(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126819
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】物流設備の状態監視装置、及び、状態監視システム
(51)【国際特許分類】
G01D 21/00 20060101AFI20240912BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240912BHJP
【FI】
G01D21/00 Q
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035478
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000110011
【氏名又は名称】トーヨーカネツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003454
【氏名又は名称】弁理士法人友野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安仲 宏斗
(72)【発明者】
【氏名】下遠 誠
【テーマコード(参考)】
2F076
2G024
【Fターム(参考)】
2F076BA14
2F076BA16
2F076BA18
2F076BA19
2F076BD02
2F076BD07
2F076BD10
2F076BD12
2F076BD13
2F076BD15
2F076BE06
2F076BE07
2F076BE09
2F076BE18
2F076BE19
2G024AD14
2G024BA27
2G024CA13
2G024CA17
2G024DA28
2G024EA13
2G024FA02
2G024FA06
2G024FA14
2G024FA15
(57)【要約】
【課題】各種コンベヤ、リフト、搬送車、ロボットなどの物流設備の状態を、簡便で、かつ、少ない費用で、効率よく監視できる、間欠監視方式の物流設備の状態監視装置を提供すること。
【解決手段】物流設備の状態監視装置であって、物流設備に着脱容易な状態監視センサーと、前記センサーと接続可能で、前記センサーで取得されたデータを処理する状態監視装置本体とを有することにより、物流設備の状態を、簡便かつ少ない費用で、効率よく監視できる。特に打音検査のように作業員の能力に負うような属人的な問題がなくなり安定した検査品質を提供できるようになる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物流設備に着脱容易な状態監視センサーと、前記センサーと接続可能で、前記センサーで取得されたデータを処理する状態監視装置本体とを有する物流設備の状態監視装置。
【請求項2】
前記状態監視センサーは、振動センサー、音響センサー(マイクロフォン)、AE(アコースティック・エミッション)センサー、温度センサー、荷重センサー、速度センサー、湿度センサー、電流センサー、磁気センサー、距離センサー、光電センサー、画像センサーのいずれか1つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の物流設備の状態監視装置。
【請求項3】
前記センサーが異なる種類のセンサーと交換可能であることを特徴とする請求項1に記載の物流設備の状態監視装置。
【請求項4】
前記異なるセンサの識別が自動でなされることを特徴とする請求項3に記載の物流設備の状態監視装置。
【請求項5】
前記センサーの自動識別が、前記状態監視センサー側に設けられた複数の電気的抵抗器による分圧の相違によってなされることを特徴とする請求項4に記載の物流設備の状態監視装置。
【請求項6】
前記センサーの自動識別のための分圧の相違が、複数の分圧値の差分であることを特徴とする請求項5に記載の物流設備の状態監視装置。
【請求項7】
請求項1に記載の物流設備の状態監視装置と、前記状態監視装置と接続され、前記状態監視装置で収集されたデータを分析する状態監視データ分析装置とを有する物流設備の状態監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種コンベヤ、リフト、搬送車、ロボットなどの物流設備の状態を監視する装置に関し、特に、監視される物流設備に着脱容易なセンサーを含む状態監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物流の分野において、種々の物流設備を、なるべく停止させずに安定して稼働させることは、物流業者にとって、顧客満足度及び収益確保の観点から極めて重要である。
【0003】
そのためには、設備に生じる故障や異常状態を速やかに検出し、故障の原因の把握や停止状態からの復旧あるいは停止に至らない未然の措置などが求められている。
【0004】
設備のメンテナンスに関する検査方法としては、古来より、ハンマーなどで設備を叩いて正常・異常を音により判別する打音検査方法が知られている。例えば、ねじのゆるみを検査する場合、正常なものは音が澄んで高音中心に聞こえるが、緩んでいるものは鈍い音に聞こえるなどの検査方法である。しかし、これらの検査方法は、作業者の経験に頼るものであり、作業者の能力による所要時間や作業結果のばらつきが大きく、適正なレベルの成果が得られにくい。
【0005】
一方、常時、設備の状態を監視し、故障や異常状態を予知して保全をする常時監視方式の予知保全システムがある。
【0006】
例えば、特許文献1のベルトコンベア監視装置では、振動加速度センサーが、ベルトコンベアを構成するプーリの軸受に設置され、設置されたプーリの軸受に生じる振動加速度を検出するようになっている。
【0007】
しかしながら、そのような常時監視方式では、設備を監視するために多数のセンサー類を取り付ける工事が必要であり、また、これらのセンサーから得られたデータを解析して設備が劣化する状況を把握するための事前の学習も必要になり、そのため、導入には多額のコストや期間がかかるという大きな問題がある。そこで、学習をAIを活用した機械学習に置き換えるケースも増えているが、AI利用のためには特別なノウハウが必要であることからさらにコストが高くなるなど、必ずしも常時監視を要しない場合には、過剰な設備となってしまうという問題点がある。
【0008】
また、監視すべき事象として、単一の事象でなく、複数の事象を観察することで、故障や異常状態の検出が、正確に、かつ、迅速にできる場合もある。例えば、設備が発生する振動という事象のほか、熱(温度)、音響(異音)、荷重、速度、画像、湿度などの事象も観測することができることが望ましいが、常時監視の場合は、複数のセンサーを設けることは、コスト面や構造面で、対応は困難であるという問題点がある。
【0009】
なお、複数の事象を観察するために、単一の状態監視装置本体に対して複数種類のセンサーを交換可能とすることが求められ、その際に、センサー種別を自動的に識別できることが望まれている。
【0010】
特許文献2には、計測装置の本体装置に対して着脱可能なセンサにセンサの識別情報を書き込んだメモリを備えることなく、センサの識別ができるようにするという課題につき、その解決手段として、本体装置と本体装置に対して着脱可能なセンサとを備える計測装置において、センサは識別抵抗値を有する識別回路を備え、本体装置は、本体装置に接続されたセンサの識別回路の識別抵抗値に応じた識別電圧を生じさせる識別電圧生成回路と、識別電圧に基づいて本体装置に接続されたセンサの識別を行うセンサ識別部と、を備える計測装置の技術思想が開示されている。
【0011】
この文献によれば、識別抵抗値を有する識別回路はセンサ側に設けられ、一方、識別回路と直列に接続される抵抗器と抵抗器に印加電圧を印加する電圧印加部とを備え、抵抗器の抵抗値と識別抵抗値との抵抗分圧として識別電圧を出力する識別電圧生成回路は本体装置側に設けられるようになっている。
【0012】
更に、識別抵抗(センサ側)と抵抗器(本体装置側)とは、それぞれ単数であり、単一の回路を形成し、分圧として得られる識別電圧も単一となる。
【0013】
このような構成であると、センサと本体装置との間のケーブルの抵抗による影響を受けやすく、また、分圧として得られる識別電圧の範囲も広く取れないことから多数のセンサを識別することは難しいという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2020-153926号公報
【特許文献2】特開2020-012769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このように、物流設備に容易には着脱できない状態で固着されたセンサーによって、故障や障害の発生や予兆を常時監視する方式には、種々の問題点がある。
【0016】
本発明は、上述したような従来技術上の問題を解決することを企図したものであり、各種コンベヤ、リフト、搬送車、ロボットなどの物流設備の状態を、簡便で、かつ、少ない費用で、効率よく監視できる、間欠監視方式の物流設備の状態監視装置を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題の解決にあたり、まず、本発明の発明者は、物流設備に状態を監視するセンサーを着脱容易に備えることによれば、上記課題の解決に資することを発見・創出した。
【0018】
そこで、上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、物流設備の状態監視装置であって、物流設備に着脱容易な状態監視センサーと、前記センサーと接続可能で、前記センサーで取得されたデータを処理する状態監視装置本体とを有することを特徴とする。
【0019】
着脱容易とは、工具を用いずに、あるいは簡便な工具によって、物流設備の所望の箇所に簡単に取付けることができ、また、監視が終了したら簡単に取り外すことができることを言い、取付対象物が鉄などの強磁性体であり、センサーが磁力による影響を受けない場合は永久磁石によって状態監視センサーを物流設備に固着し、測定が終了後は取り外すようにすることが好適である。但し、固着手段は永久磁石によるものに限定せず、止め金、クランプや面ファスナーなどの機械的手段、電磁石などの電気的手段、あるいは単に操作員の手持ちで接触させるなど、物流設備とセンサーとの状況に応じた手段を用いればよい。
【0020】
また、状態監視装置本体との間は、有線(イーサネットケーブル)で接続することが好適であるが、イーサネットケーブル以外の有線・無線での接続、インターネット経由での接続であってもよく、あるいは一体化されていてもよい。
【0021】
状態監視装置本体は、CPU・メモリー・無線接続機能を内蔵したマイクロプロセッサ(例えば、ESP32)を装備し、更に、必要に応じて、作動用のバッテリー、送信用のアンテナなどを装備(内蔵または外付け)してもよい。
【0022】
次に、本発明の第2の態様に係る物流設備の状態監視装置として、第1の態様において、前記状態監視センサーは、振動センサー、音響センサー(マイクロフォン)、AE(アコースティック・エミッション)センサー、温度センサー、荷重センサー、速度センサー、湿度センサー、電流センサー、磁気センサー、距離センサー、光電センサー、画像センサーのいずれか1つ以上を含むことを特徴としてもよい。
【0023】
このようにすると、物流設備の故障や異常状態を種々のセンサーによって監視できるため、メンテナンスの効率化などに効果を発揮する。
【0024】
状態監視装置本体は、例えば振動測定においては、加速度センサーを用いて振動速度RMS値及び振動周波数のデータを収集する。
【0025】
更に、収集されたデータは、無線送信機能を用いて、外部のPCあるいはサーバなどに転送することができ、詳細な分析を行ことができる。
【0026】
このようにして、状態監視センサーを、監視が必要な場所及び時期に物流設備に固着することによって、簡便に、かつ、効率的に物流設備に関するデータを収集し、設備の故障や異常状態の発生や予兆を把握することができる。
【0027】
次に、本発明の第3の態様に係る物流設備の状態監視装置として、第1の態様において、前記センサーが異なる種類のセンサーと交換可能であることを特徴としてもよい。
【0028】
これまでの説明では、振動測定用の加速度センサーを例示していたが、加速度センサーを含めて、それ以外の振動センサー、音響センサー(マイクロフォン)、AE(アコースティック・エミッション)センサー、温度センサー、荷重センサー、速度センサー、湿度センサー、電流センサー、磁気センサー、距離センサー、光電センサー、画像センサーなどのセンサーのいずれかと交換可能のようにする。
【0029】
なお、センサーの検出対象が同一であっても、測定範囲や感度などの異なるものは、異なる種類のセンサーに含まれるものとする。
【0030】
状態監視装置本体と状態監視センサーとは、イーサネットケーブルで接続され、このケーブルの先端に異なるセンサーを接続するようにすることが好適である。
【0031】
このようにすると、同一の状態監視装置本体を用いて、異なる種類のデータの収集ができ、幅広く、故障や障害の発見に役立つなど、効率的な運用が可能となる。
【0032】
次に、本発明の第4の態様に係る物流設備の状態監視装置として、第3の態様において、前記異なるセンサーの識別が自動でなされることを特徴としてもよい。
【0033】
センサーの自動識別は、物理的にコネクタの形状を異なるものとする、センサー内部に記憶されている識別情報を読み出すなどの方法が含まれる。
【0034】
次に、本発明の第5の態様に係る物流設備の状態監視装置として、第4の態様において、前記センサーの自動識別が、前記状態監視センサー側に設けられた複数の電気的抵抗器による分圧の相違によってなされることを特徴としてもよい。
【0035】
すなわち、状態監視装置本体側から供給される電力を、状態監視センサー側で抵抗器により分圧し、その結果を状態監視装置本体側で計測することにより、状態監視センサーを特定するものである。
【0036】
このようにすると分圧を生じさせる抵抗器が状態監視センサー側のみに設けられるため、特許文献2のように抵抗器が状態監視センサーと状態監視装置本体とに分散して設けられる場合のセンサー側の抵抗器と本体側の抵抗器との間をつなぐケーブル分の抵抗が加味される構造と異なり、接続ケーブルの抵抗値などの影響を受けづらく、また、状態監視センサーと状態監視装置本体との相性を考慮する必要もなく、状態監視センサーの自動識別が正確に行える。
【0037】
次に、本発明の第6の態様に係る物流設備の状態監視装置として、第5の態様において、前記センサーの自動識別のための分圧の相違が、複数の分圧値の差分であることを特徴としてもよい。
【0038】
例えば、状態監視センサー側に、分圧値を求める2個の抵抗器による分圧値を求める回路を2回路設けるようにする。すると、各回路から分圧値が求まるので、それを計測し、その差分を算出し、それによって状態監視センサーを特定するようにする。
【0039】
このようにすると、1回路の場合の分圧値による識別より、2回路の分圧値の差分による方が、多くの種類の状態監視センサーを識別することが可能となり、自動認識の効果が高まる。
【0040】
また、分圧の差分を識別に用いることで、接続ケーブルの抵抗値による影響を小さくすることができ、正確な識別が可能となる。
【0041】
なお、分圧回路・抵抗器の数は、2回路各2個の抵抗器でなくとも、更に多い3回路以上、または、1回路当たり3個以上の抵抗器を用いてもよい。
【0042】
このように状態監視センサーの自動識別を可能にすると、複数の異なる状態監視センサーを用いる監視において、状態監視センサーの取付ミスを防止できるほか、状態監視センサーの種類に応じた分析などが可能となる。
【0043】
次に、上記課題を解決するために、本発明の第7の態様に係る物流設備の状態監視システムは、第1の態様に係る物流設備の状態監視装置と、前記状態監視装置と接続され、前記状態監視装置で収集されたデータを分析する状態監視データ分析装置とを有することを特徴とする。
【0044】
ここで、状態監視データ分析装置としては、汎用のパソコンあるいはサーバのような、CPU、メモリー、通信機能、表示部、入出力部などを備えたものが好適であるが、専用に設計したものであってもよい。
【0045】
状態監視装置と状態監視データ分析装置とはWi-Fi(登録商標)などの無線での接続が好適であり、複数の状態監視装置からのデータを、状態監視データ分析装置が遠隔で受信し、分析することができる。
【0046】
データの分析のためには、適宜、ソフトウエア(アプリケーション)をインストールするなどすればよい。例えば、例えば振動測定においては、加速度センサーを用いて振動速度RMS値及び振動周波数のデータを収集した場合には、RMS値からISO標準の評価基準により状態判定をするソフトウエアを用意して、それによってA:良、B:可、C:警告、D:危険というような判定をすることが可能である。
【0047】
また、収集された情報や分析の結果得られた情報を、表示すること、印刷すること、更に転送することなどによって、幅広く利用することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、物流設備の状態を、着脱容易な状態監視センサーを含む状態監視装置によって、簡便で、かつ、少ない費用で、効率よく監視できる、物流設備の状態監視装置が実現できる。特に打音検査のように作業員の能力に負うような属人的な問題がなくなり安定した検査品質を提供できるようになる。
【0049】
更に、複数の異なる種類の状態監視センサーを自動で識別することで、ミスなく、効率的に、物流設備の状態監視が可能となる。
【0050】
更に、物流設備の状態監視システムとして、PCなどを用いて、状態監視データ分析を行うことで、物流設備の状態を詳細に把握することができるようになる。
【0051】
なお、常時監視方式との対比においては、常時監視の場合、測定対象は稼働を止めたくない重要な機械、常時稼働している機器、人が立寄ることができない機械、劣化速度が遅い機器などであるが、本発明の間欠監視方式の場合は、測定対象は手軽に振動などのデータが計測できる機械、故障による影響が少ない機械、劣化速度が速い機械などが適応し、常時監視方式よりも手早く測定が行え、即座に定量化した結果を確認でき、メンテナンス時期の判断材料、メンテナンス理由の説明材料、メンテナンス効果の確認などに活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る物流設備の状態監視装置の斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る状態監視装置本体の斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る状態監視センサーの斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る状態監視センサーの断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る状態監視センサーの機能の説明図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る状態監視装置1aの説明図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る状態監視システムの説明図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る状態監視センサーの取付説明図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態の状態監視システムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、図面を参照し、本発明の第1の実施形態にかかる物品のピッキングシステムについて説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0054】
<構成>
図1は本発明の第1の実施形態に係る物流設備の状態監視装置1の斜視図であって、状態監視装置本体10、接続ケーブル20、状態監視センサー30を有する。
【0055】
図2は本発明の第1の実施形態に係る状態監視装置の状態監視センサー30の斜視図であって、外観からは、筐体11、切り替えスイッチ12、表示用LED13、プッシュスイッチ14、通信用アンテナ15、イーサネットケーブル接続部16、USB端子17を有している。
【0056】
また、図示しない内部構成としては、CPU・メモリー・無線接続機能を内蔵したマイクロプロセッサ(例えば、ESP32)、作動用のバッテリーを有する。
【0057】
図3は本発明の第1の実施形態に係る状態監視装置の状態監視センサー30の斜視図であり、
図4は同じく状態監視センサー30の断面図である。
【0058】
状態監視センサー30は、ケース31の内部に、イーサネットケーブル接続部32、加速度センサ33、永久磁石34を有し、加速度センサ33及び永久磁石34はケース31にねじによって固定されている。
【0059】
次に、状態監視センサー30の自動識別について説明する。
図5は本発明の第1の実施形態に係る状態監視装置の状態監視センサーの自動識別機能の説明図であり、状態監視センサー30の内部に、更に、抵抗器R1と抵抗器R2を直列に接続し、抵抗器R3と抵抗器R4も直列に接続し、抵抗器R1及び抵抗器R3の片側に電圧V0を印加し、抵抗器R2及び抵抗器R4の末端の電位を0Vにする。
【0060】
このように回路を構成し、抵抗器R1と抵抗器R2の中間から分圧V1を、抵抗器R3と抵抗器R4の中間から分圧V2を取り出し、その分圧差V1-V2を用いて状態監視センサーの種類を識別する。この回路を状態監視センサー識別部35とする。
【0061】
具体的には、次のような値で構成すれば、9種の識別容易な分圧差が得られる。
ここで、V0=3.3vとする。
V1-V2(v) R1(Ω) R2(Ω) R3(Ω) R4(Ω)
0.00 1400 10000 1400 10000
1.00 7400 10000 1400 10000
2.80 320000 10000 1400 10000
1.65 1400 10000 16400 10000
-0.65 7400 10000 16400 10000
1.15 320000 10000 16400 10000
-2.60 1400 10000 100000 10000
-1.60 7400 10000 100000 10000
0.20 320000 10000 100000 10000
【0062】
なお、この例で、R2及びR4を同一の抵抗値としているのは、コストを低減するためであり、また、製造上もミスを生じにくくするためであるが、R2のグループとR4のグループとを異なる抵抗値とすることや、R2あるいはR4の個々の抵抗値を異なる値とすることも、状況によっては有効な場合もある。
【0063】
なお、識別可能な状態監視センサー30の数は、9種に限定されず、2以上であれば効果があり、例えば、R1:5種×R3:5種の組み合わせであれば、25種類が識別可能であり、更に大きな数であってもよい。
【0064】
また、加速度センサー33にも、電圧V0が印加されており、更に、検知の指示や検知した結果を送受信するための通信線TSが設けられている。
【0065】
これらの電力線や通信線は、イーサネットケーブル接続部32から接続ケーブル20を介して状態監視装置本体10へと接続される。
【0066】
次に、同時に複数の種類の監視ができる構成について説明する。
図6は本発明の第2の実施形態に係る状態監視装置1aの説明図であり、状態監視装置本体10、接続ケーブル20、接続ケーブル20の先端に接続されるイーサネットハブ40、イーサネットハブ40から延伸する複数の追加接続ケーブル50a及び50b、追加接続ケーブル50a及び50bの先端にそれぞれ接続される第1の状態監視センサー30a及び第2の状態監視センサー30bを含んでいる。
【0067】
ここで、第1の状態監視センサー30aが振動の監視をする加速度センサー、第2の状態監視センサー30bが物流設備の表面温度の監視をする温度センサーとして、両方の状態監視を並行して行うようにすることが可能である。
【0068】
このようにすると、異なる種類のデータの収集ができ、個々のデータの分析による状態の把握に加えて、異なる種類のデータの間の相関関係などから、詳細で綿密な状況把握が可能となる。
【0069】
ここで、このような複数の異なる種類のデータの分析は、AI(人工知能)を用いておこなうことで、大きな効果を奏することもできる。
【0070】
なお、同時に接続可能な状態監視センサーの数は2個に限定せず、3個以上であってもよい。更に有効な状況監視ができる場合もある。
【0071】
更に、状態監視装置1を含むシステムを構成してもよい。
図6は本発明の第1の実施形態に係る状態監視装置を含む物流設備の状態監視システム100の説明図であり、状態監視装置1と状態監視データ分析装置2とそれらを接続する接続手段3とを有する。
【0072】
ここで、状態監視データ分析装置2はパソコンが好適であるが、それに限定せず、サーバや、クラウドコンピューティングなど、分析が可能な仕組みであればどのようなものであってもよく、また、接続手段3としては無線LAN(Wi-Fi接続)が好適であるが、同様の機能を果たすものであれば、無線、有線、インターネット接続などどのようなものでもよい。
【0073】
<運用>
次に、本発明の第1の実施形態に係る物流設備の状態監視装置及び状態監視装置をふくむ状態監視システムの運用について説明する。
図8は本発明の第1の実施形態に係る状態監視装置の状態監視センサーの取付けを説明する斜視図、
図9は本発明の第1の実施形態に係る状態監視システム100の運用のフローチャートである。
【0074】
状態監視装置を含む状態監視システム100として運用する場合、まず、状態監視装置1が状態監視データ分析装置2とWi-Fi接続(ペアリング)する。(ステップS101)
【0075】
なお、Wi-Fi接続は、状態監視装置1と状態監視データ分析装置2とを直接接続してもよく、間にアクセスポイントを介して接続してもよい。
【0076】
次に、物流設備、例えばローラコンベヤRCのローラ保持部RHに、状態監視センサー30(例えば加速度センサー)が、永久磁石34によって取り付けられる。(ステップS102)
【0077】
次に、状態監視装置本体10から、あるいは状態監視データ分析装置2からの指示で、状態監視を開始する。(S103)
【0078】
状態監視センサー30が状態監視データ、例えば加速度センサーを用いて収集した振動速度RMS値及び振動周波数のデータを状態監視装置本体10を経由して、状態監視データ分析装置2へと伝達する。(S104)
【0079】
なお、RMSは実効値(root mean square)であり、瞬時値の2乗したものを時間平均し、その平方根で表される値である。
【0080】
次に、状態監視データ分析装置2が、収集されたデータを状態判定ソフトウエアにて分析する。(S105)
【0081】
例えば、振動速度RMSは、値が大きいほど振動が大きいことを示す。なお、状態判定ソフトウエアとは、例えば、振動速度RMS値からISO標準の評価基準、すなわち、ISO10816-1の振動シビアリティによる機器判定により、A:良、B:可、C:警告、D:危険の判定を行うようにプログラムされているものである。
【0082】
但し、絶対値で評価するのは難しいため、データ間で比較する相対評価も有効であり、収集したRMSの値が、前回あるいは他の監視個所の交換時や不調時のRMSの値に近くなった場合には、交換時期が近いことを知らせるようにすることもできる。
【0083】
また、振動周波数の場合には、振動に含まれる周波数を算出し、振動速度RMSでは分からない細かな振動の違いを把握することができる。この場合もRMSの場合と同様に、過去データや設備ごとに比較する相対評価が有効である。
【0084】
特に、回転機械は、回転に応じた振動を発生させるが、劣化が進むとその機器の振動パターンが変化するので、劣化状態は周波数に大きく表れるため、振動周波数のデータ分析が有効である。
【0085】
なお、分析結果は、状態監視データ分析装置2の表示部に速やかに表示したり、印刷出力したり、外部に転送したり、更なる分析に資するために記憶したりすることができる。
【0086】
更に、状態監視データ分析装置2においては、種々の分析が可能である。例えば、振動監視の場合は、時系列の振動傾向の把握及び簡易診断、設備間の振動の比較、周波数での振動詳細比較、振動推移の簡易予測などが可能である。
【0087】
次に、状態監視センサー30が、監視を終了した物流設備の特定個所から取り外され(S106)、更に状態監視を継続するかどうかを判断する。(S107)
【0088】
継続する場合は、同一物流設備の別の個所あるいは別の物流設備の指定個所に取付けられ(S102)、これまで述べたステップを繰り返し、監視を継続しない場合は、終了する。
【0089】
また、本発明は、同様の手法によって、加速度センサーによる振動の監視以外にも、種々のセンサーを用いて、故障や異常状態の把握が可能である。
【0090】
例えば、温度センサーによって異常な温度上昇が観察された場合には予知保全を行なったり、音響センサーによって異常音が検出された場合にも予知保全を行なったり、AE(アコースティック・エミッション)センサーによって、材料が変形したり、き裂が発生したりする際の、材料が内部に蓄えていた弾性エネルギーが高い周波数をもつ音響信号(弾性波)を検出して予知保全に役立てたり、電流センサーや磁気センサーによっても異常値が検出された場合に予知保全の活用したり、距離センサーによって、非接触振動計測による予知保全や施工ツールとして用いたり、光電センサーによって障害物の認識や簡易的なコンベヤ流量計として利用するなど種々の物流設備の状態監視が実現できる。
【0091】
更に、本発明の物流設備の状態監視装置、あるいは状態監視装置を含む状態監視システムにおいては、これまでの説明に加えて、次のような特徴的な追加機能を有してもよい。
【0092】
第1の追加機能は、類似部品の自動検索機能であり、機番の種類・部品の種類を基に、自動的に測定部品と類似する部品のデータを表示するものである。
【0093】
具体的な流れとしては、
a.機番・部品登録時に各種別・仕様などの情報を入力する。
b.入力した種別・状況の条件に最も合致した部品を類似部品として表示する。
【0094】
これによれば、類似部品の故障発生状況などから、状況監視中のデータが異常かどうかの判定の参考とすることができる。
【0095】
第2の追加機能は、状況推移予測機能であり、例えば振動の場合、振動推移予測として、定期的な測定で蓄積された部品の振動データから、簡易的な推移予測を確認することができる。
【0096】
具体的には、第1の追加機能で見出した類似品の故障発生時のRMSを用いて、データの推移を基に統計的な回帰(ポアソン回帰)分析を行なうようにしてもよい。
【0097】
また、本発明には、状況監視データを照会するソフトウエアを準備している。例えば、測定結果を表示するソフトウエアであり、計測を終了すると自動で計測結果を表示するようにする。その内容は、振動監視の場合、ISO振動基準に基づいた絶対評価結果と、類似部品の自動検索機能による相対評価結果を表示し、比較対照できるようにする。また、振動の場合、RMSを確認する画面にてRMS値を表示するようにする。
【0098】
それらのデータは、時系列に表示され、また別機器の測定データを重ねて表示することも可能とするほか、部品毎のデータ、類似部品のデータ、推移予測、過去の計測データ、などを同様の形式で、表示することができる。
【0099】
また、振動監視の場合、過去周波数照会ができ、振動周波数グラフを表示できる。この場合も、過去データや別機器の測定データをグラフ上に重ねて表示でき、振動の違いが確認できる。
【0100】
また、物流設備が設置されているセンター毎あるいは機番毎にデータ検索することもできる。
【0101】
次に、本発明の実施形態による具体的な実施例につき、説明する。
【実施例0102】
<異常混入ベアリングの測定>
ベアリングに砂を混入させた状態で測定を実施。異常前後でRMS値が大幅に上昇し、その後も継続的な上昇を確認した。また、周囲の正常ベアリングと比較しても大幅にRMS値が異なることを確認できた。