(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126841
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】組織拡張装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20240912BHJP
【FI】
A61M25/10 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035543
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】八木 一平
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB08
4C267BB09
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB19
4C267BB20
4C267BB26
4C267BB29
4C267BB31
4C267BB33
4C267BB39
4C267BB40
4C267BB42
4C267BB62
4C267CC20
4C267CC23
4C267HH01
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】安価で安全性に優れ、且つ、対象組織に対する温度及び圧力を独立して制御する。
【解決手段】組織拡張装置は、対象組織に対する温度及び圧力を制御しかつ前記対象組織を拡張及び固定可能に構成される組織拡張装置において、前記対象組織に接触する接触部の内部に流体を流入させる入口流路と、前記入口流路から流入した前記流体を外部に流出させる出口流路と、を有し、前記入口流路の流路断面積は、前記出口流路の流路断面積よりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象組織に対する温度及び圧力を制御しかつ前記対象組織を拡張及び固定可能に構成される組織拡張装置において、
前記対象組織に接触する接触部の内部に流体を流入させる入口流路と、
前記入口流路から流入した前記流体を外部に流出させる出口流路と、を有し、
前記入口流路の流路断面積は、前記出口流路の流路断面積よりも小さい、
組織拡張装置。
【請求項2】
前記組織拡張装置は、バルーンカテーテルであり、
前記接触部を有し、前記流体の供給によって膨張するバルーンと、
前記バルーンの内部に前記流体を流入させる前記入口流路と、前記バルーンの外部に前記流体を流出させる前記出口流路と、を有する流路部材と、を備える、
請求項1に記載の組織拡張装置。
【請求項3】
前記流路部材は、単一の部材で構成される、
請求項2に記載の組織拡張装置。
【請求項4】
前記流路部材は、前記バルーンカテーテルの基端から先端近傍まで延びており、
前記バルーンは、前記流路部材の先端を覆うように設けられ、
前記入口流路は、前記流路部材の基端から先端にわたって開口しており、
前記流路部材は、
前記出口流路において前記入口流路の先端開口近傍の部分を閉塞する閉塞部と、
前記出口流路において前記バルーンの基端近傍の部分を前記バルーンの内部に通じさせる開口部と、を有する、
請求項2又は3に記載の組織拡張装置。
【請求項5】
前記流路部材は、前記バルーンカテーテルの基端から先端近傍まで延びており、
前記バルーンは、前記流路部材の先端を覆うように設けられ、
前記入口流路及び前記出口流路の各々は、前記流路部材の基端から先端までの間の一部で開口しており、
前記流路部材は、
前記入口流路において前記バルーンの基端近傍の部分、前記バルーンの先端近傍の部分、又は、前記バルーンの先端と基端との間の中央部分を前記バルーンの内部に通じさせる入口側開口部と、
前記出口流路において前記バルーンの先端近傍の部分、前記バルーンの基端近傍の部分、又は、前記バルーンの先端近傍の部分及び前記バルーンの基端近傍の部分の両方を前記バルーンの内部に通じさせる出口側開口部と、を有する、
請求項2又は3に記載の組織拡張装置。
【請求項6】
請求項1から3の何れか一項に記載の組織拡張装置と、
前記流体として互いに異なる温度の熱媒体を貯留する複数の容器と、を備える、
システム。
【請求項7】
前記複数の容器から前記接触部の内部に流れる前記熱媒体の流量を調整する流量調整弁と、
前記流量調整弁を制御する流量制御部と、を更に備え、
前記流量制御部は、前記接触部の内部に前記熱媒体を流す時間と前記接触部の内部の温度との関係を示す予め取得したデータに基づいて、前記流量調整弁に前記熱媒体の流量を調整させる、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数の容器から前記接触部の内部に前記熱媒体が流れるように前記複数の容器に対して圧縮空気を供給するコンプレッサと、
前記コンプレッサから供給される前記圧縮空気の圧力を調整する圧力調整器と、
前記圧力調整器を制御する圧力制御部と、を更に備え、
前記圧力制御部は、前記接触部の内部の目標圧力に基づいて、前記圧力調整器に前記圧縮空気の圧力を調整させる、
請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数の容器に貯留される前記熱媒体の温度を測定する温度測定部と、
前記複数の容器に貯留される前記熱媒体に熱エネルギーを付与する熱源部と、
前記熱源部を制御する熱源制御部と、を更に備え、
前記熱源制御部は、前記温度測定部の測定温度に基づいて、前記複数の容器に貯留される前記熱媒体の温度が予め設定した温度範囲に含まれるように前記熱源部に前記熱エネルギーを付与させる、
請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記接触部の内部の圧力を減圧するための減圧機構を更に備える、
請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記出口流路に通じる部分を開閉するための開閉弁を更に備える、
請求項6に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織拡張装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
消化管の治療後に、治療箇所の線維化が進むことで狭窄をきたす線維性狭窄が知られている。線維性狭窄は、外科手術によって切除することができる。例えば、線維性狭窄の非侵襲な治療方法としては、消化管の狭窄箇所にバルーンカテーテルを配し、バルーンを膨らませることで狭窄箇所を拡張するバルーン拡張術が知られている。例えば、バルーンカテーテルを用いた治療法としては、バルーンを病変部へ案内し、バルーンを加熱することで病変部を焼灼するバルーンアブレーション術も知られている。例えば、特許文献1には、管腔組織に対する加熱及び加圧を同時に行い、かつ、管腔組織を膨張及び拡張するように構成されたカテーテルを備えるシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、管腔組織に対する加熱及び加圧を同時に行う構成では、対象組織に対する温度だけを上げ、圧力を下げたい場合等に対応することは困難である。一方、バルーン内部の温度及び圧力を独立して制御する構成としては、バルーン内部又は表面に発熱体(例えば、RF電源、レーザー発光部等)を設け、バルーン内部に送る熱媒体の圧力を調整する構成が知られている。しかし、このような構成では、高額かつ複雑な制御装置を要するため、安全面でリスクを伴う可能性が高い。そのため、これらの課題を解決する上で改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、安価で安全性に優れ、且つ、対象組織に対する温度及び圧力を独立して制御することができる組織拡張装置及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る組織拡張装置は、対象組織に対する温度及び圧力を制御しかつ前記対象組織を拡張及び固定可能に構成される組織拡張装置において、前記対象組織に接触する接触部の内部に流体を流入させる入口流路と、前記入口流路から流入した前記流体を外部に流出させる出口流路と、を有し、前記入口流路の流路断面積は、前記出口流路の流路断面積よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、安価で安全性に優れ、且つ、対象組織に対する温度及び圧力を独立して制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施形態に係るバルーン内部循環構造の説明図。
【
図3】実施形態に係る入口流路及び出口流路の流路断面積の説明図。
【
図4】実施形態に係る独立制御(圧力-温度)の方針の説明図。
【
図5】実施形態に係るバルーン表面の温度推移の説明図。
【
図6】実施形態に係るバルーンにおける投入熱量の説明図。
【
図7】実施形態に係る加熱・牽引型バルーンの概略図。
【
図9】実施形態の第1変形例に係る流路部材の説明図。
【
図10】実施形態の第2変形例に係る流路部材の説明図。
【
図11】実施形態の第3変形例に係る流路部材の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態においては、消化管等の対象組織を拡張するための組織拡張装置を備えるシステムの一例として、バルーンカテーテルを備えるシステムの例を挙げて説明する。
【0010】
<システム>
図1は、実施形態に係るシステム1の構成図である。
図2は、実施形態に係るバルーン内部循環構造の説明図である。
図3は、実施形態に係る入口流路及び出口流路の流路断面積Ain,Aoutの説明図である。
図1から
図3を併せて参照し、システム1は、バルーンカテーテル2(組織拡張装置の一例)と、複数の容器3A,3Bと、流量調整弁4と、コンプレッサ5と、圧力調整器6と、加圧排気弁7と、温度測定部8A,8Bと、熱源部9A,9Bと、導通弁10と、減圧機構11と、開閉弁12と、複数の配管30~36,40,44と、制御装置50と、を備える。
【0011】
<バルーンカテーテル>
バルーンカテーテル2は、消化管(対象組織の一例)に対する温度及び圧力を制御しかつ消化管を拡張及び固定可能に構成される。バルーンカテーテル2は、消化管に接触する接触部の内部に流体を流入させる入口流路22と、入口流路22から流入した流体を外部に流出させる出口流路23と、を有する。入口流路22の流路断面積Ain(以下「入口流路断面積Ain」ともいう。)は、出口流路23の流路断面積Aout(以下「出口流路断面積Aout」ともいう。)よりも小さい。
【0012】
例えば、入口流路断面積Ainと出口流路断面積Aoutとの比Ain/Aoutは、1.0/1.1以下にするとよい。例えば、比Ain/Aoutは、バルーンカテーテル2の製造上のばらつき等を加味して設定してもよい。なお、比Ain/Aoutは、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0013】
バルーンカテーテル2は、バルーン20と、流路部材21と、を備える。バルーン20は、消化管に接触する接触部(例えば、外表面)を有する。バルーン20は、流体(例えば、熱媒体等の液体)の供給によって膨張する。流路部材21は、バルーン20の内部に流体を流入させる入口流路22と、バルーン20の外部に流体を流出させる出口流路23と、を有する。
【0014】
流路部材21は、単一の部材で構成される。流路部材21は、一方向に長手を持つ軸部材である。
図3は、流路部材21をその長手方向から見た図(言い換えると、流路部材21をその長手方向と直交する断面で切断した図)に相当する。入口流路22及び出口流路23は、円筒形状の流路部材21の内部に形成される。入口流路22は、出口流路23よりも小さい半円形状断面を有する。入口流路22及び出口流路23は、流路部材21の内部において仕切り壁24によって仕切られている。
【0015】
例えば、流路部材21の外径D(外側直径)は、1.8mm以上3.0mm以下の長さに設定される。例えば、流路部材21の内側半径Rは、0.4mm以上1.6mm以下の長さに設定される。例えば、流路部材21の中心から仕切り壁24の一面までの間隔Msは、0.1mm以上0.3mm以下の長さに設定される。例えば、仕切り壁24の厚みMtは、0.1mm以上0.3mm以下の長さに設定される。
【0016】
本実施形態では、流路部材21の外径Dは2.4mm、流路部材21の内側半径Rは1.0mm、流路部材21の中心から仕切り壁24の一面までの間隔Msは0.2mm、仕切り壁24の厚みMtは0.2mmに設定される。このように各寸法を設定することで、制御装置出力圧(コンプレッサ5の出力に相当)に対するバルーン内部圧(バルーン20内部の圧力に相当)を29%に低減することができる。これにより、カテーテル圧損比率の改善を実現することができる。
【0017】
流路部材21は、バルーンカテーテル2の基端から先端近傍まで延びている。バルーン20は、流路部材21の先端を覆うように設けられる。バルーン20は、流路部材21の基端側から先端を超える部分にわたって流路部材21を覆うように設けられる。入口流路22は、流路部材21の基端から先端にわたって開口している。
【0018】
流路部材21は、出口流路23において入口流路22の先端開口近傍の部分を閉塞する閉塞部25と、出口流路23においてバルーン20の基端近傍の部分をバルーン20の内部に通じさせる開口部26と、を有する。
【0019】
例えば、閉塞部25は、出口流路23の先端開口に対して着脱可能に取り付けられてもよい。例えば、閉塞部25は、プラグ等であってもよい。例えば、閉塞部25は、上記に限らず、流路部材21と同一の部材で一体に設けられてもよい。例えば、閉塞部25の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0020】
例えば、開口部26は、出口流路23においてバルーン20の基端近傍の部分に形成された貫通孔である。図の例では、開口部26は1箇所形成されているが、これに限らない。例えば、開口部26は複数形成されてもよい。例えば、開口部26の個数(態様)は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0021】
上記構成によれば、閉塞部25により、出口流路23において入口流路22の先端開口近傍の部分が閉塞されている。そのため、入口流路22の先端開口から流入した流体が出口流路23の先端開口に入り込むことはない。加えて、開口部26により、出口流路23においてバルーン20の基端近傍の部分がバルーン20の内部に通じている。そのため、バルーン20内部に流入した流体は、バルーン20の基端近傍へ流れた後に出口流路23に入るようになる。
図3中において、流体の流れの一例を矢印で示す。したがって、バルーン20内部の広い範囲で流体を循環させることができる。
【0022】
<容器>
システム1は、流体として互いに異なる温度の熱媒体を貯留する2つ(複数の一例)の容器3A,3Bを備える。2つの容器3A,3Bは、バルーンカテーテル2に供給するための第1熱媒体(例えば、熱水)を貯留する第1タンク3Aと、第1熱媒体よりも低温の第2熱媒体(例えば、冷水)を貯留する第2タンク3Bと、である。
【0023】
例えば、熱水の温度は、40℃以上の温度(例えば95℃程度)に設定される。例えば、冷水の温度は、40℃未満の温度(例えば20℃程度)に設定される。例えば、第1熱媒体及び第2熱媒体は、希釈造影剤、蒸留水などであってもよい。例えば、第1タンク3A及び第2タンク3Bは、耐熱性及び耐圧性に優れる金属製の容器であることが好ましい。
【0024】
図の例では、システム1が2つの容器3A,3Bを備える例を示したが、これに限定されない。例えば、システム1は、3つ以上の容器3A,3Bを備えてもよい。例えば、容器3A,3Bは複数設けられていればよい。例えば、容器3A,3Bの設置数は、設計仕様に応じて変形することができる。
【0025】
<流量調整弁>
流量調整弁4は、複数の容器3A,3Bからバルーン20内部に流れる熱媒体の流量を調整する。流量調整弁4は、制御装置50と電気的に接続される。例えば、流量調整弁4は、電動三方弁であってもよい。
【0026】
複数の容器3A,3Bと流量調整弁4との間には、第1熱媒体を供給するための第1熱媒管33(以下「熱水供給管33」ともいう。)と、第2熱媒体を供給するための第2熱媒管34(以下「冷水供給管34」ともいう。)と、が設けられる。熱水供給管33及び冷水供給管34は、システム1を構成する複数の配管に含まれる。
【0027】
熱水供給管33の一端(上流端)は、第1タンク3Aの内部(具体的には、熱水の液面よりも下方)に配置される。熱水供給管33の他端(下流端)は、流量調整弁4に接続される。冷水供給管34の一端(上流端)は、第2タンク3Bの内部(具体的には、冷水の液面よりも下方)に配置される。冷水供給管34の他端(下流端)は、流量調整弁4に接続される。
【0028】
<コンプレッサ>
コンプレッサ5は、複数の容器3A,3Bからバルーン20内部に熱媒体が流れるように複数の容器3A,3Bに対して圧縮空気を供給する。例えば、コンプレッサ5の出力(圧縮空気を供給する圧力)は、2MPa以下(例えば0.4MPa程度)に設定されてもよい。コンプレッサ5は、制御装置50と電気的に接続される。
【0029】
コンプレッサ5と複数の容器3A,3Bとの間には、圧縮空気を供給するための空気供給管30が設けられる。空気供給管30は、システム1を構成する複数の配管に含まれる。空気供給管30の一端(上流端)は、コンプレッサ5に接続される。
【0030】
空気供給管30は、第1タンク3A側に分岐する第1分岐管31と、第2タンク3B側に分岐する第2分岐管32と、を備える。第1分岐管31の一端(上流端)及び第2分岐管32の一端(上流端)は、空気供給管30において第1分岐管31及び第2分岐管32が分岐する分岐部に相当する。第1分岐管31の他端(下流端)は、第1タンク3Aの内部(具体的には、熱水の液面よりも上方)に配置される。第2分岐管32の他端(下流端)は、第2タンク3Bの内部(具体的には、冷水の液面よりも上方)に配置される。
【0031】
<圧力調整器>
圧力調整器6は、コンプレッサ5から供給される圧縮空気の圧力を調整する。圧力調整器6は、制御装置50と電気的に接続される。圧力調整器6は、空気供給管30の途中に設けられる。圧力調整器6は、コンプレッサ5の下流かつ分岐部の上流に配置される。
【0032】
<加圧排気弁>
加圧排気弁7は、コンプレッサ5から供給される圧縮空気を排出するためのバルブである。例えば、加圧排気弁7は、手動で操作可能に構成されてもよい。例えば、加圧排気弁7の操作により、空気供給管30の内部から圧縮空気の一部を排出することができる。例えば、加圧排気弁7の開度を調整することで、複数の容器3A,3Bに供給される圧縮空気の圧力を調整することができる。
【0033】
<温度測定部>
温度測定部8A,8Bは、複数の容器3A,3Bに貯留される熱媒体の温度を測定する。温度測定部8A,8Bは、制御装置50と電気的に接続される。図の例では、温度測定部8A,8Bは、容器3A,3Bの数に対応して2つ設けられる。2つの温度測定部8A,8Bは、第1タンク3Aに貯留される熱水の温度を測定する熱水温度測定部8Aと、第2タンク3Bに貯留される冷水の温度を測定する冷水温度測定部8Bと、である。例えば、温度測定部8A,8Bは、熱電対及び温度計により構成されてもよい。
【0034】
<熱源部>
熱源部9A,9Bは、複数の容器3A,3Bに貯留される熱媒体に熱エネルギーを付与する。熱源部9A,9Bは、制御装置50と電気的に接続される。図の例では、熱源部9A,9Bは、容器3A,3Bの数に対応して2つ設けられる。2つの熱源部9A,9Bは、第1タンク3Aに貯留される熱水に熱エネルギーを付与する熱水側熱源9Aと、第2タンク3Bに貯留される冷水に熱エネルギーを付与する冷水側熱源9Bと、である。例えば、熱源部9A,9Bは、電熱線により構成されてもよい。
【0035】
<導通弁>
導通弁10は、流量調整弁4で調整された流体をバルーン20内部に導くためのバルブである。例えば、導通弁10は、流量調整弁4で調整された流体の流れ方向に対して直角方向に流体を導くように構成されてもよい。導通弁10と流量調整弁4との間には、流体を導くための導通管35が設けられる。導通管35は、システム1を構成する複数の配管に含まれる。導通管35の一端(上流端)は、流量調整弁4に接続される。導通管35の他端(下流端)は、導通弁10に接続される。
【0036】
導通弁10とバルーンカテーテル2との間には、流体を流すための2ラインチューブ40が設けられる。2ラインチューブ40は、システム1を構成する複数の配管に含まれる。2ラインチューブ40の一端(流体供給時の上流端)は、導通弁10に接続される。2ラインチューブ40の他端(流体供給時の下流端)は、バルーンカテーテル2(例えば、流路部材21の基端)に接続される。
【0037】
例えば、導通弁10は、2ラインチューブ40における流体の流れ方向に対して直角方向に流体を導くように構成されてもよい。2ラインチューブ40は、流路部材21の入口流路22に通じる入口管部41と、流路部材21の出口流路23に通じる出口管部42と、を備える。出口管部42において導通弁10近傍は、栓43等で塞がれている。
【0038】
<減圧機構>
減圧機構11は、バルーン20内部の圧力を減圧するための機構である。例えば、減圧機構11は、バルーン内減圧用ピストンである。減圧機構11は、手動で操作可能に構成される。例えば、減圧機構11の操作により、バルーン20内部の圧力を減圧することができる。例えば、減圧機構11の操作により、バルーン20内部の液体を出すことができる。
【0039】
導通弁10と減圧機構11との間には、バルーン20内部の圧力を減圧するための減圧管36が設けられる。減圧管36は、システム1を構成する複数の配管に含まれる。減圧管36の一端(上流端)は、導通弁10に接続される。減圧管36の他端(下流端)は、減圧機構11(具体的には、ピストンを収容するシリンダの底部)に接続される。例えば、導通弁10は、減圧管36における流体の流れ方向に対して直角方向に流体を導くように構成されてもよい。
【0040】
<開閉弁>
開閉弁12は、出口流路23に通じる部分を開閉するためのバルブである。開閉弁12は、2ラインチューブ40の出口管部42から分岐する排水管44の途中に設けられる。排水管44は、システム1を構成する複数の配管に含まれる。排水管44の下端(下流端)は、排水ビン45内に開口している。
【0041】
例えば、開閉弁12は、手動で操作可能に構成されてもよい。例えば、開閉弁12の操作により、バルーン20内部から排水ビン45内に液体を排出することができる。例えば、開閉弁12の開度を調整することで、バルーン20内部の圧力を調整してもよい。
【0042】
<制御装置>
制御装置50は、流量制御部51と、圧力制御部52と、熱源制御部53と、記憶部54と、を備える。
流量制御部51は、流量調整弁4を制御する。流量制御部51は、バルーン20内部に熱媒体を流す時間とバルーン20内部の温度との関係を示す予め取得したデータに基づいて、流量調整弁4に熱媒体の流量を調整させる。例えば、バルーン20内部に熱媒体を流す時間とバルーン20内部の温度との関係を示すデータは、記憶部54に予め記憶されていてもよい。
【0043】
圧力制御部52は、圧力調整器6を制御する。圧力制御部52は、バルーン20内部の目標圧力に基づいて、圧力調整器6に圧縮空気の圧力を調整させる。例えば、バルーン20内部の目標圧力は、記憶部54に予め記憶されていてもよい。
【0044】
熱源制御部53は、熱源部9A,9Bを制御する。熱源制御部53は、温度測定部8A,8Bの測定温度に基づいて、複数の容器3A,3Bに貯留される熱媒体の温度が予め設定した温度範囲に含まれるように熱源部9A,9Bに熱エネルギーを付与させる。例えば、予め設定した温度範囲に関するデータは、記憶部54に予め記憶されていてもよい。
【0045】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態のバルーンカテーテル2は、消化管に対する温度及び圧力を制御しかつ消化管を拡張及び固定可能に構成される。バルーンカテーテル2は、消化管に接触するバルーン20内部に流体を流入させる入口流路22と、入口流路22から流入した流体を外部に流出させる出口流路23と、を有する。入口流路断面積Ainは、出口流路断面積Aoutよりも小さい。
この構成によれば、入口流路断面積Ainが出口流路断面積Aoutよりも小さいことで、入口流路22を通じた流体の流入によりバルーン20内部に圧力を付与する場合に、入口流路22において圧力損失が生じる。そのため、入口流路断面積Ainが出口流路断面積Aout以上の場合と比較して、バルーン20内部に付与される圧力を低くすることができる。これにより、消化管に対する温度だけを上げ、圧力を下げたい場合等に容易に対応することができる。加えて、従来のバルーン内部の温度及び圧力を独立して制御する構成(例えば、バルーン内部又は表面に発熱体を設け、バルーン内部に送る熱媒体の圧力を調整する構成)のように、高額かつ複雑な制御装置を要しない。したがって、安価で安全性に優れ、且つ、消化管に対する温度及び圧力を独立して制御することができる。
【0046】
本実施形態では、バルーンカテーテル2は、接触部を有し、流体の供給によって膨張するバルーン20と、バルーン20の内部に流体を流入させる入口流路22と、バルーン20の外部に流体を流出させる出口流路23と、を有する流路部材21と、を備える。
この構成によれば、バルーン20及び流路部材21を備えたバルーンカテーテル2の簡単な構成で、バルーン20内部の温度及び圧力を独立して制御することができる。
【0047】
本実施形態では、流路部材21は、単一の部材で構成される。
この構成によれば、流路部材21が複数の部材で構成される場合と比較して、部品点数を削減することができる。したがって、バルーンカテーテル2の構成を簡素化し、安価で安全性に優れる構成を実現することができる。
【0048】
本実施形態では、流路部材21は、バルーンカテーテル2の基端から先端近傍まで延びている。バルーン20は、流路部材21の先端を覆うように設けられる。入口流路22は、流路部材21の基端から先端にわたって開口している。流路部材21は、出口流路23において入口流路22の先端開口近傍の部分を閉塞する閉塞部25と、出口流路23においてバルーン20の基端近傍の部分をバルーン20の内部に通じさせる開口部26と、を有する。
例えば、入口流路22及び出口流路23の両方が流路部材21の基端から先端にわたって開口している場合は、入口流路22の先端開口から流入した流体が出口流路23の先端開口に入り込む。これにより、バルーン20内部に流入した流体は、バルーン20の基端近傍へは流れず、バルーン20の先端近傍で滞留するようになるため、バルーン20内部の広い範囲で流体を循環させにくい。これに対し本構成によれば、閉塞部25により、出口流路23において入口流路22の先端開口近傍の部分が閉塞されることで、入口流路22の先端開口から流入した流体が出口流路23の先端開口に入り込むことはない。加えて、開口部26により、出口流路23においてバルーン20の基端近傍の部分をバルーン20の内部に通じていることで、バルーン20内部に流入した流体は、バルーン20の基端近傍へ流れた後に出口流路23に入るようになる。したがって、バルーン20内部の広い範囲で流体を循環させることができる。
【0049】
本実施形態のシステム1は、上記のバルーンカテーテル2と、流体として互いに異なる温度の熱媒体を貯留する複数の容器3A,3Bと、を備える。
この構成によれば、複数の容器3A,3Bからバルーン20内部に熱媒体を流すことができる。したがって、1つの容器のみを備える場合と比較して、所望の温度の熱媒体をバルーン20内部に速やかに流すことができる。
【0050】
本実施形態では、システム1は、複数の容器3A,3Bからバルーン20内部に流れる熱媒体の流量を調整する流量調整弁4と、流量調整弁4を制御する流量制御部51と、を更に備える。流量制御部51は、バルーン20内部に熱媒体を流す時間とバルーン20内部の温度との関係を示す予め取得したデータに基づいて、流量調整弁4に熱媒体の流量を調整させる。
この構成によれば、予め取得したデータに基づいた流量制御部51の制御により、流量調整弁4の操作に人手を要しない。したがって、システム1の自動化に寄与する。例えば、バルーン20内部に流れる熱媒体の流量調整を自動で行うことができる。
【0051】
本実施形態では、システム1は、複数の容器3A,3Bからバルーン20内部に熱媒体が流れるように複数の容器3A,3Bに対して圧縮空気を供給するコンプレッサ5と、コンプレッサ5から供給される圧縮空気の圧力を調整する圧力調整器6と、圧力調整器6を制御する圧力制御部52と、を更に備える。圧力制御部52は、バルーン20内部の目標圧力に基づいて、圧力調整器6に圧縮空気の圧力を調整させる。
この構成によれば、バルーン20内部の目標圧力に基づいた圧力制御部52の制御により、圧力調整器6の操作に人手を要しない。したがって、システム1の自動化に寄与する。例えば、バルーン20内部の圧力調整を自動で行うことができる。
【0052】
本実施形態では、システム1は、複数の容器3A,3Bに貯留される熱媒体の温度を測定する温度測定部8A,8Bと、複数の容器3A,3Bに貯留される熱媒体に熱エネルギーを付与する熱源部9A,9Bと、熱源部9A,9Bを制御する熱源制御部53と、を更に備える。熱源制御部53は、温度測定部8A,8Bの測定温度に基づいて、複数の容器3A,3Bに貯留される熱媒体の温度が予め設定した温度範囲に含まれるように熱源部9A,9Bに熱エネルギーを付与させる。
この構成によれば、温度測定部8A,8Bの測定温度に基づいた熱源制御部53の制御により、熱源部9A,9Bの操作に人手を要しない。したがって、システム1の自動化に寄与する。例えば、複数の容器3A,3Bに貯留される熱媒体の温度調整を自動で行うことができる。
【0053】
本実施形態では、システム1は、バルーン20内部の圧力を減圧するための減圧機構11を更に備える。
この構成によれば、減圧機構11の操作により、バルーン20内部の圧力を減圧することができる。例えば、バルーン20内部の圧力を減圧するために新たにコンプレッサ等を設ける場合と比較して、システム1の構成を簡素化することができる。
例えば、内視鏡等からバルーン20を引き抜く際に、バルーン20内部に流体が入っていると、引き抜きにくい。これに対し本構成によれば、減圧機構11によりバルーン20内部の流体を出すことができるため、バルーン20を容易に引き抜くことができる。
【0054】
本実施形態では、システム1は、出口流路23に通じる部分を開閉するための開閉弁12を更に備える。
この構成によれば、開閉弁12の操作により、バルーン20内部から液体を排出することができる。例えば、開閉弁12の開度を調整することで、バルーン20内部の圧力を調整することができる。
【0055】
<バルーン内部の温度及び圧力の制御の一例>
例えば、バルーン内部の温度及び圧力の制御は、以下の手順で行ってもよい。
バルーンカテーテルの利用者(例えば、医師)は、まず内視鏡を患者の体内に挿入する。例えば、内視鏡の先端部を、狭窄箇所の近傍に配置する。利用者は、内視鏡の鉗子チャネルを通して造影剤を狭窄箇所に注入する。その後、狭窄箇所をエックス線により造影することで、狭窄箇所の長さや径などの情報を得る。次に、利用者は、内視鏡の鉗子チャネルにバルーンカテーテルを通す。例えば、バルーンが狭窄箇所に亘って存在するように、バルーンカテーテルを進める。利用者は、制御装置を操作し、制御装置による拡張制御を開始させる。
【0056】
拡張制御を開始する際は、まず、対象組織の熱変性温度(例えば65℃)以上の熱水を、バルーン内部に供給する。これにより、バルーン内部を所定温度に加熱する。加熱後に、冷水(例えば0℃以上37℃以下の温度の水)をバルーン内部に供給する。
【0057】
例えば、対象組織を単に加熱するのみではタンパク質は収縮する。これに対し本実施形態によれば、加熱後の冷却により、対象組織のタンパク質を拡げつつ、拡張したまま固めることができる。
【0058】
例えば、バルーン内部の温度が65℃を超える前に、バルーン内部に供給する流体を熱水から冷水に切り換える。なお、冷水への切り換えタイミングは、上記に限らず、要求仕様に応じて変更することができる。
【0059】
次に、バルーン内部の圧力調整を行う。例えば、バルーン内部の圧力を、0MPa以上0.7MPa以下の圧力に調整する。このような手順により、バルーン内部の温度及び圧力を独立して制御することができる。
【0060】
<独立制御(圧力-温度)の方針>
図4は、実施形態に係る独立制御(圧力-温度)の方針の説明図である。
図4において、縦軸は圧力、横軸は温度を示す。
本発明者は、圧力と温度を独立制御するため、3つの設計変更を検討した。3つの設計変更は、領域I(実施形態に係る独立制御の方針)、領域II(装置の熱輸送損失の改善)、領域III(装置の圧力上限)に相当する。バルブonは開閉弁オン(閉状態)、バルブoffは開閉弁オフ(開状態)に相当する。
【0061】
図4に示すように、バルーン内部に供給する熱媒体の流量を多くするほど、温度が高くなり、圧力も高くなる線形関係にある。温度及び圧力を独立して制御したいが、1つのライン上に乗ってしまう。
【0062】
例えば、バルーンカテーテルにおいて入口流路断面積が出口流路断面積と同じ場合は、以下の問題が生じる。バルブonの場合は、コンプレッサの圧力と同じ圧力をバルーン内部に付与できるが、バルーン内部を低圧にすることはできない。一方、バルブoffの場合はコンプレッサの圧力の約半分をバルーン内部に付与できるが、熱媒体の流量を多くするほど、温度が高くなり、圧力も高くなる。
【0063】
これに対し本実施形態では、バルーンカテーテルにおいて入口流路断面積が出口流路断面積よりも小さい。そのため、入口流路を通じた熱媒体の流入によりバルーン内部に圧力を付与する場合に、入口流路において圧力損失が生じる。そのため、バルーンカテーテルにおいて入口流路断面積が出口流路断面積と同じ場合と比較して、バルーン内部に付与される圧力を低くすることができる。これにより、バルーン内部の温度だけを上げ、圧力を下げたい場合等(例えば、領域I)に容易に対応することができる。
【0064】
<バルーンにおける投入熱量の上限値>
図5は、実施形態に係るバルーン表面の温度推移の説明図である。
図5において、縦軸は温度、横軸は時間を示す。
図6は、実施形態に係るバルーンにおける投入熱量の説明図である。
図6において、縦軸は投入熱量、横軸は時間を示す。
図7は、実施形態に係る加熱・牽引型バルーンの概略図である。
図8は、実施形態に係る食道狭窄部の概略図である。
本発明者は、動物実験により、バルーン表面の温度推移と共に、バルーンにおける投入熱量を確認した。
図5及び
図6の例では、2匹のプロファイルを示す。
【0065】
実験では、
図7に示す加熱・牽引型バルーンを用いた。図の例では、バルーン内部に温度測定用の熱電対を設けた。このバルーンを、
図8に示す食道狭窄部に挿入した。
【0066】
図5及び
図6を併せて参照し、投入熱量が40W付近から周囲の組織が温まると、熱が入りにくくなることが分かった。バルーン表面の温度が組織表面の温度と同じ程度になると、それ以上の熱が入らなくなることが確認された。2匹のプロファイルにおいて同様の傾向が確認された。
【0067】
1匹目では、加熱時間を3分とした結果、最大温度70.2℃、熱エネルギー2586J、熱負荷4510K・sとなった。2匹目では、加熱時間を2分10秒とした結果、最大温度65.0℃、熱エネルギー2498J、熱負荷2563K・sとなった。2匹目では、1匹目に対して、熱エネルギーが3%減少し、熱負荷が43%減少した。これにより、加熱時間による熱エネルギーの変化は小さいことが確認された。これは、高温ほどエネルギーが入りにくいためである。
【0068】
実験の結果、加熱・牽引型バルーンの最大熱量は40Wであることが確認された。これは、生体組織とバルーン内部の温度差、及び、バルーン素材の熱伝導率により制約されるため、本方式の限界を規定しまう要因となる。
【0069】
<バルーンカテーテルの用途の一例>
例えば、身体の管腔内の狭窄に対して、バルーンカテーテルを用いた拡張が行われる。その際にバルーン内部を加熱することで管腔組織の熱変性を起こし、拡張時の機械的損傷を緩和する手法が提案されている。この手法を実施するにあたり、バルーン内部の温度及び圧力を独立して制御する必要がある。
【0070】
例えば、バルーン内部の温度及び圧力を独立して制御する構成としては、バルーン内部又は表面に発熱体(例えば、RF電源、レーザー発光部等)を設け、バルーン内部に送る熱媒体の圧力を調整する構成が知られている。しかし、このような構成では、高額かつ複雑な制御装置を要するため、安全面でリスクを伴う可能性が高い。
【0071】
これに対し本実施形態では、2つのルーメン(管)として入口流路及び出口流路を有する流路部材を備えたバルーンカテーテルにより、加熱流体を循環させることで、従来の高額かつ複雑な制御装置を廃することができる。したがって、安価で安全性の高い装置を実現することができる。加えて、2つのルーメンの断面積比率を変えることで、バルーン内部の温度及び圧力を広範囲で独立して制御することができる。
【0072】
例えば、本実施形態のバルーンカテーテルを食道狭窄部に適用する場合は、次の効果が得られる。壁が厚くなった瘢痕組織のコラーゲン線維を加熱によりゼラチン化することで組織を軟化しながら食道壁を傷つけることなくバルーン拡張することができる。これにより、再狭窄を予防することができる。
【0073】
<変形例>
上述した実施形態では、組織拡張装置は、バルーンカテーテルである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、組織拡張装置は、ブジー等の他の装置であってもよい。例えば、組織拡張装置は、対象組織に対する温度及び圧力を制御しかつ対象組織を拡張及び固定可能に構成されていればよい。例えば、組織拡張装置の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0074】
上述した実施形態では、流路部材は、単一の部材で構成される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、流路部材は、複数の部材で構成されてもよい。例えば、流路部材は、入口流路が形成された入口配管と、出口流路が形成された出口配管と、で構成されてもよい。例えば、流路部材の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0075】
上述した実施形態では、流路部材は、出口流路において入口流路の先端開口近傍の部分を閉塞する閉塞部と、出口流路においてバルーンの基端近傍の部分をバルーンの内部に通じさせる開口部と、を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、入口流路及び出口流路の両方が流路部材の基端から先端にわたって開口していてもよい。例えば、流路部材は、出口流路において入口流路の先端開口近傍の部分を閉塞する閉塞部を有しなくてもよい。例えば、流路部材は、出口流路においてバルーンの基端近傍の部分をバルーンの内部に通じさせる開口部を有しなくてもよい。例えば、入口流路及び出口流路の開口態様、並びに、閉塞部及び開口部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0076】
以下、
図9から
図11を参照しつつ、流路部材の変形例について説明する。
図9から
図11に示す構成において、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
例えば、
図9から
図11に示すように、入口流路22及び出口流路23の各々は、流路部材の基端から先端までの間の一部で開口していてもよい。図の例では、入口流路22の一部の開口を往路(高温)で示し、出口流路23の一部の開口を復路(低温)で示している。
【0077】
図9の例では、流路部材121は、入口流路22においてバルーン20の基端近傍の部分をバルーン20の内部に通じさせる入口側開口部126inと、出口流路23においてバルーン20の先端近傍の部分をバルーン20の内部に通じさせる出口側開口部126outと、を有する。
【0078】
図10の例では、流路部材221は、入口流路22においてバルーン20の先端近傍の部分をバルーン20の内部に通じさせる入口側開口部226inと、出口流路23においてバルーン20の基端近傍の部分をバルーン20の内部に通じさせる出口側開口部226outと、を有する。
【0079】
図11の例では、流路部材321は、入口流路22においてバルーン20の先端と基端との間の中央部分をバルーン20の内部に通じさせる入口側開口部326inと、出口流路23においてバルーン20の先端近傍の部分及びバルーン20の基端近傍の部分の両方をバルーン20の内部に通じさせる出口側開口部326outと、を有する。
【0080】
図9から
図11に示す構成によれば、図中矢印方向の流れ(対流)により、バルーン20の内部が攪拌される。そのため、バルーン20の内部が均一な温度になる。
なお、入口側開口部及び出口側開口部の設置態様(設置場所、設置数など)は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0081】
上述した実施形態では、システムは、上記の組織拡張装置と、流体として互いに異なる温度の熱媒体を貯留する複数の容器と、を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、システムは、1つの容器のみを備えてもよい。例えば、容器の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0082】
上述した実施形態では、システムは、複数の容器から接触部の内部に流れる熱媒体の流量を調整する流量調整弁と、流量調整弁を制御する流量制御部と、を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、流量調整弁の操作に人手を要してもよい。例えば、接触部の内部に流れる熱媒体の流量調整を手動で行ってもよい。例えば、流量調整弁及び流量制御弁の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0083】
上述した実施形態では、システムは、複数の容器から接触部の内部に熱媒体が流れるように複数の容器に対して圧縮空気を供給するコンプレッサと、コンプレッサから供給される圧縮空気の圧力を調整する圧力調整器と、圧力調整器を制御する圧力制御部と、を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、圧力調整器の操作に人手を要してもよい。例えば、接触部の内部の圧力調整を手動で行ってもよい。例えば、コンプレッサ、圧力調整器及び圧力制御部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0084】
上述した実施形態では、システムは、複数の容器に貯留される熱媒体の温度を測定する温度測定部と、複数の容器に貯留される熱媒体に熱エネルギーを付与する熱源部と、熱源部を制御する熱源制御部と、を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、熱源部の操作に人手を要してもよい。例えば、複数の容器に貯留される熱媒体の温度調整を手動で行ってもよい。例えば、温度測定部、熱源部及び熱源制御部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0085】
上述した実施形態では、システムは、接触部の内部の圧力を減圧するための減圧機構を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、システムは、減圧機構を備えなくてもよい。例えば、システムは、接触部の内部の圧力を減圧するためのコンプレッサ等を備えてもよい。例えば、減圧機構の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0086】
上述した実施形態では、システムは、出口流路に通じる部分を開閉するための開閉弁を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、システムは、開閉弁を備えなくてもよい。例えば、システムは、出口流路に通じる部分を開閉するための栓等を備えてもよい。例えば、開閉弁の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0087】
<コンピュータ構成>
制御装置は、バスで接続されたプロセッサ、メモリ、補助記憶装置(記憶部に相当)などを備える。制御装置は、プログラムを実行することによってシステムの構成要素を制御する制御装置として機能する。プロセッサの例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えば磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0088】
例えば、制御装置の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)等のカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を用いて実現されてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0089】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であり、上述した実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0090】
(付記1)
対象組織に対する温度及び圧力を制御しかつ前記対象組織を拡張及び固定可能に構成される組織拡張装置において、
前記対象組織に接触する接触部の内部に流体を流入させる入口流路と、
前記入口流路から流入した前記流体を外部に流出させる出口流路と、を有し、
前記入口流路の流路断面積は、前記出口流路の流路断面積よりも小さい、
組織拡張装置。
【0091】
(付記2)
前記組織拡張装置は、バルーンカテーテルであり、
前記接触部を有し、前記流体の供給によって膨張するバルーンと、
前記バルーンの内部に前記流体を流入させる前記入口流路と、前記バルーンの外部に前記流体を流出させる前記出口流路と、を有する流路部材と、を備える、
付記1に記載の組織拡張装置。
【0092】
(付記3)
前記流路部材は、単一の部材で構成される、
付記2に記載の組織拡張装置。
【0093】
(付記4)
前記流路部材は、前記バルーンカテーテルの基端から先端近傍まで延びており、
前記バルーンは、前記流路部材の先端を覆うように設けられ、
前記入口流路は、前記流路部材の基端から先端にわたって開口しており、
前記流路部材は、
前記出口流路において前記入口流路の先端開口近傍の部分を閉塞する閉塞部と、
前記出口流路において前記バルーンの基端近傍の部分を前記バルーンの内部に通じさせる開口部と、を有する、
付記2又は3に記載の組織拡張装置。
【0094】
(付記5)
前記流路部材は、前記バルーンカテーテルの基端から先端近傍まで延びており、
前記バルーンは、前記流路部材の先端を覆うように設けられ、
前記入口流路及び前記出口流路の各々は、前記流路部材の基端から先端までの間の一部で開口しており、
前記流路部材は、
前記入口流路において前記バルーンの基端近傍の部分、前記バルーンの先端近傍の部分、又は、前記バルーンの先端と基端との間の中央部分を前記バルーンの内部に通じさせる入口側開口部と、
前記出口流路において前記バルーンの先端近傍の部分、前記バルーンの基端近傍の部分、又は、前記バルーンの先端近傍の部分及び前記バルーンの基端近傍の部分の両方を前記バルーンの内部に通じさせる出口側開口部と、を有する、
請求項2又は3に記載の組織拡張装置。
【0095】
(付記6)
付記1から5の何れかに記載の組織拡張装置と、
前記流体として互いに異なる温度の熱媒体を貯留する複数の容器と、を備える、
システム。
【0096】
(付記7)
前記複数の容器から前記接触部の内部に流れる前記熱媒体の流量を調整する流量調整弁と、
前記流量調整弁を制御する流量制御部と、を更に備え、
前記流量制御部は、前記接触部の内部に前記熱媒体を流す時間と前記接触部の内部の温度との関係を示す予め取得したデータに基づいて、前記流量調整弁に前記熱媒体の流量を調整させる、
付記6に記載のシステム。
【0097】
(付記8)
前記複数の容器から前記接触部の内部に前記熱媒体が流れるように前記複数の容器に対して圧縮空気を供給するコンプレッサと、
前記コンプレッサから供給される前記圧縮空気の圧力を調整する圧力調整器と、
前記圧力調整器を制御する圧力制御部と、を更に備え、
前記圧力制御部は、前記接触部の内部の目標圧力に基づいて、前記圧力調整器に前記圧縮空気の圧力を調整させる、
付記6又は7に記載のシステム。
【0098】
(付記9)
前記複数の容器に貯留される前記熱媒体の温度を測定する温度測定部と、
前記複数の容器に貯留される前記熱媒体に熱エネルギーを付与する熱源部と、
前記熱源部を制御する熱源制御部と、を更に備え、
前記熱源制御部は、前記温度測定部の測定温度に基づいて、前記複数の容器に貯留される前記熱媒体の温度が予め設定した温度範囲に含まれるように前記熱源部に前記熱エネルギーを付与させる、
付記6から8の何れかに記載のシステム。
【0099】
(付記10)
前記接触部の内部の圧力を減圧するための減圧機構を更に備える、
付記6から9の何れかに記載のシステム。
【0100】
(付記11)
前記出口流路に通じる部分を開閉するための開閉弁を更に備える、
付記6から10の何れかに記載のシステム。
【符号の説明】
【0101】
1…システム、2…バルーンカテーテル(組織拡張装置)、3A,3B…容器、4…流量調整弁、5…コンプレッサ、6…圧力調整器、8A,8B…温度測定部、9A,9B…熱源部、11…減圧機構、12…開閉弁、20…バルーン、21,121,221,321…流路部材、22…入口流路、23…出口流路、24…仕切り壁、25…閉塞部、26…開口部、43…栓、45…排水ビン、51…流量制御部、52…圧力制御部、53…熱源制御部、126in,226in,326in…入口側開口部、126out,226out,326out…出口側開口部、Ain…入口流路断面積、Aout…出口流路断面積