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特開2024-126856樹脂塗布装置用治具、樹脂塗布装置および光ファイバテープ心線の製造方法
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  • 特開-樹脂塗布装置用治具、樹脂塗布装置および光ファイバテープ心線の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126856
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】樹脂塗布装置用治具、樹脂塗布装置および光ファイバテープ心線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G02B6/44 391
G02B6/44 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035565
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】申 浩男
(72)【発明者】
【氏名】天野 怜央
【テーマコード(参考)】
2H201
【Fターム(参考)】
2H201AX01
2H201BB06
2H201BB12
2H201BB23
2H201BB24
2H201BB85
2H201KK17
2H201KK26A
2H201KK26B
2H201KK63
2H201MM03
2H201MM31
2H201MM32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】樹脂塗布装置に対して設計変更なしで、線通し作業性を向上できる樹脂塗布装置用治具、樹脂塗布装置および光ファイバテープ心線の製造方法を提供する。
【解決手段】光ファイバテープ心線の製造に用いられる樹脂塗布装置に備わるポイントに挿入される樹脂塗布装置用治具であって、複数本の光ファイバが挿通される孔部を形成するための溝が設けられた、少なくとも第一部材および第二部材を含む複数の部材を含み、第一部材および第二部材が互いに突き合わされることにより、第一部材および第二部材に設けられた溝のそれぞれによって孔部が形成され、孔部は、複数本の光ファイバを樹脂塗布装置用治具に挿通させるための入口部と、入口部から挿通された複数本の光ファイバを外部に送出させるための出口部と、を有し、少なくとも出口部には、複数本の前記光ファイバが所定の方向に送出されるための複数のガイド部が設けられている、樹脂塗布装置用治具。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバテープ心線の製造に用いられる樹脂塗布装置に備わるポイントに挿入される樹脂塗布装置用治具であって、
前記樹脂塗布装置用治具は、複数本の光ファイバが挿通される孔部を形成するための溝が設けられた、少なくとも第一部材および第二部材を含む複数の部材を含み、
前記第一部材および前記第二部材が互いに突き合わされることにより、前記樹脂塗布装置用治具には、前記第一部材および前記第二部材に設けられた前記溝のそれぞれによって前記孔部が形成され、
前記孔部は、複数本の前記光ファイバを前記樹脂塗布装置用治具に挿通させるための入口部と、前記入口部から挿通された複数本の前記光ファイバを前記樹脂塗布装置用治具の外部に送出させるための出口部と、を有し、
少なくとも前記出口部には、複数本の前記光ファイバが所定の方向に送出されるための複数のガイド部が設けられている、樹脂塗布装置用治具。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記入口部から前記出口部にわたって設けられている、請求項1に記載の樹脂塗布装置用治具。
【請求項3】
前記第一部材と前記第二部材が突き合わされた状態において、前記第一部材と前記第二部材の突き合わせ面が前記樹脂塗布装置用治具の上面視中央に位置する、請求項1または請求項2に記載の樹脂塗布装置用治具。
【請求項4】
前記ガイド部は、2本の前記光ファイバが挿通されるように構成されている、請求項1または請求項2に記載の樹脂塗布装置用治具。
【請求項5】
前記第一部材と前記第二部材の突き合わせ面に直交する方向における前記ガイド部の幅は220μm以下である、請求項1または請求項2に記載の樹脂塗布装置用治具。
【請求項6】
前記樹脂塗布装置用治具は、ステンレスまたはセラミックを含む、請求項1または請求項2に記載の樹脂塗布装置用治具。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の樹脂塗布装置用治具と、複数本の前記光ファイバの周囲に樹脂を塗布するダイスと、複数本の前記光ファイバを前記ダイスに導くためのポイントと、を備え、
前記ダイスは、前記光ファイバを挿通させるための光ファイバ挿通孔を有し、
前記ポイントは、前記樹脂塗布装置用治具を挿入可能な挿入孔を有し、
前記出口部は、前記樹脂塗布装置用治具が前記挿入孔に挿入された状態において、前記光ファイバ挿通孔と対面する位置にある、樹脂塗布装置。
【請求項8】
前記樹脂塗布装置用治具は、フランジをさらに備えており、
前記フランジは前記ポイントに載置される、請求項7に記載の樹脂塗布装置。
【請求項9】
前記樹脂塗布装置用治具の上部には、前記樹脂塗布装置用治具が前記挿入孔に挿入された状態において、前記挿入孔の幅方向における前記樹脂塗布装置用治具の位置決めをするための太径部が設けられている、請求項7に記載の樹脂塗布装置。
【請求項10】
請求項7に記載の樹脂塗布装置を用いた光ファイバテープ心線の製造方法であって、
複数本の前記光ファイバが前記孔部に挿通されている状態にするために、少なくとも前記第一部材および前記第二部材を含む複数の部材を突き合わせるステップと、
複数の前記光ファイバを前記樹脂塗布装置用治具に挿通させた状態で、前記樹脂塗布装置用治具を前記挿入孔に挿入するステップと、
複数本の前記光ファイバを前記ガイド部によって前記光ファイバ挿通孔に向けて送出させて、複数本の前記光ファイバを前記ダイスに通すステップと、
前記樹脂塗布装置用治具を前記挿入孔から取り外すステップと、
複数本の前記光ファイバが前記光ファイバ挿通孔に挿通された状態のまま、前記第一部材および前記第二部材を分離するステップと、を含む、光ファイバテープ心線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂塗布装置用治具、樹脂塗布装置および光ファイバテープ心線の製造方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ダイスとニップルを備える光ファイバテープ心線製造用樹脂被覆装置であって、ダイスとニップルが断面長方形のダイス穴とニップル穴の一面でそれぞれ分割されている光ファイバテープ心線製造用樹脂被覆装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05-254893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、樹脂塗布装置を用いて光ファイバテープ心線を製造する場合、樹脂塗布装置に備わるダイスが有する光ファイバ挿通孔に複数本の光ファイバを通す作業(線通し作業)を行う必要がある。線通し作業は、作業者が目視により行っているが、光ファイバの径および光ファイバ挿通孔の径は比較的小さく、緻密な作業が要求される。光ファイバは、細径化が進んでおり、光ファイバが細くなると、さらに緻密な作業が要求され、線通し作業に多大な時間を要する場合がある。
【0005】
本開示は、樹脂塗布装置に対して設計変更を加えることなく、線通しの作業性を向上させることができる樹脂塗布装置用治具、樹脂塗布装置および光ファイバテープ心線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための一態様に係る樹脂塗布装置用治具は、
光ファイバテープ心線の製造に用いられる樹脂塗布装置に備わるポイントに挿入される樹脂塗布装置用治具であって、
前記樹脂塗布装置用治具は、複数本の光ファイバが挿通される孔部を形成するための溝が設けられた、少なくとも第一部材および第二部材を含む複数の部材を含み、
前記第一部材および前記第二部材が互いに突き合わされることにより、前記樹脂塗布装置用治具には、前記第一部材および前記第二部材に設けられた前記溝のそれぞれによって前記孔部が形成され、
前記孔部は、複数本の前記光ファイバを前記樹脂塗布装置用治具に挿通させるための入口部と、前記入口部から挿通された複数本の前記光ファイバを前記樹脂塗布装置用治具の外部に送出させるための出口部と、を有し、
少なくとも前記出口部には、複数本の前記光ファイバが所定の方向に送出されるための複数のガイド部が設けられている。
【0007】
また、上記の目的を達成するための一態様に係る樹脂塗布装置は、
上記の樹脂塗布装置用治具と、複数本の前記光ファイバの周囲に樹脂を塗布するダイスと、複数本の前記光ファイバを前記ダイスに導くためのポイントと、を備え、
前記ダイスは、前記光ファイバを挿通させるための光ファイバ挿通孔を有し、
前記ポイントは、前記樹脂塗布装置用治具を挿入可能な挿入孔を有し、
前記出口部は、前記樹脂塗布装置用治具が前記挿入孔に挿入された状態において、前記光ファイバ挿通孔と対面する位置にある。
【0008】
また、上記の目的を達成するための一態様に係る光ファイバテープ心線の製造方法は、
上記の樹脂塗布装置を用いた光ファイバテープ心線の製造方法であって、
複数本の前記光ファイバが前記孔部に挿通されている状態にするために、少なくとも前記第一部材および前記第二部材を含む複数の部材を突き合わせるステップと、
複数の前記光ファイバを前記樹脂塗布装置用治具に挿通させた状態で、前記樹脂塗布装置用治具を前記挿入孔に挿入するステップと、
複数本の前記光ファイバを前記ガイド部によって前記光ファイバ挿通孔に向けて送出させて、複数本の前記光ファイバを前記ダイスに通すステップと、
前記樹脂塗布装置用治具を前記挿入孔から取り外すステップと、
複数本の前記光ファイバが前記光ファイバ挿通孔に挿通された状態のまま、前記第一部材および前記第二部材を分離するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、樹脂塗布装置に対して設計変更を加えることなく、線通しの作業性を向上させることができる樹脂塗布装置用治具、樹脂塗布装置および光ファイバテープ心線の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る光ファイバテープ心線の製造装置の概略構成図である。
図2図2は、本実施形態に係る樹脂塗布装置の断面図である。
図3図3は、第一実施形態に係る樹脂塗布装置用治具を例示する図である。
図4図4は、半割れ状態における第一実施形態に係る樹脂塗布装置用治具を例示する図である。
図5図5は、樹脂塗布装置用治具を図3における矢印Aの方向から見た図である。
図6図6は、本実施形態に係る光ファイバテープ心線の製造方法のフローチャート図である。
図7図7は、半割れ状態における第二実施形態に係る樹脂塗布装置用治具を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の実施形態の説明)
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係る樹脂塗布装置用治具は、
(1)光ファイバテープ心線の製造に用いられる樹脂塗布装置に備わるポイントに挿入される樹脂塗布装置用治具であって、
前記樹脂塗布装置用治具は、複数本の光ファイバが挿通される孔部を形成するための溝が設けられた、少なくとも第一部材および第二部材を含む複数の部材を含み、
前記第一部材および前記第二部材が互いに突き合わされることにより、前記樹脂塗布装置用治具には、前記第一部材および前記第二部材に設けられた前記溝のそれぞれによって前記孔部が形成され、
前記孔部は、複数本の前記光ファイバを前記樹脂塗布装置用治具に挿通させるための入口部と、前記入口部から挿通された複数本の前記光ファイバを前記樹脂塗布装置用治具の外部に送出させるための出口部と、を有し、
少なくとも前記出口部には、複数本の前記光ファイバが所定の方向に送出されるための複数のガイド部が設けられている。
この構成によれば、光ファイバテープ心線の製造に用いられる樹脂塗布装置に備わるポイントに挿入される樹脂塗布装置用治具は、少なくとも第一部材および第二部材を含む複数の部材を含むので、複数の部材に分離できる。また、第一部材および第二部材が突き合わされると、樹脂塗布装置用治具には、第一部材および第二部材に設けられた溝のそれぞれによって、複数本の光ファイバが挿通される孔部が形成される。したがって、このような樹脂塗布装置用治具においては、第一部材および第二部材が突き合わされている場合に孔部が形成され、第一部材および第二部材が突き合わされていない場合には孔部が形成されない。このため、第一部材および第二部材を分離することで、複数本の光ファイバを樹脂塗布装置用治具から分離させることを容易に行うことができる。また、上記構成に係る樹脂塗布装置用治具において、孔部が有する出口部には複数本の光ファイバが所定の方向に送出されるためのガイド部が設けられている。したがって、このような樹脂塗布装置用治具は、例えば、各々のダイスが有する光ファイバ挿通孔の位置に合うようにしながら、光ファイバ挿通孔がある方向に複数本の光ファイバを送出させることができる。このように、上記構成に係る樹脂塗布装置用治具によれば、樹脂塗布装置に対して設計変更を加えることなく、線通しの作業性を向上させることができる。
【0012】
(2)上記(1)に記載の樹脂塗布装置用治具において、前記ガイド部は、前記入口部から前記出口部にわたって設けられていてもよい。
この構成によれば、入口部から挿通させた複数本の光ファイバを出口部まで容易にガイドさせることができるので、複数本の光ファイバを所定の位置および方向に容易に送出させることができる。
【0013】
(3)上記(1)または(2)に記載の樹脂塗布装置用治具では、前記第一部材と前記第二部材が突き合わされた状態において、前記第一部材と前記第二部材の突き合わせ面が前記樹脂塗布装置用治具の上面視中央に位置してもよい。
上記構成に係る樹脂塗布装置用治具は半割れ構造であるので、樹脂塗布装置用治具の脱着容易性および掃除容易性をより高めることができる。また、突き合わせ面が中央にあるので、第一部材と第二部材を同一の構造にすることができ、部品の種類を減らすことができる。
【0014】
(4)上記(1)から(3)のいずれか一つに記載の樹脂塗布装置用治具において、前記ガイド部は、2本の前記光ファイバが挿通されるように構成されていてもよい。
この構成によれば、ダイスが有する光ファイバ挿通孔に光ファイバを2本ずつ通す場合であっても、線通し作業がしやすくなる。このため、上記構成に係る樹脂塗布装置用治具を用いることで、線通し作業を効率よく行うことができる。
【0015】
(5)上記(1)から(4)のいずれか一つに記載の樹脂塗布装置用治具において、前記第一部材と前記第二部材の突き合わせ面に直交する方向における前記ガイド部の幅は220μm以下であってもよい。
この構成によれば、直径が200μm程度である、従来よりも細径の光ファイバについて線通し作業を行う場合であっても、孔部に挿通される光ファイバがガイド部で位置ずれすることを防ぐことができるので、光ファイバを適切にガイドすることができる。
【0016】
(6)上記(1)から(5)のいずれか一つに記載の樹脂塗布装置用治具は、ステンレスまたはセラミックを含んでいてもよい。
この構成によれば、樹脂塗布装置用治具は、ステンレスまたはセラミックを含んでいるので、防錆性に優れている。
【0017】
また、本開示の一態様に係る樹脂塗布装置は、
(7)上記(1)から(6)のいずれか一つに記載の樹脂塗布装置用治具と、複数本の前記光ファイバの周囲に樹脂を塗布するダイスと、複数本の前記光ファイバを前記ダイスに導くためのポイントと、を備え、
前記ダイスは、前記光ファイバを挿通させるための光ファイバ挿通孔を有し、
前記ポイントは、前記樹脂塗布装置用治具を挿入可能な挿入孔を有し、
前記出口部は、前記樹脂塗布装置用治具が前記挿入孔に挿入された状態において、前記光ファイバ挿通孔と対面する位置にある。
この構成によれば、孔部が有する出口部は、樹脂塗布装置用治具がポイントの挿入孔に挿入された状態において、光ファイバ挿通孔と対面する位置にある。このため、樹脂塗布装置に備わる樹脂塗布装置用治具は、例えば、各々の光ファイバ挿通孔の位置に合うようにしながら、光ファイバ挿通孔がある方向に複数本の光ファイバを送出させることができる。したがって、上記構成に係る樹脂塗布装置によれば、樹脂塗布装置に対して設計変更を加えることなく、線通しの作業性を向上させることができる。
【0018】
(8)上記(7)に記載の樹脂塗布装置は、フランジをさらに備えており、
前記フランジは前記ポイントに載置されていてもよい。
この構成によれば、樹脂塗布装置用治具に備わるフランジはポイントに載置されるので、樹脂塗布装置用治具がポイントの挿入孔に挿入されている状態において、挿入孔が延びる方向における樹脂塗布装置用治具の位置決めを行うことができる。
【0019】
(9)上記(7)または(8)に記載の樹脂塗布装置において、前記樹脂塗布装置用治具の上部には、前記樹脂塗布装置用治具が前記挿入孔に挿入された状態において、前記挿入孔の幅方向における前記樹脂塗布装置用治具の位置決めをするための太径部が設けられていてもよい。
この構成によれば、樹脂塗布装置用治具がポイントの挿入孔に挿入されると、挿入孔の幅方向における樹脂塗布装置用治具の位置は太径部によって位置決めされるので、樹脂塗布装置用治具を挿入孔に適切に挿入することができる。
【0020】
また、本開示の一態様に係る光ファイバテープ心線の製造方法は、
(10)上記(7)から(9)のいずれか一つに記載の樹脂塗布装置を用いた光ファイバテープ心線の製造方法であって、
複数本の前記光ファイバが前記孔部に挿通されている状態にするために、少なくとも前記第一部材および前記第二部材を含む複数の部材を突き合わせるステップと、
複数の前記光ファイバを前記樹脂塗布装置用治具に挿通させた状態で、前記樹脂塗布装置用治具を前記挿入孔に挿入するステップと、
複数本の前記光ファイバを前記ガイド部によって前記光ファイバ挿通孔に向けて送出させて、複数本の前記光ファイバを前記ダイスに通すステップと、
前記樹脂塗布装置用治具を前記挿入孔から取り外すステップと、
複数本の前記光ファイバが前記光ファイバ挿通孔に挿通された状態のまま、前記第一部材および前記第二部材を分離するステップと、
を含む。
この構成によれば、樹脂塗布装置用治具をポイントの挿入孔に挿入した後に、複数本の光ファイバをガイド部によってダイスの光ファイバ挿通孔に向けて送出させて、複数本の光ファイバをダイスに通す。そして、複数本の光ファイバをダイスに通した後は、複数本の光ファイバが光ファイバ挿通孔に挿通された状態のまま、樹脂塗布装置用治具をポイントの挿入孔から取り外し、第一部材および第二部材を分離する。このため、上記構成に係る光ファイバテープ心線の製造方法によれば、樹脂塗布装置に対して設計変更を加えることなく、線通しの作業性を向上させることができる。
【0021】
(本開示の実施形態の詳細)
本開示の実施形態に係る樹脂塗布装置用治具、樹脂塗布装置および光ファイバテープ心線の製造方法の具体例を、以下に図面を参照して説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、下の説明における、前後方向、左右方向、上下方向は、各図に適宜示した矢印の方向によるものである。なお、各図において図中に示した符号Uは上方向を示す。符号Dは下方向を示す。符号Fは前方向を示す。符号Bは後方向を示す。符号Lは左方向を示す。符号Rは右方向を示す。
【0022】
(第一実施形態)
図1を参照しつつ、第一実施形態に係る光ファイバテープ心線の製造装置1について説明する。図1は、本実施形態に係る光ファイバテープ心線の製造装置1の概略構成図である。
【0023】
図1に例示するように、光ファイバテープ心線の製造装置1は、サプライ装置100を有する。サプライ装置100内には、光ファイバテープ心線10の心線数に対応する12個のリール101と、12個のダンサローラ102と、第一ガイドローラ103と、が設けられている。リール101のそれぞれには光ファイバ11がそれぞれ巻かれている。なお、光ファイバ11は、例えば、コアとクラッドからなるガラスファイバと、当該ガラスファイバの外周をアクリレート樹脂等で覆った保護被覆と、当該保護被覆の外周を被覆する着色層と、を含む単心の光ファイバである。光ファイバ11の直径は、例えば、200μmである。ただし、光ファイバ11の直径は200μmに限られない。光ファイバ11は、リール101のそれぞれから繰り出されて、ダンサローラ102によりそれぞれ張力が与えられ、第一ガイドローラ103を通過するときに一つの配列面上に並べられる。光ファイバ11は、さらに、直上ガイドローラ104で集線されて、樹脂塗布装置200へ送られる。
【0024】
樹脂塗布装置200は、樹脂塗布装置用治具210と、ポイント220と、ダイス230と、を備える。なお、樹脂塗布装置用治具210、ポイント220およびダイス230の詳細については後述する。光ファイバ11は、樹脂塗布装置200に挿通され、後段で所定の張力で引っ張られる。これにより、挿通された光ファイバ11はポイント220でガイドされて所望の配列となり、ダイス230に送られる。
【0025】
ダイス230において、並列した光ファイバ11の周りには紫外線硬化型樹脂が塗布される。当該紫外線硬化型樹脂は、例えば、加圧式の樹脂タンク240より供給される。
【0026】
紫外線照射装置250において、紫外線硬化型樹脂が塗布された光ファイバ11には紫外線が照射される。これにより、光ファイバ11に塗布された紫外線硬化型樹脂が硬化され、12心の光ファイバテープ心線10が形成される。
【0027】
紫外線照射装置250により紫外線を照射されて硬化した光ファイバテープ心線10は、第二ガイドローラ260、送り出しキャプスタン310、巻き取り張力制御ダンサローラ320およびリールを有する巻き取り装置330へ送られる。巻き取り装置330において、光ファイバテープ心線10は、ガイドを経てリールに巻取られる。このようにして、光ファイバテープ心線10が製造される。
【0028】
次に、図2から図5を参照しつつ、樹脂塗布装置200について説明する。図2は、樹脂塗布装置200の断面図である。図3は、樹脂塗布装置用治具210を例示する図である。図4は、半割れ状態における樹脂塗布装置用治具210を例示する図である。図5は、樹脂塗布装置用治具210を図3における矢印Aの方向から見た図である。なお、図2においては、説明の都合上、4本の光ファイバ11のみを図示しているが、本実施形態では、12本の光ファイバ11が樹脂塗布装置用治具210に挿入される。
【0029】
図2に例示するように、ポイント220は、ダイス230へ向けて光ファイバ11を挿通させるための挿入孔221を有する。挿入孔221は、略円柱形状であって、挿入孔221の上部に設けられた挿入口222と、挿入孔221の下部でありダイス230側に設けられたテーパ部223と、を備えている。挿入孔221は、樹脂塗布装置用治具210を挿入可能である。挿入口222は、光ファイバ11または樹脂塗布装置用治具210が挿入孔221に挿入される際の入口である。テーパ部223の径は、上方から下方に向かうにつれて小さくなっている。テーパ部223より下方の挿入孔221の径は一定である。
【0030】
樹脂塗布装置200は、ポイント220とダイス230を収容して所定の位置に保持する筐体(図示せず)を有する。ポイント220とダイス230の上下の隙間は、樹脂タンク240より供給される樹脂の流路として機能し、当該隙間からダイス230へ紫外線硬化型樹脂が供給される。
【0031】
ダイス230は、12本の光ファイバ11の周囲に紫外線硬化型樹脂等の樹脂を塗布するように構成されている。ダイス230は、光ファイバ11を挿通させるための光ファイバ挿通孔231を有する。光ファイバ挿通孔231は、複数の孔から構成されていても良く、光ファイバ11を挿通させつつ、光ファイバ11の外周に樹脂を塗布させるように構成されている。なお、光ファイバ挿通孔231の形状は、図5に例示する樹脂塗布装置用治具210の孔部213の形状と同様でありうる。
【0032】
樹脂塗布装置用治具210は、ポイント220の挿入孔221に挿入可能に構成されている。なお、図2に例示する状態において、樹脂塗布装置用治具210は、ポイント220の挿入孔221に挿入されている。樹脂塗布装置用治具210は、例えば、ステンレスまたはセラミックから形成される。このため、樹脂塗布装置用治具210は防錆性に優れており、例えば、樹脂塗布装置用治具210をポイント220に挿入する際の位置ずれが発生しにくい。図3に例示するように、樹脂塗布装置用治具210は、第一部材211および第二部材212を含む。樹脂塗布装置用治具210は、全体として上下方向に長尺である概ね円柱形状の治具であり、上下方向の中心軸を含む平面を境にして第一部材211と第二部材212の二つの部材に分離可能である。第一部材211と第二部材212は、例えば、互いに同一の構造とすることができる。このように、樹脂塗布装置用治具210は半割れ構造であるため、第一部材211および第二部材212は、分離したり、突き合わせたりすることができる。このため、樹脂塗布装置用治具210の脱着容易性および掃除容易性は比較的高い。
【0033】
第一部材211と第二部材212が突き合わされた状態において、第一部材211と第二部材212の突き合わせ面300は、樹脂塗布装置用治具210の上面視中央に位置してもよい。つまり、第一部材211と第二部材212が突き合わされた状態において、第一部材211と第二部材212の突き合わせ面300は、樹脂塗布装置用治具210の中央線C1上に位置してもよい。この場合、第一部材211と第二部材212を同一の構造にすることができるので、部品の種類を減らすことができる。また、第一部材211および第二部材212は、樹脂塗布装置用治具210の中央線C1に対して線対称の形状であってもよい。
【0034】
図4に例示するように、第一部材211には、12本の光ファイバ11が挿通される孔部213を形成するための溝214が設けられている。なお、第二部材212にも、12本の光ファイバ11が挿通される孔部213を形成するための溝214が設けられている。つまり、第一部材211の溝214および第二部材212の溝214は、第一部材211および第二部材212が突き合わされた状態において孔部213となる溝である。なお、本実施形態では、第一部材211と第二部材212とが突き合わされることによって、溝214が複数の孔からなる孔部213を形成するようになっている。すなわち、第一部材211および第二部材212が互いに突き合わされることにより、樹脂塗布装置用治具210には、第一部材211および第二部材212に設けられた溝214のそれぞれによって孔部213が形成される。孔部213は、樹脂塗布装置用治具210の長手方向(図4における上下方向)に延びている。孔部213には、12本の光ファイバ11が挿通される。
【0035】
孔部213は、12本の光ファイバ11を樹脂塗布装置用治具210に挿通させるための入口部213aと、入口部213aから挿通された12本の光ファイバ11を樹脂塗布装置用治具210の外部に送出させるための出口部213bと、を有する。入口部213aは、孔部213の上端に設けられている。出口部213bは、孔部213の下端に設けられている。したがって、孔部213の上方から入口部213aを介して挿通された12本の光ファイバ11は、出口部213bを介して孔部213の下方へ送出される。図2に例示するように、樹脂塗布装置用治具210がポイント220の挿入孔221に挿入された状態において、樹脂塗布装置用治具210の下方にはダイス230が配置されている。このため、樹脂塗布装置用治具210がポイント220の挿入孔221に挿入された状態において、出口部213bは、ダイス230の光ファイバ挿通孔231と対面する位置にある。このため、例えば、各々の光ファイバ挿通孔231の位置に合うようにしながら、光ファイバ挿通孔231がある方向に12本の光ファイバ11を送出させることができる。
【0036】
図4および図5に例示するように、孔部213には、6個のガイド部213cが設けられている。ガイド部213cは、孔部213に挿通された複数本の光ファイバ11が所定の方向に送出されるように、複数本の光ファイバ11をガイドする。本実施形態において、ガイド部213cは、入口部213aから出口部213bにわたって設けられている。ガイド部213cは、孔部213に沿って、樹脂塗布装置用治具210の長手方向(図4における上下方向)に、直線状に延びている。ガイド部213cは、例えば、2本の光ファイバ11が挿通されるように構成されている。
【0037】
第一部材211と第二部材212の突き合わせ面300(図3参照)に直交する方向(図3における前後方向)におけるガイド部213cの幅は、例えば、200μmより大きく220μm以下である。したがって、第一部材211と第二部材212の突き合わせ面300に直交する方向におけるガイド部213cの幅は、光ファイバ11の直径(200μm)よりも僅かに大きい。このため、直径が200μm程度である、従来よりも細径の光ファイバ11について線通し作業を行う場合であっても、孔部213に挿通される2本の光ファイバ11がガイド部213cで位置ずれすることを防ぐことができる。
【0038】
図3および図4に例示するように、樹脂塗布装置用治具210は、フランジ215と、太径部216と、本体部217と、底部218と、を備えている。フランジ215は、太径部216、本体部217および底部218よりも上方に位置する。フランジ215の径は、太径部216の径および本体部217の径よりも大きい。図2に例示するように、フランジ215の径は、ポイント220の挿入孔221の径よりも大きい。フランジ215は、樹脂塗布装置用治具210がポイント220の挿入孔221に挿入された状態において、ポイント220の上端224に載置される。フランジ215は、樹脂塗布装置用治具210がポイント220の挿入孔221に挿入された状態において、上下方向における樹脂塗布装置用治具210の位置決めをする。
【0039】
図3および図4に例示するように、太径部216は、フランジ215よりも下方であって、本体部217および底部218よりも上方の位置に設けられている。このように、太径部216は、樹脂塗布装置用治具210の上部に設けられている。なお、本明細書において、「樹脂塗布装置用治具210の上部」とは、樹脂塗布装置用治具210のうちフランジ215を除いた部分における上部を意味する。言い換えると、本明細書において、「樹脂塗布装置用治具210の上部」とは、樹脂塗布装置用治具210がポイント220の挿入孔221に挿入された状態において、樹脂塗布装置用治具210のうち挿入孔221に挿入されている部分における上部を意味する。太径部216の径は、本体部217の径よりも僅かに大きい。図2に例示するように、太径部216の径は、ポイント220の挿入孔221の径と略等しい。このため、太径部216は、樹脂塗布装置用治具210がポイント220の挿入孔221に挿入された状態において、挿入孔221の径方向(図2における水平方向)における樹脂塗布装置用治具210の位置決めをする。このため、樹脂塗布装置用治具210は、ポイント220の挿入孔221に適切に挿入される。
【0040】
図3および図4に例示するように、本体部217は、フランジ215および太径部216よりも下方であって、底部218よりも上方に位置する。図2に例示するように、本体部217の径は、ポイント220の挿入孔221の径よりも僅かに小さい。
【0041】
図3および図4に例示するように、底部218は、フランジ215、太径部216および本体部217よりも下方に位置する。底部218はテーパ状であり、底部218の径は上方から下方に向かうにつれて小さくなっている。底部218の形状は、ポイント220のテーパ部223の形状と略同形である。
【0042】
図2に例示するように、ポイント220の上端からダイス230の上端までの樹脂塗布装置200の高さ方向(図2における上下方向)における長さL1は、例えば、60mmである。ポイント220のうち挿入口222からテーパ部223までの挿入孔221の長手方向(図2における上下方向)における長さL2は、例えば、50mmである。テーパ部223からダイス230の上端までの長さL3は、例えば、10mmである。樹脂塗布装置用治具210がポイント220の挿入孔221に挿入された状態において、樹脂塗布装置用治具210のうちフランジ215と挿入口222の接触位置P1から出口部213b(底部218)までの上下方向の長さL4は、上記の長さL2と略等しくなるように設定されている。このため、本実施形態において、上記の長さL4は、例えば、50mmである。
【0043】
このように、樹脂塗布装置用治具210のうちフランジ215より下部の長さ(接触位置P1から出口部213bまでの上下方向の長さ)L4は、ポイント220における挿入口222からテーパ部223までの挿入孔221の長さL2に略一致するように設計されている。また、樹脂塗布装置用治具210の底部218の形状は、ポイント220のテーパ部223の形状に合わせて設計されている。このため、樹脂塗布装置用治具210が挿入口222から挿入孔221に挿入されると、樹脂塗布装置用治具210の底部218はポイント220のテーパ部223に当接または僅かな隙間を空けて近接する。これにより、樹脂塗布装置用治具210を挿入孔221に挿入した状態における底部218の前後左右の位置をテーパ部223によってガイドすることができ、出口部213bをダイス230の光ファイバ挿通孔231と対面する適切な位置に配置することができる。
【0044】
(光ファイバテープ心線の製造方法)
次に、図6を参照しつつ、本実施形態に係る光ファイバテープ心線10の製造方法について説明する。図6は、本実施形態に係る光ファイバテープ心線10の製造方法のフローチャート図である。なお、光ファイバテープ心線10の製造方法を実行する前段階においては、まだ樹脂塗布装置用治具210はポイント220に挿入されておらず、第一部材211および第二部材212同士は分離している。
【0045】
図6に例示するように、初めに、ユーザは、12本の光ファイバ11を挿通させる孔部213が形成されている状態にするために、第一部材211および第二部材212を突き合わせる(STEP01)。第一部材211および第二部材212を突き合わせると、樹脂塗布装置用治具210には、第一部材211および第二部材212に設けられた溝214のそれぞれによって孔部213が形成される。ユーザは、第一部材211および第二部材212を突き合わせた後、第一部材211および第二部材212を突き合わせることで形成された孔部213に12本の光ファイバ11を挿通させる。このとき、ユーザは、孔部213のガイド部213cに2本ずつ光ファイバ11を挿通させる。ガイド部213cは、孔部213の入口部213aから出口部213bにわたって設けられているので、12本の光ファイバ11を入口部213aに挿入するだけで、12本の光ファイバ11を出口部213bまで容易に挿通させることができる。なお、STEP01では、第一部材211の溝214または第二部材212の溝214に光ファイバ11を配置した後に、第一部材211および第二部材212を突き合わせるようにしてもよい。つまり、STEP01では、12本の光ファイバ11が孔部213に挿通されている状態にするために、第一部材211および第二部材212を突き合わせてから光ファイバ11を孔部213に挿通するか、溝214に光ファイバ11を配置した後に第一部材211および第二部材212を突き合わせる。
【0046】
ユーザは、孔部213に12本の光ファイバ11を挿通し、突き合わせた後、樹脂塗布装置用治具210をポイント220の挿入孔221に挿入する(STEP02)。これにより、孔部213に挿通された12本の光ファイバ11は、ポイント220に挿通される。12本の光ファイバ11は、2本ずつ、ガイド部213cによって、出口部213bまでガイドされ、樹脂塗布装置用治具210の外部に送出される。つまり、本実施形態では、12本の光ファイバ11が、2本ずつ、ガイド部213cによって、ダイス230に導かれる。
【0047】
12本の光ファイバ11がダイス230に導かれると、12本の光ファイバ11はダイス230に通される(STEP03)。
【0048】
光ファイバ11の線通し作業が終了すると、ユーザは、樹脂塗布装置用治具210をポイント220の挿入孔221から上方へ移動させて、挿入孔221から取り外す(STEP04)。このとき、樹脂塗布装置用治具210の孔部213には、依然として12本の光ファイバ11が挿通されている。
【0049】
その後、ユーザは、第一部材211および第二部材212を分離する(STEP05)。これにより、12本の光ファイバ11から樹脂塗布装置用治具210を取り外すことができる。なお、樹脂塗布装置用治具210を用いた本実施形態に係る光ファイバテープ心線10の製造方法における線通し作業に要する時間は、樹脂塗布装置用治具210を用いない従来の光ファイバテープ心線の製造方法における線通し作業に要する時間の約1/6であった。このように、樹脂塗布装置用治具210を用いた本実施形態に係る光ファイバテープ心線10の製造方法においては、樹脂塗布装置用治具210を用いない従来の光ファイバテープ心線の製造方法における線通し作業と比べて、線通し作業に要する時間を大幅に減少させることができた。
【0050】
線通し作業の後、ユーザは、12本の光ファイバ11を光ファイバテープ心線10の製造装置1の巻き取り装置330まで通し、製造装置1の稼働を開始させる。光ファイバテープ心線10の製造工程において、サプライ装置100から供給された12本の光ファイバ11の周りには、樹脂塗布装置200によって、紫外線硬化型樹脂が塗布される。次いで、紫外線照射装置250によって、紫外線硬化型樹脂が塗布された12本の光ファイバ11には紫外線が照射される。これにより、12心の光ファイバテープ心線10が形成される。光ファイバテープ心線10は、第二ガイドローラ260、送り出しキャプスタン310、巻き取り張力制御ダンサローラ320およびリールを有する巻き取り装置330へ送られる。このようにして、光ファイバテープ心線10が製造される。
【0051】
上述したように、本実施形態に係る光ファイバテープ心線10の製造方法においては、線通し作業に要する時間を大幅に減少させることができるので、光ファイバテープ心線10の製造に係る時間も減少させることができる。このように、本実施形態に係る光ファイバテープ心線10の製造方法によれば、樹脂塗布装置に対して設計変更を加えることなく、線通しの作業性を向上させることができる。
【0052】
以上のような構成の樹脂塗布装置用治具210によれば、樹脂塗布装置用治具210は、第一部材211および第二部材212に分離することができる。また、第一部材211および第二部材212が突き合わされると、樹脂塗布装置用治具210には、第一部材211および第二部材212に設けられた溝214のそれぞれによって、12本の光ファイバ11が挿通される孔部213が形成される。したがって、樹脂塗布装置用治具210においては、第一部材211および第二部材212が突き合わされている場合に孔部213が形成され、第一部材211および第二部材212が突き合わされていない場合には孔部213が形成されない。このため、第一部材211および第二部材212を分離することで、12本の光ファイバ11を樹脂塗布装置用治具210から分離させることを容易に行うことができる。また、樹脂塗布装置用治具210において、孔部213が有する出口部213bには12本の光ファイバ11が所定の方向に送出されるためのガイド部213cが設けられている。したがって、樹脂塗布装置用治具210は、例えば、ダイス230が有する光ファイバ挿通孔231の位置に合うようにしながら、光ファイバ挿通孔231がある方向に12本の光ファイバ11を送出させることができる。このように、樹脂塗布装置用治具210によれば、樹脂塗布装置に対して設計変更を加えることなく、線通しの作業性を向上させることができる。
【0053】
(第二実施形態)
次に、図7を参照しつつ、第二実施形態に係る樹脂塗布装置用治具210Aについて説明する。なお、本実施形態において、第一実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明し、また説明が重複する部分については適宜説明を省略する。図7は、半割れ状態における樹脂塗布装置用治具210Aを例示する図である。なお、本実施形態においても、樹脂塗布装置用治具210Aは、ポイント220の挿入孔221に挿入される。
【0054】
樹脂塗布装置用治具210Aは、第一部材211Aと、第一部材211Aと同様の構成である第二部材と、を含む。なお、樹脂塗布装置用治具210Aに含まれる第二部材は第一部材211Aと同様の構成であるため、本明細書では、第一部材211Aについてのみ説明する。本実施形態においても、樹脂塗布装置用治具210Aに含まれる第一部材211Aおよび第二部材のそれぞれには、12本の光ファイバ11が挿通される孔部213Aを形成するための溝214Aが設けられている。ただし、図7に例示するように、樹脂塗布装置用治具210Aは、溝214Aにおいてガイド部213cが設けられている部分が溝214Aにおいてガイド部213cが設けられていない部分よりも少ない点で、第一実施形態に係る樹脂塗布装置用治具210と異なる。
【0055】
ガイド部213cは、入口部213aと出口部213bの間に位置する中間部213dから出口部213bにわたって設けられている。つまり、本実施形態では、第一実施形態と異なり、ガイド部213cは、入口部213aから出口部213bにわたって設けられてはいない。なお、樹脂塗布装置用治具210Aの高さ方向(図7における上下方向)におけるガイド部213cの長さは、例えば、テーパ部223からダイス230の上端までの長さL3(図2参照)の1.5倍から2倍である。つまり、樹脂塗布装置用治具210Aの高さ方向における溝214Aの長さは、例えば、15mmから20mmである。
【0056】
ガイド部213cは入口部213aから中間部213dにわたっては設けられていないため、孔部213Aに挿通された12本の光ファイバ11は、入口部213aから中間部213dまでは光ファイバ11ごとにガイドされない。一方で、ガイド部213cは、中間部213dから出口部213bにわたって設けられているため、中間部213dから出口部213bまではガイド部213cによって各光ファイバ11がダイス230に向けて所定の位置および方向にガイドされる。したがって、樹脂塗布装置用治具210Aを用いても、出口部213bでは、12本の光ファイバ11を2本ずつ精度よくダイス230に導くことができる。
【0057】
樹脂塗布装置用治具210Aを用いた光ファイバテープ心線10の製造方法は、第一実施形態に係る樹脂塗布装置用治具210を用いた光ファイバテープ心線10の製造方法と同様である。
【0058】
本実施形態に係る樹脂塗布装置用治具210Aおよび光ファイバテープ心線10の製造方法においても、第一実施形態に係る樹脂塗布装置用治具210および光ファイバテープ心線10の製造方法と同様の効果を奏することができる。また、本実施形態に係る樹脂塗布装置用治具210Aを備える樹脂塗布装置においても、第一実施形態に係る樹脂塗布装置200と同様の効果を奏することができる。
【0059】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0060】
上記の実施形態において、樹脂塗布装置用治具210はステンレスまたはセラミックから形成されているが、例えば、樹脂材料等から形成されていてもよい。
【0061】
上記の実施形態において、樹脂塗布装置用治具210は、第一部材211および第二部材212から構成されているが、第一部材211および第二部材212以外の部材を含んでいてもよい。つまり、樹脂塗布装置用治具210の構成は、第一部材211および第二部材212を含む複数の部材を含む構成であってもよい。
【0062】
上記の実施形態において、第一部材211および第二部材212は、樹脂塗布装置用治具210の中央線C1に対して線対称の形状であるが、第一部材211および第二部材212は、樹脂塗布装置用治具210の中央線C1に対して線対称の形状でなくてもよい。
【0063】
上記の実施形態において、第一部材211と第二部材212の突き合わせ面300に直交する方向におけるガイド部213cの幅は、220μm以下であるが、220μmより大きくてもよい。
【0064】
上記の実施形態において、孔部213に挿通される光ファイバ11の本数は12本であるが、孔部213に挿通される光ファイバ11の本数は4本以上であればよく、12本に限られない。
【0065】
上記の実施形態において、ガイド部213cに挿通される光ファイバ11の本数は2本であるが、ガイド部213cに挿通される光ファイバ11の本数は2本以上であってもよい。
【0066】
第一実施形態において、ガイド部213cは入口部213aから出口部213bにわたって設けられており、第二実施形態において、ガイド部213cは中間部213dから出口部213bにわたって設けられているが、本開示はこれらに限られない。ガイド部213cは、少なくとも出口部213bに設けられていればよい。
【符号の説明】
【0067】
1:光ファイバテープ心線の製造装置
10:光ファイバテープ心線
11:光ファイバ
100:サプライ装置
101:リール
102:ダンサローラ
103:第一ガイドローラ
104:直上ガイドローラ
200:樹脂塗布装置
210,210A:樹脂塗布装置用治具
211,211A:第一部材
212:第二部材
213:孔部
213a:入口部
213A:孔部
213b:出口部
213c:ガイド部
213d:中間部
214,214A:溝
215:フランジ
216:太径部
217:本体部
218:底部
220:ポイント
221:挿入孔
222:挿入口
223:テーパ部
224:ポイントの上端
230:ダイス
231:光ファイバ挿通孔
240:樹脂タンク
250:紫外線照射装置
260:第二ガイドローラ
300:突き合わせ面
310:キャプスタン
320:張力制御ダンサローラ
330:巻き取り装置
L1:ポイントの上端からダイスの上端までの樹脂塗布装置の高さ方向における長さ
L2:挿入口からテーパ部までの挿入孔の長手方向における長さ
L3:テーパ部からダイスの上端までの長さ
L4:フランジと挿入口の接触位置から出口部までの上下方向の長さ
P1:フランジと挿入口の接触位置
C1:樹脂塗布装置用治具の中央線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7