量を算出する。以上の操作を3回行い、得られた3つの測定値(測定対象部分の坪量)の平均値を、当該測定対象部分の坪量とする。
不織布1の高坪量部5及び低坪量部6の坪量を測定する場合を例に取って更に説明する。先ず、不織布1から切り出した5cm四方の測定試料を、ハサミ等の切断具を用いて、高坪量部5(凸部2を含む部分)と低坪量部6(凹部3の底部を含む部分)とに切り分ける。このとき、高坪量部5と低坪量部6との境界を切断具で切断するところ、該境界は、高坪量部5の凸部2における凹部3からの立ち上がりの起点2S(
図2参照)である。次に、電子天秤を用いて、切り分けられた高坪量部5及び低坪量部6それぞれの総質量を測定する。また別途、下記<不織布の凸部及び底部の総面積の測定方法>により、「高坪量部5(凸部2)の総面積」(後述の「凸部総面積」)、「低坪量部6(凹部3の底部における開孔部4の非形成部と平面視で重なる部位)の総面積」(後述の「底部総面積」)をそれぞれ測定する。そして、高坪量部5の総質量をその総面積(凸部総面積)で割って、高坪量部5の坪量Pを算出する。また、低坪量部6の総質量をその総面積(底部総面積)で割って、低坪量部6の坪量Qを算出する。
【0035】
<不織布の凸部及び底部の総面積の測定方法>
本測定方法は、下記(1)~(8)の手順で実施される。
(1)測定対象の不織布(例えば不織布1)から平面視5cm四方の領域を切り出して測定試料とする。測定対象の不織布の面積が小さい等の理由で前記領域を確保できない場合は、できるだけ大きな面積の領域を切り出して測定試料とする。
(2)測定試料を、その凹凸面を上にして静置する(凹凸面を測定面とする)。例えば、測定試料が不織布1から切り出されたものであれば、凹凸面である第1面1aが上方を向くように不織布1を静置する。
(3)測定試料の凹凸面に対して、高精度形状計測システムKS-1100(商品名、株式会社キーエンス製)を用いて、レーザー光を照射して無荷重状態(荷重をかけない自然状態)での該測定面の表面形状(測定面の面方向に沿って起伏する厚みの高低形状)を測定し、画像を取り込む。その際、測定範囲1cm2(測定ピッチ:縦20μm、横20μm)、移動速度10cm/秒とする。
(4)測定試料の凹凸面に質量300gの透明のアクリル製平板を載置し、12g/cm2の加圧をかけた状態で前記(3)と同様の方法により、該凹凸面の表面形状を測定し画像を取り込む。前記平板は、測定試料の凹凸面の全域を被覆可能な大きさを有するものを使用する。
(5)前記(3)及び(4)にて取り込んだ画像に対し、形状解析アプリケーションKS-Analyzer(商品名、株式会社キーエンス製)を用いて解析を行う。具体的には、無荷重状態から3kPa加圧をかけた状態で厚みが変化した部分(最小測定可能スケール0.01μm)を抽出し二値化処理して、その部分の表面画像を得る。
(6)前記(5)で得た「厚みが変化した部分」の表面画像を、画像処理ソフトウエアNewQube(Ver.4.22、商品名、株式会社ネクサス製)を用いて取り込んで処理を行い、その面積を測定する。前記の厚みが変化した部分は、測定試料の凹凸面の凸部(不織布1であれば凸部2(高坪量部5))であり、該部分について測定された面積は、「測定試料の凹凸面に存在する全ての凸部の面積の総和」(以下、「凸部総面積」とも言う。)に相当する。
(7)測定試料の凹凸面とは反対側の面を測定面として、測定試料の開孔部の面積を測定する。例えば、測定試料が不織布1から切り出されたものであれば、第2面1bが上方を向くように不織布1を静置し、前記<不織布の開孔部の開孔面積の測定方法>に準じて、第2面1bに存在する全ての開孔部4の第2面1b側の開孔面積の合計を測定する。この測定値は、「測定試料の凹凸面とは反対側の面に存在する全ての開孔部の面積の総和」(以下、「開孔部総面積」とも言う。)に相当する。
(8)下記式により、測定試料の凹部の底部の面積(以下、「底部総面積」とも言う。)を算出する。下記式中の「不織布の面積」は、測定試料の凹凸面(測定試料が不織布1であれば第1面1a)又はその反対側の面(測定試料が不織布1であれば第2面1b)の平面視における面積である。 底部総面積=不織布の面積-凸部総面積-開孔部総面積
【0036】
不織布1の坪量は、外観、強度、クッション性等の諸特性のバランスの観点から、好ましくは15g/m2以上、より好ましくは25g/m2以上、そして、好ましくは100g/m2以下、より好ましくは80g/m2以下である。
【0037】
不織布1の見掛け厚みAT(
図2参照)は特に制限されないが、外観、強度、クッション性、吸収性物品などの商品形態における携帯性等の諸特性のバランスの観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。不織布1の見掛け厚みATは、
図2に示すように、凸部2の頂部と第2面20bとの間の厚み方向に沿う長さを指し、不織布1が中空部などの繊維非存在部を有する場合は、該繊維非存在部の厚みを含み得る。不織布の見掛け厚みは以下の方法により測定される。
【0038】
<不織布の見掛け厚みの測定方法>
測定対象の不織布(例えば不織布1)から平面視5cm四方の領域を切り出して測定試料とする。測定対象の不織布の面積が小さい等の理由で前記領域を確保できない場合は、できるだけ大きな面積の領域を切り出して測定試料とする。測定試料に0.05kPaの荷重をかけた状態で、レーザー厚み計(例えば、株式会社キーエンス製「LK-080」)を用いて測定試料の厚みを測定する。以上の操作3回行い、得られた3つの測定値の平均値を、当該不織布の見掛け厚みとする。
【0039】
図示の形態の不織布1は単層構造であるが、本発明の不織布は、2層以上の繊維層が厚み方向に積層された積層構造であってもよい。
本発明の不織布の構成繊維としては、吸収性物品用スパンレース不織布の構成繊維として従来使用されているものを特に制限無く用いることができる。不織布の構成繊維として典型的なものは、熱可塑性繊維である。
【0040】
本発明の不織布は、セルロース繊維を含有することが好ましい。不織布にセルロース繊維が含有されていると、不織布の使用感等の品質向上効果に加えて、環境に対する負荷の低減が期待でき、更には、熱可塑性繊維のような合成繊維を使用せずに天然繊維を使用することから想起される商品イメージの向上効果等が期待できる。
セルロース繊維は熱可塑性に乏しいこと等もあって、これを用いた従来の不織布は、熱可塑性繊維を用いた不織布に比べて、凹凸、開孔部等の立体形状を賦形し難く、立体感、クッション性に乏しいものであった。しかしながら、本発明の不織布は、凸部の繊維配向度が前記特定範囲に設定されていることに起因して、セルロース繊維を使用することに起因するデメリットが発生し難く、セルロース繊維を使用するメリットを十分に活かすことが可能である。
【0041】
本発明の不織布に使用可能なセルロース繊維としては、この種の布製品に使用可能なものを特に制限無く用いることができる。セルロース繊維としては、例えば、綿花から採取されるコットン繊維等の天然セルロース繊維や、レーヨン、キュプラ、リヨセル、テンセル等の再生セルロース繊維や、パルプ等が挙げられる。これらのセルロース繊維の中でも、コットン繊維、レーヨン、リヨセル、テンセルが好ましく、吸液性を向上させる観点から、コットン繊維がより好ましい。本発明の不織布は、2種類以上のセルロース繊維を含有してもよい。
【0042】
本発明の不織布において、セルロース繊維の含有量は特に制限されないが、セルロース繊維を含有することによる作用効果(品質向上、環境負荷低減等)を一層確実に奏させるようにする観点から、該不織布の全質量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、100質量%すなわち該不織布の全部がセルロース繊維であってもよい。
【0043】
本発明の不織布は、セルロース繊維とそれ以外の他の繊維とを含有してもよい。その場合、不織布における他の繊維の分布形態は特に制限されず、例えば、セルロース繊維とともに不織布の全体に均一に分布していてもよく、あるいは偏在していてもよい。後者の具体例として、不織布が、セルロース繊維を主体とする第1の層と、他の繊維(例えば熱可塑性繊維)を含有する第2の層とを有し、両層が厚み方向に積層された形態が挙げられる。
【0044】
前記他の繊維の一例として、熱可塑性樹脂を主体とする熱可塑性繊維が挙げられる。不織布に熱可塑性繊維を含有させることで、強度の向上等が期待できる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。熱可塑性繊維は、1種類の熱可塑性樹脂又は2種類以上の熱可塑性樹脂を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維でもよく、あるいは複合繊維でもよい。複合繊維は、典型的には、成分の異なる2種類以上の熱可塑性樹脂を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られるもので、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造を有し、単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維の形態には、芯鞘型、サイドバイサイド型等があり、特に制限されない。
【0045】
本発明の不織布にセルロース繊維及び熱可塑性繊維を含有させる場合、熱可塑性繊維の含有量は、セルロース繊維による効果を低減させずに、熱可塑性繊維による効果を得る観点から、該不織布の全質量に対して、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは75質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
【0046】
本発明の不織布は、典型的には、吸水性、通気性、液透過性を有するので、そのような特性が要求される用途に好適である。本発明の不織布の用途の一例として、着用物品の一種であり、尿、汗等の体液を吸収保持する機能を有する吸収性物品が挙げられる。吸収性物品の具体例として、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッドが挙げられる。不織布1を着用物品に用いる場合、凸部2が間欠配置された凹凸面である第1面1aが、当該着用物品の着用者の肌と対向する肌対向面となるようにすると、該凹凸面の肌触りの良さが活かされるため好ましい。
【0047】
次に、本発明の不織布の製造方法について説明する。
図4には、本発明の不織布の製造方法の実施に使用可能な装置の一実施形態である製造装置10の要部(水流交絡装置12)が示されている。製造装置10を用いた不織布の製造方法では、前述の不織布1を製造する。
【0048】
製造装置10は、水流交絡装置12を備える。水流交絡装置12は、セルロース繊維を含有するウェブ11に水流交絡処理を施して不織布1を製造する装置であり、ウェブ11を搬送する搬送機構13と、搬送機構13によって搬送中のウェブ11が載置される凹凸支持体20と、凹凸支持体20に載置されたウェブ11に水流を噴射する水流ノズル17とを備える。
【0049】
搬送機構13は、回転軸回りに回転可能に支持された複数のロール14と、これら複数のロール14に架け渡され、水流ノズル17の下方を通って矢印R方向に周回する無端状のコンベアベルト15と、コンベアベルト15の周回軌道内に設置された吸引手段16とを備える。コンベアベルト15は、水流ノズル17から噴射された水が透過可能な構成を有しており、例えば、金属製又は合成樹脂製の線材からなる平織りの網状支持体、パンチングプレート等の多孔質支持体であり得る。吸引手段16は、コンベアベルト15を挟んで水流ノズル17と対向するように配置され、水流ノズル17から噴射されコンベアベルト15を透過した水を吸引可能に構成されている。
【0050】
水流ノズル17は、搬送機構13の上方に配置された水流噴射装置18におけるコンベアベルト15との対向面(下面)に配置されている。水流噴射装置18におけるコンベアベルト15との対向面においては、複数の水流ノズル17が、該対向面の下方を搬送中のウェブ11のCDの全長にわたって間欠配置されて、CDに延びるノズル列を形成し、且つ該ノズル列がMDに複数間欠配置されている。前記ノズル列がMDに好ましくは2列~5列、より好ましくは2列~4列間欠配置されている。これら一群の水流ノズル17により、搬送機構13によってMDに搬送中のウェブ11のCDの全域にわたって水流30を吹き付けることが可能である。
【0051】
搬送機構13、水流噴射装置18等の、水流交絡装置12における凹凸支持体20以外の構成については、従来公知の水流交絡装置におけるものと同様に構成することができる。
【0052】
以下、製造装置10の主たる特徴部分の1つである凹凸支持体20について説明する。
凹凸支持体20は、
図5及び
図6に示すように、複数の突起22が形成された凹凸面である第1面20aと、その反対側に位置する第2面20bとを有し、水流交絡装置12によるウェブ11の水流交絡処理では、第1面20aにウェブ11が直接載置される。
図示の形態では、凹凸支持体20の第2面20bには突起は形成されておらず、第2面20bにおける貫通孔23以外の部位は平坦である。
図示の形態では、凹凸支持体20は、第2面20bを介して、搬送機構13のコンベアベルト15に固定されており、コンベアベルト15とともに矢印R方向に周回する。凹凸支持体20のコンベアベルト15への固定方法は、ウェブ11の水流交絡処理を阻害しないことを前提として特に制限されず、ボルト等の固定具、接着剤等の公知の固定手段を用いた方法が挙げられる。
【0053】
凹凸支持体20は、凹凸支持体20のウェブ11が載置される面、すなわち凹凸面である第1面20aを形成し、凹凸支持体20の主体をなすベースプレート21と、ベースプレート21における第1面20aに対応する面に配置された複数の突起22と、ベースプレート21を厚み方向に貫通する複数の貫通孔23とを有する。
【0054】
図示の形態では、凹凸支持体20は、所定の素材からなる一体成型物であり、ベースプレート21と突起22とは、共通の素材からなり、一体不可分である。
図示の形態では、ベースプレート21は、金網のような、線材を編んで形成されたものではなく、所定の素材からなる板状物である。なお本発明では、ベースプレート21として、線材を編んで形成されたものを用いることもできる。
凹凸支持体20(ベースプレート21、突起22)の素材としては、ウェブの水流交絡処理に使用可能であることを前提として特に制限されず、例えば、金属、プラスチックが挙げられる。
【0055】
突起22及び貫通孔23は、凹凸支持体20の第1面20a、すなわち凹凸面であって水流交絡処理時にウェブ11が載置される面に散在している。ここで言う「散在」とは、突起22及び貫通孔23が、それぞれ、第1面20aに散らばって存在することを意味する。例えば、突起22及び/又は貫通孔23が第1面20aの中央部又は周縁部などの一部のみに存在しても良いが、得られる凹凸不織布1のクッション性を向上させる観点から、突起22及び/又は貫通孔23は第1面20aの全域に散らばって存在することが好ましい。
【0056】
凹凸支持体20の第1面20aに散在する突起22及び貫通孔23は、それぞれ、規則的に配置されていてもよく、無規則に配置されていてもよい。ここで言う「規則的に配置」とは、突起22及び貫通孔23が一定の法則に従って配置されることを指し、「無規則に配置」とは、そのような法則が見出せないような配置を指す。
図示の形態では、突起22及び貫通孔23は規則的に配置されている。具体的には
図5及び
図6に示すように、突起22及び貫通孔23は、それぞれ、千鳥状に配置されている。ここで言う「千鳥状に配置」とは、突起22を例に取ると、複数の突起22が一方向(MD又はCD)に等間隔に配置されてなる列が、該一方向と直交する方向(CD又はMD)に複数列配置され、且つ該一方向と直交する方向において、隣り合う2列どうしで互いに突起22がずれている配置を指す。貫通孔23の千鳥状配置についても同様である。突起22及び貫通孔23が千鳥状に配置されていることから、第1面20aでは、互いに直交するMD及びCDの双方において突起22と貫通孔23とが交互に配置され、また、1個の貫通孔23を中心としてその周囲の4カ所に突起22が等間隔に配置されている。また図示の形態では、貫通孔23は、MD及びCDの双方において、当該方向で隣り合う突起22,22間の中心に位置している。
【0057】
突起22は、ウェブ11の水流交絡処理において開孔部4又は凹部3の底部の形成を促進するものである。典型的には、ウェブ11における水流交絡処理時に突起22と重なる部分に水流が噴射されることで、該部分から周辺部に繊維が移動し、その結果該部分(繊維の移動元)は、不織布1において繊維が存在しない開孔部4となるか、又は水流交絡処理前に比べて坪量が小さい凹部3の底部となる。突起22の形状は、このような突起22の機能が十分に発現し得るものであることを前提として特に制限されず、任意の形状を選択し得る。また、複数の突起22どうしで形状が異なっていてもよい。
【0058】
図示の形態では、複数の突起22は、それぞれ、
図6(a)に示す如き平面視において、MDに長い形状をなし、CDにおいて相対向する一対の第1の面22A,22Aと、これら両面22A,22Aの周縁に接続する第2の面22Bとを有する。突起22の各面22A,22Bは、平面でも曲面でもよい。図示の形態では、第1の面22Aは平面、第2の面22Bは曲面であり、第2の面22Bは、
図6(a)に示す如き平面視において、MDの外方に向かって凸の円弧状をなしている。また、図示の形態では、複数の突起22は、それぞれ、
図6(b)に示す如きMD且つ凹凸支持体20の厚み方向(突起22の高さ方向)に沿う断面視において、ベースプレート21から離れるに従って幅(MDの長さ)が漸次減少する先細り形状をなし、且つ突起22の先端は先鋭ではなく、丸みを帯びた円弧状をなしている。
【0059】
貫通孔23は、ウェブ11の水流交絡処理時に凸部2が形成される部位である。貫通孔23の形状は、このような貫通孔23の機能が十分に発現し得るものであることを前提として特に制限されず、任意の形状を選択し得る。図示の形態では、複数の貫通孔23は、それぞれ、
図6(a)に示す如き平面視において、円形状をなしているが、これに代えて、例えば、楕円形状、三角形形状、四角形形状にすることができる。また、複数の貫通孔23どうしで形状が異なっていてもよい。
【0060】
凹凸支持体20は、貫通孔23の開孔面積及びベースプレート21の厚みがそれぞれ特定範囲に設定されている点で特徴付けられる。すなわち、貫通孔23の第1面20a(凹凸面)側の開孔面積は3.5mm
2以上20mm
2以下であり、ベースプレート21の厚みT(
図5、
図6(b)及び(c)参照)は2.5mm以上である。
貫通孔23は前述したとおり、ウェブ11の水流交絡処理時に不織布1の凸部2が形成される部位であるところ、貫通孔23の凹凸面側(ウェブ11の載置面側)の開孔面積が3.5mm
2未満では、凸部2の形成が困難となるため、不織布1が立体感に乏しいものとなるおそれがあり、また、凸部2の繊維配向度を前記特定範囲に設定することが困難になるおそれもある。また、貫通孔23の凹凸面側の開孔面積が20mm
2を超えると、1つの凸部2を形成するのに必要な繊維量が増加するため、製造された不織布が立体感に乏しいものになるおそれがある。
ベースプレート21の厚みTが2.5mm未満では、貫通孔23の深さが比較的浅いものとなるため、凸部2の突出高さ(第1面1aにおける凸部2と凹部3の底部との高低差)が不十分となり、延いては不織布1の見掛け厚みAT(
図2参照)が不十分となり、その結果、不織布1が立体感に乏しいものとなるおそれがある。また、凸部2の繊維配向度を前記特定範囲に設定することが困難になるおそれもある。なお、ベースプレート21の厚みTが均一でない場合、厚みTの最小値が前記特定範囲にあることが好ましい。
貫通孔23の第1面20a(凹凸面)側の開孔面積は、好ましくは3.5mm
2以上、より好ましくは4.7mm
2以上、そして、好ましくは20mm
2以下、より好ましくは10mm
2以下である。
ベースプレート21の厚みTは、好ましくは2.5mm以上、より好ましくは3mm以上である。厚みTの上限は特に制限されないが、均一な凹凸形状を形成する観点から、好ましくは5mm未満、より好ましくは4mm以下である。
【0061】
貫通孔23の開孔面積は、第1面20a(凹凸面)側のみならず、その反対側に位置する第2面20b側でも前記特定範囲に設定されていることが好ましい。図示の形態では、斯かる好ましい形態が採用されている。すなわち
図5及び
図6に示す凹凸支持体20においては、貫通孔23の開孔面積は、貫通孔23の深さ方向(ベースプレート21の厚み方向)の全長にわたって一定であり、第1面20a側と第2面20b側とで、貫通孔23の開孔面積は同じである。
【0062】
本発明の効果を一層確実に奏させるようにする観点から、凹凸支持体20の各部の寸法等は以下のように設定することが好ましい。
突起22の高さH(
図6(b)及び(c)参照)は、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2mm以上、そして、好ましくは7mm以下、より好ましくは5mm以下である。
突起22のMDの長さL1(
図6(a)及び(b)参照)は、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは3.5mm以下である。
突起22のCDの長さL2(
図6(a)及び(c)参照)は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、そして、好ましくは4mm以下、より好ましくは2mm以下である。
【0063】
貫通孔23の最大差し渡し長さLmax(
図6参照)は、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは4mm以下である。
貫通孔23の最小差し渡し長さLminは、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2mm以上、そして、好ましくは3.5mm以下、より好ましくは3mm以下である。
前記の最大差し渡し長さLmax及び最小差し渡し長さLminの好ましい範囲は、少なくとも貫通孔23の第1面20a(凹凸面)側の開孔端において満たされることが好ましく、図示の円筒形の貫通孔23のように、貫通孔23の全域において満たされることがより好ましい。
【0064】
本明細書において、「貫通孔の差し渡し長さ」とは、貫通孔の平面視において、貫通孔の中心を通って該貫通孔の一方の端から他方の端に延在する仮想直線を引いた場合に、その仮想直線の延在方向の長さを指す。そして、前記仮想直線が複数存在する場合において、延在方向の長さが最大のものの延在方向の長さが「最大差し渡し長さLmax」であり、延在方向の長さが最小のものの延在方向の長さが「最小差し渡し長さLmin」である。
貫通孔の差し渡し長さは、その測定部位によって異なり得る。例えば、図示の形態の貫通孔23は、全体形状が円筒形であり、平面視円形状をなし且つ貫通孔23の深さ方向(ベースプレート21の厚み方向)の全長にわたってその形状及び大きさが一定であって変化しないので、貫通孔23が有する差し渡し長さは円の直径1種類のみであり、最大差し渡し長さLmax及び最小差し渡し長さLminはともに直径に等しい。
【0065】
突起22のMDにおけるピッチ22P1(
図6(a)及び(b)参照)は、好ましくは4mm以上、より好ましくは5mm以上、そして、好ましくは14mm以下、より好ましくは8mm以下である。「ピッチ22P1」は、MDにおいて隣り合う2個の突起22,22それぞれのMDの中央どうしのMDに沿う長さを指す。
突起22のCDにおけるピッチ22P2(
図6(a)及び(c)参照)は、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、そして、好ましくは12mm以下、より好ましくは7mm以下である。「ピッチ22P2」は、CDにおいて隣り合う2個の突起22,22それぞれのCDの中央どうしのCDに沿う長さを指す。
貫通孔23のMDにおけるピッチ23P1(
図6(a)及び(b)参照)は、好ましくは4mm以上、より好ましくは6mm以上、そして、好ましくは14mm以下、より好ましくは7mm以下である。「ピッチ23P1」は、MDにおいて隣り合う2個の貫通孔23,23それぞれのMDの中央どうしのMDに沿う長さを指す。
貫通孔23のCDにおけるピッチ23P2(
図6(a)及び(c)参照)は、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは7mm以下である。「ピッチ23P2」は、CDにおいて隣り合う2個の貫通孔23,23それぞれのCDの中央どうしのCDに沿う長さを指す。
【0066】
凹凸支持体20における貫通孔23の面積率、すなわち「ベースプレート21における凹凸支持体20の第1面20aに対応する面の全面積を100とした場合の、該面に配置された全ての貫通孔23の開孔面積の合計値の割合」は特に制限されないが、本発明の効果を一層確実に奏させるようにする観点、ベースプレート21の強度確保等の観点から、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、そして、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下である。
【0067】
製造装置10は、水流交絡装置12に加えて、ウェブ形成装置(図示せず)を備えていてもよい。前記ウェブ形成装置は、水流交絡装置12で水流交絡処理に供されるウェブ11を形成する装置であり、水流交絡装置12よりもMDの上流側に配置される。前記ウェブ形成装置としては、乾式法、湿式法等の公知のウェブ形成方法を用いてウェブを製造する装置を特に制限無く用いることができる。前記ウェブ形成装置は、典型的には、カード機を備え、乾式法の一種であるカード法によってウェブを形成する。本発明において、ウェブは、単層構造でもよく、2層以上が積層された積層構造でもよい。
【0068】
本発明において「ウェブ」とは、繊維どうしが実質的に結合されておらず、繊維の移動の自由度が確保されている、換言すれば、シートとしての一体性が確保されていない、繊維間未結合の繊維集合体を指す。具体的には「ウェブ」は、乾式法等の公知のウェブ形成方法によって形成された繊維集合体で、且つ水流交絡法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法等の公知の繊維間結合法による処理が施されていない繊維集合体を指す。
【0069】
本発明の不織布の製造方法では、ウェブを水流噴射工程に供して水流交絡処理を施すことで、ウェブの構成繊維どうしを交絡させてこれらを実質的に結合する。
ウェブが構成繊維としてコットン繊維等のセルロース繊維を主体とするものである場合(具体的には例えば、ウェブの構成繊維の全質量に占めるセルロース繊維の含有質量の割合が好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上である場合)、典型的には、後述する第1の製造方法のように、ウェブに前記水流交絡処理を施した後、必要に応じ該ウェブを乾燥することで、該ウェブは、構成繊維どうしが実質的に結合した不織布となる。
また、ウェブが構成繊維としてセルロース繊維に加えて更に熱可塑性繊維を含む場合には、後述する第2の製造方法のように、ウェブに対し、前記水流交絡処理を施した後、更に加熱処理を施すことが好ましい。前記加熱処理は、ウェブを、該ウェブに含まれる熱可塑性繊維の融点以上の温度で加熱する処理であり、これにより、該熱可塑性繊維どうしが融着して実質的に結合する。したがって、前記水流交絡処理及び加熱処理の双方が施されたウェブは、セルロース繊維どうしが交絡により実質的に結合しているとともに、熱可塑性繊維どうしが融着により実質的に結合し、更には、セルロース繊維と熱可塑性繊維とが融着により結合し得る。
【0070】
製造装置10は、水流交絡装置12で水流交絡処理が施されたウェブから水分を除去する乾燥装置(図示せず)を備えていてもよい。前記乾燥装置は、基本的には繊維集合体中の水分除去(乾燥処理)を目的とするものであるが、ウェブに含まれる熱可塑性繊維の溶融・融着(加熱処理)を実施するものであってもよく、本発明の凹凸不織布の製造方法では、該乾燥装置を用いて繊維集合体の乾燥処理と加熱処理とを同時に実施してもよい。前記乾燥装置は、水流交絡装置12よりもMDの下流側に配置される。前記乾燥装置としては、スパンレース不織布の製造装置において、水流交絡処理されたウェブの乾燥に使用可能なものを特に制限無く用いることができる。前記乾燥装置による乾燥処理の具体例として、熱風の吹き付け、乾燥気体の吹き付け、ヒーターによる加熱、赤外線の照射、加熱ロールへの接触、吸引ロール等を用いた水分の吸引が挙げられる。
【0071】
製造装置10を用いた不織布1の製造方法は、少なくとも水流噴射工程を有する。前記水流噴射工程では、
図4に示すように、凹凸支持体20の第1面20a(凹凸面)に、ウェブ11を載置した状態で、水流ノズル17からウェブ11に水流30を噴射することで、ウェブ11に含有される繊維どうしを交絡させるとともに、ウェブ11に凸部2(
図1等参照)を形成する。前述したように、ウェブ11はセルロース繊維を含有することが好ましい。
製造目的物である不織布1は開孔部4を有しているので、前記水流噴射工程では、ウェブ11における突起22に対応する部位に水流30を噴射して開孔部4を形成する。
【0072】
図7には、前記水流噴射工程の様子が示されている。
図7(a)は、凹凸支持体20の第1面20aにウェブ11を載置した状態であり、水流交絡処理が施される直前の様子を示している。水流交絡処理前のウェブ11は、凹凸が無く実質的に平坦である。
図7(a)に示す状態から、凹凸支持体20と第2面20bを介して固定されているコンベアベルト15の回転に伴い、ウェブ11及び凹凸支持体20が一体的にMDに搬送され、水流噴射装置18の真下に到達すると、
図7(b)に示すように、水流噴射装置18が備える水流ノズル17から噴射された水流30がウェブ11に吹き付けられる。前述したように、水流30はウェブ11のCDの全域にわたって均一に吹き付けられ、また、ウェブ11に対して略垂直に吹き付けられる。ウェブ11における水流30が吹き付けられた部位は、該部位の構成繊維どうしが交絡するとともに、凹凸支持体20側に押圧されて第1面20a(凹凸面)に沿うように変形する。このとき、ウェブ11における突起22に対応する部位は、上方から吹き付けられる水流30と該部位を下方から支持する突起22とによって構成繊維がより分けられるとともに、該突起22によって貫通され、最終的には
図7(c)に示すように開孔部4(繊維の坪量がゼロの部位)となる。また、こうしてウェブ11における突起22に対応する部位からより分けられた繊維は、凹凸支持体20の第1面20a上を突起22から貫通孔23に向かって流れる水によって貫通孔23の内部に移動する。水流交絡処理時においては、貫通孔23の第2面20b側の開孔端(水及び繊維の流入側とは反対側の開孔端)は、コンベアベルト15によって少なくとも繊維が流出し難い程度には閉塞されているので、貫通孔23の内部には、周辺部から移動してきた繊維が集積され、最終的には
図7(c)に示すように凸部2(高坪量部5)が形成される。また、凹凸支持体20の第1面20aにおける突起22及び貫通孔23以外の部位は、凹凸の無い平坦部であるところ、ウェブ11における該平坦部に対応する部位は、水流30によって該平坦部側に押圧され、最終的には
図7(c)に示すように凹部3の底部(低坪量部6)となる。こうして、水流交絡処理によってウェブ11に凸部2、凹部3の底部及び開孔部4が形成されるとともに、ウェブ11の構成繊維どうしが交絡することで、該ウェブ11は不織布1となる(第1の製造方法)。
なお、ウェブ11にコットン繊維等のセルロース繊維及び熱可塑性繊維が含まれている場合は、後述する第2の製造方法のように、ウェブ11の水流交絡処理の後に、ウェブ11を加熱工程に供し、ウェブ11に含まれる熱可塑性繊維の融点以上の温度で加熱する加熱処理を施すことが好ましく、これにより、熱可塑性繊維どうしが融着により実質的に結合され、ウェブ11は不織布1となる。
こうして製造された不織布1は、前述したように凸部2の繊維配向度が50%以上60%以下であり、凸部2における繊維配向の偏りが比較的少ないため、クッション性に優れる。
【0073】
特に図示の形態の凹凸支持体20は、
図6(a)等に示すように、第1面20aにおいて、開孔面積が前記特定範囲にある1個の貫通孔23を中心として、これを包囲するように複数(4個)の突起22が配置されているため、水流交絡処理時に第1面20aに吹き付けられた水は、該複数の突起22から該1個の貫通孔23に向かって収束しやすい。そのため、貫通孔23には、周辺の複数の突起22から水とともに移動してきたウェブ11の繊維が集積しやすく、したがって凸部2(高坪量部5)が形成されやすく、更には、凸部2の繊維配向度が50%以上60%以下となりやすい。また、このように貫通孔23の周囲の複数箇所から繊維が移動してきて該貫通孔23に集積することで凸部2が形成されると、その凸部2の頂部とは反対側には前記微小窪み部が形成されやすい。前記微小窪み部には、凸部2とともに不織布1のクッション性を高める効果が期待できる。
【0074】
前記水流噴射工程において、水流ノズル17から噴射される水流の水圧は特に制限されないが、本発明の効果を一層確実に奏させるようにする観点から、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上、そして、好ましくは10MPa以下、より好ましくは8MPa以下である。
水流ノズル17のノズル穴径は、好ましくは0.03mm以上、より好ましくは0.05mm以上、更に好ましくは0.08mm以上、そして、好ましくは0.50mm以下、より好ましくは0.30mm以下、更に好ましくは0.20mm以下である。
複数の水流ノズル17が、CDの全長にわたって間欠配置される場合、水流ノズル17のノズル穴ピッチは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下、更に好ましくは1.0mm以下である。
【0075】
図4に示す水流噴射装置18のように、水流ノズル又はCDに間欠配置された複数の水流ノズルからなるノズル列が、MDに複数間欠配置されている場合、MDの上流側に位置する水流ノズルと下流側に位置する水流ノズルとで、水流ノズルから噴射される水流の水圧を異ならせてもよい。具体的には例えば、水流ノズルから噴射される水流の水圧を、MDの上流側から下流側に向かって徐々に増加させてもよい。また、同様に、MDの上流側に位置する水流ノズルのノズル穴径と下流側に位置する水流ノズルのノズル穴径とで、ノズル穴径を異ならせてもよい。具体的には例えば、ノズル穴径を、MDの上流側から下流側に向かって徐々に増大させてもよい。更に、CDに間欠配置された複数の水流ノズルからなるノズル列が、MDに複数間欠配置されている場合、MDの上流側に位置するノズル列のノズル穴ピッチと下流側に位置するノズル列のノズル穴ピッチとで、ノズル穴ピッチを異ならせてもよい。具体的には例えば、前記ノズル穴ピッチを、MDの上流側から下流側に向かって徐々に減少させてもよい。こうすることで、不織布の地合いを一層良好にし得る。
前記水流噴射工程において、ウェブ11のMDの搬送速度は特に制限されないが、本発明の効果を一層確実に奏させるようにする観点から、好ましくは1m/分以上、より好ましくは3m/分以上、そして、好ましくは120m/分以下、より好ましくは100m/分以下である。
【0076】
前記水流噴射工程の後は、必要に応じ、該水流噴射工程で得られた不織布1から水分を除去する乾燥工程を実施してもよい。すなわち本発明の不織布の製造方法は、前記水流噴射工程の後に前記乾燥工程を有していてもよい。前記乾燥工程は、前記乾燥装置を用いて常法に従って実施することができる。
【0077】
本発明の不織布の製造方法には、1)前記水流噴射工程の後、必要に応じ前記乾燥工程を実施する態様(以下、「第1の製造方法」とも言う。)と、2)前記水流噴射工程の後、必要に応じ前記乾燥工程を実施し、更にウェブを加熱処理する加熱工程を有する態様(以下、「第2の製造方法」とも言う。)とが包含される。第1の製造方法については、前述したとおりである。第2の製造方法は、加熱工程を有する点以外は、第1の製造方法と同じである。典型的には、第1の製造方法は、製造目的物である不織布が構成繊維としてコットン繊維等のセルロース繊維のみを含むものである場合に適用され、第2の製造方法は、製造目的物である不織布が構成繊維としてセルロース繊維及び熱可塑性繊維を含む場合に適用される。第1の製造方法で使用するウェブは、セルロース繊維のみを含み、第2の製造方法で使用するウェブは、セルロース繊維及び熱可塑性繊維を含む。
【0078】
以下、第2の製造方法について説明する。第2の製造方法は、前記水流噴射工程に加えて更に、該水流噴射工程を経たウェブを、該ウェブに含まれる熱可塑性繊維の融点以上の温度で加熱する加熱工程を有する。セルロース繊維及び熱可塑性繊維を含むウェブを前記水流噴射工程に供することで、セルロース繊維どうしが交絡により実質的に結合し、更に、該ウェブを前記加熱工程に供することで、熱可塑性繊維どうしが融着により実質的に結合し、不織布となる。前記加熱工程では、熱可塑性繊維どうしのみならず、熱可塑性繊維とセルロース繊維との間も融着により結合し得る。第2の製造方法によれば、ウェブの結合強度が向上し、製造工程におけるウェブの取扱性が向上するとともに、最終的に得られる不織布の強度が向上し得る。融点の異なる2種類以上の熱可塑性繊維を用いた場合、前記加熱工程では、最も高い融点以上の温度でウェブを加熱することが好ましい。
第2の製造方法を、前述した製造装置10を用いて実施する場合、水流交絡装置12よりもMDの下流側に、前記加熱工程を実施する加熱装置が配置される。前記加熱装置でウェブに施される加熱処理の具体例として、熱風の吹き付け、ヒーターによる加熱、加熱ロールへの接触、赤外線の照射が挙げられる。
【0079】
第2の製造方法において、ウェブにおける熱可塑性繊維の含有量は、製造目的物である不織布における熱可塑性繊維の含有量と同じに調整すればよく、これについては前述したとおりである。
ウェブにおける熱可塑性繊維の分布形態は特に制限されず、例えば、セルロース繊維とともにウェブの全体に均一に分布していてもよく、あるいは偏在していてもよい。後者の具体例として、ウェブが、セルロース繊維を主体とする第1の層と、熱可塑性繊維を含有する第2の層とを有し、両層が厚み方向に積層された形態が挙げられる。
【0080】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
前記実施形態の不織布1は開孔部4を有していたが、本発明の不織布は開孔部を有していなくてもよい。前述した本発明の製造方法で開孔部を有しない不織布を製造する場合には、該製造方法の前記水流噴射工程において、ウェブに吹き付ける水流の水圧、凹凸支持体の突起の形状等を適宜調整すればよい。
【実施例0081】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0082】
〔実施例1~4、比較例1~3〕
前記第1の製造方法によって不織布を製造した。具体的には、
図4に示す製造装置(水流交絡装置)と基本構成が同様の装置を用い、ウェブに水流交絡装処理を施して不織布を製造した。ウェブの原料繊維として、セルロース繊維の一種であるコットン繊維を用い、カード法により常法に従って単層構造のウェブを形成した。前記水流交絡処理は、凹凸支持体の片面(凹凸載置面)にウェブを載置した状態で該ウェブに水流を噴射することにより実施した。前記水流交絡処理では、水流噴射装置として、CDに間欠配置された複数の水流ノズルからなるノズル列が、MDに3列間欠に配置されたものを使用し、該水流噴射装置にウェブを2回導入することで該水流交絡処理を実施した。下記表1に、前記水流交絡処理の条件、凹凸支持体の詳細を示す。下記表1では、前記の水流ノズルについて、MDの最上流に配置されたノズル列の水流ノズルを水流ノズルAとし、MDの下流側に向かって順に水流ノズルB、水流ノズルCとしている。なお、水流ノズルA及びBは、ノズル穴径が0.1mmでノズル穴ピッチが1.0mmのものを使用し、水流ノズルCは、ノズル穴径が0.12mmでノズル穴ピッチが0.6mmのものを使用した。
【0083】
実施例及び比較例で製造した不織布について、下記方法により、凹凸形状、クッション性をそれぞれ評価した。その結果を下記表1に示す。
【0084】
<凹凸形状の評価方法>
評価対象の不織布を目視で観察し、下記評価基準により評価した。評価は訓練された10名のパネラーによって行った。下記評価基準において、「A」は「C」よりも優れた評価である。
(凹凸形状の評価基準)
・A:凹凸がはっきりとわかる。
・B:凹凸がわずかに見て取れる。
・C:凹凸に見えない。
【0085】
<クッション性の評価方法>
評価対象の不織布のクッション性の指標として、圧縮仕事量(以下、「WC」とも言う。)を用いる。WCの数値が大きいほど、評価対象はクッション性が高いと評価できる。WCは、カトーテック株式会社製のKES(カワバタ・エバリュエーション・システム)での測定値で表し得ることが一般的に知られている(参考文献:風合い評価の標準化と解析(第2版)、著者 川端季雄、昭和55年7月10日発行)。具体的には、カトーテック株式会社製の圧縮試験装置KES-G5を用いて、評価対象の不織布のWCを測定する。WCの測定手順は以下のとおりである。
まず、測定試料として、評価対象の不織布から平面視5cm四方の領域を切り出したものを用意する。評価対象の不織布の面積が小さい等の理由で前記領域を確保できない場合は、できるだけ大きな面積の領域を切り出して測定試料とする。
測定試料を圧縮試験装置の試験台に取り付ける。次に、測定試料を面積2cm2の円形平面を持つ鋼板間で圧縮する。圧縮速度は0.2cm/sec、圧縮最大荷重は2450mN/cm2、SENSは10、DEFは20とする。WCは下記式(1)で表され、単位は「gf・cm/cm2」である。下記式(1)中、Tmは、2450mN/cm2(4.9kPa)荷重時の厚み、TOは、4.902mN/cm2(49Pa)荷重時の厚みを示す。また、下記式(1)中のPaは、圧縮過程時の測定荷重(mN/cm2)を示す。
【0086】
【0087】
【0088】
表1に示すとおり、実施例の不織布は、凸部の繊維配向度が50%以上60%以下であるため、これを満たさない比較例の不織布に比べて、凹凸形状が良好で、且つ圧縮仕事量の数値が大きくクッション性に優れていた。