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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126809
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】立型研削盤
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20240912BHJP
   B23Q 1/01 20060101ALI20240912BHJP
   B24B 41/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B24B7/04 A
B23Q1/01 H
B24B41/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035463
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000167222
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトマシンシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アビド ムハマド アリ ラザ
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼林 巨樹
(72)【発明者】
【氏名】清田 大
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 征至
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C048
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB01
3C034BB12
3C034BB13
3C034BB14
3C034BB15
3C043BA03
3C043BA12
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD04
3C043DD05
3C043EE02
3C048BB01
3C048DD10
3C048DD15
3C048EE01
(57)【要約】
【課題】軽量化と高剛性の確保及び熱変形の防止の両立が図られたコラムを有する立型研削盤を提供する。
【解決手段】立型研削盤1に備えられたコラム3において、背面部32は鉛直方向上方Z1に位置する上方領域Aにおいて開口した背面上方開口部321と、鉛直方向下方Z2に位置する下方領域Bにおいて開口した背面下方開口部322とを有するとともに、背面上方開口部321は背面下方開口部322よりも開口面積が大きい。さらに、正面部31と背面部32との間には、正面部31と背面部32と繋ぐとともにX軸方向及びY軸方向に延在する水平リブが複数設けられており、複数の水平リブは、上方領域Aと下方領域Bとを区画する基準位置Cに位置する中央水平リブと下方領域Bに位置する下方水平リブとで構成される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の正面部、背面部、右側面部、左側面部、上面部及び下面部を有し、上記正面部及び上記背面部の主面の水平方向であるX軸方向の長さは、上記正面部及び上記背面部の主面の鉛直方向であるZ軸方向の長さよりも短いとともに、上記右側面部及び上記左側面部の主面の水平方向であるY軸方向の長さよりも長い直方体形状のコラムと、
上記コラムの上記正面部における上端側に設けられるとともにX軸方向に延在し、上記正面部及び上記背面部におけるX軸方向の長さよりも長い第1案内部と、
上記第1案内部に設けられてX軸方向に移動可能に構成された第1スライドベースと、
上記第1スライドベースに設けられるとともに、Z軸方向に延在する第2案内部と、
上記第2案内部に設けられてZ軸方向に移動可能に構成された第2スライドベースと、
上記第2スライドベースに設けられるとともに、砥石が回転可能に取り付けられた砥石主軸と、
上記砥石主軸よりもZ軸方向下方に位置してワークを保持するワーク台と、
を有する立型研削盤において、
上記コラムは、鉛直方向中央領域に位置する基準位置よりもZ軸方向上方に位置する上方領域と、上記基準位置よりもZ軸方向下方に位置する下方領域とに区分けされ、
上記背面部は、上記上方領域において開口した背面上方開口部と、上記下方領域において開口した背面下方開口部とを有するとともに、上記背面上方開口部は上記背面下方開口部よりも開口面積が大きく、
上記正面部と上記背面部との間には、上記正面部と上記背面部と繋ぐとともにX軸方向及びY軸方向に延在する水平リブが複数設けられており、
複数の上記水平リブは、上記基準位置に位置する中央水平リブと上記下方領域に位置する下方水平リブとで構成される、立型研削盤。
【請求項2】
上記中央水平リブは開口した中央水平リブ開口部を有するとともに、上記下方水平リブは開口した下方水平リブ開口部を有しており、
上記中央水平リブ開口部は、上記下方水平リブ開口部よりも開口面積が大きい、請求項1に記載の立型研削盤。
【請求項3】
上記正面部と上記背面部との間には、X軸方向の中央位置において上記正面部と上記背面部と繋ぐとともにZ軸方向及びY軸方向に延在して上記上方領域と上記下方領域とに渡って形成された中央垂直リブが設けられており、
上記中央垂直リブは、上記上方領域に位置する部分において開口した上方中央垂直リブ開口部と、上記下方領域に位置する部分において開口した下方中央垂直リブ開口部とを有し、
上記上方中央垂直リブ開口部は、上記下方中央垂直リブ開口部よりも開口面積が大きい、請求項1又は2に記載の立型研削盤。
【請求項4】
上記上面部は、上記中央垂直リブに接続される部分を挟んで形成された一対の上面開口部を有している、請求項3に記載の立型研削盤。
【請求項5】
上記正面部と上記背面部との間には、上記下方領域において、上記正面部と上記背面部と繋ぐとともにZ軸方向及びY軸方向に延在して上記下面部から上記下方水平リブに渡って形成された下方垂直リブが設けられている、請求項3に記載の立型研削盤。
【請求項6】
上記右側面部は、上記上方領域において開口した右側面上方開口部と、上記下方領域において開口した右側面下方開口部とを有しており、
上記左側面部は、上記上方領域において開口した左側面上方開口部と、上記下方領域において開口した左側面下方開口部とを有しており、
上記右側面上方開口部及び上記左側面上方開口部は、上記右側面下方開口部及び上記左側面下方開口部よりも開口面積が大きい、請求項1又は2に記載の立型研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立型研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
立型研削盤の軽量化を図るために、立型研削盤に備えられたコラムに肉抜き用の開口部を設けることが行われている。例えば、特許文献1に開示の構成ではコラムに複数の開口部を均等に設けることで、コラムの軽量化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-25174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、立型研削盤のコラムが加工負荷や熱変位により変形してしまうと加工精度の低下要因となるため、コラムには高い剛性と熱変形に強い機械構造が求められる。そして、高剛性の確保及び熱変形の防止は、コラムを肉厚にして重量化することで実現することができる。したがって、コラムにおける軽量化と高剛性の確保及び熱変形の防止とは互いにトレードオフの関係にあるため、軽量化と高剛性の確保及び熱変形の防止の両立を図るには、特許文献1に開示の構成のようにコラムに単純に開口部を設けた構成では、軽量化と高剛性の確保及び熱変形の防止の両立を図るには改善の余地がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、軽量化と高剛性の確保及び熱変形の防止の両立が図られたコラムを有する立型研削盤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、板状の正面部、背面部、右側面部、左側面部、上面部及び下面部を有し、上記正面部及び上記背面部の主面の水平方向であるX軸方向の長さは、上記正面部及び上記背面部の主面の鉛直方向であるZ軸方向の長さよりも短いとともに、上記右側面部及び上記左側面部の主面の水平方向であるY軸方向の長さよりも長い直方体形状のコラムと、
上記コラムの上記正面部における上端側に設けられるとともにX軸方向に延在し、上記正面部及び上記背面部におけるX軸方向の長さよりも長い第1案内部と、
上記第1案内部に設けられてX軸方向に移動可能に構成された第1スライドベースと、
上記第1スライドベースに設けられるとともに、Z軸方向に延在する第2案内部と、
上記第2案内部に設けられてZ軸方向に移動可能に構成された第2スライドベースと、
上記第2スライドベースに設けられるとともに、砥石が回転可能に取り付けられた砥石主軸と、
上記砥石主軸よりもZ軸方向下方に位置してワークを保持するワーク台と、
を有する立型研削盤において、
上記コラムは、鉛直方向中央領域に位置する基準位置よりもZ軸方向上方に位置する上方領域と、上記基準位置よりもZ軸方向下方に位置する下方領域とに区分けされ、
上記背面部は、上記上方領域において開口した背面上方開口部と、上記下方領域において開口した背面下方開口部とを有するとともに、上記背面上方開口部は上記背面下方開口部よりも開口面積が大きく、
上記正面部と上記背面部との間には、上記正面部と上記背面部と繋ぐとともにX軸方向及びY軸方向に延在する水平リブが複数設けられており、
複数の上記水平リブは、上記基準位置に位置する中央水平リブと上記下方領域に位置する下方水平リブとで構成される、立型研削盤にある。
【発明の効果】
【0007】
本願発明者らは、連成熱応力解析によりコラムにかかる荷重はコラムの下方領域に集中していることを見出した。これに基づいて、上記一態様では、コラムを形成する背面部は、上方領域に設けられた背面上方開口部の方が下方領域に設けられた背面下方開口部よりも開口面積が大きくなっている。これにより、軽量化を図りつつ下方領域の剛性確保と熱変形防止とを図っている。さらに、コラムに設けられた複数の水平リブが上方領域と下方領域の境界となる基準位置に設けられた中央水平リブと、下方領域に設けられた下方水平リブとからなるため、コラムは上方領域に比べて下方領域の剛性が高くなっているとともに熱変位の防止が図られ、上方領域に水平リブを設けない構成とすることで軽量化が図られている。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、軽量化と高剛性の確保及び熱変形の防止の両立が図られたコラムを有する立型研削盤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1における、立型研削盤の斜視図。
図2】実施形態1における、コラムの斜視図。
図3】実施形態1における、ソリッドモデルのコラムの連成熱応力解析の結果を示す図。
図4】実施形態1における、ソリッドモデルのコラムの応力解析の結果を示す(a)コラムの右側面図、(b)コラムの背面図。
図5】実施形態1における、最適化されたコラムの(a)正面図、(b)背面図、(c)右側面図、(d)左側面図、(e)平面図、(f)底面図。
図6】実施形態1における、最適化されたコラムの正面斜視図。
図7】実施形態1における、最適化されたコラムの背面斜視図。
図8図5(c)のVIII-VIII線位置断面の矢視斜視図。
図9図5(c)のIX-IX線位置断面の矢視斜視図。
図10】従来構成のコラムの背面斜視図。
図11】試験例及び比較例についての剛性解析シミュレーションにおける(a)第1ポジション、(b)第2ポジション、(c)第3ポジションを示す立型研削盤の正面図。
図12】試験例及び比較例についての(a)第1ポジション、(b)第2ポジション、(c)第3ポジションにおける剛性解析シミュレーションの結果を示す図。
図13】試験例及び比較例についての熱変位解析シミュレーションの結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
1.立型研削盤1
上記立型研削盤1に係る実施形態1について、図1図9を参照して説明する。図1に示すように、立型研削盤1は、ベッド2、コラム3、第1案内部4、第1スライドベース5、第2案内部6、第2スライドベース7、砥石主軸8、ワーク台9を有する。コラム3はベッド2上に立設される。なお、図1及び図2では、コラム3の形状は最適化する前のソリッドモデルを示す。
【0011】
コラム3は、図2に示すソリッドモデルにおいて略直方体をなしており、正面部31、背面部32、右側面部33、左側面部34、上面部35及び下面部36を有する。なお、図2に示すように、鉛直方向をZ軸方向とし、鉛直方向の上方をZ1、鉛直方向の下方をZ2とする。また、コラム3の正面部31及び背面部32の主面の水平方向である横方向をX軸方向とし、横方向の右方をX1、横方向の左方をX2とする。また、右側面部33及び左側面部34の主面の水平方向である前後方向をY軸方向とし、前後方向の前方をY1、前後方向の後方をY2とする。本実施形態1では、正面部31には下方に、前方Y1に膨出した膨出部37、38が設けられている。
【0012】
図1に示すように、第1案内部4はコラム3の正面部31(図2参照)の上端側に設けられる。第1案内部4はX軸方向に延在し、コラム3の正面部31及び背面部32におけるX軸方向の長さよりも長い。第1スライドベース5は、第1案内部4に設けられてX軸方向に移動可能に構成されている。第2案内部6は、第1スライドベース5に設けられるとともにZ軸方向に延在する。第2スライドベース7は、第2案内部6に設けられてZ軸方向に移動可能に構成されている。砥石主軸8は第2スライドベース7に設けられるとともに、砥石81が回転可能に取り付けられている。なお、第2スライドベース7はY軸中心に回転可能に構成されていてもよい。ワーク台9はベッド2上に設けられており、砥石主軸8よりもZ軸方向下方Z2に位置して図示しない保持機構を介してワークを保持する。なお、ワーク台9は、Z軸中心に回転可能に構成されている。
【0013】
2.コラム3の構造の最適化処理
コラム3の構造の最適化処理は以下の通りとした。まず、図2に示すソリッドモデルのコラム3に対して、連成熱応力解析を行った。連成熱応力解析は、所定期間にわたってソリッドモデルのコラム3を予めプログラムされた温度状態にして非定常熱解析を行うことによりソリッドモデルのコラム3における熱応力の時間的変化を検出し、検出された熱応力の時間的変化に基づく熱的変位として、熱応力検出部位の各時間における熱応力の値を算出してその分布を解析することにより行うことができる。
【0014】
本実施形態1では、ソリッドモデルのコラム3の連成熱応力解析により図3に示す解析結果が得られた。当該解析結果から、コラム3における主荷重はコラム3の正面部31に近い領域と背面部32に近い領域において縦方向に伸びる領域で支持されることが明らかとなった。
【0015】
次に、コラム3の形状について応力解析処理を行った。応力解析処理は、図1に示すように、第1スライドベース5が第1案内部4におけるX軸方向の中央位置にある状態で砥石主軸に所定の荷重を付加したときにコラム3に生じる応力を検出することにより行った。本実施形態1では応力解析処理により図4に示すコンター図を取得した。これにより、コラム3の剛性を高めるためには、コラム3の下方領域において質量を集中させることが好ましいことが分かった。
【0016】
そして、トポロジー最適化処理によりコラム3の形状の最適化を決定した。トポロジー最適化処理における目的変数及び制約条件は適宜設定することができ、本実施形態1では、目的変数として、コラム3の変位及び質量の最小化を含むものとした。なお、コラム3のコンプライアンス(剛性の逆数)を導出し、当該コンプライアンスを目的変数に含むこととしてもよい。また、トポロジー最適化処理における制約条件はコラム3の質量を含むことができ、また、これに替えて制約条件はなしとしてもよい。そして、本実施形態1では上記最適化の結果に基づいて、コラム3の構造を図5図8に示す構造に決定した。
【0017】
3.最適化されたコラム3の構造
図5(a)~(f)に示すように、最適化されたコラム3は、各部に後述する開口部を有し、ソリッドモデルに対して肉抜きされた状態となっている。詳細には、まず、コラム3は、図5(a)に示すように、鉛直方向Zにおける中央領域に位置する基準位置Cよりも鉛直方向上方Z1に位置する上方領域Aと基準位置Cよりも鉛直方向下方Z2に位置する下方領域Bとを有する。
【0018】
図5(a)に示すように、コラム3の正面部31は上方領域A及び下方領域Bのいずれにも開口部を有しない。また、図5(b)に示すように、背面部32は上方領域Aに複数の背面上方開口部321を有し、下方領域Bに複数の背面下方開口部322を有する。また、図5(c)に示すように、右側面部33は上方領域Aに右側面上方開口部331を有し、下方領域Bに複数の右側面下方開口部332を有する。また、図5(d)に示すように、左側面部34は上方領域Aに左側面上方開口部341を有し、下方領域Bに複数の左側面下方開口部342を有する。また、図5(e)に示すように、上面部35は複数の上面開口部351を有する。また、図5(f)に示すように、下面部36は開口部を有しない。
【0019】
そして、図5(b)及び図7に示すように、コラム3の背面部32において、背面上方開口部321の開口面積(複数の背面上方開口部321における合計の開口面積)は、背面下方開口部322の開口面積(複数の背面下方開口部322における合計の開口面積)よりも大きくなっている。
【0020】
また、図5(c)及び図6に示すように、コラム3の右側面部33において、右側面上方開口部331は、右側面下方開口部332よりも開口面積が大きい。同様に、図5(d)及び図7に示すように、コラム3の左側面部34において、左側面上方開口部341は、左側面下方開口部342よりも開口面積が大きい。
【0021】
そして、正面部31と背面部32との間には、図8に示すように、正面部31と背面部32と繋ぐとともにX軸方向及びY軸方向に延在する水平リブ40が複数設けられている。複数の水平リブ40は、基準位置Cに位置する中央水平リブ41と下方領域Bに位置する下方水平リブ42とで構成される。本実施形態1では、中央水平リブ41と下方水平リブ42は、右側面部33と左側面部34とに渡って形成されている。
【0022】
中央水平リブ41は、複数の中央水平リブ開口部411を有する。複数の中央水平リブ開口部411は、上面開口部351と同形状であって、図5(e)に示すように、上面部35を鉛直方向下方Z2に向かって見たときに上面開口部351と一致している。なお、図8に示すように、中央水平リブ41はZ軸方向において上面部35と対向しており、中央水平リブ41と上面部35との間に水平リブは存在していない。
【0023】
下方水平リブ42は、複数の下方水平リブ開口部422を有する。複数の下方水平リブ開口部422の開口面積は、複数の中央水平リブ開口部411の開口面積よりも小さい。
【0024】
正面部31と背面部32との間には、図8及び図9に示すように、正面部31と背面部32と繋ぐとともにY軸方向及びZ軸方向に延在する垂直リブ50が複数設けられている。図8に示すように、垂直リブ50は、X軸方向における中央位置に設けられた中央垂直リブ51と、X軸方向において中央垂直リブ51と右側面部33との間に設けられた第1下方垂直リブ52と、X軸方向において中央垂直リブ51と左側面部34との間に設けられた第2下方垂直リブ53とを含む。
【0025】
中央垂直リブ51は、図8に示すように、下面部36から上面部35に渡って形成されている。そして、中央垂直リブ51は、上面部35に形成された一対の上面開口部351の間において上面部35に繋がっている。中央垂直リブ51は、上方領域Aに位置する部分と下方領域Bに位置する部分の両方を有しており、上方領域Aに位置する部分において開口した上方中央垂直リブ開口部511と、下方領域Bにおいて開口した下方中央垂直リブ開口部512とを有する。本実施形態1では、下方中央垂直リブ開口部512は複数設けられている。そして、上方中央垂直リブ開口部511の開口面積は、下方中央垂直リブ開口部512の合計の開口面積よりも大きい。
【0026】
第1下方垂直リブ52及び第2下方垂直リブ53は、下面部36から下方水平リブ42に渡って形成されている。第1下方垂直リブ52は下方領域Bにおいて開口した第1下方垂直リブ開口部522を有し、第2下方垂直リブ53は下方領域Bにおいて開口した第2下方垂直リブ開口部532を有する。
【0027】
4.剛性解析シミュレーション
次に、立型研削盤1の剛性解析シミュレーションを行った。当該シミュレーションでは、試験例として本実施形態1のコラム3を有する立型研削盤1を用い、比較例として従来構成のコラム93を有する立型研削盤を用いた。従来構成のコラム93は、トポロジー最適化処理されたものではなく、図10に示すように、該表面に開口する開口部が所定間隔で設けられているとともに、内部には上方領域及び下方領域に所定間隔で複数のリブが設けられている。
【0028】
当該剛性解析シミュレーションでは、試験例及び比較例において、図11(a)に示すように砥石81が上方位置にある第1ポジションのとき、図11(b)に示すように砥石81が下方位置にある第2ポジションのとき、図11(c)に示すように砥石81がドレス位置である右端位置にある第3ポジションのときのそれぞれについて、砥石81の研削点に所定の荷重負荷したときのコラム3の剛性をシミュレーションにより取得した。
【0029】
図12(a)~図12(c)に示すように、比較例の従来構成のコラム93では第1ポジション及び第3ポジションにおいて剛性は目標値を大幅に超えていたが、試験例ではいずれのポジションにおいても剛性は目標値を達成しているとともに安定した値となっていた。
【0030】
5.熱変位解析シミュレーション
次に、立型研削盤1の熱変位解析シミュレーションを行った。当該シミュレーションでは、試験例及び比較例として上述の剛性解析シミュレーションと同様した。当該熱変位解析シミュレーションでは、試験例のコラム3を有する立型研削盤1及び比較例のコラム93を有する立型研削盤について、温度15℃の条件下で解析シミュレーションを開始し、開始から8時間経過時における砥石81とワーク台9との相対位置変化を熱変位として取得した。
【0031】
図13に示すように、試験例のコラム3は許容上限値を下回っており、比較例の従来構成のコラム93に比べて熱変位がより小さくなっていた。
【0032】
6.作用効果
本実施形態1の立型研削盤1の作用効果について詳述する。本実施形態1では、コラム3を形成する背面部32は、上方領域Aに設けられた背面上方開口部321の方が下方領域Bに設けられた背面下方開口部322よりも開口面積が大きくなっている。これにより、軽量化を図りつつ下方領域Bの剛性確保と熱変形防止とを図っている。さらに、コラム3に設けられた複数の水平リブ40が上方領域Aと下方領域Bの境界となる基準位置Cに設けられた中央水平リブ41と、下方領域Bに設けられた下方水平リブ42とからなるため、コラム3は上方領域Aに比べて、コラム3全体の剛性の確保に重要となる下方領域Bの剛性が高くなっているとともに熱変位の防止が図られ、上方領域Aに水平リブを設けない構成とすることでコラム3の軽量化が図られている。
【0033】
また、本実施形態1では、中央水平リブ41は開口した中央水平リブ開口部411を有するとともに、下方水平リブ42は開口した下方水平リブ開口部422を有している。そして、中央水平リブ開口部411は、下方水平リブ開口部422よりも開口面積が大きい。これにより、コラム3は上方領域Aに比べて下方領域Bにおける剛性の向上と熱変位の防止が図られるとともにコラム3の軽量化が図られている。
【0034】
また、本実施形態1では、正面部31と背面部32との間には、X軸方向の中央位置において正面部31と背面部32と繋ぐとともにZ軸方向及びY軸方向に延在して上方領域Aと下方領域Bとに渡って形成された中央垂直リブ51が設けられている。そして、中央垂直リブ51は、上方領域Aに位置する部分において開口した上方中央垂直リブ開口部511と、下方領域Bに位置する部分において開口した下方中央垂直リブ開口部512とを有し、上方中央垂直リブ開口部511は、下方中央垂直リブ開口部512よりも開口面積が大きい。これにより、コラム3の全体の剛性を維持しつつ、下方領域Bにおける剛性の向上及び熱変形の防止とともにコラム3の軽量化が図られている。
【0035】
また、本実施形態1では、上面部35は、中央垂直リブ51に接続される部分を挟んで形成された一対の上面開口部351を有している。これにより、中央垂直リブ51による剛性の確保及び熱変形の防止と上面開口部351による軽量化との両立が図られている。
【0036】
また、本実施形態1では、正面部31と背面部32との間には、下方領域Bにおいて、正面部31と背面部32と繋ぐとともにZ軸方向及びY軸方向に延在して下面部36から下方水平リブ42に渡って形成された下方垂直リブ52、53が設けられている。これにより、下方領域Bにおいて剛性の向上及び熱変形の防止が一層図られている。
【0037】
また、本実施形態1では、右側面部33は、上方領域Aにおいて開口した右側面上方開口部331と、下方領域Bにおいて開口した右側面下方開口部332とを有している。また、左側面部34は、上方領域Aにおいて開口した左側面上方開口部341と、下方領域Bにおいて開口した左側面下方開口部342とを有している。そして、右側面上方開口部331及び左側面上方開口部341は、右側面下方開口部332及び左側面下方開口部342よりも開口面積が大きい。これにより、コラム3の全体の剛性を維持しつつ、下方領域Bにおける剛性向上と及び熱変形の防止を一層促進するとともにコラム3の軽量化が図られている。
【0038】
以上のごとく、本実施形態1によれば、軽量化と高剛性の確保及び熱変形の防止の両立が図られたコラム3を有する立型研削盤1を提供することができる。
【0039】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…立型研削盤、2…ベッド、3…コラム、4…第1案内部、5…第1スライドベース、6…第2案内部、7…第2スライドベース、8…砥石主軸、9…ワーク台、31…正面部、32…背面部、33…右側面部、34…左側面部、35…上面部、36…下面部、41…中央水平リブ、42…下方水平リブ、51…中央垂直リブ、52…第1下方垂直リブ、53…第2下方垂直リブ、81…砥石、321…背面上方開口部、322…背面下方開口部、331…右側面上方開口部、332…右側面下方開口部、341…左側面上方開口部、342…左側面下方開口部、351…上面開口部、411…中央水平リブ開口部、422…下方水平リブ開口部、511…上方中央垂直リブ開口部、512…下方中央垂直リブ開口部、522…第1下方垂直リブ開口部、532…第2下方垂直リブ開口部
図1
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図13