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特開2024-12681癲癇の治療におけるカンナビノイドの使用
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  • 特開-癲癇の治療におけるカンナビノイドの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012681
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】癲癇の治療におけるカンナビノイドの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20240123BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/5513 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/4015 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/515 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/423 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240123BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240123BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
A61K31/05
A61P25/08
A61K45/00
A61K36/185
A61K31/5513
A61K31/4015
A61K31/357
A61K31/36
A61K31/515
A61K31/165
A61K31/19
A61K31/423
A61K31/444
A61K31/661
A61K47/44
A61K47/10
A61K47/26
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023199214
(22)【出願日】2023-11-24
(62)【分割の表示】P 2022031730の分割
【原出願日】2015-10-14
(31)【優先権主張番号】1418171.3
(32)【優先日】2014-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FACEBOOK
(71)【出願人】
【識別番号】319016758
【氏名又は名称】ジーダブリュー・リサーチ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ガイ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ライト
(72)【発明者】
【氏名】アリス・ミード
(72)【発明者】
【氏名】オーリン・デヴィンスキー
(57)【要約】
【課題】本開示は、無緊張発作の治療のためのカンナビジオール(CBD)の使用に関する。
【解決手段】具体的には、CBDは、他の発作型と比べて、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症、ドラベ症候群、Doose症候群、アイカルディ症候群、CDKL5、およびDup15qを含む病因を有する患者の無緊張発作の減少に特に有効であると思われる。本開示は、1つまたは複数の抗癲癇薬(AED)と組み合わせたCBDの使用に更に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無緊張発作の治療に使用するためのカンナビジオール(CBD)。
【請求項2】
前記無緊張発作が治療抵抗性である、請求項1に記載の使用のためのCBD。
【請求項3】
前記無緊張発作が、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症、ドラベ症候群、Doose症候群、アイカルディ症候群、CDKL5、またはDup15qと関連している、請求項1または2に記載の使用のためのCBD。
【請求項4】
前記無緊張発作がレノックス・ガストー症候群と関連している、請求項3に記載の使用のためのCBD。
【請求項5】
1つまたは複数の附随抗癲癇薬(AED)と組み合わせて使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのCBD。
【請求項6】
少なくとも95%(w/w)のCBDを含む高度に精製された大麻の抽出物として存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのCBD。
【請求項7】
前記抽出物が0.15%未満のTHCを含む、請求項6に記載の使用のためのCBD。
【請求項8】
前記抽出物が最高で1%のCBDVを更に含む、請求項6または7に記載の使用のためのCBD。
【請求項9】
合成化合物として存在する、請求項1に記載の使用のためのCBD。
【請求項10】
前記1つまたは複数のAEDが、クロバザム、クロナゼパム、レベチラセタム、トピラマート、スチリペントール、フェノバルビタール、ラコサミド、バルプロ酸、ゾニサミド、ペランパネル、およびホスフェニトインからなる群から選択される、請求項5に記載の使用のためのCBD。
【請求項11】
前記CBDと組み合わせて使用される異なる抗癲癇薬の数が低減される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のためのCBD。
【請求項12】
前記CBDと組み合わせて使用される前記1つまたは複数の抗癲癇薬の用量が低減される、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のためのCBD。
【請求項13】
CBDの前記用量が5mg/kg/日を超える、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のためのCBD。
【請求項14】
対象にカンナビジオール(CBD)を投与することを含む、無緊張発作を治療する方法。
【請求項15】
カンナビジオール(CBD)、溶媒、補助溶媒、甘味料、および着香料を含む、無緊張発作の治療に使用するための組成物。
【請求項16】
前記溶媒がゴマ油である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記補助溶媒がエタノールである、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記甘味料がスクラロースである、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記着香料がイチゴ風味である、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
前記CBDが25/mg/ml~100mg/mlの濃度で存在する、請求項15に記載の組成物。
【請求項21】
25~100mg/mlの濃度のカンナビジオール(CBD)、79mg/mlの濃度のエタノール、0.5mg/mlの濃度のスクラロース、0.2mg/mlの濃度のイチゴ着香料、および1.0mlまでの適量のゴマを含む、請求項15~20のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無緊張発作の治療におけるカンナビジオール(CBD)の使用に関する。一実施形態では、無緊張発作を患っている患者は、子供および若年成人である。CBDは、他の発作型と比べて、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症、ドラベ症候群、Doose症候群、アイカルディ症候群、CDKL5、およびDup15qを含む病因を有する患者の無緊張発作の減少に特に有効であると思われる。
【0002】
これらの患者において、CBDによる治療は、高い比率、すなわち63%の患者において無緊張発作の発現を50%超減少させた。これは、治療される全対象では、発作総数で50%超の減少から恩恵を受ける患者の比率が有意に低くかった(46%)ことを考えると、驚くべきことであった。
【0003】
好ましくは、使用されるCBDは、そのCBDが全抽出物の98%(w/w)を超えて存在し、かつ抽出物の他の成分が下記で特徴付けられるような、高度に精製された大麻の抽出物の形態である。具体的には、カンナビノイドであるテトラヒドロカンナビノール(THC)が0.15%(w/w)以下のレベルまで実質的に除去されており、かつCBDのプロピル類似体であるカンナビジバリン(CBDV)が最高で1%の量で存在する。あるいは、CBDは、合成的に作られるCBDであることもできる。
【0004】
使用において、CBDは、1つまたは複数の他の抗癲癇薬(AED)と同時に与えられ得る。あるいは、CBDは、1つまたは複数のAEDと別個に、その後に、または同時に投与するように処方することができ、またはその組合せを単一剤形で提供することができる。CBDが別個に、その後に、または同時に投与するように処方される場合、それは、指示された方法でその1つまたは複数の成分を投与するためにキットとして、または使用説明書と一緒に提供することができる。それはまた、単独の薬物療法として、すなわち単剤療法として使用することもできる。
【背景技術】
【0005】
癲癇は、世界的に人口の約1%で起こっており(Thurman et al.,2011)、そのうちの70%は、利用可能な既存の抗癲癇薬(AED)により症状を十分に制御することができる。しかしながら、この患者群の30%(Eadie et al.,2012)は、利用可能なAEDにより発作からの解放を得ることができず、したがって難治性癲癇、すなわち「治療抵抗性癲癇」(TRE)に罹患していると称される。
【0006】
難治性、すなわち治療抵抗性癲癇は、国際抗癲癇連盟(International League Against Epilepsy)(ILAE)により、「持続的な発作からの解放を達成するための2つの容認されたかつ適切に選択および使用されたAED
計画(単剤療法としてであろうと、または併用であろうと)の適正な試行の失敗」として2009年に定義された(Kwan et al.,2009)。
【0007】
生涯の最初の数年間に癲癇を発症する個体は、治療が困難であることが多く、したがって多くの場合、治療抵抗性と呼ばれる。幼児期に頻繁に発作を経験する子供は、多くの場合、認知的遅れ、行動的遅れ、および運動遅延を引き起こす可能性のある神経障害が残る。
【0008】
幼児期の癲癇は、100,000人当たり約700人の患者数である、子供および若年成人における比較的一般的な神経障害である。これは人口当たりの癲癇の成人数の2倍である。
【0009】
子供および若年成人が発作を示す場合、その原因を調べるために通常は検査が行われる。小児期の癲癇は、多くの異なる症候群および遺伝子の突然変異によって引き起こされる可能性があり、したがって、これらの子供の診断はある程度の時間を要する。
【0010】
癲癇の主な症状は、発作の繰返しである。患者が患っている癲癇のタイプまたは癲癇性症候群を判定するために、その患者が経験している発作型の検査が行われる。臨床的観察および脳波検査(EEG)が行われ、発作型が下記に述べかつ図1に示すILEA分類に従って分類される。
【0011】
ILAEによって提案された発作型の国際分類は1981年に採用され、改定提案が2010年にILAEによって公表されたが、1981年分類は依然として破棄されていない。図1は、改定された用語法の2010年提案から改変され、部分性という用語法を焦点性に置き換える提案の変更を含む。加えて、用語「単純部分発作」は、用語「意識/反応が損なわれない焦点発作」によって置き換えられ、および用語「複雑部分発作」は、用語「意識/反応が損なわれる焦点発作」によって置き換えられた。
【0012】
図1から、発作が両側に分布したネットワーク内で生じ、急速にネットワーク全域に展開する全般発作は、6つのサブタイプ:強直間代発作(大発作)、欠神発作(小発作)、間代発作、強直発作、無緊張発作、およびミオクローヌス発作に分け得ることが分かる。
【0013】
発作が片側の大脳半球のみに限定されたネットワーク内で生じる焦点(部分)発作もサブカテゴリーに分けられる。この場合、発作は、前兆、運動、自律神経、および意識/反応を含む発作の1つまたは複数の特徴に従って特徴付けられる。発作が限局性発作として始まり、急速に進展して両側のネットワーク内に分布するようになる場合、この発作は両側性痙攣性発作として知られる。これは、二次性全般発作(焦点発作から進展し、もはや限局性に留まらない全般発作)に置き換えることが提案された用語法である。
【0014】
対象の意識/反応が変容する焦点発作は、機能障害を伴う焦点発作と呼ばれ、および対象の意識または反応が損なわれない焦点発作は、機能障害のない焦点発作と呼ばれる。
【0015】
無緊張発作は、その人を転倒させる筋緊張の喪失を伴う。これらは、「倒れ発作」と呼ばれることもあり、一般には短時間(15秒未満)である。無緊張発作は、立っている、座っている、または歩いている間に前兆なしで起こる可能性があり、この患者は転倒が原因の心的外傷を患うことが多い。
【0016】
無緊張発作は、多くの場合、レノックス・ガストー症候群に関連しているが、また、結節性硬化症、ドラベ症候群、Doose症候群、アイカルディ症候群、CDKL5、およびDup15qを含む他の型の癲癇症候群を起こすか、その症状を示すことがある。
【0017】
癲癇症候群は、多くの異なる型の発作を示すことが多く、標準的なAEDの多くは所定の発作型/サブタイプの治療を目的にしているか、それに対してのみ有効であるため、患者が患っている発作の型を特定することが重要である。
【0018】
そのような1つの幼児期癲癇症候群は、レノックス・ガストー症候群である。レノックス・ガストー症候群は、癲癇の重症の形態である。発作は、一般に4歳前に始まる。患者間で異なるそれらの発作型には、強直(体の硬直、眼球上転、瞳孔拡大、および呼吸パターンの変化)、無緊張(筋緊張および知覚の短時間の喪失、突然的転倒の原因)、非定型欠神(意識障害(staring spells))、およびミオクローヌス(突然的な筋肉の攣縮)発作が挙げられる。比較的発作がない短い期間に混ざって発作が頻発する期間が存在することもある。
【0019】
レノックス・ガストー症候群を有する大部分の子供は、発育遅延に加えて、ある程度の知的機能および情報処理障害と行動障害とを経験する。
【0020】
レノックス・ガストー症候群は、脳形成異常、周産期仮死、重症頭部損傷、中枢神経系感染症、および遺伝性変性または代謝性の病気によって引き起こされる可能性がある。症例の30~35%において原因を見つけることができない。
【0021】
レノックス・ガストー症候群を有する患者における無緊張発作の治療を含む無緊張発作の第一選択治療は、一般に広域AED、例えばラモトリギンと併用することが多いバルプロ酸ナトリウムを含む。考えられる他のAEDには、ルフィナミド、フェルバメート、クロバザム、およびトピラマートが挙げられる。
【0022】
カルバメザピン、ガバペンチン、オクスカルバゼピン、プレガバリン、チアガビネオール(tiagabineor)、およびビガバトリンなどのAEDは、無緊張発作において禁忌である。
【0023】
それらの作用の機序によって規定される一般的なAEDを下記の表に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
これらの一覧表から無緊張発作の治療用に現在承認されている唯一の薬物、すなわちクロナゼパムが存在することが分かる。この薬物治療は、GABA機序によって機能する。
【0028】
過去40年にわたり、発作の治療のための非精神活性カンナビノイドであるカンナビジオール(CBD)の使用について動物およびヒトでの複数の研究が存在している。
【0029】
1978年の研究は、4人の成人の患者に200mg/日の純粋なCBDを与えた。それら4人の患者のうちの2人が発作から解放されるようになり、一方、残りでは発作頻度が変わらなかった(Mechoulam and Carlini,1978)。
【0030】
Cunha et al.は、全般性癲癇を有する8人の成人の患者へのCBDの投与が、それらの患者のうちの4人で発作の顕著な減少をもたらしたと報告した(Cunha et al.,1980)。また、Consroe et al.(1982)は、CBDが痙攣誘発薬または電流の施用後のマウスの発作を予防することができると判定した。
【0031】
上記の研究とは対照的に、オープンラベル研究では200mg/日の純粋なCBDが、12人の成人入院患者の発作の制御に効果がなかったと報告した(Ames and Cridland,1986)。
【0032】
上記のすべての研究は全般性癲癇を患っている対象の治療に焦点を当てており、特定の発作サブタイプの治療を考えなかった。
【0033】
最近では、国際公開第2011/001169号パンフレットは、焦点発作の治療におけるCBDの使用について記述しており、国際公開第2012/093255号パンフレットは、癲癇の治療における標準的な抗癲癇薬と併用するCBDの使用について記述しており、および国際公開第2013/045891号パンフレットは、癲癇の治療に使用されるCBDとCBDVとを含む組成物について記述している。
【0034】
2013年11月に企業のGW Pharmaceuticalsは、CBDがオーファンドラッグ指定を受けたため、CBDでドラベ症候群を治療することを意図していると述べるプレスリリースを行った。この企業は、2014年2月にCBDがまたオーファンドラッグ指定を受けたため、CBDでレノックス・ガストー症候群を治療することを意図しているという更なるプレスリリースを行った。
【0035】
この場合もまた、その根本的理由は、対象が経験した発作の型と異なる疾患を治療することであった。
【0036】
加えて、CBDを多く含む大麻が癲癇の治療に有効であり得ることが示唆されている。レノックス・ガストー症候群を有する子供が、油性溶液に溶かしたCBDによる治療後に発作頻度の改善を示したという事例研究が、2005年に報告された(Pelliccia et al.,2005)。
【0037】
Porter and Jacobson(2013)は、あるFacebookグループを介して行われた、治療抵抗性癲癇を有する子供に対するCBDを多く含む大麻の使用について調査した両親調査を報告している。調査された19組の親のうちの16組は、その子供の癲癇が改善されたことを報告したことが分かった。この報告書で調査された子供は、すべて高濃度でCBDを含有すると称される大麻を摂取していたが、これらの事例の多くについて、存在するCBDの量およびTHCを含む他の成分の量は分からなかった。実際には、そのCBDレベルは0.5~28.6mg/kg/日の範囲(テストされたこれらの抽出物において)であったが、0.8mg/kg/日程度のTHCレベルが報告された。TREを有する子供に、痙攣誘発剤と呼ばれるTHCを含む大麻抽出物(Consroe et al.,1977)を、0.8mg/kg/日の潜在的な精神活性用量で与えたことが懸念される。
【0038】
更に2014年6月に公開された研究論文は、ドラベ症候群を有する患者の治療のための高CBD株の使用について述べており、その患者の発作頻度がこの治療によって減少したと述べている(Maa et al.,2014)。
【0039】
優先権出願が出願された後に公表された文献は、焦点発作が始まった患者の結節性硬化症の治療における難治癲癇の治療においてCBDを使用することを開示している(Geffrey et al.,2014)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
癲癇の治療のためのCBDを含む大麻およびカンナビノイドの可能性に再び注目が集まっているが、患者でその効能を立証する実データとしては今日までほとんど存在していない。
【0041】
本出願人は、CBDが無緊張発作を高い比率、すなわち63%の患者において無緊張発作の発現を50%超減少させるのに顕著な効果を示すことを見出した。比較として、治療される全対象では、発作総数の50%超の減少から恩恵を受ける患者の比率は有意に低くかった(46%)。
【0042】
加えて、治療される患者が既存のAEDに対して治療抵抗性であったことは注目に値し、したがって、これらの数字は更に一層注目すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0043】
本発明の第一の態様によれば、無緊張発作の治療に使用するためのカンナビジオール(
CBD)が提供される。
【0044】
好ましくは、この無緊張発作は治療抵抗性である。
【0045】
好ましくは、この無緊張発作は、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症、ドラベ症候群、Doose症候群、アイカルディ症候群、CDKL5、またはDup15qと関連している。
【0046】
一実施形態では、CBDは、1つまたは複数の附随抗癲癇薬(AED)と組み合わせて使用される。
【0047】
更なる実施形態では、CBDは、少なくとも95%(w/w)のCBD、より好ましくは98%(w/w)のCBDを含む高度に精製された大麻の抽出物として存在する。好ましくは、その抽出物は0.15%未満のTHCを含む。より好ましくは、この抽出物は最高で1%のCBDVを更に含む。
【0048】
代替の実施形態では、このCBDは合成化合物として存在する。
【0049】
本発明の更なる実施形態では、この1つまたは複数のAEDは、クロバザム、クロナゼパム、レベチラセタム、トピラマート、スチリペントール、フェノバルビタール、ラコサミド、バルプロ酸、ゾニサミド、ペランパネル、およびホスフェニトインからなる群から選択される。
【0050】
好ましくは、CBDと組み合わせて使用される異なる抗癲癇薬の数は低減される。あるいは、CBDと組み合わせて使用されるその1つまたは複数の抗癲癇薬の用量は低減される。
【0051】
好ましくは、CBDの用量は5mg/kg/日を超える。
【0052】
本発明の第二の態様によれば、無緊張発作を治療する方法であって、カンナビジオール(CBD)を対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0053】
本発明の第三の態様によれば、カンナビジオール(CBD)、溶媒、補助溶媒、甘味料、および着香料を含む、無緊張発作を特徴とする無緊張発作の治療に使用される組成物が提供される。
【0054】
好ましくは、溶媒はゴマ油であり、補助溶媒はエタノールであり、甘味料はスクラロースであり、着香料はイチゴ味であり、およびCBDは25mg/ml~100mg/mlの濃度で存在する。
【0055】
より好ましくは、この組成物は、25~100mg/mlの濃度のカンナビジオール(CBD)、79mg/mlの濃度のエタノール、0.5mg/mlの濃度のスクラロース、0.2mg/mlの濃度のイチゴ着香料、および1.0mlまでの適量のゴマを含む。
【0056】
定義
本発明を説明するために使用される用語の幾つかの定義を下記に詳述する。
【0057】
本出願において述べるカンナビノイドを、それらの標準的な省略形と共に下記に列挙する。
【0058】
【表4】
【0059】
上記の表は網羅的ではなく、本出願において参照のために特定されるカンナビノイドを単に詳述するに過ぎない。これまでに60種類を超える様々なカンナビノイドが同定されており、それらのカンナビノイドは、異なるグループ、すなわち植物性カンナビノイド、内在性カンナビノイド、および合成カンナビノイド(新規なカンナビノイド、または合成的に作られる植物性カンナビノイドもしくは内在性カンナビノイドであることができる)に分けることができる。
【0060】
「植物性カンナビノイド」は、天然由来のカンナビノイドであり、大麻植物中に見出すことができる。植物性カンナビノイドは、植物から単離して高度に精製された抽出物を取り出すか、または合成的に複製することができる。
【0061】
「高度に精製されたカンナビノイド」は、大麻植物から抽出され、かつその高度に精製
されたカンナビノイドが純度95%(w/w)以上になるようにカンナビノイドと一緒に共抽出される他のカンナビノイドおよび非カンナビノイド成分が除去される程度まで精製されたカンナビノイドと定義される。
【0062】
「合成カンナビノイド」は、カンナビノイドの構造またはカンナビノイドに類似した構造を有し、かつ植物によるのではなく化学的手段を使用して製造される化合物である。
【0063】
植物性カンナビノイドは、そのカンナビノイドを抽出するために使用される方法に応じて中性(脱炭酸形態)またはカルボン酸の形態のいずれかとして得ることができる。例えばカルボン酸の形態を加熱することにより、そのカルボン酸の形態の大部分を脱炭酸して中性の形態にすることが知られている。
【0064】
「治療抵抗性癲癇」(TRE)または「難治性癲癇」は、2009年のILAEの指導により、1つまたは複数のAEDの試用によって十分に制御されない癲癇と定義される。
【0065】
「小児期の癲癇」とは、それが原因で小児期の癲癇を起こす可能性のある多くの異なる症候群および遺伝子の突然変異を指す。これらの幾つかの例は、ドラベ症候群、ミオクロニー-欠神癲癇、レノックス・ガストー症候群、原因不明の全般発作、CDKL5突然変異、アイカルディ症候群、両側性多小脳回症、Dup15q、SNAP25、および熱性感染症関連癲癇症候群(FIRES)、良性ローランド癲癇、若年性ミオクロニー癲癇、乳児点頭癲癇(ウェスト症候群)、およびランドウ・クレフナー症候群である。多くの異なる小児期癲癇が存在するため、上記リストは非網羅的である。
【0066】
「無緊張発作」は、筋肉を弛緩させ、かつ患者に膝をつかせえる(flop)か、または転倒させる痙攣型の癲癇発作と定義される。
【0067】
「混合発作」は、同一の患者における全般および焦点発作の両方の存在と定義される。
【0068】
用語「50%のレスポンダー」および「発作の50%減少」は、両方とも臨床試験で使用される用語である。本出願では、この用語は、CBDを投与する前のベースライン期間中に経験した発作の回数と比較して、CBDによる治療中に回数で50%以上の減少を経験した対象の割合を定義する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】2010年の発作および癲癇の体系化のための改定用語法のILAE提案を示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
高度に精製されたCBD抽出物の調製
下記の実施例で述べる拡大アクセス臨床試験(expanded access trial)に使用された既知の一定の組成を有する高度に精製された(>98%w/w)カンナビジオール抽出物の生産について述べる。
【0071】
要約すると、この臨床試験で使用される原薬は大麻草(Cannabis sativa L.)の高CBD含有化学種の液体二酸化炭素抽出物であり、これを溶媒結晶化法によって更に精製してCBDを得る。この結晶化過程は、具体的には、他のカンナビノイドおよび植物性成分を特定して除去して95%(w/w)を超える、一般には98%(w/w)を超えるCBDを得る。
【0072】
大麻草(Cannabis sativa L.)植物を成長、収穫、処理して植物抽
出物(中間体)を取り出し、次いで結晶化により精製してCBD(原薬)を得る。
【0073】
この植物出発原料は植物性原料(BRM)と呼ばれ、その植物抽出物が中間体であり、およびその活性医薬成分(API)がCBD、すなわち原薬である。
【0074】
植物出発原料および植物抽出物の両方が仕様書によって制御される。原薬の仕様を下記の表5に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
得られるCBD原薬の純度は98%を超える。抽出物中に生じる可能性のある他のカンナビノイドは、CBDA、CBDV、CBD-C4、およびTHCである。
【0077】
大麻草(Cannabis sativa L.)植物の明確に区別できる化学種は、特定の化学成分、すなわちカンナビノイド類のアウトプットを最大にするように処理された。1つの植物が主にCBDをもたらす。(-)トランス異性体のみが天然に産出され、精製中にCBDの立体化学は更なる影響を受けない。
【0078】
中間体の生産
植物抽出物である中間体を生産するためのステップの全体像は、
1)成長
2)脱炭酸
3)第一抽出(液体COを使用)
4)第二抽出(エタノールを使用する「脱蝋」)
5)濾過
6)蒸発
である。
【0079】
高CBD化学変種を成長させ、収穫し、乾燥し、必要になるまで乾燥室中に保管した。1mm篩を取り付けたアペックス(Apex)ミルを使用してこの植物性原料(BRM)を細かく刻んだ。粉砕されたBRMを、抽出に先立って最長3ヶ月にわたり冷凍庫中で保管した。
【0080】
CBDAのCBDへの脱炭酸は、大型のヘレウス(Heraeus)トレイオーブンを使用して行った。そのヘレウス中での脱炭酸のバッチサイズは、約15kgである。トレイをオーブン内に置き、105℃に加熱した。BRMは105℃に達するのに96.25分を要し、105℃に15分間置かれた。次いでオーブンを150℃に設定した。BRMが150℃に達するのに75.7分を要し、BRMは150℃に130分間置かれた。オーブン中での総時間は、45分間の冷却および15分間の排気を含めて380分であった。
【0081】
液体COを使用して60バール/10℃で第一抽出を行って植物性原薬(BDS)を取り出し、これを結晶化に使用して試験材料を作製した。
【0082】
その粗CBDであるBDSを第二抽出において標準的な条件(-20℃の2倍量のエタノール、約50時間)下で脱蝋した。沈殿したワックスを濾過によって除去し、ロータリーエバポレータ(最高60℃の水浴)を使用して溶媒を蒸発させてBDSを得た。
【0083】
原薬の生産
中間体の植物抽出物から原薬を生産するための製造ステップは、
1)C~C12直鎖または分岐アルカンを使用した結晶化
2)濾過
3)C~C12直鎖または分岐アルカンからの任意選択の再結晶化
4)真空乾燥
である。
【0084】
上記方法論を使用して生産した中間体の植物抽出物(12kg)を、30リットルのステンレス鋼製容器中でC~C12直鎖または分岐アルカン(9000ml、0.75分量)中に分散させた。
【0085】
この混合物を手作業で撹拌して塊を粉砕し、次いでその密閉した容器を冷凍庫中に約48時間置いた。
【0086】
結晶を真空濾過によって単離し、冷C~C12直鎖または分岐アルカンの分割量(合計12000ml)で洗浄し、その原薬を分析のために提出する前に、乾燥するまで<10mbの真空下において温度60℃で乾燥した。この乾燥生成物を、FDA食品グレードの認可されたシリコーンシールおよびクランプを備えた医薬用ステンレス鋼製容器中で-
20℃の冷凍庫中に保管した。
【0087】
医薬品の生産
この医薬品は、経口液剤として提供される。経口液剤の提供物は、25mg/mlまたは100mg/mlのCBDを賦形剤のゴマ油、エタノール、スクラロース、および着香料と共に含有する。これら2つの製品濃度は、広い用量範囲にわたって用量設定を可能にするために利用できる。
【0088】
25mg/ml液剤はより低い用量に適しており、および100mg/ml液剤はより高い用量に適している。
【0089】
この医薬品の処方は下記の表6に示すようなものである。
【0090】
【表6】
【0091】
原薬CBDは水に不溶性である。ゴマ油は、この原薬を可溶化するための賦形剤として選択された。
【0092】
甘味料および果実着香料は、ゴマ油溶液の嗜好性を改善するために必要である。
【0093】
エタノールは、甘味料および着香料を可溶化するために必要である。
【0094】
組成はほぼ均等であることができ、それは機能性成分が表6で指定される量的組成と最高10%の量だけ異なり得ることを意味する。
【実施例0095】
下記の実施例1は、TREを有する子供での拡大アクセス治療プログラムにおけるカンナビジオール(CBD)を含む高度に精製された大麻抽出物の使用について述べる。
【0096】
実施例1:カンナビジオールの難治性癲癇を有する子供および若年成人における無緊張発作減少の有効性
材料および方法
小児期に発症した重症の治療抵抗性癲癇(TRE)を有する137人の子供および若年成人のうち、27人が無緊張発作を特徴とする癲癇を患っていた。これらの対象が、大麻植物から得られた高度に精製されたカンナビジオール(CBD)抽出物でテストされた。すべての対象は、多くの場合、他の発作に加えて無緊張型発作を示した。この検討の参加
者は、CBDの拡大アクセス人道的使用プログラム(expanded access compassionate use program)の一部であった。
【0097】
これらの患者が患っていた癲癇症候群は、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症、ドラベ症候群、Doose症候群、アイカルディ症候群、CDKL5、およびDup15qであった。
【0098】
すべての患者が4週間のベースライン期間に入り、その場合、親/介護者が予想される発作の日誌を預かり、すべての数えられる発作の型を記録した。
【0099】
次いで患者は、そのベースラインの抗癲癇薬(AED)処方計画に加えて、既知の一定の組成の、ゴマ油に溶かした高度に精製されたCBD抽出物(98%w/wを超えるCBD)を5mg/kg/日で与えられた。
【0100】
毎日の用量を、過敏症(intolerance)が起こるか、25mg/kg/日の最高用量に達するまで2~5mg/kg刻みで徐々に増加させた。
【0101】
患者は2~4週間の規則的な間隔で調べられた。血液、肝臓、腎臓の機能および附随AEDのレベルの実験室試験を、ベースラインでおよびCBD治療の4週間後に行った。
【0102】
すべての患者が少なくとも2つの附随抗癲癇薬を服用していた。これらには、クロバザム、レベチラセタム、トピラマート、スチリペントール、フェノバルビタール、ラコサミド、バルプロ酸、およびゾニサミドが挙げられる。服用される附随抗癲癇薬の平均数は2.7であった。大多数がクロバザムおよび/またはバルプロ酸のいずれかを服用していた。
【0103】
結果
その全員が無緊張発作を患っている27人の子供および若年成人が、少なくとも12週間のCBDによる治療を受けた。
【0104】
12週間の治療に基づく50%レスポンダーの概要を下記の表7に要約する。
【0105】
【表7】
【0106】
表7は、治療の3ヶ月後に患者の63%が注目すべきことに無緊張発作の>50%以上の減少を示し、これらのデータは、CBDがこの型の発作を減少させるのにきわめて効果的であることを示す。
【0107】
結論
これらのデータは、既存のAEDに満足に応答しない高い比率の患者においてCBDが無緊張発作の回数を有意に減少させることを示している。
【0108】
治療抵抗性であるこの患者群において、このような多くの人数が効果を得ることができたことは驚くべきことであった。これら患者のほぼ三分の二(63%)は、患っていた無緊張発作の回数の少なくとも50%の減少によって利益を得たという事実は注目すべきことであった。更に、これらのデータを全般発作の他のサブタイプと比較した場合、CBDが無緊張発作の発生を選択的に減少できたことが明確に分かる。下記の表8は、これらの結果の詳細を示す。
【0109】
【表8】
【0110】
表8から、記録された無緊張発作の回数を他の全般発作の型、例えば強直発作(患者の49%が発作の50%を超える減少を経験した)、強直間代発作(患者の43%が発作の50%を超える減少を経験した)、およびミオクローヌス発作(患者の43%が発作の50%を超える減少を経験した)と比べた場合、無緊張発作を経験していた患者のほぼ三分の二(63%)が、発生した発作の回数の50%を超える減少を示したという事実はきわめて驚くべきことである。
【0111】
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図1
【手続補正書】
【提出日】2023-12-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結節性硬化症、ドラベ症候群、Doose症候群、CDKL5、及びDup15qにおける無緊張発作の治療に使用するためのカンナビジオール(CBD)であって、少なくとも95%(w/w)のCBDを含む高度に精製された大麻の抽出物の形態である、または合成化合物として存在する、カンナビジオール(CBD)
【外国語明細書】