(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126821
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20240912BHJP
B60R 19/52 20060101ALI20240912BHJP
B60K 15/05 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B60K1/04 Z ZHV
B60R19/52 K
B60K15/05 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035481
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和希
(72)【発明者】
【氏名】中山 学
(72)【発明者】
【氏名】北山 瑞希
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
3D038CA18
3D038CB01
3D038CC16
3D038CD19
3D235AA02
3D235BB06
3D235BB41
3D235CC12
3D235CC32
3D235FF05
3D235HH08
3D235HH22
(57)【要約】
【課題】車両が衝突した際に、インレットが後退して充電器を破損するのを抑制することができる車両前部構造を提供すること。
【解決手段】車両前部構造100は、車両Cの前部C1に設けられた構成部材B10と、構成部材B10に配置されて通常充電用インレット31が設けられた通常充電リッド1と、構成部材B10に配置されて急速充電用インレット32が設けられた急速充電リッド2と、を備えている。通常充電用インレット31及び急速充電用インレット32は、ケーブルを介して充電器6に接続されている。充電器6は、構成部材B10の後方かつ通常充電用インレット31と急速充電用インレット32との間に配設されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部に設けられた構成部材と、
前記構成部材に配置されて通常充電用インレットが設けられた通常充電リッドと、
前記構成部材に配置されて急速充電用インレットが設けられた急速充電リッドと、を備えた車両前部構造であって、
前記通常充電用インレット及び前記急速充電用インレットは、ケーブルを介して充電器に接続され、
前記充電器は、前記構成部材の後方かつ前記通常充電用インレットと前記急速充電用インレットとの間に配設されている、
車両前部構造。
【請求項2】
前記通常充電用インレットと前記急速充電用インレットとは、前記車両の幅方向に延びる補強部材に取り付けられる、
請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記構成部材は、フロントグリルであり、
前記フロントグリルの左右には、ヘッドランプが設置され、
前記フロントグリルには、前記通常充電リッドと前記急速充電リッドとが互いに左右に離間して配置されている、
請求項1または請求項2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記充電器は、前記通常充電用インレット及び前記急速充電用インレットよりも後方に配置されており、
前記充電器の車幅方向外側端部は、前記通常充電用インレット及び前記急速充電用インレットの車幅方向中央側端部に対して、車幅方向に所定距離以上離間している、
請求項1または請求項2に記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常充電用インレット(「通常充填口」、「通常充電ポート」ともいう)と、通常充電と比して急速に充電するのに用いる急速充電用インレット(「急速充電口」、「急速充電ポート」ともいう)と、を搭載した車両の車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)には、蓄電池を充電するためのインレットが設けられている。インレットの開口は、例えば、特許文献1に記載されているように、フロントバンパカバーの車幅方向左側寄りの位置に形成されている。その開口を開閉するリッド本体は、ラジエータサポート及びラジエータサポートロアに、インレットブラケット、インレットカバーを介在して支持されている。
【0003】
特許文献1に記載の車両用充電リッド部構造では、インレットの一つの開口内に、通常充電用インレットと、急速充電用インレットとの2つのインレットが左右に並んで設置されている。
【0004】
インレットの開口をフロントバンパカバー以外の車両前部に配置したものとしては、例えば、特許文献2に記載された車体前部構造が知られている。特許文献2に記載の車体前部構造は、フロントフードパネルの車幅方向中央部に充電ポートを備えた充電ポート装置が形成されている。
【0005】
一般に、電気自動車は、特許文献2に記載されているように、モータルーム内の中央部(充電ポート装置の後方)に充電するための充電器(電気機器)を収容した電気ボックスが搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許5786684号公報
【特許文献2】特許6754807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に記載されているような一般の電気自動車は、モータルーム内の電気機器の前方にインレットを配置しているので、車両が衝突した際に、インレットが後退して充電器に衝当し、充電器を破損させるおそれがあった。
【0008】
本発明は、前記問題点を解決するために創案されたものであり、車両が衝突した際に、インレットが後退して充電器を破損するのを抑制することができる車両前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、車両の前部に設けられた構成部材と、前記構成部材に配置されて通常充電用インレットが設けられた通常充電リッドと、前記構成部材に配置されて急速充電用インレットが設けられた急速充電リッドと、を備えた車両前部構造であって、前記通常充電用インレット及び前記急速充電用インレットは、ケーブルを介して充電器に接続され、前記充電器は、前記構成部材の後方かつ前記通常充電用インレットと前記急速充電用インレットとの間に配設されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両が衝突した際に、インレットが後退して充電器を破損するのを抑制することができる車両前部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両前部構造を示す図であり、通常充電リッド及び急速充電リッドの配置状態を示す要部概略正面図である。
【
図2A】通常充電リッドの設置状態を示す要部拡大斜視図である。
【
図2B】通常充電用インレットに通常充電用充電ガンを装着して充電しているときの状態を示す要部拡大斜視図である。
【
図2C】通常充電用インレットの設置状態を示す要部拡大斜視図である。
【
図3A】急速充電リッドの設置状態を示す要部拡大斜視図である。
【
図3B】急速充電用インレットに急速充電用充電ガンを装着して充電しているときの状態を示す要部拡大斜視図である。
【
図4A】通常充電リッドが閉塞されてロックされているときのリッドロックアクチュエータの状態を示す斜視図である。
【
図4B】通常充電リッドがプレオープンされてアンロックされているときのリッドロックアクチュエータの状態を示す斜視図である。
【
図5A】通常充電リッド及び急速充電リッドの設置状態を示す要部分解斜視図である。
【
図5B】通常充電リッド及び急速充電リッドの設置状態を示す要部斜視図である。
【
図7A】車両が前突したときの車体の前部を示す概略平面図であって、車体右側がオフセット衝突したときの状態を示し、車体左側が正面衝突したときの状態を示す。
【
図7B】車両が前突したときの車体の前部を示す概略平面図であって、車体右側がオフセット衝突したときの状態を示し、車体左側が正面衝突したときの状態を示す。
【
図8A】車両に歩行者の脚部が衝突したときの車両の前部の概略平面図である。
【
図8B】車両に歩行者の脚部が衝突したときの車両の前部の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~
図8Bを参照して、本発明の実施形態に係る車両前部構造100を説明する。
なお、車両Cの進行方向を「前」、後退方向を「後」、「鉛直上方側を「上」、鉛直下方側を「下」、車幅方向を「左」、「右」として説明する。
【0013】
≪車両≫
車両Cは、
図1に示すように、電気で駆動する動力を有する電気自動車、プラグインハイブリッド車等の電動車両である。車両Cは、走行用の電動モータ(図示省略)に電力を供給する蓄電池BT(
図6参照)の充電を行う2つのインレット3(「充電口」、「充電ポート」等ともいう)を有する電動車両であればよく、種類、形式等は特に限定されない。以下、車両Cの一例として、電気自動車の場合を例に挙げて説明する。
【0014】
車両Cは、電動モータ(図示省略)と、蓄電池BT(
図6参照)と、インレット3と、通常充電リッド1と、急速充電リッド2と、通常充電リッド開閉ノブ11と、急速充電リッド開放スイッチ(図示省略)と、充電リッド開閉制御装置(図示省略)と、充電器6(
図7A及び
図7B参照)等を備えている。車両Cの前端部の左右には、ヘッドランプHLが設置されている。左右のヘッドランプHL間には、フロントグリルB1が設けられている。
【0015】
≪車体≫
図6に示すように、車体Bには、例えば、中央部に車室4が設置され、車体中央部の床下に蓄電池BTが設置されている。車室4の前側には、通常充電用充電ガン71及び急速充電用充電ガン72の接続状態、充電器6の充電状態等を表示する表示装置と、急速充電リッド2を開放するための急速充電リッド開放スイッチと、を備えたインストルメントパネルが設置されている。車体Bの前側のモータルームMRには、電動モータ(図示省略)が設置されている。モータルームMRの前側のフロントグリルB1の左右には、
図1に示すように、ヘッドランプHLが設置されている。フロントグリルB1の右側のヘッドランプHL寄りの位置には、通常充電用インレット31を覆う通常充電リッド1が配置されている。フロントグリルB1の左側のヘッドランプHL寄りの位置には、急速充電用インレット32を覆う急速充電リッド2が配置されている。
【0016】
≪車両前部構造≫
車両前部構造100は、車両Cの前部C1に設けられた構成部材B10と、通常充電用インレット31が設けられた通常充電リッド1と、急速充電用インレット32が設けられた急速充電リッド2と、を備えている。
【0017】
<構成部材>
図1に示すように、構成部材B10は、車両Cの前部C1に配置されて、車体前部の一部を構成する部材である。構成部材B10は、具体例を挙げると、フロントグリルB1である。
【0018】
<フロントグリル>
車両Cの前面部C2のフロントグリルB1の左右には、ヘッドランプHLと、通常充電リッド1を配置するための通常充電リッド設置孔B1aと、急速充電リッド2を設置するための急速充電リッド設置孔B1bと、が設けられている。
図1に示すように、通常充電リッド1によって開閉される通常充電リッド設置孔B1aは、フロントグリルB1の右側のヘッドランプHL寄りの位置に配置されている。急速充電リッド2によって開閉される急速充電リッド設置孔B1bは、フロントグリルB1の左側のヘッドランプHL寄りの位置に配置されている。
【0019】
つまり、フロントグリルB1には、通常充電リッド1及び通常充電リッド設置孔B1aと、急速充電リッド2及び急速充電リッド設置孔B1bとが互いに左右に離間して配置されている。このため、通常充電用インレット31と急速充電用インレット32とは、通常充電リッド設置孔B1aと急速充電リッド設置孔B1bとの別々のリッド設置孔内に配置されているので、混同し難い位置に配置されている。
図5Aに示すように、フロントグリルB1は、左右下端部の固定部B1cをフロントバルクヘッドB3の縦メンバB31の締結部31bにボルト締結し、上端部の固定部B1dをアッパクロスメンバB32の締結部32bにボルト締結することで、
図5Bに示すように、フロントバルクヘッドB3に固定されている。
【0020】
≪電動モータ≫
電動モータ(図示省略)は、
図6に示す車両Cを走行させるための走行用モータである。電動モータは、蓄電池BTから供給される電力によって駆動される。電動モータは、モータルームMR内に設置されている。
【0021】
≪蓄電池≫
図6に示すように、蓄電池BTは、電動モータに供給する電気を蓄えるための電池である。蓄電池BTは、車両Cの床下に配置されている。
【0022】
≪通常充電リッド≫
図1、
図2A及び
図2Bに示すように、通常充電リッド1は、通常充電リッド設置孔B1aを開閉するための蓋体である。通常充電リッド1は、通常充電用インレット31を覆うための矩形の略板状部材から成る。
図2Dに示すように、通常充電リッド1は、通常充電リッド開閉ノブ11を有するリッドアウタ1Aと、ヒンジ12を有するリッドインナ1Bと、を重ね合わせて構成されている。通常充電リッド1は、リッドインナ1Bのヒンジ12に挿設される軸支ピン17、ばね部材(図示省略)等を介在してインレット3のアダプタ30に回動自在に取り付けられている。
【0023】
<ヒンジ>
図2Bに示すように、ヒンジ12は、通常充電リッド1を車体Bに対して回動自在に支持するための部材である。ヒンジ12は、基端側が車体B側に回動自在に支持され、先端側が通常充電リッド1に固定されている。
【0024】
図2Bまたは
図2Cに示すように、アダプタ30は、通常充電リッド設置孔B1aに装着されている。通常充電リッド設置孔B1a内のアダプタ30には、通常充電用インレット31と、インジケータ13と、照明灯14と、リッドロックアクチュエータ15(
図2D参照)と、が配置されている。
図5Aに示すように、通常充電リッド1用のアダプタ30は、フロントバルクヘッドB3に固定されたインレットアッシ35のアダプタ設置部35aに取り付けられている。
インレットアッシ35は、左右端部の固定部35cをフロントバルクヘッドB3の縦メンバB31の締結部31aにボルト締結し、上端部左右の固定部35dをアッパクロスメンバB32の締結部32aにボルト締結することで、
図5Bに示すように、フロントバルクヘッドB3に固定されている。
【0025】
<通常充電リッド開閉ノブ>
図2Aに示すように、通常充電リッド開閉ノブ11は、通常充電リッド1を開放及び閉塞させるための押ボタンである。
図1及び
図2Aに示す閉塞状態の通常充電リッド1は、通常充電リッド開閉ノブ11を押圧操作することによって、解錠されて、
図2Aに二点鎖線で示すように、半開きのプレオープンの状態になる。半開きの通常充電リッド1は、手を掛けて引っ張ることによって、
図2B及び
図2Cに示すように、開放させることができる。通常充電リッド1を閉塞する場合は、手で通常充電リッド1を閉塞状態にすると共に、通常充電リッド開閉ノブ11を押圧操作すると、
図2Aに実線で示すように、閉塞された施錠状態になる。
【0026】
<インジケータ>
図2Cに示すインジケータ13は、蓄電池BT(
図6参照)を充電中であることを点滅表示する作動表示部である。インジケータ13は、例えば、LEDから成る。インジケータ13は、充電中にインテリジェントコントロールモジュール(図示省略)からの充電中の表示信号を受けて、充電中であることを点滅表示する表示等を行う。
【0027】
<照明灯>
図2Cに示す照明灯14は、通常充電用インレット31を照明するための照明ランプである。照明灯14は、例えば、LEDから成る。照明灯14は、通常充電リッド1を開放後に、不図示のボディ制御モジュール(BCM)からの手元照明点灯信号を受けて点灯して、通常充電用インレット31を照明する。
【0028】
<通常充電用のリッドロックアクチュエータ>
図4A及び
図4Bに示す通常充電用のリッドロックアクチュエータ15は、通常充電リッド1(
図1及び
図2A参照)を施錠及び解錠するための装置である。リッドロックアクチュエータ15は、アクチュエータ本体15aと、アクチュエータスイッチ15bと、ラチェット15cと、を備えている。
【0029】
リッドロックアクチュエータ15は、車速が0km/hで、ドアロックスイッチがアンロック時のみ、通常充電リッド開閉ノブ11を操作すると、アクチュエータスイッチ15bが作動して通常充電リッド1を開放させる。
【0030】
図4Aは、通常充電リッド1(
図1及び
図2A参照)が閉塞されているときのリッドロックアクチュエータ15の状態を示す。
図2Aまたは
図4Aに示すように、通常充電リッド1が閉塞時に、通常充電リッド開閉ノブ11を押圧操作すると、アクチュエータスイッチ15bがONし、リッドロックアクチュエータ15が解錠方向に作動する。そのリッドロックアクチュエータ15は、
図4Bに示すように、ラチェット15cが上方向に回動することで、ロックが外れ、
図2Aに示すように、通常充電リッド1をプレオープンの半開き状態にさせる。
【0031】
開放された通常充電リッド1は、通常充電リッド開閉ノブ11を押圧すると、
図4Aに示すアクチュエータスイッチ15bがONし、通常充電用のリッドロックアクチュエータ15をロック状態にする。通常充電用のリッドロックアクチュエータ15は、ラチェット15cが横方向に回動することで、ロック状態になり、通常充電リッド1を施錠する(
図2A参照)。
【0032】
前記ボディ制御モジュールは、車速、ドアロック、車両内外の照明、ワイパー、エアコン、パワーウィンドウ等の車両状態の管理をする電子制御ユニット(ECU)である。ボディ制御モジュールは、通常充電リッド開閉ノブ11(
図2A参照)が操作されると、アクチュエータスイッチ15b(
図4B参照)をONさせる。そして、リッド開要求信号が送られて来た場合は、車速が0km/hでドアがアンロック時に、リッドロックアクチュエータ15に開信号を送る。
なお、ボディ制御モジュールは、ドアロックスイッチ(図示省略)がロック状態で、車速が0km/h以外の場合、反応しない。
【0033】
≪急速充電リッド≫
図1及び
図3Bに示すように、急速充電リッド2は、急速充電リッド設置孔B1bを開閉するための蓋体である。急速充電リッド2は、急速充電用インレット32を覆うように配置された矩形の略板状部材から成る。通常充電リッド1と急速充電リッド2とは、車両Cの前面部C2に設けられたフロントグリルB1の左右に寄った位置に、互いに左右に離間して配置されている。
図7Aに示すように、通常充電リッド1及び急速充電リッド2は、平面視して、充電器6と車両前後方向に重ならない位置状態に設置することが最良であるが、通常充電用インレット31及び急速充電用インレット32を、平面視して、充電器6と車両前後方向に重ならない位置状態に設置しても構わない。
【0034】
図3Bに示すように、急速充電リッド2の右端部には、急速充電リッド2を回動自在に支持するためのヒンジ22が設けられている。急速充電リッド設置孔B1b内には、急速充電用インレット32と、インジケータ(図示省略)と、照明灯(図示省略)と、急速充電用のリッドロックアクチュエータ16(
図4A及び
図4B参照)と、が配置されている。このように、急速充電リッド2は、通常充電リッド1を同様な構造をしている。
【0035】
<急速充電用のリッドロックアクチュエータ>
図4A及び
図4Bに示す急速充電用のリッドロックアクチュエータ16は、通常速充電用のリッドロックアクチュエータ15と同様の構造であって、急速充電リッド2(
図3B参照)を施錠及び解錠するための装置である。急速充電用のリッドロックアクチュエータ16は、アクチュエータ本体16aと、アクチュエータスイッチ16bと、ラチェット16cと、を備えて構成されている。
【0036】
急速充電用のリッドロックアクチュエータ16は、不図示のEV充電用通信装置(EVCC:EV COMMUNICATION CONTROLLER)を介して急速充電リッド開放スイッチに電気的に接続されている。利用者が急速充電リッド開放スイッチを操作して急速充電リッド2の開放要求をすると、EV充電用通信装置は、リッドロックアクチュエータ16にリッド開放信号を送って開放作動させる。
【0037】
図4Aは、急速充電リッド2(
図1及び
図3B参照)が閉塞されているときの急速充電用のリッドロックアクチュエータ16の状態を示す。急速充電リッド2(
図3B参照)が閉塞時に、停車中の車室4内の急速充電リッド開放スイッチを押圧操作すると、アクチュエータスイッチ16bがONされて、急速充電用のリッドロックアクチュエータ16が作動する。そのリッドロックアクチュエータ16は、
図4Bに示すように、ラチェット16cが上方向に回動することで、ロックが外れ、急速充電リッド2がプレオープンの半開き状態になる(
図3B参照)。半開きの急速充電リッド2は、手を掛けて引っ張ることによって、
図3Bに示すように、開放させることができる。
【0038】
開放されている急速充電リッド2(
図3B参照)は、急速充電リッド2を押圧すると、アクチュエータスイッチ16bがONされて、急速充電用のリッドロックアクチュエータ16がロック状態になる。急速充電用のリッドロックアクチュエータ16は、
図4Aに示すように、ラチェット16cが横方向に回動することで、ロック状態になり、急速充電リッド2を施錠する(
図1参照)。
【0039】
図2Aに示すように、通常充電リッド1は、車体Bの外部にある通常充電リッド1に配置された通常充電リッド開閉ノブ11を操作することで、開放して通常充電することを可能とする。
図3Bに示す急速充電リッド2は、車室4内にある急速充電リッド開放スイッチ(図示省略)を操作することで、開放して急速充電することを可能とする。
【0040】
このように通常充電リッド1を開放させる通常充電リッド開閉ノブ11の配置位置及び開放させる方法と、急速充電リッド2を開放させる急速充電リッド開放スイッチの配置位置及び方法とは、相違している。このため、インレット3は、通常充電用インレット31と、急速充電用インレット32とを間違えて充電されるのを防止する構造となっている。
【0041】
≪インレット≫
図1に示すように、インレット3は、蓄電池BT(
図6参照)を充電するための充電コネクタである。インレット3は、通常充電に用いる通常充電用インレット31と、通常充電と比して急速充電に用いる急速充電用インレット32と、の2つから成る。
【0042】
<通常充電用インレット>
図2Bまたは
図2Cに示すように、通常充電用インレット31は、家庭用電源に接続された通常充電機(図示省略)の通常充電用充電ガン71を装着して通常充電するための交流用の接続部である。通常充電用インレット31には、通常充電用充電ガン71を装着したことを検出する通常充電用充電ガン着脱スイッチ33等が設けられている。
【0043】
通常充電用充電ガン着脱スイッチ33は、通常充電用充電ガン71を装着した通常充電用インレット31に装着した際に、充電コネクタ接続信号をインテリジェントコントロールモジュール(図示省略)に送る。インテリジェントコントロールモジュールは、通常充電用充電ガン71を通常充電用インレット31に装着した充電コネクタ接続信号を車室4内の表示装置に送って表示装置に通常充電用充電ガン71の接続状況を表示させる。
【0044】
<急速充電用インレット>
図3Bに示すように、急速充電用インレット32は、充電スタンド等の充電施設の急速充電機(図示省略)に接続された急速充電用充電ガン72を装着して急速充電するための直流用の接続部である。急速充電用インレット32には、急速充電用充電ガン72を装着したことを検出する急速充電用充電ガン着脱スイッチ34等が設けられている。通常充電用インレット31及び急速充電用インレット32は、ケーブルを介して充電器6(
図7A参照)に接続されている。また、
図7Aに示すように、通常充電用インレット31と急速充電用インレット32とは、車両Cの幅方向に延びる補強部材B30(フロントバルクヘッドB3)に取り付けられている。
【0045】
図3Bに示す急速充電用充電ガン着脱スイッチ34は、急速充電用充電ガン72を装着した急速充電用インレット32に装着した際に、充電コネクタ接続信号をインテリジェントコントロールモジュール(図示省略)に送る。インテリジェントコントロールモジュールは、急速充電用充電ガン72を急速充電用インレット32に装着した充電コネクタ接続信号を表示装置(図示省略)に送って表示装置に急速充電用充電ガン72の接続状況を表示させる。
【0046】
≪充電器≫
図7Aに示す充電器6は、主に充電、給電等を制御する充電/給電制御装置である。充電器6は、車両Cの前部スペースのモータルームMRにおいて、平面視して、構成部材B10の後方、かつ、通常充電用インレット31と急速充電用インレット32との間の後方に配置されている。充電器6は、通常充電用インレット31及び急速充電用インレット32の後方であって、通常充電用インレット31及び急速充電用インレット32と車両前後方向で重ならない位置に配置されている。具体的には、充電器6の車幅方向外側端部は、通常充電用インレット31及び急速充電用インレット32の車幅方向中央側端部に対して、車幅方向に所定距離L1,L2(例えば、10mm)以上離間している。
【0047】
≪充電ガン≫
図2Bまたは
図3Bに示す充電ガン7は、インレット3に接続して蓄電池BT(
図6参照)を充電するための充電用コネクタである。車両Cは、通常充電用インレット31と急速充電用インレット32とを備えている。このため、車両Cに使用可能な充電ガン7は、通常充電用充電ガン71と急速充電用充電ガン72との二種である。
【0048】
<通常充電用充電ガン>
図2Bに示す通常充電用充電ガン71は、家庭用の交流電源(AC)に接続されて、通常充電用インレット31に接続して蓄電池BT(
図6参照)を充電するためのプラグである。
【0049】
<急速充電用充電ガン>
図3Bに示す急速充電用充電ガン72は、充電スタンド等に設置されている直流電源(DC)に接続されて、急速充電用インレット32に接続して蓄電池BT(
図6参照)を急速充電するためのプラグである。
【0050】
前記したEV充電用通信装置は、車両Cと充電スタンドの充電機との間の蓄電池BTの急速充電のための充電データ、車速等の情報の通信に使用されるデバイスである。EV充電用通信装置は、急速充電リッド開放スイッチ(図示省略)が操作されてアクチュエータスイッチ16b(
図4B参照)がONし、リッド開要求信号が送られて来た場合、ドアロックスイッチがOFFの解錠状態のときに、リッドロックアクチュエータ16に開信号を送る。
【0051】
≪作用≫
本実施形態に係る車両前部構造100は、基本的に以上のように構成されるものであり、次に、
図1~
図8Bを参照しながらその作用について説明する。
【0052】
<車両の前突時の要件>
図7Aに示すように、例えば、通常充電用インレット310と急速充電用インレット320とは、平面視して、充電器6と車両前後方向で重なる位置の車両前方に配置した場合、正面衝突時及びオフセット衝突時に、充電器6に衝当する。
【0053】
これを防止するために、本発明の通常充電リッド1及び急速充電リッド2は、平面視して、充電器6と車両前後方向に重ならない位置の車両Cの前部C1に配置することが最良である。このように、通常充電リッド1及び急速充電リッド2は、平面視して、充電器6と車両前後方向に重ならない位置状態に配置したことで、正面衝突時及びオフセット衝突時に、より確実に充電器6に衝当しないように配置することができる。
なお、通常充電用インレット31と急速充電用インレット32とを、平面視して、充電器6と車両前後方向に重なる位置状態に設置しても構わない。このように通常充電用インレット31と急速充電用インレット32とを、平面視して、充電器6と車両前後方向に重ならない位置に配置しても、正面衝突時及びオフセット衝突時に、充電器6に衝当しないようにすることが可能である。
【0054】
通常充電用インレット31と急速充電用インレット32とは、正面衝突時(矢印b)及びオフセット衝突時(矢印a)に、充電器6に衝当しないように、充電器6から横方向に所定距離L1,L2を10mm以上離間して配置することが好ましい。
【0055】
更に具体的には、
図7Bに示すように、通常充電用インレット31と充電器6との横方向の距離L3は、24mm確保する。急速充電用インレット32と充電器6との横方向の距離L4は、14mm確保する。これにより、正面衝突時及びオフセット衝突時に、通常充電用インレット31及び急速充電用インレット32と、充電器6とが、干渉するのを防ぐことができる。
【0056】
<車両の歩行者との衝突時の脚部保護の要件>
図8Aに示すように、例えば、通常充電用インレット310と急速充電用インレット320とは、平面視して、充電器6と車両前後方向で重なる位置の車両前方に配置した場合、車両Cが歩行者の脚部と衝突したとき、充電器6に衝当する。
【0057】
これを防止するために、本発明の通常充電用インレット31と急速充電用インレット32とは、平面視して、充電器6と車両前後方向に重ならない位置の車両Cの前部C1に配置されている。このようにすることで、車両Cが歩行者の脚部と衝突したとき、通常充電用インレット310と急速充電用インレット320とが、充電器6に衝当しないように配置することができる。
【0058】
通常充電用インレット31と急速充電用インレット32とは、具体的には通常充電用インレット31及び急速充電用インレット32の後部に、100mm以上のクラッシュストロークST1,ST2になるようにすることが好ましい。このようにすることで、通常充電用インレット310と急速充電用インレット320とは、車両Cが歩行者の脚部と衝突したときに、充電器6に衝当しないようにすることができる。
【0059】
更に具体的には、通常充電用インレット31と急速充電用インレット32とは、車両Cが歩行者の脚部と衝突したときに、クラッシュストロークST1,ST2を100mm以上確保できるようにする。このようにすることで、通常充電用インレット31及び急速充電用インレット32が充電器6に干渉するのを防ぐことができる。
【0060】
このように、本発明は、
図1に示すように、車両Cの前部C1に設けられた構成部材B10(フロントグリルB1)と、フロントグリルB1に配置されて通常充電用インレット31が設けられた通常充電リッド1と、フロントグリルB1に配置されて急速充電用インレット32が設けられた急速充電リッド2と、を備えた車両前部構造100であって、通常充電用インレット31及び急速充電用インレット32は、ケーブルを介して充電器6に接続され、充電器6は、フロントグリルB1の後方かつ通常充電用インレット31と急速充電用インレット32との間に配設されている。
【0061】
かかる構成によれば、本発明の車両前部構造100は、充電器6を、フロントグリルB1の後方かつ通常充電用インレット31と急速充電用インレット32との間に配設している。このため、車両Cが前面衝突した際に、インレット3が後退して充電器6を損傷させるのを抑制することができる。
【0062】
また、
図1に示すように、通常充電用インレット31と急速充電用インレット32とは、車両Cの幅方向に延びる補強部材B30(フロントバルクヘッドB3)に取り付けられる。
【0063】
かかる構成によれば、通常充電用インレット31及び急速充電用インレット32は、フロントバルクヘッドB3に取り付けられていることで、車両Cが前面衝突した際に、インレット3の後退を抑えることができる。また、その前面衝突した際に、車両Cの前部C1に設置された部材等が、充電器6に衝当しないようにすることができるため、充電器6を保護することができる。
【0064】
また、
図1に示すように、構成部材B10は、フロントグリルB1であり、フロントグリルB1の左右には、ヘッドランプHLが設置され、フロントグリルB1には、通常充電リッド1と急速充電リッド2とが互いに左右に離間して配置されている。
【0065】
かかる構成よれば、通常充電リッド1と急速充電リッド2は、開閉するサイドドア、スライドドア、ボンネット等から離れた位置に配置すると共に、フロントグリルB1に互いに左右に離間して配置されている。このため、インレット3に接続するケーブルは、車体Bの側面部にインレット3を設置した場合と比較して、配線し易くすることができる。
また、通常充電リッド1と急速充電リッド2とは、フロントグリルB1に互いに左右に離間して配置されているので、通常充電用インレット31と急速充電用インレット32とを、混同し難い位置に配置することができる。
【0066】
また、
図7Aに示すように、充電器6は、通常充電用インレット31及び急速充電用インレット32よりも後方に配置されており、充電器6の車幅方向外側端部は、通常充電用インレット31及び急速充電用インレット32の車幅方向中央側端部に対して、車幅方向に所定距離L1,L2以上離間している。
【0067】
かかる構成によれば、充電器6は、通常充電用インレット31及び急速充電用インレット32から車幅方向中央側に予め設定された所定の距離L1,L2以上離間して配置されている。このため、充電器6は、通常充電用インレット31及び急速充電用インレット32と、平面視して、車両前後方向で重ならないように配置されている。その結果、車両Cは、前面衝突した際に、充電器6に衝当しないようにすることができるので、充電器6を保護することができる。
【0068】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0069】
実施形態では、
図1に示すように、通常充電リッド1をフロントグリルB1の右側寄りの位置に配置し、急速充電リッド2をフロントグリルB1の左側寄りの位置に配置した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。通常充電リッド1と急速充電リッド2とは、車両Cの前面部C2に互いに左右に離間して別々に配置されてあればよい。通常充電リッド1をフロントグリルB1の左側寄りの位置に配置し、急速充電リッド2をフロントグリルB1の右側寄りの位置に配置してもよい。
また、通常充電リッド1と急速充電リッド2とは、車両Cの前面部C2のヘッドランプHL間に配置されている部材であれば、フロントグリルB1以外の車両Cの前部C1の構成部材B10に設けてもよい。
【0070】
また、
図7Aに示すように、通常充電用インレット31と急速充電用インレット32とは、車両Cの幅方向に延びる骨格部材であれば、フロントバルクヘッドB3以外の補強部材B30に取り付けてもよい。
【0071】
また、
図2に示す通常充電リッド開閉ノブ11は、その一例として、押圧操作して開閉するノブを例に挙げて説明したが、スライド式等の他のタイプのものであってもよい。
【0072】
また、急速充電リッド開放スイッチ(図示省略)は、その一例として、インストルメントパネルの下方に配置した場合を例に挙げて説明したが、車室4内であれば他の位置でもよく、その設置位置は、適宜変更してもよい。
【0073】
また、急速充電リッド開放スイッチは、その一例として、押ボタンスイッチから成るスイッチを例に挙げて説明したが、タッチスイッチ、スライドスイッチ、シーソースイッチ等の他のタイプのスイッチであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 通常充電リッド
2 急速充電リッド
3 インレット
6 充電器
31 通常充電用インレット
32 急速充電用インレット
100 車両前部構造
B1 フロントグリル
B3 フロントバルクヘット
B10 構成部材
B30 補強部材
BT 蓄電池
C 車両
C1 前部
HL ヘッドランプ
L1,L2 所定距離