(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126840
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】加熱炉の操業方法および加熱炉
(51)【国際特許分類】
F23J 7/00 20060101AFI20240912BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20240912BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20240912BHJP
F23C 1/00 20060101ALI20240912BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20240912BHJP
F23N 1/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
F23C99/00 317
F27D7/02 A
F27D17/00 104G
F23C1/00 301
F23N5/00 D
F23N1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035542
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野島 佑介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 秀行
(72)【発明者】
【氏名】高士 弘一
【テーマコード(参考)】
3K003
3K065
3K091
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
3K003AB03
3K003BA01
3K003BB01
3K003CB05
3K003CC01
3K003DA01
3K003DA03
3K003EA08
3K003FB03
3K003GA03
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3K065TB13
3K065TC03
3K065TD01
3K065TD05
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3K065TH01
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3K065TN11
3K091AA01
3K091BB07
3K091BB26
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3K091CC17
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3K091DD01
3K091DD07
3K091DD08
4K056AA08
4K056BB01
4K056CA02
4K056DA02
4K056DA32
4K056DB01
4K063AA08
4K063BA02
4K063CA02
4K063DA04
4K063DA08
4K063DA17
4K063DA34
(57)【要約】
【課題】加熱炉の燃焼用燃料として二酸化炭素の排出を抑制し得るアンモニアを用いると共に、窒素酸化物と未燃アンモニアが加熱炉外へ排出される量を低減するのに可能な加熱炉の操業方法および加熱炉を提供する。
【解決手段】加熱炉の操業方法であって、アンモニアを含有する第1燃料ガスを、前記第1燃料ガスの理論空気量に対する空気比が0.9~1.0となる燃焼用空気によりバーナ加熱を施す第1バーナ加熱ステップと、アンモニアを含有する第2燃料ガスを、前記第2燃料ガスの理論空気量に対する空気比が前記第1燃料ガスの理論空気量に対する空気比よりも低い空気比の燃焼用空気によりバーナ加熱を施す第2バーナ加熱ステップと、前記第1バーナ加熱による排ガスと前記第2バーナ加熱による排ガスとの混合排ガスに空気を噴射する空気噴射ステップと、を含む加熱炉の操業方法である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを含有する第1燃料ガスを、前記第1燃料ガスの理論空気量に対する空気比が0.9~1.0となる燃焼用空気によりバーナ加熱を施す第1バーナ加熱ステップと、
アンモニアを含有する第2燃料ガスを、前記第2燃料ガスの理論空気量に対する空気比が前記第1燃料ガスの理論空気量に対する空気比よりも低い空気比の燃焼用空気によりバーナ加熱を施す第2バーナ加熱ステップと、
空気を噴射する空気噴射ステップと、
を含む、加熱炉の操業方法。
【請求項2】
前記空気噴射ステップは、前記第1バーナ加熱ステップにより生成した排ガスと、前記第2バーナ加熱ステップにより生成した排ガスとが混合した混合排ガスに対して空気を噴射する、請求項1に記載の加熱炉の操業方法。
【請求項3】
前記第2バーナ加熱ステップは、前記第2燃料ガスの理論空気量に対する空気比が0.9未満である、請求項1又は2に記載の加熱炉の操業方法。
【請求項4】
前記第1燃料ガスおよび前記第2燃料ガスのうち少なくとも一方はアンモニアと石炭ガスとの混合ガスを用いてバーナ加熱を行う、
請求項1又は2に記載の加熱炉の操業方法。
【請求項5】
前記第1燃料ガスおよび前記第2燃料ガスのうち少なくとも一方はアンモニアと石炭ガスとの混合ガスを用いてバーナ加熱を行う、
請求項3に記載の加熱炉の操業方法。
【請求項6】
アンモニアを含有する燃料ガスを用いてバーナ加熱を施す2以上のバーナ設備と、
前記2以上のバーナ設備に供給する燃焼用空気の、前記燃料ガスの理論空気量に対するそれぞれの空気比を調整する空気比調整部と、
前記2以上のバーナ設備のうち少なくとも一つのバーナ設備に供給する燃焼用空気の空気比を、他のバーナ設備に供給する燃焼用空気の空気比とは異なる空気比に制御する制御部と、
前記2以上のバーナ設備から排出される排ガスの混合排ガスに空気を噴射する空気噴射設備と、
を含む、加熱炉。
【請求項7】
前記バーナ設備は、前記空気比調整部によって空気比が調整された、アンモニアを含有する第1燃料ガスを、前記第1燃料ガスの理論空気量に対する空気比が0.9~1.0となる燃焼用空気によりバーナ加熱を施す第1バーナ設備と、
アンモニアを含有する第2燃料ガスを、前記第2燃料ガスの理論空気量に対する空気比が前記第1燃料ガスの理論空気量に対する空気比よりも低い空気比の燃焼用空気によりバーナ加熱を施す第2バーナ設備と、
を有し、
前記加熱炉の内部におけるガスの流れに沿って、前記ガスの流れの上流側から前記第1バーナ設備、前記第2バーナ設備、前記空気噴射設備の順に配置された、
請求項6に記載の加熱炉。
【請求項8】
前記加熱炉は、前記混合排ガスが排出される開口部を備え、
前記空気噴射装置は、前記第1バーナ設備および前記第2バーナ設備よりも前記開口部に近い位置に配置された、
請求項6に記載の加熱炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉の操業方法および加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
銑鋼一貫製鉄所においては、鉄鉱石を還元して溶銑を製造する高炉の炉頂から排出される高炉ガスをはじめとして、転炉やコークス炉で発生する副生ガスを燃料ガスとして有効利用してきた。しかし、近年二酸化炭素の排出量削減の要求に伴い、これらの副生ガスの使用量を低減するための燃焼技術が求められるようになってきた。例えば、銑鋼一貫製鉄所の熱延ラインや厚板圧延ラインなどで鋼材の加熱を行う鋼材用加熱炉でも、副生ガスの使用量を低減し、二酸化炭素の排出量を削減することが求められるようになっている。この場合、鋼材用加熱炉の燃料ガスとして、アンモニアを利用する技術が着目される。すなわち、炭素元素を含まないアンモニアは、燃焼しても主として水と窒素を発生するのみであるから二酸化炭素排出量の削減効果が大きく、鋼材用加熱炉に適用するための技術開発が望まれている。
【0003】
一方、アンモニアを加熱炉の燃料として使用すると、窒素酸化物(NOx)が生成する点で問題となる。窒素酸化物は、人体に有害であると共に、光化学スモッグや酸性雨の原因になることから、法的な排出規制の対象となっている。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するため、加熱技術が提案されている。
特許文献1には、火炉にアンモニアを燃料として燃焼可能な燃焼装置と、燃料が燃焼されて発生した燃焼ガスを案内する煙道とを備え、燃焼装置よりも燃焼ガスの下流位置にて火炉及び煙道の少なくとも一方に設置されると共に、アンモニアを還元剤として火炉あるいは煙道の平面視中央部に向けて噴射する噴射部を備える、ボイラが開示されている。
これにより火炉の中心部にアンモニアを供給することができ、少量のアンモニアであっても還元剤として窒素酸化物を還元できるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、火炉内に化石燃料を燃焼させるためのバーナと、火炉内における燃焼ガスの流れ方向においてバーナの下流側に設けられた追加空気供給部と、追加空気供給部に対して燃料ガスの流れ方向の上流側でアンモニア燃料を火炉に供給するアンモニア燃料供給部とを備えるボイラが開示されている。
これにより、追加空気供給部を備えた2段燃焼ボイラにおいて、追加空気供給部よりも上流側の位置にアンモニア燃料を投入すれば、火炉内の還元雰囲気領域においてアンモニア燃料の窒素分がN2に還元され、窒素酸化物の生成を抑制できるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-086191号公報
【特許文献2】特開2018-076985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来技術を鋼材等の加熱に用いる加熱炉に適用しようとすると、以下のような問題が生じる。
【0008】
特許文献1に開示された技術は、ボイラ等の燃焼装置を対象として、燃焼ガスの流れ方向における下流側でアンモニアを噴射することにより、燃焼装置で発生する窒素酸化物を還元するものである。この場合、燃焼装置で発生する燃焼ガスの流量に比べて、窒素酸化物を還元するために噴射するアンモニアの噴射量は極めて少量となるため、アンモニアを火炉の中心部に向けて噴射しても、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物と均一に混合しないことがある。その結果、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物を効果的に還元できないことがある。そのため、還元剤であるアンモニアが未燃焼のまま火炉の外部に排出されるという問題が生じる。鋼材等の被加熱体を加熱するための加熱炉では、ボイラのような燃焼装置とは異なり、被加熱体を加熱炉に装入し抽出するための開閉扉を備えるのが一般的である。
その場合、加熱炉の開閉扉が開口すると、毒性を有する未燃焼のアンモニア(「未燃アンモニア」ともいう。)が加熱炉の外部に排出され、加熱炉外部の環境が悪化するという問題が生じる。
【0009】
特許文献2もボイラ等の燃焼装置を対象とし、火炉内の還元雰囲気領域において窒素酸化物をアンモニアにより還元する。特許文献2には、火炉内に還元雰囲気領域を形成するために、バーナに供給する1次空気は、化石燃料を完全燃焼させるために必要な空気量未満とすることが開示されている。特許文献2に開示された技術は、窒素酸化物の還元反応を行うために、火炉内に一定の空間を確保して、一定の反応時間を必要とする。
一方、鋼材等の被加熱体を加熱するための加熱炉では、加熱炉の内部に燃焼装置(例えばバーナ)だけでなく、被加熱体を載置し装入するための空間を必要とする。これに対して、ボイラのような火炉では、燃料と燃焼用空気との燃焼反応を生じさせるのに必要な空間を備えればよい、という違いがある。
そのため、特許文献2に開示された技術を、被加熱体の加熱を行う加熱炉に適用しようとすると、還元雰囲気領域とする空間が拡大し、結果として還元雰囲気領域の内部で窒素酸化物の還元反応が均一に進行せず、未燃焼のアンモニアが加熱炉の外部に排出されるという問題が生じる。
【0010】
さらに、特許文献2には、アンモニアを燃焼させるために供給する空気量を理論空気量に対し0.6から1.0の間で変化させた場合に、供給する空気量と火炉の出口での未燃アンモニアのリーク率と、NOxへの転換率とが相反する特性を有することが開示されている。そのため窒素酸化物(NOx)と未燃アンモニアの両方を低減するには、1次空気比を狭い範囲で制御する必要が生じ、加熱炉内の操業条件の変化により窒素酸化物や未燃アンモニアが外部に排出されやすくなる。
【0011】
本発明は、従来技術が抱える上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、加熱炉の燃焼用燃料として二酸化炭素の排出を抑制し得るアンモニアを用いると共に、窒素酸化物と未燃アンモニアが加熱炉外へ排出される量を低減するのに可能な加熱炉の操業方法および加熱炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を有利に解決する本発明に係る加熱炉の操業方法は、以下のように構成される。
【0013】
[1]アンモニアを含有する第1燃料ガスを、前記第1燃料ガスの理論空気量に対する空気比が0.9~1.0となる燃焼用空気によりバーナ加熱を施す第1バーナ加熱ステップと、アンモニアを含有する第2燃料ガスを、前記第2燃料ガスの理論空気量に対する空気比が前記第1燃料ガスの理論空気量に対する空気比よりも低い空気比の燃焼用空気によりバーナ加熱を施す第2バーナ加熱ステップと、空気を噴射する空気噴射ステップと、を含む、加熱炉の操業方法である。
[2]上記の[1]において、前記空気噴射ステップは、前記第1バーナ加熱ステップにより生成した排ガスと、前記第2バーナ加熱ステップにより生成した排ガスとが混合した混合排ガスに対して空気を噴射する、加熱炉の操業方法である。
[3]上記の[1]又は[2]において、前記第2バーナ加熱ステップは、前記第2燃料ガスの理論空気量に対する空気比が0.9未満である、加熱炉の操業方法である。
[4]上記の[1]又は[2]において、前記第1燃料ガスおよび前記第2燃料ガスのうち少なくとも一方はアンモニアと石炭ガスとの混合ガスを用いてバーナ加熱を行う、加熱炉の操業方法である。
[5]上記の[3]において、前記第1燃料ガスおよび前記第2燃料ガスのうち少なくとも一方はアンモニアと石炭ガスとの混合ガスを用いてバーナ加熱を行う、加熱炉の操業方法である。
【0014】
上記課題を有利に解決する本発明に係る加熱炉は、以下のように構成される。
[6]アンモニアを含有する燃料ガスを用いてバーナ加熱を施す2以上のバーナ設備と、前記2以上のバーナ設備に供給する燃焼用空気の、前記燃料ガスの理論空気量に対するそれぞれの空気比を調整する空気比調整部と、前記2以上のバーナ設備のうち少なくとも一つのバーナ設備に供給する燃焼用空気の空気比を、他のバーナ設備に供給する燃焼用空気の空気比とは異なる空気比に制御する制御部と、前記2以上のバーナ設備から排出される排ガスの混合排ガスに空気を噴射する空気噴射設備と、を含む、加熱炉である。
[7]上記の[6]において、前記バーナ設備は、前記空気比調整部によって空気比が調整された、アンモニアを含有する第1燃料ガスを、前記第1燃料ガスの理論空気量に対する空気比が0.9~1.0となる燃焼用空気によりバーナ加熱を施す第1バーナ設備と、アンモニアを含有する第2燃料ガスを、前記第2燃料ガスの理論空気量に対する空気比が前記第1燃料ガスの理論空気量に対する空気比よりも低い空気比の燃焼用空気によりバーナ加熱を施す第2バーナ設備とを有し、前記加熱炉の内部におけるガスの流れに沿って、前記ガスの流れの上流側から前記第1バーナ設備、前記第2バーナ設備、前記空気噴射設備の順に配置された加熱炉である。
[8]上記の[6]において、前記加熱炉は、前記混合排ガスが排出される開口部を備え、前記空気噴射装置は、前記第1バーナ設備および前記第2バーナ設備よりも前記開口部に近い位置に配置された加熱炉である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、加熱炉の燃焼用燃料としてアンモニアを用いることにより二酸化炭素の排出を抑制すると共に、アンモニアの燃焼によって生成する窒素酸化物と未燃アンモニアの加熱炉外への排出を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図1の鋼材移動方向の正面からみた、加熱炉におけるバーナ設備の配置を示す構成図である。
【
図3】本実施形態に係る、並列配置のバーナ設備および空気噴射設備を備えた加熱炉の構成図である。
【
図4】加熱炉内の化学反応を説明するための模式図である。A)第1バーナ加熱による排ガス中の窒素酸化物と未燃アンモニアが存在する。B)第2バーナ加熱による排ガス中の窒素酸化物と未燃アンモニアが存在する。C)混合排ガス中の窒素酸化物と未燃アンモニアの化学反応を示す。
【
図5】本実施形態に係る、対向配置のバーナ設備および空気噴射設備を備えた加熱炉の構成図である。
【
図6】本実施形態に係る、バーナ設備および空気噴射設備を備えた加熱炉の構成図および加熱炉内の化学反応を説明するための模式図である。A)第1バーナ加熱による排ガス中の窒素酸化物と未燃アンモニアが存在する。B)第2バーナ加熱による排ガス中の窒素酸化物と未燃アンモニアが存在する。
【
図7】本実施形態に係る加熱炉の概略を示す構成図である。
【
図8】他の本実施形態に係る、空気比調整部、制御部を有するバーナ設備および空気噴射設備を備えた加熱炉の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施形態に係る加熱炉について説明する。
<加熱炉>
本発明の実施形態にかかる加熱炉は、加熱用熱源として燃料ガスを燃焼させるバーナを備え、内部に被加熱体を装入して所定の温度まで昇温させる設備である。被加熱体は主として金属を対象とするが、鉄系金属であっても非鉄系金属であってもよい。被加熱体の加熱温度は700~1400℃である。
図1、2は、被加熱体を鋼材とする本実施形態に係る加熱炉の一例を示したものである。例えば鋼材の熱間圧延ラインに用いられる加熱炉は、鋳造されたスラブを所定の加熱温度(1100~1300℃程度)に加熱するために用いられる。
【0018】
図1に示す加熱炉1は、被加熱体である鋼材S(スラブ)を装入する装入部30と、加熱した鋼材Sを搬出(抽出)する搬出部31とを備える。例えば、連続鋳造ラインで製造された鋼材Sは、加熱炉の装入側のヤードに搬送され、熱間圧延ライン等の生産スケジュールに従って装入部30から加熱炉1に装入される。加熱炉1の内部は複数の帯域に区切られており、上流側には2~8個の帯域に区切られた加熱帯と、1~3個の均熱帯とから構成されることが多い。加熱炉1の内部には、鋼材Sを載置する固定スキッド33と、鋼材Sを搬送するための移動スキッド32を備えるのが一般的である。固定スキッド33および移動スキッド32を備える加熱炉は、ウォーキングビーム式連続加熱炉と呼ばれる。
【0019】
加熱炉の操業では、加熱炉内部の帯域ごとに異なる雰囲気温度に制御され、加熱炉1に装入された鋼材Sの平均温度が徐々に上がるようになっている。これにより鋼材Sが所定の目標加熱温度(加熱炉から抽出される際のスラブの目標温度)になるように制御される。目標温度に到達した鋼材Sは、搬出部31を通過して、熱間圧延に供される。
【0020】
加熱炉1内部には、鋼材Sの搬送方向に沿って複数のバーナが備えられている。バーナBは、燃焼により加熱炉の内部を昇温するために配置される。バーナにより加熱炉の内部が昇温されると、加熱炉の炉壁からの輻射により鋼材の温度が上昇する。また、加熱炉の内部において雰囲気ガスの流動が生じ、対流により鋼材が昇温されることがある。さらに、バーナの火炎が直接鋼材に接触することにより鋼材が昇温されてもよい。いずれにしても、バーナは、加熱用熱源として燃料ガスを燃焼させることにより、加熱炉の内部を昇温させ、加熱炉内部の被加熱材を昇温させる。
【0021】
加熱炉1内部は、バーナから火炎が放出される空間の他に、被加熱材を載置し搬送するための空間を備えている。そのため、内部で燃焼反応を生じさせることが目的のボイラ等に比べると、炉内に投入する燃焼エネルギーに対する炉内の体積が大きいのが特徴である。ガスタービン、微粉炭ボイラ、ガスと油ボイラにおける、燃焼エネルギーあたりの炉内容積(m3/MW)の代表値は、例えば、ガスタービンが2m3/MW、微粉炭ボイラが6m3/MW、ガスと油ボイラが2m3/MWである。これに対して、加熱炉は、10~16m3/MW程度と大きく、例えば鋼材の熱間圧延ラインに用いられる加熱炉では、11~13m3/MW程度となる。
【0022】
加熱炉1の操業中には、装入部30と搬出部31の扉(開閉扉)は閉じた状態となり、内部は大気に比べて高い圧力が生じる。鋼材Sの装入と搬出を行う際には、扉が一時的に開放される。扉が開放されると、加熱炉内部の圧力と扉の近傍では圧力差が生じるため、加熱炉内部の燃焼ガスは圧力が高いところから低いところに向けて流動する。加熱炉1の扉が開口している状態では、開口部を通じて燃焼ガスが加熱炉1の炉外に排出される方向に、燃焼ガスの流動が生じることが多い。
【0023】
図2は、加熱炉1の断面を示す図である。バーナBは加熱炉1の内部において、鋼材Sの上面と下面との温度差が生じないように、鋼材Sの上面側と下面側のそれぞれに配置するものが多い。また、鋼材Sの先端S1と尾端S2との温度差が生じないように、鋼材Sの搬送方向の両側に配置するものが多い。
【0024】
本実施形態の加熱炉1は、アンモニアを含有する燃料ガスを用いてバーナ加熱を施す2以上のバーナ設備と、2以上のバーナ設備に供給する燃焼用空気の、前記燃料ガスの理論空気量に対するそれぞれの空気比を調整する空気比調整部と、2以上のバーナ設備のうち少なくとも一つのバーナ設備に供給する燃焼用空気の空気比を、他のバーナ設備に供給する燃焼用空気の空気比とは異なる空気比に制御する制御部と、2以上のバーナ設備から排出される排ガスの混合排ガスに空気を噴射する空気噴射設備とを含む加熱炉である。
<バーナ設備>
アンモニアを含有する第1燃料ガスを、前記第1燃料ガスの理論空気量に対する空気比が0.9~1.0となる燃焼用空気によりバーナ加熱を施す第1バーナ設備と、アンモニアを含有する第2燃料ガスを、前記第2燃料ガスの理論空気量に対する空気比が前記第1燃料ガスの理論空気量に対する空気比よりも低い空気比の燃焼用空気によりバーナ加熱を施す第2バーナ設備とを有することが好ましい。
【0025】
また、本実施形態の加熱炉1は、内部に配置されるバーナBの中の少なくとも一つはアンモニアを含有する第1燃料ガスを燃焼用空気によりバーナ加熱を行う第1バーナ設備であり、他のバーナBの中の少なくとも一つはアンモニアを含有する第2燃料ガスを燃焼用空気によりバーナ加熱を行う第2バーナ設備である。
【0026】
図3を用いて第1バーナ設備および第2バーナ設備を説明する。
図3は、
図1に示す加熱炉1の片側の側面にある炉壁35の一部を含み、加熱炉1の第1バーナ設備2、第2バーナ設備3、空気噴射設備4の配置を上面からみたものである。
【0027】
第1バーナ設備2は、燃料ガスとしてアンモニアガスを含有する第1燃料ガス5と、燃焼用空気12を用いて、炉内に火炎を噴射する第1バーナ加熱を行う。第1バーナ設備2は、炉内に火炎を噴射するための第1バーナノズル7と、第1燃料ガス5を第1バーナノズル7に供給する第1燃料ガス供給系統14と、燃焼用空気12を第1バーナノズル7に供給する燃焼用空気供給系統18とを備えている。第1バーナノズル7は、例えば2重管のノズルであり、内側から第1燃料ガス5が炉内に向けて噴射され、外側は燃焼用空気12が供給される。これにより、第1燃料ガス5と燃焼用空気12が混合した可燃性混合体を形成して、第1バーナノズル7の先端部から加熱炉1内部に向けて火炎が噴射される。
【0028】
第2バーナ設備3は、第1バーナ設備2と同様の構成としてよい。第2バーナ設備3は、燃料ガスとしてアンモニアガスを含有する第2燃料ガス6と、燃焼用空気12を用いて、炉内に火炎を噴射する第2バーナ加熱を行う。第2バーナ設備3は、炉内に火炎を噴射するための第2バーナノズル8と、第2燃料ガス6を第2バーナノズル8に供給する第2燃料ガス供給系統15と、燃焼用空気12を第2バーナノズル8に供給する燃焼用空気供給系統19とを備えている。第2バーナノズル8も、例えば2重管のノズルが用いられて、内管から第2燃料ガス6が炉内に向けて噴射され、外管から燃焼用空気12が供給される。これにより、第2燃料ガス6と燃焼用空気12が混合した可燃性混合体を形成して、第2バーナノズル8の先端部から加熱炉1内部に向けて火炎が噴射される。
【0029】
また、第1バーナ設備2と第2バーナ設備3には、バーナノズルから噴射する燃料ガスを撹拌する機能を備えるスワール式バーナや、燃料ガスおよび燃焼用空気を燃焼筒に対して接線方向に吹込み、燃焼筒内で旋回流を形成させて燃焼する管状火炎バーナが用いられてもよい。
【0030】
第1燃料ガス5と第2燃料ガス6は、いずれもアンモニアを含有する燃料ガスを用いる。アンモニアガスを単体として燃料ガスに用いても、アンモニアガスを他の燃料と混合した混合ガスを燃料ガスに用いてもよい。第1燃料ガス5と第2燃料ガス6とは、アンモニアガスの混合比率が異なっていても、同一であってもよい。さらに、混合ガスを組成する他の燃料が、第1燃料ガス5と第2燃料ガス6で異なるものであっても同一であってもよい。ただし、加熱炉1への燃料ガスの供給設備が複雑になって設備コストが増加する可能性があるため、第1燃料ガス5と第2燃料ガス6とはアンモニアを含有する同一の燃料ガスを用いるのが経済的である。
【0031】
アンモニアガスは、難燃性燃料であり、一般の燃料より着火しにくく燃焼速度も遅い。燃焼の安定性を向上させるためには、他の燃料と混合した混合ガスを用いるとよい。アンモニアガスに混合する燃料は、石炭ガスが好ましい。石炭ガスとは、石炭から得られるガスである。石炭ガスは、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス、電気炉ガスのいずれかを含むのが好ましい。これらは製鉄所で生成する副生ガスであり、アンモニアガスの燃焼を安定化させる効果がある。高炉ガスは、高炉で鉄鉱石を還元して銑鉄を製造する際の副生ガスである。コークス炉ガスは、コークスを製造するために石炭を高温乾留して生成される副生ガスである。転炉ガスは、転炉における製鋼工程で生じる副生ガスである。電気炉ガスとは、電気炉における補助燃料(加炭材)の不完全燃焼により生成されるガスである。混合ガスを構成する石炭ガスとして、高炉ガス、コークス炉ガス、転炉ガスが適宜混合されたガス(Mガスと呼ばれることがある。)を用いてよい。発熱量が異なる石炭ガスを混合することにより、被加熱体の加熱に必要な熱量を供給し、安定した加熱炉の操業を行うためである。
【0032】
図3に示す第1バーナ設備2に用いる第1燃料ガス5と、第2バーナ設備3に用いる第2燃料ガス6を、いずれもアンモニアガスと石炭ガスとの混合ガスとした例である。
第1燃料ガス供給系統14は、アンモニアガス供給系統25と石炭ガス供給系統27とが接続されており、アンモニアガス10と石炭ガス11とが混合部16で混合され、第1バーナノズル7に供給される。アンモニアガス供給系統25と石炭ガス供給系統27の途中には、それぞれのガスの混合部16への供給量を調整する流量調整バルブ53と、供給流量を測定するための流量計52を備えるとよい。これにより混合ガスに含まれるアンモニアガスと石炭ガスとの混合比率を調整できる。
第2燃料ガス供給系統15も、アンモニアガス供給系統26と石炭ガス供給系統28とが接続されており、アンモニアガス10と石炭ガス11とが混合部17で混合され、第2バーナノズル8に供給されている。第2バーナ設備3も、アンモニアガス供給系統26と石炭ガス供給系統28の途中に、アンモニアガス10と石炭ガス11の混合部17への供給量を調整するための流量調整バルブ53と、供給流量を測定するための流量計52を備えるとよい。
【0033】
混合部(16、17)は、石炭ガス供給系統(27、28)の供給配管とアンモニアガス供給系統(25、26)の供給配管とが合流する部分を指す。アンモニアガス10と石炭ガス11とが、それぞれの供給配管から供給され合流することにより、特別な攪拌機構を設けなくても混合が行われる。混合部(16、17)はこれらの供給配管が交流する部分に一定の空間として構成すればよい。ただし、混合部(16、17)は、スタティックミキサなどの静的混合機器や、攪拌機能を備える動的混合器を備えるようにしてよい。石炭ガスとアンモニアガスとがより均一に混合した混合ガスが生成される点で好ましい。
【0034】
第1バーナ設備2の燃焼用空気供給系統18と、第2バーナ設備3の燃焼用空気供給系統19の途中にも、第1バーナノズル7および第2バーナノズル8に供給する燃焼用空気12の流量を調整する流量調整バルブ53と、供給流量を測定するための流量計52を備えるとよい。第1バーナ設備2と第2バーナ設備3の燃焼用空気の量が調整され、第1バーナ設備2と第2バーナ設備3のそれぞれのバーナ加熱における空気比の調整が容易になる。
【0035】
第1バーナ設備2に用いる燃焼用空気と、第2バーナ設備3に用いる燃焼用空気は、大気から収集される空気を燃焼用空気供給系統から供給してよい。ただし、空気中の窒素を取り除いたり、純酸素を加えたりするなどして、改質した空気を燃焼用空気12に適用してよい。燃焼用空気の酸素含有量を増加させることにより、燃料ガスの酸化反応を促進し、燃焼空気供給系統から供給する燃焼用空気の流量を低減できるため、ポンプなどの消費電力を低減できる。また、燃焼用空気の酸素含有量を低下させることにより、加熱炉の炉内の雰囲気を還元性雰囲気にすることができ、窒素酸化物の還元が促進される。
【0036】
<空気噴射設備>
本実施形態の加熱炉1は、上記の第1バーナ設備2および第2バーナ設備3に加え、第1バーナ設備2から排出される排ガス21と、第2バーナ設備3から排出される排ガス22とが混合した混合排ガス23に対して空気を噴射する空気噴射設備4を備える。
空気噴射設備4は、空気供給系統29と接続されていて、空気噴射ノズル9から空気13を炉内に向けて噴射する。空気供給系統29の途中には、空気噴射ノズル9に供給する空気13の流量を調整する流量調整バルブ53と、供給流量を測定するための流量計52を備えるとよい。これにより、第1バーナ設備2の排ガスと第2バーナ設備3の排ガスとの混合排ガスに対して噴射する空気噴射の量を調整でき、混合排ガス中に含まれる窒素酸化物の還元反応を促進させることができる。
【0037】
空気噴射設備4から噴射する空気は、大気から収集される空気を用いてよい。ただし、空気中の窒素を取り除いたり、純酸素を加えたりするなどして改質した空気を、空気供給系統29を介して空気噴射ノズル9に供給してもよい。空気13の酸素含有量を増加させることにより、混合排ガス23に含まれる窒素酸化物の還元反応が促進される。
【0038】
<加熱炉のバーナ設備の配置>
加熱炉のバーナ設備の配置について説明する。本実施形態の加熱炉は、加熱炉の内部におけるガス流れに沿って、ガス流れの上流側から、第1燃料ガスに対する空気比を0.9~1.0としてバーナ加熱を行う第1バーナ設備、第2燃料ガスに対する空気比が第1燃料ガスに対する空気比よりも小さい空気比でバーナ加熱を行う第2バーナ設備、第1バーナ設備から排出される排ガスと第2バーナから排出される排ガスとの混合排ガスに空気を噴射する空気噴射設備の順に配置する。
これは、NOxと未燃アンモニアとの混合ガスに酸素を注入することにより、アンモニアによるNOxの還元反応が促進され、加熱炉から排出されるNOxおよび未燃アンモニアを低減できると考えられるためである。
また、加熱炉として燃焼ガスが排出される開口部を備える場合に、空気噴射装置は、第1バーナ設備および第2バーナ設備よりも開口部に近い位置に配置するのが好ましい。
【0039】
図7は、本実施形態の加熱炉の構成の一例を示す。
図7に示す加熱炉は、被加熱体を加熱炉に装入するための装入部30と、被加熱体を搬出するための搬出部31と、加熱炉1の内部から排ガス(燃焼ガス)を加熱炉外に排出するための煙道34とを備えている。装入部30は、被加熱体を加熱炉に装入する際に一時的に開口する開口部となる。搬出部31も、被加熱体を加熱炉から搬出する際に一時的に開口する開口部となる。
一方、煙道34は、加熱炉1の内部から排ガスを排出し、加熱炉内の圧力が過大にならないように調整するために設けられ、加熱炉の外部に部分的に開放されていることから常時開口する開口部となっている。そのため、
図7に示す加熱炉1の内部では、少なくとも加熱炉内部から煙道34に向かう燃焼ガスのガス流れが生じている。
【0040】
本実施形態では、煙道34に向かう燃焼ガスのガス流れの上流側から、第1バーナ設備2、第2バーナ設備3、空気噴射設備4が、これらの順に配置される。
図7に示す例では、加熱炉1の搬送方向の中央付近に、被加熱体の上側および下側に第1バーナ設備2が配置されている。第1バーナ設備2の燃焼ガス流れの下流側には、被加熱体の上側に1台、下側に2台の第2バーナ設備3が配置されている。そして、燃焼ガスのガス流れFに沿って、第2バーナ設備3の下流側には空気噴射設備4が配置されている。
【0041】
この
図7において、第1バーナ設備2は第1燃料ガスに対する空気比を0.9~1.0としてバーナ加熱を行い、第2バーナ設備3は第2燃料ガスに対する空気比が第1燃料ガスに対する空気比よりも小さい空気比でバーナ加熱を行う。その結果、窒素酸化物をより多く含む排ガス21が、燃焼ガスのガス流れFに沿って加熱炉内を移動して、未燃アンモニアをより多く含む排ガス22と混合して混合排ガス23が生成される。混合排ガス23は、燃焼ガスのガス流れFに沿って加熱炉内を移動して開口部である煙道34に向けてさらに移動する。空気噴射設備4は、第1加熱設備2および第2加熱設備3よりもガス流れにおける下流側に配置されているので、開口部から混合排ガス23が排出される前に混合排ガス23に対して空気13が噴射される。これにより、空気13中の酸素がアンモニアによる窒素酸化物の還元を促進し、煙道34を通って加熱炉の外部に排出される排ガスの窒素酸化物とアンモニアの濃度を低減することができる。
【0042】
なお、加熱炉1内のバーナとして、第1バーナ設備2および第2バーナ設備3以外のバーナ設備を有してもよい。ただし、第1バーナ設備2および第2バーナ設備3以外のバーナ設備(第3バーナ設備と呼ぶ)は、アンモニアを含有しない燃料を用いてバーナ加熱を行う設備である。第3バーナ設備は、窒素酸化物と未燃アンモニアを排出しない、あるいは排出するとしても第1バーナ設備や第2バーナ設備に比べて窒素酸化物および未燃アンモニアの排出量が低い(例えば1/10以下)であれば、混合排ガス中の窒素酸化物の還元反応に対して外乱とならない。第3バーナ設備は、例えば石炭ガスを燃料ガスとするバーナ加熱を行ってよい。
【0043】
図8は、本実施形態にかかる加熱炉の構成を示す。
図8に示す加熱炉には、2つのバーナ設備(44A、44B)と、空気噴射設備4が配置されている。2つのバーナ設備(44A、44B)は同一の構造を有するバーナ設備でよく、バーナ設備44に供給する燃料ガス45も同一のものを用いてよい。
【0044】
バーナ設備44には空気比調整部40が設けられていて、2つのバーナ設備(44A、44B)に対応する空気比調整部40は、制御部42と接続されている。空気比調整部40は、バーナ設備44ごとに燃料ガス45に対する燃焼用空気の空気比を調整する機能を備える。
例えば、空気比調整部40は燃料ガス45としてバーナノズルに供給される燃料ガスの流量を測定し、測定される燃料ガス45の流量と、燃料ガス45の燃料組成とから、燃料ガス45を完全燃焼させるための理論空気量を算出する。そして、バーナ設備(44A、44B)ごとに設定される空気比に基づいて、燃焼用空気供給系統に配置される流量調整弁の開度を調整することにより、バーナ設備(44A、44B)ごとにバーナ加熱の空気比を設定する。
【0045】
制御部42は、それぞれのバーナ設備(44A、44B)の空気比調整部40における空気比の設定値を与える。制御部42は、バーナ設備44Aの一方の空気比が0.9~1.0になるように空気比調整部40に空気比の設定値を与える。制御部42は、他方のバーナ設備44Bが、前記一方のバーナ設備44Aの空気比よりも小さい空気比でバーナ加熱を行うよう空気比調整部40に空気比の設定値を与える。
この場合、
図8の各設備の配置関係に示すように、制御部42は、空気噴射設備4から遠い位置に配置されるバーナ設備44Aの空気比が0.9~1.0になるように設定し、空気噴射設備4に近い位置に配置されるバーナ設備44Bの空気比が空気噴射設備4から遠い位置に配置されるバーナ設備44Aの空気比よりも小さくなるように設定するとよい。
【0046】
空気噴射設備4から遠い位置に配置され空気比が0.9~1.0になるように設定されたバーナ設備44Aは、第1バーナ設備2として機能すると共に、空気噴射設備4に近い位置に配置されるバーナ設備44Bは、第2バーナ設備3として機能する。
そのため、空気比調整部40を備える2つのバーナ設備(44A、44B)とそれらの空気比を設定する制御部42を備えることにより、窒素酸化物と未燃アンモニアを含有する混合排ガス23を生成でき、空気噴射設備4によりアンモニアによる窒素酸化物の還元反応が促進される。
【0047】
次に、本実施形態に係る加熱炉の操業方法について説明する。
<加熱炉の操業方法>
本実施形態は、アンモニアを含有する第1燃料ガスを、前記第1燃料ガスの理論空気量に対する空気比が0.9~1.0となる燃焼用空気によりバーナ加熱を施す第1バーナ加熱ステップと、アンモニアを含有する第2燃料ガスを、前記第2燃料ガスの理論空気量に対する空気比が前記第1燃料ガスの理論空気量に対する空気比よりも低い空気比の燃焼用空気によりバーナ加熱を施す第2バーナ加熱ステップと、空気を噴射する空気噴射ステップと、を含む加熱炉の操業方法である。
【0048】
加熱炉において、アンモニアを含有する燃料ガスを燃焼させることにより窒素酸化物が発生し、窒素酸化物とアンモニアとが共存する混合排ガスが生成し、次いで生成した混合排ガスに酸素を含有する空気を噴射する。その結果、アンモニアによる窒素酸化物の還元反応が促進される。アンモニアが空気中の酸素によって酸化し、酸化したアンモニアが窒素酸化物を分解する。これにより混合排ガスに含まれる窒素酸化物と共にアンモニアも分解され、無害化される。
第1バーナ加熱と第2バーナ加熱の2つのバーナ加熱を組合せるのは、第1バーナ加熱の排ガス中に窒素酸化物を比較的多く含有させ、第2バーナ加熱の排ガス中に未燃アンモニアを比較的多く含有させておき、これらを混合することにより窒素酸化物とアンモニアとが共存する混合排ガスを生成するためである。
【0049】
図3に示す第1バーナ加熱2、第2バーナ設備3および空気噴射設備4を用いて、加熱炉の操業方法について説明する。
本実施形態は、アンモニアを含有する第1燃料ガス5を、第1燃料ガス5の理論空気量に対する空気比(単に、空気比と呼ぶことがある。)が0.9~1.0となる燃焼用空気12によりバーナ加熱を行う第1バーナ加熱を行う。ここで、理論空気量とは、燃料ガスを完全燃焼させるのに必要な空気量である。また、理論空気量に対する空気比とは、燃料ガスを完全燃焼させるのに必要な空気量に対する燃焼用空気としてバーナ設備に供給する空気量の比をいう。
【0050】
第1バーナ加熱の空気比を0.9~1.0とするのは、第1バーナ加熱の排ガス21に窒素酸化物を含有させるためである。第1バーナ加熱の空気比が0.9未満の場合には、アンモニアガスの燃焼が抑制され、第1バーナ加熱による排ガス21中で窒素酸化物に比べて未燃アンモニアの量が増加する。一方、第1バーナ加熱の空気比が1.0を超えると、第1燃料ガスに含まれるアンモニアの燃焼が促進され、排ガス21中の窒素酸化物の量が過多となって、混合排ガス23中の窒素酸化物を十分還元させることが難しい。
なお、第1バーナ加熱の空気比を0.9~1.0とすることにより生成する排ガス21に含まれる窒素酸化物の濃度は400~5000ppm程度である。第1バーナ加熱の排ガス21には未燃アンモニアも含有することがあるが、その濃度は空気比が0.9のときには5ppm以下であり、空気比が0.95~1.0場合にはほぼゼロとなる。これにより、第1バーナ加熱による排ガス21中には比較的多くの窒素酸化物が含まれる。
【0051】
一方、本実施形態において、アンモニアを含有する第2燃料ガスを、第2燃料ガスの理論空気量に対する空気比が第1燃料ガスの理論空気量に対する空気比よりも低い空気比の燃焼用空気によりバーナ加熱を行う第2バーナ加熱を行う。
第2バーナ加熱の排ガス22に未燃アンモニアを比較的多く含有させるためである。第2バーナ加熱の空気比が、第1バーナ加熱の空気比以上の場合には、排ガス22に含まれる未燃アンモニアによる排ガス21中の窒素酸化物を還元する効果が低下する。
【0052】
第2バーナ加熱は、第2燃料ガスの理論空気量に対する空気比が0.9未満であることが好ましい。第2バーナ加熱の排ガス22に含まれる未燃アンモニアの量が増加して、混合排ガス23中の窒素酸化物に対する還元反応が促進されるからである。第2バーナ加熱の空気比の下限は0.7とする。第2バーナ加熱の空気比が0.7未満では、第2バーナ加熱の燃焼が不安定になる。
【0053】
なお、第2バーナ加熱の排ガス22には、窒素酸化物と未燃アンモニアの両方が含まれることがあるが、第2バーナ加熱の空気比を第1バーナ加熱の空気比よりも小さくすることで、排ガス22には排ガス21よりも多くの未燃アンモニアが含有する。さらに、第2バーナ加熱の空気比を0.7以上0.9未満とすることにより、排ガス22に含まれる未燃アンモニアの濃度を10~24000ppmにすることができる。排ガス22に含まれる未燃アンモニアの濃度は、第2バーナ加熱の空気比が小さいほど増加して、空気比が0.85では1200ppm程度、空気比が0.8では6400ppm程度となる。この場合、排ガス22には窒素酸化物も含まれるものの、その濃度は400ppm以下であり、空気比が0.85の場合には15ppm程度まで低下する。つまり、第2バーナ加熱による排ガス22中に比較的多くの未燃アンモニアを含有させることができる。
【0054】
第1バーナ加熱により火炎が加熱炉内に噴射されると、排ガス21が加熱炉内で拡散する。このとき、
図3に示すように、加熱炉内の燃焼ガス(排ガス)のガス流れが生じると、排ガス21は加熱炉内のガス流れに沿って、第2バーナ設備3の方向に移動する。同様に、第2バーナ加熱により火炎が加熱炉内に噴射されると、第2バーナ加熱による排ガス22も加熱炉内のガス流れに沿って移動する。その結果、窒素酸化物を比較的多く含む排ガス21と、未燃アンモニアを比較的多く含む排ガス22とが加熱炉内で混合し、窒素酸化物と未燃アンモニアの両方を含有する混合排ガス23が生成される。混合排ガス23に含まれる窒素酸化物と未燃アンモニアの量のバランスは、第1バーナ加熱の空気比と第2バーナ加熱の空気比の設定により変更することができる。また、第1バーナ加熱を行う第1燃料ガス5の流量と、第2バーナ加熱を行う第2燃料ガス6の流量の比率を設定により変更できる。
【0055】
本実施形態において、窒素酸化物と未燃アンモニアの両方を含有する混合排ガス23に対して、空気噴射設備4を用いて空気13を噴射する。アンモニアによる窒素酸化物の還元反応は、一定量の酸素が存在することにより促進される、という知見に基づく。
すなわち、窒素酸化物とアンモニアの両方を含有する混合排ガス23に向けて、空気13を噴射することにより、空気13に含まれる酸素がアンモニアによる窒素酸化物の還元反応を促進する。これにより、混合排ガス23中の窒素酸化物とアンモニアを低減できる。空気噴射設備4を用いて噴射する気体には、酸素を含有する気体であればよく、空気中の窒素を取り除いたり、純酸素を加えたりするなど、改質した空気を噴射してもよい。
【0056】
図4は、混合排ガス23に空気を噴射した場合の化学反応を説明するための模式図である。第1バーナ加熱の排ガス21には、アンモニアの燃焼によって生成される窒素酸化物が未燃アンモニアよりも多く含まれている。第2バーナ加熱の排ガス22には、燃料ガスに含まれるアンモニアガスが未燃状態として残留したアンモニアが窒素酸化物よりも多く含まれている。そして、混合排ガス23は、これらの窒素酸化物と未燃アンモニアが混合された状態にあり、混合排ガスには酸素が噴射される。
【0057】
これにより、以下の反応が促進される。すなわち、アンモニア(NH3)は酸素によって酸化され、NHラジカルとHO2ラジカルが生成する。一方、混合排ガス23に含まれる窒素酸化物は、一酸化窒素NOが主体であり、NHラジカルによって一酸化窒素NOが還元され、窒素とOHラジカルが生成する。このように、混合排ガス23中の窒素酸化物が還元される。
一方、空気噴射設備4から噴射された空気13に含まれる酸素は、混合排ガス23中に未燃アンモニアが含有している間はアンモニアを分解し、NHラジカルを生成する。
つまり、混合排ガス23に噴射する酸素が十分あれば未燃アンモニアが分解されることになる。また、NHラジカルが十分生成すれば混合排ガス23中の窒素酸化物を低減できる。これにより混合排ガス23の窒素酸化物とアンモニアの両方を低減できる。
【0058】
以上のように、本実施形態では、第1バーナ加熱による排ガスと、第2バーナ加熱の排ガスとの混合排ガスに対して空気を噴射することにより、効果的に窒素酸化物と未燃アンモニアを分解できる。これにより、加熱炉1の炉外に窒素酸化物や未燃アンモニアが排出されるのを抑制できる。これに対して、特許文献2に開示される技術は、アンモニアを燃焼させるための空気比を予め設定していることから、窒素酸化物とアンモニアを共存させることが難しい。また、窒素酸化物とアンモニアを共存させたとしても、それらのバランスを調整することが難しい。そのため、火炉内における燃焼ガスの流れ方向においてバーナの下流側に追加空気供給部を設けて酸素を供給しても、アンモニアによる窒素酸化物の還元反応が効率的に進行しないという問題があった。そのため、アンモニアによる窒素酸化物の還元反応を進行させるために、還元雰囲気領域という一定の空間を設ける必要があった。
一方、上記実施形態によれば、第1バーナ加熱の空気比と第2バーナ加熱の空気比が所定の関係になるようにバーナ加熱を行うので、窒素酸化物と未燃アンモニアをバランスよく共存させることができ、アンモニアによる窒素酸化物の還元反応を効率的に進行させることが可能になる。
この場合、第1バーナ加熱による排ガス21と、第2バーナ加熱による排ガス22とが混合した混合排ガス23のガス温度は、700~1450℃にあることが好ましい。NHラジカルを生成し、窒素酸化物の還元反応が促進されるからである。
【0059】
混合排ガス23への空気13の噴射は、第1バーナ加熱による排ガス21に、第2バーナ加熱による排ガス22を混合させた混合排ガス23に対して行うのが好ましい。つまり、第1バーナ加熱による排ガス21を先に生成し、生成した排ガス21に対して、第2バーナ加熱による排ガス22を混合させるようにするとよい。
図3および
図5に示すバーナ設備は、いずれも加熱炉内の燃焼ガスのガス流れに対して、第2バーナ加熱設備3が第1バーナ設備2の下流側に配置されている。
【0060】
これに対して、
図6に第2バーナ加熱設備3が第1バーナ設備2の上流側に配置した例を示す。この場合、燃焼ガスのガス流れの上流側で第2バーナ設備3から未燃アンモニアを比較的多く含有する排ガス22が生成される。しかし、排ガス22が燃焼ガスのガス流れに沿って、第1バーナ設備2の位置に近づくと、第1バーナ設備2から噴射される火炎の領域に近づくことがある。特に、燃焼ガスのガス流れが速い場合には、第2バーナ設備3からの排ガス22は、炉壁に近い位置で下流方向に移動する。この場合、排ガス22に含まれる未燃アンモニアの一部が、第1バーナ設備2からの火炎によって燃焼し、排ガス22に含まれる未燃アンモニアが減少すると共に、一部は窒素酸化物となることがある。
その結果、第1バーナ設備2の下流側に形成される混合排ガス23に含まれる未燃アンモニアの量が減少し、アンモニアによる窒素酸化物の還元反応が阻害されることがある。
【0061】
以上から、第1バーナ加熱による排ガス21に、第2バーナ加熱による排ガス22を混合させることで混合排ガス23を形成し、これに対して空気の噴射を行う。
したがって、加熱炉1内では、加熱炉の内部におけるガス流れに沿って、ガス流れの上流側から、第1バーナ加熱、第2バーナ加熱および空気噴射が行われる。
【実施例0062】
以下、本実施形態の効果を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本発明の実施例として、
図3に示すバーナ設備を用いて、燃焼ガスのガス流れの下流側で排ガスを採取し、排ガス中に含まれる窒素酸化物および未燃アンモニアの濃度を測定した例について説明する。
【0063】
バーナ設備は、内部に燃焼ガスのガス流れF(
図3の左側から右側に向けて生じている流れ)に沿って、ガス流れの上流側から第1バーナ設備、第2バーナ設備を配置した。そして、第2バーナ設備のガス流れに沿った下流側に、空気噴射設備を備えた。
【0064】
第1バーナ設備および第2バーナ設備の燃料ガスには、アンモニアとメタン(CH
4)との混合ガスを用いた。
図3においては、アンモニアはアンモニガス供給系統25、26から混合部16、17に供給され、メタンは石炭ガス供給系統27、28から混合部16、17に送られて、アンモニアとメタンとの混合ガスを生成し、第1燃料ガス5、第2燃料ガス6として、バーナノズルに供給した。
ただし、アンモニアガス供給系統25、26と、石炭ガス供給系統27、28には流量調整弁が備えられ、混合ガスの混合比率を調整した。また、燃料量空気供給系統18、19にも流量調整弁が備えられ、第1燃料ガス5と第2燃料ガス6の理論空気量に対する空気比を調整できるように構成した。
一方、空気噴射設備4からは酸素を含有する空気が、第1バーナ設備から排出される排ガスと第2バーナから排出される排ガスとの混合排ガスに噴射されるように構成した。また、空気供給系統29には流量調整弁が備えられていて、混合排ガスの噴射する空気の有無(ON/OFF)を変更できるようになっている。
【0065】
第1バーナ設備および第2バーナ設備は、定格容量80万kcal/hrの熱量を出力できる設備である。第1バーナ設備と第2バーナ設備とは、燃焼ガスの流れ方向で2m離れた位置に配置し、さらにその下流側で2m離れた位置に空気噴射設備を設けた。
【0066】
第1バーナ設備と第2バーナ設備に供給されるアンモニアとメタンの流量は、アンモニアとメタンとの熱量比率が40%、60%の場合に、アンモニアの流量を79Nm3/hr、メタンの流量を51Nm3/hrとして燃焼を行った。また、アンモニアの燃料ガスに使用せずにメタンのみを用いる場合には、メタンの流量は84Nm3/hrであった。空気噴射設備から噴射される空気の流量は0.1Nm3/hrとした。
本実施例では、第1バーナ加熱設備と第2バーナ加熱設備での混合ガスの混合比率および空気比を変更して燃焼実験を行い、空気噴射設備4よりも燃焼ガスのガス流れFに沿った下流側で排ガスを採取した。そして、排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)の濃度と、未燃アンモニア(NH3)の濃度、および二酸化炭素(CO2)の濃度を測定した。
【0067】
表1に、発明例および比較例をまとめた。なお、排ガス中の二酸化炭素(CO2)排出量については、アンモニアを燃料ガスとして使用しない従来例(製造No.3)を基準(1.0)として、各条件での比率を表中に示している。
【0068】
本実施例は、少数のバーナ設備を用いた燃焼実験であるため、加熱炉のように多数のバーナ設備が配置される場合ほど、窒素酸化物や未燃アンモニアが排出されない条件となっている。そのため、窒素酸化物濃度と未燃アンモニア濃度の基準値は通常の加熱炉よりも厳しく設定し、窒素酸化物濃度の基準値を100ppm、未燃アンモニア濃度の基準値を20ppmに設定した。窒素酸化物濃度と未燃アンモニア濃度のいずれかが基準値を超える場合を不合格、いずれも基準値以下の場合を合格として判定を行った。
【0069】
従来例(製造No.3)は、第1バーナ加熱および第2バーナ加熱でアンモニアを燃料ガスとして使用しなかった例である。この場合、窒素酸化物および未燃アンモニアの排出は抑制される。ただし、従来のバーナ設備と同様に二酸化炭素の排出量が多いという問題がある。
【0070】
比較例(製造No.4)は、第2バーナ加熱のみアンモニアとメタンの混合ガスを用いたが、空気噴射設備4からの空気噴射を行わなかった例である。アンモニアを燃料ガスに使用することで二酸化炭素の濃度は従来例に比べて低減されるものの、窒素酸化物と未燃アンモニアの排出量が多い。
比較例(製造No.5)は、第1バーナ加熱のみアンモニアとメタンの混合ガスを用いたが、空気噴射設備4からの空気噴射を行わなかった例である。比較例(製造No.5)では、第2バーナ加熱の排ガス中に未燃アンモニアを含まないため、第1バーナ加熱で生成する排ガス中に含まれる窒素酸化物が、還元されなかった。また、第1バーナ加熱の排ガスは、少量の未燃アンモニアを含むことがあるものの、第2バーナ加熱により未燃アンモニアが酸化され、窒素酸化物の生成が促進された。そのため、排ガス中には未燃アンモニアが検出されなかったが、窒素酸化物の濃度が増加した。
【0071】
比較例(製造No.6)は、第1バーナ加熱および第2バーナ加熱共にアンモニアとメタンとの混合ガスを燃焼させたものであるが、空気噴射設備4からの空気噴射を行わなかった例である。この場合、第1バーナ加熱と第2バーナ加熱による混合排ガスに酸素が供給されないので、未燃アンモニアによる窒素酸化物の還元反応が促進されず、窒素酸化物および未燃アンモニアのいずれも基準値を超える結果となった。
【0072】
比較例(製造No.7)は、第1バーナ加熱および第2バーナ加熱共にアンモニアとメタンとの混合ガスを燃焼させ、空気噴射設備4からの空気噴射を行なった例である。ただし、第1バーナ加熱における空気比が1.0を超える条件であったため、第1バーナ加熱の排ガス中に窒素酸化物が多量に生成したと考えられる。そのため、第2バーナ加熱の排ガス中に未燃アンモニアが生成しても、混合排ガス中の窒素酸化物の濃度が高かったため、排ガス中に窒素酸化物が残留したと考えられる。
【0073】
これに対して、発明例(製造No.1)は、第1バーナ加熱および第2バーナ加熱共にアンモニアとメタンとの混合ガスを燃焼させ、第1バーナ加熱における空気比が0.9~1.0の範囲であり、第2バーナ加熱における空気比が第1バーナ加熱における空気比よりも低い条件となっている。さらに、空気噴射設備4により第1バーナ加熱の排ガスと第2バーナ加熱の排ガスとの混合排ガスに向けて空気が噴射されている。これにより、排ガス中に含まれる二酸化炭素の量を従来例に比べて大幅に低減できるととともに、排ガス中に含まれる窒素酸化物と未燃アンモニアの濃度を低減することができた。
さらに、発明例(製造No.2)では、第2バーナ加熱における空気比を0.9未満とすることで、発明例1と同等の未燃アンモニアの濃度を維持しながら、窒素酸化物の濃度を低減できた。
【0074】