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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126803
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】状態評価装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G01N29/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035454
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】598105732
【氏名又は名称】株式会社シスミック
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀太郎
(72)【発明者】
【氏名】日村 みのり
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】三上 貴正
(72)【発明者】
【氏名】岸村 雄平
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA09
2G047CA03
2G047EA10
2G047GA09
2G047GD02
2G047GG33
(57)【要約】
【課題】検査対象物の表面を滑らかに移動しながら、検査対象物の目地における状態評価の誤判定を防止し、判定精度の高い状態評価装置を提供すること。
【解決手段】アンモニアの回収方法は、状態評価装置は、検査対象物の表面を打撃する打撃ヘッドと、打撃ヘッドの先端部が露出されるように打撃ヘッドに取り付けられ、打撃ヘッドの少なくとも側端部を覆う打撃ヘッドカバーと、打撃ヘッドを昇降させるように駆動するアクチュエータと、打撃ヘッドによる打音を検出するマイクと、マイクで検出された打音に基づいて、検査対象物の表面の評価値を生成する評価値生成部と、を含み、打撃ヘッドカバーは、打撃ヘッドの昇降に合わせて昇降する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の表面を打撃する打撃ヘッドと、
前記打撃ヘッドの先端部が露出されるように前記打撃ヘッドに取り付けられ、前記打撃ヘッドの側周部を覆う打撃ヘッドカバーと、
前記打撃ヘッドを昇降可能に駆動するアクチュエータと、
前記打撃ヘッドによる前記検査対象物の前記表面の打音を検出するマイクと、
前記マイクで検出された打音に基づいて、前記検査対象物の評価値を生成する制御部と、を含み、
前記打撃ヘッドカバーは、前記打撃ヘッドの昇降に合わせて昇降する、状態評価装置。
【請求項2】
前記打撃ヘッドカバーの材料は、前記打撃ヘッドの材料と異なる、請求項1に記載の状態評価装置。
【請求項3】
前記打撃ヘッドカバーの材料は、樹脂である、請求項2に記載の状態評価装置。
【請求項4】
平面視において、前記打撃ヘッドカバーは、円環形状を有する、請求項1に記載の状態評価装置。
【請求項5】
前記打撃ヘッドの前記先端部が露出される側における前記打撃ヘッドカバーの表面は、テーパ形状を含む、請求項1に記載の状態評価装置。
【請求項6】
前記打撃ヘッドの前記先端部が露出される側における前記打撃ヘッドカバーの表面は、湾曲している、請求項1に記載の状態評価装置。
【請求項7】
平面視において、前記打撃ヘッドの外径は、前記検査対象物に設けられた目地の幅よりも小さい、請求項1に記載の状態評価装置。
【請求項8】
平面視において、前記打撃ヘッドカバーの外径は、前記打撃ヘッドの外径の1.5倍以上である、請求項1に記載の状態評価装置。
【請求項9】
前記打撃ヘッドカバーは、着脱可能に打撃ヘッドに取り付けられる、請求項1に記載の状態評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、検査対象物の状態を評価する状態評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外装材(外壁材)の剥離または剥落を未然に防止するため、建物の状態を診断するさまざまな方法が提案されている。例えば、建物躯体に接着された外装材の表面をハンマーで打撃した際に発生する打音をマイクで検出し、マイクからの検出信号に基づいて外装材の状態を評価する方法が知られている(特許文献1~特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-203711号公報
【特許文献2】特開2021-021667号公報
【特許文献3】特開2021-021668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、タイルなど外装材においては、タイル目地のような段差が存在しているため、ハンマーによる打撃を行いながら状態評価装置を移動すると、タイル目地にハンマーの先端部が引っ掛かり、滑らかに状態評価装置を移動させることができない。また、ハンマーがタイル目地に引っ掛かった状態においては、評価値の生成することは不要である。
【0005】
本発明の一実施形態は、検査対象物の表面を滑らかに移動しながら、検査対象物の目地における状態評価の誤判定を防止し、判定精度の高い状態評価装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る状態評価装置は、検査対象物の表面を打撃する打撃ヘッドと、打撃ヘッドの先端部が露出されるように打撃ヘッドに取り付けられ、打撃ヘッドの側周部を覆う打撃ヘッドカバーと、打撃ヘッドを昇降可能に駆動するアクチュエータと、打撃ヘッドによる検査対象物の表面の打音を検出するマイクと、マイクで検出された打音に基づいて、検査対象物の評価値を生成する制御部と、を含み、打撃ヘッドカバーは、打撃ヘッドの昇降に合わせて昇降する。
【0007】
打撃ヘッドカバーの材料は、打撃ヘッドの材料と異なっていてもよい。打撃ヘッドカバーの材料は、樹脂であってもよい。
【0008】
平面視において、打撃ヘッドカバーは、円環形状を有していてもよい。
【0009】
打撃ヘッドの先端部が露出される側における打撃ヘッドカバーの表面は、テーパ形状を含んでいてもよい。
【0010】
打撃ヘッドの先端部が露出される側における打撃ヘッドカバーの表面は、湾曲していてもよい。
【0011】
平面視において、打撃ヘッドカバーの外径は、検査対象物に設けられた目地の幅よりも小さくてもよい。
【0012】
平面視において、打撃ヘッドカバーの外径は、打撃ヘッドの外径の1.5倍以上であってもよい。
【0013】
打撃ヘッドカバーは、着脱可能に打撃ヘッドに取り付けられてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態に係る状態評価装置によれば、検査対象物の目地(例えば、タイル目地などによる段差)における打撃ヘッドの引っ掛かりを防止し、状態評価装置を滑らかに移動させることができる。また、打撃ヘッドが目地を打撃した場合、可撓性または剛性を有する打撃ヘッドカバーが検査対象物の表面または目地の角と接する。打撃ヘッドは検査対象物に接触しないため打撃力センサによって検出される打撃力は小さく、検査対象物の状態評価処理において評価値が生成されない。したがって、検査対象物の目地における誤判定を防止することができる。検査対象物であるタイルおよび外壁パネルの浮き(空隙)を打音で検査するウォールトラッカー(登録商標)装置、またはウォールトラッカー(登録商標)ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る状態評価装置の模式的な正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る状態評価装置の模式的な底面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る状態評価装置の打撃部の内部構造を示す模式図である。
図4A】本発明の一実施形態に係る状態評価装置のヘッドカバーの模式的な斜視図である。
図4B】本発明の一実施形態に係る状態評価装置のヘッドカバーの模式的な上面図である。
図4C】本発明の一実施形態に係る状態評価装置のヘッドカバーの模式的な側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る状態評価装置の打撃部の打撃動作を示す模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係る状態評価装置の打撃部の打撃動作を示す模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係る状態評価装置を用いる検査対象物の状態評価処理を示すフローチャートである。
図8A】本発明の一実施形態に係る状態評価装置のヘッドカバーの模式的な側面図である。
図8B】本発明の一実施形態に係る状態評価装置のヘッドカバーの模式的な側面図である。
図8C】本発明の一実施形態に係る状態評価装置のヘッドカバーの模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、実施形態はあくまで一例にすぎず、当業者が、発明の主旨を保ちつつ適宜変更することによって容易に想到し得るものについても、当然に本発明の範囲に含まれる。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、または形状などが模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状などはあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0017】
本明細書および図面において、同一または類似する複数の構成は、同一の符号を用いて表記される。但し、複数の構成のそれぞれが区別される場合、複数の構成のそれぞれは、大文字のアルファベットが添えられて表記される場合がある。また、1つの構成が複数の部分に区別される場合、複数の部分は、小文字のアルファベットが添えられて、またはハイフンと自然数を用いて表記される場合がある。
【0018】
[1.状態評価装置10の構成]
図1および図2は、本発明の一実施形態に係る状態評価装置10の模式的な正面図および底面図である。
【0019】
状態評価装置10は、打撃部100、集音部200、制御部300、および車輪400を含む。打撃部100の詳細な構成は後述するが、打撃部100は、内部に中空を有する本体100aを含む。打撃部100の本体100aは、1つの上面および4つの側面を含む角柱形状を有する。集音部200は、打撃部100の本体100aの下部と接続されている。集音部200は、打撃部100を中心として、等方的な4つの方向(+x方向、-x方向、+y方向、および-y方向)に延在する構造を有する。本実施形態では、x方向とy方向とが直交している例を用いて説明する。集音部200が延在する4つの方向の各々の端部には、マイク210が配置されている。すなわち、状態評価装置10は、4つのマイク210を備えている。集音部200のマイク210は、打撃部100が検査対象物の表面を打撃したときに発生する打音を検出し、打音に対応する打音検出信号を生成する。制御部300は、打撃部100の本体100aの上面に配置されている。制御部300は、打撃部100による打撃動作を制御するとともに、打音検出信号に基づいて検査対象物の状態を評価する。状態評価装置10は、4つの車輪400を備える。2つの車輪400は、回転軸530を介してL字形状を有する接続部材510と接続され、当該接続部材510が、打撃部100の本体100aの一側面に接続されている。同様に、残る2つの車輪400も、回転軸530を介してL字形状を有する接続部材510と接続され、当該接続部材510が、一側面と反対に位置する打撃部100の本体100aの他側面に接続されている。車輪400は、z方向に延在する回転軸530を中心として回転することができるように接続部材510と接続されている。1つのマイク210は、4つの車輪400のうちの隣接する2つ車輪400の間に位置している。
【0020】
制御部300は、後述する打撃部100のアクチュエータ140(図3参照)と電気的に接続され、打撃部100の打撃動作を制御する制御信号を生成する。また、制御部300は、マイク210と電気的に接続され、マイク210で生成された打音検出信号を取得する。さらに、制御部は、後述する打撃力センサ160(図3参照)で生成された打撃力検出信号を取得する。制御部300は、少なくともアクチュエータ140、マイク210、および打撃力センサ160と電気的に接続さていればよく、制御部300の配置は、打撃部100の本体100aの上面に限られない。制御部300は、例えば、打撃部100の本体100aの側面に配置されていてもよい。また、制御部300は、打撃部100に接することなく、配置されていてもよい。制御部300は、1つの構造体によって機能(制御信号の生成、打撃力検出信号に基づく判定、および打音検出信号に基づく評価値の生成)を発揮する構成であってもよく、分離された複数の構造体の各々によって機能を発揮する構成であってもよい。
【0021】
車輪400は、状態評価装置10の移動手段である。回転軸530を中心として車輪400が回転することにより、状態評価装置10をxy面内の任意の方向に移動させることができる。例えば、車輪400はキャスターであるが、これに限られない。
【0022】
また、状態評価装置10では、打撃部100および集音部200の下に底面カバー520が設けられている。底面カバー520は、打撃部100および集音部200の少なくとも一方と接続されていればよい。底面カバー520は、上面および下面が貫通された開口部520aを有する。開口部520aの平面形状は、例えば、円形状であるが、これに限られない。開口部520aは、後述する打撃部100の打撃ヘッド110および打撃ヘッドカバー120が通り抜けることができることができる平面形状を有していればよい。換言すると、平面視(底面視)において、底面カバー520には、打撃部100の打撃ヘッド110および打撃ヘッドカバー120が露出される開口部520aが設けられている。底面カバー520の外形形状は、例えば、矩形状であるが、これに限られない。
【0023】
打撃ヘッド110の先端部と検査対象物の表面との距離は、検査対象物の表面に車輪400が接地していることによって一定に保たれている。しかしながら、検査対象物が目地を有する場合、目地に車輪400が落ち込み、打撃ヘッド110の先端部と検査対象物の表面との距離が変化する場合がある。この場合であっても、底面カバー520が検査対象物の表面と接することにより、打撃ヘッド110の先端部と検査対象物の表面との距離を一定に保つことができる。そのため、底面カバー520の下面の位置は、車輪400の接地面よりも僅かに上方に位置することが好ましい。底面カバー520の下面の位置は、底面カバー520の厚さによって調整することができる。
【0024】
底面カバー520は、検査対象物の表面を傷つけない材料で構成される。例えば、底面カバー520の材料として、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、またはナイロンなどの樹脂を用いることができる。
【0025】
[2.打撃部100の構成]
図3は、本発明の一実施形態に係る状態評価装置10の打撃部100の内部構造を示す模式図である。図3では、説明の便宜上、一部の構成(図3中のハッチングされた部分)が断面図として示されている。
【0026】
打撃部100は、本体100a、支持部100b、打撃ヘッド110、打撃ヘッドカバー120、ロッド130、アクチュエータ140、および打撃ヘッドカバー固定部150を含む。本体100aの内部に、打撃ヘッド110、打撃ヘッドカバー120、ロッド130、アクチュエータ140、打撃ヘッドカバー固定部150、および打撃力センサ160が配置されている。上述したように、本体100aは、角柱形状を有するが、本体100aの形状は、これに限られない。例えば、本体100aは、円柱形状を有していてもよい。ロッド130は、アクチュエータ140に挿通されている。アクチュエータ140は、本体100aの内壁に接続された支持部100bと接続され、支持されている。アクチュエータ140は、ロッド130が上下に移動する(昇降する)ようにロッド130を駆動する。ロッド130の端部には、打撃力センサ160を介して、打撃ヘッド110が接続されている。そのため、ロッドが上下に移動することにより、打撃ヘッド110も上下に移動する。打撃ヘッド110には、打撃ヘッドカバー固定部150が接続されており、打撃ヘッドカバー120は、打撃ヘッドカバー固定部150に取り付けられて固定されている。打撃ヘッドカバー120は、交換することができるように、着脱可能に打撃ヘッドカバー固定部150に取り付けられることが好ましい。
【0027】
打撃ヘッドカバー120は、開口部120aを有する。打撃ヘッド110は、打撃ヘッドカバー120の開口部520aに挿通されるように配置され、打撃ヘッド110の先端部は、打撃ヘッドカバー120の下端よりも下方に位置し、打撃ヘッドカバー120から露出されている。
【0028】
打撃ヘッド110の材料は、変形が困難な材料であり、例えば、金属である。打撃ヘッド110の打撃動作により、打撃ヘッド110の先端部は、検査対象物の表面と接する。検査対象物の表面に瞬間的な打撃を与えるためには、打撃ヘッド110の先端部と検査対象物の表面との接触面積が小さい方が好ましい。そのため、打撃ヘッド110の先端部は、球形状のように湾曲していることが好ましい。上述したように、打撃ヘッド110の先端部は、打撃ヘッドカバー120から露出されているが、打撃ヘッド110の側周部は、打撃ヘッドカバー120によって覆われている。
【0029】
打撃力センサ160は、打撃ヘッド110が検査対象物の表面から受ける打撃力を検出し、打撃力検出信号を生成することができる。打撃ヘッド110が検査対象物の表面を打撃した場合と目地を打撃した場合とでは、打撃ヘッド110の移動距離が異なり、打撃力センサ160によって検出される打撃力が異なる。例えば、打撃力センサ160は、圧電センサである。
【0030】
[3.打撃ヘッドカバー120の構成]
図4A図4B、および図4Cは、それぞれ、本発明の一実施形態に係る評価装置の打撃ヘッドカバー120の模式的な斜視図、上面図、および側面図である。
【0031】
打撃ヘッドカバー120は、上部の円板形状と下部の逆円錐台形状とが組み合わされた構造を有し、円板形状および逆円錐台形状の各々の中心が貫通された開口部120aを有する。打撃ヘッドカバー120は、上面(円板形状の上面に相当)および側面(円板形状の側面および逆円錐台形状の側面に相当)を有し、下面を有することなく、下端が開口されている。平面視(上面視)において、開口部120aは、円形状を有する。すなわち、平面視において、打撃ヘッドカバー120は、円環形状を有する。打撃ヘッドカバー120は、上部(円板形状)と下部(逆円錐台形状)とが一体形成された構成であってもよく、上部(円板形状)と下部(逆円錐台形状)とが個別に形成され、それらが接続(または接着)されたものであってもよい。
【0032】
打撃ヘッドカバー120の上面は、打撃部100の打撃ヘッドカバー固定部150と接続され、打撃ヘッドカバー120が打撃ヘッドカバー固定部150に固定される。打撃ヘッドカバー120は、打撃ヘッドカバー固定部150に接着されて固定されてもよく、ネジ止めにより固定されてもよい。図示しないが、打撃ヘッドカバー120の上面に、打撃ヘッドカバー固定部150と係合するための係合部材が設けられていてもよい。打撃ヘッドカバー120に係合部材が設けられていることにより、打撃ヘッドカバー120と打撃ヘッドカバー固定部150との位置合わせが容易となり、打撃ヘッドカバー120を打撃ヘッドカバー固定部150に取り付けやすくなる。
【0033】
打撃ヘッドカバー120の下部の側面(すなわち、逆円錐台形状の側面)は、テーパ形状を有する。具体的には、打撃ヘッドカバー120の下端から上方に向かって打撃ヘッドカバー120の外周が大きくなるように、打撃ヘッドカバー120の側面が傾斜している。打撃ヘッドカバー120の側面がテーパ形状を含むことにより、打撃ヘッドカバー120の側面が検査対象物の表面と接触した場合であっても、打撃ヘッドカバー120の側面が検査対象物の表面と接触する面積を小さくすることができる。そのため、打撃ヘッドカバー120が検査対象物の目地に引っ掛かることがなく、状態評価装置10を滑らかに移動させることができる。
【0034】
また、平面視において、打撃ヘッド110の外径は、検査対象物に設けられた目地の幅よりも小さいことが好ましい。この場合において、打撃ヘッドカバー120が設けられていないと、打撃ヘッド110が目地に落ち込んだ(目地を打撃した)際に、打撃ヘッド110の端面が目地に引っ掛かり、状態評価装置を滑らかに移動させることができない。それに対し、打撃ヘッドカバー120を備える状態評価装置10では、目地に打撃ヘッド110が落ち込んだときであっても、目地の角に打撃ヘッドカバー120が接触し、打撃ヘッドカバー120の側面がガイドとなるため、状態評価装置10を滑らかに移動させることができる。
【0035】
なお、平面視において、打撃ヘッド110の外径は、検査対象物に設けられた目地の幅よりも大きい場合もあり得る。この場合、打撃ヘッド110が目地に落ち込むことはないが、打撃ヘッドカバー120が状態評価処理の妨げとなることはない。
【0036】
開口部120aには、打撃ヘッド110が挿通される。上述したように、挿通される打撃ヘッド110の先端部は、打撃ヘッドカバー120の開口部120aから露出される。開口部120aの開口径d1は、打撃ヘッド110の外径とほぼ同じであるか、または僅かに大きい。挿通される打撃ヘッド110の側端部は、開口部120aの内壁と接していないことが好ましいが、打撃ヘッド110の側端部の一部が、開口部120aの内壁と接していてもよい。打撃ヘッドカバー120の外径d2は、特に限定されないが、打撃ヘッド110の外径の1.5倍以上であり、好ましくは2.0倍以上である。また、打撃ヘッドカバー120の外径d2は、底面カバー520の開口部520aの開口径よりも小さい。
【0037】
平面視において、開口部120aは、円形状を有するが、開口部120aの平面形状は、これに限られない。開口部120aには打撃ヘッド110を挿通することができればよく、開口部120aの平面形状は、打撃ヘッド110の形状に合わせた構成とすることもできる。例えば、開口部120aの平面形状は、矩形状であってもよい。
【0038】
また、平面視において、打撃ヘッドカバー120の外形形状は、円形状であるが、打撃ヘッドカバーの外径形状は、これに限られない。打撃ヘッドカバー120が底面カバー520の開口部520aを通り抜けることができるように、打撃ヘッドカバー120の外形形状は、底面カバー520の開口部520aの平面形状に合わせた構成とすることができる。例えば、底面カバー520の開口部520aの平面形状が矩形状である場合、打撃ヘッドカバー120の外形形状は、矩形状であってもよい。
【0039】
打撃ヘッドカバー120の材料は、打撃ヘッド110の材料と異なる。打撃ヘッドカバー120は、打撃ヘッド110よりも可撓性に優れる材料で構成される。また、打撃ヘッドカバー120は、検査対象物と接触して検査対象物を傷つけず、また、打撃ヘッドカバー120自身も劣化しないように、ある程度の剛性を備えた材料であることが好ましい。例えば、打撃ヘッドカバー120の材料として、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、またはナイロンなどの樹脂を用いることができる。打撃ヘッドカバー120の上部(円板形状)と下部(円錐台形状)とが個別に形成される場合、上部(円板形状)と下部(円錐台形状)とが、同じ材料で構成されていてもよく、異なる材料で構成されていてもよい。また、打撃ヘッドカバー120は、底面カバー520と同じ材料で構成されていてもよく、異なる材料で構成されていてもよい。
【0040】
[4.打撃部100の打撃動作]
図5および図6は、本発明の一実施形態に係る状態評価装置10の打撃部100の打撃動作を説明する模式図である。図5および図6では、説明の便宜上、一部の構成(図5中のハッチングされた部分)が断面図として示されている。また、図5では、打撃部100の打撃動作前の状態が点線で示されている。
【0041】
アクチュエータ140は、ロッド130が上下に移動するようにロッドを駆動する。定常状態(打撃部100のによる打撃動作前の状態)では、打撃ヘッド110および打撃ヘッドカバー120は、底面カバー520の上面よりも上に位置する。打撃ヘッド110の先端部は、底面カバー520の開口部520aから突出していない。打撃部100による打撃動作が開始されると、ロッド130が下方に移動し、打撃ヘッド110の先端部が底面カバー520の開口部520aから突出する。底面カバー520の開口部520aから突出した打撃ヘッド110の先端部は、検査対象物の表面を打撃することができる。打撃ヘッドカバー120は、打撃ヘッド110と接続された打撃ヘッドカバー固定部150に取り付けられており、打撃ヘッド110の下方への移動に合わせて、下方に移動する。打撃ヘッドカバー120の一部は、底面カバー520の開口部520aから突出する。
【0042】
図5に示す打撃部100の状態は、ロッド130が最大ストロークで移動した状態である。打撃ヘッド110の先端部が検査対象物の表面を打撃するときは、打撃ヘッド110が打撃力に対応する抗力を検査対象物の表面から受けるため、打撃ヘッド110の先端部のみが底面カバー520の開口部520aから突出していてもよい。
【0043】
打撃部100の打撃動作は繰り返し行われてもよく、この場合、アクチュエータ140は、ロッド130を周期的に上下に移動させる(昇降させる)ことが好ましい。
【0044】
一般的には、目地の深さはロッド130の最大ストロークよりも小さい。そのため、打撃ヘッドカバー120が設けられていないと、打撃ヘッド110は、検査対象物の表面と同じように目地の底面を打撃する。この場合、打撃力センサ160が打撃力を検出し、状態評価処理が実行される。すなわち、打撃ヘッド110が目地の底面を打撃した場合であっても、状態評価処理における評価値が生成されるという誤判定が生じることになる。しかしながら、打撃ヘッドカバー120を備える状態評価装置10では、このような誤判定を防止することができる。この点について、図6を参照して説明する。
【0045】
図6は、本発明の一実施形態に係る状態評価装置10の打撃部100の打撃動作を示す模式図である。図6に示す打撃部100の状態は、打撃ヘッド110の先端部が目地600に落ち込んだ状態である。目地600は、2つの外装材610の間に形成されている。なお、目地600には、図6に示すように、目地材620が塗布されていてもよい。
【0046】
図6に示すように、打撃ヘッド110の先端部が目地600に落ち込んだ場合であっても、状態評価装置10では、打撃ヘッド110の側端部を打撃ヘッドカバー120が覆っており、打撃ヘッドカバー120が外装材610の角または表面と接触する。換言すると、打撃ヘッドカバー120が、目地600の角(外装材610の角)を覆っている。そのため、状態評価装置10では、打撃ヘッド110が目地600の角と接触することがない。また、ロッド130が最大ストロークで伸長する前に、打撃ヘッドカバー120が目地600の角と接触するため、打撃ヘッド110が目地600の底面を打撃しない。すなわち、打撃ヘッド110が、外装材610の表面ではなく目地600の角または底面を打撃して状態評価を行うことを防止することができる。また、打撃ヘッドカバー120は、目地600の角と接触して変形するため、打撃ヘッドカバー120が目地600の角と接触することによる打撃力は小さく、打撃力センサ160で検出される打撃力は小さく、後述する状態評価処理における評価値が生成されない。そのため、状態評価装置10では、目地600における状態評価の誤判定を防止することができる。
【0047】
[5.状態評価装置10を用いた検査対象物の状態評価処理]
図7は、本発明の一実施形態に係る状態評価装置10を用いる検査対象物の状態評価処理を示すフローチャートである。
【0048】
図7に示す状態評価処理は、状態評価装置10の車輪400を検査対象物の表面に当接させ、状態評価装置10を所定の位置に移動し、打撃ヘッド110による打撃を開始する制御信号が制御部300からアクチュエータ140に送信されることによって開始される。なお、状態評価装置10は、打撃ヘッド110による打撃動作を行いながら、検査対象物の表面上を移動することもできる。
【0049】
図7に示す状態評価処理は、ステップS110~ステップS150を含む。以下、ステップS110~ステップS150を順に説明する。
【0050】
ステップS110では、アクチュエータ140が、ロッド130を下方に移動させる。これにより、打撃ヘッド110が検査対象物の表面を打撃する。なお、打撃ヘッド110による打撃は繰り返し行われてもよく、この場合、アクチュエータ140は、ロッド130を周期的に上下に移動させる(昇降させる)。
【0051】
ステップS120では、集音部200のマイク210が、打音を検出し、打音に対応する打音検出信号を生成する。生成された打音検出信号は、制御部300に送信される。
【0052】
ステップS130では、打撃力センサ160が、打撃力を検出し、打撃力に対応する打撃力検出信号を生成する。生成された打撃力検出信号は、制御部300に送信される。
【0053】
ステップS140では、制御部300が、打撃力検出信号を打撃力検出波形に変換し、最大打撃力を算出する。また、制御部300は、最大打撃力が閾値以上であるか否かを判定する。打撃ヘッド110が検査対象物の表面を確実に打撃した場合には、打撃ヘッド110が表面から受ける抗力が大きくなるため、打撃力センサ160が検出する打撃力は大きくなる。それに対し、打撃ヘッド110が検査対象物の目地を打撃した場合には、打撃ヘッド110が目地から受ける抗力が小さくなるため、打撃力センサ160が検出する打撃力は小さくなる。したがって、最大打撃力が閾値以上であるか否かを判定することにより、打撃ヘッド110が検査対象物の表面を確実に打撃したか否かを判定することができる。なお、状態評価装置10では、打撃ヘッド110が検査対象物の目地を打撃した場合、打撃ヘッドカバー120が目地の角と接触する場合がある。しかしながら、打撃ヘッドカバー120は可撓性を有し、打撃ヘッド110よりも打撃時に大きく変形する。そのため、打撃ヘッド110が表面から受ける抗力は小さく、打撃力センサ160が検出する打撃力も小さい。
【0054】
最大打撃力が閾値以上であるとき(ステップS140:YES)、ステップS150が実行される。最大打撃力が閾値未満であるとき(ステップS140:NO)、状態評価処理は終了する。
【0055】
ステップS150では、制御部300が、打音検出信号を打音検出波形に変換する。状態評価装置10は、4つのマイク210を有する。そのため、変換された4つの打音検出波形に基づき、対象検査物の評価値を生成することができる。例えば、4つの打音検出波形の各々最大振幅(例えば、最初に発生する1周期分の波形の振幅など)に基づき、対象検査物の評価値を生成することができる。なお、対象検査物の評価値の生成においては、従来の方法を用いることができる。
【0056】
ステップS150が実行されると、状態評価処理は終了する。
【0057】
状態評価装置10を用いる検査対象物の状態評価処理によれば、状態評価装置10が、打撃ヘッド110の側端部を覆う打撃ヘッドカバー120を備えるため、検査対象物に目地がある場合であっても、状態評価装置10を滑らかに移動させることができる。また、打撃ヘッド110が目地を打撃した場合であっても、打撃ヘッドカバー120が可撓性を有するため、検出される打撃力が大きくならない。そのため、検査対象物の目地において、不要な対象検査物の評価値の生成を防止することができる。
【0058】
[6.変形例]
以上、状態評価装置10について説明したが、状態評価装置10の構成は、さまざまな変形が可能である。以下では、図8A図8Cを参照して、状態評価装置10の打撃ヘッドカバー120のいくつかの変形例について説明する。なお、状態評価装置10の構成の変形は、これらに限られるものでない。
【0059】
図8A図8Cは、本発明の一実施形態に係る状態評価装置10の打撃ヘッドカバー120A~120Cの模式的な側面図である。
【0060】
図8Aに示す打撃ヘッドカバー120Aは、打撃ヘッドカバー120と異なり、下部の逆円錐台形状の側面が湾曲している。すなわち、開口部120aの下端側における打撃ヘッドカバー120Aの表面は、下方から上方に(より具体的には、開口部120aの下端から上方に)向かって湾曲している。側面視における打撃ヘッドカバー120Aの表面は、開口部120aの下端側に向かって凸状となるように湾曲していることが好ましいが、これに限られない。また、打撃ヘッドカバー120Aの湾曲する表面の曲率半径は、下方から上方に向かって同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0061】
図8Bに示す打撃ヘッドカバー120Bは、打撃ヘッドカバー120と異なり、平板形状を有することなく、逆円錐台形状のみを有する。打撃ヘッドカバー120Bの構成は、打撃ヘッドカバー120の逆円錐台形状の構成と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0062】
図8Cに示す打撃ヘッドカバー120Cは、打撃ヘッドカバー120と異なり、下部の逆円錐体形状の下面の一部が残るように開口部120aが形成されている。すなわち、打撃ヘッドカバー120Cの下端は、開口部120aの開口と一致しておらず、開口部120aの開口径d1よりも大きい外径d3の下面を有する。打撃ヘッドカバー120Cの下面は、打撃ヘッドカバー120Cの上面と同様に、円環形状を有する。また、打撃ヘッドカバー120Cの側面は、テーパ形状を有するため、打撃ヘッドカバー120Cの下面の外径d3は、打撃ヘッドカバー120Cの上面の外径d2よりも小さい。
【0063】
以上説明したように、変形例も含めて、本発明の一実施形態に係る状態評価装置10によれば、検査対象物の目地(例えば、タイル目地などによる段差)における打撃ヘッド110の引っ掛かりを防止し、状態評価装置10を滑らかに移動させることができる。また、打撃ヘッド110が目地を打撃した場合、可撓性を有する打撃ヘッドカバー120が検査対象物の表面または目地の角と接するため、検出される打撃力は小さく、検査対象物の状態評価処理において評価値が生成されない。したがって、検査対象物の目地における誤認識を抑制することができる。
【0064】
上述した実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜構成を組み合わせて実施することができる。また、実施形態を基にして、当業者が適宜構成の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略、もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0065】
上述した実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0066】
10:状態評価装置、 100:打撃部、 100a:本体、 100b:支持部、 110:打撃ヘッド、 120、120A、120B、120C:打撃ヘッドカバー、 120a:開口部、 130:ロッド、 140:アクチュエータ、 150:打撃ヘッドカバー固定部、 160:打撃力センサ、 200:集音部、 210:マイク、 300:制御部、 400:車輪、 510:接続部材、 520:底面カバー、 520a:開口部、 530:回転軸、 600:目地、 610:外装材、 620:目地材
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C