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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126838
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】加熱炉の操業方法および加熱炉
(51)【国際特許分類】
   F23J 7/00 20060101AFI20240912BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20240912BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20240912BHJP
   F23C 1/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
F23C99/00 317
F27D7/02 A ZAB
F27D17/00 104G
F23C1/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035519
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野島 佑介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 秀行
【テーマコード(参考)】
3K065
3K091
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
3K065TA01
3K065TB13
3K065TC03
3K065TD01
3K065TD05
3K065TD09
3K065TD10
3K065TE01
3K065TF09
3K065TH01
3K065TH02
3K065TN09
3K065TN11
3K091AA01
3K091BB07
3K091BB26
3K091CC06
3K091CC17
3K091CC23
3K091DD01
3K091DD07
3K091DD08
4K056AA08
4K056BB01
4K056CA02
4K056DA32
4K056DB04
4K063AA08
4K063BA02
4K063CA02
4K063DA04
4K063DA08
4K063DA13
4K063DA16
4K063DA34
(57)【要約】
【課題】加熱炉の燃焼用燃料として二酸化炭素の排出を抑制し得るアンモニアを用いると共に、窒素酸化物の加熱炉外への排出を低減することが可能な加熱炉の操業方法および加熱炉を提供する。
【解決手段】一酸化炭素ガスを含有する石炭ガスとアンモニアガスとを混合する混合ガス生成工程と、得られた混合ガスを燃料ガスとして燃焼するバーナ加熱工程と、を含み、
前記バーナ加熱工程は、火炎領域に前記混合ガスを放出し、窒素酸化物の生成を抑制する
加熱炉の操業方法である。加熱炉の操業方法である。混合ガス生成工程において、混合ガスに含まれる一酸化炭素ガスに対するアンモニアガスの体積比率が0.1~4.35が好ましい。また、バーナ加熱工程において、バーナ加熱は、燃料ガスの理論空気量に対する空気比が0.80~1.20の燃焼用空気を供給して行うことが好ましい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉の操業方法であって、
一酸化炭素ガスを含有する石炭ガスとアンモニアガスとを混合する混合ガス生成工程と、得られた混合ガスを燃料ガスとして燃焼するバーナ加熱工程と、
を含み、
前記バーナ加熱工程は、火炎領域に前記混合ガスを放出し、窒素酸化物の生成を抑制する、
加熱炉の操業方法。
【請求項2】
前記混合ガス生成工程において、前記混合ガスに含まれる一酸化炭素ガスに対するアンモニアガスの体積比率が0.1~4.35である、請求項1に記載の加熱炉の操業方法。
【請求項3】
前記混合ガス生成工程において、前記石炭ガスは、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス、および電気炉ガスのうちいずれか一つを含む、請求項1又は2に記載の加熱炉の操業方法。
【請求項4】
前記バーナ加熱工程において、前記バーナ加熱は、前記燃料ガスの理論空気量に対する空気比が0.80~1.20となるように燃焼用空気を供給して行う、請求項1又は2に記載の加熱炉の操業方法。
【請求項5】
前記バーナ加熱工程において、前記バーナ加熱は、前記燃料ガスの理論空気量に対する空気比が0.80~1.20となるように燃焼用空気を供給して行う、請求項3に記載の加熱炉の操業方法。
【請求項6】
一酸化炭素を含有する石炭ガスとアンモニアガスを混合して混合ガスを生成する混合部と、前記混合ガスを燃料ガスとして、火炎領域にアンモニアガスと一酸化炭素とを同時に放出するバーナと、を有するバーナ設備を含む加熱炉。
【請求項7】
前記バーナ設備は、燃料ガスとして、一酸化炭素ガスを含有する石炭ガスとアンモニアガスとの混合比率を制御する混合比率制御部を備える、請求項6に記載の加熱炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉の操業方法および加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
銑鋼一貫製鉄所においては、鉄鉱石を還元して溶銑を製造する高炉の炉頂から排出される高炉ガスをはじめとして、転炉やコークス炉で発生する副生ガスを燃料ガスとして有効利用してきた。しかし、近年二酸化炭素の排出量削減の要求に伴い、これらの副生ガスの使用量を低減するための燃焼技術が求められるようになってきた。例えば、銑鋼一貫製鉄所の熱延ラインや厚板圧延ラインなどで鋼材の加熱を行う鋼材用加熱炉でも、副生ガスの使用量を低減し、二酸化炭素の排出量を削減することが求められるようになっている。この場合、鋼材用加熱炉の燃料ガスとして、アンモニアを利用する技術が着目される。すなわち、炭素元素を含まないアンモニアは、燃焼しても主として水と窒素を発生するのみであるから二酸化炭素排出量の削減効果が大きく、鋼材用加熱炉に適用するための技術開発が望まれている。
【0003】
一方、アンモニアを加熱炉の燃料として使用すると、窒素酸化物(NOx)が生成する点で問題となる。窒素酸化物は、人体に有害であると共に、光化学スモッグや酸性雨の原因になることから、法的な排出規制の対象となっている。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するため、加熱技術が提案されている。
特許文献1には、火炉にアンモニアを燃料として燃焼可能な燃焼装置と、燃料が燃焼されて発生した燃焼ガスを案内する煙道とを備え、燃焼装置よりも燃焼ガスの下流位置にて火炉及び煙道の少なくとも一方に設置されると共に、アンモニアを還元剤として火炉あるいは煙道の平面視中央部に向けて噴射する噴射部を備える、ボイラが開示されている。これにより火炉の中心部にアンモニアを供給することができるため、少量のアンモニアであっても還元剤として窒素酸化物を還元できるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、火炉内に化石燃料を燃焼させるためのバーナと、火炉内における燃焼ガスの流れ方向においてバーナの下流側に設けられた追加空気供給部と、追加空気供給部に対して燃料ガスの流れ方向の上流側でアンモニア燃料を火炉に供給するアンモニア燃料供給部とを備えるボイラが開示されている。これにより、追加空気供給部を備えた2段燃焼ボイラにおいて、追加空気供給部よりも上流側の位置にアンモニア燃料を投入すれば、火炉内の還元雰囲気においてアンモニア燃料の窒素分がNに還元され、窒素酸化物の生成を抑制できるとされる。
また、特許文献2には、バーナに化石燃料を供給する第1燃料供給ラインに、アンモニア燃料を混入させるための第2燃料供給ラインが接続することが開示されている。この場合、燃料として使用する化石燃料は、微粉炭、重油、軽油、液化天然ガス(LNG)等を用い得るとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-086191号公報
【特許文献2】特開2018-076985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来技術を鋼材等の加熱に用いる加熱炉に適用しようとすると、以下のような問題が生じる。
【0008】
特許文献1に開示された技術はボイラ等の燃焼装置を対象として、燃焼ガスの流れ方向における下流側でアンモニアを噴射することにより、燃焼装置で発生する窒素酸化物を還元するものである。そのため、燃焼ガスの流れ方向が一定である燃焼設備が対象となる。
しかし、鋼材等の被加熱体を加熱するための加熱炉では、被加熱体を加熱炉に装入し、抽出するための開閉扉を備える構造をとるのが一般的である。この場合、加熱炉の開閉扉が閉じた状態と、開放された状態では加熱炉内部の圧力分布が変化して、その圧力分布の変化に応じて加熱炉内部の燃焼ガスの流れ方向が変化する。これにより、特許文献1で開示された技術を適用すると、燃焼ガスの流れ方向が変動し、アンモニアによる窒素酸化物の還元効果が十分得られなくなる点で問題がある。
また、燃焼ガスの流れ方向における下流側で噴射するアンモニアは、燃焼装置で発生する窒素酸化物を還元する程度の少量を噴射することになり、燃焼ガスとアンモニアとを均一に混合するのが難しい場合がある。そのため燃焼装置で発生する窒素酸化物を効果的に還元できないことがある。
【0009】
特許文献2は、燃料として化石燃料とアンモニアを燃焼させるバーナと、燃焼ガスの流れ方向においてバーナの下流側に設けられた追加空気供給部を備える2段燃焼設備を前提としている。この場合も、燃焼ガスの流れ方向が一定である燃焼設備を対象としている。
しかし、特許文献2に開示された技術を加熱炉に適用すると、燃焼ガスの流れ方向が変化することにより還元雰囲気領域の位置が変動してしまうため、還元雰囲気領域におけるアンモニア燃料の滞留時間を十分確保することができず、窒素酸化物を低減することが難しいという問題がある。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、加熱炉の燃焼用燃料として二酸化炭素の排出を抑制し得るアンモニアを用いると共に、窒素酸化物の加熱炉外への排出を低減することが可能な加熱炉の操業方法および加熱炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を有利に解決する本発明に係る加熱炉の操業方法は、以下のように構成される。
【0012】
[1]加熱炉の操業方法であって、一酸化炭素ガスを含有する石炭ガスとアンモニアガスとを混合する混合ガス生成工程と、得られた混合ガスを燃料ガスとして燃焼するバーナ加熱工程と、を含み、前記バーナ加熱工程は、火炎領域に前記混合ガスを放出し、窒素酸化物の生成を抑制する、加熱炉の操業方法である。
[2]上記の[1]において、前記混合ガス生成工程において、前記混合ガスに含まれる一酸化炭素ガスに対するアンモニアガスの体積比率が0.1~4.35である加熱炉の操業方法である。
[3]上記の[1]又は[2]において、前記混合ガス生成工程において、前記石炭ガスは、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス、および電気炉ガスのうちいずれか一つを含む加熱炉の操業方法である。
[4]上記の[1]又は[2]において、前記バーナ加熱工程において、前記バーナ加熱は、前記燃料ガスの理論空気量に対する空気比が0.80~1.20となるように燃焼用空気を供給して行う加熱炉の操業方法である。
[5]上記の[3]において、前記バーナ加熱工程において、前記バーナ加熱は、前記燃料ガスの理論空気量に対する空気比が0.80~1.20となるように燃焼用空気を供給して行う加熱炉の操業方法である。
【0013】
上記課題を有利に解決する本発明に係る加熱炉は、以下のように構成される。
[6]一酸化炭素を含有する石炭ガスとアンモニアガスを混合して混合ガスを生成する混合部と、前記混合ガスを燃料ガスとして、火炎領域にアンモニアガスと一酸化炭素とを同時に放出するバーナと、を有するバーナ設備を含む加熱炉である。
[7]上記の[6]において、前記バーナ設備は、燃料ガスとして、一酸化炭素ガスを含有する石炭ガスとアンモニアガスとの混合比率を制御する混合比率制御部を備える加熱炉である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アンモニアを含む燃料ガスを使用することにより二酸化炭素の排出を抑制すると共に、窒素酸化物が炉外に排出されるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】加熱炉の概略を示す構成図である。
図2図1の鋼材移動方向の正面からみた、加熱炉におけるバーナ設備の配置を示す構成図である。
図3】石炭ガスとアンモニアガスの混合ガスを燃料ガスとして供給するバーナ設備の一例の構成図である。
図4】石炭ガスとアンモニアガスの混合ガスを燃料ガスとして供給する2段空気燃焼バーナ式バーナ設備の一例の構成図である。
図5】石炭ガスとアンモニアガスの混合ガスを燃料ガスとして供給する2段燃料燃焼バーナ式バーナ設備の一例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態に係る加熱炉について説明する。
<加熱炉>
本発明の実施形態にかかる加熱炉は、加熱用熱源として燃料ガスを燃焼させるバーナを備え、内部に被加熱体を装入して所定の温度まで昇温させる設備である。被加熱体は主として金属を対象とするが、鉄系金属であっても非鉄系金属であってもよい。被加熱体の加熱温度は500~1400℃である。
【0017】
図1、2は、被加熱体を鋼材とする加熱炉の一例を示したものである。例えば鋼材の熱間圧延ラインに用いられる加熱炉は、鋳造されたスラブを所定の加熱温度(1100~1300℃程度)に加熱するために用いられる。
図1に示す加熱炉1は、被加熱体である鋼材S(スラブ)を装入(搬入)する装入部25と、加熱した鋼材Sを搬出(抽出)する搬出部26とを備える。例えば、連続鋳造ラインで製造された鋼材Sは、加熱炉の装入側のヤードに搬送され、熱間圧延ライン等の生産スケジュールに従って装入部25から加熱炉1に装入される。加熱炉1の内部は複数の帯域に区切られており、上流側には2~8個の帯域に区切られた加熱帯と、1~3個の均熱帯とから構成されることが多い。加熱炉1の内部には、鋼材Sを載置する固定スキッド28と、鋼材Sを搬送するための移動スキッド27を備えるのが一般的である。固定スキッド28および移動スキッド27を備える加熱炉は、ウォーキングビーム式連続加熱炉と呼ばれる。
【0018】
加熱炉の操業では、加熱炉内部の帯域ごとに異なる雰囲気温度に制御され、加熱炉1に装入された鋼材Sの平均温度が徐々に上がるようになっている。これにより鋼材Sが所定の目標加熱温度(加熱炉から抽出される際のスラブの目標温度)になるように制御される。
そして、所定の目標温度に到達した鋼材Sは、搬出部26を通過して、熱間圧延に供される。
【0019】
加熱炉1内部には、鋼材Sの搬送方向に沿って複数のバーナが備えられている。バーナは、燃焼により加熱炉の内部を昇温するために配置される。バーナにより加熱炉の内部が昇温されると、加熱炉の炉壁からの輻射により鋼材の温度が上昇する。また、加熱炉の内部において雰囲気ガスの流動が生じ、対流により鋼材が昇温されることがある。さらに、バーナの火炎が直接鋼材に接触することにより鋼材が昇温されてもよい。いずれにしても、バーナは、加熱用熱源として燃料ガスを燃焼させることにより、加熱炉の内部を昇温させ、加熱炉内部の被加熱材を昇温させる。
【0020】
加熱炉1の操業中には、装入部25と搬出部26の開閉式の扉(開閉扉)は閉じた状態となり、内部は大気に比べて高い圧力が生じる。しかし、鋼材Sの装入と搬出を行う際には、開閉扉が一時的に開放される。開閉扉が開放されると、加熱炉内部の圧力と開閉扉の近傍では圧力差が生じるため、加熱炉内部の燃焼ガスは圧力が高いところから低いところに向けて流動する。鋼材Sの装入と搬出は随時行われることから、加熱炉内部の燃焼ガスの流動方向も開閉扉の動作に応じて変動することになる。
【0021】
一方、ボイラのように内部に被加熱体を装入し搬出する必要が生じない燃焼装置では、燃焼ガスの流動方向が一定であるため、特許文献1、2に記載された方法を適用できると考えられる。しかし、被加熱体を内部に装入して加熱する加熱炉の場合には、被加熱体の装入や搬出を行う扉の開閉を伴うため、このような従来技術を適用することは困難であった。
【0022】
図2は、加熱炉1の断面を示す図である。バーナBは加熱炉1の内部において、鋼材Sの上面と下面との温度差が生じにくいように、鋼材Sの上面側と下面側のそれぞれに配置するのが通常である。また、鋼材Sの先端S1と尾端S2との温度差が生じにくいように、鋼材Sの搬送方向の両側に配置するものが多い。
【0023】
バーナ設備
本実施形態の加熱炉は、一酸化炭素ガスを含有する石炭ガスとアンモニアガスとを混合して混合ガスを生成する混合部と、混合ガスを燃料ガス、空気を酸化剤として火炎を発生させるバーナとを含むバーナ設備を有する。加熱炉1に配置されるバーナのうち、少なくとも一つが下記のバーナ設備となる。
【0024】
図3は、本実施形態に用いるバーナ設備の構成を説明するための模式図である。バーナ設備2は、加熱炉内に火炎を放出するバーナノズル3、バーナノズル3に燃料ガスを供給する燃料ガス供給系統8、バーナノズル3に燃焼用空気を供給する燃焼空気供給系統9を含む。
【0025】
燃料ガス供給系統8には、石炭ガス供給部10から供給される石炭ガス4と、アンモニアガス供給部11から供給されるアンモニアガス5とを混合部6で混合した混合ガス7が供給される。バーナ設備2では、混合ガス7が燃料ガスとして用いられる。燃焼空気供給系統9には、燃焼用空気供給部と接続され、燃焼用空気12が供給される。バーナノズル3の内部では燃料ガスと燃焼用空気が混合した可燃性混合体を形成して、バーナノズル3の先端部から加熱炉内部に向けて火炎が放出される。
【0026】
混合部6は、石炭ガス4の供給配管とアンモニアガス5の供給配管とが合流する部分を指す。石炭ガス4とアンモニアガス5とはそれぞれの供給配管から供給され、合流することにより、特別な攪拌機構を設けなくても混合が行われる。したがって、混合部6はこれらの供給配管が交流する部分に一定の空間として構成すればよい。
ただし、混合部6は、スタティックミキサなどの静的混合機器や、攪拌機能を備える動的混合器を備えてよい。これにより、石炭ガスとアンモニアガスとがより均一に混合した混合ガスとなる点で好ましい。
【0027】
バーナ設備2には、石炭ガス供給部10から混合部6に供給する石炭ガス4の流量を調整するための石炭ガス流量調整バルブ20と、石炭ガス4の流量を計測するための石炭ガス流量計22を備えてよい。
また、バーナ設備2には、アンモニアガス供給部11から混合部6に供給するアンモニアガス5の流量を調整するためのアンモニアガス流量調整バルブ21と、アンモニアガス5の流量を計測するためのアンモニアガス流量計23を備えてよい。
【0028】
これらにより燃料ガスとする混合ガス7の石炭ガス4に対するアンモニアガス5の混合比率を調整できる。混合ガス7に含まれるアンモニアガス5の混合比率が大きくなると、石炭ガス4のみを燃料ガスとするよりも加熱炉1から排出される二酸化炭素の排出削減効果が大きくなる。
一方、アンモニアガスは、難燃性燃料であり、一般の燃料ガスより着火しにくく燃焼速度も遅いため、混合ガスに含まれるアンモニアガスの混合比率が大きくなるとバーナでの燃焼が不安定になることがある。混合ガス7の石炭ガス4に対するアンモニアガス5の混合比率を調整することで、二酸化炭素の排出量を削減しながらバーナ加熱の安定性を確保できる。
【0029】
バーナ設備には、混合ガスの石炭ガスに対するアンモニアガスの混合比率を制御する混合比率制御部を有するのが好ましい。混合比率制御部13は、石炭ガス流量調整バルブ20とアンモニアガス流量調整バルブ21の開度を変更することにより混合ガス7の石炭ガス4に対するアンモニアガス5の混合比率を制御する。
これにより加熱炉からの二酸化炭素の排出低減とバーナ加熱の安定性とを両立させることができる。
【0030】
バーナ設備2に燃焼空気供給系統9を通じて供給される燃焼用空気12は、大気から収集される空気を用いてよい。
ただし、空気中の窒素を取り除いたり、純酸素を加えたりするなどして、改質した空気を燃焼用空気12に適用してよい。燃焼用空気の酸素含有量を増加させることにより、燃料ガスの酸化反応を促進し、燃焼空気供給系統9から供給する燃焼用空気の流量を低減できるためポンプなどの消費電力を低減できる。
また、燃焼用空気の酸素含有量を低下させることにより、加熱炉の炉内の雰囲気を還元性雰囲気にすることができ窒素酸化物の還元が促進される。
【0031】
バーナ設備2に用いるバーナは、一酸化炭素ガスを含有する石炭ガスとアンモニアガスとの混合ガスを燃料ガスとして、燃料ガスと燃焼用空気が混合した可燃性混合体を形成して火炎を放出するものであれば、その形式は問わない。石炭ガスとアンモニアガスとがほぼ同一の範囲に同時に噴射されていれば、アンモニアガスの燃焼によって生じる窒素酸化物を、一酸化炭素によって還元できるからである。
【0032】
他のバーナ設備
図4および図5は、他のバーナ構造の例である。
図4に示すバーナ2は、二段空気燃焼バーナと呼ばれ、燃焼空気供給系統9から供給される燃焼用空気12を用いて火炎を発生させる主ノズルと、主ノズルの周囲に配置され、主ノズルから噴射される火炎の燃焼を補助する2次空気供給系統91から供給される2次空気92を用いる副ノズルとで構成される。
副ノズルから空気(2次空気92)を炉内に向けて噴射することにより、主ノズルから噴射される火炎の温度分布を均一にすることができる。主ノズルから噴射される火炎に局所的に温度上昇があると、温度が高い領域で窒素酸化物の生成が促進されるため、副ノズルを用いることで窒素酸化物の生成を抑制できる。二段空気燃焼バーナを用いる場合、主ノズルから噴射される石炭ガスとアンモニアガスは、ほぼ同一の範囲に同時に噴射されるので、アンモニアガスの燃焼によって生じる窒素酸化物は一酸化炭素によって還元される。
また、副ノズルから噴射される2次空気によって、窒素酸化物の還元反応が促進される。
なお、図4に示す二段空気燃焼バーナは、主ノズルの先端が炉壁面よりも後退した位置に配置されている。これにより、火炎が主ノズルから放出される際に、燃焼空気供給系統9から供給される1次空気による燃焼時間を確保して一酸化炭素による窒素酸化物の還元反応を促進させる。そして、副ノズルから噴射される2次空気によって均一な還元反応が促進される。
【0033】
図5に示すバーナ2は、二段燃料燃焼バーナと呼ばれ、主ノズルの中心部分から燃焼用空気12を噴射し、その外周部から一酸化炭素ガスを含有する石炭ガス4とアンモニアガス5との混合ガスを燃料ガスとして噴射するように構成した例である。二段燃料燃焼バーナは、燃料ガス供給系統8から供給される混合ガス7とは異なる、主ノズルの周囲に配置した副ノズルの補助燃料供給系統81から補助燃料82を供給するように構成することができる。アンモニアは燃焼の安定性が低いことがあり、主ノズルから噴射される燃料ガスの燃焼を補助し、燃焼の安定性を高めることができる。この場合に使用する補助燃料は、水素、メタンガス、天然ガス、バイオガス、プロパンガスなどを適用できる。
【0034】
アンモニアガス
アンモニアガスとは、化学式NHで表される常温で無色の気体をいう。バーナ加熱の燃料ガスに用いるアンモニアガス5は、アンモニアガス供給部11を通じて混合部6に供給される。
アンモニアガス供給部11は、アンモニアを一時的に貯留するアンモニアタンクに接続され、アンモニアタンクに接続されるポンプ等の昇圧手段によりアンモニアガス5をバーナ設備2に供給する。
アンモニアタンクは、アンモニアを液化した状態の液体アンモニアとして貯留するのが好ましい。アンモニアは、常温でも8気圧程度の圧力を付与することで液化でき、液体アンモニアとすることで輸送しやすく貯蔵も容易となる。アンモニアタンクに液体アンモニアを貯留する場合には、外部から供給される熱との熱交換によって、液体アンモニアを強制気化してからアンモニアガス供給部11に送る。
【0035】
石炭ガス
本発明の実施形態に用いる石炭ガスは、一酸化炭素ガスを含有する。石炭ガスとは、石炭から得られるガスをいう。石炭から得られるガスには、石炭の不完全燃焼に起因して生成する一酸化炭素ガスを含有することが多い。
一酸化炭素は、窒素酸化物を還元させるガス(還元ガス)として作用することから、アンモニアを含む混合ガスの燃焼により生成する窒素酸化物を還元できる。すなわち、アンモニアは窒素を含むため、燃焼により窒素酸化物としてフューエルNOxが生成しやすい。
しかし、燃料ガスに一酸化炭素ガスを混合させることにより、燃焼後の排ガスに含まれる窒素酸化物が一酸化炭素によって窒素に還元される。これにより加熱炉から排出される窒素酸化物の量を低減することができる。
【0036】
特許文献1、2に記載された方法は、窒素酸化物を還元するための還元剤としてアンモニアを用いる。アンモニアの燃焼によって生成する窒素酸化物をアンモニアによって還元するという自己還元によって、窒素酸化物の排出を低減しようとするものである。
つまり、アンモニアを燃料として燃焼し窒素酸化物を生成するステップと、生成した窒素酸化物をアンモニアによって還元するステップという2つの素過程を経ることになる。
この場合、アンモニアを燃焼した後の燃焼ガス中に未燃焼のアンモニアが残留していないと還元反応が進行しない。そのため、特許文献1の技術は、燃焼装置とは異なる位置でアンモニアを供給する。一方、特許文献2の技術は、バーナ加熱によって窒素酸化物を生成した後に、火炉内に還元雰囲気領域と呼ばれる一定の空間を確保することで窒素酸化物を還元することになる。
このように特許文献1、2に記載された方法は、窒素酸化物を還元するために2つの素過程を経る必要があったため、バーナ加熱とは異なる位置にアンモニア供給手段や還元雰囲気領域を設ける必要があった。その結果、火炉内での燃焼ガスの流れ方向が一定の条件でないと効果的に窒素酸化物を低減できないという課題があった。
【0037】
本実施形態では、窒素酸化物を還元するための還元ガスとして一酸化炭素ガスを用いて、アンモニアガスと一酸化炭素が予め混合された燃料ガスが、バーナから噴射され燃焼する。
つまり、バーナから噴射されるアンモニアガスと一酸化炭素は、加熱炉内でほぼ同一の範囲に同時に噴射されるので、窒素酸化物の生成が抑制される。これは、アンモニアの燃焼によって生成する窒素酸化物が、生成とほぼ同時に一酸化炭素により還元されると考えられる。これにより加熱炉内の燃焼ガスの流れ方向が変動する場合であっても、アンモニアの燃焼によって生成する窒素酸化物が確実に還元され、加熱炉から排出される窒素酸化物を低減できる。
この場合、バーナから噴射されるアンモニアガスと一酸化炭素が噴射される範囲の雰囲気温度は、500~1450℃とすることが好ましい。一酸化炭素による窒素酸化物の還元反応が促進され、窒素酸化物の生成が抑制されるからである。
【0038】
混合ガスに含まれる一酸化炭素ガスに対するアンモニアガスの体積比率は0.1~4.35であるのが好ましく、0.50~3.00がより好ましい。一酸化炭素ガスに対するアンモニアガスの体積比率が4.35を超えると、アンモニアガスの燃焼によって生成する窒素酸化物を、一酸化炭素により還元する効果が低くなるからである。
一方、一酸化炭素ガスに対するアンモニアガスの体積比率が低いと、窒素酸化物の還元は十分行われるが、加熱炉から排出する二酸化炭素の排出量を抑制するためにアンモニアを用いる効果が十分でなくなる。このため一酸化炭素ガスに対するアンモニアガスの体積比率は0.1以上とする。
なお、一酸化炭素により窒素酸化物を還元することで、一酸化炭素が二酸化炭素に酸化されるが、これにより生成する二酸化炭素の濃度は、20~5000ppm程度である。したがって、この生成する二酸化炭素は、アンモニアガスを燃料ガスに用いることによる加熱炉の二酸化炭素の排出抑制効果に比べると無視できる程度の量である。
【0039】
石炭ガス4は、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス、電気炉ガスのいずれかを含むのが好ましい。これらは、製鉄所の上工程で生成する副生ガスであり、一酸化炭素を含有する石炭ガスとして、窒素酸化物を還元させる機能を有すると共に、アンモニアガスの燃焼を安定化させる効果があるからである。
【0040】
高炉ガスは、高炉で鉄鉱石を還元して銑鉄を製造する際の副生ガスである。コークス炉ガスは、コークスを製造するために石炭を高温乾留して生成される副生ガスである。転炉ガスは、転炉における製鋼工程で生じる副生ガスである。電気炉ガスとは、電気炉において使用する補助燃料(加炭材)の不完全燃焼によって生じる副生ガスである。
副生ガスは、生成する工程により種々の成分組成を有する。
【0041】
例えば、高炉ガスは可燃成分の一酸化炭素が21~30体積%、不燃成分の窒素が50~60体積%、二酸化炭素が10~22体積%が代表的な組成である。高炉ガスの発火点は630~650℃であり、燃焼範囲は空気と混合した場合27~75体積%である。高炉ガスの低位発熱量は3.45MJ/Nm程度が代表例である。
【0042】
コークス炉ガスは、水素46~60体積%、メタン20~35体積%、一酸化炭素5~10体積%、エチレンなどの炭化水素2~4体積%が代表的な組成である。コークス炉ガスの低位発熱量は18.0MJ/Nm程度が代表例である。
【0043】
転炉ガスは、一酸化炭素が約75体積%程度、二酸化炭素が約13体積%程度であり、他に微量の酸素、窒素、水素が含有される。転炉ガスの低位発熱量は8.2MJ/Nm程度が代表例である。
【0044】
電気炉ガスは、一酸化炭素10体積%程度、二酸化炭素22%程度、酸素5%程度、窒素56%程度が代表的な組成である。電気炉ガスの低位発熱量は2.8MJ/Nm程度となる。
【0045】
石炭ガス4には、高炉ガス、コークス炉ガス、転炉ガスが適宜混合されたガス(Mガスと呼ばれることがある。)を用いてよい。発熱量が異なる石炭ガスを混合することにより、被加熱体の加熱に必要な熱量を供給し、安定した加熱炉の操業を行うためである。
また、副生ガスに含まれている窒素や二酸化炭素を事前に取り除くことで、燃料ガスの総量を削減することができ、エネルギー変換効率が高まる。これにより石炭ガス供給部10の動力を低減でき省エネルギーに寄与する。
また、副生ガスに含まれている二酸化炭素を事前に取り除くことで、加熱炉から排出される二酸化炭素の排出量をさらに削減できる。
【0046】
燃料ガスは、一酸化炭素ガスを含有する石炭ガス4とアンモニアガス5との混合ガス7に加え、他の気体燃料を添加してよい。
他の気体燃料の例として、水素、メタンガス、天然ガス、バイオガス、プロパンガスを例示できる。これらにより燃料ガスの低位発熱量を調整することができ、加熱炉から排出される二酸化炭素量をさらに削減できる。
他の気体燃料として水素を用いる場合には、燃料ガスに含まれるアンモニアガス5に対する水素の体積比率は1.78未満であるのが好ましく、より好ましくは0.81未満である。
また、他の気体燃料としてメタンガスを用いる場合には、燃料ガスに含まれるアンモニアガス5に対するメタンガスの体積比率は0.87未満であるのが好ましく、より好ましくは0.35未満である。アンモニアガスに比べて、水素やメタンガスは燃焼速度が大きいため、混合ガスに含まれる一酸化炭素の燃焼(酸化)反応が先行して、アンモニアガスの燃焼によって生成する窒素酸化物の還元に十分な量の一酸化炭素が残存しないことがあるからである。
【0047】
<加熱炉の操業方法>
次に、本実施形態に係る加熱炉の操業方法について説明する。
具体的には、一酸化炭素ガスを含有する石炭ガスとアンモニアガスとを混合する混合ガス生成工程と、得られた混合ガスを燃料ガスとして燃焼するバーナ加熱工程を有し、そのバーナ加熱工程では、火炎領域に混合ガスを放出し、窒素酸化物の生成を抑制する加熱炉の操業方法である。
加熱炉の操業は、上記のように、一酸化炭素ガスを含有する石炭ガスとアンモニアガスとの混合ガスを、燃料ガスとしてバーナ加熱を行う。この場合、混合ガスに含まれる一酸化炭素ガスに対するアンモニアガスの体積比率が0.1~4.35となるようにバーナ加熱を行うのが好ましい。さらに、一酸化炭素ガスを含有する石炭ガスとして、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス、電気炉ガスのいずれかを含むようにするとよい。
【0048】
具体的には、図1に示すように、加熱炉の内部に複数のバーナが備えられている場合には、すべてのバーナが、一酸化炭素ガスを含有する石炭ガスとアンモニアガスとの混合ガスを燃料ガスとするバーナ加熱とする必要はない。少なくとも一つのバーナが一酸化炭素ガスを含有する石炭ガスとアンモニアガスとの混合ガスを燃料ガスとするバーナ加熱を行うようにしてよい。加熱炉から排出される二酸化炭素の排出量は、すべてのバーナで石炭ガスを燃料ガスとして用いる従来の加熱炉よりも削減されるからである。
【0049】
バーナ加熱は、燃料ガスの理論空気量に対する空気比が0.80~1.20となるように燃焼用空気を供給して行うのが好ましい。空気比が0.80未満の場合には、アンモニアガスの不完全燃焼が生じ、バーナ加熱の排ガス中に未燃のアンモニアが残留する。これにより排ガス中のアンモニア濃度が過大になることがある。空気比が1.20を超えると、アンモニアガスの酸化が促進され、火炎温度の上昇とともに窒素酸化物の生成量が顕著に増加する。そのため、還元剤として用いる一酸化炭素が不足することがある。
【0050】
燃料ガスの理論空気量に対する空気比は、バーナ設備2の石炭ガス流量調整バルブ20とアンモニア流量調整バルブ21の開度を調整することにより、燃焼空気供給系統9から供給される燃焼用空気との流量比率を調整できる。燃焼空気供給系統9に、燃焼用空気の流量を調整する燃焼用空気流量調整バルブを設けて、空気比を調整してもよい。
【0051】
本発明に適用されるバーナは、上記の他にも、バーナの先端から噴射する燃料ガスを撹拌する機能を備えるスワール式バーナや、燃料ガスおよび燃焼用空気を燃焼筒に対して接線方向に吹込み、燃焼筒内で旋回流を形成させて燃焼する管状火炎バーナを適用してもよい。石炭ガスとアンモニアガスとがほぼ同一の範囲に同時に噴射されていれば、アンモニアガスの燃焼によって生じる窒素酸化物を、一酸化炭素によって還元できる。
【実施例0052】
以下、本実施形態の効果を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本発明の実施例として、鋼材の熱間圧延ラインに備えられた加熱炉を対象にした例について説明する。実施例に用いた加熱炉は、図1に示すウォーキングビーム式連続加熱炉であり、装入部から鋼材が加熱炉内に装入され、鋼材の目標温度を1200℃として、搬出部から熱間圧延ラインに抽出されるものを対象とした。加熱炉で加熱された鋼材は、平均サイズが厚み220mm、幅1800mm、長さ8m、平均重量が24トンであった。
【0053】
本実施例に用いた石炭ガスは、製鉄所の副生ガスとして生成されたコークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガスを混合したMガス(ミックスガス)である。表1に、実施例に用いたMガスの組成を示す。表1から分かるように、実施例に用いたMガスは、23.9体積%の一酸化炭素を含有するものであった。
【0054】
本実施例では、図3に示すバーナ設備を用いた。混合部には、Mガスが石炭ガス供給部から供給され、液体アンモニアを気化したアンモニアガスがアンモニアガス供給部から供給されるようにした。混合ガスに含まれる一酸化炭素ガスに対するアンモニアガスの体積比率は、石炭ガス流量調整バルブとアンモニア流量調整バルブの開度を調整することにより変更した。また、混合ガスの流量は、石炭ガス流量調整バルブとアンモニア流量調整バルブの開度比率を維持しながら、燃料ガス供給系統に供給される混合ガスの流量を調整し、加熱炉能率が上記の操業条件を満足するようにした。一方、燃料ガスの理論空気量に対する空気比は、燃焼空気供給系統に設けられた燃焼用空気流量調整バルブを変更することにより、0.75~1.25の範囲で調整した。
【0055】
さらに、本実施例では、加熱炉内の鋼材の搬送方向に沿った方向に圧力を測定する圧力計を配置した。また、加熱炉の装入側外部と抽出側外部に窒素酸化物NOxと未燃アンモニアNHの濃度を測定するガス検知器を配置した。
【0056】
これに対して、本発明の比較例として、燃料ガスとしてアンモニアを含有させることなく、Mガスのみを燃料ガスとして、上記と同程度の加熱炉能率を達成できるよう加熱炉の操業を行った。
【0057】
実施例および比較例では、加熱炉の操業中に、加熱炉の煙道に設置した窒素酸化物濃度を測定するNOx濃度計を用いて、加熱炉外に排出される窒素酸化物濃度を測定した。なお、煙道に設置したNOx濃度計により測定される窒素酸化物濃度の基準値(基準濃度)は320ppmを基準とし、これを超えない排出濃度であれば合格とした。なお、実施例に用いた加熱炉は煙道の下流側に排ガスの脱硝設備を備えており、煙道を通過する排ガスの窒素酸化物濃度が350ppm以下であれば、加熱炉から排出される排ガスの窒素酸化物を十分低減できる。ただし、脱硝設備の処理を軽減させる観点からは、煙道における排ガスの窒素酸化物濃度の基準を160ppmとして、より厳格な基準を設定するのが好ましい。
【0058】
一方、加熱炉の操業中に、加熱炉から排出される排ガスをサンプリングして、排ガスに含まれる二酸化炭素濃度を測定した。二酸化炭素濃度は、アンモニアガスを燃料ガスに含まない比較例を基準(1.0)として、実施例における二酸化炭素濃度の比(CO排出比)を算出した。
表2に発明例および比較例の結果を示す。表中の「熱量比率」は、燃料ガスとして供給するMガスまたはアンモニアガスの流量にそれらの低位発熱量を乗じて算出される熱量の、燃料ガス全体の熱量に対する比率を表す。つまり、バーナ燃焼により生成する熱量に対するMガスおよびアンモニアガスの寄与率を表す。
【0059】
発明例(製造No.2)は、燃料ガスに対するアンモニアガスの熱量比率を4.3%としている。アンモニアガスの熱量比率が比較的小さいため、比較例(製造No.1)で排出される二酸化炭素濃度に対する低減効果は小さいものの、Mガスのみを燃料ガスとして加熱炉を操業した比較例(製造No.1)に比べて、窒素酸化物の排出濃度は低減している。これは、一酸化炭素を含むMガスとアンモニアガスの燃焼によって、燃焼ガス中の窒素酸化物が還元されたものと考えられる。
【0060】
発明例(製造No.2~8)は、燃料ガスの理論空気量に対する空気比を0.95として、アンモニアガスの混合比率を増加させた例である。混合ガスに含まれるアンモニアガスの混合比率が増加するにしたがって、加熱炉の二酸化炭素排出量が低下しているものの、窒素酸化物濃度も増加している。発明例(製造No.7)で煙道におけるより厳格な基準値160ppm以下となるが、発明例(製造No.8)のようにアンモニアの熱量比率が68%になると、より厳格な基準値を超える窒素酸化物濃度となった。
ただし、発明例(製造No.8)の条件であっても通常の操業時に窒素酸化物濃度の基準値320ppm以下に抑えられていた。
【0061】
発明例(製造No.9~11)は、アンモニガスの熱量比率を一定として、燃料ガスに対して空気比を変更した場合の結果である。アンモニガスの熱量比率が35%の場合に、空気比を0.8まで低下させると、一酸化炭素による窒素酸化物の還元効果に加えて、窒素酸化物の生成も抑制されるので、比較例(製造No.1)に比べて二酸化炭素排出量を大幅に削減しながら、窒素酸化物の排出を抑えることができた。
しかし、空気比を0.8よりも低い値に低下させたところ、排ガス中に未燃焼のアンモニア(未燃アンモニア)が残留したため、空気比を0.8未満の条件では窒素酸化物濃度の測定を行わなかった。
一方、発明例(製造No.10、11)のように燃料ガスに対する空気比を増加させたところ、空気比が1.0を超えると窒素酸化物の排出濃度が増加しており、空気比を1.2とした発明例(製造No.10)では、煙道におけるより厳格な基準値160ppmを満足した。空気比を1.25まで増加させた発明例(製造No.11)では、通常の操業時に窒素酸化物濃度の基準値320ppm以下ではあるものの、より厳格な基準値を満足しなかった。
【0062】
以上から、本実施例により、一酸化炭素を含む石炭ガスとアンモニアガスを燃料ガスとして、バーナ加熱に同時に使用することにより、二酸化炭素排出量を低減しながら、窒素酸化物が炉外に排出されることを抑制できることがわかった。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【符号の説明】
【0065】
S 鋼材
S1 鋼材先端
S2 鋼材尾端
B バーナ
1 加熱炉
2 バーナ設備
20 石炭ガス流量調整バルブ
21 アンモニア流量調整バルブ
22 石炭ガス流量計
23 アンモニア流量計
3 バーナノズル
31 炉壁
32 炉内
33 バーナノズルの断面形状

4 石炭ガス
5 アンモニアガス
6 混合部
7 混合ガス

8 燃料ガス供給系統
81 補助燃料供給系統
82 補助燃料、2次燃料
9 燃焼空気供給系統
91 2次空気供給系統
92 2次空気

10 石炭ガス供給部
11 アンモニアガス供給部
12 燃焼用空気
13 混合比率制御部
24 NOx濃度計
25 装入部
26 排出部
27 移動スキッド
28 固定スキッド
29 煙道
100鋼材移動方向

図1
図2
図3
図4
図5