(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126836
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】車両用内装部品の取付ボルト仮保持構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20240912BHJP
F16B 41/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B60R13/02 C
F16B41/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035515
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000100366
【氏名又は名称】しげる工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 賢治
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB09
3D023BC01
3D023BD08
3D023BE35
(57)【要約】
【課題】ピラートリム20自体による取付ボルト30の仮保持構造を提供する。
【解決手段】仮保持構造では、アッパ部材20Uの取付板部41の取付孔41aに挿通されて取付板部41をピラーパネル10に固定する取付ボルト30が、アッパ部材20Uに抜止め状態で保持される。取付ボルト30は、取付孔41aへの軸部33の挿通状態で取付板部41に当接するフランジ部32を有する。アッパ部材20Uは、取付ボルト30の挿抜方向抜去側に片持ち状の一対の弾性規制片44を一体に有する。挿抜方向から見たとき、一対の弾性規制片44は、先端部の間に取付孔41aが介在するように配置され、取付板部41に当接するフランジ部32とは部分的に重なり、先端部の間から取付孔41aに取付ボルト30の軸部33が挿通されるときには、フランジ部32の押し当てにより弾性的に変位可能であり、フランジ部32の通過により弾性復帰してフランジ部32と対向する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用内装部品の取付板部に形成された取付孔に挿通されて上記取付板部を被取付体に固定するための取付ボルトを、上記車両用内装部品に抜け止め状態で保持させる、車両用内装部品の取付ボルト仮保持構造であって、
上記取付ボルトは、頭部と軸部との間に、上記取付孔への上記軸部の挿通状態で上記取付板部に当接可能なフランジ部を有し、
上記車両用内装部品は、上記取付ボルトの挿抜方向の抜去側に配置された片持ち状の一対の弾性規制片を一体に有し、
一対の上記弾性規制片は、上記挿抜方向から見たとき、各先端部の間に上記取付孔が介在するように配置されているとともに、上記取付板部に当接させた上記フランジ部とは重なる部分を有するように形成されており、上記各先端部の間から上記取付孔に向けて上記取付ボルトの軸部が挿通されるときには、上記フランジ部の押し当てにより弾性的に変位可能であるとともに、上記フランジ部の通過により弾性復帰して、上記フランジ部と対向するように構成されていることを特徴とする、車両用内装部品の取付ボルト仮保持構造。
【請求項2】
上記各弾性規制片が、先端部に、該弾性規制片と対をなすもう一方の上記弾性規制片側に向かうにしたがって上記取付板部に近づくように傾斜する傾斜部を有することを特徴とする、請求項1に記載の車両用内装部品のボルト仮保持構造。
【請求項3】
上記取付孔が長穴形状をなしており、
上記挿抜方向から見たとき、上記取付孔の短手方向の両側に、一対の上記弾性規制片が配置されており、
上記各弾性規制片の傾斜部が、上記取付孔の長手方向における一端側と他端側で傾斜を異ならせて形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の車両用内装部品のボルト仮保持構造。
【請求項4】
上記車両用内装部品には、上記挿抜方向から見たとき、上記取付板部の両側に一対の貫通孔が一対の上記弾性規制片にそれぞれ対応して形成され、
上記各貫通孔の周縁の一部に、上記各貫通孔にそれぞれ対応する上記各弾性規制片の基端が連なっており、
上記各貫通孔をその軸線方向から見たとき、上記各弾性規制片は、その基端以外の端縁が上記各貫通孔内に収まるように配置されていることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の車両用内装部品の取付ボルト仮保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の内装部品を被取付体に固定するための取付ボルトを、内装部品に予め保持させておく仮保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内装部品を車体パネル等の被取付体に取付ボルトで固定する作業を容易にするために、取付ボルトを、内装部品に仮保持させることが知られている。
下記特許文献1に開示の仮保持構造では、
図7に示すように、取付ボルト1の軸部1aが、内装部品2に形成された取付孔2aに挿通されるとともに、薄板状のワッシャ3に圧入されている。軸部1aへのワッシャ3の装着により、取付ボルト1は、抜け止め状態になり、内装部品2から脱落しないように仮保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の仮保持構造では、ワッシャ3が必要であり、ワッシャ3を軸部1aに装着する工数を要するとともに、ワッシャ3の装着を内装部品2の裏側でしなければならないため、作業性が悪かった。また、ワッシャ3は、軟らかい金属、ゴム、樹脂、紙等で薄板状に作られているため、取付ボルト1を保持する力は比較的弱い。そのため、内装部品2の搬送時や、内装部品2の被取付体への固定作業時等に生じる衝撃により、仮保持された取付ボルト1が内装部品2から脱落するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも1つを解決するためになされたものであって、本発明の一態様に係る車両用内装部品の取付ボルト仮保持構造は、
車両用内装部品の取付板部に形成された取付孔に挿通されて上記取付板部を被取付体に固定するための取付ボルトを、上記車両用内装部品に抜け止め状態で保持させる、車両用内装部品の取付ボルト仮保持構造であって、
上記取付ボルトは、頭部と軸部との間に、上記取付孔への上記軸部の挿通状態で上記取付板部に当接可能なフランジ部を有し、
上記車両用内装部品は、上記取付ボルトの挿抜方向の抜去側に配置された片持ち状の一対の弾性規制片を一体に有し、
一対の上記弾性規制片は、上記挿抜方向から見たとき、各先端部の間に上記取付孔が介在するように配置されているとともに、上記取付板部に当接させた上記フランジ部とは重なる部分を有するように形成されており、上記各先端部の間から上記取付孔に向けて上記取付ボルトの軸部が挿通されるときには、上記フランジ部の押し当てにより弾性的に変位可能であるとともに、上記フランジ部の通過により弾性復帰して、上記フランジ部と対向するように構成されていることを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、取付ボルトを仮保持させるためには、一対の弾性規制片の間から、取付板部の取付孔に向けて取付ボルトの軸部を挿通させるようにして、取付ボルトのフランジ部を一対の弾性規制片に押し当て取付板部側に通過させる。これにより、一対の弾性規制片は、フランジ部と対向して、取付ボルトの抜去方向への移動を規制するため、取付ボルトは、内装部品自体により内装部品に仮保持される。
従来、仮保持のために行われていた、取付ボルトの軸部へのワッシャの装着は不要となり、作業工数が削減される。取付ボルトは、軸部が取付孔に挿通されるときに、内装部品に仮保持されるため、作業性がよい。取付ボルトは、仮保持される内装部品が一体に有する弾性規制片により抜け止めされるため、例えばワッシャの装着による抜け止めに比べ、脱落しにくい。
【0007】
好ましくは、上記各弾性規制片が、先端部に、該弾性規制片と対をなすもう一方の上記弾性規制片側に向かうにしたがって上記取付板部に近づくように傾斜する傾斜部を有する。
上記構成によれば、各弾性規制片が、先端部に、取付板部に近づく傾斜部を有することにより、取付ボルトのフランジが各弾性規制片を通過しやすくなり、取付ボルトの仮保持の作業性がより向上する。
【0008】
好ましくは、上記取付孔が長穴形状をなしており、上記挿抜方向から見たとき、上記取付孔の短手方向の両側に、一対の上記弾性規制片が配置されており、
上記各弾性規制片の傾斜部が、上記取付孔の長手方向における一端側と他端側で傾斜を異ならせて形成されている。
上記構成によれば、一対の弾性規制片の傾斜部において、フランジ部が通過しやすい傾斜を有する側から、フランジ部を通過させることで、より保持させやすい、取付ボルトの仮保持構造を提供することができる。
【0009】
好ましくは、上記車両用内装部品には、上記挿抜方向から見たとき、上記取付板部の両側に一対の貫通孔が一対の上記弾性規制片にそれぞれ対応して形成され、
上記各貫通孔の周縁の一部に、上記各貫通孔にそれぞれ対応する上記各弾性規制片の基端が連なっており、
上記各貫通孔をその軸線方向から見たとき、上記各弾性規制片は、その基端以外の端縁が上記各貫通孔内に収まるように配置されている。
上記構成によれば、車両用内装部品を射出成形等で製造する際には、各弾性規制片を、スライド型を用いることなく上型と下型を貫通孔の軸線方向に上下移動させることで一体に成形することができる。すなわち、簡素化された成形金型により簡易かつ安価に取付ボルトの仮保持のための車両用内装部品を製造することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両用内装部品自体による取付ボルトの仮保持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る取付ボルト仮保持構造を適用したピラートリムのアッパ部材を車室側から見た正面図である。
【
図2】(A)同アッパ部材を正面、底面及び左側面側から見た斜視図である。(B)
図2(A)の円部Bの拡大図である。
【
図3】(A)
図1の円部IIIAの拡大図である。(B)
図3(A)を車室外側(裏側)から見た図である。
【
図4】(A)
図3(A)から取付ボルトを外した状態を示す、同アッパ部材の要部拡大図である。(B)同取付ボルトの平面図である。(C)同取付ボルトの正面図である。
【
図5】同アッパ部材への同取付ボルトの仮保持手順を示す概略図であって、同アッパ部材を
図4(A)のV-V線に沿う断面で示す。
【
図6】
図3(A)のVI-VI線に沿う拡大断面図であって、同アッパ部材を同取付ボルトでピラーパネルに固定した状態を示す。
【
図7】従来の車両用内装部品の仮保持構造を示す説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用内装部品の取付ボルト仮保持構造について、
図1~
図6を参照して説明する。理解を容易にするため、
図1において車長方向におけるの前後を示し、
図5(A)、
図6において車幅方向における車室側、車室外側を示す。
本実施形態は、車両のピラーパネル10(車体パネル)に車室側から取り付けられるピラートリム20(内装部品)のアッパ部材20Uに、取付ボルト30が仮保持される構造に、本発明を適用したものである。
【0013】
本実施形態で例示のピラートリム20は、左座席側のものであって、
図1、
図2(A)に示すアッパ部材20Uと、ロア部材(図示しないが、説明の便宜上符号20Lを付す)とにより構成され、金属製のピラーパネル10(
図6にのみ示す)に沿って延びる細長い形状をなしている。ピラートリム20は、例えばポリプロピレン(PP)等の樹脂を射出成形することによって構成される。
【0014】
アッパ部材20Uは、車幅方向(
図1の紙面と直交する方向)を向く正面壁21と、この正面壁21に連なり車長方向を向く前壁22と後壁23とを有しており、横断面が略コ字形をなしている。アッパ部材20Uの下端部は、図示しないロア部材20Lの上端部が車室側(
図1の紙面と直交する方向の手前側)から重ねられて組み付けられる連結部20Ucとなっている。
【0015】
連結部20Ucには、一対の係合孔部24が車長方向に離れて形成されており、一対の係合孔部24には、ロア部材20L(図示しない)の組付け時に、ロア部材20Lの上端部に設けられた一対の係合突部が挿入されることにより、ロア部材20Lがアッパ部材20Uに対して位置決めされる。
【0016】
連結部20Ucの下端部であって、一対の係合孔部24の中間部より下方の位置には、アッパ部材20Uをピラーパネル10にねじ止めするための取付凹部40が形成されている。本実施形態では、取付凹部40の下縁は、連結部20Ucの下縁の一部をなしている。
【0017】
取付凹部40は、
図4(A)に示すように、正面視において略矩形状をなしており、車幅方向の車室外側(
図4(A)の紙面と直交する方向の奥側)に向かって凹んでいる。取付凹部40は、底部をなす取付板部41と、取付板部41の周縁(本実施形態では、下縁以外の周縁)から立ち上がる周壁部42とを有している。
【0018】
取付板部41には、取付ボルト30が挿通される取付孔41aが車幅方向(
図4(A)の紙面と直交する方向)に貫通して形成されている。そのため、本実施形態では、車幅方向が取付ボルト30の挿抜方向となっている。取付孔41aは、本実施形態では、長穴形状をなしており、その長手方向を上下方向に向けるように配置されている。取付板部41は、取付孔41aの車室側(
図4(A)の紙面と直交する方向の手前側)の開口縁に沿って車室側に突出するように設けられたフランジ支持部41bを有している。
【0019】
図4(B),(C)に示す取付ボルト30は、アッパ部材20Uの取付板部41と、ピラーパネル10(
図6)とを接続して固定する。取付ボルト30は、一端から他端に向かって、頭部31と、フランジ部32と、軸部33とを有している。フランジ部32の外径Dは、頭部31及び軸部33の径より大きく形成されている。軸部33には、雄ねじ部33aが形成されている。
【0020】
図6に示すように、軸部33が取付孔41aに挿通された状態で、フランジ部32が上記フランジ支持部41bに当接して支持される。さらに、雄ねじ部33aがピラーパネル10を貫通してその螺合部11にねじ合わされると、取付板部41はピラーパネル10に固定され、ひいてはアッパ部材20Uがピラーパネル10に取り付けられる。
【0021】
図4(A)に示すように、取付孔41aの短手方向の両側方には、アッパ部材20Uを貫通する貫通孔43が一対形成されている。各貫通孔43は、取付板部41から周壁部42を経て取付凹部40の周縁部に至る領域に形成されている。
【0022】
取付凹部40の周縁部における、各貫通孔43の孔縁からは、アッパ部材20Uと一体の片持ち状の弾性規制片44が、取付凹部30の内側に向かって突出している。すなわち、一対の弾性規制片44が、取付板部41に対し、取付ボルト30の挿抜方向の抜去側に配置されている。弾性規制片44は、取付ボルト30をアッパ部材20Uに抜け止め状態で保持するために用いられるものであって、取付ボルト30の挿抜方向に弾性的に変位可能に形成されている。
【0023】
各弾性規制片44は、
図4(A)に示すように、基端側に、肩部44aを有し、先端側に、肩部44a側から先端に向かって、被押圧部44b(先端部、傾斜部)と、対向部44c(先端部)とを有している。
各肩部44aは、取付板部41と平行をなしており、本実施形態では、取付孔41aの長手方向の一端側より他端側(
図4(A)の上側より下側)が突出するように形成されている。
【0024】
各被押圧部44bは、それ自体を含む弾性規制片44と対をなす向かい側の弾性規制片44の肩部44a側に向かうにしたがって、取付板部41に近づくように傾斜している。また、各被押圧部44bは、各肩部44aの上記突出に対応して、取付孔41aの長手方向の一端側(
図4(A)の上側)の辺の長さL
Uが、他端側(
図4(A)の下側)の辺の長さL
Lより長く形成されている(L
U>L
L)。すなわち、各被押圧部44bは、一端側(上側)では緩やかな傾斜を有し、他端側(下側)では急な傾斜を有している。
【0025】
各対向部44cは、車幅方向の車室外側(
図4(A)の紙面と直交する方向の奥側)を向くように形成されている。
【0026】
一対の弾性規制片44は、
図4(A)に示すように、上記取付ボルト30の挿抜方向(車幅方向)から見たとき、取付孔41aの短手方向の両側方に配置されている。言い換えると、一対の弾性規制片44は、それらの間に取付孔41aが介在するように配置されている。
【0027】
一対の弾性規制片44の先端の間隔S(
図4(A))は、取付ボルト30のフランジ部32の外径D(
図4(B))より小さく、本実施形態では間隔Sは一定に形成されている。そのため、
図3(A)、(B)に示すように、取付ボルト30が、その軸部33を取付孔41aに挿通させかつフランジ部32をフランジ支持部41bに当接させた状態において、上記挿抜方向から見たとき、各弾性規制片44は、フランジ部32と重なる部分を有している。
【0028】
また、この状態のとき、
図2(B)、
図3(B)に示すように、各弾性規制片44の対向部44cは、フランジ部32と部分的に対向している。
尚、本実施形態では、一対の弾性規制片44のうちの一方(
図4(A)の右側の弾性規制片44)は、他方より、取付孔41aの長手方向(
図4(A)の上下方向)の長さがわずかに大きく形成されている。
【0029】
図4(A)に示すように、各弾性規制片44に対応する上記各貫通孔43を、その軸線方向から見たとき、各弾性規制片44は、その基端以外の端縁が各貫通孔43内に収まるように配置されている。
【0030】
そのため、アッパ部材20Uを射出成形する際には、弾性規制片44と、取付板部41及び周壁部42との間の空間部を形成するためのスライド型を用いることなく、上型と下型を貫通孔43の軸線方向に上下移動させることで、弾性規制片44を一体に成形することができるので、成形性を向上させることができる。この成形金型の簡素化により、簡易かつ安価にアッパ部材20Uを製造することができる。
【0031】
上記構成のアッパ部材20Uへの取付ボルト30の仮保持の作業について、
図5を参照して説明する。
【0032】
図5(A)に示すように、一対の弾性規制片44の間から、取付板部41の取付孔41aに向けて取付ボルト30の軸部33を挿通させるようにして、取付ボルト30のフランジ部32を一対の弾性規制片44の各被押圧部44bに押し当てる。
【0033】
図5(B)に示すように、フランジ部32の押し当てにより、一対の弾性規制片44は、取付ボルト30の挿抜方向挿入側(車室外側)に弾性的に変位し、フランジ部32を通過させる。
【0034】
図5(C)に示すように、フランジ部32の通過により、各弾性規制片44は弾性復帰するとともに、取付板部41のフランジ支持部41bに当接したフランジ部32と部分的に対向する。これにより、取付ボルト30は、各弾性規制片44により挿抜方向抜去側への移動を規制され、アッパ部材20Uに仮保持される。
【0035】
フランジ部32の押し当ての際、弾性規制片44の被押圧部44bの傾斜により、弾性規制片44は、フランジ部32を取付板部41側に案内するとともに、小さい変位でフランジ部32を通過させることができる。また、被押圧部44bにおいて、取付孔41aの長手方向における一端側(
図4(A)の上側)の辺の長さL
Uが、他端側(
図4(A)の下側)の辺の長さL
Lより長く、一端側の傾斜が緩やかであり、フランジ部32を通過させるときの弾性規制片44の変位は一端側が他端側より小さい。
【0036】
この取付ボルト30の仮保持の作業において、被押圧部44bの傾斜により各弾性規制片44をフランジ部32が通過しやすくなり、作業性が高められている。
また、各弾性規制片44の被押圧部44bにおける大きい辺の長さLUを有する(傾斜が緩やかな)一端側で、フランジ部32を押し当てれば、フランジ部32がより通過しやすくなり、作業性がより高められる。
【0037】
上記構成によれば、アッパ部材30が有する弾性規制片44により、すなわちアッパ部材30自体により、取付ボルト30を仮保持することができる。そのため、従来の仮保持に用いられたワッシャは不要である。ワッシャを装着する作業がないため、取付ボルト30の仮保持の作業工数が削減されている。取付ボルト30は、軸部33が取付孔41aに挿通されるときに、アッパ部材30に仮保持されるため、作業性がよい。取付ボルト30は、仮保持されるアッパ部材30が一体に有する弾性規制片44により抜け止めされているため、ワッシャの装着による抜け止めに比べ、脱落しにくくなっている。
【0038】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
上記実施形態では、アッパ部材20Uの取付板部41の取付孔41aは、長穴形状をなしているが、丸穴としてもよい。
上記実施形態では、一対の弾性規制片44の先端の間隔Sは、一定に形成されているが、取付孔41aの長手方向における一端側で大きく他端側で小さくなるように、例えば、
図4(A)における上側で大きく下側で小さくなるように、形成されてもよい。これにより、間隔Sの大きい側で、フランジ部32を通過させ、仮保持された取付ボルト30を間隔Sの小さい側に移動させることにより、取り付け易く脱落しにくい仮保持構造としてもよい。
各被押圧部44bの傾斜を、上記実施形態とは異ならせて形成してもよく、取付孔41aの長手方向における一端側と他端側で上記実施形態とは逆に形成してもよく、一端側から他端側にかけて同一に形成してもよい。
車両用内装部品は、ピラートリム20のアッパ部材20Uに限られず、ロア部材20Lでもよく、ルーフサイドトリム、ドアトリム、インストルメントパネル等の種々の車両内装材であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、車両用の内装部品を被取付体に固定するための取付ボルトを、内装部品に予め保持させておく仮保持構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 ピラーパネル(車体パネル)
20 ピラートリム(内装部品)
20U アッパ部材(内装部品)
20UC 連結部
20L ロア部材(内装部品)
21 正面壁
22 前壁
23 後壁
24 係合孔部
30 取付ボルト
31 頭部
32 フランジ部
33 軸部
33a 雄ねじ部
40 取付凹部
41 取付板部
41a 取付孔
41b フランジ支持部
42 周壁部
43 貫通孔
44 弾性規制片
44a 肩部
44b 被押圧部
44c 対向部
D フランジ部の外径
S 一対の弾性規制片の先端の間隔
LU 被押圧部の一端側(上側)の辺の長さ
LL 被押圧部の他端側(下側)の辺の長さ