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特開2024-126853電気コネクター及び電気コネクターの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126853
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電気コネクター及び電気コネクターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/01 20060101AFI20240912BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01R11/01 501G
H01R43/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035562
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀田 真司
【テーマコード(参考)】
5E051
【Fターム(参考)】
5E051CA02
5E051CA04
(57)【要約】
【課題】接続対象物におけるコプラナリティのバラツキを吸収して安定した導通状態を維持しながら、厚み方向における弾性変形のし易さの確保と、導電層におけるクラック等の発生の防止とを両立することが可能な電気コネクター及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第一デバイスの接続端子と、第二デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続する電気コネクター10であり、厚さ方向に沿う複数の貫通孔11を有する第一弾性体1と、貫通孔11の内部に、貫通孔11の内壁11aと離間して配置される柱状の第二弾性体2と、貫通孔11の内部に、第二弾性体2の表面を覆うように配置され、第一デバイスの接続端子と第二デバイスの接続端子とを電気的に接続する導電層3と、を備え、さらに、貫通孔11の内壁11aと導電層3との間に配置され、且つ、貫通孔11及び導電層3の各々に接合された導電支持層4を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一デバイスの接続端子と、第二デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続する電気コネクターであって、
厚さ方向に沿う複数の貫通孔を有する第一弾性体と、前記貫通孔の内部に、前記貫通孔の内壁と離間して配置される柱状の第二弾性体と、前記貫通孔の内部に、前記第二弾性体の表面を覆うように配置され、前記第一デバイスの接続端子と前記第二デバイスの接続端子とを電気的に接続する導電層と、を備え、
さらに、前記貫通孔の内壁と前記導電層との間に配置され、且つ、前記貫通孔及び前記導電層の各々に接合された導電支持層を備えることを特徴とする電気コネクター。
【請求項2】
前記導電支持層が絶縁材料からなることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクター。
【請求項3】
前記導電支持層がエポキシ樹脂又はアクリル樹脂からなることを特徴とする請求項2に記載の電気コネクター。
【請求項4】
前記導電層は、前記第一弾性体の一方の主面及び他方の主面のうちの少なくとも一方から端部が突出した状態で前記貫通孔の内部に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気コネクター。
【請求項5】
前記導電層は、前記第一弾性体の一方の主面及び他方の主面のうちの少なくとも一方から露出した端部に、さらに端子部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気コネクター。
【請求項6】
前記貫通孔の中心線が、前記第一弾性体の一方の主面及び他方の主面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気コネクター。
【請求項7】
前記第一弾性体及び前記第二弾性体が、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる何れかの樹脂材料からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気コネクター。
【請求項8】
前記第一弾性体及び前記第二弾性体が、さらに、アルミナ、酸化亜鉛、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選ばれる少なくとも何れかの充填材を含むことを特徴とする請求項7に記載の電気コネクター。
【請求項9】
前記第二弾性体が、さらに、カーボン粒子、銀粒子、及び銅粒子からなる群から選ばれる少なくとも何れかの導電材料を含むことを特徴とする請求項7に記載の電気コネクター。
【請求項10】
第一電子デバイスの接続端子と、第二電子デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続するための電気コネクターの製造方法であって、
複数の凹部が形成された成形型に樹脂又は樹脂前駆体を含む第二樹脂材料を導入し、前記第二樹脂材料を硬化させて、前記成形型の各凹部に対応する複数の柱状部が第一面側に形成された第二基材シートを得る工程(1)と、
複数の前記柱状部を含む前記第二基材シートの前記第一面の表面を覆うように金属薄膜を成膜することにより、導電層を形成する工程(2)と、
少なくとも、複数の前記柱状部の表面に形成された前記導電層を覆うように絶縁材料を成膜することにより、導電支持層を形成する工程(3)と、
前記導電支持層、及び、前記第二基材シートの前記第一面に形成された前記導電層を、樹脂又は樹脂前駆体を含む第一樹脂材料で覆い、該第一樹脂材料を硬化させて第一基材シートを形成することにより、積層体を得る工程(4)と、
前記積層体を、前記導電層の延在する方向に対して直交する方向又は斜め方向に切断することにより、前記積層体の一方の主面及び他方の主面に前記導電層の端部を露出させ、電気コネクターを得る工程(5)と、
を備えることを特徴とする電気コネクターの製造方法。
【請求項11】
前記工程(5)の後に、前記導電層を、前記電気コネクターの一方の主面及び他方の主面のうちの少なくとも一方から突出させる工程(6)を備えることを特徴とする請求項10に記載の電気コネクターの製造方法。
【請求項12】
前記工程(6)の後に、前記電気コネクターの一方の主面及び他方の主面のうちの少なくとも一方における前記導電層の端部にメッキ加工、又は導電材料の印刷を施すことで端子部を形成する工程(7)を有することを特徴とする請求項11に記載の電気コネクターの製造方法。
【請求項13】
前記工程(2)は、スパッタリング法によって前記金属薄膜を成膜することで前記導電層を形成することを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の電気コネクターの製造方法。
【請求項14】
前記工程(3)は、電着塗装によって前記絶縁材料を成膜することで前記導電支持層を形成することを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の電気コネクターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクター及び電気コネクターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検査装置の回路基板と、検査対象の電子デバイスの電極とを電気的に接続する異方導電性シートが用いられている。異方導電性シートは、厚み方向に導電性を有し、面方向に電気的絶縁性を有するシートであり、電気検査におけるプローブ(接触子)として用いられる。このような異方導電性シートは、電気検査装置の基板と検査対象物との間の電気的接続を確実に行うために、押し込み荷重を加えて使用される。このため、異方導電性シートは、厚み方向において弾性変形しやすいシートであることが求められる。一方、異方導電性シートは、検査対象物のコプラナリティ(平坦度)にバラツキがある場合に、最初に接触した接続部への加圧により、遅れて接触する箇所の接続部が導通不良となる懸念がある。
【0003】
検査対象物のコプラナリティのバラツキへの対策が施された異方性導電シートとしては、例えば、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有する弾性体と、複数の貫通孔の内壁面に接合された複数の中空状の導電部材とを有する電気コネクターが知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。特許文献1,2に開示された電気コネクターによれば、上記のような中空状の導電部材(導電層)を有するシート構造を採用することで、検査対象物のコプラナリティにバラツキがある場合であっても、安定した電気的接続が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/212277号
【特許文献2】国際公開第2022/124134号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された電気コネクターでは、シートの押し込みや変形による加圧と除圧を繰り返すことにより、貫通孔の内壁面に接合された導電部材にクラックや剥がれが生じることから、やはり導通不良が発生しやすいという問題がある。
【0006】
上記のような特許文献1における問題点を解決するため、特許文献2においては、導電層の重心と貫通孔の重心との間に離間距離を設けることで、導電層にクラックが生じるのを抑制し、導通不良が発生するのを防止する対策が試みられている。しかしながら、引用文献2の電気コネクターでは、検査対象物における電極間距離の挟ピッチ化が進む現状においては、導電層もより小さくする必要があることから、十分な離間距離を設けることは難しいため、上記対策の効果は限定的であった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、接続対象物におけるコプラナリティのバラツキを吸収して安定した導通状態を維持しながら、厚み方向における弾性変形のし易さの確保と、導電層におけるクラック等の発生の防止とを両立することが可能な電気コネクター及び電気コネクターの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明者等が鋭意検討を重ねた。この結果、貫通孔の内壁と導電層との間に配置され、且つ、貫通孔及び導電層の各々に接合された導電支持層を備えることで、接続対象物におけるコプラナリティのバラツキを吸収できるとともに、隣接する導電層への影響を抑えながら、厚み方向における弾性変形の容易性を確保できることを見出した。これにより、シート状とされた電気コネクターの変形のし易さと、導電層におけるクラック等の発生の防止とを両立できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の態様を有する。
【0009】
[1] 第一デバイスの接続端子と、第二デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続する電気コネクターであって、厚さ方向に沿う複数の貫通孔を有する第一弾性体と、前記貫通孔の内部に、前記貫通孔の内壁と離間して配置される柱状の第二弾性体と、前記貫通孔の内部に、前記第二弾性体の表面を覆うように配置され、前記第一デバイスの接続端子と前記第二デバイスの接続端子とを電気的に接続する導電層と、を備え、さらに、前記貫通孔の内壁と前記導電層との間に配置され、且つ、前記貫通孔及び前記導電層の各々に接合された導電支持層を備えることを特徴とする電気コネクター。
[2] 前記導電支持層が絶縁材料からなることを特徴とする上記[1]に記載の電気コネクター。
[3] 前記導電支持層がエポキシ樹脂又はアクリル樹脂からなることを特徴とする上記[2]に記載の電気コネクター。
[4] 前記導電層は、前記第一弾性体の一方の主面及び他方の主面のうちの少なくとも一方から端部が突出した状態で前記貫通孔の内部に配置されていることを特徴とする上記[1]~[3]の何れかに記載の電気コネクター。
[5] 前記導電層は、前記第一弾性体の一方の主面及び他方の主面の少なくとも一方から露出した端部に、さらに端子部が設けられていることを特徴とする上記[1]~[4]の何れかに記載の電気コネクター。
[6] 前記貫通孔の中心線が、前記第一弾性体の一方の主面及び他方の主面に対して傾斜していることを特徴とする上記[1]~[5]の何れかに記載の電気コネクター。
[7] 前記第一弾性体及び前記第二弾性体が、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる何れかの樹脂材料からなることを特徴とする上記[1]~[6]の何れかに記載の電気コネクター。
[8] 前記第一弾性体及び前記第二弾性体が、さらに、アルミナ、酸化亜鉛、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選ばれる少なくとも何れかの充填材を含むことを特徴とする上記[7]に記載の電気コネクター。
[9] 前記第二弾性体が、さらに、カーボン粒子、銀粒子、及び銅粒子からなる群から選ばれる少なくとも何れかの導電材料を含むことを特徴とする上記[7]に記載の電気コネクター。
[10] 第一電子デバイスの接続端子と、第二電子デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続するための電気コネクターの製造方法であって、複数の凹部が形成された成形型に樹脂又は樹脂前駆体を含む第二樹脂材料を導入し、前記第二樹脂材料を硬化させて、前記成形型の各凹部に対応する複数の柱状部が第一面側に形成された第二基材シートを得る工程(1)と、複数の前記柱状部を含む前記第二基材シートの前記第一面の表面を覆うように金属薄膜を成膜することにより、導電層を形成する工程(2)と、少なくとも、複数の前記柱状部の表面に形成された前記導電層を覆うように絶縁材料を成膜することにより、導電支持層を形成する工程(3)と、前記導電支持層、及び、前記第二基材シートの前記第一面に形成された前記導電層を、樹脂又は樹脂前駆体を含む第一樹脂材料で覆い、該第一樹脂材料を硬化させて第一基材シートを形成することにより、積層体を得る工程(4)と、前記積層体を、前記導電層の延在する方向に対して直交する方向又は斜め方向に切断することにより、前記積層体の一方の主面及び他方の主面に前記導電層の端部を露出させ、電気コネクターを得る工程(5)と、を備えることを特徴とする電気コネクターの製造方法。
[11] 前記工程(5)の後に、前記導電層を、前記電気コネクターの一方の主面及び他方の主面のうちの少なくとも一方から突出させる工程(6)を備えることを特徴とする上記[10]に記載の電気コネクターの製造方法。
[12] 前記工程(6)の後に、前記電気コネクターの一方の主面及び他方の主面のうちの少なくとも一方における前記導電層の端部にメッキ加工、又は導電材料の印刷を施すことで端子部を形成する工程(7)を有することを特徴とする上記[11]に記載の電気コネクターの製造方法。
[13] 前記工程(2)は、スパッタリング法によって前記金属薄膜を成膜することで前記導電層を形成することを特徴とする上記[10]~[12]の何れかに記載の電気コネクターの製造方法。
[14] 前記工程(3)は、電着塗装によって前記絶縁材料を成膜することで前記導電支持層を形成することを特徴とする上記[10]~[13]の何れかに記載の電気コネクターの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電気コネクターによれば、上記のように、貫通孔の内壁と導電層との間に配置され、且つ、貫通孔及び導電層の各々に接合された導電支持層を備えた構成を採用している。これにより、接続対象物におけるコプラナリティのバラツキを吸収できるとともに、隣接する導電層への影響を抑えながら、厚み方向における弾性変形の容易性を確保できる。従って、安定した導通状態を維持しながら、シート状とされた電気コネクターの変形のし易さを確保することと、導電層におけるクラック等の発生の防止することとを両立することが可能となる。
【0011】
また、本発明の電気コネクターの製造方法によれば、上記のように、複数の柱状部の表面に形成された導電層を覆うように絶縁材料を成膜することで導電支持層を形成する工程(3)と、導電支持層及び導電層を、樹脂又は樹脂前駆体を含む第二樹脂材料で覆い、該第二樹脂材料を硬化させて第二基材シートを形成することで積層体を得る工程(4)とを備えた構成を採用している。これにより、上記のような導電支持層を備え、安定した導通状態を維持しながら、シート状とされた電気コネクターの変形のし易さを確保することと、導電層におけるクラック等の発生の防止することとを両立できる電気コネクターを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る電気コネクター及び電気コネクターの製造方法の第1の実施形態について模式的に説明する図であり、図1(a)は、電気コネクターを上方から見た平面図、図1(b)は、図1(a)中に示したA-A断面図である。
図2】本発明に係る電気コネクター及び電気コネクターの製造方法の第1の実施形態について模式的に説明する図であり、図2(a)~(f)は、電気コネクターを製造する各工程を示す断面図である。
図3】本発明に係る電気コネクター及び電気コネクターの製造方法の第2の実施形態について模式的に説明する図であり、電気コネクターの層構造を示す断面図である。
図4】本発明に係る電気コネクター及び電気コネクターの実施例について説明する図であり、実施例で作成した電気コネクターにおける、第一基材シートの柱状部、導電層、導電支持層、及び第二基材シートからなる層構造の断面を撮影した走査過型電子顕微鏡写真である。
図5】本発明に係る電気コネクター及び電気コネクターの製造方法の他の例について模式的に説明する図であり、第二基材シートを、柱状部が残膜に対して傾斜した形状で形成した例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る電気コネクター及び電気コネクターの製造方法の実施の形態を挙げ、図1図3、及び図5を参照しながら詳述する。なお、以下の説明で用いる各図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、寸法比率等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0014】
本発明の電気コネクターは、第一デバイスの接続端子と、第二デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続するものである。本発明の電気コネクターは、厚さ方向に沿う複数の貫通孔を有する第一弾性体と、貫通孔の内部に、貫通孔の内壁と離間して配置される柱状の第二弾性体と、貫通孔の内部に、第二弾性体の表面を覆うように配置され、第一デバイスの接続端子と第二デバイスの接続端子とを電気的に接続する導電層と、を備える。さらに、本発明の電気コネクターは、貫通孔の内壁と導電層との間に配置され、且つ、貫通孔及び導電層の各々に接合された導電支持層を備える。
以下、本発明の電気コネクターの第1,2の実施形態について、順次、詳細に説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
[電気コネクター]
以下、第1の実施形態の電気コネクターについて説明する。
図1(a)は、第1の実施形態の電気コネクター10を上方から見た平面図であり、図1(b)は、図1(a)中に示したA-A断面図である。
図1(a),(b)に示すように、本実施形態の電気コネクター10は、第一弾性体1と、第二弾性体2と、導電層3と、導電支持層4と、を備えている。
図1(a),(b)に示す例では、第一弾性体1がシート状に構成され、第一面(一方の主面)1aと、この第一面1aとは反対側の第二面(他方の主面)1bとを有し、第一面1aと第二面1bとの間を貫通するように設けられる貫通孔11を有する。
【0016】
本実施形態の電気コネクター10は、例えば、図示略の第一デバイスの接続端子と、図示略の第二デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続する機能を有する。電気コネクター10において、導電層3は、上述した第一デバイスの接続端子と第二デバイスの接続端子の電気的接続を行う部材である。第一デバイス及び第二デバイスとしては、例えば、半導体パッケージや回路基板が挙げられる。より具体的には、第一デバイスとしては、検査装置の回路基板が挙げられ、第二デバイスとしては、検査対象の電子デバイスが挙げられる。
【0017】
図示例の電気コネクター10は、詳細を後述する第一弾性体1の形状に由来した矩形のシート状とされており、その短手方向をX方向、長手方向をY方向、第一面1a(第一弾性体1)に対する垂線方向(即ちシートの厚さ方向)をZ方向とする。
電気コネクター10の平面視の形状は矩形に限定されず、円形、楕円形、多角形、その他の任意の形状が採用できる。
電気コネクター10の縦×横のサイズは特に限定されず、例えば、1mm×1mm~10cm×10cmとすることができる。
電気コネクター10の厚さは、例えば、50μm以上500μm以下とすることができる。
電気コネクター10の形態、サイズ、厚さ等は、第一面1a及び第二面1bにそれぞれ接続される電子デバイスの形状や端子の配置に合わせて適宜設定することができる。
【0018】
電気コネクター10は、複数の略円柱状の導電層3からなる導電部と、それ以外の絶縁部とを備え、導電部が島部分で、絶縁部が海部分である海島構造を形成している。複数の導電層3は互いに独立し、絶縁部によって互いの電気的絶縁性が保たれている。各々の導電層3は、第一弾性体1の第一面1aから第二面1bに向けて貫通する配線を形成している。各々の導電層3の長さ方向は、第一面1aから第二面1bに対して直交していてもよいし、傾斜していてもよい。
【0019】
第一弾性体1は、上述したように、その厚さ方向に沿って貫通する複数の貫通孔11を有しており、この貫通孔11の内部に、貫通孔11の中心線11b側から順に、第二弾性体2、導電層3、及び導電支持層4が配置されている。
第一弾性体1は、電気コネクター10における基材シートとして機能し、詳細を後述するように、電気的絶縁性を有する樹脂材料からなる。
【0020】
第一弾性体1における導電層3を設ける位置、即ち、第一弾性体1における貫通孔11の配置は、特に限定されず、電気コネクター10(詳細には、貫通孔11の内部に配置された導電層3)によって電気的に接続される2つのデバイスの接続端子の配置等に応じて適宜決定できる。電気コネクター10が均一に変形できる(撓む)観点からは、第一弾性体1において、貫通孔11(導電層3)が等間隔に配置されていることが好ましい。
【0021】
第一弾性体1における導電層3の数、すなわち、第一弾性体1における貫通孔11の数は、特に限定されず、電気コネクター10(詳細には、貫通孔11の内部に配置された導電層3)によって電気的に接続される2つのデバイスの接続端子の配置や、必要とされる接続端子に対する導電層3の押圧力等に応じて適宜調整することができる。
【0022】
図1(a),(b)に示す例では、導電層3を設ける位置、即ち、第一弾性体1における貫通孔11の配置が、X列×Y行の各方向に沿って一定のピッチで配置された2次元アレイ状とされているが、このような配置形態に限定されるものではなく、任意の配置パターンを採用できる。上記のように、貫通孔11(導電層3)を2次元アレイ状のパターンで配置した場合には、X列×Y行におけるX,Yは、例えば、それぞれ独立に10~1000の任意の整数とすることができる。
また、貫通孔11(導電層3)の配置パターンは、上記の2次元アレイ状には限定されず、例えば、ジグザグ状のパターンであってもよいし、その他の任意のパターンでもよいし、あるいは、無作為なランダム配置であってもよい。
【0023】
貫通孔11は、中心線11bが、第一弾性体1の第一面1a及び第二面2bに対して直交するか、あるいは、傾斜するように貫通する。即ち、貫通孔11は、第一弾性体1の厚さ方向に対して、直交するか、あるいは、傾斜している。
【0024】
詳細な図示は省略するが、貫通孔11が、第一弾性体1を、その厚さ方向に対して傾斜するように貫通する場合、第一面1aの垂線に対する貫通孔11の第一弾性体1の厚さ方向に対する角度は、60°以下であることが好ましく、1°以上60以下であることがより好ましい。貫通孔11を傾斜させることで、コネクター接続時の厚み方向の弾性変形によって生じる、導電層3に作用する応力を緩和できるので、耐久性を高めることが可能となる。貫通孔11の第一弾性体1の厚さ方向に対する角度は、電気コネクター10(詳細には、貫通孔11の内部に配置された導電層3)によって電気的に接続される2つのデバイスの接続端子の配置等に応じて適宜調整することができる。
【0025】
貫通孔11の形状、即ち、貫通孔11の長手方向に直交する方向に沿った断面の形状は、特に限定されず、貫通孔11の内部に配置される導電層3、並びに、詳細を後述する第二弾性体2及び導電支持層4の長手方向に直交する方向に沿った断面の形状に応じて、適宜調整することができる。貫通孔11の形状としては、例えば、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、五角形以上の多角形等が挙げられる。
【0026】
貫通孔11の孔径についても、特に限定されず、貫通孔11の内部に配置される第二弾性体2、導電層3及び導電支持層4の直径(外径)に応じて適宜調整することができる。貫通孔11の孔径は、5μm~300μmであることが好ましい。なお、本明細書で説明する貫通孔11の孔径は、貫通孔11の形状が円形以外である場合には、貫通孔11の外縁(開口部の縁部)の最も幅広い部分の長さである。
【0027】
第一弾性体1の厚さは、0.03mm~5mmであることが好ましい。なお、図1に示す例の電気コネクター10の全体厚さは、第一弾性体1の厚さに等しい。
【0028】
第一弾性体1を構成する樹脂材料は、電気的絶縁性を有する公知の樹脂材料の中から選択することができ、例えば、エラストマー、光重合性樹脂、熱重合性樹脂、活性エネルギー線重合性樹脂、触媒重合性樹脂等が挙げられる。これらの中でも、第一弾性体1の材料としては、未硬化状態では適度な粘性を呈するとともに、硬化後の適度な弾性を有するエラストマーを採用することが好ましい。
【0029】
上記のエラストマーとしては、例えば、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる何れかを適宜採用することができる。これらの中でも、成形型から取り出した後の寸法変化が小さく、成形型から取り出した後の反りが生じ難く、圧縮永久歪が小さく、耐熱性が高いという観点から、シリコーンゴムを採用することが好ましい。この場合、シリコーンゴムの硬化の様式は、縮合型、付加型の何れであってもよい。
【0030】
シリコーンゴム等の樹脂を硬化させる方法としては、例えば、UVや電子線等の活性エネルギー線を照射する方法の他、加熱等の公知の方法が挙げられる。
【0031】
第一弾性体1の樹脂材料には、さらに、アルミナ、酸化亜鉛、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選ばれる少なくとも何れかの、熱伝導率の高い充填材(フィラー)が含まれていてもよい。このように、第一弾性体1の樹脂材料に、熱伝導率の高い充填材を添加することで、電気コネクター10に対して放熱コネクターとしての作用・効果を付与することが可能となる。また、第一弾性体1の樹脂材料中において、上記の充填材は、1種あるいは2種以上で含まれていてもよい。
【0032】
第一弾性体1の樹脂材料には、さらに、樹脂の重合を促す触媒、樹脂同士の架橋を促す架橋剤、シランカップリング剤、接着助剤、抗酸化剤、染料、顔料、レベリング剤等、公知の添加剤の何れかが含まれていてもよい。
【0033】
第二弾性体2は、図1(a),(b)に示すように、第一弾性体1に設けられた貫通孔11の内部において、貫通孔11の内壁11aと離間して配置される柱状の層である。図示例のように、第二弾性体2の外面と、第一弾性体1に設けられた貫通孔11の内壁11aとの間には、円筒状に構成された導電層3及び導電支持層4が、この順で積層されるように配置されている。
第二弾性体2は、詳細を後述する導電支持層4とともに、導電層3を支持する機能を有する。
【0034】
第二弾性体2を構成する樹脂材料としては、第一弾性体1と同様、例えば、エラストマー、光重合性樹脂、熱重合性樹脂、活性エネルギー線重合性樹脂、触媒重合性樹脂等が挙げられ、これらの中でも、第一弾性体1の場合と同様の理由により、エラストマーを採用することが好ましい。また、上記のエラストマーとしても、第一弾性体1と同様、例えば、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる何れかを適宜採用することができる。これらのエラストマーの中でも、上記同様、シリコーンゴムを採用することが好ましく、また、シリコーンゴムの硬化の様式は、縮合型、付加型の何れであってもよい。
【0035】
また、第二弾性体2を構成する樹脂材料も、第一弾性体1と同様、さらに、アルミナ、酸化亜鉛、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選ばれる少なくとも何れかの、熱伝導率の高い充填材が含まれていてもよい。さらに、上記同様、第二弾性体2を構成する樹脂材料にも、樹脂の重合を促す触媒、樹脂同士の架橋を促す架橋剤、シランカップリング剤、接着助剤、抗酸化剤、染料、顔料、レベリング剤等、公知の添加剤が含まれていてもよい。
【0036】
第二弾性体2は導電性を有していてもよい。即ち、第二弾性体2を構成する樹脂材料には、さらに、例えば、カーボン粒子、銀粒子、及び銅粒子からなる群から選ばれる少なくとも何れかの導電材料が含まれていてもよい。このように、第二弾性体2が導電材料を含み、所定の導電性を有することで、隣接する導電層3による導通性をより良好なものとすることが可能となる。また、第二弾性体2を構成する樹脂材料に含まれる導電材料は、1種類でもよいし、2種類以上であってもよい。
【0037】
また、上記の導電材料を構成するカーボン粒子、銀粒子、及び銅粒子の粒子形状としては、特に限定されないが、例えば、球形、回転楕円体、板状体、又は鱗片状に近似させることができる。一方、導電材料の粒子形状としては、例えば、棒状、繊維状又はワイヤ状であってもよい。
【0038】
また、上記の導電材料の粒子径としても、特に限定されないが、後述する成形型100(図2(a)を参照)の内部における柱状物(第二弾性体)を形成するための凹部101への充填性を考慮した場合、粒子における短い側の長さが、凹部101の径の1/3以下であることが好ましい。
【0039】
さらに、第二弾性体2を構成する樹脂材料には、優れた熱伝導性が得られる観点から、例えば、上記の他の炭素繊維、金属粒子、ワイヤ等の金属導体が含まれていてもよい。
【0040】
導電層3は、上述したように、第一弾性体1の貫通孔11の内部に、第二弾性体2の表面を覆うように配置される。導電層3は、第一弾性体1を厚さ方向で貫通するように設けられることで、図示略の第一デバイスの接続端子と図示略の第二デバイスの接続端子とを電気的に接続する。
【0041】
導電層3は、図示例においては、内面側が柱状の第二弾性体2を覆うとともに、外面側が後述の導電支持層4に覆われた、概略円筒状とされている。即ち、導電層3は、第二弾性体2と導電支持層4との間に挟まれて配置されることで、これら第二弾性体2及び導電支持層4によって支持されている。
導電層3は、例えば、柱状とされた第二弾性体2の表面に、スパッタリング法等の方法で金属材料を蒸着させることで形成される。
【0042】
導電層3を構成する金属材料としては、特に限定されないが、例えば、体積抵抗値が1.0×10-4以下である材料が好ましく、1.0×10-5以下である材料がより好ましい。
上記のような体積抵抗値を有する金属材料として、例えば、金、銀、銅、ニッケル、鉄等が挙げられ、これらの金属材料を導電層3に用いることが好ましい。また、導電層3を構成する金属材料は、上記のうちの1種類でもよいし、2種類以上を含むものであってもよい。
【0043】
導電層3の厚さとしても、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。導電層3の厚さが上記範囲の下限値以上であれば、優れた導電性を確保出来る。また、導電層3の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、優れた屈曲性が得られる。即ち、導電層3の厚さが上記範囲であることで、優れた導電性及び屈曲性を両立することが可能となる。
なお、導電層3の端部に、詳細を後述する端子部が設けられていない場合には、接続安定性を考慮し、導電層3の厚さを5μm以上10μmとすることが好ましい。
【0044】
導電層3は、第一弾性体1の貫通孔11の内部に配置されていることで、第一弾性体1を、その厚さ方向に対して直交する方向又は傾斜して貫通するように配置されている。
【0045】
図1(a),(b)中では図示を省略しているが、導電層3は、第一弾性体1の第一面1a及び第二面1bのうちの少なくとも一方から端部3a又は端部3bが突出した状態で貫通孔11の内部に配置されていることが好ましく、第一面1a及び第二面1bの両方から端部3a,3bが突出した状態で配置されていることが、より好ましい。このように、導電層3が、第一弾性体1の第一面1aや第二面1bから突出していることで、例えば、接続対象物のコプラナリティにバラツキがある場合であっても、このバラツキを効果的に吸収し、導電性を確保することが可能となる。
【0046】
なお、本実施形態においては、導電層3が、第一面1a及び第二面1bから突出した状態であれば、上記のような導電性の観点から好ましいが、導電層3の両方の端部3a,3bが、第一面1a及び第二面1bと同一面で貫通孔11から露出した状態であれば、十分な導電性が確保できる。
【0047】
導電層3の端部3a,3bの、第一弾性体1の第一面1a及び第二面1bからの突出量は、特に限定されず、電気コネクター10によって電気的に接続される第一デバイス及び第二デバイス(例えば、測定装置及び検査対象物)の接続端子の形状、配置等に応じて適宜調整できる。特に、第一デバイス及び第二デバイスとの間での導通を考慮した場合、上記の突出量は、第一面1a及び第二面1bを基準として、例えば、1μm~1000μmが好ましく、5μm~300μmがより好ましい。導電層3の端部3a,3bの、第一面1a及び第二面1bからの突出量が上記範囲の下限値以上であれば、第一デバイス及び第二デバイスの端子に導電層3の端部3a,3bが接触しやすくなり、電気的接続性が向上する。また、導電層3の突出箇所の柔軟性が高められるので、導電層3の端部3a,3bが、例えば、検査対象物の端子を傷付けてしまうリスクを低減できる。
なお、本明細書で説明する上記の導電層3の突出量は、走査過型電子顕微鏡写真等の拡大手段により、任意に選択した10箇所の導電部の突出量を測定した値の平均値として求められる。
また、複数の導電層3の突出量は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0048】
隣接する2つの導電層3の間の間隔、即ち、隣接する2つの導電層3の中心間距離(ピッチ)は、特に限定されず、電気コネクター10によって電気的に接続される第一デバイス及び第二デバイスの接続端子の配置等に応じて適宜調整できる。隣接する2つの導電層3の中心間距離は、例えば、6μm~1000μmの範囲であることが好ましい。なお、隣接する2つの導電層3の中心間距離は、隣接する2つの貫通孔11の中心間距離に相当する。
【0049】
導電層3の形状、すなわち、導電層3の長手方向と直交する方向の沿った断面の形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、五角形以上の多角形等が挙げられる。
【0050】
導電層3の直径(外径)は、特に限定されないが、5μm~500μmであることが好ましい。なお、本明細書において、導電層3の形状が円形以外である場合には、導電層3の直径は、導電層3の長手方向と直交する方向に沿った断面における、外縁の最も幅広い部分の長さとする。
【0051】
導電支持層4は、上述したように、貫通孔11の内壁11aと導電層3との間に配置され、且つ、貫通孔11及び導電層3の各々に接合されている。即ち、導電支持層4は、導電層3の表面(外面)を覆うように形成され、円筒状に構成されているとともに、その周囲を第一弾性体1によって覆われていることで、貫通孔11及び導電層3の各々に接合されている。
導電支持層4は、本実施形態の電気コネクター10において、第二弾性体2とともに、導電層3の支持体として機能する。
【0052】
導電支持層4は、例えば、電着塗装等の方法により、導電層3の表面(外面)に絶縁材料が塗装されて形成される。
導電支持層4を構成する樹脂材料としては、絶縁性を有する材料であれば、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂やアクリル樹脂は電荷を付与することで水溶性にすることが可能なため、上述した電着塗装によって導電支持層4を形成することが可能となる。膜厚のコントロールが容易な電着塗装によって導電支持層4を形成した場合には、膜厚が均一となり、導電層3の支持体としての十分な作用が得られる。
【0053】
導電支持層4の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上50μm以下であることが好ましく、3μm以上20μm以下であることがより好ましい。導電支持層4の厚さが上記範囲の下限値以上であれば、支持層としての十分な強度が得られるので、押圧によって導電層3にクラックが生じるのを抑制できる。また、導電支持層4の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、電気コネクター10全体の十分な屈曲性を確保できる。
【0054】
本実施形態の電気コネクター10によれば、上記構成並びに特性を有する導電支持層4を備えることで、以下のような作用が得られる。
本実施形態の電気コネクター10は、導電層3の外側面が、延伸し難い樹脂材料からなる導電支持層4によって支持されている。さらに、導電層3の内部には、第二弾性体2が充填されるように配置され、導電支持層4の外面側が第一弾性体1で覆われている。導電支持層4は、上記構成により、薄肉で軟質な金属材料からなる導電層3を支持する十分な強度を有するとともに、押圧によって割れるほどには固くなく、柔軟性も兼ね備えている。即ち、導電支持層4は、電気コネクター10に対する押圧力で導電層3が押し潰されそうな状態になったとしても、直ぐに形状を復元させて支持することができる。このように、十分な強度と柔軟性とを兼ね備える導電支持層4が、導電層3を周囲から覆うように設けられていることで、接続対象物である図示略の第一デバイス及び第二デバイスにおけるコプラナリティのバラツキを吸収できるとともに、隣接する導電層3への影響を抑えながら、厚み方向における弾性変形の容易性を確保できる。これにより、安定した導通状態を維持しながら、シート状とされた電気コネクター10全体の変形のし易さを確保することと、導電層3におけるクラック等の発生の防止することとを両立することが可能となる。
【0055】
[電気コネクターの製造方法]
以下に、本実施形態の電気コネクターの製造方法について説明する。
本実施形態では、図1(a),(b)に示す電気コネクター10を製造する方法を例に挙げて説明する。
図2(a)~(f)は、図1(a),(b)に示す電気コネクター10を製造する各工程の一例を示す断面図である。
また、図5は、第二基材シート2Bを、柱状部21Bが残膜22Bに対して傾斜した形状で形成した例を示す断面図である。
【0056】
本実施形態の電気コネクター10の製造方法は、図示略の第一電子デバイスの接続端子と、図示略の第二電子デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続するための電気コネクター10を製造する方法であり、少なくとも、以下に示す工程(1)~(5)を含む方法である。
工程(1):複数の凹部101が形成された成形型100に樹脂又は樹脂前駆体を含む第二樹脂材料L2を導入し、第二樹脂材料L2を硬化させて、成形型100の各凹部101に対応する複数の柱状部21が第一面2a側に形成された第二基材シート2Aを得る。
工程(2):複数の柱状部21を含む第二基材シート2Aの第一面2aの表面を覆うように金属薄膜を成膜することにより、導電層3を形成する。
工程(3):少なくとも、複数の柱状部21の表面に形成された導電層3を覆うように絶縁材料を成膜することにより、導電支持層4を形成する。
工程(4):導電層3の表面に形成された導電支持層4、及び、第二基材シート2Aの第一面2aに形成された導電層3を、樹脂又は樹脂前駆体を含む第一樹脂材料L1で覆い、該第一樹脂材料L1を硬化させて第一基材シート1Aを形成することにより、積層体10Sを得る。
工程(5):積層体10Sを、導電層3の延在する方向に対して直交する方向又は斜め方向に切断することにより、積層体10Sの第一面(一方の主面)1a及び第二面(他方の主面)1bに導電層3の端部3a,3bを露出させ、電気コネクター10を得る。
【0057】
(工程(1))
工程(1)においては、図2(a)に示すように、複数の凹部101が形成された成形型100に、樹脂又は樹脂前駆体を含む第二樹脂材料L2を導入する。
次いで、成形型100内において第二樹脂材料L2を硬化させる。これにより、図2(b)に示すように、成形型100の各凹部101に対応する複数の柱状部21が第一面2a側に形成された第二基材シート2Aを得る。
【0058】
工程(1)で用いる成形型としては、図2(a)中に示したような、上型100Aと下型100Bとからなる成形型100を用いることができる。このような成形型100としては、例えば、電気鋳造法で作製したものや、機械切削によって作製したもの、あるいは、電気放電によって作製したもの等を仕様することができる。
【0059】
上型100Aの下面100a側には、上述した複数の凹部101が設けられている。これら複数の凹部101は、図示例のように、上型100Aの厚さ方向で奥深く、且つ、小径に形成されている。成形型100は、上記のような複数の凹部101を有することにより、第二樹脂材料L2を、図2(b)に示した柱状部21を有する形状に成形することができる。あるいは、詳細な図示は省略するが、例えば、凹部が開口面に対して傾斜した成形型を用い、第二樹脂材料L2を、柱状部と残膜とのなす角度が垂直ではなく、所定の角度で傾斜した形状で形成してもよい。より具体的には、図5に示す第二基材シート2Bのように、柱状部21Bが残膜22B上の第一面2aから傾斜するように延出し、その傾斜角度が30°~89°となる形状で形成してもよい。このような場合には、詳細を後述する工程(5)において、残膜22Bに対して平行に積層体を切断した場合であっても、導電層が傾斜したコネクターを作製することが可能となる。
【0060】
工程(1)においては、まず、第二樹脂材料L2を下型100Bの収容部102に導入した後、上型100Aと下型100Bとを組み合わせて型締めすることにより、第二樹脂材料L2から、複数の柱状部21が第一面2a側に形成された第二基材シート2Aを成形する。この際、凹部101に入りきらない第二樹脂材料L2は、下型100Bの収容部102に滞留し、図2(b)に示した残膜22となる。工程(1)においては、第二樹脂材料L2が凹部101に入り込むのを促進するため、例えば、毛細管現象を利用しつつ真空下で自然に流入させる真空処理や、例えば、真空処理、加圧脱泡やスキージによって強制的に押し込む等の処理を行ってもよい。
【0061】
第二樹脂材料L2に含まれる樹脂としては、例えば、エラストマー、光重合性樹脂、熱重合性樹脂、活性エネルギー線重合性樹脂、触媒重合性樹脂等が挙げられ、これらの中でも、エラストマーを採用することが好ましい。また、エラストマーとしては、例えば、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる何れかを適宜採用できる。これらエラストマーの中でも、シリコーンゴムを採用することが好ましく、シリコーンゴムの硬化の様式は、縮合型、付加型の何れであってもよい。
【0062】
第二樹脂材料L2には、電気コネクター10に対して放熱コネクターとしての作用・効果を付与する観点から、さらに、アルミナ、酸化亜鉛、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選ばれる少なくとも何れかの、熱伝導率の高い充填材が含まれていてもよい。
第二樹脂材料L2には、さらに、樹脂の重合を促す触媒、樹脂同士の架橋を促す架橋剤、シランカップリング剤、接着助剤、抗酸化剤、染料、顔料、レベリング剤等、公知の添加剤の何れかが含まれていてもよい。
【0063】
また、第二樹脂材料L2には、さらに、第二基材シート2Aに導電性を付与するための導電材料として、例えば、カーボン粒子、銀粒子、及び銅粒子からなる群から選ばれる少なくとも何れか1種又は2種以上が含まれていてもよい。これらの導電材料の粒子径状としては、例えば、球形、回転楕円体、板状体、又は鱗片状に近似させたものが挙げられ、また、棒状、繊維状又はワイヤ状であってもよい。また、第二樹脂材料L2に含まれる導電材料の粒子径は、成形型100内における柱状部21(図2(f)に示す第二弾性体2)を形成するための凹部101への充填性を考慮し、粒子における短い側の長さが、凹部101の径の1/3以下であることが好ましい。
【0064】
また、第二樹脂材料L2には、さらに、第二基材シート2Aに熱伝導性を付与するための金属導体として、例えば、上記の他の炭素繊維、金属粒子、ワイヤ等の金属導体が含まれていてもよい。
【0065】
第二樹脂材料L2に含まれる樹脂前駆体としては、例えば、重合反応により樹脂を形成するモノマー等が挙げられる。
【0066】
なお、第二樹脂材料L2がシリコーンゴムを含む場合、この第二樹脂材料L2を硬化させる方法としては、例えば、成形型100を開放して第二樹脂材料L2(第二基材シート2A)にUVや電子線等の活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。あるいは、成形型100を型締めした状態で加熱することにより、型内の第二樹脂材料L2(第二基材シート2A)を加熱硬化させる方法も挙げられる。
【0067】
(工程(2))
次に、工程(2)においては、図2(c)に示すように、複数の柱状部21を含む第二基材シート2Aの第一面2aの表面を覆うように金属薄膜を成膜することにより、導電層3を形成する。
【0068】
より具体的には、工程(2)では、例えば、電気メッキ法や化学メッキ法等の湿式メッキ法、あるいは、物理蒸着法や化学蒸着法等の乾式メッキ法により、第二基材シート2Aの第一面2a上に金属薄膜を成膜することで導電層3を形成する。
上記の化学メッキ法としては、例えば、置換メッキ法や還元メッキ法等の無電解メッキ法が挙げられる。
また、上記の物理蒸着法としては、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、及び、スパッタリング法等が挙げられる。
【0069】
上記の各成膜方法の中でも、第二基材シート2Aを構成する第二樹脂材料L2に金属材料が含まれる場合に、高エネルギーによって上記金属材料に入り込むように金属薄膜を形成でき、膜強度に優れるとともに、膜厚のコントロールが容易で生産性にも優れるという観点から、スパッタリング法を用いて導電層3を形成することが好ましい。
【0070】
導電層3を構成する金属薄膜の材料としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、鉄等の金属材料が挙げられる。
また、形成する導電層3の厚さは、上記各方法の成膜条件を適宜調整することにより、例えば、0.1μm以上10μm以下の範囲、より好ましくは、1μm以上10μm以下とすることができる。
【0071】
(工程(3))
次に、工程(3)においては、図2(d)に示すように、少なくとも、複数の柱状部21の表面に形成された導電層3を覆うように絶縁材料を成膜することにより、導電支持層4を形成する。
【0072】
より具体的には、工程(3)では、例えば、各種の塗装方法により、導電層3を覆うように絶縁材料を成膜する。
導電層3の表面に絶縁材料を成膜する塗装方法としては、特に限定されないが、膜厚が均一で、厚さのコントロールが容易である観点から、電着塗装法を採用することが好ましい。
【0073】
上記のような電着塗装法においては、絶縁材料として水溶性の樹脂材料を用いる。このような水溶性の樹脂材料としては、例えば、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0074】
そして、工程(3)では、導電層3の表面に成膜した絶縁材料を、例えば、加熱乾燥又は自然乾燥させることにより、絶縁材料を硬化させ、導電支持層4を形成する。
【0075】
(工程(4))
次に、工程(4)においては、図2(e)に示すように、導電層3の表面に形成された導電支持層4、及び、第二基材シート2Aの第一面2aに形成された導電層3を、樹脂又は樹脂前駆体を含む第一樹脂材料L1で覆う。
そして、第一樹脂材料L1を硬化させて第一基材シート1Aを形成することにより、積層体10Sを得る。
【0076】
より具体的には、工程(4)では、工程(1)~(3)によって第二基材シート2A上に導電層3及び導電支持層4が形成されたワークを、例えば、所定の容器に収容し、この状態でワーク上に第一樹脂材料L1を流し込むことにより、第一基材シート1Aを形成する。この際、第二基材シート2A上において、柱状で立設された各導電支持層4間の隙間や、外周部分にも第一樹脂材料L1を充填する。
【0077】
工程(4)で用いる、第一樹脂材料L1に含まれる樹脂としては、第二樹脂材料L2と同様、例えば、エラストマー、光重合性樹脂、熱重合性樹脂、活性エネルギー線重合性樹脂、触媒重合性樹脂等が挙げられ、これらの中でも、エラストマーを採用することが好ましい。また、エラストマーとしても、第二樹脂材料L2と同様、例えば、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる何れかを適宜採用できる。これらエラストマーの中でも、シリコーンゴムを採用することが好ましく、シリコーンゴムの硬化の様式は、縮合型、付加型の何れであってもよい。
【0078】
第一樹脂材料L1にも、第二樹脂材料L2と同様、電気コネクター10に対して放熱コネクターとしての作用・効果を付与する観点から、さらに、アルミナ、酸化亜鉛、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選ばれる少なくとも何れかの、熱伝導率の高い充填材が含まれていてもよい。また、第一樹脂材料L1にも、さらに、樹脂の重合を促す触媒、樹脂同士の架橋を促す架橋剤、シランカップリング剤、接着助剤、抗酸化剤、染料、顔料、レベリング剤等、公知の添加剤の何れかが含まれていてもよい。
【0079】
なお、本実施形態の電気コネクター10に備えられ、第一基材シート1Aから形成される第一弾性体1は、絶縁性を有する必要があることから、第一樹脂材料L1は、導電性を有さない絶縁材料からなる必要がある。このため、本実施形態においては、第一樹脂材料L1を、金属等の導電材料を含まない材料とする。
また、例えば、上述した第二樹脂材料L2が導電性を有さない材料からなる場合には、第一樹脂材料L1に第二樹脂材料L2と同じ材料を用いることも可能である。
【0080】
第一樹脂材料L1に含まれる樹脂前駆体としても、第二樹脂材料L2と同様、例えば、重合反応により樹脂を形成するモノマー等が挙げられる。
【0081】
そして、第一樹脂材料L1がシリコーンゴムを含む場合には、第二樹脂材料L2と同様、例えば、第一樹脂材料L1(第一基材シート1A)にUVや電子線等の活性エネルギー線を照射する方法で硬化処理を行い、第一基材シート1Aを形成する。あるいは、第一樹脂材料L1を加熱処理することにより、第一樹脂材料L1を硬化させて第一基材シート1Aを形成することも可能である。
【0082】
工程(4)において第一基材シート1Aを形成することにより、図2(e)に示したような積層体10Sが得られる。
【0083】
(工程(5))
次に、工程(5)においては、図2(f)に示すように、工程(4)で得られた積層体10Sを、導電層3の延在する方向に対して直交する方向又は斜め方向に切断する。これにより、積層体10Sの第一面1a及び第二面1bに導電層3の端部3a,3bを露出させ、電気コネクター10を得る。図示例においては、積層体10Sを、導電層3の延在する方向に対して直交する方向で切断した例の電気コネクター10を示している。
【0084】
より具体的には、工程(5)においては、例えば、積層体10Sの側面側から刃を入れることにより、導電層3の長さ方向を横切るように、積層体10Sを上面側及び下面側の2箇所で切断する。工程(5)において、積層体10Sを切断する方法としては、特に限定されないが、例えば、レーザ加工の他、切削等の機械的加工等を採用することができる。
【0085】
上記のような工程(5)により、積層体10Sを所望の厚さとしながら、導電層3の端部3a,3bが露出するように切断することで、本実施形態の電気コネクター10が得られる。
【0086】
なお、本実施形態の電気コネクターの製造方法においては、上記の工程(1)~(5)に加え、さらに、導電層3を、電気コネクター10の第一面1a及び第二面1bのうちの少なくとも一方から突出させる工程(6)を備えた方法を採用してもよい。
このような工程(6)を備える場合には、例えば、上記の工程(5)の後に工程(6)を備え、工程(6)において、エッチング等の手段によって第一基材シート1Aの第一面1a及び第二面1bにおける導電層3の端部3a,3b以外の部分を選択的に除去する方法を採用できる。これにより、導電層3の両端の一部を第一面1a及び第二面1b上に残存させて突出させることができる。
【0087】
[電気コネクターの使用方法]
本実施形態の電気コネクター10の用途としては、例えば、公知の電気コネクターと同じ用途が挙げられる。
即ち、本実施形態の電気コネクター10は、電子デバイスの端子の導通試験等を行う検査用途の他、例えば、電子機器内に備えられた複数の電子デバイス(例えば回路基板)同士を接続する等の所謂実装用途にも適用できる。
【0088】
<第2の実施形態>
[電気コネクター]
以下、第2の実施形態の電気コネクターについて説明する。
図3は、第2の実施形態の電気コネクター10Aの層構造を示す断面図である。
なお、以下の説明においては、図1(a),(b)及び図2(a)~(f)に示した第1の実施形態の電気コネクター10と同じであるか、又は、類似した構成については、同じ符号を付与して説明するとともに、その詳細な説明を省略する。
【0089】
図3中に示すように、本実施形態の電気コネクター10Aは、第一弾性体1と、第二弾性体2と、導電層3と、導電支持層4と、を備えている点で、図1(a),(b)に示した第1の実施形態の電気コネクター10と同様である。さらに、本実施形態の電気コネクター10Aは、第一弾性体1の第一面(一方の主面)1aと第二面(他方の主面)1bとの間を貫通するように設けられる貫通孔11を有し、導電支持層4が、貫通孔11の内壁11aと導電層3との間に配置され、且つ、貫通孔11及び導電層3の各々に接合されている点でも、第1の実施形態の電気コネクター10と同様である。
【0090】
一方、本実施形態の電気コネクター10Aは、導電層3における、第一弾性体1の第一面1a及び第二面1bの少なくとも一方から露出した端部3a又は端部3bに、さらに端子部5が設けられている点で、図1(a),(b)に示した第1の実施形態の電気コネクター10とは異なる。図3に示す例においては、第一弾性体1の第一面1a側の端部3aにのみ、端子部5が形成されている。一方、本実施形態においては、第一弾性体1の第一面1a側の端部3aに加え、さらに、第二面1b側の端部3bにも端子部5を形成することが可能である。
【0091】
端子部5は、第一デバイス及び第二デバイス(例えば、測定装置及び検査対象物)と電気的に接続されるものである。端子部5は、例えば、導電層3の端部3a,3bにメッキ加工を施す等の方法によって形成することができ、また、導電材料を印刷することで形成することも可能である。
端子部5の材質としては、特に限定されず、導電層3の材質に応じて適宜選択することが可能である。
【0092】
本実施形態の電気コネクター10Aによれば、上記の端子部5が設けられていることにより、第一デバイス及び第二デバイスの接続端子と電気的に接続する箇所が、第一面1a及び第二面1bよりも突出している。これにより、接続対象物におけるコプラナリティのバラツキをより効果的に吸収できるので、より確実に電気的な接続状態を確保することが可能となる。
また、上記の端子部5が設けられていることで、第一デバイス及び第二デバイスの接続端子との接触箇所が面状になるので、広い接触面積が確保され、電気的な接続状態を安定的に維持することが可能となる。
【0093】
[電気コネクターの製造方法]
以下に、図3に示した本実施形態の電気コネクター10Aを製造する方法について説明する。
本実施形態の電気コネクター10Aの製造方法は、図2(a)~(f)に示した第1の実施形態の電気コネクター10を製造する方法で説明した工程(1)~(5)(及び工程(6)に加え、さらに、以下に示す工程(7)を備える方法である。
工程(7):工程(5)の後に(又は工程(6)の後に)、電気コネクター10Aの第一面(一方の主面)1a及び第二面(他方の主面)1bのうちの少なくとも一方に露出した導電層3の端部にメッキ加工を施すことで端子部5を形成する。
【0094】
なお、本実施形態においては、電気コネクター10Aの第一面1a及び第二面1bの両面に露出した導電層3の端部3a,3bにメッキ加工を施すことで、両面側に端子部5を形成する方法を例示して説明する。
【0095】
まず、図2(a)~(f)に示すように、第1の実施形態で説明した工程(1)~(5)により、第1の実施形態の電気コネクター10を得る。
次いで、工程(7)において、第一面1a及び第二面1bに露出した導電層3の端部3a,3bに対し、メッキ加工を施すことで端子部5を形成する。
【0096】
工程(7)におけるメッキ加工方法としては、特に限定されないが、例えば、電解メッキ法や無電解メッキ法を用いることができる。
【0097】
上記の工程(1)~(5)(及び工程(6))、並びに工程(7)により、図3に示すような第2の実施形態の電気コネクター10Aが得られる。
【0098】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の電気コネクター10,10Aによれば、上記構成を備えることにより、接続対象物におけるコプラナリティのバラツキを吸収できるとともに、隣接する導電層への影響を抑えながら、厚み方向における弾性変形の容易性を確保できる。従って、安定した導通状態を維持しながら、シート状とされた電気コネクター10,10Aの変形のし易さを確保することと、導電層3におけるクラック等の発生の防止することとを両立することが可能となる。
【0099】
また、本実施形態の電気コネクターの製造方法によれば、上記方法を採用することで、導電支持層4を備え、安定した導通状態を維持しながら、シート状とされた電気コネクター10,10Aの変形のし易さを確保することと、導電層3におけるクラック等の発生の防止することとを両立できる電気コネクター10,10Aを製造することが可能となる。
【0100】
<その他の形態>
本発明の技術的範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【実施例0101】
以下、実施例を示して本発明の電気コネクターをより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0102】
<電気コネクターの作製>
本実施例においては、以下に説明する各条件及び手順で、図1(a),(b)に示したような電気コネクター10を作製し、以下に説明するような方法で評価した。
【0103】
[作製条件及び手順]
まず、図2(a)に示すような、複数の凹部101が形成された上型100Aと、下型100Bとを有する成形型100を準備した。
また、第一基材シート1A(第一弾性体1)を形成する樹脂材料として、シリコーンゴムを主成分とし、シリコーンゴムの総質量に対してアルミナを30質量%で混合したものを準備した。
また、第二基材シート2A(第二弾性体2)を形成する樹脂材料として、シリコーンゴムを主成分とし、シリコーンゴムの総質量に対して、導電材料であるカーボン粒子を10質量%で混合したものを準備した。
また、導電層3を形成するための金属材料として、銅を準備した。
また、導電支持層4を形成するための絶縁材料として、エポキシ樹脂を準備した。
【0104】
次に、成形型100に第二樹脂材料L2を導入し、成形型100を加熱することで第二樹脂材料L2を硬化させて、成形型100の各凹部101に対応する複数の柱状部21が第一面2a側に形成された第二基材シート2Aを作製した。この際、複数の柱状部21の直径は、平均径で200μmとした(図2(a),(b))。
【0105】
次いで、複数の柱状部21を含む第二基材シート2Aの第一面2aの表面全体を覆うように、スパッタリング法によって銅からなる薄膜を成膜することにより、導電層3を形成した(図2(c))。
【0106】
次いで、複数の柱状部21の表面に形成された導電層3を覆うように、電着塗装によってエポキシ系樹脂からなる絶縁材料を成膜することにより、導電支持層4を形成した。導電支持層4の厚さは、平均厚さで10μmとした(図2(d))。
【0107】
次いで、導電層3の表面に形成された導電支持層4、及び、第二基材シート2Aの第一面2aに形成された導電層3を第一樹脂材料L1で覆い、この第一樹脂材料L1を加熱して硬化させて第一基材シート1Aを形成することにより、積層体10Sを得た(図2(e))。
【0108】
次いで、上記の積層体10Sを、COレーザ加工によって、導電層3の延在する方向に対して直交する面の片側を除去することにより、積層体10Sの第一面1a及び第二面1bに導電層3の端部3a,3bを露出させ、電気コネクター10を得た(図2(f))。
【0109】
<評価方法>
上記の各条件及び手順で作製した実施例の電気コネクターについて、以下に示す各項目で評価した。
【0110】
[接続・導通状態の評価]
上記手順で得られた電気コネクター10を、直径1.0mmの金メッキされたプローブと、金メッキされた接続端子を有する基板との間に配置して、積層体(試験装置)を構成した。
また、プローブと基板の間の抵抗値を測定するため、プローブと基板に抵抗測定器(商品名:RM3545-01、日置電機社製)を接続した。
この状態で、積層体を、その厚さ方向に圧縮しながら、プローブと基板の間の抵抗値を測定し、積層体の変位量(積層体が厚さ方向に圧縮された量)と、プローブと基板の間の抵抗値との関係を調べた。なお、積層体の変位量は、電気コネクターの変位量に等しい。
本実施例においては、上記の積層体の変位量と、プローブと基板の間の抵抗値との関係を、検査対象物のコプラナリティのバラツキを吸収して安定した導通状態を維持できるか否かを評価する指標として用いた。
【0111】
[断面観察評価]
上記の接続・導通状態の評価で説明した手順で圧縮力が付与された電気コネクター10を、平面方向に沿って、レーザ加工によって切断し、走査過型電子顕微鏡(SEM)(型番:JCM-6000、日本電子社製)で観察し、クラック等の発生の有無を確認した。そして、この結果を図4の走査型電子顕微鏡写真に示した。
【0112】
<評価結果>
上述した接続・導通状態の評価試験の結果より、本実施例で作製した電気コネクター10は、上記の積層体の変位量に関わらず、プローブと基板の間の抵抗値が増大することが無かった。従って、本実施例で作製した電気コネクターは、検査対象物のコプラナリティのバラツキを吸収でき、安定した導通状態を維持できると判断することができる。
【0113】
また、図4の走査型顕微鏡写真に示したように、本実施例で作製し、さらに、上記手順で圧縮力が付与された電気コネクター10は、柱状の第二弾性体2、導電層3、導電支持層4、及びシート状の第一弾性体1が、剥離することなく密着した良好な層構造を有していた。また、図4の走査型顕微鏡写真より、上記手順で圧縮力が付与された電気コネクター10は、導電層3にクラック等が発生していないことが確認できた。
【0114】
以上説明した実施例の結果より、本発明で規定する導電支持層を備えた電気コネクターの構成を採用することで、接続対象物におけるコプラナリティのバラツキを吸収して安定した導通状態を維持しながら、厚み方向における弾性変形のし易さの確保と、導電層におけるクラック等の発生の防止とを両立できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の電気コネクターは、接続対象物におけるコプラナリティのバラツキを吸収して安定した導通状態を維持しながら、厚み方向における弾性変形のし易さの確保と、導電層におけるクラック等の発生の防止とを両立することが可能なものである。従って、本発明の電気コネクターは、電子デバイスの端子の導通試験等を行う検査用途の他、例えば、電子機器内に備えられた複数の電子デバイス同士を接続する等の所謂実装用途にも好適なものである。
【符号の説明】
【0116】
10,10A…電気コネクター
1…第一弾性体
1a…第一面(一方の主面)
1b…第二面(他方の主面)
11…貫通孔
11a…内壁
11b…中心線
2…第二弾性体
3…導電層
3a,3b…端部
4…導電支持層
5…端子部
10S…積層体
1A…第一基材シート(第一弾性体)
2A,2B…第二基材シート(第二弾性体)
2a…第一面
21,21B…柱状部
22,22B…残膜
100…成形型
100A…上型
101…凹部
100B…下型
102…収容部
L1…第一樹脂材料(第一基材シート)
L2…第二樹脂材料(第二基材シート)
図1
図2
図3
図4
図5