(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126768
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】吸収性物品用不織布
(51)【国際特許分類】
D04H 1/425 20120101AFI20240912BHJP
D04H 1/495 20120101ALI20240912BHJP
A61F 13/511 20060101ALN20240912BHJP
A61F 13/512 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
D04H1/425
D04H1/495
A61F13/511 100
A61F13/512
A61F13/511 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035382
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高津 陽大
(72)【発明者】
【氏名】寒川 裕太
(72)【発明者】
【氏名】菅原 拓也
【テーマコード(参考)】
3B200
4L047
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BB05
3B200DC02
3B200DC04
4L047AA08
4L047AB02
4L047BA01
4L047BA04
4L047CA10
4L047CA12
4L047CA14
4L047CC04
4L047CC05
4L047EA19
(57)【要約】
【課題】セルロース繊維を含有し使用時の液戻りが抑制された吸収性物品用不織布を提供すること。
【解決手段】セルロース繊維を90質量%以上含み、繊維どうしが交絡してなる吸収性物品用不織布である。前記吸収性物品用不織布は第1面及びそれと反対側に位置する第2面を有し、前記第1面は凸部と底部とを有する。前記底部は複数の開孔部を有する。前記底部における前記開孔部以外の部分の坪量B1に対する、前記凸部の坪量B2の比B2/B1が2以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維を90質量%以上含み、繊維どうしが交絡してなる吸収性物品用不織布であって、
前記吸収性物品用不織布が、第1面及びそれと反対側に位置する第2面を有し、
前記第1面は凸部と底部とを有し、
前記底部は複数の開孔部を有し、
前記底部における前記開孔部以外の部分の坪量B1に対する、前記凸部の坪量B2の比B2/B1が2以上である、吸収性物品用不織布。
【請求項2】
前記凸部の接触面積率が20%以上50%以下であり、
前記凸部の接触面積率は、前記第1面の上に、その全域を被覆する平板を載せて12g/cm2の加重をかけた状態における、該平板と前記凸部との接触面積の、前記第1面の面積に対する割合である、請求項1に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項3】
前記開孔部の総面積の面積率が15%以上50%以下であり、
前記開孔部の総面積の面積率は、前記開孔部の総面積の、前記第1面の面積に対する割合である、請求項1又は2に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項4】
前記吸収性物品用不織布が、スパンレース不織布である、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品用不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品用不織布には、従来、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂からなる不織布が使用されていた。しかしながら、これらの樹脂からなる不織布は生分解性に乏しく、環境に対する負荷が高いという欠点を有する。そこで近年、より生分解性の高いセルロース繊維を含有する不織布が提案されている。
【0003】
特許文献1には、少なくとも15重量%の天然繊維を含むスパンレース不織布からなる第1の層と、第1の層と接合された第2の層と、を含む、吸収性物品に使用するためのトップシートが記載されている。前記第1の層は、複数の突出部及び複数の孔を含み、前記複数の孔は、前記突出部の間に位置する。また前記第1の層は、前記孔において前記トップシートの前記第2の層を少なくとも部分的に貫通する。このような構造的特徴を有する特許文献1のトップシートは、構造強度及び機械的強度に優れると記載されている。
【0004】
特許文献2には、セルロース系繊維を90質量%よりも多い量で含み、繊維同士が交絡してなる吸収性物品用不織布が記載されている。該不織布は、複数の互いに離間した第1交絡部と、複数の互いに離間した第2交絡部とを有し、前記第1交絡部はそれぞれ、複数の繊維密度の高い領域と複数の繊維密度の低い領域とで形成された規則的な模様を有する。特許文献2記載の不織布を含む吸収性物品用シートは、毛羽立ちが少なく、且つ意匠性に優れると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2020-536707号公報
【特許文献2】国際公開第2019/004369号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セルロース繊維は保水性が十分ではないため、セルロース繊維を含有する吸収性物品用不織布は使用時において液戻りに改善の余地があった。またこれに伴ってべたつきの不快感や肌のかぶれを誘発する場合があり、この点についても改善の余地があった。しかしながら、特許文献1及び2に記載の吸収性物品用不織布は、いずれもこの問題点について十分な検討がなされておらず、よって液戻りの抑制が十分ではなかった。
したがって本発明の課題は、セルロース繊維を含有し使用時の液戻りが抑制された吸収性物品用不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、セルロース繊維を90質量%以上含有し、繊維どうしが交絡してなる吸収性物品用不織布であって、
前記吸収性物品用不織布が、第1面及びそれと反対側に位置する第2面を有する吸収性物品用不織布である。
本発明の吸収性物品用不織布の一実施形態では、前記第1面は凸部と底部とを有することが好ましい。
本発明の吸収性物品用不織布の一実施形態では、前記底部は複数の開孔部を有することが好ましい。
本発明の吸収性物品用不織布の一実施形態では、前記底部における前記開孔部以外の部分の坪量B1に対する、前記凸部の坪量B2の比B2/B1が2以上であることが好ましい。
本発明の他の特徴、効果及び実施形態は、以下に説明される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用時の液戻りが抑制された吸収性物品用不織布が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の吸収性物品用不織布の一実施形態の第1面側の模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のA-A線断面(機械方向MD及び厚み方向に沿う断面)を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の吸収性物品用不織布の好適な製造装置の一実施形態の要部(水流交絡装置)の概略構成図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す凹凸支持体の凹凸面(ウェブが載置される面)側の模式的な斜視図である。
【
図6】
図6(a)は、
図5に示す凹凸支持体の凹凸面(ウェブが載置される面)側の模式的な平面図、
図6(b)は、
図6(a)のB-B線断面(機械方向MD及び厚み方向に沿う断面)を模式的に示す断面図、
図6(c)は、
図6(a)のC-C線断面(垂直方向CD及び厚み方向に沿う断面)を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7(a)~
図7(c)は、それぞれ、
図4に示す装置を用いた水流噴射工程の一実施形態を模式的に示す図であり、凹凸支持体の機械方向及び厚み方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
【0011】
まず、本発明の吸収性物品用不織布(以下、「吸収性物品用不織布」を単に「不織布」とも言う。)について説明する。
図1~3には、前記不織布の一実施形態である不織布1が示されている。不織布1は、セルロース繊維を含有し、繊維どうしが交絡してなる不織布である。不織布1は第1面1a及びそれと反対側に位置する第2面1bを有している。第1面1aは凸部2と底部6とを有している。
より具体的には、第1面1aにおいて、隣り合う凸部2,2間には凹部3が存在している。凹部3は、複数の凸部2と、該複数の凸部2どうしを繋ぐ繊維層とで画成された空間部であり、該繊維層が凹部3の底部6(以下、「凹部の底部」を単に「底部」とも言う。)を形成する。
【0012】
凸部2は、
図3に示す如き不織布1の厚み方向に沿う断面視において、底部6とのなす角度42が60°~120°であることが好ましい。
角度42は、底部6の接線40と凸部2の接線41とのなす角度である。接線40は、不織布1の第1面1aにおける底部6に沿って延び、不織布1の厚み方向(
図3の上下方向)と直交する。接線41は、凸部2の前記断面視形状によっては複数が存在し得るが、その場合は、凸部2との接点43が、該凸部2の平面視における中心から最も離れているものとする。
接点43は、凸部2と底部6との境界に位置する。すなわち、接点43を通って不織布1の厚み方向に延びる仮想直線を境界として、一方側が凸部2、他方側(凸部2の非形成部側)が底部6である。
【0013】
第1面1aは、凸部2と凹部3とによる凹凸形状を有する凹凸面である。
一方、第2面1bは、実質的に平坦である。ここで言う「実質的に平坦」には、凹凸の無い平坦な形態と、第1面1aに比べて凹凸の程度が明確に小さい微小な凹凸が存在する形態とが包含される。後者の形態において、凸部2の第2面1b側の表面には、微小窪み部(図示せず)が存在し得る。前記微小窪み部は、典型的には、窪み深さが一定ではなく、凸部2の平面視における中心部の位置に最大深さを有し、その最大深さを有する部位を底部とする比較的緩やかな円弧状の輪郭線を有する。
不織布1に凸部2が存在することによって、第1面1aを使用者の肌に対向させて不織布1を使用した場合に、不織布1と使用者の肌との接触面積が低下し、液戻りを抑制させることができる。
【0014】
凸部2は、内部が繊維で満たされており、中実構造を有することが好ましい。凸部2が中実構造を有することによって、凸部2を有する不織布1のクッション性を向上させることができる。また、不織布1がその使用者の肌等との接触によって圧力を受けた場合にも凸部2が潰れにくくなるため、不織布1の液戻りをより一層抑制させることができる。
【0015】
不織布1は、不織布1を厚み方向に貫通する複数の開孔部4を有している。開孔部4は、不織布1の構成繊維が存在しない部位であり、凹部3の底部6に形成されている。開孔部4は、繊維間に形成される微細な孔径とは異なり、加工により形成される孔であり、繊維間に形成される微細な孔径よりも遥かに大きい開孔面積を有している。
不織布1では、
図1に示すように、第1面1aにおいて、凸部2と開孔部4とが方向Xに交互に配置されているとともに、方向Xと直交する方向Yに交互に配置されている。
開孔部4は、不織布1の液透過性を向上させる効果を有する。
【0016】
方向Xは、不織布1の製造時の機械方向(MD;Machine Direction)、すなわち不織布1又はその原材料若しくは中間品(例えばウェブ)の走行方向に一致し、方向Yは、MDに直交する垂直方向(CD;Cross machine Direction)に一致する。
【0017】
開孔部4の第1面1a側(凸部突出面側)の開孔面積は特に制限されないが、開孔部4によって奏され得る効果(通気性、液透過性の向上効果等)と実用上十分な強度の確保とのバランスの観点から、好ましくは1mm2以上、より好ましくは2mm2以上、そして、好ましくは5mm2以下、より好ましくは4mm2以下、更に好ましくは3mm2以下である。また同様の観点から、本発明の不織布の開孔部の総面積の面積率は、好ましくは15%以上、より好ましくは30%以上、そして、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下である。すなわち、本発明の不織布の開孔部の総面積の面積率は15%以上50%以下が好ましい。
前記「開孔部の総面積の面積率」は、開孔部4の総面積の、第1面1aの面積に対する割合である。
開孔部4の開孔面積、及び開孔部の総面積の面積率は以下の方法により測定される。
【0018】
<不織布の開孔部の開孔面積の測定方法>
マイクロスコープVHX6000(商品名、株式会社キーエンス製)を用いて、当該マイクロスコープの台座上に、不織布の第1面1a側が上になるように不織布を載せる。次いで、倍率を50倍にして不織布にピントを合わせ、内蔵機能を用いて、下記の手順により開孔部4の開孔面積を測定する。
(1)開孔部4の判定方法
前記のマイクロスコープの自動面積計測機能によって、開孔部4の縁を判定する。しきい値を0として、輝度が高い(白い)部分を抽出し、抽出されない部分と抽出される部分の境界を開孔部4の縁とする。輝度が高い(白い)部分の面積を測定することにより、開孔部4の開孔面積(mm2)が算出される。
【0019】
<第1面1aの面積に対する開孔部4の総面積(開孔部の総面積の面積率)の測定方法>
高精度形状計測システムKS-1100(商品名、株式会社キーエンス製)を用いて、レーザー光を照射して無荷重状態(荷重をかけない自然状態)における不織布の第2面1bの表面形状(測定面の面方向に沿って起伏する厚みの高低形状)を測定し、画像を取り込む。その際、5×5cmの測定試料の測定面の全域に対し、1cm×1cmの測定範囲を、10cm/秒の移動速度で走査させて測定を行う(測定ピッチ:縦20μm、横20μm)。
前記で取り込んだ画像に対し、形状解析アプリケーションKS-Analyzer(商品名、株式会社キーエンス製)を用いて解析を行う。具体的には、不織布の厚みよりも厚みが小さい部分(最小測定可能スケール0.01μm)を抽出し二値化処理して、その部分の表面画像を得る。
前記厚みが小さい部分の表面画像を、画像処理ソフトウエアNewQube(Ver.4.22、商品名、株式会社ネクサス製)を用いて取り込んで処理を行い、その面積を測定する。この面積が、開孔部4の総面積(以下、「開孔部総面積」とも言う。)となる。
測定した開孔部総面積を、測定試料の第2面1bの面積(測定点:251,001点(=501×501))で除することで、「開孔部の総面積の面積率」を算出する。
なお、測定試料の第1面1aの面積及び第2面1bの面積は同じであるとみなすことができため、前記「開孔部の総面積の面積率」も、第1面1a側と第2面1b側とで同じであるとみなすことができる。
【0020】
本発明の不織布の立体形状は、後述する本発明の不織布の好適な製造方法における水流噴射工程において、該不織布の前駆体であるウェブ(繊維間未結合の繊維集合体)に水流を噴射し、該ウェブの構成繊維を再配列・再絡合することによって形成されている。前記立体形状は、凸部2、底部6、及び開孔部4を含んで構成される。また、不織布1の第2面1bに存在し得る前記微小窪み部も前記立体形状に含まれる。例えば、図示の形態の不織布1の好適な製造方法における水流噴射工程では、凹凸支持体20の第1面20a側から第2面20b側(該凹凸支持体20上に載置されたウェブの第2面1b側から第1面1a側)に向けて水が噴射され、典型的には、ウェブにおける底部6及び開孔部4の形成予定部位の繊維が、水流によって凸部2の形成予定部位に移動し、その結果、該繊維の移動元に底部6又は開孔部4が形成され、該繊維の移動先に凸部2が形成される。このような繊維の再配列・再絡合によって形成された凸部2、底部6及び開孔部4は、それぞれ、それ自体でその形態を維持し得る。
【0021】
不織布1は、構成繊維の坪量が不均一であり、凸部2においては坪量が相対的に大きく、底部6においては坪量が相対的に小さい。また底部6に設けられた開孔部4における坪量はゼロである。なお、不織布1は、典型的には、繊維のみから構成されるところ、その場合、「不織布の坪量」は「不織布の構成繊維の坪量」と同じである。また本明細書において「底部6の坪量」とは、「底部6における開孔部4以外の部分の坪量」という意味である。
【0022】
不織布1の坪量は特に制限されないが、外観、強度、クッション性、吸収性物品などの商品形態における携帯性等の諸特性のバランスの観点から、好ましくは15g/m2以上、より好ましくは25g/m2以上、そして、好ましくは100g/m2以下、より好ましくは80g/m2以下である。
凸部2の坪量B2は、底部6の坪量B1に比べて大きいことを前提として、好ましくは40g/m2以上、より好ましくは50g/m2以上、更に好ましくは55g/m2以上、そして、好ましくは70g/m2以下、より好ましくは65g/m2以下である。
底部6の坪量B1は、凸部2の坪量に比べて小さいことを前提として、好ましくは5g/m2以上、より好ましくは7g/m2以上、更に好ましくは9g/m2以上、そして、好ましくは20g/m2以下、より好ましくは14g/m2以下である。
底部の坪量B1に対する凸部の坪量B2の比B2/B1は2以上である。またB2/B1は3以上であることがより好ましく、3.5以上であることが更に好ましく、4以上であることがより更に好ましく、4.5以上であることが一層好ましく、4.6以上であることがより一層好ましい。そして、B2/B1は10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、5以下であることが更に好ましい。
B2/B1が2以上であることによって、加圧による不織布の潰れを抑制することができ、また吸収時間が短縮されて液戻り性能が向上する。更に、不織布1にクッション感を付与できる。
またB2/B1が10以下であることによって、凸部2の柔らかさを担保でき、装着時の違和感の抑制に加え、外観の良好性を維持できる。
凸部2、底部6等の不織布の一部の坪量は以下の方法により測定される。
【0023】
<不織布の一部の坪量の測定方法>
測定対象の不織布(例えば不織布1)から平面視5cm四方の領域を切り出して測定試料とする。測定対象の不織布の面積が小さい等の理由で前記領域を確保できない場合は、できるだけ大きな面積の領域を切り出して測定試料とする。測定試料から測定対象部分を切り出し、電子天秤を用いて、該測定対象部分の質量をg単位で測定し、その測定値を該測定対象部分の面積で割って、該測定対象部分の坪量を算出する。以上の操作3回行い、得られた3つの測定値(測定対象部分の坪量)の平均値を、当該測定対象部分の坪量とする。
不織布1の凸部2及び底部6の坪量を測定する場合を例に取って更に説明する。まず、不織布1から切り出した5cm四方の測定試料を、ハサミ等の切断具を用いて、凸部2と底部6とに切り分ける。凸部2と底部6との境界の定義は上述のとおりとする。次に、電子天秤を用いて、切り分けられた複数の凸部2の総質量及び底部6の総質量を測定する。また別途、下記<不織布の凸部及び底部の面積の測定方法>により、「測定試料の測定面に存在する全ての凸部の面積の総和」(以下、「凸部総面積」とも言う。)、「測定試料の測定面に存在する全ての底部の面積の総和」(以下、「底部総面積」とも言う。)をそれぞれ測定する。そして、凸部2の総質量を凸部総面積で割って、凸部2の坪量を算出する。また、底部6の総質量を底部総面積で割って、底部6の坪量を算出する。
【0024】
<不織布の凸部及び底部の総面積の測定方法>
本測定方法は、下記(1)~(7)の手順で実施される。
(1)測定対象の不織布(例えば不織布1)から平面視5cm四方の領域を切り出して測定試料とする。測定対象の不織布の面積が小さい等の理由で前記領域を確保できない場合は、できるだけ大きな面積の領域を切り出して測定試料とする。この測定試料の面積は、前記<不織布の一部の坪量の測定方法>で用いた測定試料の面積と同じになるようにする。
(2)測定試料を、測定面である凹凸面を上にして静置する。例えば、測定試料が不織布1から切り出されたものであれば第1面1aが測定面であるので、第1面1aが上方を向くように測定試料を静置する。
(3)測定試料の測定面に対して、高精度形状計測システムKS-1100(商品名、株式会社キーエンス製)を用いて、レーザー光を照射して無荷重状態(荷重をかけない自然状態)での該測定面の表面形状(測定面の面方向に沿って起伏する厚みの高低形状)を測定し、画像を取り込む。その際、5×5cmの測定試料の測定面の全域に対し、1cm×1cmの測定範囲を、10cm/秒の移動速度で走査させて測定を行う(測定ピッチ:縦20μm、横20μm)。
(4)測定試料の測定面に質量170gの透明のアクリル板を載置し、更にアクリル板上に質量600gのおもりを置き、3kPaの加圧をかける。この状態で前記(3)と同様の方法により、該測定面の表面形状を測定し画像を取り込む。前記平板は、測定試料の測定面の全域を被覆可能な大きさを有するものを使用する。
(5)前記(3)及び(4)にて取り込んだ画像に対し、形状解析アプリケーションKS-Analyzer(商品名、株式会社キーエンス製)を用いて解析を行う。具体的には、無荷重状態から3kPa加圧をかけた状態で厚みが変化した部分(最小測定可能スケール0.01μm)を抽出し二値化処理して、その部分の表面画像を得る。
(6)前記(5)で得た「厚みが変化した部分」の表面画像を、画像処理ソフトウエアNewQube(Ver.4.22、商品名、株式会社ネクサス製)を用いて取り込んで処理を行い、それらの面積を測定する。前記の厚みが変化した部分は、測定試料の測定面の凸部(不織布1であれば凸部2)とみなすことができる。よって、該部分について測定された面積の総和は、凸部総面積に相当する。
(7)下記式により、測定試料の底部総面積を算出する。下記式中の「不織布の面積」は、測定試料の凹凸面(測定試料が不織布1であれば第1面1a)又はその反対側の面(測定試料が不織布1であれば第2面1b)の平面視における面積である。なお、開孔部総面積は上述の<第1面1aの面積に対する開孔部4の総面積(開孔部の総面積の面積率)の測定方法>に記載した方法で測定することができる。
底部総面積=不織布の面積-凸部総面積-開孔部総面積
【0025】
不織布1における凸部の接触面積率は20%以上50%以下であることが好ましい。前記「凸部の接触面積率」は、第1面1aの上に、その全域を被覆する平板を載せて12g/cm2の加重をかけた状態における、該平板と凸部2との接触面積の、第1面1aの面積に対する割合である。凸部の接触面積率を上述の範囲内に設定することによって、本発明の不織布を備えた着用物品等を着用した際、着用者の肌と不織布との接触面積が適切に制御され、不織布の十分な液吸収速度を確保しつつ、液戻りを抑制することができる。これによって、着用者の肌に液が残りにくくなる。凸部の接触面積率は、より好ましくは25%以上、更に好ましくは30%以上、そして、より好ましくは50%以下、更に好ましくは40%以下である。
凸部の接触面積率は、以下の方法により測定される。
【0026】
<凸部の接触面積率の測定方法>
本測定方法は、下記(1)~(5)の手順で実施される。
(1)測定対象の不織布(例えば不織布1)から平面視5cm四方の領域を切り出して測定試料とする。測定対象の不織布の面積が小さい等の理由で前記領域を確保できない場合は、できるだけ大きな面積の領域を切り出して測定試料とする。
(2)測定試料を、その測定面を上にして静置する。例えば、測定試料が不織布1から切り出されたものであれば第1面1a(凹凸面)が測定面であるので、第1面1aが上方を向くように測定試料を静置する。
(3)測定試料の測定面に質量300gの透明のアクリル製平板を載置し、12g/cm2の加重をかける。次いで、測定試料の測定面に対して、高精度形状計測システムKS-1100(商品名、株式会社キーエンス製)を用いて、レーザー光を照射して該測定面の表面形状(測定面の面方向に沿って起伏する厚みの高低形状)を測定し、画像を取り込む。その際、5×5cmの測定試料の測定面の全域に対し、1cm×1cmの測定範囲を、10cm/秒の移動速度で走査させて測定を行う(測定ピッチ:縦20μm、横20μm)。
(4)前記(3)にて取り込んだ画像に対し、形状解析アプリケーションKS-Analyzer(商品名、株式会社キーエンス製)を用いて解析を行う。具体的には、12g/cm2の加重をかけた状態におけるアクリル製平板との接触部位(最小測定可能スケール0.01μm)を抽出し二値化処理して、その部分の表面画像を得る。
(5)前記(4)で得た表面画像を、画像処理ソフトウエアNewQube(Ver.4.22、商品名、株式会社ネクサス製)を用いて取り込んで処理を行い、それらの面積を測定する。当該面積を凸部の接触面積とし、これを測定試料の面積で除すことで凸部の接触面積率を算出する。
【0027】
不織布1における底部の面積率は10%以上50%以下であることが好ましい。前記「底部の面積率」は、第1面1aに存在する底部6の面積の第1面1aの面積に対する割合である。前記底部の面積率を上述の範囲内に設定することによって、不織布の外観を保ち、また不織布に求められる強度を担保することができる。前記底部の面積率は、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上、そして、より好ましくは50%以下、更に好ましくは40%以下である。
【0028】
不織布1の見掛け厚みAT(
図2参照)は特に制限されないが、外観、強度、クッション性、吸収性物品などの商品形態における携帯性等の諸特性のバランスの観点から、好ましくは0.4mm以上、より好ましくは0.8mm以上、そして、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.5mm以下である。不織布1の見掛け厚みATは、
図2に示すように、凸部2の頂部と第2面20bとの間の厚み方向に沿う長さを指し、不織布1が中空部などの繊維非存在部を有する場合は、該繊維非存在部の厚みを含み得る。不織布の見掛け厚みは以下の方法により測定される。
【0029】
<不織布の見掛け厚みの測定方法>
測定対象の不織布(例えば不織布1)から平面視5cm四方の領域を切り出して測定試料とする。測定対象の不織布の面積が小さい等の理由で前記領域を確保できない場合は、できるだけ大きな面積の領域を切り出して測定試料とする。測定試料に0.5Paの荷重をかけた状態で、レーザー厚み計(例えば、オムロン株式会社製「ZSLD―80」)を用いて測定試料の厚みを測定する。以上の操作3回行い、得られた3つの測定値の平均値を、当該不織布の見掛け厚みとする。
【0030】
図示の形態では、複数の凸部2は、それぞれ、ドーム状をなし、第1面1aの平面視において円形状を有している。本発明では、凸部2の形状は特に制限されず、任意の形状を選択し得る。また、複数の凸部2どうしで形状が異なっていてもよい。
また、図示の形態では、複数の開孔部4は、それぞれ、平面視において一方向(方向X)に長い楕円形状を有している。本発明では、開孔部4の形状は特に制限されず、任意の形状を選択し得る。また、複数の開孔部4どうしで形状が異なっていてもよい。
また、図示の形態の不織布1は単層構造であるが、本発明の不織布は、2層以上の繊維層が厚み方向に積層された積層構造であってもよい。
【0031】
本発明の不織布はセルロース繊維を含有する。セルロース繊維としては、この種の布製品に使用可能なものを特に制限無く用いることができる。セルロース繊維としては、例えば、綿花から採取されるコットン繊維等の天然セルロース繊維や、レーヨン、キュプラ、リヨセル、テンセル等の再生セルロース繊維や、パルプ等が挙げられる。上記のセルロース繊維の中でも、コットン繊維、レーヨン、リヨセル、テンセルが好ましく、吸液性を向上させる観点から、コットン繊維がより好ましい。本発明の不織布は、2種類以上のセルロース繊維を含有してもよい。
【0032】
本発明の不織布において、セルロース繊維の含有量は、該不織布の全質量に対して90質量%以上である。これにより、不織布の構成繊維にセルロース繊維を用いることによる作用効果(品質向上、環境負荷低減等)が一層確実に奏される。本発明の不織布におけるセルロース繊維の含有量は、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、100質量%すなわち該不織布の全部がセルロース繊維であってもよい。
【0033】
本発明の不織布は、セルロース繊維以外の他の繊維を含有してもよい。その場合、不織布における他の繊維の分布形態は特に制限されず、例えば、セルロース繊維とともに不織布の全体に均一に分布していてもよく、あるいは偏在していてもよい。後者の具体例として、不織布が、セルロース繊維を主体とする第1の層と、他の繊維(例えば熱可塑性繊維)を含有する第2の層とを有し、両層が厚み方向に積層された形態が挙げられる。
【0034】
前記他の繊維の一例として、熱可塑性樹脂を主体とする熱可塑性繊維が挙げられる。不織布に熱可塑性繊維を含有させることで、強度の向上等が期待できる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。熱可塑性繊維は、1種類の熱可塑性樹脂又は2種類以上の熱可塑性樹脂を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維でもよく、あるいは複合繊維でもよい。複合繊維は、典型的には、成分の異なる2種類以上の熱可塑性樹脂を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られるもので、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造を有し、単繊維内で相互接着しているものを言う。複合繊維の形態には、芯鞘型、サイドバイサイド型等があり、特に制限されない。
本発明の不織布における熱可塑性繊維の含有量は、セルロース繊維による効果を低減させずに、熱可塑性繊維による効果を得る観点から、該不織布の全質量に対して、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは75質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
【0035】
本発明の不織布としては、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等を用いることができる。なかでも、不織布の強度及び外観の良好性の観点から、本発明の不織布はスパンレース不織布であることが好ましい。
【0036】
本発明の不織布は、典型的には、吸水性、通気性、液透過性を有するので、そのような特性が要求される用途に好適である。本発明の不織布の用途の一例として、着用物品の一種であり、尿、汗等の体液を吸収保持する機能を有する吸収性物品が挙げられる。吸収性物品の具体例として、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッドが挙げられる。本発明の不織布を着用物品に用いる場合、凸部が間欠配置された凹凸面、すなわち前述した不織布1であれば第1面1aが、当該着用物品の着用者の肌と対向する肌対向面となるようにすると、該凹凸面の肌触りの良さが活かされるため好ましい。
【0037】
次に、本発明の不織布の好適な製造方法及び製造装置について説明する。
図4には、本発明の不織布の好適な製造装置の一実施形態である製造装置10の要部(水流交絡装置12)が示されている。製造装置10を用いた不織布の製造方法では、前述の不織布1を製造する。
【0038】
製造装置10は、水流交絡装置12を備える。水流交絡装置12は、セルロース繊維を含有するウェブ11に水流交絡処理を施して不織布1を製造する装置であり、ウェブ11を搬送する搬送機構13と、搬送機構13によって搬送中のウェブ11が載置される凹凸支持体20と、凹凸支持体20に載置されたウェブ11に水流を噴射する水流ノズル17とを備える。
【0039】
搬送機構13は、回転軸回りに回転可能に支持された複数のロール14と、これら複数のロール14に架け渡され、水流ノズル17の下方を通って矢印R方向に周回する無端状のコンベアベルト15と、コンベアベルト15の周回軌道内に設置された吸引手段16とを備える。コンベアベルト15は、水流ノズル17から噴射された水が透過可能な構成を有しており、例えば、金属製又は合成樹脂製の線材からなる平織りの網状支持体、パンチングプレート等の多孔質支持体であり得る。吸引手段16は、コンベアベルト15を挟んで水流ノズル17と対向するように配置され、水流ノズル17から噴射されコンベアベルト15を透過した水を吸引可能に構成されている。
【0040】
水流ノズル17は、搬送機構13の上方に配置された水流噴射装置18におけるコンベアベルト15との対向面(下面)に配置されている。水流噴射装置18におけるコンベアベルト15との対向面においては、複数の水流ノズル17が、該対向面の下方を搬送中のウェブ11のCDの全長にわたって間欠配置されて、CDに延びるノズル列を形成し、且つ該ノズル列がMDに複数間欠配置されている。前記ノズル列がMDに好ましくは2列~5列、より好ましくは2列~4列間欠配置されている。これら一群の水流ノズル17により、搬送機構13によってMDに搬送中のウェブ11のCDの全域にわたって水流30を吹き付けることが可能である。
【0041】
搬送機構13、水流噴射装置18等の、水流交絡装置12における凹凸支持体20以外の構成については、従来公知の水流交絡装置におけるものと同様に構成することができる。
【0042】
以下、製造装置10の主たる特徴部分の1つである凹凸支持体20について説明する。
凹凸支持体20は、
図5及び
図6に示すように、複数の突起22が形成された凹凸面である第1面20aと、その反対側に位置する第2面20bとを有し、水流交絡装置12によるウェブ11の水流交絡処理では、第1面20aにウェブ11が直接載置される。
図示の形態では、凹凸支持体20の第2面20bには突起は形成されておらず、第2面20bにおける貫通孔23以外の部位は平坦である。
図示の形態では、凹凸支持体20は、第2面20bを介して、搬送機構13のコンベアベルト15に固定されており、コンベアベルト15とともに矢印R方向に周回する。凹凸支持体20のコンベアベルト15への固定方法は、ウェブ11の水流交絡処理を阻害しないことを前提として特に制限されず、ボルト等の固定具、接着剤等の公知の固定手段を用いた方法が挙げられる。
【0043】
凹凸支持体20は、凹凸支持体20のウェブ11が載置される面、すなわち凹凸面である第1面20aを形成し、凹凸支持体20の主体をなすベースプレート21と、ベースプレート21における第1面20aに対応する面に配置された複数の突起22と、ベースプレート21を厚み方向に貫通する複数の貫通孔23とを有する。
【0044】
図示の形態では、凹凸支持体20は、所定の素材からなる一体成型物であり、ベースプレート21と突起22とは、共通の素材からなり、一体不可分である。
図示の形態では、ベースプレート21は、金網のような、線材を編んで形成されたものではなく、所定の素材からなる板状物である。なお本発明では、ベースプレート21として、線材を編んで形成されたものを用いることもできる。
凹凸支持体20(ベースプレート21、突起22)の素材としては、ウェブの水流交絡処理に使用可能であることを前提として特に制限されず、例えば、金属、プラスチックが挙げられる。
【0045】
突起22及び貫通孔23は、凹凸支持体20の第1面20a、すなわち凹凸面であって水流交絡処理時にウェブ11が載置される面に散在している。ここで言う「散在」とは、突起22及び貫通孔23が、それぞれ、第1面20aに散らばって存在することを意味する。例えば、突起22及び/又は貫通孔23が第1面20aの中央部又は周縁部などの一部のみに存在しても良いが、得られる凹凸不織布1のクッション性を向上させる観点から、突起22及び/又は貫通孔23は第1面20aの全域に散らばって存在することが好ましい。
【0046】
凹凸支持体20の第1面20aに散在する突起22及び貫通孔23は、それぞれ、規則的に配置されていてもよく、無規則に配置されていてもよい。ここで言う「規則的に配置」とは、突起22及び貫通孔23が一定の法則に従って配置されることを指し、「無規則に配置」とは、そのような法則が見出せないような配置を指す。
図示の形態では、突起22及び貫通孔23は規則的に配置されている。具体的には
図5及び
図6に示すように、突起22及び貫通孔23は、それぞれ、千鳥状に配置されている。ここで言う「千鳥状に配置」とは、突起22を例に取ると、複数の突起22が一方向(MD又はCD)に等間隔に配置されてなる列が、該一方向と直交する方向(CD又はMD)に複数列配置され、且つ該一方向と直交する方向において、隣り合う2列どうしで互いに突起22がずれている配置を指す。貫通孔23の千鳥状配置についても同様である。突起22及び貫通孔23が千鳥状に配置されていることから、第1面20aでは、互いに直交するMD及びCDの双方において突起22と貫通孔23とが交互に配置され、また、1個の貫通孔23を中心としてその周囲の4カ所に突起22が等間隔に配置されている。また図示の形態では、貫通孔23は、MD及びCDの双方において、当該方向で隣り合う突起22,22間の中心に位置している。
【0047】
突起22は、ウェブ11の水流交絡処理において開孔部4又は凹部3の底部6の形成を促進するものである。典型的には、ウェブ11における水流交絡処理時に突起22と重なる部分に水流が噴射されることで、該部分から周辺部に繊維が移動し、その結果該部分(繊維の移動元)は、不織布1において繊維が存在しない開孔部4となるか、又は水流交絡処理前に比べて坪量が小さい凹部3の底部6となる。突起22の形状は、このような突起22の機能が十分に発現し得るものであることを前提として特に制限されず、任意の形状を選択し得る。また、複数の突起22どうしで形状が異なっていてもよい。
【0048】
図示の形態では、複数の突起22は、それぞれ、
図6(a)に示す如き平面視において、MDに長い形状をなし、CDにおいて相対向する一対の第1の面22A,22Aと、これら両面22A,22Aの周縁に接続する第2の面22Bとを有する。突起22の各面22A,22Bは、平面でも曲面でもよい。図示の形態では、第1の面22Aは平面、第2の面22Bは曲面であり、第2の面22Bは、
図6(a)に示す如き平面視において、MDの外方に向かって凸の円弧状をなしている。また、図示の形態では、複数の突起22は、それぞれ、
図6(b)に示す如きMD及び凹凸支持体20の厚み方向(突起22の高さ方向)に沿う断面視において、ベースプレート21から離れるに従って幅(MDの長さ)が漸次減少する先細り形状をなし、且つ突起22の先端は先鋭ではなく、丸みを帯びた円弧状をなしている。
【0049】
貫通孔23は、ウェブ11の水流交絡処理時に凸部2が形成される部位である。貫通孔23の形状は、このような貫通孔23の機能が十分に発現し得るものであることを前提として特に制限されず、任意の形状を選択し得る。図示の形態では、複数の貫通孔23は、それぞれ、
図6(a)に示す如き平面視において、円形状をなしているが、これに代えて、例えば、楕円形状、三角形形状、四角形形状にすることができる。また、複数の貫通孔23どうしで形状が異なっていてもよい。
【0050】
貫通孔23の第1面20a(凹凸面)側の開孔面積は、好ましくは2mm2以上、より好ましくは3mm2以上、そして、好ましくは8mm2以下、より好ましくは7mm2以下である。貫通孔23は前述したとおり、ウェブ11の水流交絡処理時に不織布1の凸部2が形成される部位であるところ、貫通孔23の凹凸面側(ウェブ11の載置面側)の開孔面積が小さすぎると、凸部2の形成が困難となるため、不織布1の保水性が低下するおそれがある。また、貫通孔23の凹凸面側の開孔面積が大きすぎると、不織布の形成及び、不織布外観の悪化のおそれがある。
【0051】
ベースプレート21の厚みT(
図5、
図6(b)及び(c)参照)は、好ましくは2.5mm以上、より好ましくは3mm以上である。ベースプレート21の厚みTが小さすぎると、貫通孔23の深さが比較的浅いものとなるため、凸部2の突出高さ(第1面1aにおける凸部2と凹部3の底部との高低差)が不十分となり、延いては不織布1の見掛け厚みAT(
図2参照)が不十分となり、その結果、不織布1が立体感に乏しいものとなるおそれがある。厚みTの上限は特に制限されないが、凸部形成や不織布外観の観点から、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下である。なお、ベースプレート21の厚みTが均一でない場合、厚みTの最小値が前記特定範囲にあることが好ましい。
【0052】
貫通孔23の開孔面積は、第1面20a(凹凸面)側のみならず、その反対側に位置する第2面20b側でも前記特定範囲に設定されていることが好ましい。図示の形態では、斯かる好ましい形態が採用されている。すなわち
図5及び
図6に示す凹凸支持体20においては、貫通孔23の開孔面積は、貫通孔23の深さ方向(ベースプレート21の厚み方向)の全長にわたって一定であり、第1面20a側と第2面20b側とで、貫通孔23の開孔面積は同じである。
【0053】
ベースプレート21の厚みTに対する突起22の高さH(
図6(b)及び(c)参照)の比率(H/T)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下である。H/Tが前記特定範囲にあることで、得られる不織布はその凹凸構造がより顕著になり、液戻りをしにくくなる。
【0054】
不織布1に代表される本発明の不織布を確実に製造する観点から、貫通孔23の最大差し渡し長さLmax(
図6参照)に対するベースプレート21の厚みTの比率(T/Lmax)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、そして、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。
【0055】
本明細書において、「貫通孔の差し渡し長さ」とは、貫通孔の平面視において、貫通孔の中心を通って該貫通孔の一方の端から他方の端に延在する仮想直線を引いた場合に、その仮想直線の延在方向の長さを指す。そして、前記仮想直線が複数存在する場合において、延在方向の長さが最大のものの延在方向の長さが「最大差し渡し長さLmax」であり、延在方向の長さが最小のものの延在方向の長さが「最小差し渡し長さLmin」である。
貫通孔の差し渡し長さは、その測定部位によって異なり得る。例えば、図示の形態の貫通孔23は、全体形状が円筒形であり、平面視円形状をなし且つ貫通孔23の深さ方向(ベースプレート21の厚み方向)の全長にわたってその形状及び大きさが一定であって変化しないので、貫通孔23が有する差し渡し長さは円の直径1種類のみであり、最大差し渡し長さLmax及び最小差し渡し長さLminはともに直径に等しい。
【0056】
本発明の不織布を確実に製造する観点から、凹凸支持体20の各部の寸法等は以下のように設定することが好ましい。
突起22の高さH(
図6(b)及び(c)参照)は、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2mm以上、そして、好ましくは7mm以下、より好ましくは5mm以下である。
突起22のMDの長さL1(
図6(a)及び(b)参照)は、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは3.5mm以下である。
突起22のCDの長さL2(
図6(a)及び(c)参照)は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、そして、好ましくは4mm以下、より好ましくは2mm以下である。
【0057】
貫通孔23の最大差し渡し長さLmax(
図6参照)は、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは4mm以下である。
貫通孔23の最小差し渡し長さLminは、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2mm以上、そして、好ましくは3.5mm以下、より好ましくは3mm以下である。
前記の最大差し渡し長さLmax及び最小差し渡し長さLminの好ましい範囲は、少なくとも貫通孔23の第1面20a(凹凸面)側の開孔端において満たされることが好ましく、図示の円筒形の貫通孔23のように、貫通孔23の全域において満たされることがより好ましい。
【0058】
突起22のMDにおけるピッチ22P1(
図6(a)及び(b)参照)は、好ましくは4mm以上、より好ましくは5mm以上、そして、好ましくは14mm以下、より好ましくは8mm以下である。「ピッチ22P1」は、MDにおいて隣り合う2個の突起22,22それぞれのMDの中央どうしのMDに沿う長さを指す。
突起22のCDにおけるピッチ22P2(
図6(a)及び(c)参照)は、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、そして、好ましくは12mm以下、より好ましくは7mm以下である。「ピッチ22P2」は、CDにおいて隣り合う2個の突起22,22それぞれのCDの中央どうしのCDに沿う長さを指す。
貫通孔23のMDにおけるピッチ23P1(
図6(a)及び(b)参照)は、好ましくは4mm以上、より好ましくは6mm以上、そして、好ましくは14mm以下、より好ましくは7mm以下である。「ピッチ23P1」は、MDにおいて隣り合う2個の貫通孔23,23それぞれのMDの中央どうしのMDに沿う長さを指す。
貫通孔23のCDにおけるピッチ23P2(
図6(a)及び(c)参照)は、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは7mm以下である。「ピッチ23P2」は、CDにおいて隣り合う2個の貫通孔23,23それぞれのCDの中央どうしのCDに沿う長さを指す。
【0059】
凹凸支持体20における貫通孔23の開孔面積率、すなわち「ベースプレート21における凹凸支持体20の第1面20aに対応する面の全面積を100とした場合の、該面に配置された全ての貫通孔23の開孔面積の合計値の割合」は特に制限されないが、本発明の不織布を確実に製造する観点、ベースプレート21の強度確保等の観点から、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、そして、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下である。
【0060】
製造装置10は、水流交絡装置12に加えて、ウェブ形成装置(図示せず)を備えていてもよい。前記ウェブ形成装置は、水流交絡装置12で水流交絡処理に供されるウェブ11を形成する装置であり、水流交絡装置12よりもMDの上流側に配置される。前記ウェブ形成装置としては、乾式法、湿式法等の公知のウェブ形成方法を用いてウェブを製造する装置を特に制限無く用いることができる。前記ウェブ形成装置は、典型的には、カード機を備え、乾式法の一種であるカード法によってウェブを形成する。本発明において、ウェブは、単層構造でもよく、2層以上が積層された積層構造でもよい。
【0061】
本発明において「ウェブ」とは、繊維どうしが実質的に結合されていない、繊維間未結合の繊維集合体を指す。具体的には「ウェブ」は、乾式法等の公知のウェブ形成方法によって形成された繊維集合体で、且つ水流交絡法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法等の公知の繊維間結合法による処理が施されていない繊維集合体を指す。
【0062】
本発明の不織布の好適な製造方法では、ウェブを水流噴射工程に供して水流交絡処理を施すことで、ウェブの構成繊維どうしを交絡させてこれらを実質的に結合する。
ウェブが構成繊維としてコットン繊維等のセルロース繊維を主体とするものである場合(具体的には例えば、ウェブの構成繊維の全質量に占めるセルロース繊維の含有質量の割合が好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上である場合)、典型的には、後述する第1の製造方法のように、ウェブに前記水流交絡処理を施した後、必要に応じ該ウェブを乾燥することで、該ウェブは、構成繊維どうしが実質的に結合した不織布となる。
また、ウェブが構成繊維としてセルロース繊維に加えて更に熱可塑性繊維を含む場合には、後述する第2の製造方法のように、ウェブに対し、前記水流交絡処理を施した後、更に加熱処理を施すことが好ましい。前記加熱処理は、ウェブを、該ウェブに含まれる熱可塑性繊維の融点以上の温度で加熱する処理であり、これにより、該熱可塑性繊維どうしが融着して実質的に結合する。したがって、前記水流交絡処理及び加熱処理の双方が施されたウェブは、セルロース繊維どうしが交絡により実質的に結合しているとともに、熱可塑性繊維どうしが融着により実質的に結合し、更には、セルロース繊維と熱可塑性繊維とが融着により結合し得る。
【0063】
製造装置10は、水流交絡装置12で製造された不織布から水分を除去する乾燥装置(図示せず)を備えていてもよい。前記乾燥装置は、基本的には繊維集合体中の水分除去(乾燥処理)を目的とするものであるが、ウェブに含まれる熱可塑性繊維の溶融・融着(加熱処理)を実施するものであってもよく、本発明の不織布の好適な製造方法では、該乾燥装置を用いて繊維集合体の乾燥処理と加熱処理とを同時に実施してもよい。前記乾燥装置は、水流交絡装置12よりもMDの下流側に配置される。前記乾燥装置としては、スパンレース不織布の製造装置において、水流交絡処理された不織布の乾燥に使用可能なものを特に制限無く用いることができる。前記乾燥装置によって不織布に施される乾燥処理の具体例として、熱風の吹き付け、乾燥気体の吹き付け、ヒーターによる加熱、赤外線の照射、加熱ロールへの接触、吸引ロール等を用いた水分の吸引が挙げられる。
【0064】
次に、本発明の不織布の好適な製造方法について、前述した製造装置10を用いた不織布1の製造方法を例に取って説明する。
本発明の不織布の好適な製造方法は、少なくとも水流噴射工程を有する。前記水流噴射工程では、
図4に示すように、凹凸支持体20の第1面20a(凹凸面)に、セルロース繊維を含有するウェブ11を載置した状態で、水流ノズル17からウェブ11に水流30を噴射することで、ウェブ11に含有される繊維どうしを交絡させるとともに、ウェブ11に凸部2(
図1、
図7等参照)を形成する。
【0065】
製造目的物である不織布1は開孔部4を有しているので、前記水流噴射工程では、ウェブ11における突起22に対応する部位に水流30を噴射して開孔部4を形成する。
【0066】
図7には、前記水流噴射工程の様子が示されている。
図7(a)は、凹凸支持体20の第1面20aにウェブ11を載置した状態であり、水流交絡処理が施される直前の様子を示している。水流交絡処理前のウェブ11は、凹凸が無く実質的に平坦である。
図7(a)に示す状態から、凹凸支持体20と第2面20bを介して固定されているコンベアベルト15の回転に伴い、ウェブ11及び凹凸支持体20が一体的にMDに搬送され、水流噴射装置18の真下に到達すると、
図7(b)に示すように、水流噴射装置18が備える水流ノズル17から噴射された水流30がウェブ11に吹き付けられる。前述したように、水流30はウェブ11のCDの全域にわたって均一に吹き付けられ、また、ウェブ11に対して略垂直に吹き付けられる。ウェブ11における水流30が吹き付けられた部位は、該部位の構成繊維どうしが交絡するとともに、凹凸支持体20側に押圧されて第1面20a(凹凸面)に沿うように変形する。このとき、ウェブ11における突起22に対応する部位は、上方から吹き付けられる水流30と該部位を下方から支持する突起22とによって構成繊維がより分けられるとともに、該突起22によって貫通され、最終的には
図7(c)に示すように開孔部4(繊維の坪量がゼロの部位)となる。また、こうしてウェブ11における突起22に対応する部位からより分けられた繊維は、凹凸支持体20の第1面20a上を突起22から貫通孔23に向かって流れる水によって貫通孔23の内部に移動する。水流交絡処理時においては、貫通孔23の第2面20b側の開孔端(水及び繊維の流入側とは反対側の開孔端)は、コンベアベルト15によって少なくとも繊維が流出し難い程度には閉塞されているので、貫通孔23の内部には、周辺部から移動してきた繊維が集積され、最終的には
図7(c)に示すように凸部2が形成される。また、凹凸支持体20の第1面20aにおける突起22及び貫通孔23以外の部位は、凹凸の無い平坦部であるところ、ウェブ11における該平坦部に対応する部位は、水流30によって該平坦部側に押圧され、最終的には
図7(c)に示すように凹部3の底部6となる。こうして、水流交絡処理によってウェブ11に凸部2、凹部3の底部及び開孔部4が形成されるとともに、ウェブ11の構成繊維どうしが交絡することで、該ウェブ11は不織布1となる。
なお、ウェブ11にコットン繊維等のセルロース繊維及び熱可塑性繊維が含まれている場合は、後述する第2の製造方法のように、ウェブ11の水流交絡処理の後に、ウェブ11を加熱工程に供し、ウェブ11に含まれる熱可塑性繊維の融点以上の温度で加熱する加熱処理を施すことが好ましく、これにより、熱可塑性繊維どうしが融着により実質的に結合され、ウェブ11は不織布1となる。
【0067】
特に図示の形態の凹凸支持体20は、
図6(a)等に示すように、第1面20aにおいて、1個の貫通孔23を中心として、これを包囲するように複数(4個)の突起22が配置されているため、水流交絡処理時に第1面20aに吹き付けられた水は、該複数の突起22から該1個の貫通孔23に向かって収束しやすい。そのため、貫通孔23には、周辺の複数の突起22から水とともに移動してきたウェブ11の繊維が集積しやすく、したがって凸部2が形成されやすい。また、このように貫通孔23の周囲の複数箇所から繊維が移動してきて該貫通孔23に集積することで凸部2が形成されると、その凸部2の頂部とは反対側には前記微小窪み部が形成されやすい。前記微小窪み部には、凸部2とともに不織布1のクッション性や保水性を高める効果が期待できる。
【0068】
前記水流噴射工程において、ウェブ11のMDの搬送速度、水流ノズル17から噴射される水流の水圧は特に制限されないが、本発明の不織布を確実に製造する観点から、以下のように設定することが好ましい。
ウェブ11のMDの搬送速度は、好ましくは1m/分以上、より好ましくは3m/分以上、そして、好ましくは120m/分以下、より好ましくは100m/分以下である。
水流ノズル17から噴射される水流の水圧は、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上、そして、好ましくは10MPa以下、より好ましくは8MPa以下である。
水流ノズル17のノズル穴径は、好ましくは0.03mm以上、より好ましくは0.05mm以上、更に好ましくは0.08mm以上、そして、好ましくは0.50mm以下、より好ましくは0.30mm以下、更に好ましくは0.20mm以下である。
複数の水流ノズル17が、CDの全長にわたって間欠配置される場合、水流ノズル17のノズル穴ピッチは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下、更に好ましくは1.0mm以下である。
【0069】
図4に示す水流噴射装置18のように、水流ノズル又はCDに間欠配置された複数の水流ノズルからなるノズル列が、MDに複数間欠配置されている場合、MDの上流側に位置する水流ノズルと下流側に位置する水流ノズルとで、水流ノズルから噴射される水流の水圧を異ならせてもよい。具体的には例えば、水流ノズルから噴射される水流の水圧を、MDの上流側から下流側に向かって徐々に増加させてもよい。また、同様に、MDの上流側に位置する水流ノズルのノズル穴径と下流側に位置する水流ノズルのノズル穴径とで、ノズル穴径を異ならせてもよい。具体的には例えば、ノズル穴径を、MDの上流側から下流側に向かって徐々に増大させてもよい。更に、CDに間欠配置された複数の水流ノズルからなるノズル列が、MDに複数間欠配置されている場合、MDの上流側に位置するノズル列のノズル穴ピッチと下流側に位置するノズル列のノズル穴ピッチとで、ノズル穴ピッチを異ならせてもよい。具体的には例えば、前記ノズル穴ピッチを、MDの上流側から下流側に向かって徐々に減少させてもよい。こうすることで、不織布の地合いを一層良好にし得る。
【0070】
前記水流噴射工程の後は、必要に応じ、該水流噴射工程で得られた不織布1から水分を除去する乾燥工程を実施してもよい。すなわち本発明の不織布の好適な製造方法は、前記水流噴射工程の後に前記乾燥工程を有していてもよい。前記乾燥工程は、前記乾燥装置を用いて常法に従って実施することができる。
【0071】
本発明の不織布の好適な製造方法には、前記水流噴射工程の後、必要に応じ前記乾燥工程を実施する態様(以下、「第1の製造方法」とも言う。)と、2)前記水流噴射工程の後、必要に応じ前記乾燥工程を実施し、更にウェブを加熱処理する加熱工程を有する態様(以下、「第2の製造方法」とも言う。)とが包含される。第1の製造方法については、前述したとおりである。第2の製造方法は、加熱工程を有する点以外は、第1の製造方法と同じである。典型的には、第1の製造方法は、製造目的物である不織布が構成繊維としてコットン繊維等のセルロース繊維のみを含むものである場合に適用され、第2の製造方法は、製造目的物である不織布が構成繊維としてセルロース繊維及び熱可塑性繊維を含む場合に適用される。第1の製造方法で使用するウェブは、セルロース繊維のみを含み、第2の製造方法で使用するウェブは、セルロース繊維及び熱可塑性繊維を含む。
【0072】
以下、第2の製造方法について説明する。第2の製造方法は、前記水流噴射工程に加えて更に、該水流噴射工程を経たウェブを、該ウェブに含まれる熱可塑性繊維の融点以上の温度で加熱する加熱工程を有する。セルロース繊維及び熱可塑性繊維を含むウェブを前記水流噴射工程に供することで、セルロース繊維どうしが交絡により実質的に結合し、更に、該ウェブを前記加熱工程に供することで、熱可塑性繊維どうしが融着により実質的に結合し、不織布となる。前記加熱工程では、熱可塑性繊維どうしのみならず、熱可塑性繊維とセルロース繊維との間も融着により結合し得る。第2の製造方法によれば、ウェブの結合強度が向上し、製造工程におけるウェブの取扱性が向上するとともに、最終的に得られる不織布の強度が向上し得る。融点の異なる2種類以上の熱可塑性繊維を用いた場合、前記加熱工程では、最も高い融点以上の温度でウェブを加熱することが好ましい。
第2の製造方法を、前述した製造装置10を用いて実施する場合、水流交絡装置12よりもMDの下流側に、前記加熱工程を実施する加熱装置が配置される。前記加熱装置でウェブに施される加熱処理の具体例として、熱風の吹き付け、ヒーターによる加熱、加熱ロールへの接触、赤外線の照射が挙げられる。
【0073】
第2の製造方法において、ウェブにおける熱可塑性繊維の含有量は、製造目的物である不織布における熱可塑性繊維の含有量と同じに調整すればよく、これについては前述したとおりである。
ウェブにおける熱可塑性繊維の分布形態は特に制限されず、例えば、セルロース繊維とともにウェブの全体に均一に分布していてもよく、あるいは偏在していてもよい。後者の具体例として、ウェブが、セルロース繊維を主体とする第1の層と、熱可塑性繊維を含有する第2の層とを有し、両層が厚み方向に積層された形態が挙げられる。
【0074】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例0075】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0076】
〔実施例1~7、比較例1~3〕
前記第1の製造方法によって不織布を製造した。具体的には、
図4に示す製造装置(水流交絡装置)と基本構成が同様の装置を用い、ウェブに水流交絡装処理を施して不織布を製造した。ウェブの原料繊維として、セルロース繊維の一種であるコットン繊維のみを用い、カード法により常法に従って単層構造のウェブを形成した。前記水流交絡処理は、凹凸支持体の片面(凹凸面)にウェブを載置した状態で該ウェブに水流を噴射することにより実施した。前記水流交絡処理では、水流噴射装置として、CDに間欠配置された複数の水流ノズルからなるノズル列が、MDに3列間欠に配置されたものを使用し、該水流噴射装置にウェブを2回導入することで該水流交絡処理を実施した。前記の水流ノズルについて、MDの最上流に配置されたノズル列の水流ノズルを水流ノズルAとし、MDの下流側に向かって順に水流ノズルB、水流ノズルCとした場合に、水流ノズルAの水圧は1MPa、水流ノズルBの水圧は3MPa、水流ノズルCの水圧は4MPaであった。
またウェブの搬送速度は5m/分であった。水流ノズルAおよびBは、ノズル穴径が0.10mmでノズル穴ピッチが1.0mmのものを使用し、水流ノズルCはノズル穴径が0.12mmでノズル穴ピッチが0.6mmのものを使用した。
実施例1~7においては、支持体として
図6及び
図7に示す凹凸支持体20を用いた。上述のとおり、凹凸支持体20は突起22及び貫通孔23を有している。一方、比較例1においては、突起22及び貫通孔23を有しない支持体を用いた。比較例2においては、突起22を有するが、貫通孔23を有しない支持体を用いた。比較例3においては、貫通孔23を有するが、突起22を有しない支持体を用いた。下記表1に、各実施例及び比較例で用いた支持体の詳細を示す。
【0077】
得られた各実施例及び比較例の不織布について、坪量や見掛け厚み等の測定を行った。測定項目及びその測定結果を下記表1に示す。各測定項目の測定方法は既に説明したとおりであるため、ここではその説明を省略する。なお、表1において「凸部の総面積の面積率」は、不織布の凹凸面(不織布1の第1面1aに相当する面)における凸部総面積の、該凹凸面の面積に対する割合を表す。凸部の総面積の面積率は、前記<不織布の凸部及び底部の総面積の測定方法>に記載の方法に従って測定した凸部総面積を、該凸部総面積の測定に使用した測定試料の面積で除すことで算出した。
【0078】
<液戻り量評価>
実施例及び比較例の不織布の凹凸面(不織布1の第1面1aに相当する面)を使用者の肌に対向させて向くように配して、吸収性物品(生理用ナプキン)を製造した。不織布の大きさは8cm×7cmとした。不織布以外の吸収性物品の構成は、花王株式会社製の生理用ナプキン(ロリエ(登録商標) エフ しあわせ素肌 ふんわりタイプ 22.5cm、2018年製)と同一とした。
この生理用ナプキンを、不織布の凹凸面が上方を向くように平らな台の上に載置した。当該不織布の上に、直径が10mmで、高さが50mmである円筒が一体成形されたアクリル製注液プレートを、その注液孔が不織布の中央に位置するように載置した。この状態下に、6gの擬似血液を円筒内に一気に注入した。注入から1分経過後、注液プレートを除去し、生理用ナプキンを2分間静置した。
その後、不織布における擬似血液注入領域及びその近傍領域の上に、予め秤量したティッシュペーパー(その質量をW1とする。)を載せた。次いで、そのティッシュペーパーの上に2.5gf/cm2の荷重が付与されるようにおもりを載せ、5秒間静置した。その後、荷重を解除し、ティッシュペーパーの質量W2を測定した。液戻り量は、質量W2から質量W1を差し引くことによって算出さした。液戻り量の値が小さいほど、吸収された液が不織布の第1面側に戻りにくいことを意味する。結果を表1に示す。
上記の測定に用いた擬似血液は株式会社日本バイオテスト研究所製の馬脱繊維血液であった。馬脱繊維血液は、これを放置すると、粘度の高い部分(赤血球など)は沈殿し、粘度の低い部分(血漿)は、上澄みとして残る。本測定においては、それらの部分の混合比率を調整して、擬似血液の粘度が25℃において8.0cPになるようにした。この際、擬似血液の粘度は東機産業株式会社製のTVB10形粘度計を用いて測定した。測定条件は30rpmとした。
【0079】
【0080】
実施例1~7の不織布にはいずれも複数の凸部、底部、及び開孔部が形成され、また凸部と底部との坪量の比B2/B1は2以上であった。その一方で、比較例1~3の不織布は、凸部及び開孔部の少なくとも一方を有していなかった。表1に示すように、実施例1~7の不織布は、比較例1~3の不織布に比べて液戻り量が少ない点で優れていることが分かる。