(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126852
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電動アクチュエータおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20240912BHJP
H02K 11/215 20160101ALI20240912BHJP
H02K 29/08 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H02K11/33
H02K11/215
H02K29/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035561
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋
(72)【発明者】
【氏名】北 真一郎
【テーマコード(参考)】
5H019
5H611
【Fターム(参考)】
5H019AA08
5H019BB01
5H019BB05
5H019BB15
5H019BB20
5H019BB22
5H019CC03
5H611BB01
5H611BB08
5H611PP07
5H611QQ03
5H611RR02
5H611TT01
(57)【要約】
【課題】ロータが安定して回転可能であるとともに、制御基板に実装された一部の電気部品をロータに近接させることができ、大型化および高コスト化を抑えられる電動アクチュエータを提供する。
【解決手段】電動アクチュエータ1が、ロータ6とステータ9とを有する電動のブラシレスモータ2と、複数の電気部品を有しブラシレスモータ2の動作を制御する制御基板3と、を有する。制御基板3は、主基板10と、主基板10よりも平面形状が小さく、接続部材14を介して主基板10に接続されている小型基板11と、を含む。小型基板11は、一部の電気部品12を有し、ロータ6に対向するとともに、ロータ6の回転軸方向Aにおいて主基板10よりもロータ6に近接する位置に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータとステータとを有する電動のブラシレスモータと、複数の電気部品を有し前記ブラシレスモータの動作を制御する制御基板と、を有し、
前記制御基板は、主基板と、前記主基板よりも平面形状が小さく、接続部材を介して前記主基板に接続されている小型基板と、を含み、
前記小型基板は、一部の電気部品を有し、前記ロータに対向するとともに、前記ロータの回転軸方向において前記主基板よりも前記ロータに近接する位置に配置されていることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記小型基板が有する前記電気部品は、前記ロータのマグネットを検知する磁気センサである、請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記小型基板は、前記回転軸方向に見て前記主基板の一部に重なっている、請求項1または2に記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記主基板は、前記回転軸方向に見て前記ロータ側に向けて突出する凸部を有し、前記小型基板は、前記回転軸方向に見て前記凸部に重なっている、請求項3に記載の電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記小型基板は、前記凸部の平面形状の内部に含まれる平面形状を有している、請求項4に記載の電動アクチュエータ。
【請求項6】
前記小型基板はねじによって前記主基板に固定されている、請求項1または2に記載の電動アクチュエータ。
【請求項7】
前記主基板は、前記回転軸方向に見て前記小型基板と重ならない位置に電子制御ユニットを有している、請求項1または2に記載の電動アクチュエータ。
【請求項8】
ロータとステータとを有する電動のブラシレスモータを設置する工程と、
複数の電気部品を有する基板材料を切断して、主基板と、前記主基板よりも平面形状が小さく一部の電気部品を有する小型基板とに分離する工程と、
前記小型基板を、前記ロータに対向するとともに、前記ロータの回転軸方向において前記主基板よりも前記ロータに近接する位置に配置する工程と、
接続部材によって前記小型基板を前記主基板に接続する工程と、を含むことを特徴とする、電動アクチュエータの製造方法。
【請求項9】
前記小型基板が有する前記電気部品は、前記ロータのマグネットを検知する磁気センサであり、前記磁気センサが前記マグネットに対向するように前記小型基板を配置する、請求項8に記載の電動アクチュエータの製造方法。
【請求項10】
前記小型基板を、前記回転軸方向に見て前記主基板の一部に重なるように配置する、請求項8または9に記載の電動アクチュエータの製造方法。
【請求項11】
前記主基板は、前記回転軸方向に見て前記ロータ側に向けて突出する凸部を有し、
前記基板材料には、前記主基板の前記凸部になる部分に隣接する位置に、前記小型基板になる突出部分が一体的に形成されており、当該突出部分を切り離すことによって前記主基板と前記小型基板とに分離する、請求項8または9に記載の電動アクチュエータの製造方法。
【請求項12】
前記小型基板は、前記凸部の平面形状の内部に含まれる平面形状を有しており、前記小型基板を、前記回転軸方向に見て前記凸部に重なるように配置する、請求項11に記載の電動アクチュエータの製造方法。
【請求項13】
前記小型基板をねじによって前記主基板に固定し、前記小型基板と前記ロータとの間の距離を前記ねじによって調節する、請求項8または9に記載の電動アクチュエータの製造方法。
【請求項14】
前記主基板は電子制御ユニットを有し、前記小型基板を、前記回転軸方向に見て前記電子制御ユニットに重ならないように配置する、請求項8または9に記載の電動アクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動アクチュエータおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているような自動車のスライドドアの開閉機構(スライド装置)などの様々な移動機構を駆動するために、モータを含む電動アクチュエータが用いられている。一般的な電動アクチュエータは、ステータ(固定子)とロータ(回転子)とを有するブラシレスモータと、そのブラシレスモータの動作を制御する制御基板等を含んでいる。このような電動アクチュエータの例が特許文献2,3に記載されている。特許文献2に記載されている電動アクチュエータでは、制御基板のうち、電動モータに対向する内側領域には背の低い電気部品が配置され、外側領域には背の高い電気部品が配置されている。特許文献3に記載されている電動アクチュエータでは、ロータマグネットを保持する樹脂部の一部が磁気センサに近接する方向に延長しており、この延長部分にセンサマグネットが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-55500号公報
【特許文献2】特許6955195号公報
【特許文献3】特開2020-162367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
制御基板に実装されている電気部品の一部、例えばロータの位置や回転状態を検知するための磁気センサ(ホールIC)は、ロータにできるだけ近接して配置されることが好ましい。一方、ステータのコイルと制御基板とをあまり近接させることはできない。
【0005】
特許文献2の構成では、ロータの回転軸方向におけるロータの長さをステータよりも長くすることによって、ロータを制御基板に近接させている。従って、制御基板に実装された電気部品の一部をロータに近接させることができる。しかし、制御基板に近接させるために延長されたロータの回転軸方向長さと、ステータの回転軸方向長さとが一致していないため、ロータの回転軸方向中心位置とステータの回転軸方向中心位置とにずれが生じる。その結果、ロータの回転イナーシャが大きくなり回転時に軸方向の振動(がたつき)が生じて、電動モータの耐久性が低下する可能性がある。また、ロータの回転軸方向長さを長くすることにより、電動アクチュエータの大型化および高コスト化を招く。
【0006】
特許文献3の構成では、センサマグネットと磁気センサとを近接させることが可能である。しかし、樹脂部の一部を磁気センサに近接する方向に延長してその延長部分にセンサマグネットを取り付けるため、構造が複雑で製造が煩雑であるとともに、電動アクチュエータの大型化および高コスト化を招く。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ロータが安定して回転可能であるとともに、制御基板の一部の電気部品をロータに近接させることができ、大型化および高コスト化を抑えられる電動アクチュエータおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動アクチュエータは、ロータとステータとを有する電動のブラシレスモータと、複数の電気部品を有し前記ブラシレスモータの動作を制御する制御基板と、を有し、前記制御基板は、主基板と、前記主基板よりも平面形状が小さく、接続部材を介して前記主基板に接続されている小型基板と、を含み、前記小型基板は、一部の電気部品を有し、前記ロータに対向するとともに、前記ロータの回転軸方向において前記主基板よりも前記ロータに近接する位置に配置されていることを特徴とする。
前記小型基板が有する前記電気部品は、前記ロータのマグネットを検知する磁気センサであってよい。
前記小型基板は、前記回転軸方向に見て前記主基板の一部に重なっていてよい。
前記主基板は、前記回転軸方向に見て前記ロータ側に向けて突出する凸部を有していてよく、前記小型基板は、前記回転軸方向に見て前記凸部に重なっていてよい。
前記小型基板は、前記凸部の平面形状の内部に含まれる平面形状を有していてよい。
前記小型基板はねじによって前記主基板に固定されていてよい。
前記主基板は、前記回転軸方向に見て前記小型基板と重ならない位置に電子制御ユニットを有していてよい。
本発明の電動アクチュエータの製造方法は、ロータとステータとを有する電動のブラシレスモータを設置する工程と、複数の電気部品を有する基板材料を切断して、主基板と、前記主基板よりも平面形状が小さく一部の電気部品を有する小型基板とに分離する工程と、前記小型基板を、前記ロータに対向するとともに、前記ロータの回転軸方向において前記主基板よりも前記ロータに近接する位置に配置する工程と、接続部材によって前記小型基板を前記主基板に接続する工程と、を含むことを特徴とする。
前記小型基板が有する前記電気部品は、前記ロータのマグネットを検知する磁気センサであってよく、前記磁気センサが前記マグネットに対向するように前記小型基板を配置してよい。
前記小型基板を、前記回転軸方向に見て前記主基板の一部に重なるように配置してよい。
前記主基板は、前記回転軸方向に見て前記ロータ側に向けて突出する凸部を有していてよく、前記基板材料には、前記主基板の前記凸部になる部分に隣接する位置に、前記小型基板になる突出部分が一体的に形成されていてよく、当該突出部分を切り離すことによって前記主基板と前記小型基板とに分離してよい。
前記小型基板は、前記凸部の平面形状の内部に含まれる平面形状を有していてよく、前記小型基板を、前記回転軸方向に見て前記凸部に重なるように配置してよい。
前記小型基板をねじによって前記主基板に固定し、前記小型基板と前記ロータとの間の距離を前記ねじによって調節してよい。
前記主基板は電子制御ユニットを有していてよく、前記小型基板を、前記回転軸方向に見て前記電子制御ユニットに重ならないように配置してよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、ロータが安定して回転可能であるとともに、制御基板の一部の電気部品をロータに近接させることができ、大型化および高コスト化を抑えられる電動アクチュエータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の電動アクチュエータの基本構造を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1に示す電動アクチュエータの基本構造の斜視図である。
【
図3】
図1に示す電動アクチュエータの制御基板の基板材料の平面図である。
【
図4】
図1に示す電動アクチュエータの製造方法の一部を示す制御基板の平面図である。
【
図5】
図1に示す電動アクチュエータの製造方法の一部を示す分解斜視図である。
【
図6】
図1に示す基本構造を含む電動アクチュエータの構成を示す断面図である。
【
図7】
図6に示す電動アクチュエータの主要部分の分解斜視図である。
【
図8】
図6に示す電動アクチュエータが駆動装置として用いられるスライドドアを含む車両の一部を模式的に示す側面図である。
【
図9】
図8に示すスライドドアの開閉機構を示す分解斜視図である。
【
図10】
図9に示す開閉機構の主要部分を示す分解斜視図である。
【
図11】
図9に示す開閉機構の主要部分を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の電動アクチュエータ1の基本構造を模式的に示す断面図であり、
図2はその斜視図である。この電動アクチュエータ1は、モータ2と、複数の電気部品を有しモータ2の動作を制御する制御基板3と、を含む。モータ2は、回転軸4およびマグネット5を含み回転可能に支持されているロータ6と、コア7およびコイル8を含みロータ6の周囲に配置されているステータ9とを有し、ロータ6の回転軸4が延びる方向(回転軸方向A、
図1の上下方向)に直交する方向にロータ6およびステータ9が延びる電動の扁平型ブラシレスモータである。
図1では、ロータ6の支持機構およびステータ9の固定機構9a(
図6参照)を省略し、またロータ6およびステータ9を簡略化して示している。
【0012】
制御基板3は、主基板10と、主基板10よりも平面形状が小さい小型基板11と、を含む。主基板10は、回転軸方向Aに見てロータ6側に向けて突出する凸部10aを有している。小型基板11は、一部の電気部品、例えばロータ6のマグネット5を検知する磁気センサ(ホールIC等)12を有している。小型基板11は、主基板10の凸部10aの平面形状の内部に含まれる平面形状を有しており、回転軸方向Aに見て凸部10aに重なる位置に配置され、ねじ13によって主基板10に固定されるとともに、接続部材14を介して主基板10に電気的に接続されている。小型基板11は、ロータ6に対向するとともに、ロータ6の回転軸方向Aにおいて、すなわち回転軸方向Aに直交する方向に見て主基板10よりもロータ6に近接する位置に配置されており、磁気センサ12がマグネット5に対向している。主基板10は電子制御ユニット(ECU)15およびコネクタ16を有し、ECU15およびコネクタ16は、回転軸方向Aに見て小型基板11と重ならない位置にある。この構成によると、モータ2の動作を制御する制御基板3が2つの部材(主基板10と小型基板11)からなり、磁気センサ12を有する小型基板11のみが、ロータ6の回転軸方向Aにおいてロータ6に近接している。
【0013】
本実施形態の電動アクチュエータ1の技術的思想について以下に説明する。通常は、モータ2の動作を制御する制御基板3は単一の板状部材から構成されている。この制御基板3に実装されている電気部品のうちの一部の電気部品、例えば磁気センサ(ホールIC等)12をロータ6のマグネット5に近接させることと、制御基板3とステータ9のコイル8および固定機構9aとを離れさせることとを両立させることは困難である。特許文献2,3に記載された構成のように、ロータ6の回転軸方向Aの長さを長くしたり、センサマグネット等の追加の部材をロータ6に設けたりすると、ロータ6のマグネット5を制御基板3に近接させることができるが、ロータ6の回転の不安定さや、モータ2の大型化、高コスト化、および製造の煩雑化を招く可能性がある。そこで、本発明では、ロータ6を制御基板3に近接させるのではなく、制御基板3の一部をロータ6のマグネット5に近接させるという、従来にない構成を採用している。すなわち、本発明では、制御基板3を2つの部材に分離して、一方をステータ9に対向させてコイル8から離れた位置に配置し、他方をロータ6に対向させてマグネット5に近接する位置に配置している。ここでは、ステータ9に対向する部分を主基板10と称し、ロータ6に対向する部分は主基板10よりも平面形状が小さく、それを小型基板11と称している。
【0014】
本発明では、主基板10と小型基板11とを、回転軸方向Aにおける位置をずらして配置することにより、前述したように、ステータ9に対向する主基板10をコイル8から離れた位置に配置し、ロータ6に対向する小型基板11をマグネット5に近接する位置に配置している。その結果、ステータ9のコイル8が制御基板3に及ぼす影響を小さく抑え、かつ磁気センサ12によりロータ6のマグネット5を精度良く検知することが可能である。しかも、ロータ6を回転軸方向Aに延長しておらずロータ6とステータ9の回転軸方向Aの長さが実質的に等しいため、それぞれの回転軸方向Aの中心位置を一致させることができる。それにより、ロータ6を安定的に回転させることかできるとともに、モータ2の大型化および高コスト化を抑えることができる。また、ECU15を、回転軸方向Aに見て小型基板11ともモータ2とも重ならない位置に配置することにより、回転軸方向Aにおける厚さが抑えられ、スペース効率が向上し、電動アクチュエータ1の小型化を図ることができる。
【0015】
次に、
図1,2に示す電動アクチュエータ1の製造方法の主要部分について説明する。本実施形態では、
図3に示す基板材料3aを作製する。この基板材料3aは、主基板10と小型基板11とが一体化したものである。すなわち、基板材料3aは凸部10aを含む主基板10と小型基板11とが仮想線Lにおいてつながった形態であり、通常の配線基板の製造方法によって一体形成されている。図示しないが、基板材料3aに電気配線を形成し様々な電気部品(小型基板11の磁気センサ12を含む)を実装しておく。小型基板11になる突出部分は、凸部10aの側方の空いたスペースに設けられている。こうして作製された基板材料3aを仮想線Lにおいて切断して、主基板10と小型基板11とに分離する。そして、
図4,5に示すように、小型基板11を主基板10に対して平行に、かつ板面に直交する方向(回転軸方向A)に見て凸部10aに重なり合うように配置し、ねじ13によって凸部10aに固定する。また、接続部材14によって小型基板11を主基板10に電気的に接続する。それにより、小型基板11の磁気センサ12を、接続部材14を介して主基板10の電気配線(図示せず)に電気的に接続する。
【0016】
一方、詳述しないが、従来と同様の方法で、ロータ6を回転可能に保持するとともに、ロータ6を取り囲むようにステータ9を固定する。そして、主基板10の凸部10aがロータ6に対向し、主基板10のその他の一部がステータ9に対向し、かつ小型基板11の磁気センサ12がロータ6のマグネット5に対向するとともに、ロータ6の回転軸方向Aにおいて小型基板11が主基板10よりもロータ6に近接する位置になるように、制御基板3を固定する。こうして、
図1,2に示す電動アクチュエータ1が形成される。
【0017】
本実施形態の製造方法によると、通常の配線基板の製造方法によって、主基板10と小型基板11とを同時に一体的に形成できる。従って、基板材料3aを切断することと、小型基板11を主基板10にねじ13で固定することと、接続部材14によって主基板10と小型基板11とを電気的に接続することという比較的簡単な工程を追加するだけで、前述したように、制御基板3の大部分を占める主基板10をステータ9のコイル8から遠ざけつつ、磁気センサ12がロータ6のマグネット5に近接する構成を実現できる。すなわち、製造工程をさほど煩雑にすることなく、前述した効果を奏する電動アクチュエータ1が製造できる。特に、小型基板11になる突出部分を、凸部10aの側方の空いたスペースに設けることにより、基板材料3aの無駄が少なく、効率良く主基板10と小型基板11とを形成することができる。さらに、本実施形態では、小型基板11を主基板10に固定するねじ13の締め具合を調節することによって、小型基板11の磁気センサ12とロータ6のマグネット5との間の距離を調節できる。それにより、マグネット5の位置の検知を好適な条件で行うことができ、より良好な検知が可能である。
【0018】
図6は、
図1~5に示す基本構造を含む電動アクチュエータ1のより詳細かつ具体的な構成を示す断面図であり、
図7はその主基板10側から見た分解斜視図である。
図6,7に示す電動アクチュエータ1では、ロータ6は、略円板状のロータ積層コア17と、ロータ積層コア17に設けられた複数の凹部にそれぞれ取り付けられている複数のマグネット5と、ロータ積層コア17の中心軸として取り付けられている回転軸4と、を有し、一体的に回転可能である。ステータ9は、ロータ積層コア17の外径よりも大きな内径を有する略リング状のステータ積層コア7と、ステータ積層コア7の内側に嵌め込まれている略リング状のインシュレータ18と、ステータ積層コア7に巻き付けられているコイル8と、を有する構成である。そして、ステータ積層コア7に3つのモータ端子(UVW端子)19が取り付けられて、コイル8に接続されている。
【0019】
この電動アクチュエータ1では、2つのケース部材20a,20bが接合されてなるケース20に、ベアリング21aが取り付けられ、このベアリング21aにロータ6の回転軸4の一端が回転可能に保持されている。ステータ9は、ロータ6を取り囲むように配置されるとともに、ケース20に固定されている。回転軸方向Aにおいて、ロータ6およびステータ9から見てケース20の反対側に主基板10が配置され、主基板10に固定されている小型基板11がロータ6に近接して位置している。主基板10とステータ9との間にターミナルアース22が挟み込まれている。さらに、ロータ6およびステータ9を挟んでケース部材20aと対向する位置にカバー23が配置され、カバー23はステータ9およびケース20にねじで固定されている。カバー23にベアリング21bが取り付けられ、このベアリング21bにロータ6の回転軸4の他端側の一部が回転可能に保持されている。カバー23およびベアリング21bを貫通してケース20の反対側に突出する回転軸4の端部(他端)にギア4aが取り付けられている。
【0020】
以上説明した構成を有する電動アクチュエータ1は、ステータ9のコイル8に電力が供給されて生じるロータ6の回転を利用して、様々な移動機構を駆動する駆動装置として利用される。一例としては、
図8に示すような自動車のスライドドアの開閉機構の駆動装置として用いられる。
図8に示す車体24にスライドドア25がスライド自在に取り付けられ、このスライドドア25によって乗降口26が塞がれる。車体24の上部側にはアッパーレール27が設けられ、車体24の下部側にはロワーレール28が設けられ、車体24の上下の略中央にはセンターレール29が設けられている。センターレール29は、車体24のクオータパネル30の外面側に配置されている。アッパーレール27、ロワーレール28およびセンターレール29は、車両前後方向に延びている。スライドドア25は、アッパーローラユニット31と、ロワーローラユニット32と、センターローラユニット33とを有する。アッパーローラユニット31がアッパーレール27に係合し、ロワーローラユニット32がロワーレール28に係合し、センターローラユニット33がセンターレール29に係合することによって、スライドドア25は、スライド自在に車体24に取り付けられている。
【0021】
図8に示すスライドドア25を開閉するための開閉機構が
図9~11に示されている。
図9~11に示す構成では、電動アクチュエータ1のモータ2によって回転される開扉ワイヤードラム34aおよび閉扉ワイヤードラム34bが設けられている。開扉ワイヤードラム34aには開扉ケーブル35aの一端が接続され、閉扉ワイヤードラム34bには閉扉ケーブル35bの一端が接続されている。開扉ケーブル35aと閉扉ケーブル35bのそれぞれの他端は、図示しないケーブルホルダ等を介して、センターローラユニット33に接続されている。開扉ケーブル35aまたは閉扉ケーブル35bが引っ張られることによって、センターローラユニット33のローラ(図示せず)が回転してスライドドア25が開方向または閉方向に移動する。開扉ワイヤードラム34aには外周ギア36aが一体的に形成され、閉扉ワイヤードラム34bには外周ギア36bが一体的に形成されている。外周ギア36a,外周ギア36bは、歯車37の内周ギア37aとそれぞれ噛み合っている。歯車37の外周ギア37bは、モータ2の回転軸4のギア4aと噛み合っている。開扉ワイヤードラム34a、閉扉ワイヤードラム34b、歯車37は、カバー38によって覆われている。
【0022】
電動アクチュエータ1のモータ2の回転軸4のギア4aに歯車37の外周ギア37bが噛み合い、歯車37の内周ギア37aに外周ギア36a,36bが噛み合うことにより、回転軸4の回転方向に応じて開扉ケーブル35aと閉扉ケーブル35bのいずれかが引っ張り力をセンターローラユニット33に加えて、スライドドア25を開方向または閉方向に移動させる。
【0023】
このように本発明の電動アクチュエータ1を、自動車のスライドドア25の開閉機構の駆動装置として用いることにより、薄型の扁平型ブラシレスモータ2を搭載し、主基板10と重なる小型基板11によってロータ6のマグネット5を検知させ、さらにECU15をモータ2と重ならない位置に配置することができるため、電動アクチュエータ1の寸法(特に回転軸方向Aの寸法)を小さくでき、多数の部材が収容されているスライドドア25の内部およびその近傍に配置することが容易であり、配置の自由度が高く、スペース効率が良い。さらに、このようなブラシレスモータ2を用いることで、回転動作を安定して行うことができるとともに、全開状態と全閉状態の間の中間位置でスライドドア25を一時的に容易に停止させることができ、しかもその停止位置を細かく制御できる。ただし、本発明の電動アクチュエータ1は、車両のスライドドア25の開閉機構の駆動装置に限られず、様々な移動機構の駆動装置として広範に用いることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 電動アクチュエータ
2 モータ(ブラシレスモータ)
3 制御基板
3a 基板材料
4 回転軸
4a ギア
5 マグネット
6 ロータ
7 コア(ステータ積層コア)
8 コイル
9 ステータ
9a 固定機構
10 主基板
10a 凸部
11 小型基板
12 磁気センサ(一部の電気部品、ホールIC)
13 ねじ
14 接続部材
15 電子制御ユニット(ECU)
16 コネクタ
17 ロータ積層コア
18 インシュレータ
19 モータ端子(UVW端子)
20 ケース
20a,20b ケース部材
21a,21b ベアリング
22 ターミナルアース
23 カバー
24 車体
25 スライドドア
26 乗降口
27 アッパーレール
28 ロワーレール
29 センターレール
30 クオータパネル
31 アッパーローラユニット
32 ロワーローラユニット
33 センターローラユニット
34a 開扉ワイヤードラム
34b 閉扉ワイヤードラム
35a 開扉ケーブル
35b 閉扉ケーブル
36a,36b 外周ギア
37 歯車
37a 内周ギア
37b 外周ギア
38 カバー
A 回転軸方向
L 仮想線