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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126788
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2483 20160101AFI20240912BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20240912BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20240912BHJP
【FI】
H01M8/2483
H01M8/2465
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035424
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】南雲 健司
(72)【発明者】
【氏名】田中 直樹
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 健輔
(72)【発明者】
【氏名】新井 郁矢
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA22
5H126AA23
5H126BB06
5H126DD05
5H126EE07
5H126EE11
5H126FF06
5H126JJ02
(57)【要約】
【課題】反応ガスの流れに伴う燃料電池スタックの排水性を高める。
【解決手段】燃料電池スタック100には、複数の発電セルに導かれた反応ガスを排出するようにセル積層体を前後方向に貫通する反応排ガス流路PA6が設けられる。燃料電池スタックは、反応排ガス流路PA6に配置され、流路PA6の上流側および下流側にそれぞれ連通する前端開口71aおよび後端開口72aを有する連通管7を備える。反応排ガス流路PA6は、流路PA6の出口に向かうに従い流路面積が徐々に縮小する縮径部を有し、後端開口72aは、縮径部の小径側の端部と流路PA6の出口との間で反応排ガス流路PA6に連通する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜を有する複数の発電セルを所定方向に積層してなるセル積層体を備えるとともに、前記複数の発電セルに導かれた反応ガスを排出するように前記セル積層体を前記所定方向に貫通する排ガス流路が設けられた燃料電池スタックであって、
前記排ガス流路に配置され、前記排ガス流路の上流側および下流側にそれぞれ連通する第1開口および第2開口が設けられた連通管をさらに備え、
前記排ガス流路は、前記排ガス流路の出口に向かうに従い流路面積が徐々に縮小する縮径部を有し、
前記第2開口は、前記縮径部の小径側の端部と前記排ガス流路の出口との間で前記排ガス流路に連通することを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池スタックにおいて、
前記排ガス流路は、前記縮径部の小径側の端部に連なり、前記排ガス流路の出口に向かうに従い流路面積が徐々に拡大する拡径部を有し、
前記第2開口は、前記拡径部に連通することを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池スタックにおいて、
前記縮径部に面して、前記排ガス流路の底面から上方に膨出され、前記連通管の端部を支持する管支持部をさらに備え、
前記連通管は、前記管支持部を前記所定方向に貫通して設けられることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池スタックにおいて、
前記管支持部には、前記第2開口が前記縮径部の小径側の端部に連通するように、前記排ガス流路の出口側の端面から前記排ガス流路の上流側に向けて切り欠きが延設されることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池スタックにおいて、
前記管支持部の頂部には、前記排ガス流路の出口に向かうに従い前記連通管に徐々に接近するように斜めに延在する溝が設けられ、
前記切り欠きは、前記溝に連通するように形成されることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項6】
請求項4に記載の燃料電池スタックにおいて、
前記切り欠きは、前記排ガス流路の出口に向かうに従い前記切り欠きの幅が徐々に小さくなるように設けられることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項7】
請求項1または2に記載の燃料電池スタックにおいて、
前記縮径部は、前記排ガス流路の出口に向かうに従い流路面積が第1減少率で徐々に減少する断面略円形状の第1縮径部と、前記第1縮径部の小径側の端部から前記排ガス流路の出口に向かうに従い流路面積が前記第1減少率よりも小さい第2減少率で徐々に減少する断面略円形状の第2縮径部と、を有することを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項8】
請求項1または2に記載の燃料電池スタックにおいて、
前記セル積層体の前記所定方向における外側に配置されたインシュレータをさらに備え、
前記縮径部は、前記インシュレータに設けられることを特徴とする燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料ガスの排出流路内に管を配置し、管を介して燃料ガス排出流路内に滞留した水を排出するようにした燃料電池スタックが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の燃料電池スタックでは、水の流入口および流出口となる管の一端側および他端側の開口端がそれぞれ燃料ガス排出流路に連通するとともに、他端側の側開口端は一端側の開口端よりも流路面積が小さい箇所に連通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6645765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載のように、水の流出口となる管の開口端を燃料ガス排出流路の流路面積が小さい箇所に単に連通する構成では、燃料電池スタックの排水性能を十分に高めることができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、電解質膜を有する複数の発電セルを所定方向に積層してなるセル積層体を備えるとともに、複数の発電セルに導かれた反応ガスを排出するようにセル積層体を所定方向に貫通する排ガス流路が設けられた燃料電池スタックであって、排ガス流路に配置され、排ガス流路の上流側および下流側にそれぞれ連通する第1開口および第2開口が設けられた連通管をさらに備える。排ガス流路は、排ガス流路の出口に向かうに従い流路面積が徐々に縮小する縮径部を有し、第2開口は、縮径部の小径側の端部と排ガス流路の出口との間で排ガス流路に連通する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、反応ガスの流れに伴い燃料電池スタックから水を良好に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックの全体構成を概略的に示す斜視図。
図2図1の燃料電池スタックに含まれる電極アッセンブリの概略構成を示す斜視図。
図3図1の燃料ガス排出周路に沿った燃料電池スタックの要部構成を示す断面図。
図4A】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックに含まれる前支持部の構成を示す図3の要部拡大図。
図4B図4Aの矢視IVB図。
図5A】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックに含まれる後支持部の構成を示す図3の要部拡大図。
図5B図5Aの矢視VB図。
図6図2の電極アッセンブリを構成するフレームの要部拡大図。
図7】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックの動作の一例を示す図。
図8A】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックに含まれる後支持部の他の例を示す図。
図8B図8Aの矢視IIIVB図。
図9A図8Aの切り欠きの他の例を示す図。
図9B図8Aの切り欠きのさらに別の例を示す図。
図10】連通管を介した排水動作の一例を示す図。
図11A】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックに含まれる連通管の入口部の構成の一例を模式的に示す図。
図11B図11Aの変形例を示す図。
図11C図11Aのさらなる変形例を示す図。
図12A図11CのIIX-IIX線に沿った断面図。
図12B図12Aの変形例を示す図。
図12C図12Aの他の変形例を示す図。
図12D図12Aのさらなる他の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図12Dを参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る燃料電池スタックは、燃料電池の構成要素である。燃料電池は、例えば車両に搭載され、車両駆動用の電力を発生することができる。まず、燃料電池スタックの全体構成を概略的に説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池スタック100の全体構成を概略的に示す斜視図である。以下では、便宜上、図示のように互いに直交する三軸方向を、前後方向、左右方向および上下方向と定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。これらの方向は、車両の前後方向、左右方向および上下方向と同一であるとは限らない。例えば図1の前後方向は、車両の前後方向であってもよく、左右方向であってもよく、上下方向であってもよい。
【0010】
図1に示すように、燃料電池スタック100は、複数の発電セル1を前後方向に積層して構成されたセル積層体101と、セル積層体101の前後両端部に配置されたエンドユニット102とを有し、全体が略直方体形状を呈する。セル積層体101の左右方向の長さは、上下方向の長さよりも長い。図1には、便宜上、単一の発電セル1が示される。発電セル1は、電解質膜と電極とを含む接合体を有する電極アッセンブリ2と、電極アッセンブリ2の前後両側に配置され、電極アッセンブリ2を挟持するセパレータ3,3と、を有する。電極アッセンブリ2とセパレータ3とは、前後方向に交互に配置される。
【0011】
セパレータ3は、断面が波板状の前後一対の金属製の薄板を有し、これら薄板の外周同士を接合して一体に構成される。セパレータ3には耐腐食性に優れた導電性の材料が用いられ、例えばチタン、チタン合金、ステンレス等を用いることができる。セパレータ3の内部には、冷却媒体が流れる冷却流路が形成され、冷却媒体の流れにより発電セル1の発電面が冷却される。冷却媒体としては例えば水を用いることができる。電極アッセンブリ2に対向するセパレータ3の表面(前面および後面)は、電極アッセンブリ2の接合体との間にガス流路を形成するようにプレス成形などによって凹凸状に構成される。
【0012】
電極アッセンブリ2の前側のセパレータ3は、例えばアノード側のセパレータ(アノードセパレータ)であり、アノードセパレータ3と電極アッセンブリ2の接合体との間に、燃料ガスが流れるアノード流路が形成される。電極アッセンブリ2の後側のセパレータ3は、例えばカソード側のセパレータ(カソードセパレータ)であり、カソードセパレータ3と電極アッセンブリ2の接合体との間に、酸化剤ガスが流れるカソード流路が形成される。燃料ガスとしては例えば水素ガスを、酸化剤ガスとしては例えば空気を用いることができる。燃料ガスと酸化剤ガスとを区別せずに、これらを反応ガスと呼ぶこともある。
【0013】
図2は、電極アッセンブリ2の概略構成を示す斜視図である。図2に示すように、電極アッセンブリ2は、略矩形状の接合体20と、接合体20を支持するフレーム21と、を有する。接合体20は膜電極接合体(いわゆるMEA;Membrane Electrode Assembly)であり、電解質膜と、電解質膜の前面に設けられたアノード電極と、電解質膜の後面に設けられたカソード電極とを有する。
【0014】
電解質膜は、例えば固体高分子電解質膜であり、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜を用いることができる。フッ素系電解質に限らず、炭化水素系電解質を用いることもできる。
【0015】
アノード電極は、電解質膜の前面に形成され、電極反応の反応場となる電極触媒層であり、該電極触媒層の前面には反応ガスを拡散して供給するガス拡散層が設けられる。カソード電極は、電解質膜の後面に形成され、電極反応の反応場となる電極触媒層であり、該電極触媒層の後面には反応ガスを拡散して供給するガス拡散層が設けられる。電極触媒層には、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素の電気化学反応を促進する触媒金属、プロトン伝導性を有する電解質、および電子伝導性を有するカーボン粒子等が含まれる。ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材、例えばカーボン多孔質体により構成される。
【0016】
アノード電極では、アノード流路およびガス拡散層を介して供給された燃料ガス(水素)が、触媒の作用によってイオン化され、電解質膜を通過してカソード電極側へ移動する。このとき生じた電子は、外部回路を通過し、電気エネルギとして取り出される。カソード電極では、カソード流路およびガス拡散層を介して供給された酸化剤ガス(酸素)と、アノード電極から導かれた水素イオンおよびアノード電極から移動した電子とが反応し、水が生成される。生成された水は、電解質膜に適度な湿度を与え、余剰な水は電極アッセンブリ2の外部へ排出される。
【0017】
フレーム21は、略矩形状を呈する薄板であり、絶縁性を有する樹脂やゴム等により構成される。フレーム21の中央部には、略矩形状の開口部21aが設けられ、開口部21aの全体を覆うように接合体20が設けられる。フレーム21の開口部21aの左側には、フレーム21を前後方向に貫通する3つの貫通孔211~213が上下方向に並んで開口され、開口部21aの右側には、フレーム21を前後方向に貫通する3つの貫通孔214~216が上下方向に並んで開口される。
【0018】
図1に示すように、電極アッセンブリ2の前後のセパレータ3には、フレーム21の貫通孔211~216に対応する位置に、セパレータ3を前後方向に貫通する貫通孔311~316がそれぞれ開口される。貫通孔311~316は、フレーム21の貫通孔211~216にそれぞれ連通する。これら互いに連通する貫通孔211~216,311~316の集合により、セル積層体101を貫通して前後方向に延在する流路PA1~PA6(便宜上、矢印で示す)が形成される。流路PA1~PA6は、マニホールドと呼ばれることもある。流路PA1~PA6は、燃料電池スタック100の外部のマニホールドに接続される。
【0019】
貫通孔211,311を介して前方に延びる流路PA1(実線矢印)は、燃料ガス供給流路である。貫通孔216,316を介して後方に延びる流路PA6(実線矢印)は、燃料ガス排出流路である。燃料ガス供給流路PA1および燃料ガス排出流路PA6は、接合体20の前面に対向するアノード流路と連通し、実線矢印に示すように、燃料ガス供給流路PA1と燃料ガス排出流路PA6とを介して、アノード流路を左右方向に燃料ガスが流れる。アノード流路と他の流路PA2~PA5との連通は、図示しないシール部を介して遮断される。燃料ガス排出流路PA6を流れる燃料ガスは、アノード電極で一部が使用された後の燃料ガスであり、これを燃料排ガスと呼ぶことがある。
【0020】
貫通孔214,314を介して前方に延びる流路PA4(点線矢印)は、酸化剤ガス供給流路である。貫通孔213,313を介して後方に延びる流路PA3(点線矢印)は、酸化剤ガス排出流路である。酸化剤ガス供給流路PA4および酸化剤ガス排出流路PA3は、接合体20の後面に対向するカソード流路と連通し、点線矢印に示すように、酸化剤ガス供給流路PA4と酸化剤ガス排出流路PA3とを介して、カソード流路を左右方向に酸化剤ガスが流れる。カソード流路と他の流路PA1,PA2,PA5,PA6との連通は、図示しないシール部を介して遮断される。酸化剤ガス排出流路PA3を流れる酸化剤ガスは、カソード電極で一部が使用された後の酸化剤ガスであり、これを酸化剤排ガスと呼ぶことがある。燃料排ガスと酸化剤排ガスとを区別せずに、これらを反応排ガスと呼ぶこともある。
【0021】
貫通孔215,315を介して前方に延びる流路PA5(一点鎖線矢印)は、冷却媒体供給流路である。貫通孔212,312を介して後方に延びる流路PA2(一点鎖線矢印)は、冷却媒体排出流路である。冷却媒体供給流路PA5および冷却媒体排出流路PA2は、セパレータ3の内部の冷却流路と連通しており、冷却媒体供給流路PA5と冷却媒体排出流路PA2とを介して、冷却流路を冷却媒体が流れる。冷却流路と他の流路PA1,PA3,PA4,PA6との連通は、図示しないシール部を介して遮断される。
【0022】
セル積層体101の前後両側に配置されたエンドユニット102は、それぞれターミナルプレート4と、絶縁プレート5と、エンドプレート6とを有する。なお、前側のエンドユニット102をドライ側エンドユニット、後側のエンドユニット102をウェット側エンドユニットと呼ぶこともある。前後一対のターミナルプレート4,4は、セル積層体101を挟んでその前後両側に配置される。前後一対の絶縁プレート5,5は、ターミナルプレート4,4を挟んでその前後両側に配置される。前後一対のエンドプレート6,6は、絶縁プレート5,5を挟んでその前後両側に配置される。
【0023】
ターミナルプレート4は、金属製の略矩形状の板状部材であり、セル積層体101で電気化学反応により生成された電力を取り出すための端子部を有する。絶縁プレート5は、非導電性を有する樹脂製またはゴム製の略矩形状の板状部材であり、ターミナルプレート4とエンドプレート6とを電気的に絶縁する。エンドプレート6は、金属製または高強度に構成された樹脂製の板状部材であり、エンドプレート6には、例えば前後のエンドプレート6,6同士を連結する前後方向細長の連結部材がボルトにより固定される。燃料電池スタック100は、連結部材を介してエンドプレート6,6により前後方向に押圧された状態で、保持される。セル積層体101を包囲するケースを連結部材として用いてよく、ケースの前端面および後端面にそれぞれエンドプレート6,6が固定されてもよい。
【0024】
後側のエンドユニット102には、エンドユニット102を前後方向に貫通する複数の貫通孔102a~102fが開口される。なお、貫通孔102a~102fは、それぞれターミナルプレート4を貫通する貫通孔、絶縁プレート5を貫通する貫通孔およびエンドプレート6を貫通する貫通孔を含むが、図1では、便宜上、これらをまとめて貫通孔102a~102fとして示す。貫通孔102aは、燃料ガス供給流路PA1の延長線上に開口され、燃料ガス供給流路PA1に連通する。貫通孔102bは、冷却媒体排出流路PA2の延長線上に開口され、冷却媒体排出流路PA2に連通する。貫通孔102cは、酸化剤ガス排出流路PA3の延長線上に開口され、酸化剤ガス排出流路PA3に連通する。貫通孔102dは、酸化剤ガス供給流路PA4の延長線上に開口され、酸化剤ガス供給流路PA4に連通する。貫通孔102eは、冷却媒体供給流路PA5の延長線上に開口され、冷却媒体供給流路PA5に連通する。貫通孔102fは、燃料ガス排出流路PA6の延長線上に開口され、燃料ガス排出流路PA6に連通する。
【0025】
より詳しくは、貫通孔102aには、エジェクタ、インジェクタなどを介して、高圧の燃料ガスが貯留された燃料ガスタンクが接続され、燃料ガスタンク内の燃料ガスが貫通孔102aを介して燃料電池スタック100に供給される。貫通孔102fには、気液分離機が接続され、貫通孔102fを介して排出された燃料ガス(燃料排ガス)は、気液分離機で燃料ガスと水とに分離される。分離された燃料ガスは、エジェクタを介して吸い込まれ、燃料電池スタック100に再び供給される。分離された水は、ドレン流路を介して外部に排出される。
【0026】
貫通孔102dには、酸化剤ガス供給用のコンプレッサが接続され、コンプレッサで圧縮された酸化剤ガスが貫通孔102dを介して燃料電池スタック100に供給される。貫通孔102cからは、酸化剤ガス(酸化剤排ガス)が外部に流出する。貫通孔102eには、冷却媒体供給用のポンプが接続され、貫通孔102eを介して燃料電池スタック100に冷却媒体が供給される。貫通孔102bからは冷却媒体が排出される。排出された冷却媒体は、ラジエータでの熱交換により冷却され、貫通孔102eを介して再び燃料電池スタック100に供給される。
【0027】
以上が燃料電池スタック100の概略構成である。燃料電池スタック100は略ボックス状のケースに収納され、車両に搭載される。
【0028】
なお、燃料電池スタック100の左側に設けられた流路PA1~PA3のうち、酸化剤ガスを排出する流路PA3は、他の流路PA1,PA2よりも下方に設けられる。燃料電池スタック100の右側に設けられた流路PA4~PA6のうち、燃料ガスを排出する流路PA6は、他の流路PA4,PA5よりも下方に設けられる。換言すると、反応排ガス用の流路PA3,PA6は、燃料電池スタック100の最下部に設けられる。
【0029】
ところで、カソード電極では、水素イオン、電子および酸素が反応して水が生成される。この水は、カソード流路を介して酸化剤ガス排出流路PA3に流れ、酸化剤排ガスとともに排出されるが、酸化剤ガス排出流路PA3内で滞留するおそれがある。一方、アノード電極では、電解質膜を介したカソード電極側からの拡散により水が発生する。この水は、アノード流路を介して燃料ガス排出流路PA6に流れ、燃料排ガスとともに排出されるが、燃料ガス排出流路PA6内で滞留するおそれがある。酸化剤ガス排出流路PA3と燃料ガス排出流路PA6をまとめて反応排ガス流路と呼ぶ。最下部の反応排ガス流路PA3,PA6には、結露により生じた水も滞留するおそれがある。
【0030】
このように反応排ガス流路PA6,PA3に水が滞留すると、反応排ガスの流れが妨げられて発電性能が低下するおそれがある。このため、反応排ガス流路PA3,PA6内の滞留水を速やかに燃料電池スタック100の外部に排出する必要があり、燃料電池スタック100の排水性能を高めることが好ましい。本実施形態では、以下のようにして排水性能の向上を図る。
【0031】
酸化剤ガス排出流路PA3と燃料ガス排出流路PA6の構成は実質的に同一である。このため、以下では、燃料ガス排出流路PA6に着目して反応排ガス流路PA3,PA6の構成を説明する。図3は、燃料ガス排出流路PA6に沿った燃料電池スタック100の要部構成を示す断面図である。
【0032】
図3では、発電セル1の個別の図示を省略する。また、図3では、前後のエンドユニット102の構成を区別するために、前側のエンドユニット102をターミナルプレート40、絶縁プレート50およびエンドプレート60で表し、後側のエンドユニット102をターミナルプレート41、絶縁プレート51およびエンドプレート61で表す。
【0033】
図3に示すように、燃料ガス排出流路PA6は、前側のエンドユニット102の貫通孔102a、セル積層体101の貫通孔216,316、および前側のエンドユニット102の貫通孔102aを介して前後方向に延在する。したがって、エンドユニット102とセル積層体101は、燃料ガス排出流路PA6を形成し、流路形成部を構成する。前側のエンドユニット102の貫通孔102aは、ターミナルプレート40の貫通孔40aと、絶縁プレート51の貫通孔50aとを含む。なお、燃料ガス排出流路PA6の前端は、エンドプレート60により閉塞される。後側のエンドユニット102の貫通孔102aは、ターミナルプレート41の貫通孔41aと、絶縁プレート51の貫通孔51aと、エンドプレート61の貫通孔61aとを含む。
【0034】
燃料ガス排出流路PA6には、流路底面に沿って連通管7が設置される。連通管7は、前端面71および後端面72にそれぞれ開口(前端開口71a,後端開口72a)が設けられた断面略円筒形状の細長の管部材であり、セル積層体101を貫通して前後方向に直線状に延在する。連通管7の前端開口71aは、前側のエンドユニット102の貫通孔102aの内部空間SP1、より詳しくは、絶縁プレート50の貫通孔50aの内側に位置する。連通管7の後端開口72aは、後側のエンドユニット102の貫通孔102aの内部空間SP2、より詳しくは、絶縁プレート51の貫通孔51aの内側に位置する。このため、連通管7を介して前側のエンドユニット102の内部空間SP1と後側のエンドユニット102の内部空間SP2とが連通する。
【0035】
連通管7は、樹脂、ゴム、ガラスなどを構成材として形成される。但し、燃料電池スタック100に振動や温度変化が生じることを考慮すると、連通管7は、可撓性を有する樹脂やゴムによって構成されることが好ましい。連通管7には、前後のエンドユニット102,102の内部空間SP1,SP2の圧力差に応じて、前端開口71aから後端開口72aに水が流れる。このため、連通管7の断面積は、燃料ガス排出流路PA6の断面積より十分に小さいものの、所定量以上の水の流れを可能とするように設定される。
【0036】
連通管7の前端部は、前側のエンドユニット102に設けられた前支持部201により支持され、連通管7の後端部は、後側のエンドユニット102に設けられた後支持部202により支持される。
【0037】
図4Aは、前支持部201の構成を示す、図3の要部拡大図であり、図4Bは、図4Aの矢視IVB図(前方から見た図)である。図4A図4Bに示すように、絶縁プレート50の貫通孔50aの底面には、その後端部から前後方向中間部において、上方に膨出した膨出部52が設けられる。なお、図4Aでは、膨出部52が後方に突出する突出部を有し、突出部がターミナルプレート40の貫通孔40aの内部に位置する。このため、絶縁プレート50は、一部が前後方向に長尺に構成され、この長尺部で連通管7の前端部が支持される。
【0038】
膨出部52には、その前端面525から後端面526にかけて、前後方向に延在する軸線CL0を中心にして断面円形状の貫通孔520が開口される。貫通孔520は、軸線CL0に対して垂直に上下方向に延在する境界面527を境にして、境界面527の後方のテーパ部521と境界面527の前方のストレート部522とを含む。
【0039】
テーパ部521は、膨出部52の後端面526から境界面527にかけて断面積が徐々に小さくなるように先細状に形成される。つまり、円錐台の空間を内部に有するように形成される。ストレート部522は、膨出部52の前端面525から境界面527にかけて一定ないし略一定の断面積のまま直線状に形成される。ストレート部522の断面積はテーパ部521の前端の断面積よりも小さい。テーパ部521の軸線CL0に対するなす角は、数度程度(例えば2~3°ないし4~5°)であり、テーパ部521の前後方向長さはストレート部522の前後方向長さよりも長い。なお、テーパ部521の後端角部には、連通管7の挿入が容易となるように面取り部が設けられる。
【0040】
連通管7の外周面の径は、前端面(境界面527)のテーパ部521の径よりも大きく、かつ、後端面526のテーパ部521の径よりも小さい。なお、連通管7の内周面の径は、ストレート部522の径よりも小さい。これにより、膨出部52の後方から貫通孔520に連通管7が挿入されると、連通管7の前端の外周角部はテーパ部521の周面に当接し、連通管7の中心線CL1が軸線CL0に一致する。その結果、連通管7の前端部がテーパ部521により位置決めされた状態で、連通管7の前端部を絶縁プレート50から支持することができる。連通管7の動きはテーパ部521により規制されるため、連通管7の位置ずれを防止することもできる。連通管7が前支持部201により支持された状態では、連通管7の前端開口71aは、貫通孔520を介してエンドユニット102の内部空間SP1、より詳しくは膨出部52の前方の内部空間SP1に連通する。
【0041】
図5Aは、後支持部202の構成を示す図3の要部拡大図であり、図5Bは、図5Aの矢視VB図(後方かた見た図)である。図5A図5Bに示すように、絶縁プレート51の貫通孔51aの底面には、前側の絶縁プレート50と同様に、上方に膨出した膨出部53が前後方向にわたって設けられる。膨出部53の頂部534(上端部)は、ターミナルプレート41の貫通孔41aの周面を後方に延長した仮想延長線L1に沿って前後方向に延在する。なお、膨出部53は、絶縁プレート51の内周面の最下部からやや右方にずれた位置から膨出しているが(図5B)、この程度のずれは、連通管7を介した排水性能に悪影響を与えるものではない。
【0042】
膨出部53には、その前端面535から後端面536にかけて、軸線CL0を中心にして断面円形状の貫通孔530が開口される。貫通孔530は、軸線CL0に対して垂直に上下方向に延在する境界面537を境にして、境界面537の前方のテーパ部531と境界面537の後方のストレート部532とを含む。なお、絶縁プレート51は、後方に突出する突出部を有し、突出部がエンドプレート61の貫通孔61aの内部に位置する。このため、絶縁プレート51は、一部が前後方向に長尺に構成され、この長尺部で連通管7の後端部が支持される。
【0043】
テーパ部531は、膨出部53の前端面535から境界面537にかけて断面積が徐々に小さくなるように先細状に形成される。つまり、円錐台の空間を内部に有するように形成される。ストレート部532は、膨出部53の後端面536から境界面537にかけて一定ないし略一定の断面積のまま直線状に形成される。ストレート部532の断面積はテーパ部531の後端の断面積よりも小さい。テーパ部531の軸線CL0に対するなす角は、数度程度(例えば2~3°ないし4~5°)であり、テーパ部531の前後方向長さはストレート部532の前後方向長さよりも長い。
【0044】
ターミナルプレート41には、燃料ガス排出流路PA6を構成する貫通孔41aの下方に、略円形状の貫通孔41bが開口され、貫通孔41bに連通管7が挿通される。連通管7の外周面の径は、後端面(境界面537)のテーパ部531の径よりも大きく、かつ、前端面535のテーパ部531の径よりも小さい。これにより、膨出部53の前方から貫通孔530に連通管7が挿入されると、連通管7の後端の外周角部はテーパ部531の周面に当接し、連通管7の中心線CL1が軸線CL0に一致する。その結果、連通管7の後端部がテーパ部531により位置決めされた状態で、連通管7の後端部を絶縁プレート51から支持することができる。連通管7の動きはテーパ部531により規制されるため、連通管7の位置ずれを防止することもできる。連通管7が後支持部202により支持された状態では、連通管7の後端開口72aは、貫通孔530を介してエンドユニット102の内部空間SP2、より詳しくは膨出部53の後方の内部空間SP2に連通する。
【0045】
連通管7は、前後のエンドユニット102により支持されるだけでなく、セル積層体101に含まれる電極アッセンブリ2のフレーム21によっても支持される。図6は、燃料ガス排出用のフレーム21の貫通孔216(図2)の構成を示す正面図(前方から見た部)である。図2の貫通孔216の形状をより詳細に示したのが図6であり、図2図6とでは、貫通孔216の形状が異なる。図6に示すように、フレーム21の貫通孔216の底面には、上方に向けて突出する左右一対の突出部217,218が設けられる。突出部217,218は、貫通孔216の底面に沿って略円筒形状の空間SP3を形成するように円弧状に形成される。
【0046】
空間SP3には、セル積層体101の前方または後方から連通管7が挿入される。なお、空間SP3の径は、連通管7を容易に挿入可能となるように連通管7の外径よりもやや大きい。これにより、連通管7の前後方向中間部が突出部217,218により位置決めされ、連通管7をより安定して支持できる。但し、連通管7の前後両端部はテーパ部521,531により位置決めされるため、突出部217,218は、テーパ部521,531による位置決めを損なわない程度の緩やかな位置決めを行うように設けられる。したがって、突出部217,218の精度をそれほど高める必要はない。
【0047】
突出部217,218は、連通管7の中間部を支持する中間支持部203を構成する。中間支持部203は、セル積層体101に含まれる全てのフレーム21に設けてもよく、一部のフレーム21に設けてもよい。突出部217,218の先端部を互いに接続して中間支持部203を正面視で略円形状に形成してもよい。連通管7の材質にも依存するが、連通管7の剛性が高く、連通管7を前支持部201と後支持部202とで強固に支持できる場合、中間支持部203を省略してもよい。
【0048】
本実施形態では、反応排ガス流路PA3,PA6に溜まった水が連通管7を介して後方に流れ、エンドユニット102の貫通孔102aから外部に排出される。つまり、貫通孔520、連通管7および貫通孔530が排水用流路を構成する。このような水の流れは、連通管7の前端開口71aに連通する内部空間SP1の圧力P1が、後端開口72aに連通する内部空間SP2の圧力P2よりも大きい場合に発生する。そして、内部空間SP1,SP2の圧力差ΔP(=P1-P2)が大きいほど水の流れが促進され、排水能力が向上する。本実施形態では、排水能力が向上するようにガス排出流路PA11,A12を構成しており、以下、この点について説明する。
【0049】
図5Aに示すように、絶縁プレート51の貫通孔51aは、前後方向に延在する軸線CL2を中心として形成される。この貫通孔51aは、前端から後端にかけて順番に設けられた、入口部511と、テーパ部512と、絞り部513と、出口部514とを含む。
【0050】
入口部511は、軸線CL2を中心として略円筒形状に形成される。テーパ部512は、入口部511から絞り部513にかけて軸線CL2に対する所定角度で徐々に縮径するように形成される。絞り部513は、テーパ部512から出口部514にかけて軸線CL2に対する所定角度で徐々に縮径するように、より詳しくは、テーパ部512よりも緩やかな所定角度で徐々に縮径するように形成される。換言すると、テーパ部512は、第1減少率で流路面積が徐々に減少し、絞り部513は、第1減少率よりも小さい第2減少率で流路面積が徐々に減少する。
【0051】
貫通孔51aの面積は、絞り部513の後端部の領域ARで最小となる。絞り部513の最小面積は、例えば入口部511の面積の1/4以下ないし1/5以下である。出口部514は、絞り部513から後方にかけて軸線CL2に対する所定角度で徐々に拡径するように、より詳しくは傾斜角が絞り部513の傾斜角よりも大きく、かつ、テーパ部512の傾斜角よりも小さくなるように形成される。入口部511とテーパ部512とは凹曲面状に滑らかに接続され、テーパ部512と絞り部513および絞り部513と出口部514は、それぞれ凸曲面状に滑らかに接続される。
【0052】
図5Aに示すように、膨出部53の前端面535は、テーパ部512の後端部と前後方向同一ないしほぼ同一位置から、テーパ部512と同一ないしほぼ同一の傾斜角度で前方かつ下方にかけて傾斜する。このため、図5Aに示すような軸線CL0とCL2とを含む所定断面において、前端面535は、テーパ部512の周面と軸線CL2に対しほぼ対称に設けられる。前端面535には貫通孔530(テーパ部531)が開口され、連通管7が挿入される。
【0053】
膨出部53の頂部534は、軸線CL2から絞り部513の周面までの距離とほぼ同一距離だけ軸線CL2から離れて、絞り部513の前後方向長さとほぼ同一長さだけ前後方向に延在する。このため、軸線CL0とCL2とを含む所定断面において、頂部534は、絞り部513と軸線CL2に対しほぼ対称に設けられる。
【0054】
膨出部53の後端面536は、出口部514の前端部と前後方向同一ないしほぼ同一位置から、出口部514と同一ないしほぼ同一の傾斜角度で後方かつ下方にかけて傾斜する。このため、軸線CL0とCL2とを含む所定断面において、後端面536は、出口部514の周面と軸線CL2に対しほぼ対称に設けられる。後端面536には貫通孔530(ストレート部532)が開口される。このため、連通管7は、領域ARの下流かつ近傍で燃料ガス排出流路PA6に連通する。
【0055】
燃料電池スタック100の組立は、例えば以下のようにして行われる。まず、組立台上に、ドライ側エンドユニット102を水平にしてセットする。次いで、セパレータ3と電極アッセンブリ2を、上下方向に延在するガイドロッド等により位置決めしながら、所定枚数だけ交互に積層する。次いで、セル積層体101の貫通孔213,313および216、316にそれぞれ上方から連通管7を挿入する。このとき、連通管7の先端(下端)の角部は、ドライ側エンドユニット102のテーパ部521の周面に全周にわたって当接する。これにより連通管7が位置決めされ、エンドユニット102(絶縁プレート50)の貫通孔520の軸線CL0の位置と連通管7の中心線CL1の位置とが一致する。
【0056】
次いで、ウェット側エンドユニット102を積層する。次いで、シリンダ等を用いてウェット側エンドユニット102を上方から加圧して、積層体の全体を圧縮する。そして、ドライ側のエンドプレート60とウェット側のエンドプレート61とをボルトにより連結プレートなどに締結し、燃料電池スタック100の組立を完了する。
【0057】
この場合、加圧工程においてウェット側エンドユニット102(絶縁プレート51)が降下すると、貫通孔530のテーパ部531の周面が連通管7の上端に接近し、テーパ部531の内側に連通管7が配置される。このため、連通管7を損傷することなく、簡易な工程で、連通管7を内部に組み込んだ燃料電池スタック100の組立が可能である。なお、燃料電池スタック100の組立が完了した状態では、連通管7に圧縮力が作用しないように、連通管7の一端部とテーパ部521または531の周面との間に前後方向に隙間が存在することがある。
【0058】
本実施形態に係る燃料電池スタック100の主要な動作を説明する。図7は、反応排ガス流路PA3,PA6における反応排ガスおよび排水の流れを模式的に示す図である。本実施形態では、反応排ガス流路PA3,PA6が、後側の絶縁プレート51の貫通孔51a内で流路面積が徐々に減少するように、すなわち入口部511からテーパ部512および絞り部513にかけて面積が徐々に減少するように構成される。このため、流路面積が最小となる領域ARの近傍で反応排ガスの流速が最大になるとともに、ベンチュリ効果により圧力が最小となる。
【0059】
図7に示すように、連通管7の後端開口72aは、領域ARの下流ではあるが、領域ARの近傍で、流路PA3,PA6の内部空間SP2に連通する。このため、連通管7の前端開口71aに連通する流路PA3,PA6の内部空間SP1の圧力と内部空間SP2の圧力との圧力差ΔPが増大する。その結果、図7に矢印で示すように、流路PA3,PA6の水が前端開口71aから連通管7に流入し、連通管7の内部を通って後端開口72aから流出する。流出した水は、反応排ガスの流れに沿って燃料電池スタック100から排出される。このように本実施形態では、反応排ガス流路PA3,PA6に、流路面積が徐々に小さくなるような絞り部513を設けるので、連通管7の入口と出口の圧力差ΔPが大きくなって、排水性能を高めることができる。
【0060】
連通管7の後端開口72aは、流路面積が最小となる領域ARの下流であり、流路面積が徐々に拡大する出口部514に連通する。軸線CL2よりも下方における出口部514の周面は、後方かつ下方に傾斜しており、出口部514では、その傾斜面に沿って水が下方に流れる。このため、後端開口72aから後方への水の流れが促進され、排水性能がより高まる。
【0061】
連通管7は、前後両端部がそれぞれテーパ部521,531を介して、前支持部201および後支持部202により支持される。したがって、連通管7に反応排ガスの流体力が作用して連通管7が後方に押動されると、連通管7の後端面72の角部がテーパ部531の周面に当接する。これにより、連通管7が貫通孔530の内部で位置決めされる。すなわち、連通管7は、貫通孔530の軸線CL0と連通管7の中心線CL1とが一致した状態で保持され、連通管7の後端開口72aがシール状態となって連通管7の内部と貫通孔530とが連通する。これにより、車両の振動が連通管7に作用した場合であっても、連通管7は位置ずれすることなく、安定した排水性を確保できる。
【0062】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)燃料電池スタック100は、電解質膜を有する複数の発電セル1を前後方向に積層してなるセル積層体101を備えるとともに、複数の発電セル1に導かれた反応ガスを排出するようにセル積層体101を前後方向に貫通する反応排ガス流路PA3,PA6が設けられる(図1)。この燃料電池スタック100は、反応排ガス流路PA3,PA6に配置され、反応排ガス流路PA3,PA6の上流側の内部空間SP1および下流側の内部空間SP2にそれぞれ連通する前端開口71aおよび後端開口72aを有する連通管7をさらに備える(図3)。反応排ガス流路PA3,PA6は、反応排ガス流路PA3,PA6の出口(出口部514の後端)に向かうに従い流路面積が徐々に縮小する縮径部、すなわちテーパ部512および絞り部513を有する(図5A)。連通管7の後端開口72aは、絞り部513の小径側の端部(後端部)と流路出口(出口部514の後端)との間で反応排ガス流路PA3,PA6に連通する(図5A)。
【0063】
このように反応排ガス流路PA3,PA6の流路面積を徐々に縮小することにより、連通管7の後端開口72aの近傍の内部空間SP2の圧力P2が、ベンチュリ効果によって減少する。特に、入口部511から出口部514にかけて流路PA3,PA6が段差なく滑らかに形成されるので、圧力損失が小さく、内部空間SP2の圧力を効率よく減少できる。これにより、連通管7の前後の圧力差ΔPが大きくなり、連通管7を介して水を良好に排出することができる。
【0064】
(2)反応排ガス流路PA3,PA6は、絞り部513の小径側の端部に連なり、流路出口側に向かうに従い流路面積が徐々に拡大する出口部514を有する(図5A)。後端開口72aは、出口部514に連通する(図5A)。これにより、連通管7から流出した水が出口部514の傾斜した周面を介して下方に流れ、燃料電池スタック100からの排水を促進することができる。
【0065】
(3)燃料電池スタック100は、反応排ガス流路PA3,PA6の底面から上方に膨出され、連通管7の後端部を支持する膨出部53をさらに備える(図5A)。連通管7は、膨出部53を前後方向に貫通して設けられる(図5A)。これにより、連通管7を支持する膨出部53を絞り部513の一部として機能させることができ、膨出部53を設けたことによりガス流れに悪影響を与えることを抑制できる。連通管7の支持も容易である。
【0066】
(4)反応排ガス流路PA3,PA6の縮径部は、流路出口に向かうに従い流路面積が第1減少率で徐々に減少する断面略円形状のテーパ部512と、テーパ部512の小径側の端部から流路出口に向かうに従い流路面積が第1減少率よりも小さい第2減少率で徐々に減少する断面略円形状の絞り部513と、を有する(図5A)。これにより、最小絞りの領域ARにかけてガス流れの剥離を良好に抑えることができ、内部空間SP2の圧力を良好に低下させることができる。
【0067】
(5)燃料電池スタック100は、セル積層体101の前後方向の両端部にそれぞれ配置された絶縁プレート50,51をさらに備える(図4A図5A)。縮径部(テーパ部512、絞り部513)は、絶縁プレート51に設けられる(図5A)。これにより滑らかな曲面を有する縮径部を、樹脂成型等により容易に形成することができる。
【0068】
(6)上述したのとは別の観点として、燃料電池スタック100は、セル積層体101の前後方向の外側に配置されたエンドユニット102と、反応排ガス流路PA3,PA6に配置され、反応排ガス流路PA3,PA6の上流側および下流側にそれぞれ連通する前端開口71aおよび後端開口72aが前端面71おより後端面72にそれぞれ設けられた連通管7と、を備える(図1図3)。エンドユニット102は、連通管7の前端部および後端部をそれぞれ支持する前支持部201および後支持部202を有する(図3)。前支持部201は、連通管7の前端部を包囲して連通管7の内部空間と反応排ガス流路PA3,PA6の上流側とを連通するように軸線CL0を中心に筒状に形成されて、内部に軸線CL0に沿った貫通孔520が設けられる(図4A)。後支持部202は、連通管7の後端部を包囲して連通管7の内部空間と反応排ガス流路PA3,PA6の下流側とを連通するように軸線CL0を中心に筒状に形成されて、内部に軸線CL2に沿った貫通孔530が設けられる(図5A)。貫通孔520および貫通孔530は、連通管7の挿入時に前端面71の外周面側の縁部(角部)および後端面72の外周面側の縁部(角部)がそれぞれ周方向全周にわたって当接可能なように、軸線CL0を中心にテーパ状に形成されたテーパ部521,531をそれぞれ有する(図4A図5A)。
【0069】
これにより、反応排ガスの流体力により連通管7の端部の外周面の一部がテーパ部521,531の周面に当接し、貫通孔520、530の軸線CL0と連通管7の中心線CL1とが一致した状態で、連通管7が保持される。これにより、車両の振動があった場合や反応排ガスによる流体力が変化した場合であっても、連通管7のがたつきや位置ずれを防止することができ、連通管7を介して良好な排水を実現することができる。すなわち、仮に連通管7の中心線CL1の位置が軸線CL0からがずれると、連通管7の後端開口72aの断面積が実質的に減少するおそれがあり、安定した排水性能を確保することが困難である。この点、本実施形態では、軸線CL0から中心線CL1の位置がずれることが抑制され、安定した排水性能が得られる。
【0070】
(7)貫通孔520および貫通孔530は、それぞれテーパ部521,531の小径側の端部、すなわちテーパ部521の前端部およびテーパ部531の後端部に連なり、軸線CL0に沿ってストレート状に形成されたストレート部522,532をさらに含む(図4A図5A)。これによりストレート部522を介して連通管7にスムーズに水を流入させることができるとともに、ストレート部532を介して燃料電池スタック100からスムーズに水を流出させることができる。
【0071】
以上では、連通管7の後端開口72aが、絞り部513の最小絞りとなる領域ARの後方、すなわち最小絞りよりも反応排ガス流路PA3,PA6の下流で、流路AR3,AR6に連通する(図5A)。但し、連通管7の前後の圧力差ΔPが大きいほど、連通管7内を水が流れやすく、排水性能が高まる点を考慮すると、後端開口72aが反応排ガス流路PA3,PA6に連通する位置は、流路PA3,PA6内の圧力が最も低くなる領域ARに近い方が好ましい。この点を考慮して、後支持部202を以下のように構成するようにしてもよい。
【0072】
図8Aは、後支持部202の他の例(図5Aの変形例)を示す図であり、図8Bは、図8Aの矢視VIIIB図(後方から見た図)である。なお、図8Aでは、図5Aの燃料ガス排出流路PA6に代えて、反応排ガス流路PA3,PA6が示される。図8A図8Bに示すように、膨出部53の頂部534には、貫通孔530の中心の軸線CL0に向けて径方向に膨出部53を貫通する切り欠き538が設けられる。切り欠き538は、図8Bに示すように、軸線CL0,CL2を結ぶ仮想線L2に対し対称に設けられるとともに、互いに対向する切り欠き538の左右一対の対向面は、仮想線L2と略平行に延在する。したがって、切り欠き538の左右方向の幅Wは、径方向にわたって一定である。
【0073】
切り欠き538は、膨出部の前端面535から後端面536にかけて幅Wを一定としたまま延在する。切り欠き538を設けることにより、連通管7の後端開口72aが切り欠き538を介して反応排ガス流路PA3,PA6の領域ARに連通する。これにより後端開口72aの圧力が、より低下するため、連通管7の入口と出口の圧力差ΔPが大きくなり、排水性能を一層向上することができる。
【0074】
切り欠き538の幅Wは、前後方向にかけて一定であってもよいが、変化させてもよい。例えば、切り欠き538の後方にかけて幅Wが徐々に小さくなるようにしてもよい。これにより、反応排ガスの流速が徐々に速くなるため、連通管7からの水の排出をより促進することができる。
【0075】
切り欠き538の構成は上述したものに限らない。図9A図9Bは、それぞれ切り欠き538の他の例を示す図である。図9Aでは、上方からの切り欠き538の一部は、貫通孔まで至らずに有底溝である。切り欠き538は、有底溝の底面538aが、膨出部53の前端面535の上端部から前方かつ下方に向けて斜めに延在するように設けられる。有底溝の底面538aは、領域ARの下方で貫通孔530と交差する。これにより連通管7の後端開口72aが、切り欠き538を介して領域ARの下方で反応排ガス流路PA3,PA6と連通する。
【0076】
このため、反応排ガスの一部は、反応排ガス流路PA3,PA6から、絞り部513に面した有底溝に沿って流れるようになる。このとき、連通管7の後端開口72aは、貫通孔530および切り欠き538を介して流路PA3,PA6内の圧力が最も低くなる領域ARに連通する。したがって、連通管7の前後の圧力差ΔPが増大し、排水性能が高まる。
【0077】
有底溝の底面538aは、後方に向かうに従い軸線CL0に接近するように斜め下方に形成される。有底溝に沿って流れる反応排ガスの流速は速いため、貫通孔530の水を、反応排ガスの流れに沿って反応排ガス流路PA3,PA6から容易に流出させることができる。なお、溝の幅Wは、前後方向にかけて一定であってもよいが、変化させてもよい。例えば、後方にかけて徐々に小さくなるようにしてもよい。
【0078】
図8Aでは、切り欠き538が膨出部53の前後方向全域にわたって設けられる。これに対し、図9Bでは、切り欠き538は、膨出部53の前後方向全域にわたってではなく、膨出部53の後端面536から前方に所定長さにわたって、すなわち、領域ARの下方の、軸線CL2に垂直な端面538bにかけて設けられる。これにより、連通管7の後端開口72aは、貫通孔530および切り欠き538を介して流路PA3,PA6内の圧力が最も低くなる領域ARに連通するため、排水性能が高まる。
【0079】
本実施形態に係る燃料電池スタック100は、上述したように後支持部202、特に膨出部53を構成することにより、さらに以下のような作用効果を奏することができる。
(1)膨出部53には、連通管7の出口の後端開口72aが、反応排ガス流路PA3,PA6の絞り部513の小径側の端部と連通するように、反応排ガス流路PA3,PA6の出口側の端面である後端面536から反応排ガス流路PA3,PA6の上流側である前方に向けて切り欠き538が延設される(図8A図9A図9B)。これにより連通管7の後端開口72aの圧力が、流路PA3,PA6内の最も圧力が低くなる領域ARに連通するようになるため、連通管7の前後の圧力差ΔPが増大し、排水効果をより高めることができる。
【0080】
(2)切り欠き538は、反応排ガス流路PA3,PA6に面する膨出部53の頂部534に設けられた有底溝に連通して設けることもできる(図9A)。ここで、有底溝は、反応排ガス流路PA3,PA6の出口に向かうに従い溝の底面538aが徐々に連通管7に接近するように、後方かつ下方に斜めに延設される(図9A)。これにより、有底溝と貫通孔530とが交差する位置を調整することができる。したがって、連通管7の後端開口72aを流路AR3,AR6内の領域ARに良好に連通させることができ、後端開口72aの圧力を低下させやすい。また、流路PA3,PA6内の反応排ガスが、有底溝に沿って連通管7の中心線CL1に向けて斜め下方に流れるようなるため、反応排ガスが水に衝突して流れ、水の排出効果が高まる。
【0081】
(3)切り欠き538は、反応排ガス流路PA3,PA6の出口に向かうに従い切り欠き538の幅Wが徐々に小さくなるように設けられてもよい。これにより、切り欠き538に沿った反応排ガスの流速が徐々に速くなるため、連通管7からの水の排出をより促進することができる。
【0082】
本実施形態では、連通管7を介して燃料電池スタック100の外部に水を排出するが、連通管7の内部でプラグ流れ(栓流とも呼ぶ)が生じると、連通管7を介して水を良好に排出できないおそれがある。例えば図10に示すように、車両が坂道を走行することにより車両が傾斜して、燃料電池スタック100が後方にかけて上り勾配の姿勢になると、反応排ガス流路PA3,PA6の底面に溜まった水の水面SFが、膨出部52の前端面525の貫通孔520の上方に位置し、貫通孔520が水に浸される。このとき、連通管7には、連通管7の断面全体を覆うような略円柱形状のプラグ流れPの態様で水が吸い込まれることがある。この場合、水の塊の重力に抗して連通管7内で水を斜め上方に移動させることは困難であり、排水性が悪化する。以下、この点を考慮した本実施形態の構成について説明する。
【0083】
図11A図11Cは、それぞれ連通管7の入口部の構成の一例を模式的に示す図である。なお、図11A図11Bでは、連通管7の前端部を支持する前支持部201(膨出部52)の図示を省略し、図11Cでは、前支持部201の構成を簡略化して模式的に示す。反応排ガス流路PA3,PA6の底部には、膨出部52に設けられた貫通孔520、連通管7、および膨出部53に設けられた貫通孔530によって、前後方向に延在する排水用流路PA10(便宜上、矢印で示す)が構成されるが、図11A図11Cには、排水用流路PA10の入口が主に示される。なお、排水用流路PA10の入口とは、反応排ガスの流れに沿った連通管7の前端部までの区間をいい、貫通孔520と連通管7の入口とを含む。
【0084】
図11Aの例では、連通管7の前端面71に絞り部710が設けられ、連通管7の前端部は、連通管7の内径が前端面71(前端開口71a)から後方にかけて徐々に拡大するように、テーパ状に形成される。これにより、連通管7の入口で排水用流路P10が絞られ、連通管7を流れる反応排ガスの流速が上昇する。その結果、図示のように、連通管7内で水滴WTに分散させることができる。したがって、連通管7内でプラグ流れが生じることを抑制することができ、後方への水の流れが促進される。
【0085】
図11Bの例では、連通管7の前端部の絞り部711が前端面71から後方に所定長さにわたってストレート状に延在する。すなわち、絞り部711はストレート状に形成され、絞り部711の後方において、連通管7は、連通管7の内径が絞り部711の後端から後方にかけて徐々に拡大するようにテーパ状に形成される。この場合も、排水用流路PA10が連通管7の入口で絞られて反応排ガスの流速が上昇し、連通管7内でプラグ流れが生じることを抑制することができる。
【0086】
図11Cの例では、図11A図11Bの例とは異なり、前支持部201(膨出部52)の貫通孔520に、絞り部528が設けられる。絞り部528は、図4Aのストレート部522よりも小径であり、膨出部52の前端面525から後方にストレート状に延在する。絞り部528の後方には、絞り部528に連なって後方にかけて内径が徐々に拡大するようにテーパ部529が設けられ、テーパ部529の後方に連通管7の前端部が挿入される。この場合も、排水用流路PA10が連通管7の入口で絞られて反応排ガスの流速が上昇し、連通管7内でプラグ流れが生じることを抑制することができる。特に、図11Cでは、連通管に絞りを設けることなく、膨出部52の貫通孔520の形状を図4Aのものから変更するだけなので、構成が容易である。
【0087】
連通管7の入口に絞り部を設けることにより加え、水の塊を分断するような分断部を設けることもできる。図12Aは、分断部の一例を示す図11CのXII-XII線に沿った断面図である。図12Aに示すように、分断部75は、前端開口71aを横断するように前端面71に装着された略十字状の薄板である。このように連通管7の入口に分断部75を設けることにより、連通管7に水が流入するとき、分断部75により水の塊が分断(4分割)され、プラグ流れが生じることを抑制する効果が一層高まる。
【0088】
分断部の形状は図12Aに示したものに限らない。例えば図12Bに示すように、細長形状の単一の板状の分断部76を、前端開口71aを二分割するように、前端開口71aの中央を横断して連通管7の前端面71に装着するようにしてもよい。図12Cに示すように、細長形状の一対の板状の分断部77を、前端開口71aを三分割するように、連通管7の前端面71に装着するようにしてもよい。図12Dに示すように分断部78を構成し、前端開口71aをより多くの個数に分割するようにしてもよい。
【0089】
分断部75~78を設ける位置は、絞り部528(図11C)の下流である連通管7の前端面71とは限らない。例えば膨出部52の前端面525に、すなわち絞り部528の上流に、貫通孔520を横断するように分断部75~78を設けてもよい。絞り部528の途中に分断部75~78を設けてもよい。
【0090】
上述したように連通管7の入口部を構成することにより、本実施形態はさらに以下のような作用効果を奏することができる。
(1)燃料電池スタック100は、反応排ガス流路PA3,PA6の上流側から下流側にかけて水が流れる排水用流路を形成する流路形成部として、膨出部52,53と連通管7とを備える(図3図4A図5A)。連通管7には、反応排ガス流路PA3,PA6に配置され、反応排ガス流路PA3,PA6の上流側および下流側にそれぞれ連通する前端開口71aおよび後端開口72aが開口される(図3)。流路形成部は、排水用流路PA10の入口に絞り部710,711,528を有する(図11A図11C)。
【0091】
これにより、連通管7の流路面積が連通管7の入口で絞られて、連通管7を流れる反応排ガスの流速が上昇する。その結果、連通管7内で水を分散させ、連通管7内でプラグ流れが生じることを抑制することができ、連通管7内の後方への水の流れが促進される。
【0092】
(2)絞り部710,711は、連通管7に設けられる(図11A図11B)。これにより、連通管7の構成を変更するだけで、プラグ流れが生じることを抑制することができる。
【0093】
(3)連通管7は、前端開口71aが設けられる前端部と後端開口72aが設けられる後端部とを有する(図3)。燃料電池スタック100は、連通管7の前端部を支持する前支持部201(膨出部52)を備える(図4A図11C)。膨出部52には、前端開口71aに連通する貫通孔520が設けられるとともに、貫通孔520に絞り部528が設けられる(図11A)。この構成によれば、連通管7を特殊な形状にすることなく、プラグ流れが生じることを抑制できる。
【0094】
(4)燃料電池スタック100は、排水用流路PA10を横断するように排水用流路PA10の入口に設けられ、水を分断する分断部75~78をさらに備える(図12A図12D)。これにより、分断部75~78により水の塊が分断され、プラグ流れが生じることを一層抑制することができる。
【0095】
(5)分断部75~78は、絞り部710,711,528(絞り部の端面または絞り部の内部)に設けることができる。これにより、絞り部710,711,528と分断部75~78とによる相乗効果を得ることが可能である。
【0096】
なお、上記実施形態では、第1開口としての前端開口71aと、第2開口としての後端開口72aと、を有する断面円形の連通管7を、前後のエンドユニット102に設けられた前支持部201と後支持部202とにより支持するようにしたが、反応排ガス流路PA3,PA6(排ガス流路)に連通管7を配置する際の連通管7の支持構造は上述したものに限らない。上記実施形態では、インシュレータである絶縁プレート51に、反応排ガス流路PA3,PA6の流路面積が徐々に縮小する縮径部、すなわち第1縮径部としてのテーパ部512と、第2縮径部としての絞り部513とを設けたが、縮径部の構成は上述したものに限らない。
【0097】
上記実施形態では、絞り部513の下流側(後方)で、連通管7の後端開口72aが流路PA3,PA6の内部空間SP2に連通するようにしたが、絞り部513の小径側の端部(最小絞り)と出口部514の端部(流路出口)との間で連通するのであれば、連通管の連通位置は上述したものに限らない。但し、最小絞りに近いほど低圧になる点を考慮すると、最小絞りに近い位置で連通することが好ましい。上記実施形態では、反応排ガス流路PA3,PA6の流路面積が出口部514で徐々に拡大するようにしたが、拡径部の構成は上述したものに限らない。
【0098】
上記実施形態では、連通管7の内径を、貫通孔520,530のストレート部522,532の径よりも小さくしたが、ストレート部と同一径にしてもよく、ストレート部より大径にしてもよい。上記実施形態では、反応排ガス流路PA3,PA6の底面から上方に膨出する膨出部52,53を設け、膨出部52,53により連通管7の端部を支持するようにしたが、管支持部の構成はこれに限らない。したがって、連通管7に連通するような貫通孔520,530を設けずに、管支持部を構成してもよい。発電セル1が積層される所定方向は、前後方向に限らず、左右方向や上下方向であってもよい。
【0099】
上記実施形態(図8A図9A図9B)では、膨出部53の頂部534に前後方向に切り欠き538を設けたが、流路面積が最小となる部位である領域ARに連通するように、膨出部53の後端面536から前方に切り欠き538を設けるのであれば、切り欠きの構成はいかなるものでもよい。上記実施形態(図9A)では、膨出部53の頂部534に、後方かつ下方に斜めに有底溝を延設したが、溝を軸線CL2と平湖に設けてもよく、溝の構成は上述したものに限らない。
【0100】
燃料電池スタック100内の流路の個数、配置、形状は上述したものに限らない。例えば燃料ガス排出流路PA6と酸化剤ガス排出流路PA3とがそれぞれ2個であってもよい。冷却媒体排出流路PA2と冷却媒体供給流路PA5とがそれぞれ2個であってもよい。貫通孔211~216,311~316,102a~102fの形状は矩形状、三角形状、あるいは他の多角形状、円形や楕円形状等、種々の形状とすることができる。流路PA1~PA6の断面形状は、各流路PA1~PA6を構成する貫通孔211~216,311~316,102a~102fの形状に応じて定まり、矩形状や円形状とすることができ、他の形状とすることもできる。流路PA1~PA6の断面積は、流路PA1~PA6を通過するガスや冷却媒体の必要流量に応じて適宜設定される。セル積層体101の貫通孔211~216,311~316の形状とエンドユニット102の貫通孔102a~102fの形状が互いに異なってもよい。上記実施形態では、貫通孔211~213,311~313,102a~102cおよび貫通孔214~216,314~3161a2d~102fを、それぞれ左右方向同一位置に上下方向に並べて配置したが、これらを左右方向に位置をずらして配置してもよい。
【0101】
上記実施形態では、燃料電池スタック100を有する燃料電池を車両に搭載する例を説明したが、燃料電池スタックは、航空機や船舶等の車両以外の移動体、ロボットの他、各種産業機械に搭載することができる。
【0102】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【0103】
1 発電セル、7 連通管、50,51 絶縁プレート、51a 貫通孔、53 膨出部、71a 前端開口、72a 後端開口、100 燃料電池スタック、101 セル積層体、512 テーパ部、513 絞り部、514 出口部、536 後端面、538 切り欠き、538a 底面、PA3 酸化剤ガス排出流路、PA6 燃料ガス排出流路
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図12D