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  • 特開-飛行、走行装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126804
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】飛行、走行装置
(51)【国際特許分類】
   B64U 10/13 20230101AFI20240912BHJP
   B64U 50/19 20230101ALI20240912BHJP
【FI】
B64U10/13
B64U50/19
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035455
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】519406809
【氏名又は名称】株式会社堤水素研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100151046
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶌 宗
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】堤 香津雄
(57)【要約】
【課題】飛行機やヘリコプターにおいて、プロペラや回転翼は揚力や引力を作るが空気に運動エネルギーを与えるために大きなエネルギーを必要とされるが、空気に与えられた運動エネルギーは回生されることなく無駄に散逸する。
【解決手段】2つの空間を区分する移動板を収納した筐体を有し、前記移動板が短い時間で上下動することにより、前記移動板の上下間に生じた圧力差により前記移動板の下方から上方に向かう推進力が生じさせる。このとき前記移動板の上下面の空気の有する機械的エネルギーや圧力エネルギーを回生電力として回収する。

【選択図】 図1



【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの空間を区分する可動部を収納した筐体を有し、前記可動部が移動することにより、前記2つの空間の間に生じた圧力差により前記一方の空間から他方の空間に向かう推進力が生じる飛行・走行装置。
【請求項2】
前記可動部が、移動板と、前記移動板を駆動するリニアモーターと、前記移動板の移動に抗するばねとを有し、前記ばねの抗する方向に前記リニアモーターを駆動して前記可動部が移動して前記2つの空間の間に生じる圧力差により前記一方の空間から他方の空間に向かう推進力が生じ、その後に前記ばねの復元力により前記可動部が元の位置に戻るときに前記リニアモーターに回生電力が発生する請求項1に記載の飛行・走行装置。
【請求項3】
前記リニアモーターによる前記移動板の駆動時間が10μs~50μsであって、前記ばねの復元時間が10ms~50msである請求項2に記載の飛行・走行装置。
【請求項4】
互いに直交する2軸の回りに回転可能に固定された取付台に前記筐体が取り付けられている請求項3に記載の飛行・走行装置。
【請求項5】
前記可動部がプロペラと、前記プロペラを駆動するモーターとを有し、前記プロペラが回転することにより前記2つの空間間に生じる差圧により、前記一方の空間から他方の空間に向かう推進力が生じ、その後に前記モーターの駆動を停止して前記2つの空間間の圧力差により前記プロペラが逆回転して前記モーターに回生電力が発生する請求項1に記載の飛行・走行装置。
【請求項6】
前記モーターによる前記プロペラの駆動時間が10μs~50μsであって、前記プロペラの逆方向による前記モーターの回生が10ms~50msである請求項5に記載の飛行・走行装置。
【請求項7】
互いに直交する2軸の回りに回転可能に固定された取付台に前記筐体が取り付けられている請求項6に記載の飛行・走行装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中を移動する装置に関し、詳しくは空気の流れによる吸引力を利用した飛行装置および走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中を移動する装置として飛行機やヘリコプターが知られている。最近の傾向としてドローンが注目を浴びている。これらの装置は空気の流れにより生じた浮力を利用して浮上・走行している。
【0003】
飛行機はジェットエンジンもしくはプロペラの回転により生じる空気の流れを利用して、ベルヌーイの法則に基づく主翼の上面と下面とに生じる空気力の差を利用して浮力を得ている。また、ヘリコプターは主回転翼の回転により生じる上方空間から下方空間に向かう空気の流れを利用してその圧力差を利用して浮上する。
【0004】
特許文献1には、プロペラを有する飛行体本体と、真空吸着装置と被吸着物との間に隙間を設けつつ、被吸着物に吸着する吸着部を有し、被吸着物に吸着固定する際に、所定の作業を行う作業部を有する吸着ドローン飛行体であって、吸引ファンによって発生した負圧による流速と隙間の作用により、さらに強い負圧を発生させて被吸着物に吸着するドローン飛行体の発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-193330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
飛行機やヘリコプターなどの飛行装置は、空気の流れを利用して発生する揚力を利用して浮揚する。このような揚力を得るために空気に運動エネルギーを与えるが、それには大きなエネルギーが必要になる。
【0007】
これらのエネルギーは飛行装置の浮上に利用されるが、空気に与えられた運動エネルギーは回生されることなく無駄に散逸する。あるいは周囲の空気の温度の上昇をもたらし、それに用いたエネルギーは回収されない。飛行装置の浮上のために空気に与えられた運動エネルギーの大半は無駄となる。
【0008】
事実、ヘリコプターは回転翼により周囲の空気を下方に圧縮して、その反力として浮揚する。下方に空気を送るがそれに費やしたエネルギーか回収されず、そのエネルギーは戻ってこない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を達成するために、本発明に係る飛行、走行装置は、2つの空間を区分する可動部を収納した筐体を有し、前記可動部が移動することにより、前記2つの空間の間に生じた圧力差により前記一方の空間から他方の空間に向かう推進力が生じる。
【0010】
この構成において、2つの空間を区分する可動部の両面に働く空気の圧力差により、可動部と連結された筐体に推力を発生せしめる。
【0011】
本発明に係る飛行、走行装置は、前記可動部が、移動板と、前記移動板を駆動するリニアモーターと、前記移動板の移動に抗するばねとを有し、前記ばねの抗する方向に前記リニアモーターを駆動して前記可動部が移動して前記2つの空間の間に生じる圧力差により前記一方の空間から他方の空間に向かう推進力が生じ、リニアモーターの停止後に前記ばねの復元力により前記可動部が元の位置に戻るときに前記リニアモーターに回生電力が発生する。
【0012】
本発明に係る飛行、走行装置は、前記リニアモーターによる前記移動板の駆動時間が10μs~50μsであって、前記ばねの復元時間が10ms~50msである。
【0013】
本発明に係る飛行、走行装置は、互いに直交する2軸の回りに回転可能に固定された取付台に前記筐体が取り付けられている。
【0014】
本発明に係る飛行、走行装置は、前記可動部がプロペラと、前記プロペラを駆動するモーターとを有し、前記プロペラが回転することにより前記2つの空間間に生じる差圧により、前記一方の空間から他方の空間に向かう推進力が生じ、その後に前記モーターの駆動を停止して前記2つの空間間の圧力差により前記プロペラが逆回転して前記モーターに回生電力が発生する。
【0015】
本発明に係る飛行、走行装置は、前記モーターによる前記プロペラの駆動時間が10μs~50μsであって、前記プロペラの逆方向による前記モーターの回生が10ms~50msである。
【0016】
本発明に係る飛行、走行装置は、互いに直交する2軸の回りに回転可能に固定された取付台に前記筐体が取り付けられている。
【発明の効果】
【0017】
飛行や走行に必要なエネルギーが大幅に少なくなる。飛行や走行に用いたエネルギーの一部が回収される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1の基本的構成を示す図である。
図2】実施例1の動作を説明するためのグラフである。
図3】本発明の実施例2の基本的構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。以下、飛行装置ないしは走行装置を移動体と称して説明する。
【実施例0020】
本発明の実施例1の基本的構成例を図1に示す。浮揚装置11が移動体10に取り付けられているか、もしくは、その内部に組み込まれている。浮揚装置11は移動体10を浮上させるための装置であり、浮揚装置11の上方に向かう力は移動体10に伝わる。浮揚装置11の運転強度を調節することにより、移動体10は重力に抗して上下方向に移動する速度を変えることが可能となっている。
【0021】
浮揚装置10は、筐体13の内部に移動板12と移動板12を駆動するリニアモーター14を備えている。リニアモーター14を駆動することにより移動板12は下方に移動可能となっている。移動板12の下面には複数のばね15が配置されていて、移動板12の下方向への移動に対して反力として作用する(図1(a)参照)。
【0022】
リニアモーター14を急速に動作させて移動板12を急激に下方向に駆動する。移動板12の急激な下降により、移動板12の上面の空気は希薄となり移動板12の上面は瞬間的に負圧となる。この結果、移動板12を配した筐体13には浮揚力が働き、筐体13を取り付けた移動体10には上方向に浮揚する力が作用する(図1(b)参照)。
【0023】
移動板12が下方向に移動するとき、移動板12を支えるばね15も圧縮されて移動板12の下方向の移動の反力となる。リニアモーター14への給電を止めると、移動板12はばね15の反力により上方向に駆動される。移動板12に連結されているリニアモーター14は移動板14の上昇に伴って上方向に動く。このときリニアモーター14には回生電力が発生する(図1(c)参照)。
【0024】
回生電力は二次電池(図示せず)を充電する。本実施例では、電源に急速充放電可能な二次電池を用いる。二次電池はその内部抵抗が小さいので急速な充電および放電が可能であり、移動板12の急激な上昇と下降を可能にしている。
【0025】
移動板12の大きさは1m四方とした。移動板12の下降によりその上面に0.05Mpaの負圧が生じるとき、移動板12には5トンの揚力が発生する。移動板12の下降時間を10μsとして、移動距離を30mmのとき300MWの電力を必要とし、上昇時間10msのとき300kWの電力の回生がある。電力量としては、上昇下降ともに300W・sとなりエネルギー的にバランスする。
【0026】
図2のグラフは、実施例1について各変数の時間的変化を示したものである。すなわち、リニアモーター14の電力(P)と、移動板12の位置(l)と、ばね15の作用力(F)の時間的推移が時間軸を横軸に取り示されている。リニアモーター14はパルス的に駆動電力を出力し(P)、その後、駆動電力とは反対側に回生電力が発生し漸次時間と共に減少する。
【0027】
移動体10に対して浮揚装置11を垂直の方向に設置すれば、浮揚装置11の作動により移動体10が浮上する。このとき移動体10は飛行装置となる。移動体10に対して浮揚装置11を水平の方向に設置すれば、浮揚装置11の作動により移動体10は前後進する。このとき移動体10は走行装置となる。船舶に浮揚装置を取り付ければ船舶の運航が可能となる。
【0028】
リニアモーター14には、二次電池からの電力を供給してもよい。二次電池の出力を大きくすれば移動板12を高速で降下させることが可能となる。移動板12を急激に降下させれば、移動板12の上面にはより大きな負圧が発生する。二次電池の出力を調節することにより浮揚装置11の出力を調節することが可能となる。
【0029】
移動板11,リニアモーター14、および、ばね15を収納した筐体13は、互いに直交する2軸に回転可能に取り付けられている。すなわち、互いに直交する2軸は独立に360度回転可能ととなっているので、筐体13の方向は自在に調節することが可能となる。
【0030】
このため、筐体13の取り付け方向を調節すことにより、浮揚装置11の発生する推進力の方向を変更することができ、この結果、移動体10は前後左右上下方向に移動することが可能となる。
【実施例0031】
本発明の実施例2の基本的構成例を図3(b)に示す。浮揚装置21が移動体20には取り付けられているか、もしくは、その内部に組み込まれている。浮揚装置21は移動体20を浮上させるための装置であり、浮揚装置21の上方に向かう力は移動体20に伝わる。浮揚装置21の運転強度を調節することにより、移動体20は重力に抗して上下方向に移動可能となっている。
【0032】
浮揚装置20は、筐体23の内部にプロペラ22とプロペラ22を駆動するモーター24が備えられている。モーター24を駆動するとその回転は回転軸を介してプロペラ22に伝わり、プロペラ22には下向きの空気の流れが生じる。すなわちプロペラ22の回転によりプロペラ22の上方空間の空気は下方に流れ、プロペラ22の上方空間に負圧が発生する。この結果、プロペラ22には上方向の力が発生してこの力はモーター24と一体になっている筐体23に浮揚力として作用する。筐体23を取り付けた移動体20には上方向に浮揚する力が作用する。なお、図3(a)はプロペラを上方から見た図である。
【0033】
プロペラ22の上方空間が負圧であるに対して、下方空間の空気はプロペラ22の回転により押下げられて圧縮されており、モーター24の回転を止めると、プロペラ22の上下方の圧力差により、プロペラ22は逆方向に回転してモーター24に回生電力が発生する。
【0034】
モーター24を駆動する電力を大きくするとプロペラ22の回転速度が上昇してプロペラ22の上方空間の負圧の大きさも大きくなるので、浮揚装置21の浮揚能力は大きくなる。すなわちモーター24に供給する電力を調節することにより浮揚装置21の能力を調節することができる。
【0035】
移動体20に対して浮揚装置21を垂直の方向に設置すれば、浮揚装置21の作動により移動体20が浮上する。このとき飛行装置となる。移動体20に対して浮揚装置21を水平の方向に設置すれば、浮揚装置21の作動により移動体20は前後進する。このとき移動体20は走行装置となる。船舶に浮揚装置を取り付ければ船舶の運航が可能となる。
【0036】
プロペラ22と駆動モーター2を収納した筐体23は、直交する2軸の回りに回転可能に取り付けられている。筐体23の方向は自在に調節することが可能となる。このため、筐体23の取り付け方向を調節すことにより、浮揚装置21の発生する推進力の方向を変更することができ、移動体20は前後左右上下方向に移動することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る飛行、走行装置は、飛行、走行装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
10 移動体
11 浮揚装置
12 移動板
13 筐体
14 リニアモーター
15 ばね
20 移動体
21 浮揚装置
22 プロペラ
23 筐体
24 駆動モーター


図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-08-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に取付けられた筐体と、
前記筐体に連結された可動部を有し
前記可動部を下方向へ駆動することにより可動部上部空間生じる負圧が浮揚力となり前記筐体が浮揚する、そして、
負圧が解放され浮揚方向とは反対側に前記可動部が移動するときの復元力により回生電力が発生する飛行・走行装置。
【請求項2】
上記可動部が移動板と前記移動板の動きに抗するばねであり、前記ばねが復元するとき回生電力が発生する請求項1に記載の飛行・走行装置。
【請求項3】
前記移動板の下方への駆動時間が10μs~50μsであり、前記ばねの復元時間が10ms~50msである請求項2に記載の飛行・走行装置。
【請求項4】
前記可動部がプロペラであり、前記プロペラが回転することにより、
プロペラ上部に生じる負圧が浮揚力となり前記可動部が浮揚する。そして、前記プロペラが停止してプロペラの上下方向の圧力差により前記プロペラが逆回転するとき回生電力が発生する請求項1に記載の飛行・走行装置。
【請求項5】
前記プロペラの駆動時間が10μs~50μsであり、前記プロペラの逆方向による前記モーターの回生が10ms~50msである請求項4に記載の飛行・走行装置。