(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126826
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】成形機、成形機の制御方法および成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/64 20060101AFI20240912BHJP
B29C 33/20 20060101ALI20240912BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B29C45/64
B29C33/20
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035495
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】樫内 弘幸
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AP02
4F202AP06
4F202AR02
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK52
4F202CK75
4F202CL28
4F206AP024
4F206AP064
4F206AR024
4F206JA04
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM02
4F206JN31
4F206JQ81
4F206JQ83
4F206JT05
4F206JT40
(57)【要約】
【課題】キャビティの容積変更の最適化を図る。
【解決手段】一実施の形態の成形機1は、固定金型21および可動金型22から構成され、可動金型22を固定金型21から離間させる型開力を発生させるスプリング23を備える金型20が取り付けられる型締装置4と、キャビティCが形成された状態を維持しつつ可動金型22を固定金型21に対して移動可能なタイバ移動機構60と、タイバ移動機構60を制御する制御装置5と、を有する。成形機1は、スプリング23が発生させる型開力と制御装置5によるタイバ移動機構60の制御とによってキャビティCを寸開させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型および可動金型から構成され、前記可動金型を前記固定金型から離間させる型開力を発生させる離間機構を備える金型が取り付けられる型締装置と、
キャビティが形成された状態を維持しつつ前記可動金型を前記固定金型に対して移動可能な寸開制御機構と、
前記寸開制御機構を制御する制御装置と、を有し、
前記離間機構が発生させる前記型開力と前記制御装置による前記寸開制御機構の制御とによって前記キャビティを寸開させる、成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の成形機において、
前記キャビティ内に成形材料を射出する射出装置を有する、成形機。
【請求項3】
請求項1に記載の成形機において、
前記離間機構は、前記固定金型と前記可動金型との少なくとも一方に設けられたスプリングである、成形機。
【請求項4】
キャビティが形成された状態を維持しつつ可動金型を固定金型に対して移動可能な寸開制御機構を備える成形機の制御方法であって、
金型自体が発生させる型開力を受けている前記可動金型を前記寸開制御機構による制御の下で移動させて前記キャビティを寸開させる工程を含む、成形機の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の成形機の制御方法において、
前記キャビティを寸開させる前記工程では、前記可動金型の位置,前記可動金型が取り付けられている可動盤の位置,前記可動金型が前記固定金型に対して移動される際に発生する負荷の少なくとも一つを検出して、前記寸開制御機構をクローズドループ制御する、成形機の制御方法。
【請求項6】
請求項4に記載の成形機の制御方法において、
前記キャビティを寸開させる前記工程には、前記可動金型を成形完了位置に停止させる工程と、前記可動金型を前記固定金型に近接する方向へ移動させる工程との少なくとも一方が含まれる、成形機の制御方法。
【請求項7】
キャビティが形成された状態を維持しつつ可動金型を固定金型に対して移動可能な寸開制御機構を備える成形機を用いた成形方法であって、
金型または前記金型が取り付けられた型締装置に設けられているスプリングが発生させる型開力を受けている前記可動金型を前記寸開制御機構による制御の下で移動させて前記キャビティを寸開させる工程を含む、成形方法。
【請求項8】
請求項7に記載の成形方法において、
前記キャビティを寸開させる前記工程により、前記キャビティの内部で成形材料の発泡を促進させる、成形方法。
【請求項9】
請求項8に記載の成形方法において、
発泡する前記成形材料は、前記可動金型を前記固定金型から離間させる型開力を発生させ、
前記キャビティを寸開させる前記工程では、前記型締装置が発生させる型締力を低下させるとともに、前記スプリングが発生させる前記型開力と前記寸開制御機構が発生させる型開力と発泡する前記成形材料が発生させる前記型開力の合計値を前記型締力よりも大きくする、成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機、成形機の制御方法および成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金型のキャビティ内に成形材料を供給して所望形状の樹脂成形品や他の素材の成形品(以下“成形品”と総称する場合がある。)を製造する成形機が知られている。成形機の一つは、金型が取り付けられる型締装置と、金型のキャビティ内に成形材料を射出する射出装置とを備えている。
【0003】
成形機を用いて実施される成形方法の一つとして“発泡成形”が知られている。発泡成形では、成形材料を金型のキャビティ内で発泡・固化させて発泡成形品を製造する。発泡成形に用いられる成形材料は、発泡に伴ってキャビティ内で膨張する。
【0004】
そこで、発泡成形では、成形材料をキャビティ内に射出した後に、キャビティの容積を拡大させる。例えば、キャビティが形成された状態を維持しつつ可動金型を固定金型に対して僅かに移動させる。このような可動金型の移動は、“コアバック”または“寸開”と呼ばれることがある。このため、可動金型をコアバックさせたり、寸開させたりする工程を含む成形方法は、“コアバック成形”または“寸開成形”と呼ばれることがある。つまり、発泡成形は、コアバック成形または寸開成形の一種である。
【0005】
特開2022-142715号公報(特許文献1)には、発泡成形に用いられる成形装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コアバック成形や寸開成形では、キャビティの容積変更の最適化が望まれる。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態によれば、成形機は、固定金型および可動金型から構成され、可動金型を固定金型から離間させる型開力を発生させる離間機構を備える金型が取り付けられる型締装置と、キャビティが形成された状態を維持しつつ可動金型を固定金型に対して移動可能な寸開制御機構と、寸開制御機構を制御する制御装置と、を有する。そして、キャビティは、離間機構が発生させる型開力と制御装置による寸開制御機構の制御とによって寸開される。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、キャビティの容積変更の最適化が実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施の形態の成形機の構成を示す模式図である。
【
図2B】
図1に示される金型の他の拡大断面図である。
【
図3】一実施の形態の成形方法の主な工程と可動金型の位置の推移とを示す説明図である。
【
図4】他の実施の形態の成形機の構成を示す模式図である。
【
図5B】金型の一変形例を示す他の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するために参照する全ての図面において、同一又は実質的に同一の機能を有する部材や機器などには同一の符号を付す。また、一度説明した部材や機器などについては、原則として繰り返しの説明は行わない。
【0013】
<成形機の概要>
図1は、本実施の形態の成形機1の構成を示す模式図である。成形機1は、基台2,射出装置3、型締装置4を備える射出成形機である。
【0014】
射出装置3は、加熱シリンダ10及び加熱シリンダ10の内部に設けられたスクリュを備えている。射出装置3は、加熱シリンダ10に供給された成形材料を溶融させて射出する。言い換えれば、射出装置3は、加熱シリンダ10に供給された成形材料を可塑化させて射出する。
【0015】
本実施の形態では、射出装置3は、樹脂材料を可塑化させ、可塑化した樹脂材料(溶融樹脂)を射出する。より特定的には、射出装置3は、化学発泡剤を含む溶融樹脂を射出する。
【0016】
型締装置4には、固定金型21および可動金型22から構成される金型20が取り付けられている。射出装置3から射出された溶融樹脂は、型締装置4に取り付けられている金型20のキャビティC内に供給される。別の見方をすると、射出装置3は、型締装置4に取り付けられている金型20によって形成されるキャビティC内に溶融樹脂を射出する。
【0017】
上記のように、成形機1が備える射出装置3は、化学発泡剤を含む溶融樹脂を射出する。また、成形機1が備える型締装置4には、射出装置3から射出される溶融樹脂が供給されるキャビティCを形成する金型20が取り付けられる。金型20のキャビティC内に供給された溶融樹脂は、キャビティC内で発泡・固化して発泡成形品となる。
【0018】
つまり、本実施の形態の成形機1は、発泡成形によって発泡成形品を製造可能な射出成形機である。
【0019】
<型締装置の概要>
型締装置4は、固定金型21が取り付けられる固定盤31と、可動金型22が取り付けられる可動盤32とを備えている。固定金型21は、可動盤32と対向する固定盤31の一面に取り付けられている。可動金型22は、固定盤31と対向する可動盤32の一面に取り付けられている。
【0020】
以下の説明では、固定金型21が取り付けられている固定盤31の一面を“固定金型取付面”と呼ぶ場合がある。また、可動金型22が取り付けられている可動盤32の一面を“可動金型取付面”と呼ぶ場合がある。
【0021】
型締装置4は、可動金型22が取り付けられている可動盤32を固定金型21が取り付けられている固定盤31に対して移動させることにより、後に説明する型閉,型締,寸開,強力型開,型開などを行う。
【0022】
型締装置4は、例えば、可動盤32を固定盤31に近接する方向に移動させて、固定金型21と可動金型22とを型締させる。また、型締装置4は、例えば、可動盤32を固定盤31から離間する方向に移動させて、固定金型21と可動金型22とを型開させる。
【0023】
以下の説明では、可動盤32(可動金型22)の固定盤31(固定金型21)に対する移動方向を“前後方向”と呼ぶ場合がある。また、可動盤32(可動金型22)が固定盤31(固定金型21)に近接する方向を“前方”または“型閉方向”と呼び、可動盤32(可動金型22)が固定盤31(固定金型21)から離間する方向を“後方”または“型開方向”と呼ぶ場合がある。
【0024】
さらに、固定盤31(固定金型21)に近接する方向への可動盤32(可動金型22)の移動を“前進”と呼び、固定盤31(固定金型21)から離間する方向への可動盤32(可動金型22)の移動を“後退”と呼ぶ場合がある。
【0025】
<型開閉機構>
型締装置4は、可動盤32を前後方向に移動させる2基の型開閉機構40を備えている。もっとも、
図1には、手前側に配置されている型開閉機構40のみが図示されている。実際には、図示されている型開閉機構40の背後に、同一構成の型開閉機構40が配置されている。
【0026】
それぞれの型開閉機構40は、サーボ機構である。より特定的には、型開閉機構40は、サーボモータ41,ねじシャフト42,ナット43,ロータリエンコーダ44,サーボアンプ45等から構成されている。
【0027】
サーボモータ41は、基台2の上面に設けられているブラケットに固定されている。ロータリエンコーダ44は、サーボモータ41と一体化された角位置センサであって、サーボモータ41の駆動軸の回転変位を示す検出信号を出力する。
【0028】
ねじシャフト42(ボールねじ)は、可動盤32の下面に固定されているナット43(ボールねじナット)に挿通されている。また、ねじシャフト42の両端は、基台2の上面に設けられている軸受(ボールベアリング)によって回転自在に支持されている。さらに、ねじシャフト42の一端は、サーボモータ41の駆動軸と動力伝達可能に連結されている。つまり、ねじシャフト42は、サーボモータ41によって回転駆動される。
【0029】
サーボモータ41によってねじシャフト42が回転駆動されると、可動金型22が取り付けられている可動盤32が前後方向に移動する。つまり、型開閉機構40は、可動盤32を移動させることにより、可動金型22を固定金型21に対して移動させることができる。
【0030】
別の見方をすると、型開閉機構40は、可動金型22を型閉方向に移動させて固定金型21に突き当てる力(型閉力)を発生させ得る。また、型開閉機構40は、可動金型22を型開方向に移動させて固定金型21から離間させる力(型開力)を発生させ得る。
【0031】
型開閉機構40の上記構成によれば、ロータリエンコーダ44から出力される検出信号に基づいて、可動盤32及び可動金型22の位置,移動方向,移動速度などを検出することができる。つまり、ロータリエンコーダ44は、固定盤31(固定金型21)に対する可動盤32(可動金型22)の位置を検出する位置検出手段の一つとして利用可能である。
【0032】
そこで、本実施の形態では、サーボモータ41やロータリエンコーダ44が接続されているサーボアンプ45と成形機1を統括的に制御する制御装置5とが相互に通信可能に接続されている。この結果、ロータリエンコーダ44から出力される検出信号は、サーボアンプ45を経由して制御装置5に入力される。制御装置5は、ロータリエンコーダ44から出力される検出信号に基づいて、サーボアンプ45を介してサーボモータ41をクローズドループ制御する。
【0033】
別の見方をすると、制御装置5は、型開閉機構40をクローズドループ制御することにより、可動盤32(可動金型22)の位置,移動方向,移動速度などを制御する。
【0034】
なお、型開閉機構40は、クローズドループ制御可能な流量調整バルブ(例えば、サーボバルブ)や油圧シリンダ等によって構成してもよい。また、ロータリエンコーダ44に代えて、或いはロータリエンコーダ44に加えて、リニアスケール等を用いて固定盤31(固定金型21)に対する可動盤32(可動金型22)の位置などを検出してもよい。
【0035】
<型締機構>
型締装置4は、固定金型21と可動金型22との型締を行う4基の型締機構50を備えている。もっとも、
図1には、手前側に配置されている2基の型締機構50のみが図示されている。実際には、図示されている2基の型締機構50の背後に、同一構成の型締機構50がそれぞれ配置されている。
【0036】
それぞれの型締機構50は、シリンダ51,ピストン52,型締ロッド53等から構成される油圧アクチュエータである。
【0037】
固定盤31の四隅近傍の位置に、それぞれの型締機構50のシリンダ51が設けられており、それぞれのシリンダ51内にはピストン52が往復動可能に収容されている。この結果、各シリンダ51の内部は、ピストン52によって二つの油室に区画されている。
【0038】
より特定的には、シリンダ51の内部は、ピストン52の後方に位置する型締側油室51aと、ピストン52の前方に位置する型開側油室51bとに区画されている。別の見方をすると、シリンダ51は、ピストン52を挟んで対向する二つの油室を備える復動シリンダである。
【0039】
型締ロッド53は、ピストン52の一側から後方に向かって延びる後方ロッド53aと、ピストン52の他側から前方に向かって延びる前方ロッド53bとを含んでいる。
【0040】
後方ロッド53aは、固定盤31の固定金型取付面から後方に向かって突出している。つまり、固定盤31の固定金型取付面の四隅近傍の位置から後方ロッド53aがそれぞれ突出している。それぞれの後方ロッド53aは、可動盤32に設けられている挿通孔33を貫通して可動盤32の背面(可動金型取付面と反対側の面)から後方に向かって突出している。
【0041】
前方ロッド53bは、固定盤31の前面(固定金型取付面と反対側の面)から前方に向かって突出している。つまり、固定盤31の前面の四隅近傍の位置から前方ロッド53bがそれぞれ突出している。
【0042】
上記のように、固定盤31には4本の型締ロッド53が設けられており、型締ロッド53は可動盤32に挿通されている。さらに、それぞれの型締ロッド53は、可動盤32を固定盤31に対して移動可能に支持している。別の見方をすると、型締ロッド53は、可動盤32を固定盤31に対して移動可能に支持する軸部材である。つまり、本実施の形態では、型締ロッド53がタイバに相当する。そこで、以下の説明では、型締ロッド53を“タイバ53”と呼ぶ場合がある。
【0043】
タイバ53の一部には、複数の締結溝53cが設けられている。より特定的には、可動盤32に挿通されている後方ロッド53aの軸方向一方側に複数の締結溝53cが設けられている。
【0044】
<締結機構>
可動盤32の背面側には、各タイバ53の挿通部分に対応して締結機構54が配置されている。それぞれの締結機構54は、ロック部材である一対のハーフナット55と一対のハーフナット56とを備えている。ハーフナット55のタイバ53の締結溝53cと対向する部分には、締結突起55aが形成されている。締結機構54は、ハーフナット開閉用アクチュエータ57を備えている。ハーフナット55は、ハーフナット開閉用アクチュエータ57により、タイバ53に対して進退される。なお、ハーフナット55は、可動盤32に対しては前後方向に相対移動不能に保持されている。
【0045】
ハーフナット56のタイバ53の締結溝53cと対向する部分には、締結突起56aが形成されている。ハーフナット56は、ハーフナット開閉用アクチュエータ57により、タイバ53に対して進退される。
【0046】
また、締結機構54は、ハーフナットロック用アクチュエータ58を備えている。ハーフナット56は、ハーフナット55に向けてタイバ53の軸方向にも移動可能であり、ハーフナットロック用アクチュエータ58によって同方向に移動される。なお、ハーフナット開閉用アクチュエータ57及びハーフナットロック用アクチュエータ58は、油圧シリンダを用いたものであっても電動モータを用いたものでもよい。
【0047】
一対のハーフナット55がハーフナット開閉用アクチュエータ57によって互いに近接する方向に駆動されると、それぞれのハーフナット55が備える締結突起55aがタイバ53の締結溝53cに嵌り込む。また、一対のハーフナット56がハーフナット開閉用アクチュエータ57によって互いに近接する方向に駆動されると、それぞれのハーフナット56が備える締結突起56aがタイバ53の締結溝53cに嵌り込む。
【0048】
ここで、締結突起55a,56aの幅は、タイバ53に設けられている締結溝53cの幅よりも僅かに小さい。このため、締結突起55a,56aが締結溝53cに嵌り込んだときに、両者の間に僅かな隙間が発生する場合がある。もっとも、締結突起55a,56aと締結溝53cとの幅が上記のように異なることによって、締結突起55a,56aと締結溝53cとの衝突やカジリの発生が回避される。
【0049】
そして次に、ハーフナットロック用アクチュエータ58によってハーフナット56がハーフナット55に向けて駆動されると、隣接する締結溝53cの間の凸部分が、締結突起55aと締結突起56aとに挟まれて可動盤32とタイバ53とがロックされる。言い換えれば、可動盤32とタイバ53とが一体化され、前後方向への相対移動が規制される。
【0050】
可動盤32とタイバ53とがロックされている状態でシリンダ51の型締側油室51aに作動油が供給されると、可動盤32がタイバ53に引っ張られて前進する。一方、可動盤32とタイバ53とがロックされている状態でシリンダ51の型開側油室51bに作動油が供給されると、可動盤32がタイバ53に押し戻されて後退する。
【0051】
したがって、型締機構50は、型開閉機構40と同じく、可動金型22が取り付けられている可動盤32を移動させることにより、可動金型22を固定金型21に対して移動させることができる。別の見方をすると、型締機構50も型閉力および型開力を発生させ得る。
【0052】
さらに、型締機構50は、固定金型21に突き当たっている可動金型22を僅かに前方(型閉方向)に移動させて固定金型21と可動金型22とを緊締させる力(型締力)を発生させ得る。また、型締機構50は、固定金型21に緊締されている可動金型22を僅かに後方(型開方向)に移動させて固定金型21と可動金型22とを離間させる力(強力型開力/離型力)を発生させ得る。
【0053】
もっとも、型開閉機構40によって実現される可動盤32の移動ストロークは、型締機構50によって実現される移動ストロークよりも大きい(長い)。そこで、より大きな移動ストロークを必要とする型開や型閉には、専ら型開閉機構40が使われる。一方、大きな移動ストロークを必要としない型締や強力型開には、専ら型締機構50が使われる。
【0054】
<タイバ移動機構>
型締装置4は、型開閉機構40や型締機構50とは独立してタイバ53又は可動盤32を前後に移動させ得る4基のタイバ移動機構60を備えている。もっとも、
図1には、手前側に配置されている2基のタイバ移動機構60のみが図示されている。実際には、図示されている2基のタイバ移動機構60の背後に、同一構成のタイバ移動機構60がそれぞれ配置されている。
【0055】
それぞれのタイバ移動機構60は、一対のシリンダ61と、それぞれのシリンダ61に対して伸縮可能なタイバ移動ロッド62と、を含む油圧アクチュエータである。
【0056】
それぞれのタイバ移動機構60を構成しているシリンダ61及びタイバ移動ロッド62は、固定盤31の前面から突出している前方ロッド53bの径方向両側に、前方ロッド53bと平行に配置されている。
【0057】
さらに、それぞれのタイバ移動ロッド62の先端は、前方ロッド53bの先端が連結されているプレート63に連結されている。つまり、タイバ移動ロッド62及び前方ロッド53bは、共通のプレート63に連結されている。
【0058】
シリンダ61は、シリンダ51と類似する基本構造を有する復動シリンダであって、ピストンによって区画された型締側油室および型開側油室を備えている。シリンダ61の油室は、クローズドループ制御によって流量を制御可能なバルブ64を含む油圧装置6に接続されている。
【0059】
油圧装置6によってシリンダ61の型締側油室に作動油が供給されると、タイバ移動ロッド62が伸びる(タイバ移動ロッド62がシリンダ61から押し出される)。一方、油圧装置6によってシリンダ61の型開側油室に作動油が供給されると、タイバ移動ロッド62が縮む(タイバ移動ロッド62がシリンダ61に引き込まれる)。
【0060】
タイバ移動ロッド62が伸びると、プレート63が前方に押し出される。すると、プレート63に連結されている前方ロッド53bを含むタイバ53が前方に引っ張られる。このとき、可動盤32とタイバ53とがロックされていれば、タイバ53と一緒に前進する力を可動盤32に付与することができる。
【0061】
一方、タイバ移動ロッド62が縮むと、プレート63が後方に引き寄せられる。すると、プレート63に連結されている前方ロッド53bを含むタイバ53が後方に押し戻される。このとき、可動盤32とタイバ53とがロックされていれば、可動盤32は、タイバ53と一緒に後退する。または、タイバ53と一緒に後退する力を可動盤32に付与することができる。
【0062】
したがって、タイバ移動機構60は、型開閉機構40や型締機構50と同じく、可動金型22が取り付けられている可動盤32を移動させることにより、可動金型22を固定金型21に対して移動させるか、または力を付与することができる。別の見方をすると、タイバ移動機構60も型閉力および型開力を発生させ得る。
【0063】
なお、いずれかの機構が発生させる型閉力は、他のいずれかの機構が発生させる型開力を受けている可動金型22に対して、型開方向への移動を抑制する力(制動力)として作用し得る。また、いずれかの機構が発生させる型開力は、他のいずれかの機構が発生させる型開力を受けている可動金型22に対して、型開方向への移動を促進させる力(補助力)として作用し得る。
【0064】
固定盤31とプレート63との間には、リニアスケール等の位置センサ65が設けられている。既述のとおり、プレート63にはタイバ53の一端が連結されている。したがって、位置センサ65から出力される検出信号に基づいて、固定盤31に対するタイバ53の位置を検出することができる。そして、可動盤32とタイバ53とがロックされていれば、両者は一体的に移動するので、位置センサ65から出力される検出信号に基づいて、可動盤32の位置,移動方向,移動速度などを検出することができる。つまり、位置センサ65は、可動盤32(可動金型22)の位置を検出する位置検出手段の他の一つとして利用可能である。
【0065】
なお、それぞれのタイバ移動機構60を構成するシリンダ61やタイバ移動ロッド62の数は限定されない。また、シリンダ61は、固定盤31に内蔵されていてもよい。
【0066】
タイバ移動機構60は、型開閉機構40と同種の電動アクチュエータに置換してもよい。また、油圧アクチュエータや電動アクチュエータと、トグル機構やクサビ機構とを併用してタイバ移動機構60を構成してもよい。
【0067】
<金型>
既述のとおり、金型20は、固定金型21と可動金型22とから構成される。
図2A,
図2Bは、
図1に示される金型20の拡大断面図である。これらの図面に示されるように、固定金型21はキャビ型であり、可動金型22はコア型である。つまり、金型20は、インロー金型である。
【0068】
インロー金型である金型20では、キャビティCが形成された状態を維持しつつ可動金型22を固定金型21に対して移動させることができる。別の見方をすると、金型20は、キャビティCの閉鎖状態を保持したままでキャビティCの容積を拡縮させることができる。
【0069】
金型20は、可動金型22を固定金型21から離間させる型開力を発生させる離間機構を備えている。具体的には、金型20は、固定金型21と可動金型22との間に位置するスプリング23を備えている。
【0070】
より特定的には、スプリング23の一端側(基端側)が固定金型21のパーティング面やパーティング面に設けられた取付け穴に取り付けられている。一方、スプリング23の他端側(先端側)は、可動金型22のパーティング面と対向している。なお、可動金型22のパーティング面と対向するスプリング23の先端に、プレートやブロック等を取り付けてもよい。
【0071】
スプリング23の先端は、キャビティCの厚みが成形品の最終肉厚よりも厚い状態で可動金型22のパーティング面に接触する。別の見方をすると、スプリング23の先端は、固定金型21と可動金型22とが突き当たる前に、可動金型22に接触する。
【0072】
先端が可動金型22に接触したスプリング23は、可動金型22の型閉方向への移動に伴って次第に圧縮され、弾性復元力を発揮する。
【0073】
圧縮されたスプリング23が発揮する弾性復元力は、可動金型22に対して、当該可動金型22を型開方向に移動させる力として作用する。つまり、スプリング23は、可動金型22を固定金型21から離間させる力(型開力または型開力の一部)を発生させ得る。別の見方をすると、スプリング23を備えている金型20は、それ自体が型開力を発生させ得る。
【0074】
以下の説明では、スプリング23が発生させる型開力を“スプリング力”と呼んで、他の型開力と区別する場合がある。
【0075】
なお、固定金型21がコア型であり、可動金型22がキャビ型であってもよい。もっとも、金型20はインロー金型に限られない。金型20は、例えば、
図5A,
図5Bに示されるような額縁金型(パーティング面当接タイプのキャビティ容積が変更可能な金型)であってもよい。
【0076】
スプリング23は、可動金型22に設けられていてもよい。また、スプリング23の数は特に限定されない。もっとも、型開力のバランスの観点からは、4つ以上のスプリング23を設けることが好ましい。
【0077】
<制御方法および成形方法>
次に、成形機1の制御方法と成形機1を用いた成形方法とについて説明する。具体的には、制御方法および成形方法の1サイクルについて、主に
図3を参照しながら説明する。
【0078】
図3には、1サイクル中に射出装置3及び型締装置4によって実行される成形方法の主な工程と、1サイクル中の可動金型22の位置の推移とが示されている。なお、
図3に太い実線で示されている可動金型22の位置は、固定金型21に対する位置である。ただし、
図3では、一部の工程における可動金型22の位置が誇張して示されている。
【0079】
<<型閉工程>>
成形機1を構成している射出装置3や型締装置4は、制御装置5からサーボアンプ45や油圧装置6に送られる指令信号に基づいて作動する。
【0080】
金型20の型締装置4への取り付け等を含む事前準備が完了すると、制御装置5から型開閉機構40のサーボアンプ45に指令信号が送信される。指令信号を受信したサーボアンプ45は、サーボモータ41を作動させてねじシャフト42を回転させる。すると、可動盤32が型閉方向へ移動し、可動盤32に取り付けられている可動金型22が固定盤31に取り付けられている固定金型21に近接する。
【0081】
可動金型22が
図3中の符号(P1)で示される位置(ばね力発生位置)まで移動すると、可動金型22のパーティング面が固定金型21から突出しているスプリング23の先端に接触する。既述のとおり、可動金型22のパーティング面は、固定金型21のパーティング面に接触する前にスプリング23の先端に接触する。
【0082】
型閉方向への可動盤32の移動はその後も継続される。よって、可動金型22は、スプリング23を圧縮しながら固定金型21にさらに近接する。そして、可動金型22が
図3中の符号(P2)で示される位置(型閉完了位置)まで移動すると、固定金型21と可動金型22との間にキャビティCが形成される。もっとも、可動金型22のパーティング面が固定金型21のパーティング面と直接接触しないまま型閉が完了してキャビティCが形成される場合もある。
【0083】
固定金型21と可動金型22とが型閉されると、サーボモータ41によって可動盤32(可動金型22)の位置が保持される。その後、締結機構54が作動され、締結突起55a,56aと締結溝53cとの間の隙間が解消された状態で可動盤32とタイバ53とがロックされる。
【0084】
<<増圧工程>>
次に、制御装置5から油圧装置6に指令信号が送信される。指令信号を受信した油圧装置6は、型締機構50のシリンダ51に作動油を供給する。より特定的には、油圧装置6は、シリンダ51の型締側油室51aに作動油を供給して、型締側油室51aの内圧を上昇させる。このとき、型開側油室51bから作動油が回収されることもある。
【0085】
型締側油室51aの内圧上昇に伴って、可動盤32がロックされているタイバ53が型閉方向に引っ張られる。油圧装置6は、型締側油室51aの内圧を所定圧力まで上昇させる。すると、可動金型22は、
図3中の符号(P2’)で示される位置(型締完了位置)まで僅かに圧縮される。この結果、固定金型21と可動金型22とが緊締(型締)される。
【0086】
型締側油室51aの内圧が所定圧力まで上昇したことが確認されると、増圧工程を終了させて型締保持工程に移行する。
【0087】
<<型締保持工程>>
型締保持工程では、射出装置3から金型20のキャビティC内に成形材料が射出される。より特定的には、化学発泡剤を含む溶融樹脂がキャビティC内に射出される。その後、溶融樹脂の化学発泡によりキャビティ内圧が高まる。すると、可動金型22を固定金型21から離間させる力(型開力)がキャビティC内で発生する。
【0088】
既述のとおり、ばね力発生位置(P1)を通過した後の可動金型22は、スプリング23が発生させる型開力(スプリング力)を受け続けている。したがって、型締保持工程の金型20には、溶融樹脂の発泡によって生じる型開力と、圧縮されたスプリング23が発生させる型開力とが内在している。
【0089】
もっとも、型締保持工程では、型締機構50の型閉力が溶融樹脂の発泡によって生じる型開力および圧縮されたスプリング23が発生させる型開力を上回っている。よって、これら型開力によって可動金型22が型開方向に移動することはない。つまり、キャビティCの容積が拡大されることはない。
【0090】
なお、以下の説明では、溶融樹脂の発泡によって生じる型開力を“発泡力”と呼んで、スプリング力を含む他の型開力と区別する場合がある。
【0091】
<<圧抜工程>>
溶融樹脂の射出開始から所定時間が経過すると、圧抜工程が開始される。具体的には、油圧装置6は、シリンダ51の型締側油室51aから作動油の圧力を回収し、型締機構50の型閉力を低下させる。
【0092】
<<コアバック成形工程>>
圧抜工程が開始されてから必要に応じた所定時間が経過すると、コアバック成形工程が開始される。例えば、圧抜工程開始と同時に作動させたタイマが所定時間を計時すると、コアバック成形工程が開始される。つまり、本実施の形態では、圧抜工程が終了する前にコアバック成形工程が開始される。本実施の形態では、実際に可動金型22が移動開始した後の工程をコアバック成形工程と呼ぶが、実際のコアバック成形工程の準備は圧抜開始と同時に開始されていると言うこともできる。
【0093】
本実施の形態のコアバック成形工程では、制御装置5や油圧装置6によってタイバ移動機構60が次のように制御される。まず、制御装置5は、圧抜工程が開始されてから所定時間が経過すると、油圧装置6に指令信号を送信する。指令信号を受信した油圧装置6は、バルブ64を作動させ、タイバ移動機構60のシリンダ61の型開側油室に作動油を供給する。つまり、タイバ移動機構60に型開力を発生させさせる。
【0094】
この結果、金型20に内在している型開力(発泡力およびスプリング力)にタイバ移動機構60が発生させる型開力を加えた合計値が、圧抜により低下していく型締機構50の型閉力に可動盤32等に作用する静的摩擦力を加えた合計値を上回ると、可動盤32(可動金型22)が型開方向へ移動を開始する。即ち、金型20に内在している型開力が小さく、重量物である可動盤32等の移動開始時に作用する静的摩擦力の影響が大きい場合であっても、タイバ移動機構60に型開力を発生させることにより、応答性よくコバック成形工程を立ち上げることが可能となる。
【0095】
そして、キャビティが寸開されるとともにキャビティCの容積が拡大されると、溶融樹脂の発泡が促進される。
【0096】
本実施の形態のコアバック成形工程では、コアバック成形工程によりキャビティCが寸開される際に、タイバ移動機構60単独では型開速度や型開力が不足する場合に、金型20のスプリング力により所望の型開速度または型開力を得ることができる。言い換えれば相対的にスプリング力が大きいことを利用すれば、タイバ移動機構60の仕様速度を超えた高速でコアバック成形工程の寸開速度を制御することができる。そのため過剰な駆動力を備えたタイバ移動機構60を準備する必要がない。
【0097】
ここで、発泡力やスプリング力を何ら制御しないと、成り行きでキャビティCの寸開が進行してしまう場合がある。別の見方をすると、成り行きで溶融樹脂の発泡が進行してしまう場合がある。
【0098】
そこで、本実施の形態のコアバック成形工程では、制御装置5によって制御されるタイバ移動機構60の速度制御の下で可動盤32(可動金型22)を型開方向に移動させる。言い換えれば、制御装置5によって速度制御されるタイバ移動機構60の制御の下でキャビティCを寸開させる。
【0099】
具体的には、タイバ移動機構60によって可動金型22の移動を制御する。より特定的には、位置センサ65によって検出されるタイバ53の位置が速度の指令信号に合致するように、バルブ64をクローズドループ制御する。なお、可動金型22が取り付けられている可動盤32とタイバ53とが締結突起55a,56aと締結溝53cとの間の隙間が解消された状態でロックされている場合、タイバ53の位置は、可動盤32や可動金型22の位置に相当する。
【0100】
そこで、スプリング力が相対的に小さいために、速度の指令信号に対して位置センサ65によって検出されるタイバ53の位置が遅れるようならば、タイバ移動機構60のシリンダ61の型開側油室に作動油を供給し、タイバ移動機構60の型開力を増大させる。このときのタイバ移動機構60の型開力は、発泡力やスプリング力を受けている可動金型22に対し、型開方向への移動を促進させる補助力として作用する。
【0101】
一方、スプリング力が相対的に大きいために、速度の指令信号に対して位置センサ65によって検出されるタイバ53の位置が進むようならば、タイバ移動機構60のシリンダ61の型閉側油室に作動油を供給し、タイバ移動機構60に型閉力を発生させさせる。或いはタイバ移動機構60のシリンダ61の型閉側油室からの作動油の排出を抑制する。このときのタイバ移動機構60の型閉力は、発泡力やスプリング力を受けている可動金型22に対し、型開方向への移動を抑制する制動力として作用する。
【0102】
この際、タイバ移動機構60が発生させる型閉力(制動力)を使って、可動金型22の移動速度または移動位置を補正してもよい。例えば、速度の指令信号に対して位置センサ65によって検出されるタイバ53の位置が補正を必要とする程度に進み過ぎてしまった場合には、より大きな型閉力をタイバ移動機構60に発生させさせて、可動金型22を型閉方向へ戻してもよい。言い換えれば、発泡力やスプリング力によって過剰に移動してしまった可動金型22の位置をタイバ移動機構60の型閉力を使って補正してもよい。
【0103】
または型締機構50の型締側油室51aの作動油の圧力の低下の程度を抑制することによっても可動金型22の移動速度または移動位置を補正することもできる。
【0104】
そして可動金型22が符号(P3)で示される所定の位置まで型開されるとタイバ移動機構60の駆動を停止させて可動金型22の型開方向への移動を停止させる。このことにより発泡成形品の板厚を所定の値に制御することができる。なお、型開方向のスプリング力は、符号P3で示される位置に可動金型22が移動したときに残存していてもよく、残存していなくてもよい。
【0105】
なお、タイバ移動機構60をサーボモータ等の電動機を備える電動アクチュエータに置換してもよいことは既述のとおりである。この場合も上述のクローズドループ制御は実行可能である。より特定的には、位置センサ65やサーボモータのロータリエンコーダの検出結果に基づいて上述のクローズドループ制御を実行することができる。
【0106】
本実施の形態では、発泡力やスプリング力を受けている可動金型22に対して補助力や制動力として作用する型開力や型閉力を発生可能な複数のタイバ移動機構60が設けられている。よって、それぞれのタイバ移動機構60を個別に独立して制御することにより、可動金型22の固定金型21に対する平行度を保つこともできる。
【0107】
本実施の形態では、圧抜工程が終了する前にコアバック成形工程が開始される。そのため応答性が向上し、サイクル時間の短縮が図れる。もっとも、圧抜工程が終了してからコアバック成形工程を開始してもよい。
【0108】
<<冷却工程>>
その後、可動金型22がばね力発生位置(P1)まで移動すると、冷却工程が開始される。冷却工程の間、型締装置4は、可動金型22をばね力発生位置(P1)に保持する。一方、射出装置3は、次の射出に備えて計量(次に射出する溶融樹脂の充填)を行う。
【0109】
もっとも、発泡成形では、冷却工程中に成形品が収縮する場合がある。このような場合、タイバ移動機構60を制御して調整力を発生させさせてもよい。つまり、タイバ移動機構60を使って可動金型22の位置を型閉方向に向けて補正してもよい。
【0110】
<<強力型開工程>>
冷却工程が終了すると、強力型開工程に移行する。強力型開工程では、油圧装置6よって型締機構50のシリンダ51の型開側油室51bに作動油が供給される。この結果、可動金型22は、型開閉機構40やタイバ移動機構60が発生させ得る型開力よりも強力な型開力によって型開方向に移動される。
【0111】
このとき、スプリング力が残存していれば、可動金型22は、型締機構50の型開力に型開方向へのスプリング力が加わって型開方向に移動される。
【0112】
<<型開工程>>
強力型開工程が終了すると、型開工程に移行する。型開工程では、サーボアンプ45によってサーボモータ41が作動され、ねじシャフト42が回転駆動される。この結果、可動盤32が型開方向に大きく移動され、可動金型22が型開完了位置(成形品取出位置)まで移動される。
【0113】
なお、型開工程の開始前に可動盤32とタイバ53とのロックが解除される。このとき、タイバ53(締結溝53c)とロック部材であるハーフナット55(締結突起55a)、ハーフナット56(締結突起56a)との位置関係が調整されることがある。より特定的には、締結溝53cと締結突起55a,56aとのカジリを解消するために、タイバ移動機構60によってタイバ53が前後に僅かに移動されることがある。
【0114】
可動金型22が型開完了位置まで移動した後、可動金型22の内部に設けられているエジェクタピンが駆動され、成形品が押し出される。押し出された成形品は、取出し装置に保持され、搬送される。
【0115】
<制御方法の変形例>
本実施の形態のコアバック成形工程では、タイバ移動機構60を速度制御することにより、キャビティCの寸開の最適化が図られている。しかし、キャビティCの寸開の最適化は、例えば、次のような制御によっても達成し得る。
【0116】
<<圧力を検出しての速度制御>>
本実施の形態のコアバック成形工程では、位置情報に基づいてタイバ53(可動盤32,可動金型22)の速度制御が行われる。しかし、位置情報に代えて、または位置情報に加えて、圧力情報を利用して速度制御を行うこともできる。
【0117】
例えば、位置センサ65によって検出される位置と、タイバ移動機構60のシリンダ61の型開側油室に接続されている管路に取り付けた油圧センサによって検出される油圧と、に基づいて速度制御を行うことができる。
【0118】
より具体的には、位置センサ65によって検出される位置が所望の位置と合致するように、タイバ移動機構60のシリンダ61の型開側油室の油圧を制御する。また、より高度な制御が求められる場合には、タイバ移動機構60のシリンダ61の型閉側油室に接続されている管路にも油圧センサを取り付ける。
【0119】
そして、速度の指令信号に対して位置センサ65によって検出されるタイバ53の位置が遅れるようならば、型開側油室の油圧を減圧してタイバ53の移動を促進する。一方、速度の指令信号に対して位置センサ65によって検出されるタイバ53の位置が進むようならば、型閉側油室の油圧を増圧してタイバ53の移動を抑制する。
【0120】
<<圧力のみを検出しての圧力制御>>
上記のような速度制御に代えて圧力制御を実行してもよい。例えば、タイバ移動機構60のシリンダ61の油室に接続されている管路に取り付けた油圧センサによって検出される油圧が指令値と合致するように制御してもよい。
【0121】
この場合、位置センサ65の検出結果は利用されない。そのため、圧力制御は、成形品厚みよりもキャビティ内圧をより重視して行われる発泡成形(例えば、超臨界発泡成形やカウンタプレッシャー成形)で使用されることがある。
【0122】
なお、圧力制御のみの場合、樹脂の発泡が成り行きで進行する。よって、最終的な成形品厚みの精度を確保できない場合もある。そこで、位置制御の要素を必要に応じて取り入れてもよい。
【0123】
<<力や負荷を検出しての力制御>>
タイバ移動機構60に電動モータが使用されている場合には、油圧の検出結果に基づくクローズドループ制御に代えて、力や負荷の検出結果に基づくクローズドループ制御を行ってもよい。例えば、タイバ53に取り付けた歪センサや、型閉時に力が加わる部分に取り付けたロードセルの検出値に基づいてタイバ移動機構60をクローズドループ制御してもよい。
【0124】
また、サーボモータのモータ電流や負荷トルクによっても、タイバ53にどの程度の型閉力や型開力が作用しているのかを検出することができる。よって、モータ電流や負荷トルクの数値に基づいてタイバ移動機構60をクローズドループ制御してもよい。
【0125】
<<キャビティ内圧を検出しての圧力制御>>
コアバック成形工程で金型20に作用する複数の型開力のうち、発泡力をタイバ移動機構60の制御条件において優先させてもよい。
【0126】
例えば、固定金型21と可動金型22との少なくとも一方に、キャビティCの内圧を検出可能な樹脂圧センサを取り付ける。そして、樹脂圧センサによって検出されるキャビティCの内圧が所望の圧力となるように、タイバ移動機構60をクローズドループ制御してもよい。
【0127】
<<コアバック成形工程のティーチング制御>>
金型22が備えるスプリング23のスプリング力が一定以上の型開力を備えており、タイバ移動機構60を用いないでもコアバック成形工程の寸開制御が行える場合、次のようなティーチング制御を行うようにしてもよい。ティーチング制御によるティーチングは、原則としてキャビティC内に溶融樹脂が射出されないドライ運転により行う。より具体的には、ティーチングでは、圧抜工程中または圧抜工程後にタイバ移動機構60を駆動させず、型締機構50の型閉力の低下とともにスプリング力のみにより可動金型22を型開(寸開)させる。そして、このときの可動金型22の移動速度を位置センサ65により検出し、制御装置5に取り込む。
【0128】
上記のようにしてティーチングが終了すると、溶融樹脂が射出される実際の成形時にティーチングデータを用いたティーチング制御が行われる。ティーチング制御では、スプリング力のみを用いた型開(寸開)時の可動金型22の移動速度(ティーチングされた移動速度)に対して実際の発泡成形時の可動金型22の移動速度を更に増速させたい場合、制御装置5は、タイバ移動機構60のシリンダ61に対して移動速度が加算されるような速度指令信号を与え、所望の寸開制御を実現する。また、可動金型22の移動速度を減速させたい場合も同様に、制御装置5は、タイバ移動機構60のシリンダ61に対して速度が減算されるような速度指令信号を与え、所望の可動金型22の移動速度による寸開制御を実現する。なお、減速させたい場合には、速度制御に伴いタイバ移動機構60のシリンダ61または型締機構50のシリンダ51に制動力も含めた型閉方向の力が付与されることになる。
【0129】
<<制御の複合化>>
これまでは、コアバック成形工程が一つの制御で完結する例について説明した。しかし、コアバック成形工程では、複合化された複数の制御が実行されてもよい。
【0130】
例えば、一回のコアバック成形工程の中で、速度制御の要素を含む制御と、圧力制御の要素を含む制御とが実行されてもよい。
【0131】
また、一回のコアバック成形工程の前半では可動金型22の型開速度が速く制御され、後半では可動金型22の型開速度が遅く制御されてもよい。また、一回のコアバック成形工程の前半では圧力に基づく制御が実行され、後半では位置に基づく制御が実行されてもよい。
【0132】
なお、上記したコアバック成形工程におけるタイバ移動機構60の全ての制御例は、それぞれのタイバ移動機構60を個別に独立して制御することにより、固定金型21に対する可動金型22の平行度を調整したり、各部の発泡力を調整したりすることもできる。このことにより、スプリング力のみによる型開では実現できなかった高精度なコアバック制御を実現することも可能となる。
【0133】
<寸開制御機構>
本実施の形態では、タイバ移動機構60の制御の下でキャビティCの寸開が行われる。つまり、タイバ移動機構60は、キャビティCが形成された状態を維持しつつ可動金型22を固定金型21に対して移動可能な寸開制御機構である。
【0134】
さらに、寸開制御機構であるタイバ移動機構60は、制御装置5によってクローズドループ制御され、キャビティCの容積変更が最適化されるように、発泡力やスプリング力を受けている可動金型22の移動を制御する。
【0135】
もっとも、本実施の形態の成形機1は、タイバ移動機構60と同様の型開力や型閉力を発生させ得る型開閉機構40及び型締機構50を備えている。さらに、型開閉機構40及び型締機構50は、タイバ移動機構60と同じく制御装置5によって制御される。したがって、型開閉機構40や型締機構50を寸開制御機構として利用することもできる。
【0136】
例えば、圧抜工程で型締機構50のシリンダ51の降圧速度、降圧停止タイミング等を制御することにより、発泡力およびスプリング力を受けて型開方向に移動する可動金型22の位置(速度を含む)を制御することができる。型締機構50のシリンダ51は、タイバ移動機構60のシリンダ61よりも強い型閉力を発揮し得る。したがって、型締機構50を寸開制御機構として利用すれば、スプリング力が非常に強い場合であっても、可動金型22の位置を確実に制御することができる。
【0137】
また、型開閉機構40のサーボモータ41の回転速度、回転角度などをサーボ制御することにより、発泡力およびスプリング力を受けて型開方向に移動する可動金型22の位置(速度を含む)を制御することもできる。したがって、型開閉機構40を寸開制御機構として利用すれば、可動金型22の位置を高精度に制御することができる。
【0138】
さらに、型開閉機構40を寸開制御機構として利用した場合、締結機構54を次に記載する締結機構を含むどのような締結機構に置換した場合であっても、タイバ53(締結溝53c)とロック部材(締結突起)との間の隙間による影響を受けることなく、可動金型22を制御することができる。
<締結機構の変形例>
本実施の形態の締結機構54は、タイバ53(締結溝53c)に対して一対のハーフナットのみが進退される締結機構に置換可能である。この場合、締結機構のハーフナットが備える締結突起がタイバ53の締結溝53cに嵌り込んでも、可動盤32とタイバ53とは完全に一体化されず、締結突起と締結溝53cとの間の隙間は解消されない。
【0139】
本実施の形態の締結機構54が本変形例の締結機構に置換された場合も、コアバック成形工程では、金型20に内在している型開力(発泡力およびスプリング力)にタイバ移動機構60が発生させる型開力を加えた合計値が、圧抜工程によって低下している型締機構50の型閉力に可動盤32等に作用する静的摩擦力を加えた合計値を上回ると、可動盤32(可動金型22)が型開方向へ移動を開始する。
【0140】
但し、締結機構54が本変形例の締結機構に置換された成形機1を用いる場合には、コアバック成形工程の開始時にタイバ移動機構60のシリンダ61の型閉側油室に作動油を供給し、タイバ移動機構60に型閉力を発生させさせる。またはタイバ移動機構60のシリンダ61の型閉側油室からの作動油の排出を抑制する。そのことにより、型締工程でのハーフナットの型締時接触面とタイバ53の締結溝53cの型締時接触面との接触状態を維持したままコアバック成形工程を行うことができる。即ち、締結突起と締結溝53cとの間に隙間があっても該隙間の影響を受けないでコアバック成形工程を行うことができる。
次に、締結機構54が本変形例の締結機構に置換された成形機1を用いたコアバック成形工程の別の例について説明する。この場合、成形機1は、圧抜工程が完了してからコアバック成形工程が完了するまでの間に、少なくとも1基、より望ましくは対角方向の2基ないし4基のタイバ移動機構60のシリンダ61を作動させ、ハーフナットの締結突起の型締時接触面とタイバ53の締結溝53cの型締時接触面との接触状態を解消させる。そしてタイバ53を上記隙間の分だけ空走移動させ、ハーフナットの締結突起の強力型開時接触面とタイバ53の締結溝53cの強力型開時接触面とを接触させる。このことにより、本変形例の締結機構を備えた成形機1は、コアバック成形工程において、少なくとも1基、より望ましくは対角方向の2基ないし4基のタイバ移動機構60により可動盤32(可動金型22)に対して型開力を及ぼすことも可能となる。
【0141】
<型締装置の変形例>
図4は、他の実施の形態の成形機1の構成を示す模式図である。
図4に示されている成形機1は、
図1に示されている成形機1が備える射出装置3と同一または実質的に同一の射出装置3を備える射出成形機である。
【0142】
一方、
図4に示されている成形機1は、
図1に示されている成形機1が備える型締装置4とは構造が異なる型締装置4を備えている。より特定的には、
図4に示されている型締装置4は、トグル機構70及び反抗シリンダ80を備えている。別の見方をすると、
図4に示されている型締装置4は、反抗シリンダ80を備えるトグル型型締装置である。
【0143】
トグル機構70は、型締ハウジング71,リンク72,クロスヘッド73,ねじシャフト74等から構成されている。なお、トグル機構70は二組のリンク72を備えているが、
図4には手前側に配置されている一組のリンク72のみが図示されている。実際には、図示されている一組のリンク72の背後に、同一構成のリンク72がもう一組配置されている。
【0144】
ねじシャフト74は、制御装置5によって制御される電動モータ75によって回転駆動される。そして、ねじシャフト74が回転駆動されると、クロスヘッド73が前後に移動する。クロスヘッド73が前後に移動すると、それぞれのリンク72が伸縮する。より特定的には、クロスヘッド73が型締ハウジング71に近接する方向に移動すると(クロスヘッド73が後退すると)、リンク72が縮まる(屈曲する)。一方、クロスヘッド73が型締ハウジング71から離間する方向に移動すると(クロスヘッド73が前進すると)、リンク72が伸びる(伸張する)。
【0145】
そして、リンク72が縮まると、可動盤32が後退し、可動盤32に取り付けられている可動金型22が固定盤31に取り付けられている固定金型21から離間する。一方、リンク72が伸びると、可動盤32が前進し、可動盤32に取り付けられている可動金型22が固定盤31に取り付けられている固定金型21に近接する。
【0146】
つまり、トグル機構70は、型開閉機構40や型締機構50と同じく制御装置5によって制御される機構であって、型閉力および型開力を発生し得る。よって、トグル機構70は、コアバック成形工程で寸開制御機構として利用し得る。
【0147】
型締装置4には、4本の反抗シリンダ80が設けられているが、
図4には手前側に配置されている2本の反抗シリンダ80のみが図示されている。実際には、図示されている2本の反抗シリンダ80の背後に、同一構成の反抗シリンダ80がそれぞれ設けられている。
【0148】
それぞれの反抗シリンダ80は、固定盤31の固定金型取付面に取り付けられたシリンダ81と、シリンダ81に対して伸縮可能なロッド82とを含む油圧シリンダである。コアバック成形工程の開始前に反抗シリンダ80のロッド82を伸長させ停止させる位置は、金型20の型厚やキャビティ形成位置に応じて調整が可能である。そしてロッド82の先端は、固定金型21と可動金型22とが型閉された際に、可動盤32の可動金型取付面に接触する。
【0149】
反抗シリンダ80のシリンダ81に作動油が供給されると、ロッド82がシリンダ81から押し出される。この結果、可動金型22が取り付けられている可動盤32が後方に押される。つまり、制御装置5及び油圧装置6によって制御される反抗シリンダ80は、タイバ移動機構60と同様の型開力を発生し得る機構であって、コアバック成形工程で寸開制御機構として利用し得る。
【0150】
なお、反抗シリンダ80の本数は4本に限られず、2本やそれ以外の本数であってもよい。もっとも、固定盤31の四隅(近傍の位置を含む)に反抗シリンダ80が設けられている本実施の形態では、反抗シリンダ80を使って固定金型21に対する可動金型22の平行度を維持することができる。
【0151】
反抗シリンダ80のシリンダ81は、可動盤32に取り付けられていてもよい。この場合、反抗シリンダ80のロッド82は、固定金型21と可動金型22とが型閉された際に、固定盤31の固定金型取付面に接触する。固定盤31又は可動盤32に接触したロッド82の先端は、その盤にロックされてもよい。反抗シリンダ80は、エアシリンダや電動機構に置換することもできる。
【0152】
既述のとおり、トグル機構70は寸開制御機構として利用し得る。もっとも、トグル機構70をコアバック成形工程で寸開制御機構として利用した場合、可動金型22の移動開始時に電動モータ75の負荷が大きくなる場合がある。しかし、スプリング力および反抗シリンダ80の型開力が得られる本実施の形態では、電動モータ75の負荷が低減され得る。
【0153】
既述のとおり、
図4に示されている反抗シリンダ80は寸開制御機構として利用し得る。そこで、
図1に示される型締装置4のタイバ移動機構60を
図4に示されている型締装置4の反抗シリンダ80に置換することもできる。また、
図1に示される型締装置4に
図4に示されている反抗シリンダ80を追加することもできる。この場合、反抗シリンダ80を寸開制御機構として利用すれば、タイバ移動機構60を寸開制御機構として利用する必要はない。
【0154】
<金型の変形例>
図5A,
図5Bは、金型20の一変形例を示す拡大断面図である。図示されている金型20は、固定金型21と可動金型22とから構成される額縁金型(パーティング面当接タイプのキャビティ容積変更可能な金型)である。
【0155】
金型20は、離間機構としての油圧シリンダ90を備えている。より特定的には、固定金型21の四隅近傍の内部にシリンダ91が設けられており、シリンダ91内にピストン92が往復動可能に収容されている。
【0156】
コアバック成形工程でシリンダ91内に作動油が供給されると、ピストン92は、固定金型21の外枠24を型開方向に押し動かす。この結果、外枠24に隣接している可動金型22が型開方向に移動され、固定金型21から離間する。つまり、油圧シリンダ90は、スプリング23と同じく、固定金型21と可動金型22とを離間させる型開力を発生させ得る。
【0157】
油圧シリンダ90は、スプリング23に比べて、応答性良く型開力を発生させ得る。また、油圧シリンダ90が発生させる型開力は、外部から制御することができる。
【0158】
なお、油圧シリンダ90は、型開力のみを発生させ得る単動シリンダであるが、型開力および型閉力を発生させ得る復動シリンダに置換してもよい。
【0159】
これまでの説明から、
図2A,
図2Bに示される金型20のキャビティCも、
図5A,
図5Bに示される金型20のキャビティCも、離間機構が発生させる型開力と、寸開制御機構の物理量の制御(速度制御,圧力制御,力制御,負荷制御など)とによって、寸開されることが理解できる。
【0160】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、寸開制御機構は、発泡力やスプリング力によって型開方向に移動する可動金型22が所望の位置(例えば、成形完了位置)を越えて後退することを阻止するストッパその他の当て止め部材であってもよい。例えば、コアバック成形工程の開始前に、成形完了位置に予め当て止め部材を移動させておく。すると、コアバック成形工程で型開方向に移動する可動金型22が成形完了位置に到達すると、当て止め部材にぶつかってそれ以上の後退が規制される。この結果、成形品の厚みの精度が保持される。
【0161】
離間機構は、固定盤31と可動盤32とのいずれか一方に取り付けられて固定盤31と可動盤32との間に位置してもよい。例えば、スプリング23の基端側を固定盤31に取り付けてもよい。この場合、スプリング23は、型閉方向へ移動する可動盤32よって圧縮され、弾性復元力を発揮する。
【0162】
本明細書に開示されている成形機は、溶融樹脂に窒素や二酸化炭素などの気体が供給される物理発泡成形に用いることもできる。窒素や二酸化炭素などの気体は、射出装置の加熱シリンダ内で溶融樹脂に供給されてもよく、射出ノズル内で溶融樹脂に供給されてもよい。また、金型のキャビティ内で窒素や二酸化炭素などの気体が溶融樹脂に供給されてもよい。
【0163】
さらに、本明細書に開示されている成形機は、金型をコアバック(寸開)させる工程を含む成形全般に用いることができる。本明細書に開示されている成形機は、例えば、次の成形に用いることができる。
【0164】
2材成形:射出装置によってキャビティ内に射出された樹脂が冷却された後に可動金型を寸開制御機構の制御により僅かに寸開移動させてキャビティ内に隙間を作る。その後、キャビティ内にできた隙間に別の射出装置から別の樹脂を射出する。すると、異なる2種類の樹脂から構成される2材成形品が形成される。
【0165】
型内塗装:射出装置によってキャビティ内に射出された樹脂が冷却された後に寸開制御機構の制御により可動金型を僅かに移動させてキャビティ内に隙間を作る。その後、キャビティ内にできた隙間に塗装装置を用いて塗料を噴射する。すると、成形品の片面が塗装される。
【0166】
中空成形:キャビティ内に射出された樹脂が溶融状態にあるときに、キャビティ中央に気体を大量に供給しつつ、寸開制御機構の制御により可動金型を寸開移動させる。すると、中空の成形品が形成される。
【0167】
プレス成形(スタンピング成形を含む):開放されている下型のキャビティ内に成形材料を供給した後、上型を閉じて成形材料を加圧する。このとき、寸開制御機構を制御して上型を微小寸開移動させることができる。
【符号の説明】
【0168】
1…成形機、2…基台、3…射出装置、4…型締装置、5…制御装置、6…油圧装置、10…加熱シリンダ、20…金型、21…固定金型、22…可動金型、23…スプリング、24…外枠、31…固定盤、32…可動盤、33…挿通孔、40…型開閉機構、41…サーボモータ、42…シャフト、43…ナット、44…ロータリエンコーダ、45…サーボアンプ、50…型締機構、51…シリンダ、51a…型締側油室、51b…型開側油室、52…ピストン、53…型締ロッド(タイバ)、53a…後方ロッド、53b…前方ロッド、53c…締結溝、54…締結機構、55,56…ハーフナット、55a,56a…締結突起、57…ハーフナット開閉用アクチュエータ、58…ハーフナットロック用アクチュエータ、60…タイバ移動機構、61…シリンダ、62…タイバ移動ロッド、63…プレート、64…バルブ、65…位置センサ、70…トグル機構、71…型締ハウジング、72…リンク、73…クロスヘッド、74…シャフト、75…電動モータ、80…反抗シリンダ、81…シリンダ、82…ロッド、90…油圧シリンダ、91…シリンダ、92…ピストン、C…キャビティ