(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126772
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】二輪車駆動装置
(51)【国際特許分類】
B62M 7/12 20060101AFI20240912BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20240912BHJP
H02K 7/10 20060101ALI20240912BHJP
B60L 15/00 20060101ALI20240912BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B62M7/12
H02K9/06 C
H02K7/10 D
B60L15/00 Z
B60L15/20 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035393
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 仁之
【テーマコード(参考)】
5H125
5H607
5H609
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AB03
5H125BA04
5H125CD07
5H125FF01
5H125FF22
5H607AA02
5H607AA08
5H607BB01
5H607BB09
5H607BB14
5H607BB17
5H607CC01
5H607CC03
5H607DD07
5H607DD08
5H607EE28
5H607JJ05
5H609BB03
5H609PP02
5H609QQ02
5H609RR03
(57)【要約】
【課題】回転電機のメンテナンス性及び冷却性能を向上できる二輪車駆動装置を提供する。
【解決手段】二輪車駆動装置1は、複数の電動モータ2と、電動モータ2の回転力を車軸に伝達する伝達ユニット3と、を備える。伝達ユニット3は、ユニットケース40と、ユニットケース40内に収納され、電動モータ2の回転力を車軸に出力する伝達機構70と、を備える。複数の電動モータ2は、ユニットケース40とは別体で設けられており、ユニットケース40の外側に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動二輪車を走行させるための回転力を発生させる複数の回転電機と、
前記回転力を前記電動二輪車の車軸に伝達する伝達ユニットと、
を備え、
前記回転電機は、
コイルが巻回されたステータと、
前記ステータに対して回転自在に設けられたロータと、
を備え、
前記伝達ユニットは、
ユニットケースと、
前記ユニットケース内に収納され、前記回転力が入力されるとともに前記車軸に前記回転力を出力する伝達機構と、
を備え、
前記複数の回転電機は、前記ユニットケースとは別体で設けられており、前記ユニットケースの外側に配置されており、
前記ユニットケースにおける前記電動二輪車の車幅方向の両外側に設けられ、前記ステータを固定するためのステータ固定プレートを備え、
前記複数の回転電機のうち、最も前記ユニットケースに近接配置された前記回転電機の前記ステータが、前記ステータ固定プレートに固定されている、
ことを特徴とする二輪車駆動装置。
【請求項2】
前記回転電機は2つであり、
前記伝達機構は、前記回転力が入力される入力軸を備え、
前記入力軸は、前記車幅方向に延びており、
2つの前記回転電機は、前記ユニットケースにおける前記車幅方向の両外側に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の二輪車駆動装置。
【請求項3】
前記ロータは、前記ステータを覆うように有底筒状に形成されたフライホイールを含み、
前記回転電機は、前記ステータ及び前記フライホイールを前記車幅方向の外側から覆い、前記ステータ及び前記フライホイールを収容する回転電機ケースを備え、
前記入力軸における軸方向の両端に、それぞれ前記フライホイールが固定されており、
前記ユニットケースにおける前記車幅方向の両外側に、前記ステータ固定プレートを介して前記ステータが固定されており、
前記フライホイールの底部は、前記車幅方向の外側に向いている、
ことを特徴とする請求項2に記載の二輪車駆動装置。
【請求項4】
前記回転電機ケースは、樹脂により形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の二輪車駆動装置。
【請求項5】
前記ステータ固定プレートの一部は、前記ステータ固定プレートの側面に沿う方向において前記ユニットケースよりも外側に張り出している、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の二輪車駆動装置。
【請求項6】
前記フライホイールの前記底部に設けられ、前記フライホイールと一体となって回転するファンを備え、
前記回転電機ケースに、前記ファンによって発生する冷却風を通過させるケース通風口が形成されており、
前記フライホイールの前記底部に、前記ファンによって発生する冷却風を通過させるホイール通風口が形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の二輪車駆動装置。
【請求項7】
前記回転電機における前記車幅方向の最外側端に、前記ファンが配置されている、
ことを特徴とする請求項6に記載の二輪車駆動装置。
【請求項8】
前記ステータ固定プレートと前記フライホイールの開口縁との間に、前記冷却風を通過させる隙間が形成されている、
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の二輪車駆動装置。
【請求項9】
前記ステータ固定プレートの前記車幅方向の外側面のうち、少なくとも前記ステータの周辺箇所が平坦に形成されている、
ことを特徴とする請求項8に記載の二輪車駆動装置。
【請求項10】
前記ユニットケースにおける前記車幅方向の外側面から突出形成され台座を備え、
前記台座は、前記回転電機を取りつけるための取付面を有し、
前記ユニットケースの前記外側面は、少なくとも前記入力軸の軸方向からみて前記取付面に取り付け得る最大サイズの前記回転電機と重なる回転電機対向領域を有し、
前記取付面及び前記回転電機対向領域は平坦に形成されており、
前記回転電機対向領域の延在方向に沿うように前記取付面が形成されている、
ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の二輪車駆動装置。
【請求項11】
前記取付面に前記ステータ固定プレートが取り付けられており、
前記ステータ固定プレートの前記車幅方向の内側面が平坦に形成されている、
ことを特徴とする請求項10に記載の二輪車駆動装置。
【請求項12】
前記ステータ固定プレートは、厚さ方向の両側面が平坦に形成されているとともに、均一厚さの平板に形成されている、
ことを特徴とする請求項11に記載の二輪車駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車などの鞍乗型車両として、近年、エンジンなどの内燃機関に代えて回転電機(電動モータ)を動力とした二輪車駆動装置を搭載した鞍乗型電動車両が開発されている。この種の二輪車駆動装置は、内燃機関のトルクと同程度のトルクを確保するために、複数の回転電機を必等とする場合がある。このような場合において自動二輪車の大型化を抑制するために、回転電機を省スペースに配置するさまざまな技術が提案されている。
【0003】
例えば、自動二輪車における駆動輪の左右にそれぞれ回転電機を設け、各回転電機の動力を合成した動力で駆動輪を駆動する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このものは、各回転電機の動力を、それぞれ対応する伝達機構を介して駆動輪に伝達している。伝達機構のケースの一部と回転電機のケースの一部とが兼用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、伝達機構のケースの一部と回転電機のケースの一部とが兼用されているので、二輪車駆動装置の構造が複雑化してしまう。このため、伝達機構と回転電機とを分解しにくく、回転電機のメンテナンス性が悪いという課題があった。
また、伝達機構の一部に回転電機が組み込まれたような形になるので、回転電機を冷却しにくいという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、回転電機のメンテナンス性及び冷却性能を向上できる二輪車駆動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の第1態様では、電動二輪車を走行させるための回転力を発生させる複数の回転電機と、前記回転力を前記電動二輪車の車軸に伝達する伝達ユニットと、を備え、前記回転電機は、コイルが巻回されたステータと、前記ステータに対して回転自在に設けられたロータと、を備え、前記伝達ユニットは、ユニットケースと、前記ユニットケース内に収納され、前記回転力が入力されるとともに前記車軸に前記回転力を出力する伝達機構と、を備え、前記複数の回転電機は、前記ユニットケースとは別体で設けられており、前記ユニットケースの外側に配置されており、前記ユニットケースにおける前記電動二輪車の車幅方向の両外側に設けられ、前記ステータを固定するためのステータ固定プレートを備え、前記複数の回転電機のうち、最も前記ユニットケースに近接配置された前記回転電機の前記ステータが、前記ステータ固定プレートに固定されている。
【0008】
このように構成することで、ユニットケースから容易に回転電機を取り外すことができるので、回転電機のメンテナンス性を向上できる。また、ユニットケースの外側に回転電機が配置されているので、回転電機の冷却性能を向上できる。
また、ステータ固定プレートを設けることにより、ユニットケースに回転電機を固定するにあたり、回転電機のサイズ変更に対して柔軟に対応できる。すなわち、回転電機のサイズが変更されてもステータ固定プレートのサイズを変更するだけでよく、ユニットケースに回転電機を容易に固定することができる。
【0009】
本発明の第2態様では、第1態様の二輪車駆動装置において、前記回転電機は2つであり、前記伝達機構は、前記回転力が入力される入力軸を備え、前記入力軸は、前記車幅方向に延びており、2つの前記回転電機は、前記ユニットケースにおける前記車幅方向の両外側に配置されている。
【0010】
このように構成することで、二輪車駆動装置を小型化しつつ、入力軸に十分な回転力を付与することができる。
【0011】
本発明の第3態様では、第1態様又は第2態様の二輪車駆動装置において、前記ロータは、前記ステータを覆うように有底筒状に形成されたフライホイールを含み、前記回転電機は、前記ステータ及び前記フライホイールを前記車幅方向の外側から覆い、前記ステータ及び前記フライホイールを収容する回転電機ケースを備え、前記入力軸における軸方向の両端に、それぞれ前記フライホイールが固定されており、前記ユニットケースにおける前記車幅方向の両外側に、前記ステータ固定プレートを介して前記ステータが固定されており、前記フライホイールの底部は、前記車幅方向の外側に向いている。
【0012】
回転電機ケースには、ステータが固定されることがない。このため、回転電機ケースの剛性を無駄に高める必要がない。したがって、回転電機ケースを軽量化でき、二輪車駆動装置を小型化、軽量化できる。
また、ユニットケースにステータ固定プレートを介してステータが固定されているので、コイルへのリード線の引き回しを簡素化できる。このため、二輪車駆動装置のレイアウト性を向上できる。
【0013】
本発明の第4態様では、第3態様の二輪車駆動装置において、前記回転電機ケースは、樹脂により形成されている。
【0014】
このように構成することで、回転電機ケースをさらに軽量化できる。
【0015】
本発明の第5態様では、第1態様から第4態様のいずれかの態様の二輪車駆動装置において、前記ステータ固定プレートの一部は、前記ステータ固定プレートの側面に沿う方向において前記ユニットケースよりも外側に張り出している。
【0016】
このように構成することで、ユニットケースよりも外側に張り出した2つのステータ固定プレートが車幅方向で対向される。このため、例えば回転電機に車幅方向に冷却風を吹き付けると2つの回転電機に冷却風が吹き付けられることになり、回転電機への冷却効率を高めることができる。
【0017】
本発明の第6態様では、第3態様の二輪車駆動装置において、前記フライホイールの前記底部に設けられ、前記フライホイールと一体となって回転するファンを備え、前記回転電機ケースに、前記ファンによって発生する冷却風を通過させるケース通風口が形成されており、前記フライホイールの前記底部に、前記ファンによって発生する風を通過させるホイール通風口が形成されている。
【0018】
このように構成することで、ファンによって発生する冷却風をステータに吹き付けることができ、回転電機の冷却効率をさらに高めることができる。
【0019】
本発明の第7態様では、第6態様の二輪車駆動装置において、前記回転電機における前記車幅方向の最外側端に、前記ファンが配置されている。
【0020】
このように構成することで、ファンによって発生する冷却風を、回転電機全体に満遍なく吹き付けることができる。このため、回転電機の冷却効率をさらに高めることができる。
【0021】
本発明の第8態様では、第6態様又は第7態様の二輪車駆動装置において、前記ステータ固定プレートと前記フライホイールの開口縁との間に、前記風を通過させる隙間が形成されている。
【0022】
このように構成することで、ファンによって発生する冷却風を、隙間を介して回転電機の外部に排気できる。これにより、回転電機内に冷却風を通しやすくすることができ、回転電機の冷却効率をさらに高めることができる。
【0023】
本発明の第9態様では、第8態様の二輪車駆動装置において、前記ステータ固定プレートの前記車幅方向の外側面のうち、少なくとも前記ステータの周辺箇所が平坦に形成されている。
【0024】
このように構成することで、ファンによって発生する冷却風が隙間を介して外部に排気される際、ステータ固定プレートの外側面に沿って冷却風をスムーズに流すことができる。すなわち、ステータ固定プレートの外側面上での乱流の発生を防止できる。このため、回転電機の冷却効率をさらに高めることができる。
【0025】
本発明の第10態様では、請求項2から請求項4のいずれかの態様の二輪車駆動装置において、前記ユニットケースにおける前記車幅方向の外側面から突出形成され台座を備え、前記台座は、前記回転電機を取りつけるための取付面を有し、前記ユニットケースの前記外側面は、少なくとも前記入力軸の軸方向からみて前記取付面に取り付け得る最大サイズの前記回転電機と重なる回転電機対向領域を有し、前記取付面及び前記回転電機対向領域は平坦に形成されており、前記回転電機対向領域の延在方向に沿うように前記取付面が形成されている。
【0026】
このように構成することで、取付面を形成することにより、さまざまなサイズの回転電機をユニットケースにより容易に取り付けることができる。取付面及び回転電機対向領域は平坦に形成されており、回転電機対向領域の延在方向に沿うように取付面が形成されている。このため、取付面に回転電機を取り付けた際、ユニットケースに対して回転電機が傾いてしまい、ユニットケースと回転電機とが干渉してしまうことを防止できる。
【0027】
本発明の第11態様では、第10態様の二輪車駆動装置において、前記取付面に前記ステータ固定プレートが取り付けられており、前記ステータ固定プレートの前記車幅方向の内側面が平坦に形成されている。
【0028】
このように構成することで、ステータを固定するためのステータ固定プレートを用い、ユニットケースに回転電機を固定する場合、取付面にステータ固定プレートを容易に取り付けることができる。この際、ユニットケースとステータ固定プレートとが干渉してしまうことを防止できる。
【0029】
本発明の第12態様では、第11態様の二輪車駆動装置において、前記ステータ固定プレートは、厚さ方向の両側面が平坦に形成されているとともに、均一厚さの平板に形成されている。
【0030】
このように構成することで、ステータ固定プレートの位置や向きに関わらず、取付面にステータ固定プレートを容易に取り付けることができる。ステータ固定プレートのレイアウト性を高めることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、二輪車駆動装置は、回転電機のメンテナンス性及び冷却性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態における電動二輪車の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態における二輪車駆動装置の一部を分解した斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態における二輪車駆動装置の一部を分解した斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態におけるステータを車幅方向の内側からみた斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態における二輪車駆動装置を後方からみた側面図である。
【
図6】本発明の実施形態における左側のステータ固定プレートを内側面からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0034】
<電動二輪車>
図1は、本発明の実施形態に係る二輪車駆動装置1が搭載された電動二輪車100の斜視図である。
図1では、電動二輪車100のうち後部を図示している。
図1に示すように、電動二輪車100には、後輪101を駆動するための二輪車駆動装置1が設けられている。二輪車駆動装置1は、車体102に設けられた乗員着座用のシート103の下方で、かつ後輪101よりも進行方向の前方に配置されている。
【0035】
二輪車駆動装置1の後述する出力軸75と後輪101の車軸101aとが、外タイミングベルト104を介して連結されている。これにより、外タイミングベルト104を介して二輪車駆動装置1の動力が後輪101に伝達され、電動二輪車100が走行する。
以下の説明では、電動二輪車100が走行可能な姿勢での上下方向を単に上下方向と称する。車体102の車幅方向を単に車幅方向、又は左右方向と称する。電動二輪車100の進行方向に沿う前後方向を単に前後方向と称する。以下の図において、方向を分かりやすくするために、上方を矢印UPで示し、左方を矢印LHで示し、前方を矢印FRで示す。
【0036】
<二輪車駆動装置>
図2、
図3は、二輪車駆動装置1の一部を分解した斜視図である。
図2、
図3に示すように、二輪車駆動装置1は、2つの電動モータ2と、2つの電動モータ2の間に配置された伝達ユニット3と、を備える。2つの電動モータ2は、車幅方向に並んで配置されている。
図2では、2つの電動モータ2のうち、左側に配置された電動モータ2を分解して示している。
図3では、2つの電動モータ2のうち、左側に配置された電動モータ2の図示を省略するとともに、右側に配置された電動モータ2を分解して示している。
【0037】
<電動モータ>
電動モータ2は、いわゆるアウタロータ型のブラシレスモータであり、回転力を発生させる。電動モータ2は、車幅方向の内側に配置されたステータ4と、ステータ4に対して回転自在に設けられたロータ5と、ロータ5に設けられたファン18と、これらステータ4、ロータ5、及びファン18を収容するモータケース22と、を備える。以下の説明では、ロータ5における回転軸線A1と平行な方向を単に軸方向と称する。ロータ5の回転方向を周方向と称する。軸方向及び周方向に直交するロータ5の径方向を径方向と称する。
【0038】
図4は、ステータ4を車幅方向の内側からみた斜視図である。
図2から
図4に示すように、2つの電動モータ2は、軸方向が車幅方向と平行になるように配置されている。ステータ4は、円筒状のステータコア6と、ステータコア6の外周面から径方向外側に突出する複数のティース7と、各ティース7に巻回された励磁用のコイル8と、を備える。複数のティース7は軸方向からみて放射状に配置されている。
ステータコア6には、軸方向に貫通する複数(本実施形態では3個)のボルト挿通孔6aが形成されている。ボルト挿通孔6aは、周方向に等間隔で配置されている。ボルト挿通孔6aは、ステータ4を伝達ユニット3に固定するために用いられる(詳細は後述する)。
【0039】
ステータコア6における車幅方向の内側の内端面6bには、ロータ5の回転位置を検出するための回転位置検出センサ34やリード線ホルダ35が取り付けられている。回転位置検出センサ34は、例えばロータ5の後述するマグネット11の磁束を検出する図示しないホールIC等を備える。リード線ホルダ35は、図示しないリード線を束ねて保持する。リード線は、外部電源とコイル8とを電気的に接続するためのものや、回転位置検出センサ34によって検出された信号を図示しない外部の制御機器に出力するためのものがある。
【0040】
ロータ5は、ステータコア6における径方向の中心を車幅方向に貫通するロータシャフト9と、ステータ4を車幅方向の外側から覆う有底円筒状のフライホイール10と、フライホイール10に設けられた複数のマグネット11と、を備える。
ロータシャフト9は、伝達ユニット3に回転自在に支持されている。2つの電動モータ2は、ロータシャフト9が共有されている。すなわち、2つの電動モータ2に対してロータシャフト9は1つである。
【0041】
ロータシャフト9における軸方向の両側は、伝達ユニット3から車幅方向の外側にそれぞれ突出されている。ロータシャフト9における軸方向の両側が、それぞれ各ステータコア6における径方向の中心を貫通している。ロータシャフト9における軸方向の両端には、それぞれ雄ネジ部9aが形成されている。雄ネジ部9aは、ロータシャフト9にフライホイール10を締結固定するためのものである。
【0042】
フライホイール10は、磁性材料により形成されている。フライホイール10は、ステータ4の車幅方向の外側でステータ4と軸方向で対向し、かつ回転軸線A1を径方向の中心とする円板状の底壁12と、底壁12の外周縁から車幅方向の内側に突出する円筒状の周壁13と、を備える。
周壁13は、ステータコア6の周囲を取り囲むように配置されている。すなわち、周壁13の内周面は、ティース7における径方向の外側端面と径方向で対向している。周壁13の内周面に、複数のマグネット11が配置されている。
【0043】
底壁12における径方向の中央には、車幅方向の内側に突出する円筒状の嵌合部14が一体成形されている。嵌合部14を介し、底壁12における車幅方向の外側にロータシャフト9の雄ネジ部9aが突出されている。この雄ネジ部9aにナット15を締め付けることにより、ロータシャフト9にフライホイール10が締結固定される。
【0044】
底壁12には、複数(本実施形態では3個)の雌ネジ部12aが周方向に等間隔で形成されている。雌ネジ部12aは、フライホイール10にファン18を締結固定するために用いられる(詳細は後述する)。底壁12には、複数(本実施形態では3個)の第1ホイール通風口16及び複数(本実施形態では12個)の第2ホイール通風口17が形成されている。
【0045】
第1ホイール通風口16は、周方向で隣り合う雌ネジ部12aの間に周方向に等間隔で配置されている。第1ホイール通風口16は、軸方向からみて回転軸線A1を中心とする円弧状に形成されている。
第2ホイール通風口17は、底壁12の外周に沿って周方向に等間隔で配置されている。第2ホイール通風口17の大きさは、第1ホイール通風口16の大きさと比較して小さい。第2ホイール通風口17も軸方向からみて回転軸線A1を中心とする円弧状に形成されている。これらホイール通風口16,17は、ファン18で発生する冷却風を、ロータ5の内部に通過させるためのものである。
【0046】
ファン18は、フライホイール10の底壁12に設けられている。ファン18は円板状に形成されており、ロータ5と同心円上に配置されている。ファン18は、いわゆる軸流ファンである。ファン18は、円筒部19と、円筒部19の外周面から径方向の外側に突出する複数のファンブレード20と、ファンブレード20の径方向外側寄りに一体成形された連結リング21と、を備える。連結リング21は円環状に形成されており、ファンブレード20の車幅方向外側に配置されている。連結リング21は、複数のファンブレード20を連結している。
【0047】
連結リング21には、複数(本実施形態では3個)のボルト挿通部21aが形成されている。ボルト挿通部21aは、フライホイール10の雌ネジ部12aと同軸上に配置されている。ボルト挿通部21aに車幅方向外側からボルト25を挿通し、このボルト25を雌ネジ部12aに締め付ける。これにより、フライホイール10にファン18が締結固定される。
【0048】
モータケース22は、樹脂により形成されている。モータケース22は、ステータ4、ロータ5、及びファン18を車幅方向の外側から覆うように有底円筒状に形成されている。モータケース22は、ファン18の車幅方向外側でこのファン18と軸方向で対向し、かつ回転軸線A1を径方向の中心とする底壁23と、底壁23の外周縁から車幅方向の内側に突出する円筒状の周壁24と、を備える。
【0049】
底壁23における径方向中央には、複数(本実施形態では4個)の第1ケース通風口26が形成されている。第1ケース通風口26は、軸方向からみて回転軸線A1を中心とする円弧状に形成されている。底壁23における第1ケース通風口26よりも径方向外側には、複数の第2ケース通風口27が形成されている。第2ケース通風口27は、軸方向からみて径方向に対して斜めに延びている。複数の第2ケース通風口27は、周方向に等間隔で配置されている。
【0050】
さらに、第2ケース通風口27よりも径方向外側で、かつ底壁23と周壁24との接続部には、複数の第3ケース通風口28が形成されている。第3ケース通風口28は、径方向に沿って形成されている。複数の第3ケース通風口28は、周方向に等間隔で配置されている。
周壁24の開口部24a側には、複数の第4ケース通風口29が形成されている。第4ケース通風口29は、軸方向に沿って形成されている。第4ケース通風口29における開口部24a側の端部は、開口されている。第4ケース通風口29は、周方向に等間隔で配置されている。
【0051】
周壁24の開口縁には、リード線引き出し口30が形成されている。リード線引き出し口30には、グロメット31が取り付けられる。グロメット31は、リード線引き出し口30のシール性を確保するためのものであるとともに、図示しないリード線が挿通される複数の挿通孔31aを有する。
グロメット31を介してモータケース22の外部から内部へと図示しないリード線が引き込まれる。このリード線を介してステータ4のコイル8と図示しない外部電源とが電気的に接続される。これにより、コイル8に電力が供給される。
【0052】
周壁24の開口縁には、複数の取付座32が径方向外側に突出形成されている。取付座32は、伝達ユニット3に当接されて伝達ユニット3にモータケース22を締結固定するためのものである。取付座32には、ボルト33を挿通するボルト挿通孔32aが形成されている。
【0053】
<伝達ユニット>
図5は、二輪車駆動装置1を後方からみた側面図である。
図5では、電動モータ2のモータケース22を取り外している。
伝達ユニット3は、2つの電動モータ2の回転力を車軸101aに伝達する。
図3から
図5に示すように、伝達ユニット3は、ユニットケース40と、ユニットケース40内に収納された伝達機構70と、を備える。
【0054】
ユニットケース40は、車幅方向の中央を挟んで車幅方向の両側に分割構成された2つのケース41,42(第1ケース41、第2ケース42)を有する。2つのケース41,42は、車幅方向の中央側にそれぞれ開口部41a,42aを有する箱状に形成されている。各ケース41,42の各々開口部41a,42a側を重ね合わせることで各ケース41,42の内部に伝達機構70を収納可能な収納部39が形成される。2つのケース41,42は、車幅方向の中央を中心として対称に形成されている。このため、以下の説明では、2つのケース41,42のうち、第1ケース41のみについて説明する。第2ケース42の各部については、第1ケース41と同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
第1ケース41は、前後方向及び上下方向に面する底壁43と、底壁43の外周縁から車幅方向内側に突出する周壁44と、を備える。周壁44には、2つのケース41,42を互い固定するための複数のボルト座44aが周方向に一定の間隔を開けて形成されている。各ボルト座44aには、それぞれ軸方向の貫通する挿通孔44bが形成されている。これら挿通孔44bに図示しないボルトを挿通し、各ボルトに図示しないナットを締め付ける。これにより、2つのケース41,42が互いに固定される。
【0056】
底壁43には、2つの挿通孔45,46(第1挿通孔45、第2挿通孔46)が形成されている。2つの挿通孔45,46は、上下方向に所定の間隔を開けて並んで配置されている。2つの挿通孔45,46のうち、第1挿通孔45は、電動モータ2の回転軸線A1と同軸上に配置されている。
【0057】
第1挿通孔45には、ロータシャフト9が挿通される。第1挿通孔45の内面側(車幅方向の中央側)には、第1軸受収納凹部47が形成されている。第1軸受収納凹部47には、第1軸受48が設けられている。第1軸受48を介し、各ケース41,42にロータシャフト9が回転自在に支持されている。
第2挿通孔46には、後述する出力軸75が挿通される。第2挿通孔46の内面側には、第2軸受収納凹部49が形成されている。第2軸受収納凹部49には、第2軸受51が設けられている。第2軸受51を介し、各ケース41,42に出力軸75が回転自在に支持されている。
【0058】
底壁43における車幅方向の外側の外側面43aは、全体が平坦に形成されている。外側面43aのうち、第2挿通孔46の周縁には、車幅方向の外側に突出する円筒状の出力軸サポート部52が形成されている。
外側面43aのうち、第1挿通孔45の周縁には、車幅方向の外側に突出する台座53が形成されている。台座53は、軸方向からみて円環状に形成されている。台座53における外周面の一部は、周壁44に沿っている。台座53における車幅方向の外側面は、各ケース41,42に電動モータ2を取りつけるための取付面54である。取付面54は、平坦に形成されている。取付面54に沿う方向(取付面54の延在方向)は、外側面43aに沿う方向(外側面43aの延在方向)と平行である。
【0059】
取付面54には、ステータ固定プレート55が載置されている。ステータ固定プレート55を介して各ケース41,42に電動モータ2が取り付けられる。すなわち、ステータ固定プレート55にステータ4が固定されるとともに、モータケース22が固定される。
取付面54には、複数(本実施形態では4個)の雌ネジ部54aと位置決めピン孔54bとが形成されている。これら雌ネジ部54a及び位置決めピン孔54bは、取付面54にステータ固定プレート55を固定するために用いられる(詳細は後述する)。
【0060】
図6は、左側のステータ固定プレート55を車幅方向の内側面55bからみた斜視図である。
図3から
図6に示すように、ステータ固定プレート55は、軸方向が厚さ方向となる円板状に形成されている。ステータ固定プレート55は、厚さ方向の両側面55a,55b(外側面55a、内側面55b)が平坦に形成されているとともに、均一厚さの平板に形成されている。ステータ固定プレート55における車幅方向の内側面55bが、取付面54に重ね合わさる。
【0061】
ステータ固定プレート55の外径は、モータケース22の外径と一致している。ステータ固定プレート55は、取付面54よりも全周に渡って大きく径方向の外側に張り出している。換言すれば、ステータ固定プレート55は、このステータ固定プレート55の側面55a,55bに沿う方向(側面55a,55bの延在方向)の外側に張り出している。このため、ステータ固定プレート55の一部は、ステータ固定プレート55の側面55a,55bに沿う方向においてユニットケース40よりも径方向の外側に張り出している。
【0062】
ステータ固定プレート55における車幅方向の外側面55aに、モータケース22における開口部24a側の端部が重ね合わされる。ステータ固定プレート55の外周部には、複数(本実施形態では4個)のボルト取付座56が径方向の外側に突出形成されている。ボルト取付座56は、周方向に等間隔で配置されている。
【0063】
ボルト取付座56は、ステータ固定プレート55にモータケース22を固定するためのものである。ボルト取付座56には、雌ネジ部56aが形成されている。ステータ固定プレート55の外側面55aにモータケース22における開口部24a側の端部を重ね合わせると、ステータ固定プレート55のボルト取付座56上にモータケース22の取付座32が重ね合わさる。この状態で取付座32のボルト挿通孔32aに車幅方向の外側からボルト33を挿通し、さらにこのボルト33をボルト取付座56の雌ネジ部56aに締め付ける。これにより、ステータ固定プレート55にモータケース22が締結固定される。
【0064】
ステータ固定プレート55の外周部には、モータケース22のリード線引き出し口30に対応する箇所に、受け板57は、軸方向からみて周方向に長い長方形状に形成されている。受け板57とリード線引き出し口30とにより、グロメット31の周囲が取り囲まれる。これにより、グロメット31によるリード線引き出し口30のシール性を十分確保できる。
【0065】
このように、ステータ固定プレート55に軸方向でモータケース22を投影させると、ステータ固定プレート55の外形状とモータケース22(電動モータ2)の外形状とがほぼ一致する。すなわち、底壁43の外側面43aのうち、軸方向でステータ固定プレート55と対向する領域(
図3に示すハッチ領域)は、電動モータ対向領域Rとなる。
【0066】
ステータ固定プレート55における径方向の中央には、ロータシャフト9が挿通される挿通孔58が形成されている。ステータ固定プレート55の内側面55bのうち、挿通孔58の周囲には、円筒状の嵌合部59が突出形成されている。嵌合部59は、取付面54(第1ケース41)の第1挿通孔45に嵌合される。これにより、第1挿通孔45とステータ固定プレート55の挿通孔58とが同軸上に配置される。
【0067】
ステータ固定プレート55における嵌合部59の周囲には、複数(本実施形態では4個)のボルト挿通孔61が形成されている。第1挿通孔45に嵌合部59を嵌合させた状態で、各ボルト挿通孔61は、取付面54の雌ネジ部54aと同軸上に位置する。各ボルト挿通孔61に車幅方向の外側から図示しないボルトを挿通し、このボルトを雌ネジ部54aに締め付ける。これにより、取付面54にステータ固定プレート55が締結固定される。
【0068】
ステータ固定プレート55の内側面55bには、位置決めピン孔62が形成されている。位置決めピン孔62は、2個形成されている。各位置決めピン孔62は、それぞれ周方向で隣り合うボルト挿通孔61の間に配置されている。位置決めピン孔62には、図示しない位置決めピンが挿入又は圧入される。この位置決めピンは、取付面54の位置決めピン孔54bにも挿入又は圧入される。これにより、ステータ固定プレート55の位置決めが行われる。ステータ固定プレート55に2個の位置決めピン孔62が形成されていることにより、左右のステータ固定プレート55を兼用することが可能になる。
【0069】
ステータ固定プレート55の外側面55aのうち、挿通孔58の周囲には、円筒状のステータ固定台座63が車幅方向の外側に突出形成されている。ステータ固定台座63上に、ステータコア6が内端面6b側を向けて載置される。すなわち、ステータ4は、回転位置検出センサ34やリード線ホルダ35をステータ固定プレート55の外側面55a側に向けて配置される。ステータ固定台座63の外周面には、複数(本実施形態では3個)のボルト取付座64が径方向の外側に突出形成されている。ボルト取付座64は、周方向に等間隔で配置されている。
【0070】
ボルト取付座64には、雌ネジ部64aが形成されている。雌ネジ部64aは、ステータ固定プレート55上にステータコア6を載置した状態でステータコア6のボルト挿通孔6aと同軸上に位置する。ボルト挿通孔6aに車幅方向の外側から図示しないボルトを挿通し、このボルトを雌ネジ部64aに締め付ける。これにより、ステータ固定台座63にステータ4が締結固定される。
【0071】
ステータ固定台座63には、軸方向の全体に渡って2個の凹部63aが形成されている。凹部63aは、ステータ固定台座63上にステータ4を載置した状態で回転位置検出センサ34やリード線ホルダ35に対応する位置に配置されている。凹部63aによって、ステータ固定台座63と回転位置検出センサ34やリード線ホルダ35との干渉が回避される。
【0072】
ステータ固定台座63の軸方向の長さは、ステータコア6の内端面6bから回転位置検出センサ34やリード線ホルダ35における車幅方向の内側端部に至る間の長さよりも長い。このため、ステータ固定台座63上にステータ4を載置した状態で、ステータ固定プレート55の外側面55aに回転位置検出センサ34やリード線ホルダ35が接触してしまうことが回避される。
【0073】
このように各ケースに電動モータ2を取り付けた状態では、
図5に詳示するように、ステータ固定プレート55とフライホイール10の開口縁との間に、隙間Gが形成される。
【0074】
図2、
図3、
図5に示すように、伝達機構70は、ロータシャフト9に嵌合固定された小プーリ71と、各ケース41,42の第2挿通孔46と同軸上に配置された出力部72と、小プーリ71と出力部72とに掛け渡される内タイミングベルト73と、小プーリ71と出力部72との間に設けられるテンショナ74と、を備える。ロータシャフト9は、伝達機構70において電動モータ2の回転力が入力される入力軸80としての機能を兼ねている。小プーリ71は、各ケース41,42に設けられる2つの第1軸受48の間に配置される。
【0075】
出力部72は、各ケース41,42にそれぞれ第2軸受51を介して回転自在に支持される出力軸75と、出力軸75に嵌合固定された大プーリ76と、を備える。出力軸75の回転軸線A2は、ロータシャフト9(電動モータ2)の回転軸線A1と平行である。
出力軸75は、各ケース41,42に形成された第2挿通孔46のうち、第1ケース41の第2挿通孔46を介して左方に突出している。各ケース41,42には出力軸サポート部52が形成されているので、第1ケース41と出力軸75との接触面積が増大される。これにより、第1ケース41への出力軸75のガタツキを抑制できる。
【0076】
第1ケース41から左方に突出した出力軸75の先端部には、出力プーリ77(
図1参照)が嵌合固定されている。この出力プーリ77に外タイミングベルト104が掛け回されている。これにより、出力軸75と後輪101の車軸101aとが、外タイミングベルト104を介して連結される。
【0077】
大プーリ76は、各ケース41,42に設けられる2つの第2軸受51の間に配置される。大プーリ76の外径は、小プーリ71の外径よりも大きい。大プーリ76に、内タイミングベルト73が掛け回される。これにより、小プーリ71と出力部72とが、内タイミングベルト73を介して連結される。
【0078】
テンショナ74は、内タイミングベルト73に所定のテンションを付与するためのものである。テンショナ74は、第1ケース41の底壁43に取り付けられるブラケット78と、ブラケット78に回転自在に支持されるアイドラ79と、を備える。ブラケット78は、第1ケース41に対して前後方向にスライド移動自在に取り付けられる。アイドラ79の回転軸線A3は、ロータシャフト9の回転軸線A1及び出力軸75の回転軸線A2と平行である。アイドラ79によって内タイミングベルト73を、この内タイミングベルト73の引き回し方向と直交する方向(前後方向)に押圧することにより、内タイミングベルト73に所定のテンションが付与される。
【0079】
<二輪車駆動装置の動作>
次に、二輪車駆動装置1の動作について説明する。
電動モータ2を駆動する場合、コイル8に所定の電流を供給すると、ティース7に所定の鎖交磁束が形成される。この鎖交磁束とロータ5のマグネット11との間で磁気的な吸引力や反発力が生じ、ロータ5が継続的に回転される。
【0080】
2つの電動モータ2の回転力は、合算されてロータシャフト9に伝達される。ロータシャフト9が回転されると、伝達機構70によって出力軸75が回転される。このように、小プーリ71が嵌合固定されているロータシャフト9は、伝達機構70の入力軸80を兼ねている。
出力軸75の回転力は、出力プーリ77及び外タイミングベルト104を介して後輪101の車軸101aに伝達される。これにより、後輪101が回転され、電動二輪車100が走行する。
【0081】
ここで、電動モータ2のロータ5が回転すると、ロータ5と一体となってファン18が回転される。すると、モータケース22の第1ケース通風口26、第2ケース通風口27、及び第3ケース通風口28を介してモータケース22内に外気が取り込まれる。この外気は、冷却風となってロータ5の底壁12に吹き付けられる。底壁12には、第1ホイール通風口16及び第2ホイール通風口17が形成されているので、これらホイール通風口16,17を介してステータ4に冷却風が吹き付けられる。これにより、ステータ4が冷却される。
【0082】
ステータ4によって温められた冷却風は、ステータ4を軸方向に通過してステータ固定プレート55側へと流れる。そして冷却風は、ステータ固定プレート55とフライホイール10の開口縁との間の隙間Gを介してフライホイール10における径方向の外側へと吐き出される。この後、モータケース22の第4ケース通風口29を介してモータケース22の外側へと冷却風が吐き出される。
このとき、ステータ固定プレート55の外側面55aは平坦に形成されているので、隙間Gを介して吐き出された冷却風が外側面55a上で乱流等を起こすことなく、スムーズに吐き出される。
【0083】
2つの電動モータ2は、車幅方向で対向している。しかもユニットケース40から径方向にステータ固定プレート55が張り出している。換言すれば、ユニットケース40から径方向に電動モータ2が張り出している。2つの電動モータ2のうちの一方の電動モータ2で発生された冷却風は、他方の電動モータ2にも吹き付けられる。これにより、各電動モータ2の放熱が促進される。
【0084】
<二輪車駆動装置のメンテナンスについて>
次に、二輪車駆動装置1のメンテナンスについて説明する。
例えば電動モータ2をメンテナンスする場合、ステータ固定プレート55からモータケース22を取り外す。この状態では、ロータ5を締結固定するためのナット15が露出される。このため、ナット15を取り外すことで、ロータ5やファン18を取り外すことが可能である。さらに、ロータ5を取り外した後、ステータ固定プレート55からステータ4を取り外すことができる。このように、伝達ユニット3を分解することなく、電動モータ2を分解できる。
【0085】
例えば電動モータ2のサイズを変更する場合、ステータ固定プレート55を変更するのみでよい。伝達ユニット3のユニットケース40に、電動モータ2のサイズ変更に伴う形状変更や追加工が必要にならない。
ここで、ステータ固定プレート55は、厚さ方向の両側面55a,55bが平坦に形成されている。また、ステータ固定プレート55が取り付けられる取付面54及び各ケース41,42の外側面43aは平坦である。さらに、取付面54に沿う方向は、外側面43aに沿う方向と平行である。このため、電動モータ2のサイズ変更に伴い、ステータ固定プレート55をサイズ変更した場合であっても、各ケース41,42とステータ固定プレート55とが干渉してしまうことがない。よって、ステータ固定プレート55をスムーズに変更できる。
【0086】
このように、上述の二輪車駆動装置1は、2つの電動モータ2と、各電動モータ2の回転力を後輪101の車軸101aに伝達する伝達ユニット3と、を備える。各電動モータ2は、伝達ユニット3のユニットケース40(第1ケース41、第2ケース42)とは別体で設けられている。しかも、各ケース41の外側面43a(外側)に各電動モータ2が配置されている。このため、ユニットケース40から容易に電動モータ2を取り外すことができ、電動モータ2のメンテナンス性を向上できる。また、ユニットケース40の外側に電動モータ2が配置されているので、電動モータ2の冷却性能を向上できる。
【0087】
2つの電動モータ2は、ロータシャフト9の回転軸線A1を車幅方向とし、ユニットケース40における車幅方向の外側に配置されている。このため、できる限り二輪車駆動装置1を小型化しつつ、ロータシャフト9(入力軸80)に十分な回転力を付与することができる。
【0088】
電動モータ2は、ロータシャフト9における軸方向の両端にそれぞれフライホイール10が固定されている。フライホイール10は、底壁12を車幅方向の外側に向けて配置されている。また、各ケース41,42の外側面43aにステータ4が固定されている。このため、モータケース22にステータ4を固定する必要がないので、モータケース22の剛性を無駄に高める必要がなくなる。したがって、モータケース22を軽量化でき、二輪車駆動装置1を小型化、軽量化できる。モータケース22は、樹脂により形成されている。このため、モータケース22をさらに軽量化できる。
【0089】
また、ユニットケース40にステータ4が固定されているので、コイル8へのリード線の引き回しを簡素化できる。すなわち、ユニットケース40に沿ってリード線を引き回せばよい。このため、二輪車駆動装置1のレイアウト性を向上できる。
二輪車駆動装置1は、ステータ4を固定するためのステータ固定プレート55を備える。このため、ユニットケース40に電動モータ2を固定するにあたり、電動モータ2のサイズ変更に対して柔軟に対応できる。すなわち、電動モータ2のサイズが変更されてもステータ固定プレート55のサイズを変更するだけでよく、ユニットケース40に電動モータ2を容易に固定することができる。
【0090】
ステータ固定プレート55の一部は、ステータ固定プレート55の側面55a,55bに沿う方向においてユニットケース40よりも径方向の外側に張り出している。このため、ユニットケース40よりも外側に張り出した2つのステータ固定プレート55が車幅方向で対向される。そして、2つの電動モータ2のうちの一方の電動モータ2で発生された冷却風は、他方の電動モータ2にも吹き付けられる。これにより、各電動モータ2の放熱が促進されるので、電動モータ2への冷却効率を高めることができる。
【0091】
フライホイール10の底壁12にファン18が設けられている。モータケース22の底壁12には、ファン18によって発生する風を通過させる複数のケース通風口26~28が形成されている。このため、ファン18によって発生する冷却風をステータ4に吹き付けることができ、電動モータ2の冷却効率をさらに高めることができる。
ファン18は、電動モータ2における最外側端に配置されている。このため、ファン18によって発生する冷却風を、電動モータ2の全体に満遍なく吹き付けることができる。よって、電動モータ2の冷却効率をさらに高めることができる。
【0092】
ステータ固定プレート55とフライホイール10の開口縁との間に、隙間Gが形成される。冷却風は、ステータ固定プレート55とフライホイール10の開口縁との間の隙間Gを介してフライホイール10における径方向の外側へと吐き出される。このように、電動モータ2に冷却風を通しやすくすることができ、電動モータ2の冷却効率をさらに高めることができる。
また、ステータ固定プレート55の外側面55aは平坦に形成されているので、隙間Gを介して吐き出された冷却風が外側面55a上で乱流等を起こすことなく、スムーズに吐き出される。このため、電動モータ2の冷却効率をさらに高めることができる。
【0093】
各ケース41,42の外側面43aには、車幅方向の外側に突出する台座53が形成されている。台座53における車幅方向の外側面は、各ケース41,42に電動モータ2を取りつけるための取付面54である。取付面54及び各ケース41,42の外側面43aは平坦である。さらに、取付面54に沿う方向は、外側面43aに沿う方向と平行である。このため、電動モータ2のサイズ変更に伴い、ステータ固定プレート55をサイズ変更した場合であっても、各ケース41,42とステータ固定プレート55とが干渉してしまうことがない。よって、ステータ固定プレート55をスムーズに変更できる。
【0094】
ステータ固定プレート55は、両側面55a,55bが平坦に形成されているとともに、均一厚さの平板に形成されている。このため、ステータ固定プレート55の位置や向きに関わらず、取付面54にステータ固定プレート55を容易に取り付けることができる。ステータ固定プレート55のレイアウト性を高めることができる。
内側面55bが平坦に形成されることにより、取付面54にステータ固定プレート55を容易に取り付けることができる。
【0095】
電動モータ2の大型化を防止でき、電動モータ2のメンテナンス性や冷却性能を向上できるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」、目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの促進を図る」、及び目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」に貢献することが可能となる。
【0096】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば上述の実施形態では、二輪車駆動装置1によって後輪101を駆動する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、二輪車駆動装置1によって電動二輪車100の図示しない前輪を駆動するようにしてもよい。
【0097】
上述の実施形態では、伝達機構70は、小プーリ71と、大プーリ76と、これらプーリ71,76に掛け渡される内タイミングベルト73と、により、ロータシャフト9(入力軸80)の回転力を出力軸75に伝達する場合について説明した。また、出力軸75の回転力を、出力プーリ77及び外タイミングベルト104を介して後輪101の車軸101aに伝達する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、伝達機構70は、ロータシャフト9の回転力を最終的に車軸101aに伝達できればよい。
例えば、複数の歯車を用いてロータシャフト9の回転力を出力軸75に伝達してもよい。ロータシャフト9の回転力を、タイミングベルトや歯車を介して直接出力軸75に伝達するように構成してもよい。
【0098】
上述の実施形態では、二輪車駆動装置1の回転電機として電動モータ2を用いた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、電動モータ2を発電機としても使用できるように構成してもよい。
【0099】
上述の実施形態では、電動モータ2は2個であり、ロータシャフト9の軸方向両側にそれぞれ電動モータ2を配置した場合について説明した。ロータシャフト9は、伝達機構70の入力軸80を兼ねている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、電動モータ2の個数は2個に限られない。電動モータ2を2個以上の複数個設けてもよい。電動モータ2は、ユニットケース40とは別体で設けられており、ユニットケース40の外側に配置されていればよい。例えばロータシャフト9と入力軸80とを別体とし、歯車を介してロータシャフト9の回転力を入力軸80に伝達するように構成してもよい。このような場合、複数の電動モータ2のうち、最もユニットケース40に近接配置された電動モータ2のステータ4が、ステータ固定プレート55に固定されていればよい。
【0100】
上述の実施形態では、ロータ5は、ステータ4を車幅方向の外側から覆う有底円筒状のフライホイール10を備える場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、ロータ5は、ステータ4に対して回転自在に構成されていればよい。
【0101】
上述の実施形態では、ステータ固定プレート55は、両側面55a,55bが平坦に形成されているとともに、均一厚さの平板に形成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、ステータ固定プレート55の外側面55aについては、この外側面55aのうち、少なくともステータ4の周辺箇所が平坦に形成されていればよい。このように構成することで、ファン18によって発生する冷却風が隙間Gを介してフライホイール10の外部に排気される際、外側面55aに沿って冷却風をスムーズに流すことができる。
【0102】
上述の実施形態では、各ケース41,42の外側面43aは、全体が平坦に形成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、外側面43aのうち、少なくとも電動モータ対向領域Rを平坦に形成すればよい。電動モータ対向領域Rとは、軸方向で取付面54に取り付け得る最大サイズの電動モータ2と重なる領域である。
【符号の説明】
【0103】
1…二輪車駆動装置、2…電動モータ、3…伝達ユニット、4…ステータ、5…ロータ(フライホイール)、6…ステータコア、6a…ボルト挿通孔、6b…内端面、7…ティース、8…コイル、9…ロータシャフト、9a…雄ネジ部、10…フライホイール、11…マグネット、12…底壁、12a…雌ネジ部、13…周壁、14…嵌合部、15…ナット、16…第1ホイール通風口、17…第2ホイール通風口、18…ファン、19…円筒部、20…ファンブレード、21…連結リング、21a…ボルト挿通部、22…モータケース、23…底壁、24…周壁、24a…開口部、25…ボルト、26…第1ケース通風口、27…第2ケース通風口、28…第3ケース通風口、29…第4ケース通風口、30…リード線引き出し口、31…グロメット、31a…挿通孔、32…取付座、32a…ボルト挿通孔、33…ボルト、34…回転位置検出センサ、35…リード線ホルダ、39…収納部、40…ユニットケース、41…第1ケース、41a…開口部、42…第2ケース、42a…開口部、43…底壁、43a…外側面、44…周壁、44a…ボルト座、44b…挿通孔、45…第1挿通孔、46…第2挿通孔、47…第1軸受収納凹部、48…第1軸受、49…第2軸受収納凹部、51…第2軸受、52…出力軸サポート部、53…台座、54…取付面、54a…雌ネジ部、54b…ピン孔、55…ステータ固定プレート、55a…外側面、55b…内側面、56…ボルト取付座、56a…雌ネジ部、57…板、58…挿通孔、59…嵌合部、61…ボルト挿通孔、62…ピン孔、63…ステータ固定台座、63a…凹部、64…ボルト取付座、64a…雌ネジ部、70…伝達機構、71…小プーリ、72…出力部、73…内タイミングベルト、74…テンショナ、75…出力軸、76…大プーリ、77…出力プーリ、78…ブラケット、79…アイドラ、80…入力軸、100…電動二輪車、101…後輪、101a…車軸、102…車体、103…シート、104…外タイミングベルト、A1…回転軸線、A2…回転軸線、A3…回転軸線、R…電動モータ対向領域