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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126848
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】焼結装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 21/14 20060101AFI20240912BHJP
   F27B 21/06 20060101ALI20240912BHJP
   F27B 21/08 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
F27B21/14 A
F27B21/06
F27B21/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035556
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】春日 勇人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 政秀
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲也
(57)【要約】
【課題】安定した運転をする。
【解決手段】焼結装置の運転方法は、制動装置15を停止モードとした状態で、給鉱スプロケット11を回転させてパレット台車14に循環路13を移動させる第1ステップと、第1ステップの後、停止モードの制動装置15を低制動力モードに切り替える第2ステップと、第2ステップの後、かつ、所定の切り替え条件を満たしたときに、低制動力モードの制動装置15を高制動力モードに切り替える第3ステップと、を含み、切り替え条件は、低制動力モードの制動装置15を高制動力モードに切り替えた直後の制動力の推定値を推定し、推定した制動力の推定値が、制動装置15に許容されている許容値以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結原料が給鉱部で供給され、焼結された前記焼結原料を排鉱部で排出する複数のパレット台車と、
前記パレット台車を前記給鉱部から前記排鉱部へ送る往路、および、前記パレット台車を前記排鉱部から前記給鉱部へ送る復路、を有する循環路と、
前記給鉱部に設けられ、前記パレット台車を前記往路に押し出す給鉱スプロケットと、
前記復路にて前記排鉱部から前記給鉱部へ向かう前記パレット台車に制動力を付与する制動装置と、を備える焼結装置を運転するための焼結装置の運転方法であって、
前記制動装置を停止モードとした状態で、前記給鉱スプロケットを回転させて前記パレット台車に前記循環路を移動させる第1ステップと、
前記第1ステップの後、停止モードの前記制動装置を低制動力モードに切り替える第2ステップと、
前記第2ステップの後、かつ、所定の切り替え条件を満たしたときに、前記低制動力モードの前記制動装置を高制動力モードに切り替える第3ステップと、を含み、
前記切り替え条件は、前記低制動力モードの前記制動装置を前記高制動力モードに切り替えた直後の制動力の推定値を推定し、推定した制動力の推定値が、前記制動装置に許容されている許容値以下であることを特徴とする、焼結装置の運転方法。
【請求項2】
前記制動装置は、リターダを含み、
前記リターダは、前記パレット台車に移動に伴って回転するドラムと、前記ドラムの回転に抵抗力を付与するステータと、を備え、
以下の条件1および条件2の2つの条件の両方を満足した場合に、前記切り替え条件は、満たしたと判断されることを特徴とする、請求項1に記載の焼結装置の運転方法。
条件1:前記リターダの温度が飽和していること。
条件2:前記条件1を満たした状態において、前記低制動力モードの前記制動装置を前記高制動力モードに切り替えた直後の制動力の推定値を推定し、推定した制動力の推定値が、前記制動装置に許容されている許容値以下であること。
【請求項3】
前記第2ステップを開始した後、所定の飽和時間が経過した場合に前記条件1は満たしたと判断され、
前記飽和時間は、前記リターダの温度の飽和に必要とされる時間である、請求項2に記載の焼結装置の運転方法。
【請求項4】
前記飽和時間は、前記リターダの雰囲気温度と、前記ドラムの回転数と、を因子として求められる、請求項3に記載の焼結装置の運転方法。
【請求項5】
前記ドラムの回転数が、所定の切り替え回転数以下である場合に前記条件2は満たしたと判断され、
前記切り替え回転数は、前記条件1を満たしている状態においては、リターダ雰囲気温度とドラム回転数を、因子として求められ、
稼働時の雰囲気温度において、任意の回転数における前記低制動力モードの前記制動装置を前記高制動力モードに切り替えた直後における制動力を推定し、推定した制動力の推定値が前記制動装置に許容されている許容値以下となる任意の回転数を、前記切り替え回転数として決定できることを特徴とする請求項2に記載の焼結装置の運転方法。
【請求項6】
前記第1ステップでは、前記焼結装置のトラブルを検知する異常検知システムを起動し、
前記第2ステップ以降では、前記異常検知システムが前記トラブルを検知したときに、前記制動装置を前記停止モードに切り替える、請求項1に記載の焼結装置の運転方法。
【請求項7】
前記第1ステップでは、前記パレット台車の移動速度が、所定の下限速度を超えた場合に、前記異常検知システムを起動し、
前記焼結装置では、前記複数のパレット台車の平均移動速度が前記下限速度であると仮定したときに、前記循環路を循環する前記複数のパレット台車が前記制動装置に、所定の余裕時間以下の時間の間隔で制動力を生じさせ、
前記異常検知システムは、前記循環路を循環する前記複数のパレット台車が前記制動装置に制動力を生じさせる時間の間隔が前記余裕時間以上となった場合に前記トラブルを検知したと判断する、請求項6に記載の焼結装置の運転方法。
【請求項8】
前記第2ステップでは、前記第1ステップの後、かつ、所定の起動条件を満たしたときに、前記停止モードの前記制動装置を前記低制動力モードに切り替え、
前記起動条件は、前記停止モードの前記制動装置を前記低制動力モードに切り替えた直後の制動力の推定値を推定し、推定された制動力の推定値が、前記許容値以下であることを特徴とする、請求項2から5のいずれか1項に記載の焼結装置の運転方法。
【請求項9】
前記制動装置は、リターダを含み、
前記リターダは、前記パレット台車に移動に伴って回転するドラムと、前記ドラムの回転に抵抗力を付与するステータと、を備え、
前記ドラムの回転数が所定の起動回転数以下である場合に前記起動条件が満たしたと判断され、
前記起動回転数は、前記リターダの雰囲気温度が所定の温度であって、前記停止モードの前記制動装置を前記低制動力モードに切り替えた直後における前記ドラムの回転数の推定値を推定し、推定した前記ドラムの回転数の推定値であることを特徴とする、請求項8に記載の焼結装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1~4に記載の焼結装置が知られている。この焼結装置は、焼結原料が給鉱部で供給され、焼結された焼結原料が排鉱部で排出される複数のパレット台車と、パレット台車を給鉱部から排鉱部へ送る往路、および、パレット台車を排鉱部から給鉱部へ送る復路、を有する循環路と、給鉱部に設けられ、パレット台車を往路に押し出す給鉱スプロケットと、を備えている。
【0003】
ところで、焼結装置の型式として、ルルギ社製の焼結装置(以下、両スプロケット式ともいう)とコッパース社製の焼結装置(以下、片スプロケット式ともいう)の2つの型式が知られている。特許文献1、2に記載の焼結装置は、両スプロケット式の焼結装置(以下、単に両スプロケット式ともいう)である。両スプロケット式は、給鉱部だけでなく排鉱部にもスプロケット(排鉱スプロケット)が設けられている。特許文献3、4に記載の焼結装置は、片スプロケット式の焼結装置(以下、単に片スプロケット式ともいう)である。片スプロケット式は、排鉱スプロケットが設けられていない点で、両スプロケット式と異なる。
【0004】
これらの両型式の構造は異なるが、両型式とも排鉱部での焼結原料の荷離れに伴う荷重変動(例えば、排鉱部におけるパレット台車の急加速)により、操業上の不具合が顕在していた。
例えば両スプロケット式では、給鉱スプロケットの歯における排鉱部側の面に過荷重が掛かり、偏摩耗を起こしていた。そして、給鉱スプロケットの顕著な摩耗を原因とし、メンテナンスの回数が増加していた。
さらに例えば片スプロケット式では、パレット台車同士が衝突し、給鉱部において給鉱スプロケットに依存せず(給鉱スプロケットの歯を追い抜かして)パレット台車が走行する、いわゆる自走化が発生していた。そして自走化の結果、給鉱部以降のパレット台車間に隙間が生じ、原料流出や漏風発生が発生し、生産性低下の要因となっていた。
【0005】
そこで、下記特許文献1に記載の焼結装置は、復路にて排鉱部から給鉱部へ向かうパレット台車に制動力を付与する制動装置を更に備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-116988号公報
【特許文献2】特開2001-116466号公報
【特許文献3】特開2020-118379号公報
【特許文献4】特開2020-067202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記制動力はパレット台車の移動速度と比例し、パレット台車の移動速度の変動が顕著であった場合は、制動力が過大になり、制動装置がパレット台車に過大な荷重を付加するおそれがある。この場合、焼結装置の設備破損も想定される。なお、パレット台車の平均的な移動速度は、給鉱スプロケットの回転速度によって制御可能である。しかしながら、前述したように、パレット台車同士は衝突しながら移動することもあり、パレット台車の瞬時的な速度変動は、給鉱スプロケットの回転速度によっては制御不可能である。そのため、パレット台車の移動速度の変動が顕著になりやすい。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、安定した運転をすることができる焼結装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<1>本発明の一態様に係る焼結装置の運転方法は、焼結原料が給鉱部で供給され、焼結された焼結原料を排鉱部で排出する複数のパレット台車と、パレット台車を給鉱部から排鉱部へ送る往路、および、パレット台車を排鉱部から給鉱部へ送る復路、を有する循環路と、給鉱部に設けられ、パレット台車を往路に押し出す給鉱スプロケットと、復路にて排鉱部から給鉱部へ向かうパレット台車に制動力を付与する制動装置と、を備える焼結装置を運転するための焼結装置の運転方法であって、制動装置を停止モードとした状態で、給鉱スプロケットを回転させてパレット台車に循環路を移動させる第1ステップと、第1ステップの後、停止モードの制動装置を低制動力モードに切り替える第2ステップと、第2ステップの後、かつ、所定の切り替え条件を満たしたときに、低制動力モードの制動装置を高制動力モードに切り替える第3ステップと、を含み、切り替え条件は、低制動力モードの制動装置を高制動力モードに切り替えた直後の制動力の推定値を推定し、推定した制動力の推定値が、制動装置に許容されている許容値以下であることを特徴とする。
ここで停止モード、高制動力モード、低制動力モード、とはそれぞれ以下の通りである。
停止モード:制動装置が制動力を発揮しない状態
高制動力モード:制動装置が高い制動力を発揮している状態
低制動力モード:制動装置が低い制動力を発揮している状態
【0010】
本願発明者は、制動装置を起動させた直後に、制動力のピーク値が生じること、および、そのピーク値が許容値を上回り、焼結装置の運転に影響が生じることを見出した。
この運転方法によれば、第1ステップで、制動装置を停止モードとした状態でパレット台車に循環路を移動させ、その後、まず第2ステップで、制動装置を停止モードから低制動力モードに切り替える。さらにその後、第3ステップで、制動装置を低制動力モードから高制動力モードに切り替える。このように、停止モードの制動装置をいきなり高制動力モードに切り替えるのではなく、停止モードの制動装置を低制動力モード、高制動力モードと段階的に切り替える。これにより、制動装置時のモード切り替え直後に、制動装置に大きな制動力のピーク値が生じるのを抑制することができる。
さらに、第3ステップでは、第2ステップの後、かつ、切り替え条件を満たしたときに、低制動力モードの制動装置を高制動力モードに切り替える。前記切り替え条件は、低制動力モードの制動装置を高制動力モードに切り替えた直後の制動力の推定値(制動力のピーク値)を推定し、推定した制動力の推定値が、制動装置に許容されている許容値以下であることである。よって、制動装置を低制動力モードから高制動力モードに切り替えるときにおいても、制動力のピーク値が許容値を超えるのを抑制することができる。
以上から、制動装置のモードを切り替える際に生じる制動力を抑えることが可能になり、焼結装置を安定して運転することができる。
【0011】
<2><1>に係る焼結装置の運転方法では、制動装置は、リターダを含み、リターダは、パレット台車に移動に伴って回転するドラムと、ドラムの回転に抵抗力を付与するステータと、を備え、以下の条件1および条件2の2つの条件の両方を満足した場合に、前記切り替え条件は、満たしたと判断される。
条件1:リターダの温度が飽和していること。
条件2:条件1を満たした状態において、低制動力モードの制動装置を高制動力モードに切り替えた直後の制動力の推定値を推定し、推定した制動力の推定値が、制動装置に許容されている許容値以下であること。
【0012】
リターダは、トラックやバスなどの車両の補助ブレーキとして一般的に用いられる。しかしながら、この運転方法では、リターダを焼結装置におけるパレット台車の制動装置として用いる。
ここで本願発明者は、リターダに発生する制動力がリターダの温度に依存して変動することを見出した。例えば、ドラムの温度が変化すると、ドラムの物性値が変化することで、制動力が変動する。また、ステータの温度が変化すると、ドラムとステータとのギャップの大きさが変化することで、制動力が変動する。よって、リターダの温度が飽和している場合には、その温度のリターダを前提として制動力を推定することが可能になり、制動力を精度良く推定できる。
そこで、この運転方法では、切り替え条件が、以下の条件1および条件2の2つの条件の両方を含む。
条件1:リターダの温度が飽和していること。
条件2:条件1を満たした状態において、低制動力モードの制動装置を高制動力モードに切り替えた直後の制動力の推定値を推定し、推定した制動力の推定値(制動力のピーク値)が、制動装置に許容されている許容値以下であること。
これにより、切り替え条件を満たすときに制動装置に生じる制動力を精度良く推定することが可能になり、焼結装置を確実に安定して運転することができる。
【0013】
<3><2>に係る焼結装置の運転方法では、第2ステップを開始した後、所定の飽和時間が経過した場合に条件1は満たしたと判断され、飽和時間は、リターダの温度の飽和に必要とされる時間である構成を採用してもよい。
【0014】
リターダの温度は、第2ステップを開始した後の時間に応じて変化し、一定の時間を経過すると飽和する。よって、条件1が、第2ステップを開始した後、リターダの温度の飽和に必要とされる飽和時間が経過したという条件であることで、リターダの温度が飽和しているか否かを精度良く判断することができる。
【0015】
<4><3>に係る焼結装置の運転方法では、飽和時間は、リターダの雰囲気温度と、ドラムの回転数と、を因子として求められる構成を採用してもよい。
【0016】
第2ステップを開始した後、リターダの温度がどの程度の時間で飽和するかは、リターダの雰囲気温度と、ドラムの回転数と、に応じて変化する。よって、飽和時間が、リターダの雰囲気温度と、ドラムの回転数と、を因子として求められることで、リターダの温度が飽和しているか否かを一層精度良く判断することができる。
【0017】
<5><2>から<4>のいずれか一態様に係る焼結装置の運転方法では、ドラムの回転数が、所定の切り替え回転数以下である場合に条件2は満たしたと判断され、切り替え回転数は、条件1を満たしている状態においては、リターダ雰囲気温度とドラム回転数を、因子として求められ、稼働時の雰囲気温度において、任意の回転数における低制動力モードの制動装置を高制動力モードに切り替えた直後における制動力を推定し、推定した制動力の推定値が制動装置に許容されている許容値以下となる任意の回転数を、切り替え回転数として決定できる構成を採用してもよい。
【0018】
<6><1>から<5>のいずれか一態様に係る焼結装置の運転方法では、第1ステップでは、焼結装置のトラブルを検知する異常検知システムを起動し、第2ステップ以降では、異常検知システムがトラブルを検知したときに、制動装置を停止モードに切り替える構成を採用してもよい。
【0019】
第2ステップ以降では、異常検知システムがトラブルを検知したときに、制動装置を停止モードに切り替える。これにより、焼結装置を一層安定して運転することができる。
【0020】
<7><6>に係る焼結装置の運転方法では、第1ステップでは、パレット台車の移動速度が、所定の下限速度を超えた場合に、異常検知システムを起動し、焼結装置では、複数のパレット台車の平均移動速度が下限速度であると仮定したときに、循環路を循環する複数のパレット台車が制動装置に、所定の余裕時間以下の時間の間隔で制動力を生じさせ、異常検知システムは、循環路を循環する複数のパレット台車が制動装置に制動力を生じさせる時間の間隔が余裕時間以上となった場合にトラブルを検知したと判断する構成を採用してもよい。
【0021】
第1ステップでは、パレット台車の移動速度が、所定の下限速度を超えた場合に、異常検知システムを起動する。そして異常検知システムは、循環路を循環する複数のパレット台車が制動装置に制動力を生じさせる時間の間隔が余裕時間以上となった場合にトラブルを検知したと判断する。これにより、異常検知システムを精度良く作動させることができる。
【0022】
<8><2>から<5>のいずれか一態様に係る焼結装置の運転方法では、第2ステップでは、第1ステップの後、かつ、所定の起動条件を満たしたときに、停止モードの制動装置を低制動力モードに切り替え、起動条件は、停止モードの制動装置を低制動力モードに切り替えた直後の制動力の推定値を推定し、推定された制動力の推定値が、許容値以下である構成を採用してもよい。
<9><8>に係る焼結装置の運転方法では、制動装置は、リターダを含み、リターダは、パレット台車に移動に伴って回転するドラムと、ドラムの回転に抵抗力を付与するステータと、を備え、ドラムの回転数が所定の起動回転数以下である場合に起動条件が満たしたと判断され、起動回転数は、リターダの雰囲気温度が所定の温度であって、停止モードの制動装置を前記低制動力モードに切り替えた直後におけるドラムの回転数の推定値を推定し、推定したドラムの回転数の推定値である構成を採用してもよい。
【0023】
これらの場合、制動装置に起動時においても、制動力を抑えることが可能になり、焼結装置をより安定して運転することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、安定した運転をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る焼結装置を示す側面図である。
図2図1に示す焼結装置の制動装置を含む第2の要部を、走行方向から見た断面図である。
図3図1に示す焼結装置の制動装置がパレット台車に制動力を付与する状態を示す要部の拡大図である。
図4図1に示す焼結装置の制動装置がパレット台車に制動力を付与する状態であって、図4に示す状態の続きを示す要部の拡大図である。
図5図1に示す焼結装置の制御ブロック図である。
図6図1に示す焼結装置の制動装置に含まれるリターダの内部構造を示す模式的に示す正面図である。
図7図6に示すリターダが、制動装置の高制動力モードを構成する場合の状態を模式的に示す要部の正面図である。
図8図6に示すリターダが、制動装置の停止モードを構成する場合の状態を模式的に示す要部の正面図である。
図9図6に示すリターダが、制動装置の低制動力モードを構成する場合の状態を模式的に示す要部の正面図である。
図10】本発明の変形例に係る焼結装置を示す側面図である。
図11図1に示す焼結装置の駆動スプロケットを含む第1の要部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1から図9を参照し、本発明の一実施形態に係る焼結装置を説明する。
焼結装置10は、焼結原料を焼結させる。焼結原料は、焼結すると焼結体となる。焼結装置10は、焼結体を排出する。焼結原料は、給鉱部Aで供給される。焼結体は、排鉱部Bで排出される。
【0027】
(基本構成)
図1に示すように、焼結装置10は、給鉱スプロケット11と、循環路13と、複数のパレット台車14と、を備えている。本実施形態では、焼結装置10は、片スプロケット式である。ただし、焼結装置10として、後述する図10および図11に示す焼結装置10Aのような両スプロケット式を採用することも可能である。
循環路13は、パレット台車14を、給鉱部Aと排鉱部Bとの間で循環させる。給鉱部Aは、焼結装置10において給鉱が実施される場所である。給鉱部Aには、給鉱スプロケット11が設けられている。排鉱部Bは、焼結装置10において排鉱が実施される場所である。
【0028】
循環路13は、往路21と、復路22と、を有する。往路21は、パレット台車14を給鉱部Aから排鉱部Bへ送る。往路21は、上レール21aを含む。上レール21aは、給鉱部Aと排鉱部Bとの間の上部に設けられている。復路22は、パレット台車14を排鉱部Bから給鉱部Aへ送る。復路22は、下レール22aを含む。下レール22aは、給鉱部Aと排鉱部Bとの間の下部に設けられている。
【0029】
循環路13は、更に、給鉱ガイドレール23と、排鉱ガイドレール24と、を備えている。給鉱ガイドレール23は、パレット台車14を復路22から往路21へ送る。給鉱ガイドレール23は、給鉱スプロケット11の周縁に沿って設けられている。給鉱ガイドレール23は、円弧状である。排鉱ガイドレール24は、パレット台車14を往路21から復路22へ送る。排鉱ガイドレール24には、往路21を通過したパレット台車14が飛び乗る。排鉱ガイドレール24は、パレット台車14を復路22に案内する。
【0030】
パレット台車14は、循環路13に沿って移動可能とされている。パレット台車14には、焼結原料が収容される。パレット台車14には、焼結原料が給鉱部Aで供給される。パレット台車14は、焼結された焼結原料を排鉱部Bで排出する。循環路13に沿って隣り合うパレット台車14同士の間には、隙間(ギャップ)があいている。前記隙間は、排鉱部Bにおいて、例えば数百mm(具体的には、例えば200mm程度)である。これにより、パレット台車14同士に収容された焼結原料が、排鉱部Bにおいて互いに縁切りされて円滑に排鉱される。
【0031】
パレット台車14は、パレット部31と、台車部32と、を備えている。
パレット部31は、パレット台車14の上部を構成する。パレット部31は、上方に向けて開口する中空の直方体状である。パレット部31の底部は、例えば、火格子である。
【0032】
図3および図4に示すように、台車部32は、車軸33と、車輪34と、プッシャーローラ35と、を備えている。車軸33は、パレット台車14の前後方向(進行方向)に間隔をあけて2つ設けられている。車輪34は、各車軸33の両端に設けられている。車輪34は、循環路13に案内される。プッシャーローラ35は、車軸33を覆う。車軸33は、プッシャーローラ35内に設けられている。プッシャーローラ35は、給鉱スプロケット11(または後述する排鉱スプロケット12)に付勢される。給鉱スプロケット11(または排鉱スプロケット12)は、プッシャーローラ35を介してパレット台車14を付勢する。
【0033】
なおプッシャーローラ35に代えて、台車部32の側面から、給鉱スプロケット11(または排鉱スプロケット12)の歯の形に対応した支持板を延出させる、いわゆるツースライナを用いることもできる。パレット台車14は、給鉱スプロケット11(または排鉱スプロケット12)によって付勢される部材(被付勢部材)を備えている。プッシャーローラ35や前記ツースライナは、被付勢部材として機能する。
【0034】
図1に示すように、給鉱スプロケット11は、パレット台車14を往路21に押し出す。給鉱スプロケット11は、駆動機構11a(図5参照)によって回転駆動される。以下、パレット台車14の循環路13に沿った循環を、給鉱スプロケット11を起点として説明する。
【0035】
回転駆動される給鉱スプロケット11の歯は、給鉱ガイドレール23の上部に位置するパレット台車14のプッシャーローラ35を付勢して、パレット台車14を往路21に順次押し出す。複数のパレット台車14は、循環路13の全長にわたって配置されており、給鉱ガイドレール23によって押し出されたパレット台車14は、前方に位置するパレット台車14を前方に押し込む。その結果、パレット台車14の排鉱ガイドレール24に達する。このパレット台車14は、車輪34が排鉱ガイドレール24に案内された状態で、排鉱ガイドレール24に沿って移動され、復路22へ到達する。そして、給鉱スプロケット11に達したパレット台車14は、車輪34が給鉱ガイドレール23に案内されるとともに、プッシャーローラ35が、給鉱スプロケット11と歯の間に保持された状態で給鉱ガイドレール23に沿って移動される。
【0036】
この焼結装置10は、給鉱部Aにおいて、パレット台車14に焼結原料を供給し、焼結原料の表面に着火する。そして、パレット台車14が給鉱部Aから排鉱部Bへ移動する際に、パレット台車14の下方から空気を吸引することで、パレット台車14に収容された焼結原料を焼結して焼結体を形成する。排鉱部Bでは、パレット台車14が排鉱ガイドレール24に沿って移動することで反転し、パレット台車14から焼結体を排出する。
これにより、排鉱部Bにおいて、焼結原料が固化された焼結体が得られる。
【0037】
以上のような焼結装置10において、給鉱スプロケット11の回転数(回転速度)は、パレット台車14の移動速度に基づいて算出することができる。給鉱スプロケット11の回転数は、例えば、駆動機構11aがモーターを含む場合には、そのモーターの回転数に基づいて算出される。この場合、駆動機構11aは、パレット台車14の移動速度を検出する第1検出装置としても機能する。第1検出装置は、検出したパレット台車14の移動速度を、後述する制御装置16に送る。なお第1検出装置としては、例えば、パレット台車14を撮影するカメラと、前記カメラの撮影画像から移動速度を算出するコンピューターと、を含む構成を採用することも可能である。
【0038】
(制動装置15、制御装置16)
図1から図5に示すように、焼結装置10は、更に、制動装置15と、制御装置16(異常検知システム)と、を備えている。制動装置15は、復路22にて排鉱部Bから給鉱部Aへ向かうパレット台車14に制動力を付与する。制御装置16は、焼結装置10の各構成を制御する。制御装置16は、例えば、コンピューターである。
【0039】
図2に示すように、制動装置15は、回転体41と、リターダ42と、伝達機構43と、を備えている。
回転体41は、パレット台車14に移動に伴って回転する。回転体41は、回転軸44と、風車部45と、を備えている。図示の例では、回転軸44は、支柱17に回転可能に支持されている。回転軸44は、パレット台車14の進行方向に対して直交する方向(パレット台車14の左右方向)に延びている。支柱17は、この直交する方向に循環路13を挟んで2つ配置されている。支柱17は、回転軸44だけでなく、循環路13を支持していてもよい。
【0040】
風車部45は、回転軸44に固定されている。回転軸44および風車部45は、一体的に回転する。図示の例では、風車部45は、回転軸44に、回転軸44の軸方向に間隔をあけて2つ設けられている。
図3および図4に示すように、各風車部45は、複数のアーム46と、複数のローラ47と、を備えている。複数のアーム46は、回転軸44から放射状に延びている。複数のアーム46は、回転軸44の周方向に等間隔に配置されている。ローラ47は、各アーム46の先端に回転自在に設けられている。なお図示の例では、各風車部45は、4つのアーム46を備えているが、アーム46は、3つ以下であってもよく、5つ以上であってもよい。
【0041】
風車部45の各ローラ47は、復路22を移動するパレット台車14の前側のプッシャーローラ35及び後側のプッシャーローラ35に順次当接する。各ローラ47は、パレット台車14に対して、前側からプッシャーローラ35に当接する。パレット台車14が往路21を移動することで、風車部45(回転体41)が回転軸44回りに回転する。
【0042】
なお本実施形態では、風車部45では、複数のローラ47のうちの1つのローラ47のみが、パレット台車14のプッシャーローラ35に一度に接触する。言い換えると、風車部45では、複数のローラ47のうちの2つ以上のローラ47が同時にプッシャーローラ35に接触することはない。2つ以上のローラ47が同時にプッシャーローラ35に接触すると、回転体41に過大な負荷がかかることが想定され、好ましくない。
【0043】
このように、本実施形態では1つのローラ47のみがプッシャーローラ35に一度に接触するため、パレット台車14と回転体41とが接触しないタイミングが生じる。このときに、パレット台車14と回転体41と間の最大クリアランスは、例えば数mm程度である。
【0044】
図2に示すように、リターダ42は、回転体41に制動力(制動トルク)を付与する。リターダ42は、制動力を調整可能である。リターダ42は、回転体41を介してパレット台車14に制動力を付与する。リターダ42は、永久磁石型のリターダである。リターダ42は、磁力線が通過することによる電磁力により、回転方向と逆向きに力を働かせてブレーキを掛ける。なおリターダ42は、流体式リターダや電磁式リターダ等であってもよい。また、リターダ42に代えて、例えばパウダーブレーキ、電磁ブレーキ、ディスクブレーキなど、公知のブレーキを採用してもよい。
【0045】
伝達機構43は、回転体41の回転力をリターダ42に伝達する。伝達機構43は、リターダ42の制動力を回転体41に伝達する。伝達機構43は、変速機61と、ローラチェーン62と、トルクガードカップリング63と、を備えている。
【0046】
変速機61は、回転体41と、リターダ42と、の間に設けられている。変速機61は、入力軸64と、出力軸65と、を備えている。入力軸64には、回転体41からの回転力が入力される。出力軸65は、リターダ42に固定されている。変速機61は、例えば、入力軸64から入力された回転力を、出力軸65に増幅して伝達する。変速機61としては、例えば、サイクロ減速機(登録商標)を採用することができる。
【0047】
ローラチェーン62は、回転軸44および入力軸64に掛け回されている。ローラチェーン62は、回転軸44からの回転量を入力軸64に伝達する。ローラチェーン62は必須ではなく、ローラチェーン62に代えて歯車やシリンダを採用してもよい。
【0048】
トルクガードカップリング63は、出力軸65に設けられている。本実施形態では、出力軸65は、変速機61側の第1出力軸65aと、リターダ42側の第2出力軸65bと、に分割されている。トルクガードカップリング63は、第1出力軸65aと、第2出力軸65bと、を分離可能に接続している。トルクガードカップリング63による第1出力軸65aと第2出力軸65bとの接続が解除されると、伝達機構43が、回転体41からの回転力をリターダ42に伝達することが停止される。その結果、回転体41には制動力が作用しない。なお本実施形態では、トルクガードカップリング63は、制動力が所定の許容値(後述)を超えた場合、自動的に、第1出力軸65aと、第2出力軸65bと、を分離する(縁を切る)ように構成されている。これにより、過大な制動力(トルク)の発生が抑えられる。
【0049】
第2出力軸65bには、トルク検出器66が設けられている。トルク検出器66は、制動力(パレット台車14に加えられる制動力)を検出する。トルク検出器66は、検出した制動力を制御装置16に送る。
なお第2出力軸65bには、リターダ42の回転数(後述するドラム51の回転数)を検出する図示しない第2検出装置が設けられている。第2検出装置は、例えば、磁気検出型のリミットスイッチである。第2検出装置は、リターダ42の回転数(後述するドラム51の回転数)を制御装置16に送る。ただし、第2検出装置として、リターダ42の回転数を検出する公知の構成を適宜採用することが可能である。
【0050】
前記制動装置15では、パレット台車14が復路22を移動することで、プッシャーローラ35がローラ47を押して、風車部45(回転体41)が回転軸44回りに回転する。この回転力が伝達機構43を介してリターダ42に伝達される。そのため、リターダ42が制動力を発生させることで、リターダ42は、プッシャーローラ35に対してローラ47を介して、パレット台車14の進行方向と逆向きの力(制動力)を加える。
【0051】
(リターダ42)
図6に示すように、リターダ42は、ドラム51と、ステータ52と、を備えている。
ドラム51は、パレット台車14の移動に伴って回転する。ドラム51には、回転体41の回転が、伝達機構43を介して伝達される。ドラム51は、円筒状である。ドラム51は、出力軸65に固定されている。
【0052】
ステータ52は、ドラム51の回転に抵抗力を付与する。ステータ52は、ドラム51内に配置されている。ステータ52は、ヨーク53と、円筒体54と、を備えている。ヨーク53は、強磁性体である。ヨーク53には、複数の永久磁石55が設けられている。複数の永久磁石55は、周方向に等間隔をあけて設けられている。複数の永久磁石55は、周方向に異なる極性が交互に配置されている。ヨーク53は、円筒体54内に設けられている。円筒体54は、ヨーク53を覆う。円筒体54は、ヨーク53に対して周方向に回転可能である。円筒体54は、例えば、図示しないシリンダにより回転させられる。円筒体54は、非磁性体からなる。円筒体54には、複数のボールピース56が設けられている。ボールピース56は、強磁性体からなる。複数のボールピース56は、周方向に等間隔をあけて配置されている。
【0053】
永久磁石55およびボールピース56は、1対1で対応している。永久磁石55およびボールピース56は、互いに同数、かつ、互いに周方向に同等の間隔をあけて設けられている。
円筒体54が回転してボールピース56の周方向の位置(永久磁石55に対するボールピース56の位置)が変化することで、永久磁石55から発生して円筒体54(ボールピース56)を通過する磁力線の量が変動する。その結果、円筒体54を通過した磁力線は、ドラム51に及び、ドラム51の回転に抵抗力を付与する。抵抗力は、磁力線の量(磁界の強さ)に応じて変化する。よって、円筒体54が回転してボールピース56の周方向の位置が変化することで、ステータ52がドラム51に付与する抵抗力が変化する。
【0054】
例えば、図7に示すように、永久磁石55とボールピース56とが径方向に対向している場合について検討する。この場合、周方向に隣接した2つの永久磁石55のうち、一方の永久磁石55からの磁力線が、その永久磁石55に対向した第1のボールピース56、ドラム51、第1のボールピース56に周方向に隣接した第2のボールピース56、他方の永久磁石55、及びヨーク53を介して一方の永久磁石55に戻る。このとき、永久磁石55からの磁界がドラム51に作用するので、回転するドラム51には、誘導電流が発生する。これと同時に、その電流と磁界の相互作用によってドラム51の回転と反対方向のローレンツ力が発生し、ドラム51に最大限の制動力が発生した制動状態を形成することができる。図7に示す状態は、制動装置15の高制動力モードである。
【0055】
次に、図8に示すように、リターダ42の円筒体54が回転し、ボールピース56が、周方向に隣接する永久磁石55の間に位置する場合について検討する。この場合、周方向に隣接した2つの永久磁石55のうち、一方の永久磁石55からの磁力線が、ボールピース56、他方の永久磁石55、及びヨーク53を介して、当該一方の永久磁石55に戻る。このとき、永久磁石55からの磁界はドラム51に作用せず、前述した制動力が生じない非制動状態を形成することができる。図8に示す状態は、制動装置15の停止モードである。
【0056】
さらに、このリターダ42では、円筒体54を回転させて永久磁石55に対するボールピース56の位置を図7及び図8に示した間で調整することで、制動力を変化させることも可能である。例えば、図9に示すように、リターダ42の円筒体54が回転し、永久磁石55の一部がボールピース56の一部に径方向に対向し、永久磁石55の残部がボールピース56に対向しない場合について検討する。この場合も、高制動力モードと同様に、永久磁石55からの磁界がドラム51に作用するが、磁力線の量は、高制動力モードの場合における磁力線の量よりは少なくなる。よって、高制動力モードよりも弱い制動力が発生した弱制動状態を形成することができる。図9に示す状態は、制動装置15の低制動力モードである。
【0057】
以上のように、制動装置15は、停止モード、高制動力モード、低制動力モードをリターダ42の状態によって切り替え可能である。ここで停止モード、高制動力モード、低制動力モード、とはそれぞれ以下の通りである。
停止モード:制動装置15が制動力を発揮しない状態
高制動力モード:制動装置15が高い制動力を発揮している状態
低制動力モード:制動装置15が低い制動力を発揮している状態
【0058】
なお、一般的にリターダ42が車両の補助ブレーキに適用される場合、リターダ42は、制動装置15において停止モードを構成する状態から高制動力モードを構成する状態に切り替えられ、高い制動力を発揮させて車両を十分に減速させた後、高制動力モードを構成する状態から低制動力モードを構成する状態に切り替えられる。すなわち、リターダ42は、まず、制動力が大きい高制動力モードを構成する状態で使用され、その後、制動力が小さい低制動力モードを構成する状態で使用される。
またこのように、リターダ42を車両に適用した場合、ドラム51の回転数としては3000rpm程度が想定される。しかしながら、本実施形態のように焼結装置10にリターダ42を適用した場合、ドラム51の回転数は最大でも400rpmに達しない場合があると考えられる。
【0059】
(制動力)
上述したように、制動力は、制動装置15のモードに応じて変化する。ただし、制動力は、制動装置15のモードだけでなく、以下の(a1)~(a3)の要因によっても変化する。言い換えると、制動力は、同一のモードであっても、以下の(a1)~(a3)の要因によって異なることがある。
【0060】
(a1)ドラム51の回転数。
(a2)ドラム51の温度およびステータ52の温度。
(a3)雰囲気温度および稼働時間。
【0061】
上記(a1)については、ドラム51の回転数が変化すると、ドラム51を通過する磁力線量が変化するため、制動力が変化する。ドラム51の回転数が高いほど、制動力は高くなる。
【0062】
上記(a2)については、ドラム51の温度が変化すると、ドラム51の物性値が変化するために、制動力が変化する。本実施形態では、ドラム51の温度が高温だと磁力が通りにくく、制動力(電磁力)が小さくなる。ステータ52の温度が変化すると、ドラム51とステータ52との間のギャップ(径方向の隙間)が変化し、ギャップの変化に伴いドラム51を通過する磁力線量が変化するため、制動力が変化する。本実施形態では、前記ギャップが大きくなると、ドラム51を通過する磁力線の量が減るため、制動力(電磁力)が小さくなる。さらに、ステータ52の温度が変化すると、永久磁石55の温度も変化する。永久磁石55は、温度上昇に伴い磁力が低下する性質を有する。そのため、永久磁石55の磁力の観点からも、ステータ52の温度が変化に伴って前記磁力線量が変化し、制動力が変化する。
なお、本実施形態のような永久磁石型のリターダ42では、ドラム51およびステータ52の温度上昇に伴い、制動力が減少する。
【0063】
上記(a3)については、雰囲気温度、稼働時間に応じて、上記(a2)のドラム51の温度やステータ52の温度が変化するため、制動力が変化する。稼働時間が一定を超えると、雰囲気温度に応じてドラム51の温度やステータ52の温度が飽和する。なお雰囲気温度は、基本的に一定であること(基本的に大きく変動しないこと)が想定される。
ここでリターダ42は、時間経過とともにジュール熱により温度上昇する。そのため、リターダ42では、時間経過とともに制動力が低下し飽和する。言い換えると、リターダ42では、稼働時間が短い初期において制動力がピーク値を持つ。また、このように温度による制動力の低下の影響は飽和するため、リターダ42の温度飽和後は、上記(a2)、(a3)による制動力への影響は限定的になる。そのため、リターダ42の温度飽和後には、実質的に、上記(a1)に係る回転数のみが制動力の変数となる。
【0064】
(許容値)
ここで許容値を定義する。許容値は、制動装置15や焼結装置10に許容される制動力の上限値である。許容値は、例えば、この許容値を超える制動力を制動装置15が発生させたとき、制動装置15の破損や焼結装置10の破損が生じるおそれがある値(力、トルク)である。許容値は、例えば、200N・mであり、例えば、150N・mである。焼結装置10では、原則的に、制動力が許容値以下となる範囲で運転する運転方法が望まれている。
【0065】
なお本実施形態では、トルクガードカップリング63があるため、制動力が許容値を超える場合であっても、前述したように出力軸65が縁切りされ、制動装置15の損傷や焼結装置10の損傷は抑制される。しかしながら、この場合には、制動力が許容値を超えると、制動装置15の運転が実質的に停止されてしまう。そのため、トルクガードカップリング63がある場合であっても、制動力が許容値以下となる範囲で運転する運転方法が望まれている。
【0066】
(運転方法)
本実施形態に係る運転方法は、第1ステップ、第2ステップおよび第3ステップを含む。なおこの運転方法は、制御装置16が、焼結装置10の各構成を制御して作業員によらず自動的に実施してもよく、作業員が、焼結装置10の各構成を、制御装置16を介して動作させて実施してもよい。
【0067】
(第1ステップ)
第1ステップは、制動装置15を停止モードとした状態で、給鉱スプロケット11を回転させてパレット台車14に循環路13を移動させるステップである。例えば、制御装置16は、駆動機構11aを制御して給鉱スプロケット11を回転させる。
【0068】
なお前述したように、給鉱スプロケット11の回転数と、パレット台車14の移動速度と、の間には相関関係がある。給鉱スプロケット11の回転数が増加すると、パレット台車14の移動速度が増加し、給鉱スプロケット11の回転数が減少すると、パレット台車14の移動速度が減少する。そのため、パレット台車14の移動速度として、パレット台車14の移動速度自体に代えて、給鉱スプロケット11の回転数を採用してもよい。この場合、制御装置16は、第1検出装置の検出結果から、パレット台車14の移動速度を検出することができる。
【0069】
さらに本実施形態では、パレット台車14の移動速度と、ドラム51の回転数と、の間にも相関関係(比例関係)がある。よって、パレット台車14の移動速度として、パレット台車14の移動速度自体に代えて、ドラム51の回転数を採用してもよい。この場合、制御装置16は、第2検出装置の検出結果から、パレット台車14の移動速度を検出することもできる。
【0070】
(異常検知)
ここで本実施形態では、第1ステップにおいて、制御装置16の異常検知モードを起動させる。異常検知モードは、焼結装置10のトラブルを検知するモードである。制御装置16は、異常検知システム(インターロック機構)として機能する。異常検知システムは、焼結装置10のトラブルを検知したら、制動装置15単体や焼結装置10全体を停止させる。
【0071】
焼結装置10のトラブルとしては、例えば以下の(b1)、(b2)のようなトラブルが挙げられる。
(b1)回転体41が何らかの理由で固定される(制動装置15のトラブル)。
(b2)パレット台車14同士の距離の間隔が、想定されている距離の間隔に対して変化する(パレット台車14の走行トラブル)。
【0072】
第1ステップでは、パレット台車14の移動速度が、所定の下限速度v1を超えた場合に、制御装置16の異常検知モードを起動する。下限速度v1は、パレット台車14が安定して移動していることを示す移動速度である。なお本実施形態では、パレット台車14の移動速度を示すドラム51の回転数が、所定値(例えば50rpm)を超えたら、制御装置16の異常検知モードを起動する。すなわち、パレット台車14の移動速度は、回転体41の回転数に比例し、回転体41の回転数は、ドラム51の回転数に比例することから、パレット台車14の移動速度として、回転体41の回転数やドラム51の回転数を用いることができる。ドラム51の回転数が、上記所定値(例えば50rpm)を超えた後、通常であればパレット台車14が安定して走行する。そのため、ドラム51の回転数は、一定の範囲内(例えば、50~300rpm)に収まる。このとき、パレット台車14の移動速度は、例えば、0.5~2.0m/minである。
【0073】
ところで本実施形態では、風車部45のローラ47がパレット台車14のプッシャーローラ35に当接したときに、回転体41が回転して制動装置15が制動力を発生させる。パレット台車14が安定した速度で移動している場合には、一定の時間の間隔以下で(実質的に連続して)、回転体41が回転して制動力が発生する。
このような焼結装置10では、複数のパレット台車14の平均移動速度が前記下限速度v1であると仮定したときに、循環路13を循環する複数のパレット台車14が制動装置15に、所定の余裕時間i1以下の時間の間隔で制動力を生じさせる。
【0074】
前記余裕時間i1は、例えば、数秒(例えば、1~2秒)である。前記余裕時間i1は、例えば、以下の(c1)~(c3)に基づいて(例えば、余裕時間i1=(c1)―(c2)―(c3)として)設定することができる。
(c1)循環路13に沿って隣り合うパレット台車14同士の任意の箇所(例えば、排鉱部B)での距離の間隔が0になるまでに必要と見込まれる時間。
(c2)伝達機構43による回転力の伝達のタイムラグ。
(c3)トルク検出器66による検出から出力までのタイムラグ。
【0075】
そして本実施形態では、制御装置16は、循環路13を循環する複数のパレット台車14が制動装置15に制動力を生じさせる時間の間隔が、前記余裕時間i1以上となった場合にトラブルを検知したと判断する。以下に示す第2ステップ以降では、制御装置16がトラブルを検知したときに、制動装置15を停止モードに切り替える。このとき本実施形態では、制御装置16が、制動装置15だけでなく焼結装置10の全体を停止させる。すなわち、制御装置16は、駆動機構11aを停止させて給鉱スプロケット11を停止させる。
前記余裕時間i1は、制御装置16に記憶されている。制御装置16は、例えば、前記第2検出装置によるドラム51の回転数の検出結果が、前記余裕時間i1以上長い時間、0である場合に、トラブルを検知する。
【0076】
(第2ステップ)
第2ステップは、第1ステップの後、停止モードの制動装置15を低制動力モードに切り替えるステップである。
なお、制動装置15が低制動力モードであると、ドラム51の回転数の変動範囲は、制動装置15が停止モードである場合に比べて狭まる(例えば、100~250rpm)。これは、リターダ42による制動力が発揮されるためである。このとき、パレット台車14の移動速度も、例えば、0.7~1.7m/minに狭まる。
【0077】
(第3ステップ)
第3ステップは、第2ステップの後、かつ、所定の切り替え条件を満たしたときに、低制動力モードの制動装置15を高制動力モードに切り替えるステップである。なお、リターダ42の制動力は、切り替え直後にピーク値を持つ。
【0078】
(切り替え条件)
そして本実施形態では、切り替え条件は、低制動力モードの制動装置15を高制動力モードに切り替えた直後の制動力の推定値(制動力のピーク値)を推定し、推定した制動力の推定値が、制動装置15に許容されている許容値以下であると判断するための条件である。切り替え条件は、以下の条件1および条件2の2つの条件の両方を含む。本実施形態では、これらの2つの条件1、2が満たされたときに、切り替え条件が満たされたと判断される。これらの条件1、2は、制御装置16によって自動的に判断される。
【0079】
条件1:リターダ42の温度が飽和していること。
条件2:条件1を満たした状態において、低制動力モードの制動装置15を高制動力モードに切り替えた直後の制動力の推定値を推定し、推定した制動力の推定値(制動力のピーク値)が、制動装置15に許容されている許容値以下であること。
【0080】
本実施形態では、条件1は、第2ステップを開始した後、所定の飽和時間t1が経過したという条件である。第2ステップを開始した後に飽和時間t1が経過したとき、条件1が満たされたと判断される。前記飽和時間t1は、リターダ42の温度の飽和に必要とされる時間である。言い換えると、条件1は、リターダ42の温度が飽和したと判断される程度の時間が経過したという条件である。
【0081】
前記飽和時間t1は、リターダ42の雰囲気温度と、ドラム51の回転数と、を因子として求められる。すなわち、リターダ42の温度の飽和に必要な時間は、リターダ42の雰囲気温度や、ドラム51の回転数に応じて変動する。本実施形態では、制動装置15の使用環境を予め想定しておき、その使用環境下におけるリターダ42の雰囲気温度およびドラム51の回転数を前提とした場合における飽和時間t1を、予め計算しておく。飽和時間t1は、例えば、実機や試験機を用いた検証試験や、ソフトウェアを用いたシミュレーション等により求めることができる。
飽和時間t1は、制御装置16に記憶されている。制御装置16は、例えば、第2ステップを実施した後(停止モードから低制動力モードに切り替えた後)の経過時間が飽和時間t1に達したか否かに基づいて、条件1を満たしたか否かを判断することができる。
【0082】
また本実施形態では、条件2は、ドラム51の回転数が、所定の切り替え回転数r1以下であるという条件である。ドラム51の回転数が切り替え回転数r1以下となったとき、条件2が満たされたと判断される。切り替え回転数r1は、条件1を満たしている状態においては、リターダ42雰囲気温度とドラム51回転数を、因子として求められる。稼働時の雰囲気温度において、任意の回転数における低制動力モードの制動装置15を高制動力モードに切り替えた直後における制動力を推定し、推定した制動力の推定値(低制動力モードから高制動力モードに切り替えた直後の制動力のピーク値)が制動装置15に許容されている許容値以下となる任意の回転数を、切り替え回転数r1として決定できる。なお、切り替え回転数r1を、飽和時間t1の前提となるドラム51の回転数とは別途、設定することで、例えば、切り替え回転数r1を、飽和時間t1の前提となるドラム51の回転数に対して低くすることができる。この場合、制動力のピーク値をより確実に低く抑えることができる。
【0083】
前記切り替え回転数r1は、リターダ42の雰囲気温度を因子として求められる。すなわち、前述したように、制動力は、リターダ42の雰囲気温度と、ドラム51の回転数に応じて変化する。本実施形態では、制動装置15の使用環境を予め想定しておき、その使用環境下におけるリターダ42の雰囲気温度を前提とした場合における切り替え回転数r1を、予め計算しておく。切り替え回転数r1は、例えば、実機や試験機を用いた検証試験や、ソフトウェアを用いたシミュレーション等により求めることができる。
【0084】
ここで、ある特定のリターダ42の雰囲気温度ta(℃)で、ある特定のドラム51の回転数ra(rpm)における制動力Ta(N・m)を、前記検証試験により測定した場合を想定する。この場合、そのリターダ42の雰囲気温度taと異なる雰囲気温度tb(℃)で、かつ、そのドラム51の回転数raと同一の回転数raとした場合の制動力Tb(N・m)の大きさは、例えば以下(1)式のように算出される。
【0085】
Tb=Ta+k・(ta―tb) ・・・ (1)
【0086】
なお上記(1)式において、kは温度係数((N・m)/℃)であり、例えばk=1.2((N・m)/℃)である。
【0087】
切り替え回転数r1は、制御装置16に記憶されている。制御装置16は、例えば、第2検出装置から送られるドラム51の回転数に基づいて、条件2を満たしたか否かを判断することができる。
【0088】
ここで上述したように、低制動力モードにおいても、ドラム51の回転数は変動している。そして、ドラム51の回転数が所定値(例えば、150rpm。例えば、パレット台車14の移動速度に換算すると、1.0m/min。)以下となったタイミングで、制動装置15を低制動力モードから高制動力モードに切り替える。
制動装置15が低制動力モードから高制動力モードに切り替えられると、ドラム51の回転数の変動範囲は、切り替え前と比べて更に狭まる(例えば、150~200rpm)。これは、リターダ42による制動力が高まるためである。このとき、パレット台車14の移動速度も、例えば、1.0~1.5m/minに狭まる。
【0089】
(作用効果)
本願発明者は、制動装置15を起動させた直後に、制動力のピーク値が生じること、および、そのピーク値が許容値を上回り、焼結装置10の運転に影響が生じることを見出した。
本実施形態に係る運転方法によれば、第1ステップで、制動装置15を停止モードとした状態でパレット台車14に循環路13を移動させ、その後、まず第2ステップで、制動装置15を停止モードから低制動力モードに切り替える。さらにその後、第3ステップで、制動装置15を低制動力モードから高制動力モードに切り替える。このように、停止モードの制動装置15をいきなり高制動力モードに切り替えるのではなく、停止モードの制動装置15を低制動力モード、高制動力モードと段階的に切り替える。これにより、制動装置15時のモード切り替え直後に、制動装置15に大きな制動力のピーク値が生じるのを抑制することができる。
さらに、第3ステップでは、第2ステップの後、かつ、切り替え条件を満たしたときに、低制動力モードの制動装置15を高制動力モードに切り替える。前記切り替え条件は、低制動力モードの制動装置15を高制動力モードに切り替えた直後の制動力の推定値(制動力のピーク値)を推定し、推定した制動力の推定値が、制動装置15に許容されている許容値以下であることである。よって、制動装置15を低制動力モードから高制動力モードに切り替えるときにおいても、制動力のピーク値が許容値を超えるのを抑制することができる。
以上から、制動装置15のモードを切り替える際に生じる制動力を抑えることが可能になり、焼結装置10を安定して運転することができる。
【0090】
リターダ42は、トラックやバスなどの車両の補助ブレーキとして一般的に用いられる。しかしながら、この運転方法では、リターダ42を焼結装置10におけるパレット台車14の制動装置15として用いる。
ここで本願発明者は、リターダ42に発生する制動力がリターダ42の温度に依存して変動することを見出した。例えば、ドラム51の温度が変化すると、ドラム51の物性値が変化することで、制動力が変動する。また、ステータ52の温度が変化すると、ドラム51とステータ52とのギャップの大きさが変化することで、制動力が変動する。よって、リターダ42の温度が飽和している場合には、その温度のリターダ42を前提として制動力を推定することが可能になり、制動力を精度良く推定できる。
そこで、この運転方法では、切り替え条件が、以下の条件1および条件2の2つの条件の両方を含む。
条件1:リターダ42の温度が飽和していること。
条件2:条件1を満たした状態において、低制動力モードの制動装置15を高制動力モードに切り替えた直後の制動力の推定値を推定し、推定した制動力の推定値(制動力のピーク値)が、制動装置15に許容されている許容値以下であること。
これにより、切り替え条件を満たすときに制動装置15に生じる制動力を精度良く推定することが可能になり、焼結装置10を確実に安定して運転することができる。
【0091】
リターダ42の温度は、第2ステップを開始した後の時間に応じて変化し、一定の時間を経過すると飽和する。よって、条件1が、第2ステップを開始した後、リターダ42の温度の飽和に必要とされる飽和時間t1が経過したという条件であることで、リターダ42の温度が飽和しているか否かを精度良く判断することができる。
【0092】
第2ステップを開始した後、リターダ42の温度がどの程度の時間で飽和するかは、リターダ42の雰囲気温度と、ドラム51の回転数と、に応じて変化する。よって、飽和時間t1が、リターダ42の雰囲気温度と、ドラム51の回転数と、を因子として求められることで、リターダ42の温度が飽和しているか否かを一層精度良く判断することができる。
【0093】
第2ステップ以降では、制御装置16(異常検知システム)がトラブルを検知したときに、制動装置15を停止モードに切り替える。これにより、焼結装置10を一層安定して運転することができる。
【0094】
第1ステップでは、パレット台車14の移動速度が、所定の下限速度v1を超えた場合に、制御装置16の異常検知モードを起動する。そして、制御装置16は、循環路13を循環する複数のパレット台車14が制動装置15に制動力を生じさせる時間の間隔が余裕時間i1以上となった場合にトラブルを検知したと判断する。これにより、異常検知システムを精度良く作動させることができる。
【0095】
(変形例)
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0096】
図10および図11に示す変形例に係る焼結装置10Aのように、排鉱部Bに排鉱スプロケット12があってもよい。言い換えると、図10に示すように、焼結装置10Aが両スプロケット式であってもよい。焼結装置10Aでは、排鉱ガイドレール24は、排鉱スプロケット12の周縁に沿って設けられている。
トルクガードカップリング63がなくてもよい。
【0097】
第2ステップで、第1ステップの後、かつ、所定の起動条件を満たしたときに、停止モードの制動装置15を低制動力モードに切り替えてもよい。
起動条件は、停止モードの制動装置15を低制動力モードに切り替えた直後の制動力の推定値を推定し、推定された制動力の推定値が、許容値以下であることである。起動条件における制動力のピーク値は、例えば、リターダ42の雰囲気温度と、ドラム51の回転数と、を因子として予測される。なお前述したように、制動力は、ドラム51の温度やステータ52の温度に依存して変化する。そして、リターダ42の起動前において、ドラム51の温度やステータ52の温度は、リターダ42の雰囲気温度に大きく依存する。
この場合、起動条件を、ドラム51の回転数が所定の起動回転数以下であるという条件とすることができる。すなわち、ドラム51の回転数が起動回転数以下となったとき、起動条件が満たされたと判断することができる。このとき、起動回転数は、リターダ42の雰囲気温度が所定の温度であって、停止モードの制動装置15を低制動力モードに切り替えた直後におけるドラム51の回転数の推定値を推定し、推定したドラム51の回転数の推定値である。リターダ42の雰囲気温度を示す前述の所定の温度は、例えば、予め設定されていてもよく、実際の雰囲気温度を測定してもよい。
【0098】
この場合、制動装置15に起動時においても、制動力を抑えることが可能になり、焼結装置をより安定して運転することができる。
【0099】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0100】
10、10A 焼結装置
11 給鉱スプロケット
13 循環路
14 パレット台車
15 制動装置
21 往路
22 復路
42 リターダ
51 ドラム
52 ステータ
A 給鉱部
B 排鉱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11