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特開2024-126777鋳物砂の再生方法、鋳物砂の製造方法、及び砂型の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126777
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】鋳物砂の再生方法、鋳物砂の製造方法、及び砂型の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 5/00 20060101AFI20240912BHJP
   B22C 1/22 20060101ALI20240912BHJP
   B22F 10/14 20210101ALI20240912BHJP
【FI】
B22C5/00 C
B22C5/00 A
B22C1/22 B
B22F10/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035403
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000200301
【氏名又は名称】JFEミネラル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】早津 岳宏
【テーマコード(参考)】
4E092
4E093
4K018
【Fターム(参考)】
4E092AA02
4E092AA45
4E092AA50
4E092BA10
4E093AA01
4E093FA03
4K018EA51
(57)【要約】
【課題】 性状の異なる鋳物砂の再生を実操業において実現可能な鋳物砂の再生方法を提供する。
【解決手段】 まず、砂型16の成型時に樹脂15が付着しなかった混練砂14(未硬化砂18)に対して所定量の所定樹脂19を混練して所定樹脂混練砂20を得る樹脂混練工程5を行うようにした。また、樹脂混練工程5で得られた所定樹脂混練砂20、及び砂型16の成型時に樹脂15が付着した混練砂14(樹脂硬化砂17)のそれぞれを解砕して解砕物21を得る解砕工程6を行うようにした。そして、解砕工程6で得た解砕物21を焙焼して再生砂12を生成する焙焼再生工程8を行うようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を硬化させる硬化剤と鋳物砂とを混練した混練砂に対して前記樹脂を印刷して砂型を造形するインクジェット式の積層造形法で使用された鋳物砂の再生方法であって、
前記砂型の成型時に前記樹脂が付着しなかった前記混練砂に対して所定量の所定樹脂を混練して所定樹脂混練砂を得る樹脂混練工程と、
前記樹脂混練工程で得た前記所定樹脂混練砂及び前記砂型の成型時に前記樹脂が付着した前記混練砂を解砕して解砕物を得る解砕工程と、
前記解砕工程で得た前記解砕物を焙焼して再生砂を生成する焙焼再生工程と、
を有する鋳物砂の再生方法。
【請求項2】
前記砂型の成型時に前記樹脂が付着しなかった前記混練砂は、前記砂型の成型時に前記樹脂が印刷されなかった前記混練砂、前記砂型の成型に使用されなかった前記混練砂、及び汚れた前記鋳物砂の少なくとも何れかであり、
前記砂型の成型時に前記樹脂が付着した前記混練砂は、鋳造に使用された前記砂型、及び前記砂型の成型時に前記樹脂が付着したが前記砂型を構成しない前記混練砂の少なくとも何れかである
請求項1に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項3】
前記所定樹脂は、フラン樹脂及びフェノール樹脂の少なくとも何れかを含む
請求項1に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項4】
前記樹脂混練工程において、前記砂型の成型時に前記樹脂が付着しなかった前記混練砂である未硬化砂100重量部に対して0.1重量部以上5.0重量部以下の前記所定樹脂を混練する
請求項1に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項5】
前記焙焼再生工程において、300℃以上550℃以下の焙焼温度で前記解砕物を焙焼する
請求項1に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項6】
樹脂を硬化させる硬化剤と鋳物砂とを混練した混練砂に対して前記樹脂を印刷して砂型を造形するインクジェット式の積層造形法に使用する鋳物砂の製造方法であって、
新砂に対して請求項1から5の何れか1項に記載の鋳物砂の再生方法で得た再生砂を所定量混合して鋳物砂を製造する
鋳物砂の製造方法。
【請求項7】
前記鋳物砂の製造工程において、前記新砂100重量部に対して0重量部超100重量部以下の前記再生砂を混合する
請求項6に記載の鋳物砂の製造方法。
【請求項8】
樹脂を硬化させる硬化剤と鋳物砂とを混練した混練砂に対して前記樹脂を印刷して砂型を造形するインクジェット式の積層造形法による砂型の製造方法であって、
前記硬化剤と前記鋳物砂とを混練する工程において、新砂に対して請求項1から5の何れか1項に記載の鋳物砂の再生方法で得た再生砂を所定量混合した鋳物砂を使用する
砂型の製造方法。
【請求項9】
前記硬化剤と前記鋳物砂とを混練する工程において、前記新砂100重量部に対して0重量部超100重量部以下の前記再生砂を混合した鋳物砂を使用する
請求項8に記載の砂型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物砂の再生方法、鋳物砂の製造方法、及び砂型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造品の製造方法として、鋳物砂で成型した砂型を用いた鋳造方法が広く使用されている。このような砂型の成型に用いられる鋳物砂は、成型性等を考慮して特殊な加工が施されたものが使用されるため、高価なものである。そのため、従来から砂型の製造工程で使用された鋳物砂を再生する試みがなされている。
鋳物砂の再生に関する技術として、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1には、シェルモールド鋳造の鋳型形成に使用された鋳物砂に付着しているレジン(樹脂)を焙焼により除去して再生するための鋳物砂再生方法が記載されている。特許文献1に記載のシェルモールド鋳造においては、再生のために回収される鋳物砂の全てに樹脂が付着している。そのため、焙焼により樹脂を除去して再生する場合に、ムラのない燃焼が可能であり、性状が均一な再生砂を比較的容易に得ることが可能である。
一方、近年、より複雑な形状の砂型の成型が可能な方法として、積層造形法が用いられるようになってきている。特に、インクジェット式の積層造形法は、大型の砂型を短時間で成型できる方法として注目されている。インクジェット式の積層造形法は、樹脂を硬化させるための触媒である硬化剤と鋳物砂とを混練した混練砂を一層ずつ積層しながら、各層にインクジェット式のノズルから樹脂を印刷することで砂型の成型を行う方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-314080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インクジェット式の積層造形法で使用した鋳物砂を再生しようとした場合、以下のような問題があった。すなわち、再生するために回収される鋳物砂には、砂型として使用された樹脂が表面に硬化付着した樹脂硬化砂だけでなく、硬化剤のみが付着した未硬化砂が含まれる。このような性状の異なる鋳物砂を再生のために焙焼しようとすると、鋳物砂の性状に起因する燃焼ムラを生じ、均一な再生砂を得ることが難しかった。
そのため、インクジェット式の積層造形法においては、性状の異なる鋳物砂を回収して再生することは、実操業において実現することが困難であった。
【0005】
本発明は、性状の異なる鋳物砂の再生を実操業において実現可能な鋳物砂の再生方法、鋳物砂の製造方法、及び砂型の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鋳物砂の再生方法の一態様は、(a)樹脂を硬化させる硬化剤と鋳物砂とを混練した混練砂に対して樹脂を印刷して砂型を造形するインクジェット式の積層造形法で使用された鋳物砂の再生方法であって、(b)砂型の成型時に樹脂が付着しなかった混練砂に対して所定量の所定樹脂を混練して所定樹脂混練砂を得る樹脂混練工程と、(c)樹脂混練工程で得た所定樹脂混練砂及び砂型の成型時に樹脂が付着した混練砂を解砕して解砕物を得る解砕工程と、(d)解砕工程で得た解砕物を焙焼して再生砂を生成する焙焼再生工程と、を有することを要旨とする。
【0007】
本発明の砂型の製造方法の一態様は、(a)樹脂を硬化させる硬化剤と鋳物砂とを混練した混練砂に対して樹脂を印刷して砂型を造形するインクジェット式の積層造形法による砂型の製造方法であって、(b)硬化剤と鋳物砂とを混練する工程において、鋳物砂として、新砂に対して上記再生方法で得た再生砂を所定量混合した鋳造用鋳物砂を使用することを要旨とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る砂型の製造方法における造形サイクルを示す図である。
図2】焙焼再生工程で用いられる流動焙焼炉の模式的な構成を示す図である。
図3】樹脂硬化砂及び未硬化砂のTG-DTA分析による熱量測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、インクジェット式の積層造形法で回収される、性状の異なる鋳物砂(樹脂硬化砂、未硬化砂)の再生において、以下の課題を発見した。
砂型として使用された樹脂が表面に硬化付着した樹脂硬化砂と、硬化剤のみが付着した未硬化砂とは、もともとの鋳物砂は同じでも表面に付着している物質(樹脂+硬化剤、硬化剤のみ)が異なるため、図3に示すように、加熱時の挙動が大きく異なる。図3は、樹脂硬化砂及び未硬化砂のTG-DTA分析による熱量測定結果を示す図である。樹脂としては、フラン樹脂、フェノール樹脂を用いた。また、薬剤の添加条件を一般的に積層造形法に用いられる濃度として、鋳物砂100重量部に対して硬化剤0.2重量部、樹脂2.0重量部とした。図3より、未硬化砂は、樹脂硬化砂に比べて熱量が低いことが分かる。
具体的には、樹脂硬化砂には、付着樹脂が燃焼する際の発熱現象のみ発生するが、未硬化砂には、樹脂硬化砂同様に400~600℃付近の付着物燃焼(例えば、硬化剤の燃焼)による発熱だけではなく、それよりも低温側に、大量付着している溶剤等揮発(例えば、硬化剤に含まれる溶剤等の揮発)による吸熱現象が発生する。そのため、これらの砂(樹脂硬化砂、未硬化砂)を再び鋳物砂として使用するための再生処理を行なうべく、従来の再生処理と同様にすべての砂を同時に焙焼した場合、燃焼室内で焙焼挙動の違いによる不均一な状況が生まれ、均質な再生砂を得ることが困難となる。なお、図3の右側と左側とで「未硬化砂」の熱量の数値が異なるのは、硬化剤の種類が異なるためである。
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る鋳物砂の再生方法、鋳物砂の製造方法、及び砂型の製造方法の一例を、図1図3を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。また、本明細書に記載された効果は例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
本発明の第1の実施形態に係る砂型の製造方法について説明する。図1は、第1の実施形態に係る砂型の製造方法における造形サイクルを示す図である。図1の砂型の製造方法は、インクジェットヘッドノズルを用いて、樹脂を硬化させる硬化剤と鋳物砂とを混練した混練砂に対して樹脂を印刷して砂型を造形するインクジェット式の積層造形法である。
図1に示すように、砂型の製造方法(インクジェット式の積層造形法)は、混練工程1と、成型工程2と、鋳造工程3と、鋳型及び砂回収工程4と、樹脂混練工程5と、焙焼再生工程8と、鋳物砂製造工程9とを含む造形サイクルを有している。
【0011】
混練工程1では、鋳物砂10と硬化剤13とを混練して混練砂14とする。鋳物砂10の少なくとも一部は、後述する焙焼再生工程8から導入する再生砂12とする。鋳物砂10の原料は、特に限定されないが、例えば、天然の砂、人工砂又はこれらの混合物を用いることができる。天然の砂としては、例えば、天然硅砂、ジルコン砂が挙げられる。また、人工砂としては、例えば、焼結法、溶融法又は火炎溶融法で作製された人工砂が挙げられる。人口砂の組成としては、例えば、アルミナ(Al-O系)、ムライト(Al-Si-O系)、ムライト-ジルコン(Al-Si-Zr-O系)の混合系を採用できる。
【0012】
硬化剤13は、成型工程2において混練砂14に印刷される樹脂15(バインダー)を硬化させるための触媒として作用するものであれば、特に限定されない。硬化剤13としては、例えば、樹脂15として、フラン樹脂やフェノール樹脂等の有機樹脂を用いる場合には、常温において有機樹脂を硬化させられるものが好ましい。例えば、キシレンスルホン酸やトルエンスルホン酸を主成分とする硬化剤が挙げられる。硬化剤13の混練比率は、鋳物砂10の全質量に対して0.01~1.0質量%の範囲が好ましい。
【0013】
成型工程2では、インクジェット式の積層造形法を用いて、混練砂14を一層ずつ積層しながら、各層に樹脂15を印刷することで、砂型16を造形する。例えば、インクジェット式の三次元積層造形装置100を用いて、まず、ブレード機構により鋳物砂10と硬化剤13を混練した混練砂14の薄層を平らな表面上に均一に拡げる。続いて、この薄層における所定の領域に対して、砂型16の形状を3次元CADで設計して得られたデータに基づき、インクジェットノズルヘッドを走査させて樹脂15を印刷する。樹脂15が印刷された領域の層は、接合状態となるとともに、既に形成済の下層とも結合する。そして、樹脂15が印刷された領域の層によって砂型16全体が完成するまで、薄層を上部に順次形成させ、樹脂15を印刷する工程を繰り返す。最終的に、樹脂15が付着されなかった領域は、非結合状態であるため、砂型16から容易に除去できる。以上の操作により、三次元積層造形装置100を用いて、所望の三次元構造の砂型16を製造できる。
樹脂15としては、例えば、有機樹脂を採用できる。特に、フラン樹脂、フェノール樹脂を用いるのが好ましい。フラン樹脂としては、例えば、フルフリルアルコール、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物、尿素とアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種以上か、上記群から選ばれる2種以上の縮合物からなるフラン樹脂が挙げられる。またフェノール樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類の縮合物が挙げられる。
【0014】
また、成型工程2では、硬化した砂型16を混練砂14から取り出す際に、樹脂15が印刷されなかった混練砂14と、砂型16に付着している混練砂14とを個別に回収する。「樹脂15が印刷されなかった混練砂14」は、後述する「砂型16の成型時に樹脂15が印刷されなかった混練砂14」である。また、「砂型16に付着している混練砂14」は、後述する「砂型16の成型時に樹脂15が付着したが砂型16を構成しない混練砂14」である。これらの混練砂14は、吸引装置によって回収することが好ましい。
鋳造工程3では、成型工程2で造形された砂型16を用いて鋳造を行い、鋳造品を得る。また、鋳型及び砂回収工程4では、砂型16の成型時に樹脂15が付着した混練砂14(以下、「樹脂硬化砂17」とも呼ぶ)を回収する。樹脂硬化砂17としては、例えば、鋳造に使用された砂型16、及び砂型16の成型時に樹脂15が付着したが砂型16を構成しない混練砂14の少なくとも何れかが挙げられる。「鋳造に使用された砂型16」としては、例えば、鋳造品を取り出すために破壊した砂型16の破片が挙げられる。また、「砂型16の成型時に樹脂15が付着したが砂型16を構成しない混練砂14」としては、例えば、砂型16を混練砂14から取り出す際に、砂型16に付着していた混練砂14が挙げられる。砂型16に付着していた混練砂14の回収は成型工程2内で行われる。
【0015】
樹脂混練工程5では、砂型16の成型時に樹脂15が付着しなかった混練砂14(以下、「未硬化砂18」とも呼ぶ)に対して所定量の所定樹脂19を混練して所定樹脂混練砂20を得る。未硬化砂18としては、例えば、砂型16の成型時に樹脂15が印刷されなかった混練砂14、及び混練時こぼれ砂等(例えば、砂型16の成型に使用されなかった混練砂14、汚れた鋳物砂10を含む)の少なくとも何れかが挙げられる。「砂型16の成型に使用されない混練砂14」や「汚れた鋳物砂10」としては、例えば、三次元積層造形装置100のトラブルやメンテナンスによって発生するものが挙げられる。また、所定樹脂19としては、例えば、三次元積層造形装置100で用いられる樹脂15と同等のものが望ましく、有機樹脂、特に、フラン樹脂やフェノール樹脂を用いるのが好ましい。フラン樹脂やフェノール樹脂としては、例えば、上述したような、樹脂15のフラン樹脂やフェノール樹脂として挙げたものと同様のものを採用できる。また、混練機としては、有機自硬性粘結材用として通常使用されるものであれば、連続式、バッチ式のどちらでも採用できる。例えば、日本アイリッヒ株式会社製のアイリッヒミキサーが挙げられる。
また、所定樹脂19の混練比率は、100重量部の未硬化砂18に対して0.1重量部以上5.0重量部以下の所定樹脂19を混練する。これにより、後工程において砂の流動性を維持でき、また、実際に印刷される樹脂量(樹脂硬化砂17の樹脂量)に近づけることができる。
【0016】
解砕工程6では、鋳型及び砂回収工程4で回収した樹脂硬化砂17、及び樹脂混練工程5で得た所定樹脂混練砂20を解砕して解砕物21を得る。例えば、粉砕機(ジョークラッシャー、ハンマークラッシャー等)を用いて、樹脂硬化砂17及び所定樹脂混練砂20を3mm以下に解砕し、焙焼前原料タンクに投入する。これにより、砂型16(樹脂硬化砂17)を粉砕して混合を簡単化でき、後工程の混合工程7において、樹脂硬化砂17と所定樹脂混練砂20とを均一に混合でき、樹脂硬化砂17と所定樹脂混練砂20との比率の影響を抑えた安定的な焙焼原料を生成できる。また、混合工程7では、解砕工程6で得た解砕物21を均一に混合する。これにより、後述する流動焙焼炉200(図2参照)に投入する砂の性状を均質化することができる。混合工程7は、焙焼前原料タンク内で行われる。混合工程7で混合される解砕物21が含む樹脂硬化砂17と未硬化砂18との比率は、特に制限されるものではなく、それぞれ0~100%の範囲をとることができる。
【0017】
焙焼再生工程8では、混合工程7で混合した解砕物21を焙焼して再生砂12とする。具体的には、図2に示すような流動焙焼炉200を用いて焙焼することで、解砕物21の再生を行うことが好ましい。例えば、ブロワ(不図示)によって燃焼室202の下部より空気201を吹き込み、解砕物21を燃焼室202内で流動化させ、流動化された解砕物21(以下「砂流動層203」とも呼ぶ)にバーナー204の炎をあてる。これにより、表面の硬化剤13、樹脂15及び所定樹脂19を蒸発又は燃焼させて再生砂12とする。
ここで、例えば、燃焼室202内に解砕物21に代えて未硬化砂18を投入した場合、流動焙焼炉200では、砂流動層203の温度維持には、バーナー炎の輻射熱が主に用いられる。しかし、構造上、下部から流入する低温の空気201のために輻射熱が遮られるため、未硬化砂18に焼けムラが発生し、再生砂12の品質が低下する可能性があった。
これに対し、第1の実施形態では、解砕物21の砂粒子表面に樹脂15又は所定樹脂19が付着しているため、砂粒子一つ一つが発熱燃焼し、解砕物21に焼けムラが発生せず、再生砂12は均質に再生される。また、砂粒子自体が樹脂15又は所定樹脂19により発熱燃焼することで、砂流動層203の温度維持のためのバーナー燃焼を弱めることにつながり、燃料を効率的に使用できるようになる。また、砂流動層203の温度を維持しつつ、バーナー燃焼を弱めることができるため、燃焼室202内の温度上昇を抑制できる。
【0018】
解砕物21の焙焼温度としては、例えば、300℃以上1000℃以下が挙げられる。特に、300℃以上550℃の範囲を用いるのが好ましい。すなわち、300℃以上550℃以下の焙焼温度で解砕物21を焙焼するのが好ましい。ここで、炉内温度が550℃より大きい場合には、流動焙焼炉200の炉材の劣化が早まり、破砕した炉材が再生砂12に混入する可能性がある。また、単に炉内温度を下げた場合、硬化剤13を十分に蒸発又は燃焼させられない可能性がある。これに対し、第1の実施形態では、未硬化砂18の粒子表面に所定樹脂19を付着させることで、未硬化砂18の粒子を発熱燃焼しやすくさせ、解砕物21の焙焼温度を炉内温度よりも高めることができ、炉内温度を下げながらも高品質の再生が可能になる。なお、解砕物21の焙焼温度とは、砂流動層203に設置された温度計205で測定される砂流動層203(解砕物21)の温度を意味する。
【0019】
鋳物砂製造工程9では、新砂11に対して焙焼再生工程8で再生した再生砂12を所定量混合して鋳物砂10を製造する。例えば、新砂11と再生砂12とを所定の割合で混合した鋳物砂10を混練工程1に導入する。新砂11と再生砂12との混合割合は、例えば、100重量部の新砂11に対して0重量部超100重量部以下の再生砂12を混合する。これにより、鋳物砂10の品質を維持でき、三次元積層造形装置100の設定変更の必要がなくて済む。なお、本実施形態では、新砂11と再生砂12とを混合した鋳物砂10を混練工程1に導入する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、新砂11と混合せずに、再生砂12をそのまま鋳物砂10として混練工程1に導入する構成としてもよい。即ち、砂型16の造形に用いる鋳物砂10は再生砂100%としてもよい。
【0020】
ここで、樹脂硬化砂17と未硬化砂18との発生割合は鋳造品毎に異なる。そのため、例えば、単に樹脂硬化砂17と未硬化砂18とを同時焙焼して再生処理を行う場合、図3に示すように、性状に起因する燃焼ムラを生じ、再生砂12の品質が変化する可能性があった。それゆえ、一定品質の再生砂12を製造するためには、ロット毎の焼成温度や焼成時間の調整や十分な条件での焙焼・再生が必要となり、コスト増となる可能性があった。
また、例えば、このような性状に起因する燃焼ムラをなくすために、樹脂硬化砂17、及び未硬化砂18をある一定の割合で混合したものを焙焼して再生処理を行う場合、それぞれ発生する割合が製品によって異なるため、再生可能な量が少なくなる可能性がある。
また、例えば、再生する分量を増やす目的で、性状が異なる砂(樹脂硬化砂17、未硬化砂18)毎に焙焼条件を変えて再生処理する場合、回収後にそれらを厳密に分別する必要が生じ、多くの手間がかかる可能性がある。また、砂(樹脂硬化砂17、未硬化砂18)毎に貯鉱槽等の専用ラインが必要になるため、再生に要する費用が嵩む可能性がある。
そのため、インクジェット式の積層造形法においては、性状の異なる鋳物砂10を回収して再生することは、実操業において実現することが困難であった。
【0021】
これに対し、第1の実施形態に係る鋳物砂の再生方法では、まず、砂型16の成型時に樹脂15が付着しなかった混練砂14(未硬化砂18)に対して所定量の所定樹脂19を混練して所定樹脂混練砂20を得る樹脂混練工程5を行うようにした。また、得られた所定樹脂混練砂20、及び砂型16の成型時に樹脂15が付着した混練砂14(樹脂硬化砂17)のそれぞれを解砕して解砕物21を得る解砕工程6を行うようにした。そして、解砕で得た解砕物21を焙焼して再生砂12を生成する焙焼再生工程8を行うようにした。
これにより、未硬化砂18に所定樹脂19が混練され、また、樹脂硬化砂17(砂型16)及び所定樹脂混練砂20の両方が解砕されることで、流動焙焼炉200に投入する解砕物21(砂)の性状を均質化でき、性状に起因する燃焼ムラの発生を抑制できる。そのため、上述したような、ロット毎の焼成温度や焼成時間の調整や十分な条件での焙焼・再生が必要なく、均質な再生砂12を得ることができ、コスト増を防止することができる。
また、例えば、上述したような、樹脂硬化砂17及び未硬化砂18をある一定の割合で混合したものを焙焼して再生処理を行う場合と異なり、再生可能な量を増大できる。
また、例えば、上述したような、性状が異なる砂(樹脂硬化砂17、未硬化砂18)毎に焙焼条件を変えて再生処理する場合と異なり、回収後に再生砂12を分別する必要がなく、また砂(樹脂硬化砂17、未硬化砂18)毎の貯鉱槽等の専用ラインも必要ない。
そのため、第1の実施形態に係る鋳物砂の再生方法によれば、インクジェット式の積層造形法における、性状の異なる鋳物砂10の再生を実操業において実現できる。
【0022】
なお、本発明は、以下のような構成を取ることもできる。
(1)
樹脂を硬化させる硬化剤と鋳物砂とを混練した混練砂に対して前記樹脂を印刷して砂型を造形するインクジェット式の積層造形法で使用された鋳物砂の再生方法であって、
前記砂型の成型時に前記樹脂が付着しなかった前記混練砂に対して所定量の所定樹脂を混練して所定樹脂混練砂を得る樹脂混練工程と、
前記樹脂混練工程で得た前記所定樹脂混練砂及び前記砂型の成型時に前記樹脂が付着した前記混練砂を解砕して解砕物を得る解砕工程と、
前記解砕工程で得た前記解砕物を焙焼して再生砂を生成する焙焼再生工程と、
を有する鋳物砂の再生方法。
(2)
前記砂型の成型時に前記樹脂が付着しなかった前記混練砂は、前記砂型の成型時に前記樹脂が印刷されなかった前記混練砂、前記砂型の成型に使用されなかった前記混練砂、及び汚れた前記鋳物砂の少なくとも何れかであり、
前記砂型の成型時に前記樹脂が付着した前記混練砂は、鋳造に使用された前記砂型、及び前記砂型の成型時に前記樹脂が付着したが前記砂型を構成しない前記混練砂の少なくとも何れかである
前記(1)に記載の鋳物砂の再生方法。
(3)
前記所定樹脂は、フラン樹脂及びフェノール樹脂の少なくとも何れかを含む
前記(1)又は(2)に記載の鋳物砂の再生方法。
(4)
前記樹脂混練工程において、前記砂型の成型時に前記樹脂が付着しなかった前記混練砂である未硬化砂100重量部に対して0.1重量部以上5.0重量部以下の前記所定樹脂を混練する
前記(1)から(3)の何れかに記載の鋳物砂の再生方法。
(5)
前記焙焼再生工程において、300℃以上550℃以下の焙焼温度で前記解砕物を焙焼する
前記(1)から(4)の何れかに記載の鋳物砂の再生方法。
(6)
樹脂を硬化させる硬化剤と鋳物砂とを混練した混練砂に対して前記樹脂を印刷して砂型を造形するインクジェット式の積層造形法に使用する鋳物砂の製造方法であって、
新砂に対して前記(1)から(5)の何れかに記載の鋳物砂の再生方法で得た再生砂を所定量混合して鋳物砂を製造する
鋳物砂の製造方法。
(7)
前記鋳物砂を製造する工程において、前記新砂100重量部に対して0重量部超100重量部以下の前記再生砂を混合する
前記(6)に記載の鋳物砂の製造方法。
(8)
樹脂を硬化させる硬化剤と鋳物砂とを混練した混練砂に対して前記樹脂を印刷して砂型を造形するインクジェット式の積層造形法による砂型の製造方法であって、
前記硬化剤と前記鋳物砂とを混練する工程において、新砂に対して前記(1)から(5)の何れかに記載の鋳物砂の再生方法で得た再生砂を所定量混合した鋳物砂を使用する
砂型の製造方法。
(9)
前記硬化剤と前記鋳物砂とを混練する工程において、前記新砂100重量部に対して0重量部超100重量部以下の前記再生砂を混合した鋳物砂を使用する
前記(8)に記載の砂型の製造方法。
【符号の説明】
【0023】
1…混練工程、2…成型工程、3…鋳造工程、4…砂回収工程、5…樹脂混練工程、6…解砕工程、7…混合工程、8…焙焼再生工程、9…鋳物砂製造工程、10…鋳物砂、11…新砂、12…再生砂、13…硬化剤、14…混練砂、15…樹脂、16…砂型、17…樹脂硬化砂、18…未硬化砂、19…所定樹脂、20…所定樹脂混練砂、21…解砕物、100…三次元積層造形装置、200…流動焙焼炉、201…空気、202…燃焼室、203…砂流動層、204…バーナー、205…温度計
図1
図2
図3