(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126782
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】タイヤ及びタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20240912BHJP
B29D 30/30 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B60C11/00 Z
B29D30/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035412
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洋
【テーマコード(参考)】
3D131
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
3D131BA02
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB01
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC31
3D131BC33
3D131DA54
3D131DA55
3D131EC22U
3D131EC26V
3D131EC26X
3D131LA28
4F215AH20
4F215AR04
4F215VA02
4F215VD08
4F215VK04
4F215VR03
4F501TA02
4F501TC08
4F501TD05
4F501TD34
4F501TT03
4F501TU04
4F501TV21
(57)【要約】
【課題】ウェット性能を低下させることなく転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤ2の提供。
【解決手段】タイヤ2はトレッド4とベルト16とバンド18とを備える。ベルト16はベルトコード44を含む。バンド18はバンドコード60を含む。バンド18はバンドストリップ58からなる。バンドストリップ58はバンドコード60が配列したコード配列体である。ベルト16の第一端から第二端までのゾーンがコントロールゾーンである。コントロールゾーンにおけるバンドコード60の残留張力は15.0N以上である。コントロールゾーンはクラウンゾーン一対のショルダーゾーンとからなる。クラウンゾーンにおけるバンドコード60の残留張力は、ショルダーゾーンにおけるバンドコード60の残留張力よりも高い。タイヤ2の基準接地面の形状指数は1.00以上1.30以下である。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接地するトレッドと、
前記トレッドの径方向内側に位置するベルトと、
径方向において前記トレッドと前記ベルトとの間に位置し、前記ベルトに積層されるバンドと
を備える、タイヤであって、
前記ベルトが並列した多数のベルトコードを含み、
各前記ベルトコードが周方向に対して傾斜し、
前記バンドが、実質的に周方向にのびるバンドコードを含み、
前記バンドコードが有機繊維コードであり、
前記バンドが、らせん状に巻かれたバンドストリップからなり、
前記バンドストリップが、複数本の前記バンドコードが配列したコード配列体であり、
前記ベルトの第一の端から第二の端までのゾーンが、前記バンドコードの張力をコントロールするコントロールゾーンであり、
前記コントロールゾーンにおける前記バンドコードの残留張力が、15.0N以上であり、
前記コントロールゾーンが、クラウンゾーンと、前記クラウンゾーンの軸方向外側に位置する一対のショルダーゾーンとからなり、
前記クラウンゾーンにおける前記バンドコードの残留張力が、前記ショルダーゾーンにおける前記バンドコードの残留張力よりも高く、
前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を正規内圧に調整し、前記タイヤのキャンバー角を0°とした状態で、前記タイヤの正規荷重の70%の縦荷重を前記タイヤに負荷して、前記タイヤを平らな路面に接触させて得られる、基準接地面において、前記タイヤの赤道面に沿って計測される赤道接地長の、最大接地幅の80%の幅に相当する位置における基準接地長に対する比を形状指数としたとき、
前記形状指数が1.00以上1.30以下である、
タイヤ。
【請求項2】
前記ショルダーゾーンにおける前記バンドコードの残留張力の、前記クラウンゾーンにおける前記バンドコードの残留張力に対する比が、0.50以上である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記クラウンゾーンにおける前記バンドコードの残留張力が50N以下である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
JIS L1017に準拠して得られる、前記バンドコードの一定荷重時伸び率が、1.9%以上8.4%以下である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
各前記ショルダーゾーンの軸方向幅が前記コントロールゾーンの軸方向幅の1/8以上3/8以下である、
請求項1から4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
路面と接地するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトと、径方向において前記トレッドと前記ベルトとの間に位置し、前記ベルトを覆うバンドとを備える、タイヤを製造するための方法であって、
前記タイヤのための生タイヤを準備する工程と、
前記生タイヤを加硫する工程と
を含み、
前記生タイヤの準備工程において、
帯状のバンドストリップに荷重をかけながら、前記バンドストリップを前記ベルト上にらせん状に巻き付けて、前記バンドが形成され、
前記バンドストリップが、複数本のバンドコードが配列したコード配列体であり、
前記ベルトの第一の端から第二の端までのゾーンが、前記バンドコードの張力をコントロールするコントロールゾーンであり、
前記コントロールゾーンにおいて前記バンドコードにかける荷重が15.0N以上であり、
前記コントロールゾーンが、クラウンゾーンと、前記クラウンゾーンの軸方向外側に位置する一対のショルダーゾーンとからなり、
前記クラウンゾーンにおける前記バンドコードにかける荷重が、前記ショルダーゾーンにおける前記バンドコードにかける荷重よりも高い、
タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ及びタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境への配慮から、車両に装着されるタイヤにおいては、転がり抵抗の低減が求められている。例えば、下記の特許文献1では、摩耗によるウェット性能の著しい低下を防止しつつ、転がり抵抗の低減を達成できるタイヤが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ウェット性能を低下させることなく転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るタイヤは、路面と接地するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトと、径方向において前記トレッドと前記ベルトとの間に位置し、前記ベルトに積層されるバンドとを備える。前記ベルトは並列した多数のベルトコードを含む。各前記ベルトコードは周方向に対して傾斜する。前記バンドは実質的に周方向にのびるバンドコードを含む。前記バンドコードは有機繊維コードである。前記バンドは、らせん状に巻かれたバンドストリップからなる。前記バンドストリップは、複数本の前記バンドコードが配列したコード配列体である。前記ベルトの第一の端から第二の端までのゾーンが前記バンドコードの張力をコントロールするコントロールゾーンである。前記コントロールゾーンにおける前記バンドコードの残留張力は15.0N以上である。前記コントロールゾーンが、クラウンゾーンと、前記クラウンゾーンの軸方向外側に位置する一対のショルダーゾーンとからなる。前記クラウンゾーンにおける前記バンドコードの残留張力は、前記ショルダーゾーンにおける前記バンドコードの残留張力よりも高い。前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を正規内圧に調整し、前記タイヤのキャンバー角を0°とした状態で、前記タイヤの正規荷重の70%の縦荷重を前記タイヤに負荷して、前記タイヤを平らな路面に接触させて得られる、基準接地面において、前記タイヤの赤道面に沿って計測される赤道接地長の、最大接地幅の80%の幅に相当する位置における基準接地長に対する比を形状指数としたとき、前記形状指数は1.00以上1.30以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ウェット性能を低下させることなく転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤの一例を示す断面図である。
【
図3】
図1に示されたタイヤのプロファイルを説明する図である。
【
図6】バンドの形成に使用されるバンドストリップを示す斜視図である。
【
図7】バンドの形成に使用される成形機の一例を示す側面図である。
【
図9】バンドストリップにかける荷重のプロファイルの一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0009】
本発明のタイヤはリムに組まれる。タイヤの内側には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。リムに組まれたタイヤはタイヤ-リム組立体とも呼ばれる。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0010】
本発明において、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と称される。
【0011】
本発明においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの切断面において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離が、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するように、タイヤはセットされる。なお、正規リムにタイヤを組んだ状態で確認できないタイヤの構成は、前述の切断面において確認される。
【0012】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0013】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0014】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0015】
本発明において生タイヤとは未架橋状態のタイヤである。生タイヤはローカバーとも呼ばれる。タイヤは生タイヤを加硫することで得られる。モールド内で生タイヤを加熱及び加圧することで、生タイヤは加硫される。タイヤは生タイヤの架橋成形物である。
【0016】
本発明において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイドウォール部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイドウォール部を備える。
トレッド部の中央部分はクラウン部分とも呼ばれる。トレッド部の端の部分はショルダー部分とも呼ばれる。
【0017】
本発明において、バンドコードの残留張力は、以下に示す要領にて、タイヤの構成要素であるバンドから得られる。
(1)新品タイヤのバンドから10mm幅のバンド試験片をサンプリングし、バンド試験片の長さを測定する。
(2)温度を18~22℃に、湿度を61~69%に調整した雰囲気下でバンド試験片を21~27時間調湿し、調湿後のバンド試験片の長さを測定する。調湿前後のバンド試験片の長さの変化量を得る。
(3)バンド試験片からバンドコードをサンプリングし、JIS L1017に準拠してバンドコードの引張試験を行い、バンドコードの応力-歪み曲線を得る。
(4)バンドコードの応力-歪み曲線において、調湿前後のバンド試験片の長さの変化量に対応する応力を求める。この応力が、バンドコード1本あたりの残留張力である。
本発明では、バンドコードの残留張力は、バンドコード1本あたりの残留張力で表される。
【0018】
本発明において、有機繊維コードの一定荷重時伸び率は、JIS L1017に準拠して得られる、一定荷重時伸び率によって表される。
【0019】
[本発明の基礎となった知見]
本発明者らの鋭意検討によれば、タイヤの転がり抵抗を低減する技術に関して、以下の事情が明らかになっている。
トレッドはキャップ部とベース部とを備える。キャップ部は路面と接地するトレッド面を有する。通常キャップ部には、低発熱性よりもグリップ性能が重視される。ベース部はキャップ部の径方向内側に位置する。ベース部には低発熱性の架橋ゴムが用いられる。
低発熱性を考慮した架橋ゴムをキャップ部に用いれば、タイヤは転がり抵抗を低減できる。しかし、ウェット路面におけるグリップ性能(以下、ウェット性能)が低下する。
タイヤには、低い転がり抵抗と良好なウェット性能とが求められる。ウェット性能を低下させることなく、転がり抵抗の低減を達成できる技術の確立が求められている。
トレッドの径方向内側にはベルトが位置する。ベルトは並列した多数のベルトコードを含む。ベルトコードは赤道面に対して傾斜する。
走行しているタイヤのトレッドでは、接地状態と非接地状態とが繰り返される。トレッドが路面に接地するとベルトは撓み、トレッドが路面から離れるとベルトは復元する。
本発明者らは、ベルトの動きに着目し、鋭意検討を行った。その結果、本発明者らは、ベルトの動きに合わせベルトコードの傾斜角度が変化し、この傾斜角度の変化が大きいタイヤほど、大きな転がり抵抗を有する傾向にあること、傾斜角度の変化はバンドの拘束力によって変わること、これまで15.0N未満の荷重をかけて調整していたバンドコードの張力を高めれば、傾斜角度の変化を抑制でき、転がり抵抗の低減を図れる見込みがあることを見出し、以下に説明する発明を完成するに至っている。
【0020】
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係るタイヤは、路面と接地するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトと、径方向において前記トレッドと前記ベルトとの間に位置し、前記ベルトに積層されるバンドとを備える、タイヤであって、前記ベルトが並列した多数のベルトコードを含み、各前記ベルトコードが周方向に対して傾斜し、前記バンドが実質的に周方向にのびるバンドコードを含み、前記バンドコードが有機繊維コードであり、前記バンドが、らせん状に巻かれたバンドストリップからなり、前記バンドストリップが、複数本の前記バンドコードが配列したコード配列体であり、前記ベルトの第一の端から第二の端までのゾーンが前記バンドコードの張力をコントロールするコントロールゾーンであり、前記コントロールゾーンにおける前記バンドコードの残留張力が15.0N以上であり、前記コントロールゾーンが、クラウンゾーンと、前記クラウンゾーンの軸方向外側に位置する一対のショルダーゾーンとからなり、前記クラウンゾーンにおける前記バンドコードの残留張力が、前記ショルダーゾーンにおける前記バンドコードの残留張力よりも高く、前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を正規内圧に調整し、前記タイヤのキャンバー角を0°とした状態で、前記タイヤの正規荷重の70%の縦荷重を前記タイヤに負荷して、前記タイヤを平らな路面に接触させて得られる、基準接地面において、前記タイヤの赤道面に沿って計測される赤道接地長の、最大接地幅の80%の幅に相当する位置における基準接地長に対する比を形状指数としたとき、前記形状指数が1.00以上1.30以下である。
【0021】
このようにタイヤを整えることにより、このタイヤは、ウェット性能を低下させることなく転がり抵抗の低減を達成できる。
【0022】
[構成2]
好ましくは、前述の[構成1]に記載のタイヤにおいて、前記ショルダーゾーンにおける前記バンドコードの残留張力の、前記クラウンゾーンにおける前記バンドコードの残留張力に対する比が、0.50以上である。
【0023】
[構成3]
好ましくは、前述の[構成1]又は[構成2]に記載のタイヤにおいて、前記クラウンゾーンにおける前記バンドコードの残留張力が50N以下である。
【0024】
[構成4]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成3]のいずれかに記載のタイヤにおいて、JIS L1017に準拠して得られる、前記バンドコードの一定荷重時伸び率が、1.9%以上8.4%以下である。
【0025】
[構成5]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成3]のいずれかに記載のタイヤにおいて、各前記ショルダーゾーンの軸方向幅が前記コントロールゾーンの軸方向幅の1/8以上3/8以下である。
【0026】
[構成6]
本発明の一態様に係るタイヤの製造方法は、路面と接地するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトと、径方向において前記トレッドと前記ベルトとの間に位置し、前記ベルトを覆うバンドとを備える、タイヤを製造するための方法であって、前記タイヤのための生タイヤを準備する工程と、前記生タイヤを加硫する工程とを含み、前記生タイヤの準備工程において、帯状のバンドストリップに荷重をかけながら、前記バンドストリップを前記ベルト上にらせん状に巻き付けて、前記バンドが形成され、前記バンドストリップが、複数本のバンドコードが配列したコード配列体であり、前記ベルトの第一の端から第二の端までのゾーンが、前記バンドコードの張力をコントロールするコントロールゾーンであり、前記コントロールゾーンにおいて前記バンドコードにかける荷重が15.0N以上であり、前記コントロールゾーンが、クラウンゾーンと、前記クラウンゾーンの軸方向外側に位置する一対のショルダーゾーンとからなり、前記クラウンゾーンにおける前記バンドコードにかける荷重が、前記ショルダーゾーンにおける前記バンドコードにかける荷重よりも高い。
【0027】
このようにタイヤの製造方法を整えることにより、ウェット性能を低下させることなく転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤが得られる。
【0028】
[本発明の実施形態の詳細]
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一例を示す。このタイヤ2は、乗用車用空気入りタイヤである。
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)の一部を示す。
図1において左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0029】
図1において符号PTで示される位置はタイヤ2のトゥである。トゥPTは、タイヤ2の外面2Gと内面2Nとの境界である。
【0030】
図1において符号PCで示される位置は、タイヤ2の外面2G(詳細には、後述するトレッド面)と赤道面との交点である。交点PCはタイヤ2の赤道とも呼ばれる。赤道面上に溝が位置する場合は、溝がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて赤道PCは特定される。赤道PCはタイヤ2の径方向外端でもある。
【0031】
図1において符号PWで示される位置はタイヤ2の軸方向外端である。模様や文字等の装飾が外面にある場合、軸方向外端PW(以下、外端PWとも呼ばれる。)は、装飾がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて特定される。
図1において両矢印WAで示される長さはタイヤ2の断面幅(JATMA等参照)である。断面幅WAは、第一外端PWから第二外端PWまでの軸方向距離である。断面幅WAはタイヤ2の最大幅であり、外端PWはこのタイヤ2が最大幅WAを示す位置(以下、最大幅位置)である。断面幅WAは正規状態のタイヤ2において特定される。
【0032】
このタイヤ2は、構成要素として、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、インナーライナー14、ベルト16及びバンド18を備える。
【0033】
トレッド4はトレッド面20において路面と接地する。トレッド4は、路面と接地するトレッド面20を有する。トレッド面20は径方向外向きに凸な形状を有する。
トレッド4には溝22が刻まれる。これによりトレッドパターンが構成される。
【0034】
図1において符号GEで示される位置は、このタイヤ2の基準接地位置である。基準接地位置GEは、後述する基準接地面の軸方向外端(以下、接地端とも呼ばれる。)に対応する、トレッド面20上の位置である。
【0035】
基準接地面は、例えば、接地面形状測定装置(図示されず)を用いて得られる。基準接地面は、この装置において、タイヤ2をリム(正規リム)に組み、タイヤ2の内圧を正規内圧に調整し、タイヤ2のキャンバー角を0°とした状態で、タイヤ2の正規荷重の70%の縦荷重をこのタイヤ2に負荷して、このタイヤ2を平らな路面(平面)に接触させて得られる。
詳述しないが、公知の方法により、タイヤ2が平面に接触することで構成される基準接地面の画像が得られる。得られた画像に基づいて、基準接地面の輪郭が特定される。
基準接地面の輪郭は、基準接地面の画像において基準接地面の周囲をトレースすることで得られる。基準接地面の周囲が溝によって途切れる場合は、途切れている部分を直線で繋いで、基準接地面の輪郭がトレースされる。このようにして、基準接地面の輪郭、すなわち、基準接地面の接地面形状が得られる。
【0036】
トレッド4はキャップ部24とベース部26とを備える。
キャップ部24はトレッド面20を含む。キャップ部24は路面と接地する。キャップ部24は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。
ベース部26はキャップ部24の径方向内側に位置する。ベース部26の端26eはキャップ部24の端24eの軸方向内側に位置する。ベース部26はその全体が、キャップ部24に覆われる。ベース部26は低発熱性の架橋ゴムからなる。
【0037】
それぞれのサイドウォール6はトレッド4の端に連なる。サイドウォール6はトレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール6は、耐カット性を考慮した架橋ゴムからなる。
【0038】
それぞれのクリンチ8はサイドウォール6の径方向内側に位置する。クリンチ8はリムと接触する。クリンチ8は、耐摩耗性を考慮した架橋ゴムからなる。
【0039】
それぞれのビード10はクリンチ8の軸方向内側に位置する。ビード10はサイドウォール6の径方向内側に位置する。
ビード10はコア28とエイペックス30とを備える。コア28は周方向にのびる。図示されないが、コア28はスチール製のワイヤーを含む。エイペックス30はコア28の径方向外側に位置する。エイペックス30は径方向外向きに先細りである。エイペックス30は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。
【0040】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のクリンチ8の内側に位置する。カーカス12は、一対のビード10である第一のビード10と第二のビード10との間を架け渡す。
カーカス12は少なくとも1枚のカーカスプライ32を含む。このタイヤ2のカーカス12は、転がり抵抗の低減が考慮され、1枚のカーカスプライ32で構成される。
【0041】
カーカスプライ32はプライ本体32aと一対の折り返し部32bとを含む。プライ本体32aは第一のビード10と第二のビード10との間を架け渡す。それぞれの折り返し部32bは、プライ本体32aに連なりそれぞれのビード10で軸方向内側から外側に向かって折り返される。
【0042】
図示されないが、カーカスプライ32は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは赤道面と交差する。このタイヤ2のカーカス12はラジアル構造を有する。このタイヤ2では、有機繊維からなるコードがカーカスコードとして用いられる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0043】
インナーライナー14はカーカス12の内側に位置する。インナーライナー14はタイヤ2の内面2Nを構成する。インナーライナー14は、低い気体透過性を有する架橋ゴムからなる。インナーライナー14はタイヤ2の内圧を保持する。
【0044】
ベルト16はトレッド4の径方向内側に位置する。ベルト16は径方向においてトレッド4とカーカス12との間に位置する。ベルト16はカーカス12に積層される。
【0045】
図1において両矢印WBで示される長さはベルト16の軸方向幅である。軸方向幅WBは、ベルト16の第一の端34aから第二の端34bまでの軸方向距離で表される。
ベルト16の軸方向幅WBは、タイヤ2の断面幅WAの70%以上90%以下である。前述の赤道面は、ベルト16の軸方向幅WBの中心においてこのベルト16と交差する。
【0046】
ベルト16は内側層36と外側層38とを備える。内側層36及び外側層38は径方向に並ぶ。内側層36は外側層38の径方向内側に位置しカーカス12に積層される。外側層38は内側層36の径方向外側に位置し内側層36に積層される。
内側層36と外側層38との間に1又は2以上の層がさらに設けられてもよい。軽量化の観点から、ベルト16は内側層36及び外側層38で構成されるのが好ましい。
【0047】
図1に示されるように、外側層38の端40は内側層36の端42の軸方向内側に位置する。外側層38は内側層36よりも狭い。外側層38の端40から内側層36の端42までの長さは3mm以上10mm以下である。前述のベルト16の軸方向幅WBは幅広の内側層36の軸方向幅で表される。内側層36の端42がベルト16の端34である。
【0048】
図2は、ベルト16の構成を説明する概略図である。ベルト16の内側層36及び外側層38はそれぞれ、並列した多数のベルトコード44を含む。それぞれのベルトコード44は赤道面に対して傾斜する。ベルトコード44の材質はスチールである。ベルトコード44はスチールコードである。
図2においては説明の便宜のためにベルトコード44が実線で表されるが、ベルトコード44はトッピングゴム46で覆われる。
【0049】
図2において角度θuは、内側層36に含まれるベルトコード44(以下、内側ベルトコード48とも呼ばれる。)が赤道面に対してなす角度、すなわち内側ベルトコード48の傾斜角度である。このタイヤ2の内側ベルトコード48の傾斜角度θuは、19度以上30度以下である。
図2において角度θsは、外側層38に含まれるベルトコード44(以下、外側ベルトコード50とも呼ばれる。)が赤道面に対してなす角度、すなわち外側ベルトコード50の傾斜角度である。このタイヤ2の外側ベルトコード50の傾斜角度θsは、19度以上30度以下である。
内側ベルトコード48の傾斜の向きは、外側ベルトコード50の傾斜の向きと逆である。このタイヤ2のベルト16においては、内側ベルトコード48の傾斜角度θuと外側ベルトコード50の傾斜角度θsとは同じである。ベルトコード44の傾斜角度は19度以上30度以下である。
【0050】
図1に示されるように、このタイヤ2はベルト16の端34とカーカス12との間にクッション層52をさらに設けることができる。クッション層52は低い剛性を有する架橋ゴムからなる。このタイヤ2においてクッション層52は必須の要素ではない。タイヤ2の仕様によっては、クッション層52は設けられなくてもよい。
【0051】
バンド18は、径方向においてトレッド4とベルト16との間に位置する。バンド18はベルト16に積層される。
図1に示されるように、バンド18の端54は内側層36の端42、すなわちベルト16の端34の軸方向外側に位置する。ベルト16の端34からバンド18の端54までの長さは3mm以上7mm以下である。
バンド18は径方向においてベルト16全体と重複する。このバンド18はフルバンドとも呼ばれる。このタイヤ2のバンド18はフルバンドからなる。バンド18は、その軸方向幅の中心において赤道面と交差する。
【0052】
バンド18はらせん状に巻かれたバンドコードを含む。バンド18はジョイントレス構造を有する。バンドコードは実質的に周方向にのびる。詳細には、バンドコードが周方向に対してなす角度は5度以下であり、好ましくは2度以下である。
【0053】
バンドコードは、有機繊維からなるコード(以下、有機繊維コード)である。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。ナイロン繊維からなる単糸と、アラミド繊維からなる単糸とを含むハイブリッドコードが、バンドコードとして用いられてもよい。
【0054】
図3は、タイヤ2の子午線断面における、外面2Gの輪郭線の一部を示す。
図3においてタイヤ2はリムRに組まれている。リムRは正規リムである。
図3において符号CCLで示される実線はカーカス12の輪郭線である。
【0055】
外面2Gの輪郭線は、溝、模様や文字等の装飾がないと仮定して得られる仮想外面により表される。
詳述しないが、本発明において外面2Gの輪郭線は、例えば変位センサーを用いて、正規状態のタイヤ2の外面形状を計測することで得られる。このタイヤ2の外面2Gを形づける、モールド(図示されず)のキャビティ面の形状に基づいて、この外面2Gの輪郭線が特定されてもよい。
タイヤ2の外面2Gは、前述のトレッド面20と、このトレッド面20に連なる一対のサイド面56とを備える。
【0056】
子午線断面においてトレッド面20の輪郭線は軸方向に並ぶ複数の円弧を含む。
図3に示されたトレッド面20の輪郭線は軸方向に並ぶ複数の円弧で構成される。
複数の円弧のうち軸方向において外側に位置する円弧はショルダー円弧である。
図3において符号Rhで示される矢印はショルダー円弧の半径である。ショルダー円弧は、トレッド面20の輪郭線に含まれる複数の円弧の中で、最小の半径Rsを有する。ショルダー円弧に前述のサイド面56の輪郭線が連なる。
【0057】
符号SSで示される位置は、ショルダー円弧と、このショルダー円弧の隣に位置する円弧(後述する第三円弧)との境界である。直線LSSは、境界SSでショルダー円弧と接する接線である。
符号SHで示される位置は、ショルダー円弧とサイド面56の輪郭線との境界である。直線LSHは、境界SHでショルダー円弧と接する接線である。
符号TEは、接線LSSと接線LSHとの交点である。本発明においては、この交点TEがトレッド4の基準端である。両矢印WTで示される長さは、第一の基準端TEから第二の基準端TEまでの軸方向距離である。本発明においては、軸方向距離WTがトレッド4の幅である。
このタイヤ2では、トレッド4の幅WTの、タイヤ2の断面幅WAに対する比率(WT/WA)は75%以上95%以下である。
【0058】
トレッド面20の輪郭線は、一対のショルダー円弧の間、すなわち、第一のショルダー円弧と第二のショルダー円弧(図示されず)との間に、少なくとも3つの円弧を含む。
図3に示されたトレッド面20の輪郭線は、第一のショルダー円弧と第二のショルダー円弧との間に5つの円弧を含む。
【0059】
5つの円弧のうち、軸方向において中央に位置する円弧が第一円弧である。
図3において符号Rcで示される矢印は第一円弧の半径である。第一円弧は赤道PCを通る。図示されないが、第一円弧の中心は赤道面上に位置する。
第一円弧の隣に位置する円弧は第二円弧である。第二円弧は、第一円弧の軸方向外側に位置し、この第一円弧に連なる。
図3において、符号Rmで示される矢印は第二円弧の半径である。符号CMで示される位置は第一円弧と第二円弧との境界である。このタイヤ2の第二円弧は境界CMにおいて第一円弧に接する。
第二円弧の隣に位置する円弧は第三円弧である。第三円弧は、第二円弧の軸方向外側に位置し、この第二円弧に連なる。
図3において、符号Rsで示される矢印は第三円弧の半径である。符号MSで示される位置は第二円弧と第三円弧との境界である。このタイヤ2の第三円弧は境界MSにおいて第二円弧に接する。
第三円弧の隣に位置する円弧が前述のショルダー円弧である。ショルダー円弧は境界SSにおいて第三円弧と接する。
トレッド面20の輪郭線は、第一円弧、一対の第二円弧、一対の第三円弧及び一対のショルダー円弧を含む。第二円弧の半径Rmは第一円弧の半径Rcよりも小さい。第三円弧の半径Rsは第二円弧の半径Rmよりも小さい。ショルダー円弧の半径Rhは第三円弧の半径Rsよりも小さい。
【0060】
図4は、このタイヤ2の基準接地面の輪郭を示す。
図4において、上下方向はタイヤ2の周方向に相当し、左右方向はタイヤ2の軸方向に相当する。紙面に対して垂直な方向はこのタイヤ2の径方向に相当する。
【0061】
図4において一点鎖線LPは、基準接地面における、タイヤ2の赤道面に対応する直線である。基準接地面において赤道面の特定が困難な場合は、この基準接地面の軸方向中心線がこの赤道面に対応する直線として用いられる。両矢印P100は、直線LPを含む平面と基準接地面との交線の長さである。このタイヤ2では、この交線の長さP100が、基準接地面において、赤道面に沿って計測される赤道接地長である。
【0062】
図4において符号SEで示される位置は、基準接地面の軸方向外端、言い換えれば、基準接地面の接地端である。この接地端SEに対応する、トレッド4の外面上の位置が、前述の接地基準位置TEである。
実線LMは、接地端SEを通り、直線LPに平行な直線である。実線L80は、直線LMと直線LPとの間に位置し、直線LM及び直線LPに平行な直線である。両矢印A100は、直線LPから直線LMまでの軸方向距離を表す。この距離A100は基準接地面の最大幅、すなわち最大接地幅の半分に相当する。両矢印A80は、直線LPから直線L80までの軸方向距離を表す。この
図4においては、距離A80の、距離A100に対する比率は80%に設定される。つまり、直線L80は、基準接地面の最大接地幅の80%の幅に相当する位置を表す。両矢印P80は、直線L80を含む平面と基準接地面との交線の長さである。このタイヤ2では、この交線の長さP80が、基準接地面において、最大接地幅の80%の幅に相当する位置における基準接地長である。
【0063】
図4に示された基準接地面において、赤道接地長P100及び基準接地長P80を特定することで、赤道接地長P100の、基準接地長P80に対する比(P100/P80)で表される形状指数Fが得られる。この形状指数Fは、値が大きいほど基準接地面が丸みを帯びた輪郭を有することを表す。
【0064】
後述するが、本発明においては、ベルト16の第一の端34aから第二の端34bまでのゾーンにおいてバンドコードの張力がコントロールされる。ベルト16の第一の端34aから第二の端34bまでのゾーンは、バンドコードの張力をコントロールするコントロールゾーンである。
【0065】
コントロールゾーンは3つのゾーンに区分される。コントロールゾーンは、クラウンゾーンCrと一対のショルダーゾーンShとからなる。それぞれのショルダーゾーンShは、クラウンゾーンCrの軸方向外側に位置する。
【0066】
図1において、径方向にのびる実線CSはクラウンゾーンCrとショルダーゾーンShとの境界を表す。ベルト16の端34から、このベルト16の端34に近い境界CSまでのゾーンがショルダーゾーンShである。第一の境界CSと第二の境界CSとの間のゾーンがクラウンゾーンCrである。
【0067】
図5は、
図1に示されたタイヤ2の一部を示す拡大断面図である。
図5はトレッド部の一部を示す。
図5において符号UBLで示される実線は、ベルト16に含まれる内側ベルトコード48を表す。符号SBLで示される実線は、外側ベルトコード50を表す。符号DBで示される円は、バンド18に含まれるバンドコードを表す。符号PCSで示される位置は、トレッド面20と境界CSとの交点である。交点PCSは、クラウンゾーンCrとショルダーゾーンShとの境界CSに対応するトレッド面20上の位置である。この交点PCSは、境界対応位置とも呼ばれる。
【0068】
前述したように、このタイヤ2のベルト16の軸方向幅WBは内側層36の軸方向幅で表される。内側ベルトコード48は、ベルト16の第一の端34aと第二の端34bとの間を架け渡す。内側ベルトコード48は赤道面に対して傾斜する。内側ベルトコード48を表す実線UBLは、タイヤ2の子午線断面に投影された、内側ベルトコード48の軸方向成分を表す。
図5において両矢印WCZで示される長さは、コントロールゾーンの軸方向幅である。
本発明においては、このコントロールゾーンの軸方向幅WCZは、内側ベルトコード48の軸方向成分の長さで表される。
図5において両矢印WSZで示される長さは、ショルダーゾーンの軸方向幅である。軸方向幅WSZは、内側ベルトコード48の軸方向成分に沿って計測される、内側ベルトコード48の端34から境界CSまでの長さで表される。
このタイヤ2では、ショルダーゾーンShの軸方向幅WSZは、コントロールゾーンの軸方向幅WCZの1/8以上3/8以下である。
【0069】
次に、タイヤ2を製造するための方法について説明する。このタイヤ2の製造では、トレッド4、ベルト16、バンド18等の構成要素を組み合わせて、未加硫状態のタイヤ2、すなわち、
図1に示されたタイヤ2のための生タイヤが準備される。このタイヤ2の製造方法は、タイヤ2のための生タイヤを準備する工程を含む。
【0070】
バンド18は、生タイヤの準備工程において形成される。バンド18の形成以外は従来の準備工程と同様にして行われるので、その詳細な説明は省略される。
【0071】
バンド18の形成のために、
図6に示された、バンドストリップ58が用いられる。バンドストリップ58は、並列した複数本のバンドコード60を含む。これらバンドコード60はトッピングゴム62で覆われる。バンドストリップ58は複数本のバンドコード60が配列したコード配列体である。バンドストリップ58は帯状である。バンドストリップ58に含まれるバンドコード60は、バンドストリップ58の長さ方向にのびる。
【0072】
図6に示されたバンドストリップ58は4本のバンドコード60を含む。バンドストリップ58に含まれるバンドコード60の本数は4本に限られない。バンドストリップ58に含まれるバンドコード60の本数は2本以上15本以下の範囲で、タイヤ2の仕様等が考慮され適宜決められる。
【0073】
図7は成形機64の一例を示す。成形機64は、バンド18を形成するための成形機としては一般的な成形機である。この成形機64の詳細な説明は省略される。成形機64は、ドラム66、リール68、送り出しローラ70、ガイド72及び巻き付けローラ74を備える。
【0074】
成形機64には、バンドストリップ58を巻いたリール68がセットされる。ドラム66にベルト16を形成した後、リール68に巻かれているバンドストリップ58がドラム66に供給される。
送り出しローラ70が、リール68に巻かれているバンドストリップ58をドラム66に向けて送り出す。ガイド72はバンドストリップ58を巻き付け位置に案内する。巻き付けローラ74は、バンドストリップ58をドラム66に押し付ける。この成形機64は、ドラム66を回転させるとともに巻き付け位置を軸方向に移動させることで、バンドストリップ58をドラム66にらせん状に巻き付けることができる。
【0075】
成形機64は、バンドストリップ58に荷重をかけながらバンドストリップ58をドラム66に巻き付ける。言い換えれば、成形機64は、バンドストリップ58を所定の張力で引っ張りながらドラム66に巻き付ける。
成形機64は張力コントローラ76を備える。張力コントローラ76は、バンドストリップ58にかける荷重を調整する。これにより、バンドストリップ58に生じる張力がコントロールされる。
【0076】
バンドストリップ58にかける荷重をコントロールできるのであれば、張力コントローラ76の構成に、特に、制限はない。この成形機64では、張力コントローラ76がドラム66の回転速度と送り出しローラ70の回転速度とを調整することで、バンドストリップ58にかける荷重、すなわち張力がコントロールされる。
本発明では、張力コントローラ76において、バンドストリップ58にかけられている荷重が計測される。この荷重の計測値からバンドコード1本あたりにかける荷重が求められる。本発明では、バンドコードにかける荷重は、バンドコード1本あたりにかける荷重で表される。
【0077】
この成形機64では、ドラム66の胴部78にバンドストリップ58は巻き付けられる。胴部78の外周面は成形面80である。この成形機64では、ドラム66の回転軸を含む平面に沿った断面において、成形面80の輪郭線は直線で表される。この成形面80は、軸方向においてフラットなプロファイルを有する。
【0078】
詳述しないが、この成形機64のドラム66では、バンド18以外に、ベルト16及びトレッド4が形成される。準備工程では、ベルト16、バンド18及びトレッド4等の構成要素をドラム66上で組み合わせて、トレッドリング(図示されず)が準備される。準備工程は、トレッドリングの成形工程を含む。
【0079】
トレッドリングの成形工程では、ベルト16が形成される。ベルト16の形成では、ベルト16の構成要素である、内側層36の予備成形体として内側シートが準備され、外側層38の予備成形体として外側シートが準備される。内側シート及び外側シートが順にドラム66の成形面80に巻き付けられ、リング状に加工される。これにより、
図8のa部に示されるように、内側層36及び外側層38からなるベルト16が形成される。
【0080】
ベルト16が形成されるとバンド18が形成される。バンド18の形成では、バンドストリップ58がドラム66に供給される。成形機64は、ドラム66を回転させるとともに、バンドストリップ58の巻き付け位置をベルト16の第一の端34a側から第二の端34b側に向けて移動させる。これにより、
図8のb部に示されるように、バンドストリップ58がベルト16の第一の端34a側から第二の端34b側に向けてらせん状に巻き付けられていく。
図8のc部に示されるように、バンド18がベルト16上に形成される。
【0081】
図8に示されたバンド18は、1本のバンドストリップ58をらせん状に巻き付けることで形成される。このバンド18が2本のバンドストリップ58を用いて形成されてもよい。この場合、赤道面からベルト16の端34に向かって、それぞれのバンドストリップ58をらせん状に巻き付けて、バンド18が形成される、又は、ベルト16の端34から赤道面に向かって、それぞれのバンドストリップ58をらせん状に巻き付けて、バンド18が形成される。
【0082】
前述したように、タイヤ2のバンド18においてバンドコード60は実質的に周方向にのびる。タイヤ2においてバンド18を構成するバンドストリップ58も、実質的に周方向に延びる。バンドストリップ58が周方向に対してなす角度は、5°以下、好ましくは、2°以下である。
【0083】
バンド18が形成されるとトレッド4が形成される。図示されないが、トレッド4の形成では、トレッド4の予備成形体である、トレッドシートが準備される。ドラム66の成形面80に形成されたバンド18上に、トレッドシートが巻き付けられ、リング状に加工される。これにより、トレッド4が形成される。トレッド4の予備成形体として、帯状に加工されたトレッドストリップを準備して、このトレッドストリップを巻き付けて、トレッド4が形成されてもよい。
【0084】
詳述しないが、このタイヤ2の製造では、別の成形機(図示されず)において、インナーライナー14、カーカス12、ビード10等の構成要素を組み合わせて、生タイヤ基体(図示されず)が準備される。この生タイヤ基体に、前述のトレッドリングを組み合わせることで、生タイヤが得られる。生タイヤ基体上に、ベルト16、バンド18及びトレッド4を順に形成して、生タイヤが準備されてもよい。
【0085】
このタイヤ2の製造では、準備工程で準備された生タイヤは、モールド(図示されず)に投入される。生タイヤは、モールド内で加圧及び加熱される。これにより、生タイヤは加硫され、
図1に示されたタイヤ2が得られる。このタイヤ2の製造方法は、生タイヤを加硫する工程を含む。このタイヤ2の製造では、加硫工程は従来の加硫工程と同様にして行われるので、その説明は省略される。
【0086】
前述したように、バンド18はバンドストリップ58をらせん状に巻き付けて形成される。成形機64は、バンド18の形成の途中で、バンドストリップ58にかける荷重を変えることができる。このバンド18には、バンドストリップ58にかける荷重が異なる、複数のゾーンを設けることができる。
以下に、バンド18を形成する際にバンドストリップ58にかける荷重のプロファイル、言い換えれば、バンドコード60の張力コントロールが
図9を用いて説明される。
【0087】
図9のa部は、バンドストリップ58にかける荷重と、バンド18各部の位置との関係を概念的に示すグラフである。縦軸は荷重の大きさを表し、横軸はバンド18の第一の端54aからの距離を表す。
図9のb部は、
図9のa部に示された荷重プロファイルが適応されたバンド18を、ベルト16とともに示した概略構成図である。
図9のc部は、このタイヤ2の基準接地面の輪郭である。
【0088】
図9において、左右方向はタイヤ2の軸方向に対応する。この
図9においては、a部における左右方向の長さ、b部における左右方向の長さ、そしてc部における左右方向の長さは同じ尺度で表されている。
【0089】
図9において、両矢印CWは基準接地面の幅である。幅CWは、第一接地端SEから第二接地端SEまでの軸方向距離により表される。幅CWは、前述の軸方向距離A100(
図4参照)の2倍に等しい。この基準接地面の画像において特定される。この幅CWは、トレッド面20に沿って計測される、一方の接地基準位置TEから他方の接地基準位置TEまでの軸方向距離に等しい。
【0090】
図9において両矢印SWは、外側層38の幅である。外側層38の幅SWは、外側層38の外面に沿って計測される、外側層38の第一の端40aから第二の端40bまでの軸方向距離で表される。両矢印UWは、内側層36の幅である。内側層36の幅UWは、内側層36の外面に沿って計測される、内側層36の第一端42aから第二の端42bまでの軸方向距離で表される。両矢印BWは、バンド18の幅である。バンド18の幅BWは、ドラム66の成形面80に沿って計測される、バンド18の第一端54aから第二の端54bまでの軸方向距離で表される。
【0091】
外側層38の幅SW、内側層36の幅UW及びバンド18の幅BWは、成形機64のドラム66に形成された外側層38の幅、内側層36の幅及びバンド18の幅を表す。この外側層38の幅SW、内側層36の幅UW及びバンド18の幅BWが、タイヤ2において、特定されてもよい。この場合、外側層38の幅SWは外側ベルトコード50の軸方向成分の長さで表され、内側層36の幅UWは内側ベルトコード48の軸方向成分の長さで表され、そして、バンド18の幅BWは、カーカス12の外面に沿って計測される。
【0092】
以下に、バンド18の第一端54aから第二の端54bに向かってバンドストリップ58をらせん状に巻き付けていく場合を例にして、バンドストリップ58にかける荷重のプロファイルが説明される。この荷重プロファイルによって、バンドコード60の張力がコントロールされる。
図9において符号P1からP10は、プロファイル上の位置を表わす。これらの位置は、バンドストリップ58の巻き付け位置と、その位置における荷重とによって表される。
図9において、ベルト16の第一の端34aから第二の端34bまでのゾーンが、前述のコントロールゾーンである。
図9に示された内側層36の幅UWは、コントロールゾーンの軸方向幅WCZに等しい。
図9において符号Crで示されるゾーンが前述のクラウンゾーンであり、符号Shで示されるゾーンが前述のショルダーゾーンである。ベルト16の第一の端34a側のショルダーゾーンShが第一ショルダーゾーンSh1とも呼ばれ、第二端34b側のショルダーゾーンShが第二ショルダーゾーンSh2とも呼ばれる。
図9における、ベルト16の端34から境界CSまでの軸方向距離が、前述の、ショルダーゾーンの軸方向幅WSZに等しい。
【0093】
位置P1はバンド18の第一端54aに対応し、位置P10はバンドの第二の端54bに対応する。
位置P1から位置P2までの第一ゾーンは、バンドストリップ58の巻き付けの開始位置に対応する。この第一ゾーンではバンドストリップ58に荷重はかけられていない。巻き付けを開始すると、バンドストリップ58には荷重SLがかかる。位置P2から位置P3までの第二ゾーンでは、バンドストリップ58にかかる荷重SLが荷重SLsまで高められる。位置P3から位置P4までの第三ゾーンでは、荷重SLは荷重SLsで保持される。この第三ゾーンにおいて、巻き付け位置が内側層36の第一の端42aを通過する。これにより、巻き付け位置が第一ショルダーゾーンSh1に進入する。位置P4及びP5は、第一ショルダーゾーンShとクラウンゾーンCrとの境界CSに対応する。
巻き付け位置が境界CSに到達すると、バンドストリップ58にかける荷重SLが高められる。位置P4から位置P5までの第四ゾーンにおいて、荷重SLが荷重SLsから荷重SLcに高められる。位置P5から位置P6までの第五ゾーン、すなわち、クラウンゾーンCrでは、荷重SLは荷重SLcで保持される。
位置P6及びP7は、クラウンゾーンCrと第二のショルダーゾーンShとの境界CSに対応する。巻き付け位置が境界CSに到達すると、バンドストリップ58にかける荷重SLが低められる。位置P6から位置P7までの第六ゾーンでは、荷重SLは荷重SLcから荷重SLsに低められる。巻き付け位置は第二ショルダーゾーンSh2に進入する。位置P7から位置P8までの第七ゾーンでは、荷重SLは荷重SLsで保持される。この第七ゾーンにおいて、巻き付け位置が内側層36の第二端42bを通過する。これにより、巻き付け位置が第二ショルダーゾーンSh2から退出する。位置P8から位置P9までの第八ゾーンでは荷重SLは低められ、巻き付け位置が位置P10に到達することで、巻き付けが終了する。位置P9から位置P10までの第九ゾーンは、バンドストリップ58の巻き付けの終了位置に対応する。
【0094】
生タイヤの準備工程において、帯状のバンドストリップ58に荷重SLをかけながら、バンドストリップ58をベルト16上にらせん状に巻き付けて、バンド18が形成される。このタイヤ2のバンド18は、らせん状に巻かれたバンドストリップ58からなる。
前述したように、コントロールゾーンにおいて、バンドストリップ58にかける荷重SLがコントロールされる。バンドストリップ58はバンドコード60を含む。バンドストリップ58にかける荷重CLをコントロールすることで、バンドコード60に生じる張力Tがコントロールされる。これにより、タイヤ2のバンド18においては、バンドコード60の残留張力RTがコントロールされる。
【0095】
前述したように、このタイヤ2のベルト16は並列した多数のベルトコード44を含み、ベルトコード44は赤道面に対して傾斜する。
走行しているタイヤでは、接地状態と非接地状態とが繰り返される。トレッドが路面に接地するとベルトは撓み、トレッドが路面から離れるとベルトは復元する。
前述したように、このタイヤ2のベルトコード44の傾斜角度は19度以上30℃以下である。このタイヤ2のように傾斜角度が45度未満である場合、ベルトコードの傾斜角度は、ベルトが撓みと大きくなり、ベルトが復元すると小さくなる傾向にある。
本発明者らは、ベルトの動きに着目し、鋭意検討を行ったところ、傾斜角度の変化が大きいタイヤほど、大きな転がり抵抗を有する傾向にあること、傾斜角度の変化の程度はバンドの拘束力によって変わること、これまで15.0N未満の荷重をかけて調整していたバンドコードの張力を高めれば、傾斜角度の変化を抑制でき、転がり抵抗の低減を図れる見込みがあることを見出した。
【0096】
このタイヤ2の製造では、バンドコード60にかける荷重CLは従来のそれよりも高い荷重に設定される。具体的には、コントロールゾーンにおいてバンドコード60にかける荷重CLは15.0N以上である。そのため、タイヤ2のコントロールゾーンにおけるバンドコード60の残留張力RTは従来タイヤのそれよりも高い。具体的には、コントロールゾーンにおけるバンドコード60の残留張力RTは15.0N以上である。
このタイヤ2では、バンドコード60が従来タイヤのそれに比べて高い残留張力RTを有する。バンド18がベルト16を締め付ける力は、従来バンドのそれに比べて強い。言い換えれば、このバンド18がベルト16を拘束する力は、従来バンドのそれに比べて強い。
【0097】
このタイヤ2のバンド18はベルト16を効果的に拘束できる。このバンド18は、特に、クラウン部分において、ベルト16を効果的に拘束できる。
【0098】
このタイヤ2は、ベルトコード44の傾斜角度の変化を小さく抑制できる。ベルト16の変形が抑制されるので、ベルト16のトッピングゴム46の変形が抑制される。このバンド18は、ベルト16の動きを起因とする転がり抵抗の増加を抑制することに貢献できる。このタイヤ2は、ベルト16の動きを起因とする転がり抵抗の増加を抑制できる。
【0099】
本発明者らは、タイヤの内部に空気を充填してタイヤを膨張させたときのトレッド面のプロファイルへのバンドコードの残留張力の影響について詳細に検討したところ、コントロールゾーンにおけるバンドコード60の残留張力RTが15.0N以上である場合、ショルダーゾーンShにおけるバンドコード60の残留張力RTsをクラウンゾーンCrにおけるバンドコード60の残留張力RTcよりも高くなるように設定すると、インフレート時のトレッド面のプロファイルが丸みを帯びる傾向にあることも見出している。
【0100】
インフレート時にトレッド面のプロファイルが丸みを帯びるタイヤでは、ショルダー部分が路面に接地すると、トレッド面が逆向きに反り返るように変形する傾向にある。このような変形が生じると、ショルダー部分に圧縮歪みが発生する。前述したように、走行しているタイヤにおいては、接地状態と、非接地状態とが繰り返される。そのため、トレッドが接地する度に圧縮歪みが発生する。圧縮歪みは転がり抵抗を増大させる。この場合、バンド18による、前述した効果が相殺される。
【0101】
しかし、このタイヤ2の場合、準備工程でのバンド18の形成では、クラウンゾーンCrにおいてバンドストリップ58にかける荷重SLcは、ショルダーゾーンShにおいてバンドストリップ58にかける荷重SLsよりも高い。言い換えれば、クラウンゾーンCrにおけるバンドコード60にかける荷重CLcは、ショルダーゾーンShにおけるバンドコード60にかける荷重CLsよりも高い。そのため、タイヤ2のバンド18においては、クラウンゾーンCrにおけるバンドコード60の残留張力RTcが、ショルダーゾーンShにおけるバンドコード60の残留張力RTsよりも高い。
このタイヤ2では、インフレート時にトレッド面20のプロファイルが丸みを帯びることが抑制される。このタイヤ2は、ショルダー部分において圧縮歪みが発生することを抑制できる。このタイヤ2では、圧縮歪みを起因とする転がり抵抗の増大が抑制される。
このタイヤ2は、バンド18による効果が相殺されることなく、バンド18がその機能を十分に発揮できる。
【0102】
このタイヤ2の転がり抵抗は従来タイヤのそれに比べて低い。このタイヤ2は転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0103】
このタイヤ2では、転がり抵抗の低減のために、キャップ部24を構成する架橋ゴムに低発熱性を考慮する必要はない。このタイヤ2は、ウェット性を重視した架橋ゴムでキャップ部24を構成できる。
【0104】
さらにこのタイヤ2では、基準接地面の形状指数Fは1.00以上1.30以下である。これにより、ショルダー部分やクラウン部分での摩耗の進行、言い換えれば、偏摩耗の進行が抑制される。このタイヤ2は良好な耐偏摩耗性を有する。このタイヤ2のバンド18は、その機能を安定して発揮できる。前述したように、このタイヤ2の転がり抵抗は、従来タイヤのそれに比べて低い。このタイヤ2は車両の燃費性能の向上に貢献できる。
【0105】
このタイヤ2は、ウェット性能を低下させることなく転がり抵抗の低減を達成できる。
【0106】
前述したように、このタイヤ2では、基準接地面の形状指数Fは1.00以上1.30以下である。
形状指数Fが1.00以上であるので、このタイヤ2は、ショルダー部分での摩耗の進行を抑制できる。この観点から、形状指数Fは1.08以上であるのが好ましく、1.09以上であるのがより好ましい。
形状指数Fが1.30以下であるので、このタイヤ2は、赤道面における接地長、言い換えれば、赤道接地長が長くなることを抑制できる。このタイヤ2は、クラウン部分での摩耗の進行を抑制できる。この観点から、形状指数Fは1.20以下であるのが好ましく、1.13以下であるのがより好ましい。
【0107】
前述したように、このタイヤ2では、クラウンゾーンCrにおけるバンドコード60の残留張力RTcが、ショルダーゾーンShにおけるバンドコード60の残留張力RTsよりも高い。ショルダー部分での圧縮歪みの発生を効果的に抑制でき、タイヤ2の転がり抵抗を効果的に低減できる観点から、ショルダーゾーンShにおけるバンドコード60の残留張力RTsの、クラウンゾーンCrにおけるバンドコード60の残留張力RTcに対する比(RTs/RTc)は、0.92以下であるのが好ましく、0.80以下であるのがより好ましい。同様の観点から、ショルダーゾーンShにおいてバンドコード60にかける荷重CLsの、クラウンゾーンCrにおいてバンドコード60にかける荷重CLcに対する比(CLs/CLc)は、0.92以下であるのが好ましく、0.80以下であるのがより好ましい。
ベルトコード44の傾斜角度の変化を小さく抑制できる観点から、比(RTs/RTc)は、0.50以上であるのが好ましく、0.60以上であるのがより好ましく、0.70以上であるのがさらに好ましい。同様の観点から、比(CLs/CLc)は、0.50以上であるのが好ましく、0.60以上であるのがより好ましく、0.70以上であるのがさらに好ましい。
【0108】
このタイヤ2のクラウンゾーンCrにおけるバンドコード60の残留張力RTcは50.0N以下であるのが好ましい。
クラウンゾーンCrにおけるバンドコード60の残留張力RTcが大きいと、バンドコード60が外側ベルトコード50に近接し、両者の間に十分なゴム量を確保できない恐れがある。この場合、バンド18とベルト16との間において損傷が生じやすく、タイヤ2の耐久性が低下する。耐久性の低下を抑制するために、バンドコード60を被覆するトッピングゴム62を厚くすると、転がり抵抗が増大してしまう。
しかしクラウンゾーンCrにおけるバンドコード60の残留張力RTcが50.0N以下に設定されることにより、バンドコード60と外側ベルトコード50との間に十分なゴム量を確保できる。バンドコード60と外側ベルトコード50とが近接したことを起因とする損傷の発生が抑制される。このタイヤ2は良好な耐久性を維持できる。バンド18は、その機能を安定して発揮できる。前述したように、このタイヤ2の転がり抵抗は、従来タイヤのそれに比べて低い。このタイヤ2は車両の燃費性能の向上に貢献できる。この観点から、クラウンゾーンCrにおけるバンドコード60の残留張力RTcは、45.0N以下であるのがより好ましく、43.5N以下であるのがさらに好ましい。同様の観点から、クラウンゾーンCrにおいてバンドコード60にかける荷重の残留張力CLcは50.0N以下であるのが好ましく、45.0N以下であるのがより好ましく、43.5N以下であるのがさらに好ましい。
【0109】
前述したように、バンドコード60は有機繊維コードである。JIS L1017に準拠して得られる、バンドコード60の一定荷重時伸び率は、1.9%以上8.4%以下であるのが好ましい。
バンドコード60の一定荷重時伸び率が1.9%以上に設定されることにより、バンドコード60を含むバンド18がベルト16を効果的に拘束できる。ベルト16の変形が抑制されるので、ベルト16のトッピングゴム46の変形が抑制される。このバンド18は、ベルト16の動きを起因とする転がり抵抗の増加を抑制することに貢献できる。このタイヤ2は、ベルト16の動きを起因とする転がり抵抗の増加を抑制できる。この観点から、バンドコード60の一定荷重時伸び率は2.5%以上であるのがより好ましい。
バンドコード60の一定荷重時伸び率が8.4%以下に設定されることにより、バンドコード60に荷重をかけることで生じる伸びが適切に抑制される。バンドコード60にかけた荷重が、張力に効果的に反映される。この場合も、バンド18がベルト16を効果的に拘束できる。ベルト16の変形が抑制されるので、ベルト16のトッピングゴム46の変形が抑制される。このバンド18は、ベルト16の動きを起因とする転がり抵抗の増加を抑制することに貢献できる。このタイヤ2は、ベルト16の動きを起因とする転がり抵抗の増加を抑制できる。この観点から、バンドコード60の一定荷重時伸び率は4.0%以下であるのがより好ましい。
【0110】
前述したように、コントロールゾーンは、クラウンゾーンCrと一対のショルダーゾーンShとからなる。それぞれのショルダーゾーンShの軸方向幅WSZはコントロールゾーンの軸方向幅WCZの1/8以上3/8以下であるのが好ましい。言い換えれば、軸方向幅WSZの、軸方向幅WCZに対する比(WSZ/WCZ)は1/8以上3/8以下であるのが好ましい。
比(WSZ/WCZ)が1/8以上に設定されることにより、タイヤ2のインフレート時にトレッド面20のプロファイルが丸みを帯びることが抑制される。このタイヤ2は、ショルダー部分において圧縮歪みが発生することを抑制できる。このタイヤ2では、圧縮歪みを起因とする転がり抵抗の増大が抑制される。このタイヤ2は、バンド18による効果が相殺されることなく、バンド18がその機能を十分に発揮できる。この観点から、比(WSZ/WCZ)は、1/6以上であるのがより好ましい。
比(WSZ/WCZ)が3/8以下に設定されることにより、タイヤ2のバンド18がベルト16を効果的に拘束できる。このバンド18は、特に、クラウン部分において、ベルト16を効果的に拘束できる。このタイヤ2は、ベルトコード44の傾斜角度の変化を小さく抑制できる。ベルト16の変形が抑制されるので、ベルト16のトッピングゴム46の変形が抑制される。このバンド18は、ベルト16の動きを起因とする転がり抵抗の増加を抑制することに貢献できる。このタイヤ2は、ベルト16の動きを起因とする転がり抵抗の増加を抑制できる。この観点から、比(WSZ/WCZ)は1/3以下であるのがより好ましい。
【0111】
前述したように、生タイヤの準備工程において、帯状のバンドストリップ58に荷重SLをかけながら、バンドストリップ58をベルト16上にらせん状に巻き付けて、バンド18は形成される。このバンド18の形成において、バンドストリップ58は隙間をあけずにらせん状に巻き付けられる。この準備工程では、隙間をあけてバンドストリップ58をらせん状に巻き付けて、バンド18が形成されてもよい。このようにして得たバンド18は、タイヤ2の軽量化に貢献できる。この場合、タイヤ2は転がり抵抗の低減をさらに図ることができる。この観点から、隙間をあけてバンドストリップ58をらせん状に巻き付けて、バンド18が形成されるのが好ましい。ベルト16を効果的に拘束でき、軽量化に貢献できるバンド18が得られる観点から、この隙間は3mm以上5mm以下であるのが好ましい。
【0112】
前述したように、このタイヤ2の子午線断面において、トレッド面20の輪郭線は軸方向に並ぶ複数の円弧を含む。
図3に示されたトレッド面20の輪郭線は、第一円弧、一対の第二円弧、一対の第三円弧及び一対のショルダー円弧を含む。
図3において、符号PCSで示される位置は、前述の、クラウンゾーンCrとショルダーゾーンShとの境界CSに対応するトレッド面20上の位置、すなわち、境界対応位置である。
【0113】
図3に示されるように、境界対応位置PCSは、軸方向において、第一円弧と第二円弧との境界CMの軸方向外側に位置する。これにより、クラウンゾーンCrにおけるバンドコード60の残留張力RTcがショルダーゾーンShにおけるバンドコード60の残留張力RTsよりも高くなるように構成された、バンド18が、ベルト16を効果的に拘束できる。このバンド18は、特に、クラウン部分において、ベルト16を効果的に拘束できる。このタイヤ2は、ベルトコード44の傾斜角度の変化を小さく抑制できる。ベルト16の変形が抑制されるので、ベルト16のトッピングゴム46の変形が抑制される。このバンド18は、ベルト16の動きを起因とする転がり抵抗の増加を抑制することに貢献できる。このタイヤ2は、ベルト16の動きを起因とする転がり抵抗の増加を抑制できる。この観点から、境界対応位置PCSは、軸方向において、第一円弧と第二円弧との境界CMの軸方向外側に位置するのが好ましい。
境界対応位置PCSは、軸方向において、第二円弧と第三円弧との境界MSの軸方向内側に位置する。これにより、タイヤ2のインフレート時にトレッド面20のプロファイルが丸みを帯びることが抑制される。このタイヤ2は、ショルダー部分において圧縮歪みが発生することを抑制できる。このタイヤ2では、圧縮歪みを起因とする転がり抵抗の増大が抑制される。このタイヤ2は、バンド18による効果が相殺されることなく、バンド18がその機能を十分に発揮できる。この観点から、境界対応位置PCSは、軸方向において、第二円弧と第三円弧との境界MSの軸方向内側に位置するのが好ましい。
【0114】
タイヤ2の転がり抵抗を効果的に低減できる観点から、境界対応位置PCSは、軸方向において、第一円弧と第二円弧との境界CMと、第二円弧と第三円弧との境界MSとの間に位置する、言い換えれば、境界対応位置PCSは、第二円弧に含まれるのがより好ましい。
【0115】
トレッド面20において、第三円弧とショルダー円弧との境界SSは、輪郭線の曲率変化が大きい箇所である。
図3に示されるように、基準接地位置GEは、境界SSの軸方向内側に位置する。このタイヤ2のトレッド面20では、その輪郭線の曲率変化が大きい境界SSが基準接地面に含まれない。このタイヤ2は、ショルダー部分における圧縮歪みの発生を効果的に抑制できる。このタイヤ2は、バンド18による効果が相殺されることなく、バンド18がその機能を十分に発揮できる。この観点から、基準接地位置GEは、第三円弧とショルダー円弧との境界SSの軸方向内側に位置するのが好ましい。
【0116】
このタイヤ2では、第二円弧の半径Rmの、第三円弧の半径Rsに対する比(Rm/Rs)は2.1以上2.7以下であるのが好ましい。
比(Rm/Rs)が2.1以上に設定されることにより、圧縮歪みの発生が効果的に抑制される。このタイヤ2は、転がり抵抗のさらなる低減を図ることができる。この観点から、比(Rm/Rs)は2.3以上であるのがより好ましい。
比(Rm/Rs)が2.7以下に設定されることにより、トレッド面20の路面に対する滑りが抑制され、ショルダー部分でのトレッド4が適切な厚さで構成される。このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が維持される。この観点から、比(Rm/Rs)は2.5以下であるのがより好ましい。
【0117】
このタイヤ2では、第一円弧の半径Rcの、第二円弧の半径Rmに対する比(Rc/Rm)は4.0以上5.5以下であるのが好ましい。
比(Rc/Rm)が4.0以上に設定されることにより、圧縮歪みの発生が効果的に抑制される。このタイヤ2は、転がり抵抗のさらなる低減を図ることができる。この観点から、比(Rc/Rm)は4.2以上であるのがより好ましい。
比(Rc/Rm)が5.5以下に設定されることにより、トレッド面20の路面に対する滑りが抑制され、ショルダー部分でのトレッド4が適切な厚さで構成される。このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が維持される。この観点から、比(Rm/Rs)は5.3以下であるのがより好ましい。
【0118】
このタイヤ2では、第三円弧の半径Rsの、ショルダー円弧の半径Rshに対する比(Rs/Rsh)は10以上20以下であるのが好ましい。
比(Rs/Rsh)が10以上に設定されることにより、圧縮歪みの発生が効果的に抑制される。このタイヤ2は、転がり抵抗のさらなる低減を図ることができる。この観点から、比(Rs/Rsh)は13以上であるのがより好ましい。
比(Rs/Rsh)が20以下に設定されることにより、トレッド面20の路面に対する滑りが抑制され、ショルダー部分でのトレッド4が適切な厚さで構成される。このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が維持される。この観点から、比(Rs/Rsh)は17以下であるのがより好ましい。
【0119】
以上説明したように、本発明によれば、ウェット性能を低下させることなく転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤが得られる。
【実施例0120】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0121】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた乗用車用の空気入りタイヤ(タイヤの呼び=205/55R16 91V)を得た。
【0122】
ショルダーゾーンの軸方向幅WSZは、コントロールゾーンの軸方向幅WCZの1/4に設定された。バンドコードには、ナイロン繊維からなるコードが使用された。バンドコードの一定荷重時伸び率は1.3%であった。
クラウンゾーンにおけるバンドコードの残留張力RTc、ショルダーゾーンにおけるバンドコードの残留張力RTs、比(RTs/RTc)及び形状指数Fは、下記の表1に示される通りであった。
【0123】
[実施例2-8及び比較例1-5]
残留張力RTc、残留張力RTs、比(RTs/RTc)及び形状指数Fを下記の表1及び2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-8及び比較例1-5を得た。
【0124】
[転がり抵抗]
転がり抵抗試験機を用い、試作タイヤが下記の条件でドラム上を速度80km/hで走行するときの転がり抵抗係数(RRC)を測定した。その結果が比較例1を100とした指数で下記表1及び2の「RRC」の欄に示されている。数値が大きいほど、タイヤの転がり抵抗は低い。
リム:16×6.5J
内圧:210kPa
縦荷重:4.82kN
【0125】
[ウェット性能]
試作タイヤをリム(サイズ=16×6.5J)に組み、空気を充填してタイヤの内圧を250kPaに調整した。タイヤを試験車両(乗用車)に装着した。ウェット路面(水膜厚=1.4mm)のテストコースで試験車両を走行させて、ラップタイムを計測した。その結果が比較例1を100とした指数で下記表1及び2の「WET」の欄に示されている。数値が大きいほど、ウェット性能に優れる。
【0126】
[耐久性能]
試作タイヤをリム(サイズ=16×6.5J)に組み、空気を充填して内圧を250kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着した。7.33kNの縦荷重をタイヤに負荷し、このタイヤを、100km/hの速度で、ドラム(半径=1.7m)の上で走行させた。20000km走行の時点で、タイヤに損傷(BEL)の発生程度を確認した。その結果が、損傷の発生がなかった場合が「A」として、損傷が発生しているものの、その程度が許容可能なレベルであった場合が「B」として、許容不可能な損傷が発生していた場合が「C」として、下記表1及び2の「耐久性」の欄に示されている。
【0127】
[耐摩耗性]
試作タイヤをリム(サイズ=16×7J)に組み、空気を充填して内圧を250kPaに調整した。このタイヤを摩耗エネルギー測定装置に装着した。キャンバー角を0°、スリップ角を0°に設定して、タイヤの摩耗エネルギーを測定し、摩耗の進みやすさを評価した。その結果が、摩耗の進行が小さく抑制されていると予測された場合が「A」として、摩耗が進行するものの、その程度が許容可能なレベルであると予測された場合が「B」として、許容不可能な程度まで摩耗が進行すると予測された場合が「C」として、下記表1及び2の「耐摩耗性」の欄に示されている。
【0128】
【0129】
【0130】
表1及び2に示されているように、実施例では、ウェット性能を低下させることなく、転がり抵抗の低減が達成されることが確認されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。