(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126870
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電解セルおよび電解装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20240912BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240912BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20240912BHJP
C25B 9/60 20210101ALI20240912BHJP
C25B 13/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B9/23
C25B9/60
C25B13/02 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035580
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】浦下 靖崇
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 悠太
(72)【発明者】
【氏名】中山 嘉貴
(72)【発明者】
【氏名】祐延 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】向井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】弦巻 茂
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA05
4K021CA08
4K021DB31
4K021DB36
4K021DB43
4K021DB49
4K021DB53
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】電解効率の向上を図ることができる電解セルおよび電解装置を提供する。
【解決手段】本開示の電解セルは、第1面を有した第1セパレータと、第1セパレータとの間に収容空間を空けて配置され、第1面に対向する第2面を有した第2セパレータと、収容空間に配置されたイオン交換膜と、第1セパレータと前記イオン交換膜との間に配置された第1給電体と、第1給電体とイオン交換膜との間に配置された第1触媒層と、第2セパレータとイオン交換膜との間に配置された第2給電体と、第2給電体とイオン交換膜との間に配置された第2触媒層と、第1セパレータの一部として設けられ、または第1セパレータと第1給電体との間に設けられ、第1面に沿って第1方向に流れる電解液の少なくとも一部の流れ方向を、第1方向における複数の位置の各々で、第1面とは交差する第2方向に変化させる流れ方向変化部とを備えている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有した第1セパレータと、
前記第1セパレータとの間に収容空間を空けて配置され、前記第1面に対向する第2面を有した第2セパレータと、
前記収容空間に配置されたイオン交換膜と、
前記第1セパレータと前記イオン交換膜との間に配置された第1給電体と、
前記第1給電体と前記イオン交換膜との間に配置された第1触媒層と、
前記第2セパレータと前記イオン交換膜との間に配置された第2給電体と、
前記第2給電体と前記イオン交換膜との間に配置された第2触媒層と、
前記第1セパレータの一部として設けられ、または前記第1セパレータと前記第1給電体との間に設けられ、前記第1面に沿って第1方向に流れる電解液の少なくとも一部の流れ方向を、前記第1方向における複数の位置の各々で、前記第1面とは交差する第2方向に変化させる流れ方向変化部と、
を備えた電解セル。
【請求項2】
前記第1セパレータは、前記第1面を含むセパレータ本体を有し、
前記流れ方向変化部は、前記セパレータ本体から前記イオン交換膜に向けて突出した複数の第1突起を含み、前記複数の第1突起は、前記第1方向で互いに離れて配置された、
請求項1に記載の電解セル。
【請求項3】
前記セパレータ本体は、前記第1方向に沿う第1流路を規定する第1溝を有し、
前記複数の第1突起は、前記第1溝の内部に配置された、
請求項2に記載の電解セル。
【請求項4】
前記セパレータ本体は、前記第1面に沿う方向であって前記第1方向とは交差した第3方向において前記第1溝の両側に分かれて配置された第1部分および第2部分を有し、
前記複数の第1突起の突出高さは、前記第1溝の深さよりも小さく、
前記第1部分および前記第2部分は、前記複数の第1突起が前記第1給電体から離れた状態で前記第1給電体に接する、
請求項3に記載の電解セル。
【請求項5】
前記複数の第1突起の各々と前記第1給電体との間には、前記電解セルの運転時の圧力環境下で前記第1セパレータと前記イオン交換膜との間に生じる気泡の平均直径よりも大きな隙間が存在する、
請求項3に記載の電解セル。
【請求項6】
前記複数の第1突起の各々は、前記第1方向に進むに従い前記セパレータ本体からの突出量が徐々に大きくなるように形成された変化部を含む、
請求項3に記載の電解セル。
【請求項7】
少なくとも前記複数の第1突起の表面には、撥水性の表面処理が施された、
請求項3に記載の電解セル。
【請求項8】
前記セパレータ本体は、前記第1面に沿う方向であって前記第1方向とは交差した第3方向で前記第1溝と隣り合い、前記第1方向に沿う第2流路を規定する第2溝を有し、
前記流れ方向変化部は、前記セパレータ本体から前記イオン交換膜に向けて突出した複数の第2突起を含み、前記複数の第2突起は、前記第2溝の内部に配置された、
請求項3に記載の電解セル。
【請求項9】
前記複数の第1突起に含まれる少なくとも2つの突起と、前記複数の第2突起に含まれる少なくとも2つの突起とは、前記第1方向に関して千鳥状に配置された、
請求項8に記載の電解セル。
【請求項10】
前記流れ方向変化部は、メッシュ構造体または多孔質体である流路形成部材である、
請求項1に記載の電解セル。
【請求項11】
前記流路形成部材は、導電性を有し、前記第1セパレータと前記第1給電体との間に設けられて前記第1セパレータと前記第1給電体とを電気的に接続する、
請求項10に記載の電解セル。
【請求項12】
前記流路形成部材の空隙率は、前記第1給電体の空隙率よりも大きい、
請求項10に記載の電解セル。
【請求項13】
前記流路形成部材は、前記第2方向における流路抵抗が前記第1方向における流路抵抗と比べて小さい、
請求項10に記載の電解セル。
【請求項14】
請求項1から請求項13のうちいずれか1項に記載の電解セルと、
前記電解セルに前記電解液を供給する電解液供給部と、
前記電解セルに電圧を印加する電源部と、
を備えた電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電解セルおよび電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高分子電解質膜を挟む2つのガス拡散層(カソードおよびアノード)と、2つのガス拡散層の外側に配置されて、ガス拡散層と対向する面にガス流路が形成された第1,第2のセパレータとを備える燃料電池が開示されている。セパレータには、ガス流路を形成するリブである凸部とガス流路である凹部とが並列に形成され、セパレータは、ガス流路の一端にガス入口、他端にガス出口を有する。リブはガス拡散層に当接し直線状に形成され、ガス流路はガス拡散層から離間し直線状に形成され、ガス入口側をガス流れの上流側とし、ガス出口側をガス流れの下流側とし、反応ガスが各ガス流路を同一方向に流れる。ガス入口側のガス流路の底面下流端には、カソードに向かって突出する突起部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水酸化物イオン(OH-)を含む電解液を電解還元する電解セルの分野では、イオン交換膜の両面に1つずつ電極触媒層が配置され、各々の電極触媒層のイオン交換膜と反対の側には、給電体が設けられる。当該給電体を介して各々の電極触媒層に外部から電解液が供給された際、イオン交換膜を間に挟む2つの電極触媒層間で水酸化物イオン濃度に勾配が生じることがある。水酸化物イオンの濃度勾配に起因して、2つの電極触媒層間でドナン効果に基づく電位差が発生する結果、電解効率が低下してしまう場合がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、電解効率の向上を図ることができる電解セルおよび電解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る電解セルは第1面を有した第1セパレータと、前記第1セパレータとの間に収容空間を空けて配置され、前記第1面に対向する第2面を有した第2セパレータと、前記収容空間に配置されたイオン交換膜と、前記第1セパレータと前記イオン交換膜との間に配置された第1給電体と、前記第1給電体と前記イオン交換膜との間に配置された第1触媒層と、前記第2セパレータと前記イオン交換膜との間に配置された第2給電体と、前記第2給電体と前記イオン交換膜との間に配置された第2触媒層と、前記第1セパレータの一部として設けられ、または前記第1セパレータと前記第1給電体との間に設けられ、前記第1面に沿って第1方向に流れる電解液の少なくとも一部の流れ方向を、前記第1方向における複数の位置の各々で、前記第1面とは交差する第2方向に変化させる流れ方向変化部と、を備えている。
【0007】
本開示に係る電解装置は、上記電解セルと、前記電解セルに電解液を供給する電解液供給部と、前記電解セルに電圧を印加する電源部と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電解効率の向上を図ることができる電解セルおよび電解装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る電解装置の全体構成を示す概略構成図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る電解セルを模式的に示す図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係る電解セルを模式的に示す分解斜視図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係る電解セルを示す断面図である。
【
図5】
図2中および
図4中のV-V線方向から陽極セパレータ本体の第2内面を見た図である。
【
図6】
図5中のVI-VI線方向から陽極セパレータ本体、流れ方向変化部、陽極給電体、陽極触媒層、およびイオン交換膜のそれぞれの断面を見た図である。
【
図7】本開示の第1実施形態に係る陽極セパレータ本体、流れ方向変化部(陽極セパレータの一部)、膜電極接合体、流れ方向変化部(陰極セパレータの一部)、および陰極セパレータ本体のそれぞれの断面を見た図であり、
図6で示した部分に対応した図である。
【
図8】本開示の第2実施形態に係る陽極セパレータ本体、流れ方向変化部、陽極給電体、陽極触媒層、およびイオン交換膜のそれぞれの断面を見た図であり、
図6で示した部分に対応した図である。
【
図9】本開示の第3実施形態に係る陽極セパレータ本体、流れ方向変化部、陽極給電体、陽極触媒層、およびイオン交換膜のそれぞれの断面を見た図であり、
図6で示した部分に対応した図である。
【
図10】本開示の第4実施形態に係る陽極セパレータ本体の第2内面を見た図であり、
図5で示した部分に対応した図である。
【
図11】本開示の第5実施形態に係る電解セルを模式的に示す図であり、
図2で示した部分に対応した図である。
【
図12】
図11中のXII-XII線方向から陽極セパレータ本体の第2内面を見た図である。
【
図13】
図12中のXIII-XIII線方向から陽極セパレータ本体、流れ方向変化部、陽極給電体、陽極触媒層、およびイオン交換膜のそれぞれの断面を見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態に係る電解装置1を説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。本明細書中の「対向する」とは、ある方向で見た場合に2つの部材が重なることを意味し、上記2つの部材の間に別の部材(例えば別の層)が存在する場合も含み得る。
【0011】
先に
図4を参照し、Z方向、X方向、およびY方向を定義する。Z方向は、後述する陰極セパレータ41から陽極セパレータ42に向かう方向(
図4中の左右方向、後述の第2方向D2)である。また、Z方向は、後述する膜電極接合体43のイオン交換膜50、陰極触媒層54、陰極給電体55、陽極触媒層56、および陽極給電体57が層構造を成した時の積層方向でもある。X方向は、Z方向とは交差する(例えば直交する)方向であり、膜電極接合体43の中央部Cから膜電極接合体43の一端部に向かう方向(
図4中の上下方向、後述の第1方向D1)である。Y方向は、Z方向およびX方向とは交差する(例えば直交する)方向であり、例えば
図4における紙面奥行方向(後述の第3方向D3)である。本明細書中の「面積」とは、Z方向で見た場合における面積(すなわちX方向およびY方向に広がる面積)を意味する。また、本明細書中の「外形サイズ」とは、Z方向で見た場合における外形サイズを意味する。すなわち「外形サイズ」と「面積」は、実質的に同じものを意味する場合があり、適宜互いに読み替えられてもよい。
【0012】
<電解装置の第1実施形態>
図1は、第1実施形態の電解装置1の全体構成を示す概略構成図である。本実施形態では、電解装置1は、電解液Esに含まれる水(H
2O)を電気分解することで水素(H
2)を生成する装置(電気分解装置)である。なお、電解装置1は、水を電気分解して水素を生成する構成に限定されることはなく、例えば、電解液Esに含まれる有機物・無機物の生成や精製、あるいは所定の物質の濃縮などを目的として電解液Esを電気分解する装置であってもよい。また、本実施形態では、電解装置1は、例えば、アニオン交換膜(AEM:Anion Exchange Membrane)式の装置である。ただし、電解装置1は、アニオン交換膜式に限定されることはなく、プロトン交換膜(PEM:Polymer Electrolyte Membrane)式の装置であってもよい。
図1に示すように、電解装置1は、例えば、電解セルスタック10と、電解液供給部20と、電源部30とを備えている。
【0013】
(電解セルスタック)
電解セルスタック10は、複数の電解セル11の集合体である。電解セルスタック10は、例えば、複数の電解セル11が一方向に並べられることで形成される。各々の電解セル11は、陰極室Saと、陽極室Sbとを含む。電解セル11については、詳しく後述する。
【0014】
(電解液供給部)
電解液供給部20は、各々の電解セル11に電解液Esを供給する供給部である。電解液Esは、例えば、純水あるいはアルカリ水溶液である。本実施形態における電解液Esには、アルカリ水溶液として水酸化カリウム(KOH)水溶液が採用される。電解液供給部20は、陰極側供給部20aと、陽極側供給部20bとを含む。
【0015】
陰極側供給部20aは、各々の電解セル11の陰極室Saに電解液Esを供給する供給部である。陰極側供給部20aは、例えば、水素気液分離装置21、第1ポンプ22、水素回収部23、第1電解液供給部24、および配管ラインL1,L2を含む。複数の電解セル11を積層した電解セルスタック10では、例えば、各々の電解セル11を互いに連結したマニホールドと呼ばれる電解セル11内の配管構造に配管ラインL1,L2を接続し、配管ラインL1側では電解液を供給し、配管ラインL2側では電解液と生成した水素を排出する。
【0016】
水素気液分離装置21は、電解液Esを貯留する。水素気液分離装置21の供給口は、配管ラインL1を介して電解セル11の陰極室Saに接続される。第1ポンプ22は、配管ラインL1の途中に設けられ、水素気液分離装置21に貯留された電解液Esを電解セル11の陰極室Saに向けて送る。
【0017】
水素気液分離装置21の戻り口は、配管ラインL2を介して電解セル11の陰極室Saに接続される。水素気液分離装置21には、電解セル11で生成された水素を含む電解液Esが電解セル11から流入する。水素気液分離装置21は、電解液Esに含まれる水素を分離する気液分離部を有している。水素気液分離装置21により電解液Esから分離された水素は、水素回収部23によって回収される。水素気液分離装置21には、第1電解液供給部24から電解液Esが補充される。
【0018】
一方で、陽極側供給部20bは、各々の電解セル11の陽極室Sbに電解液Esを供給する供給部である。陽極側供給部20bは、例えば、酸素気液分離装置26、第2ポンプ27、酸素回収部28、第2電解液供給部29、および配管ラインL3,L4を含む。複数の電解セル11を積層した電解セルスタック10では、例えば、各々の電解セル11を互いに連結したマニホールドと呼ばれる電解セル11内の配管構造に配管ラインL3,L4を接続し、配管ラインL3側では電解液を供給し、配管ラインL4側では電解液と生成した酸素を排出する。
【0019】
酸素気液分離装置26は、電解液Esを貯留する。酸素気液分離装置26の供給口は、配管ラインL3を介して電解セル11の陽極室Sbに接続される。第2ポンプ27は、配管ラインL3の途中に設けられ、酸素気液分離装置26に貯留された電解液Esを電解セル11の陽極室Sbに向けて送る。
【0020】
酸素気液分離装置26の戻り口は、配管ラインL4を介して電解セル11の陽極室Sbに接続される。酸素気液分離装置26には、電解セル11で生成された酸素(O2)を含む電解液Esが電解セル11から流入する。酸素気液分離装置26は、電解液Esに含まれる酸素を分離する気液分離部を有している。酸素気液分離装置26により電解液Esから分離された酸素は、酸素回収部28によって回収される。酸素気液分離装置26には、第2電解液供給部29から電解液Esが補充される。
【0021】
(電源部)
電源部30は、電解セル11に電圧を印加する直流電源装置である。電源部30は、電解セル11の陰極47と陽極48(
図2参照、後述)との間に、電解液Esの電気分解に必要な直流電圧を印加する。複数の電解セル11を積層した電解セルスタック10では、例えば、電解セルスタック10の両端の電極に電源部30からの電線が接続され、必要直流電流と積層段数の倍数で必要電圧が印加され、必要電力が供給される。なお、本実施形態では、下記式(i)が成立する。
(1つの電解セル11に必要な電解電流(A))×(1つの電解セル11に必要な電解電圧(V))×(積層した電解セル11の数)=供給電力(W) …(i)
【0022】
(電解セルの構成)
電解セル11は、外部から入力された電気エネルギーにより、電解液Esに含まれる水の電気分解を引き起こして水素を生成する装置(水電解セル)である。なお、電解セル11は、水を電気分解して水素を生成する装置に限定されることはなく、例えば、二酸化炭素(CO
2)を電解還元するなど、異なるタイプの装置であってもよい。
図2は、電解セル11を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、電解セル11は、例えば、陰極セパレータ41、陽極セパレータ42、および膜電極接合体43を含む。
【0023】
(陰極セパレータ)
陰極セパレータ41は、電解セル11の収容空間Sの一方の面を規定する部材である。収容空間Sは、後述する陰極室Saおよび陽極室Sbを含む空間である。陰極セパレータ41は、例えば、矩形の板状であり、ステンレスやチタン(Ti)、ニッケル(Ni)などの金属部材、または導電性カーボン板やモールド樹脂で封止された導電性カーボン板などにより形成される。陰極セパレータ41には、例えば、後述する第1集電体61(
図3参照)を介して電源部30からマイナス電圧が印加される。陰極セパレータ41は、「第1セパレータ」または「第2セパレータ」の一例である。また、本実施形態では、陰極セパレータ41は、陰極セパレータ本体410を有している。陰極セパレータ本体410は、「セパレータ本体」の一例である。
【0024】
陰極セパレータ本体410は、第1セパレータ端部41e1と、第1セパレータ端部41e1とは反対側に位置した第2セパレータ端部41e2とを有している。陰極セパレータ本体410の第1セパレータ端部41e1には、上述した配管ラインL1が接続される。陰極セパレータ本体410の第2セパレータ端部41e2には、上述した配管ラインL2が接続される。
【0025】
陰極セパレータ本体410は、後述する陰極室Saに面する第1内面41a、および当該第1内面41aとは反対側を向く面41bを含む。第1内面41aには、配管ラインL1から供給される電解液Esが流れる流路FPが形成されている。当該流路FPは、例えば、第1内面41aから凹むように設けられた複数の溝40dにより規定されている。陰極セパレータ本体410は、第1内面41aから第2方向D2に凹む複数(例えば数十)の溝40dを有している。なお、
図2中では、8つの溝40dを模式的に示している。第2方向D2は、第1内面41aに交差する方向(本実施形態では第1内面41aに直交する方向)であり、第1内面41aと上記面41bとが並ぶ方向でもある。各々の溝40dは、例えば、0.4mm以上、2.0mm以下の深さ(
図7中に示す寸法Lh1)で形成されている。各々の溝40dは、第1方向D1に沿って延びている。本実施形態では、第1方向D1は、例えば、第1セパレータ端部41e1と第2セパレータ端部41e2とが並ぶ方向に直交する方向(第2方向D2に直交する方向)である。また、第1方向D1は、流路FPを流れる電解液Esの流れ方向の1つである。以下、説明の便宜上、電解液Esの流れ方向の1つである第1方向D1(
図2中の上下方向)における一方側(
図2中の紙面手前側)を「上流側D1u」と称し(図示の便宜上、
図2中では符号省略。
図4も参照)、上流側D1uとは反対側(
図2中の紙面奥行側)を「下流側D1d」と称する(図示の便宜上、
図2中では符号省略。
図4も参照)。複数の溝40dは、第1方向D1および第2方向D2のそれぞれに交差する第3方向D3に互いに間隔をあけて並んで配置されている。本実施形態では、第3方向D3は、第1方向D1および第2方向D2のそれぞれに対して直交する方向である。複数の溝40dは、第3方向D3で互いに等しい間隔をあけて配置されている。当該溝40dにより規定された流路FPを第1方向D1に流れた電解液Esは、配管ラインL2を通じて電解セル11の外部(例えば
図1中に示した水素気液分離装置21)に排出される。陰極セパレータ本体410に形成された溝40dの構成については、詳しく後述する。第1内面41aは、「第1面」または「第2面」の一例である。第1内面41aは、陰極セパレータ41が第1セパレータの一例である場合に、第1面の一例である。一方、第1内面41aは、陰極セパレータ41が第2セパレータの一例である場合に、第2面の一例である。
【0026】
なお、
図2に示される各構造(例えば電解液Esの流路構造など)は、あくまで例示であり、本実施形態の内容を限定するものではない。例えば、流路構造は、装置の大きさや目的、使用環境などに応じて種々の構造が利用可能である。これは、他の図で示される各構造についても同様である。
【0027】
(陽極セパレータ)
陽極セパレータ42は、陰極セパレータ41の少なくとも一部との間に収容空間Sを空けて配置され、収容空間Sの他方の面を規定する部材である。陽極セパレータ42は、例えば、矩形の板状であり、ステンレスやチタン、ニッケルなどの金属部材、または導電性カーボン板やモールド樹脂で封止された導電性カーボン板などにより形成される。陽極セパレータ42には、後述する第2集電体62(
図3参照)を介して電源部30からプラス電圧が印加される。同じ電解セル11に含まれる陽極セパレータ42と陰極セパレータ41とは、一対のセパレータとして当該電解セル11の電解槽40を形成する。陽極セパレータ42は、「第1セパレータ」または「第2セパレータ」の一例である。陽極セパレータ42は、陰極セパレータ41が第1セパレータの一例である場合に、第2セパレータの一例である。一方、陽極セパレータ42は、陰極セパレータ41が第2セパレータの一例である場合に、第1セパレータの一例である。また、陽極セパレータ42は、陽極セパレータ本体420を有している。陽極セパレータ本体420は、「セパレータ本体」の一例である。
【0028】
陽極セパレータ本体420は、第1セパレータ端部42e1(例えば下端部)と、第1セパレータ端部42e1とは反対側に位置した第2セパレータ端部42e2(例えば上端部)とを有している。陽極セパレータ本体420の第1セパレータ端部42e1には、上述した配管ラインL3が接続される。陽極セパレータ本体420の第2セパレータ端部42e2には、上述した配管ラインL4が接続される。
【0029】
陽極セパレータ本体420は、後述する陽極室Sbに面する第2内面42a、および当該第2内面42aとは反対側を向く面42bを含む。第2内面42aには、配管ラインL3から供給される電解液Esが流れる流路FPが形成されている。当該流路FPは、例えば、第2内面42aから凹むように設けられた複数の溝40dにより規定されている。陽極セパレータ本体420は、第2内面42aから第2方向D2(第2内面42aに直交する方向)に凹む複数(例えば数十)の溝40dを有している。陽極セパレータ本体420の各々の溝40dは、例えば、0.4mm以上、2.0mm以下の深さ(
図6中および
図7中に示す寸法Lh1)で形成されている。本実施形態では、陽極セパレータ本体420の各々の溝40dは、陰極セパレータ本体410の各々の溝40dの深さと同じである。また、陽極セパレータ本体420に形成された溝40dの数は、陰極セパレータ本体410に形成された溝40dの数と等しい。陽極セパレータ本体420が有する各々の溝40dは、第1方向D1に沿って延びている。複数の溝40dは、第3方向D3で互いに等しい間隔をあけて並んで配置されている(
図5参照)。当該溝40dにより規定された流路FPを流れた電解液Esは、配管ラインL4を通じて電解セル11の外部(例えば
図1中に示した酸素気液分離装置26)に排出される。陽極セパレータ本体420に形成された溝40dの構成については、詳しく後述する。第2内面42aは、「第1面」または「第2面」の一例である。第2内面42aは、陽極セパレータ42が第1セパレータの一例である場合に、第1面の一例である。一方、第2内面42aは、陽極セパレータ42が第2セパレータの一例である場合に、第2面の一例である。
【0030】
なお、ここでは説明の便宜上、陰極セパレータ本体410の第1内面41aが流路用の溝40dを有し、陽極セパレータ本体420の第2内面42aが流路用の溝40dを有する構成について説明している。しかしながら、例えば電解セルスタック10(
図1参照)に含まれる電解セル11の陰極セパレータ本体410は、第1内面41aに加えて第1内面41aとは反対側の面41bにも同様の流路用の溝40d(
図2中に二点鎖線で示す)を有したバイポーラプレートでもよい。また、電解セルスタック10に含まれる電解セル11の陽極セパレータ42は、第2内面42aに加えて第2内面42aとは反対側の面42bにも同様の流路用の溝40d(
図2中に二点鎖線で示す)を有したバイポーラプレートでもよい。なお、陰極セパレータ41の両面および陽極セパレータ42の両面に設けられる流路用の溝40dは、互いに形状や配置などが異なってもよい。
【0031】
(膜電極接合体の構成)
膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)43は、イオン交換膜、触媒、および給電体が組み立てられた構造体である。
図2に示すように、膜電極接合体43は、陰極セパレータ41と陽極セパレータ42との間に配置され、収容空間Sに位置する。膜電極接合体43は、例えば、イオン交換膜50、陰極触媒層54、陰極給電体55、陽極触媒層56、および陽極給電体57を含む。
【0032】
(イオン交換膜)
イオン交換膜50は、イオンを選択透過させる膜である。イオン交換膜50は、例えば、固体高分子電解質膜である。イオン交換膜50は、例えば、水酸化物イオン(OH-)伝導性のあるアニオン交換膜(AEM)である。ただし、イオン交換膜50は、上記例に限定されることはなく、上記例とは異なるタイプの例えばプロトン交換膜(PEM)であってもよい。
【0033】
イオン交換膜50は、例えば、矩形のシート状であり、可撓性を有している。イオン交換膜50の外形サイズは、陰極セパレータ41の外形サイズまたは陽極セパレータ42の外形サイズよりも小さい。イオン交換膜50は、陰極セパレータ41と陽極セパレータ42との間に配置され、上述した収容空間Sに位置する。
【0034】
イオン交換膜50は、陰極セパレータ本体410の第1内面41aと対向する第1交換膜面50aと、第1交換膜面50aとは反対側に位置した第2交換膜面50bとを有している。第2交換膜面50bは、陽極セパレータ本体420の第2内面42aと対向する。収容空間Sで、イオン交換膜50の第1交換膜面50aと陰極セパレータ本体410の第1内面41aとの間には、陰極室Saが規定される。また、収容空間Sで、イオン交換膜50の第2交換膜面50bと陽極セパレータ本体420の第2内面42aとの間には、陽極室Sbが規定される。
【0035】
陰極室Saでは、電解セル11に電圧が印加される場合に、下記(化1)に示す化学反応が生じ、電解液Esから水素が生成される。なお、本明細書中の「XXが生成される」とは、XXの生成に伴って他の物質が同時に生成される場合も含み得る。陰極室Saで生成された水酸化物イオンは、膜電極接合体43を通過して陰極室Saから陽極室Sbに移動する。
2H2O+2e-→H2+2OH- …(化1)
【0036】
陽極室Sbでは、電解セル11に電圧が印加される場合に、下記(化2)に示す化学反応が生じ、電解液Esから酸素が生成される。
2OH-→1/2O2+H2O+2e- …(化2)
【0037】
これにより、電解セル11全体で見た場合は、下記(化3)に示す化学反応が生じる。
H2O→H2+1/2O2 …(化3)
【0038】
イオン交換膜50は、イオン伝導率が比較的高い膜の一例として、主鎖にポリスチレン系またはテトラフェニル系の組成を含み、側鎖にイミダゾリウム基または4級アンモニウム基を含んでよい。一方、これに代えて、イオン交換膜50は、耐酸化性が比較的高い膜の一例として、ポリスルフォン系またはブロモブチルスチレン系の組成を含んでもよい。
【0039】
(陰極触媒層)
陰極触媒層54は、上述した陰極室Saでの化学反応を促進する層(電極触媒層)である。陰極触媒層54は、例えば、矩形のシート状である。本実施形態では、陰極触媒層54の外形サイズは、例えば、イオン交換膜50の外形サイズよりも小さく形成されている。陰極触媒層54は、陰極室Saに配置されて、イオン交換膜50の第1交換膜面50aに設けられている。陰極触媒層54には、イオン交換膜50とは反対側から後述の陰極給電体55が接続されている。陰極触媒層54は、第1セパレータおよび陰極給電体55を介して電源部30からマイナス電圧が印加され、電解セル11の陰極47の一部として機能する。陰極触媒層54は、「第1触媒層」または「第2触媒層」の一例である。陰極触媒層54は、陰極セパレータ41が第1セパレータの一例である場合に、第1触媒層の一例である。一方、陰極触媒層54は、陰極セパレータ41が第2セパレータの一例である場合に、第2触媒層の一例である。
【0040】
陰極触媒層54の材質としては、上述した陰極室Saでの化学反応を促進する材質であればよく、種々の材質が利用可能である。例えば、陰極触媒層54は、ニッケル、ニッケル合金、セリウム酸化物、ランタン酸化物、または白金(Pt)のうち1つ以上を含む。なお、本明細書中の「〇〇酸化物」は、〇〇および酸素以外の別材料を含み得る。なお、陰極触媒層54は、上述した材料に加えて、例えばカーボンなどの別材料を含んでもよい。
【0041】
(陰極給電体)
陰極給電体55は、陰極セパレータ41に印加された電圧を陰極触媒層54に伝える電気接続部である。陰極給電体55は、陰極室Saに配置されている。陰極給電体55は、陰極セパレータ本体410の第1内面41aと陰極触媒層54との間に位置して、陰極セパレータ本体410の第1内面41aおよび陰極触媒層54の双方に接している。すなわち、陰極触媒層54は、陰極給電体55におけるイオン交換膜50側を向く面に形成されている。以下、説明の便宜上、陰極給電体55における陰極触媒層54に接する面を「第1陰極面55a」と称し、陰極給電体55における陰極セパレータ本体410に接する面を「第2陰極面55b」と称する場合がある。陰極給電体55は、「第1給電体」または「第2給電体」の一例である。陰極給電体55は、陰極セパレータ41が第1セパレータの一例である場合に、第1給電体の一例である。一方、陰極給電体55は、陰極セパレータ41が第2セパレータの一例である場合に、第2給電体の一例である。
【0042】
陰極給電体55は、内部を電解液Esとガスが通過可能な構造を有している。陰極給電体55は、例えば、金属製のメッシュ構造体、焼結体、ファイバー、または導電性カーボン繊維のメッシュ構造体、不織布などにより形成される。陰極給電体55は、所定の空隙率を有している。本実施形態では、陰極給電体55の外形サイズは、陰極触媒層54の外形サイズと同じである。陰極触媒層54と陰極給電体55とにより、電解セル11の陰極47が形成されている。
【0043】
(陽極触媒層)
陽極触媒層56は、上述した陽極室Sbでの化学反応を促進する層(電極触媒層)である。陽極触媒層56は、例えば、矩形のシート状である。本実施形態では、陽極触媒層56の外形サイズは、例えば、イオン交換膜50の外形サイズよりも小さく形成されている。陽極触媒層56は、陽極室Sbに配置されて、イオン交換膜50の第2交換膜面50bに設けられている。陽極触媒層56には、イオン交換膜50とは反対側から後述の陽極給電体57が接続されている。陽極触媒層56は、陽極セパレータ42および陽極給電体57を介して電源部30からプラス電圧が印加され、電解セル11の陽極48の一部として機能する。なお、陽極触媒層56は、例えば陰極触媒層54と同じ厚さに形成されている。陽極触媒層56は、「第1触媒層」または「第2触媒層」の一例である。陽極触媒層56は、陽極セパレータ42が第1セパレータの一例である場合に、第1触媒層の一例である。一方、陽極触媒層56は、陽極セパレータ42が第2セパレータの一例である場合に、第2触媒層の一例である。
【0044】
陽極触媒層56の材質としては、上述した陽極室Sbでの化学反応を促進する材質であればよく、種々の材質が利用可能である。例えば、陽極触媒層56は、ニッケル、ニッケル合金、ニッケル酸化物、銅酸化物、イリジウム酸化物、ニオブ酸化物、鉛酸化物、またはビスマス酸化物のうち1つ以上を含む。上述したように、本明細書中の「XX酸化物」は、XXおよび酸素以外の別材料を含み得る。例えば、「ニッケル酸化物」は、ニッケルおよび酸素の他に、鉄(Fe)やコバルト(Co)などの別材料を含み得る。また、「銅酸化物」は、銅(Cu)および酸素の他に、コバルトなどの別材料を含み得る。「イリジウム酸化物」は、イリジウム(Ir)および酸素の他に、ルテニウム(Ru)などの別材料を含み得る。「鉛酸化物」は、鉛(Pb)および酸素の他に、ルテニウムなどの別材料を含み得る。「ビスマス酸化物」は、ビスマス(Bi)および酸素の他に、ルテニウムなどの別材料を含み得る。なお、陽極触媒層56は、上述した材料に加えて、例えばカーボンなどの別材料を含んでもよい。
【0045】
(陽極給電体)
陽極給電体57は、陽極セパレータ42に印加された電圧を陽極触媒層56に伝える電気接続部である。陽極給電体57は、陽極室Sbに配置されている。陽極給電体57は、陽極セパレータ本体420の第2内面42aと陽極触媒層56との間に位置して、第2セパレータの第2内面42aおよび陽極触媒層56の双方に接している。すなわち、陽極触媒層56は、陽極給電体57におけるイオン交換膜50側を向く面に形成されている。以下、説明の便宜上、陽極給電体57における陽極触媒層56に接する面を「第1陽極面57a」と称し、陽極給電体57における陽極セパレータ本体420に接する面を「第2陽極面57b」と称する場合がある。陽極給電体57は、「第1給電体」または「第2給電体」の一例である。陽極給電体57は、陽極セパレータ42が第1セパレータの一例である場合に、第1給電体の一例である。一方、陽極給電体57は、陽極セパレータ42が第2セパレータの一例である場合に、第2給電体の一例である。
【0046】
陽極給電体57は、内部を電解液Esとガスが通過可能な構造を有している。陽極給電体57は、例えば、金属製のメッシュ構造体、焼結体、ファイバー、または導電性カーボン繊維のメッシュ構造体、不織布などにより形成される。陽極給電体57は、所定の空隙率を有している。本実施形態では、陽極給電体57は、例えば、陰極給電体55が有する空隙率と同じ空隙率を有している。本実施形態では、陽極給電体57の外形サイズは、陽極触媒層56の外形サイズと同じである。陽極触媒層56と陽極給電体57とにより、電解セル11の陽極48が形成されている。
【0047】
図3は、電解セル11を模式的に示す分解斜視図である。電解セル11は、上述した構成に加えて、例えば、第1集電体61、第2集電体62、第1絶縁体63、第2絶縁体64、第1絶縁材65、第2絶縁材66、第1エンドフランジ67、および第2エンドフランジ68を更に含む。なお
図3中では、図示の便宜上、後述する支持部70、および封止部80の図示は省略している。
【0048】
(第1集電体)
第1集電体61は、電源部30から印加されるマイナス電圧を陰極セパレータ41に伝える電気接続部である。第1集電体61は、金属製の板部材(例えば銅板)である。第1集電体61は、例えば、電解セル11の収容空間S(
図2参照)とは反対側から陰極セパレータ41に接し、陰極セパレータ41に電気的に接続される。第1集電体61には、電解セル11での電気分解に必要なマイナス電圧が電源部30から印加される。なお、第1集電体61は、電解セルスタック10中で互いに隣り合う2つの電解セル11によって共有されてもよい。
【0049】
(第2集電体)
第2集電体62は、電源部30から印加されるプラス電圧を陽極セパレータ42に伝える電気接続部である。第2集電体62は、金属製の板部材(例えば銅板)である。第2集電体62は、例えば、電解セル11の収容空間S(
図2参照)とは反対側から陽極セパレータ42に接し、陽極セパレータ42に電気的に接続される。第2集電体62には、電解セル11での電気分解に必要なプラス電圧が電源部30から印加される。なお、第2集電体62は、電解セルスタック10中で互いに隣り合う2つの電解セル11によって共有されてもよい。
【0050】
(第1絶縁体)
第1絶縁体63は、陽極セパレータ42の外周部と陰極セパレータ41の外周部との間を絶縁する部材である。第1絶縁体63は、陰極触媒層54の外形、および陰極給電体55の外形よりもひと回り大きな枠状のシート部材である。第1絶縁体63は、陰極セパレータ本体410の第1内面41aに取り付けられ、第1内面41aの端部を覆う(
図4参照)。第1絶縁体63の材質は、絶縁材料であれば特に限定されることはなく、例えばPTFEなどのシート状樹脂である。
【0051】
(第2絶縁体)
第2絶縁体64は、第1絶縁体63と同様に、陰極セパレータ41の外周部と陽極セパレータ42の外周部との間を絶縁する部材である。第2絶縁体64は、陽極触媒層56の外形、および陽極給電体57の外形よりもひと回り大きな枠状のシート部材である。第2絶縁体64は、陽極セパレータ本体420の第2内面42aに取り付けられ、第2内面42aの端部を覆う(
図4参照)。第2絶縁体64の材質は、絶縁材料であれば特に限定されることはなく、例えばPTFEなどのシート状樹脂である。また、第1絶縁体63と第2絶縁体64は、一体化された絶縁体であってもよい。
【0052】
(第1絶縁材)
図3の第1絶縁材65は、第1集電体61と第1エンドフランジ67との間に位置する。第1絶縁材65の外形サイズは、例えば、第1集電体61の外形サイズと同じ、または第1集電体61の外形サイズよりも大きい。
【0053】
(第2絶縁材)
図3の第2絶縁材66は、第2集電体62と第2エンドフランジ68との間に位置する。第2絶縁材66の外形サイズは、例えば、第2集電体62の外形サイズと同じ、または第2集電体62の外形サイズよりも大きい。
【0054】
(第1エンドフランジ)
図3の第1エンドフランジ67は、電解セル11の収容空間S(
図2参照)に対して、第1絶縁材65とは反対側に位置する。第1エンドフランジ67は、例えば、金属製の板部材(例えばステンレス板)などにより形成されている。第1エンドフランジ67の外形サイズは、例えば、第1絶縁材65の外形サイズよりも大きい。
【0055】
(第2エンドフランジ)
図3の第2エンドフランジ68は、電解セル11の収容空間S(
図2参照)に対して、第2絶縁材66とは反対側に位置する。第2エンドフランジ68は、例えば、金属製の板部材(例えばステンレス板)などにより形成されている。第2エンドフランジ68の外形サイズは、例えば、第2絶縁材66の外形サイズよりも大きい。
【0056】
なお、電解セル11は、上述した構成に限定されない。例えば、電解セルスタック10が、複数の電解セル11が並べて配置されることで構成される場合、複数の電解セル11のなかで隣り合う2つの電解セル11は、それぞれバイポーラプレートである陰極セパレータ41または陽極セパレータ42を共有してもよい。この場合、隣り合う2つの電解セル11の間に、集電体(第1集電体61または第2集電体62)、絶縁体(第1絶縁体63または第2絶縁体64)、絶縁材(第1絶縁材65または第2絶縁材66)、エンドフランジ(第1エンドフランジ67または第2エンドフランジ68)が存在しなくてもよい。
【0057】
(電解セルの外周部の構造)
図4は、電解セル11を示す断面図である。本実施形態では、イオン交換膜50の外形サイズは、陰極触媒層54の外形サイズ、および陰極給電体55の外形サイズの各々よりも大きい。言い換えると、イオン交換膜50の面積は、陰極触媒層54の面積、および陰極給電体55の面積の各々よりも大きい。イオン交換膜50は、膜電極接合体43の厚さ方向(Z方向)とは直交する方向(例えばX方向またはY方向)で、陰極触媒層54および陰極給電体55よりも外側(外周側)に突出している。本明細書中の「外側」または「外周側」とは、膜電極接合体43の厚さ方向(Z方向)とは直交する方向(例えばX方向またはY方向)で、膜電極接合体43の中央部Cから離れる側を意味する。
【0058】
図4に示すように、電解セル11は、上述した構成に加えて、例えば、支持部70、および封止部80を更に含む。支持部70は、電解セル11の内部(具体的には陰極セパレータ41および陽極セパレータ42の間)で、膜電極接合体43を支持する部材である。封止部80は、陰極セパレータ41と陽極セパレータ42との間の収容空間Sを外周側から閉じる部材である。以下、これら支持部70および封止部80について説明する。
【0059】
(支持部)
支持部70は、陰極セパレータ41と陽極セパレータ42との間に配置されている。支持部70は、イオン交換膜50の外縁部50eよりも内側(内周側)に位置して、イオン交換膜50を支持する。本明細書中の「外縁部50e」とは、膜電極接合体43の厚さ方向(Z方向)とは直交する方向(例えばX方向またはY方向)で、膜電極接合体43の中央部Cから離れた縁部を意味する。また、本明細書中の「内側」または「内周側」とは、膜電極接合体43の中央部Cから見て内側(中央部Cに近い側)を意味する。本実施形態では、支持部70は、例えば、第1支持部71および第2支持部72を含む。第1支持部71は、陰極47側の支持部70であり、陰極セパレータ本体410の第1内面41aとイオン交換膜50の第1交換膜面50aとの間に配置されている。第1支持部71は、イオン交換膜50の外縁部50eよりも内側(内周側)に位置する。第1支持部71は、陰極47よりも外側(外周側)の位置で第1内面41a(または第1絶縁体63)と第1交換膜面50aとの間に挟まれて、第1内面41aに対してイオン交換膜50を支持する。第2支持部72は、陽極48側の支持部70であり、陽極セパレータ本体420の第2内面42aとイオン交換膜50の第2交換膜面50bとの間に配置されている。第2支持部72は、イオン交換膜50の外縁部50eよりも内側(内周側)に位置する。第2支持部72は、陽極48よりも外側(外周側)の位置で第2内面42aと第2交換膜面50bとの間に挟まれて、第2内面42aに対してイオン交換膜50を支持する。第1支持部71および第2支持部72は、いずれもイオン交換膜50の外縁部50eに沿う環状(例えば枠状)であって、イオン交換膜50の外縁部50eよりもひと回り小さな環状に形成されている。
【0060】
(封止部)
封止部80は、陰極セパレータ41と陽極セパレータ42との間に配置されている。封止部80は、イオン交換膜50の外縁部50eよりも外側(外周側)に位置して、電解セル11の収容空間Sを封止する。本実施形態では、封止部80は、第1封止部81および第2封止部82を含む。ただし、第1封止部81と第2封止部82とは、一体に形成されてもよい。すなわち、第1封止部81と第2封止部82とは、1つの部材であってもよい。また、封止部80は、上述した第1絶縁体63および第2絶縁体64のうち少なくとも一方と一体に形成されてもよい。第1封止部81は、陰極47側の封止部80である。第1封止部81は、イオン交換膜50の外縁部50eよりも外側(外周側)に位置する。第1封止部81は、陰極セパレータ本体410の第1内面41aと第2封止部82との間に挟まれて、収容空間Sの外周側の一部を封止する。本実施形態では、第1封止部81は、第1内面41aに取り付けられた第1絶縁体63と第2封止部82との間に挟まれている。第2封止部82は、陽極48側の封止部80である。第2封止部82は、イオン交換膜50の外縁部50eよりも外側に位置する。第2封止部82は、陽極セパレータ本体420の第2内面42aと第1封止部81との間に挟まれて、収容空間Sの外周側の一部を封止する。本実施形態では、第2封止部82は、第2内面42aに取り付けられた第2絶縁体64と第1封止部81との間に挟まれている。第1封止部81および第2封止部82は、いずれもイオン交換膜50の外縁部50eに沿う環状(例えば枠状)であって、イオン交換膜50の外縁部50eよりもひと回り大きな環状に形成される。当該封止部80により、収容空間Sから電解セル11の外部に電解液Esなどが漏出することがない。
【0061】
電解セル11は、上述した構成に加えて、流れ方向変化部44を更に含む。
図5は、
図2中および
図4中のV-V線方向から陽極セパレータ本体420の第2内面42aを見た図である。
図6は、
図5中のVI-VI線方向から陽極セパレータ本体420、流れ方向変化部44、陽極給電体57、陽極触媒層56、およびイオン交換膜50のそれぞれの断面を見た図である。
図5および
図6は、いずれも流れ方向変化部44を説明するための図である。以降では、
図5および
図6を参照して陽極セパレータ本体420が有する溝40dの内部に配置された流れ方向変化部44を説明するが、陰極セパレータ本体410が有する溝40dの内部に配置された流れ方向変化部44の構成も同様である。そのため、陰極セパレータ本体410が有する溝40dの内部に配置された流れ方向変化部44の説明は省略する場合がある。
【0062】
(流れ方向変化部)
本実施形態では、流れ方向変化部44は、陽極セパレータ42の一部として設けられて、第2内面42aに沿って第1方向D1に流れる電解液Esの少なくとも一部の流れ方向を、第1方向D1における複数の位置の各々で、第2内面42aとは交差(直交)する第2方向D2に変化させる。
【0063】
図5および
図6に示すように、本実施形態では、流れ方向変化部44は、陽極セパレータ本体420に形成された各々の溝40dの内部に配置されている。流れ方向変化部44は、陽極セパレータ本体420からイオン交換膜50に向けて突出した複数の突起440を含む。各々の突起440は、溝40dの内部の溝底面40sからイオン交換膜50に向けて突出している。複数の突起440は、第1方向D1で互いに離れて配置されている。本実施形態では、複数の突起440は、第1方向D1で互いに等しい間隔をあけて配置されている。また、各々の突起440の第1方向D1における寸法は、第1方向D1に隣り合う突起440同士の間隔と等しい。すなわち、
図6中に示す寸法Lw1と寸法Lw2とが互いに等しい。なお、複数の突起440は、例えば、陽極セパレータ42がプレス加工されることにより形成されている。
【0064】
以下、説明の便宜上、
図5中に示す第3方向D3に隣り合う複数の溝40dを、「第1溝40d1」と、当該第1溝40d1と第3方向D3で隣り合う「第2溝40d2」との2つに区別して称する。第1溝40d1と第2溝40d2とは、第3方向D3で交互に繰り返されて配置されている。また、第1溝40d1により規定された電解液Esの流路FPを「第1流路FP1」と称し、第2溝40d2により規定された電解液Esの流路FPを「第2流路FP2」と称する。また、第1溝40d1の内部に配置された第1方向D1に並ぶ複数の突起440を「第1突起441」と称し、第2溝40d2の内部に配置された第1方向D1に並ぶ複数の突起440を「第2突起442」と称する。また、陽極セパレータ本体420における、第1溝40d1を境にして両側に分かれて配置された2つの部分を「第1部分40p1」および「第2部分40p2」と称する。したがって、第1部分40p1と第2部分40p2とは、第3方向D3で交互に繰り返されて配置されている。同時に、第1部分40p1および第2部分40p2は、第2溝40d2を境にして両側に分かれて配置されている。第1部分40p1および第2部分40p2は、陽極セパレータ本体420の第2内面42aを含む。
【0065】
図6に示すように、各々の第1突起441は、第1方向D1における下流側D1dに進むに従い、第1溝40d1の内部で陽極セパレータ本体420からの突出量が徐々に大きくなるように形成された変化部44s、および当該変化部44sと陽極セパレータ本体420とを接続する接続部44tを含む。本実施形態では、これら変化部44sおよび接続部44tにより、第1突起441の表面が構成されている。本実施形態では、変化部44sは、溝底面40sに接続されて、当該溝底面40sに対して所定の角度を成した状態でイオン交換膜50側に向かって立ち上がる傾斜面である。傾斜面としての変化部44sは、例えば、溝底面40sに対して10°以上、60°以下の角度を成すように形成されている。より好ましくは、傾斜面としての変化部44sは、溝底面40sに対して30°以上、45°以下の角度を成すように形成されている。
接続部44tは、変化部44sの端部(上端)と溝底面40sとを接続する面であり、第1方向D1における下流側D1dを向いている。接続部44tは、例えば、溝底面40sに対して垂直を成すように形成されている。したがって、各々の第1突起441は、第3方向D3から見た断面視で、直角三角形状を成している。
【0066】
本実施形態では、各々の第1突起441の突出高さ(
図6中に示す寸法Lh2)は、第1溝40d1の深さ(
図6中に示す寸法Lh1)よりも小さい。すなわち、第1部分40p1および第2部分40p2は、複数の第1突起441が陽極給電体57から離れた状態で陽極給電体57に接する。具体的には、第1部分40p1の第2内面42aおよび第2部分40p2の第2内面42aは、第1突起441における変化部44sの端部(上端)から離れた状態で陽極給電体57の第2陽極面57bに接している。第2溝40d2(第2流路FP2)の内部に配置された第2突起442についても上述の第1溝40d1(第1流路FP1)の内部に配置された第1突起441と同じ構成であるため、その説明を省略する。本実施形態では、第2突起442は、第3方向D3で第1突起441と隣り合う位置に配置されている(
図5参照)。
【0067】
図7は、陽極セパレータ本体420、流れ方向変化部44(陽極セパレータ42の一部)、膜電極接合体43、流れ方向変化部44(陰極セパレータ41の一部)、および陰極セパレータ本体410のそれぞれの断面を見た図であり、
図6で示した部分に対応した図である。
図7に示すように、陰極セパレータ本体410の溝40dの内部にも、上述した流れ方向変化部44が配置される。本実施形態では、陰極セパレータ本体410の溝40dの内部に配置された突起440は、陽極セパレータ本体420の溝40dの内部に配置された突起440と第2方向D2で揃うように配置されている。なお、陰極セパレータ本体410の溝40dの内部に配置された突起440は、陽極セパレータ本体420の内部に配置された突起440と第2方向D2で揃わずに配置(例えば第1方向D1に関して千鳥状に配置されるなど)されてもよい。
【0068】
(作用・効果)
比較例として、流れ方向変化部44を備えていない電解セル11の構成について考える。当該構成では、イオン交換膜50の第1交換膜面50aに陰極触媒層54が設けられ、イオン交換膜50の第2交換膜面50bに陽極触媒層56が設けられる。陰極触媒層54のイオン交換膜50と反対側には、陰極給電体55が設けられ、陽極触媒層56のイオン交換膜50と反対側には、陽極給電体57が設けられる。これら陰極給電体55および陽極給電体57を介してそれぞれの電極触媒層(陰極触媒層54および陽極触媒層56)に外部から電解液Esが供給された際、イオン交換膜50を間に挟む陰極触媒層54および陽極触媒層56の間で水酸化物イオン濃度に勾配が生じることがある。当該水酸化物イオンの濃度勾配に起因して、陰極触媒層54および陽極触媒層56の間でドナン効果に基づく電位差が発生する結果、電解効率が低下してしまう場合がある。
【0069】
一方で、本実施形態では、電解セル11は、第1内面41aおよび第2内面42aに沿って第1方向D1に流れる電解液Esの少なくとも一部の流れ方向(
図6中に示す電解液流れEs2)を、第1方向D1における複数の位置の各々で、第1内面41aおよび第2内面42aとは直交する第2方向D2(
図6中に示す電解液流れEs1)に変化させる流れ方向変化部44を備えている。このような構成によれば、第1方向D1に流れる電解液Esの少なくとも一部は、陰極触媒層54および陽極触媒層56に向けて第2方向D2を流れるように流れ方向変化部44により案内される。このため、案内された電解液Esは、陰極給電体55の内部および陽極給電体57の内部における、陰極触媒層54および陽極触媒層56の近傍でこれらに電解されている電解液Esを入れ替えるように拡散させる。これにより、陰極触媒層54および陽極触媒層56の近傍における電解液Esの滞留を抑制することができる。したがって、陰極触媒層54および陽極触媒層56の間における水酸化物イオン濃度の勾配発生を抑制することができ、その結果、陰極触媒層54および陽極触媒層56の間でドナン効果に基づく電位差の発生を抑制することができるため、電解セル11の電解効率の低下を抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態では、流れ方向変化部44が溝40d(第1溝40d1および第2溝40d2)の内部に配置された複数の突起440(第1突起441および第2突起442)を含み、各々の突起440は、第1方向D1における下流側D1dに進むに従い、セパレータ本体(陰極セパレータ本体410および陽極セパレータ本体420)からの突出量が徐々に大きくように傾斜した傾斜面(変化部44s)を含む。これにより、溝40dの内部に傾斜面を設けるといった簡易な構成で流路FP(第1流路FP1および第2流路FP2)を第1方向D1に流れる電解液Esの少なくとも一部を、第2方向D2に向けて流すことができる。
【0071】
また、電解セル11のなかでは、電解還元に伴って気泡(
図6中および
図7中に示す気泡B)が発生する。具体的には、陰極47の側(陰極セパレータ41とイオン交換膜50との間)では水素を含む気泡が発生し、陽極48の側(陽極セパレータ42とイオン交換膜50との間)では酸素を含む気泡が発生する。陰極触媒層54および陽極触媒層56の近傍で電解還元に伴って発生した気泡の少なくとも一部は、陰極給電体55の内部および陽極給電体57の内部を第2方向D2に通過して、溝40d(第1溝40d1および第2溝40d2)により規定された流路FP(第1流路FP1および第2流路FP2)に移動することがある。
【0072】
本実施形態では、陰極セパレータ本体410および陽極セパレータ本体420は、いずれも第1方向D1とは交差した第3方向D3に並ぶ複数の溝40dの各々の両側に分かれて配置された第1部分40p1および第2部分40p2を有している(
図5参照)。溝40dの内部に配置された各々の突起440(第1突起441および第2突起442)の突出高さは、溝40dの深さよりも小さい(
図6および
図7参照)。つまり、第1部分40p1および第2部分40p2は、複数の突起440が給電体(陰極給電体55および陽極給電体57)から離れた状態で当該給電体に接している。このため、複数の突起440の各々と給電体との間には、隙間が存在する。これにより、流路FPに移動した気泡の少なくとも一部は、電解液Esの流れ(例えば
図6中に示す電解液流れEs2)にしたがって、突起440と給電体との間の隙間を通り抜けながら第1方向D1に流れることができる。したがって、電解還元に伴って発生した水素や酸素などの気泡を流路FPに滞留させることなく、効率的に回収することができる。
【0073】
また、発明者らは、本実施形態における電解セル11の運転時の圧力環境下(例えば大気圧下)では、電解還元に伴って発生する気泡の平均直径(平均気泡径)が、0.3mm以上、0.5mm以下になることを見出した。本実施形態では、複数の突起440の各々と給電体との間に形成される隙間の第2方向D2における寸法が0.3mmよりも大きくなるように突起440が形成される。好ましくは、複数の突起440の各々と、給電体との間に形成される隙間の第2方向D2における寸法が0.5mmよりも大きくなるように突起440が形成される。これにより、流路FPに移動した気泡の少なくとも一部は、電解液Esの流れ(例えば
図6中に示す電解液流れEs2)にしたがって、突起440と給電体との間の隙間を第1方向D1により通り抜けやすくなる。したがって、上記作用をより高精度に実現することができる。
【0074】
<電解装置の第2実施形態>
次に、電解装置1の第2実施形態について
図8を参照して説明する。
図8は、陽極セパレータ本体420、流れ方向変化部44、陽極給電体57、陽極触媒層56、およびイオン交換膜50のそれぞれの断面を見た図であり、
図6で示した部分に対応した図である。本実施形態では、溝40d(第1溝40d1および第2溝40d2)の内部に配置された突起440(第1突起441および第2突起442)の変化部44sの形状が第1実施形態で説明した突起440の変化部44sの形状と異なる。
【0075】
本実施形態では、変化部44sは、溝底面40sに接続されて、第1方向D1における下流側D1dに進むに従い電解液Esの流れ方向(第1方向D1)における上流側D1uを向くように立ち上がっている。変化部44sは、例えば、第3方向D3から見た断面視で、所定の曲率を有した円弧状に形成された円筒面である。なお、変化部44sは、円筒面に限定されることはなく、第1方向D1における下流側D1dに進むに従い、電解液Esの流れ方向(第1方向D1)における上流側D1uを向くように立ち上がる面であればよい。
【0076】
(作用・効果)
上記構成によっても、第1実施形態で説明した作用と同様の作用を実現することができる。また、本実施形態では、突起440が第1実施形態で説明した傾斜面である場合と比較して、流路FPを第1方向D1に流れる電解液Esの少なくとも一部が、イオン交換膜50の第1交換膜面50aまたは第2交換膜面50bに対してより傾きが急な方向で案内される(
図8中に示す電解液流れEs1)。したがって、流れ方向変化部44により案内された電解液Esは、陰極給電体55の内部および陽極給電体57の内部における、陰極触媒層54および陽極触媒層56の近傍でこれらに電解されている電解液Esをより拡散させることができる。
【0077】
<電解装置の第3実施形態>
次に、電解装置1の第3実施形態について
図9を参照して説明する。
図9は、陽極セパレータ本体420、流れ方向変化部44、陽極給電体57、陽極触媒層56、およびイオン交換膜50のそれぞれの断面を見た図であり、
図6で示した部分に対応した図である。本実施形態では、溝40d(第1溝40d1および第2溝40d2)の内部に配置された突起440(第1突起441および第2突起442)の形状が第1実施形態で説明した突起440の形状と異なる。
【0078】
本実施形態では、第1溝40d1の内部に配置された各々の第1突起441は、溝底面40sから第2方向D2(イオン交換膜50側)に立ち上がるように形成されている。各々の第1突起441は、例えば、第3方向D3から見た断面視で、矩形(または台形状)に形成されている。第1突起441は、第1流路FP1内で電解液Esの流れ方向(第1方向D1)における上流側D1uを向く上流面440aと、当該上流面440aとは反対側(電解液Esの流れ方向(第1方向D1)における下流側D1d)を向く下流面440bと、これら上流面440aおよび下流面440bを第1方向D1に接続する接続面440cとを含む。接続面440cは、第2方向D2(イオン交換膜50側)を向いている。本実施形態では、上流面440a、下流面440b、および接続面440cにより、第1突起441の表面が構成されている。第2溝40d2(第2流路FP2)の内部に配置された第2突起442についても上述の第1溝40d1(第1流路FP1)の内部に配置された第1突起441と同じ構成であるため、その説明を省略する。また、陰極セパレータ本体410に形成された溝40dの内部に配置された流れ方向変化部44についても同様であるため、その説明を省略する。
【0079】
(作用・効果)
上記構成によれば、流路FPを第1方向D1に流れる電解液Esの少なくとも一部は、突起440の上流面440aに第1方向D1における上流側D1uからあたり、第2方向D2に導かれる。すなわち、上流面440aにあたった電解液Esは、イオン交換膜50の第1交換膜面50aまたは第2交換膜面50bに対して垂直な方向に案内される。したがって、第1実施形態で説明した作用と同様の作用を実現することができる。また、第1実施形態で説明した突起440と比較して、溝40dの内部に突起440をより容易に形成することができる。
【0080】
<電解装置の第4実施形態>
次に、電解装置1の第4実施形態について
図10を参照して説明する。
図10は、陽極セパレータ本体420の第2内面42aを見た図であり、
図5で示した部分に対応した図である。本実施形態では、第1溝40d1の内部および第2溝40d2の内部に配置された突起440同士の位置関係が第1実施形態、第2実施形態、および第3実施形態と異なる。
【0081】
図10に示すように、本実施形態では、各々の第1溝40d1の内部に配置された複数の第1突起441と、各々の第2溝40d2の内部に配置された複数の第2突起442とは、第1方向D1に関して千鳥状に配置されている。すなわち、本実施形態では、第1溝40d1の内部(第1流路FP1)に配置された各々の第1突起441に第3方向D3で隣り合う第2溝40d2の内部(第2流路FP2)の位置には、第2突起442が配置されていない。同時に、第2溝40d2の内部(第2流路FP2)に配置された各々の第2突起442に第3方向D3で隣り合う第1溝40d1の内部(第1流路FP1)の位置には、第1突起441が配置されていない。すなわち、複数の第1突起441に含まれる少なくとも2つの突起440と、複数の第2突起442に含まれる少なくとも2つの突起440とは、第1方向D1に関して千鳥状に配置されている。また、陰極セパレータ本体410に形成された溝40dの内部に配置された流れ方向変化部44についても同様であるため、その説明を省略する。
【0082】
(作用・効果)
第1流路FP1を流れる電解液Esのうち、第1突起441にあたることにより第2方向D2に流れ方向が変化した電解液Esは、第1方向D1に流れつつも陰極給電体55の内部および陽極給電体57の内部を通過して、第1部分40p1および第2部分40p2を第3方向D3に乗り越えた後、第2流路FP2に流入する。同様に、第2流路FP2を流れる電解液Esのうち、第2突起442にあたることにより第2方向D2に流れ方向が変化した電解液Esは、第1方向D1に流れつつも陰極給電体55および陽極給電体57の内部を通過して、第1部分40p1および第2部分40p2を第3方向D3に乗り越えた後、第1流路FP1に流入する。上記構成によれば、第1流路FP1から第2流路FP2に流入した電解液Esの少なくとも一部は、第2突起442にあたりやすいため、第2突起442にあたった電解液Esの流れ方向は、第2流路FP2内でも第2方向D2に変化する。また、第2流路FP2から第1流路FP1に流入した電解液Esの少なくとも一部は、第1突起441にあたりやすいため、第1突起441にあたった電解液Esの流れ方向は、第1流路FP1内でも第2方向D2に変化する。したがって、例えば、第1突起441と第2突起442とが第1方向D1に関して千鳥状に配置されていない場合と比較して、流れ方向変化部44により案内された電解液Esは、陰極給電体55の内部および陽極給電体57の内部における、陰極触媒層54および陽極触媒層56の近傍でこれらに電解されている電解液Esをより拡散させることができる。
【0083】
<電解装置の第5実施形態>
次に、電解装置1の第5実施形態について
図11から
図13を参照して説明する。
図11は、電解セル11を模式的に示す図であり、
図2で示した部分に対応した図である。
図12は、
図11中のXII-XII線方向から陽極セパレータ本体420の第2内面42aを見た図である。
図13は、
図12中のXIII-XIII線方向から陽極セパレータ本体420、流れ方向変化部44、陽極給電体57、陽極触媒層56、およびイオン交換膜50のそれぞれの断面を見た図である。第5実施形態では、陽極セパレータ本体420および陰極セパレータ本体410に設けられた流路FPの構成、および流れ方向変化部44の構成が第1実施形態で説明した流路FPおよび流れ方向変化部44の構成と異なる。
【0084】
図11に示すように、陰極セパレータ本体410の第1内面41aには、配管ラインL1から供給される電解液Esを配管ラインL2に向けて流すための凹部40d´が形成されている。陰極セパレータ本体410に形成された凹部40d´は、例えば、第1内面41aから第2方向D2に凹むように設けられている。同様に、陽極セパレータ本体420の第2内面42aには、配管ラインL3から供給される電解液Esを配管ラインL4に向けて流すための凹部40d´が形成されている。陽極セパレータ本体420に形成された凹部40d´は、例えば、第2内面42aから第2方向D2に凹むように設けられている。第1内面41aおよび第2内面42aは、「第1面」または「第2面」の一例である。第1内面41aは、陰極セパレータ41が第1セパレータの一例である場合に、第1面の一例である。一方、第1内面41aは、陰極セパレータ41が第2セパレータの一例である場合に、第2面の一例である。第2内面42aは、陽極セパレータ42が第1セパレータの一例である場合に、第1面の一例である。一方、第2内面42aは、陽極セパレータ42が第2セパレータの一例である場合に、第2面の一例である。
【0085】
図12および
図13に示すように、陽極セパレータ本体420に形成された凹部40d´の内部には、流れ方向変化部44が配置されている。流れ方向変化部44は、第2内面42aに沿って第1方向D1に流れる電解液Esの少なくとも一部の流れ方向を、第1方向D1における複数の位置の各々で、第2方向D2に変化させる。本実施形態では、流れ方向変化部44は、凹部40d´の内部に供給された電解液Esの流路FPを形成するための流路形成部材443である。すなわち、流路形成部材443は、陽極セパレータ本体420と、陽極給電体57との間に設けられている。流路形成部材443は、メッシュ構造体である。具体的には、メッシュ構造体は、例えばエキスパンドメタルのシートや、グレーチング状のシートなどが複数積層されることにより形成されている。流路形成部材443は、導電性を有しており、陽極セパレータ本体420と陽極給電体57とを電気的に接続している。また、メッシュ構造体の空隙率は、陽極給電体57および陰極給電体55の空隙率よりも大きい。
【0086】
凹部40d´の内部に供給された電解液Esは、流路形成部材443の内部を第1方向D1に流れる。この際、流路形成部材443の内部を流れる電解液Esは、流路形成部材443から抵抗を受ける。以下、流路形成部材443の内部を流れる電解液Esが流路形成部材443から受ける抵抗を「流路形成部材443の流路抵抗」と称する。本実施形態では、メッシュ構造体が有する複数の孔部の開口が、第2方向D2を向いている。これにより、流路FP内で、電解液Esが第2方向D2で受ける流路形成部材443の流路抵抗は、電解液Esが第1方向D1で受ける流路形成部材443の流路抵抗と比べて小さい。陰極セパレータ本体410に形成された凹部40d´の内部にも同様に上述した流れ方向変化部44が配置されている。当該流れ方向変化部44(流路形成部材443)は、陽極セパレータ本体420の凹部40d´に配置された流れ方向変化部44と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0087】
(作用・効果)
上記構成によれば、流れ方向変化部44としての流路形成部材443がメッシュ構造体であるため、流路形成部材443の内部を流れる電解液Esの一部は、第2方向D2に流れる。すなわち、流れ方向変化部44は、第1方向D1に流れる電解液Esの少なくとも一部の流れ方向(
図13中に示す電解液流れEs´)を、第1方向D1における複数の位置の各々で、第2方向D2(
図13中に示す電解液流れEs´)に変化させる。これにより、第1方向D1に流れる電解液Esの少なくとも一部は、陰極触媒層54および陽極触媒層56に向けて第2方向D2を流れるように流れ方向変化部44により案内されるため、案内された電解液Esは、陰極触媒層54および陽極触媒層56の近傍でこれらに電解されている電解液Esを入れ替えるように拡散させる。したがって、第1実施形態で説明した作用と同様の作用を実現することができる。
【0088】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0089】
例えば、第1実施形態から第4実施形態で説明した各々の突起440の表面には、撥水性の表面処理(例えばメッキ加工など)が施されてもよい。これにより、流路FPを流れる電解液Esが突起440の表面からはじかれやすくなる。そのため、流路FPを流れる電解液Esをより円滑に第2方向D2(イオン交換膜50側)に案内することができる。なお、溝底面40sにも撥水性の表面処理が施されてよい。つまり、溝40dの内部の空間を規定する内面のすべてにおいて撥水性の表面処理が施されてよい。
【0090】
また、第1実施形態から第4実施形態で説明した各々の突起440の、溝底面40sからの突出高さ(
図7中に示すLh2)は、例えば、溝40dの深さ(
図7中に示すLh1)の80%以上、90%以下であってもよい。
【0091】
また、第1実施形態から第4実施形態で説明した溝40dの内部に配置された突起440同士の第1方向D1における間隔(例えば
図7中に示す寸法Lw1)は、例えば、突起440の第1方向D1における寸法(
図7中に示す寸法Lw2)の1倍よりも大きく、125倍以下であってもよい。
また、突起440同士の第1方向D1における間隔(例えば
図7中に示す寸法Lw1)は、例えば、突起440の第2方向D2における寸法(
図7中に示す寸法Lh2)の10倍以上が好ましい。
これにより、流路FPを流れる電解液Esのうち、突起440を第1方向D1における下流側D1dに乗り越えた電解液Esの少なくとも一部(
図6中、
図7中、および
図8中に示す電解液流れEs3)が、溝底面40sに沿って流れることができる。このため、例えば、突起440を第1方向D1に乗り越えた電解液Esの少なくとも一部が突起440に案内された電解液Es(例えば電解液流れEs1)に合流して、合流先の電解液Esの流れ方向を変化させてしまうことを抑制することができる。
【0092】
また、第5実施形態で説明した流路形成部材443は、メッシュ構造体に代えて、導電性を有した多孔質体などであってもよい。この場合、多孔質体の空隙率は、陽極給電体57および陰極給電体55の空隙率よりも大きい。またこの場合、多孔質体における第2方向D2を向いている孔部の開口の数が第1方向を向いている孔部の開口の数よりも多い。つまり、電解液Esが第2方向D2で受ける流路形成部材443の流路抵抗が、電解液Esが第1方向D1で受ける流路形成部材443の流路抵抗と比べて小さい。
【0093】
<付記>
実施形態に記載の電解セル11および電解装置1は、例えば以下のように把握される。
【0094】
(1)第1の態様に係る電解セル11は、第1面(第1内面41a,第2内面42a)を有した第1セパレータ(陰極セパレータ41,陽極セパレータ42)と、前記第1セパレータとの間に収容空間Sを空けて配置され、前記第1面に対向する第2面(第1内面41a,第2内面42a)を有した第2セパレータ(陰極セパレータ41,陽極セパレータ42)と、前記収容空間Sに配置されたイオン交換膜50と、前記第1セパレータと前記イオン交換膜50との間に配置された第1給電体(陰極給電体55,陽極給電体57)と、前記第1給電体と前記イオン交換膜50との間に配置された第1触媒層(陰極触媒層54,陽極触媒層56)と、前記第2セパレータと前記イオン交換膜50との間に配置された第2給電体(陰極給電体55,陽極給電体57)と、前記第2給電体と前記イオン交換膜50との間に配置された第2触媒層(陰極触媒層54,陽極触媒層56)と、前記第1セパレータの一部として設けられ、または前記第1セパレータと前記第1給電体との間に設けられ、前記第1面に沿って第1方向D1に流れる電解液Esの少なくとも一部の流れ方向を、前記第1方向D1における複数の位置の各々で、前記第1面とは交差する第2方向D2に変化させる流れ方向変化部44(突起440,流路形成部材443)と、を備えている。
【0095】
これにより、第1方向D1に流れる電解液Esの少なくとも一部は、流れ方向変化部44により案内されて、第1触媒層に向けて第2方向D2に流れる。このため、案内された電解液Esは、第1給電体の内部における、第1触媒層の近傍で第1触媒層に電解されている電解液Esを入れ替えるように拡散させる。
【0096】
(2)第2の態様に係る電解セル11は、(1)の電解セル11であって、前記第1セパレータは、前記第1面を含むセパレータ本体(陰極セパレータ本体410,陽極セパレータ本体420)を有し、前記流れ方向変化部44は、前記セパレータ本体から前記イオン交換膜50に向けて突出した複数の第1突起441を含み、前記複数の第1突起441は、前記第1方向D1で互いに離れて配置されてもよい。
【0097】
これにより、第1方向D1における複数の位置の各々での電解液Esの流れ方向の変化が、第1方向D1で互いに離れて配置された複数の第1突起441により実現される。すなわち、より具体的な構成で上記作用を実現することができる。
【0098】
(3)第3の態様に係る電解セル11は、(2)の電解セル11であって、前記セパレータ本体は、前記第1方向D1に沿う第1流路FP1を規定する第1溝40d1を有し、前記複数の第1突起441は、前記第1溝40d1の内部に配置されてもよい。
【0099】
これにより、第1流路FP1に第1突起441が配置されるため、例えば第1突起441が第1溝40d1の内部に配置されない場合と比較して、第1流路FP1を流れる電解液Esの流れ方向をより円滑に変化させることができる。すなわち、上記作用をより高精度に実現することができる。
【0100】
(4)第4の態様に係る電解セル11は、(3)の電解セル11であって、前記セパレータ本体は、前記第1面に沿う方向であって前記第1方向D1とは交差した第3方向D3において前記第1溝40d1の両側に分かれて配置された第1部分40p1および第2部分40p2を有し、前記複数の第1突起441の突出高さは、前記第1溝40d1の深さよりも小さく、前記第1部分40p1および前記第2部分40p2は、前記複数の第1突起441が前記第1給電体から離れた状態で前記第1給電体に接してもよい。
【0101】
電解セル11のなかでは、電解還元に伴って気泡が発生する。第1触媒層の近傍で電解還元に伴って発生した気泡の少なくとも一部は、第1給電体の内部を第2方向D2に通過して、第1流路FP1に移動することがある。上記構成によれば、第1流路FP1において、複数の第1突起441の各々と第1給電体との間に隙間が存在する。そのため、第1流路FP1に移動した気泡の少なくとも一部は、電解液Esの流れにしたがって、上記隙間を通り抜けながら第1方向D1に流れることができる。したがって、電解還元に伴って発生した気泡を第1流路FP1に滞留させることなく効率的に回収することができる。
【0102】
(5)第5の態様に係る電解セル11は、(3)または(4)の電解セル11であって、前記複数の第1突起441の各々と前記第1給電体との間には、前記電解セル11の運転時の圧力環境下で前記第1セパレータと前記イオン交換膜50との間に生じる気泡の平均直径よりも大きな隙間が存在してもよい。
【0103】
これにより、第1流路FP1に移動した気泡の少なくとも一部は、電解液Esの流れにしたがって、第1突起441と第1給電体との間の隙間をより通り抜けやすくなる。したがって、上記作用をより高精度に実現することができる。
【0104】
(6)第6の態様に係る電解セル11は、(3)から(5)のうちいずれか1つの電解セル11であって、前記複数の第1突起441の各々は、前記第1方向D1に進むに従い前記セパレータ本体からの突出量が徐々に大きくなるように形成された変化部44sを含んでもよい。
【0105】
これにより、上記変化部44sを第1溝40d1の内部に設けるといった簡易な構成で第1流路FP1を第1方向D1に流れる電解液Esの少なくとも一部を、第2方向D2に向けて流すことができる。
【0106】
(7)第7の態様に係る電解セル11は、(3)から(6)のうちいずれか1つの電解セル11であって、少なくとも前記複数の第1突起441の表面には、撥水性の表面処理が施されてもよい。
【0107】
これにより、第1流路FP1を流れる電解液Esが第1突起441の表面からはじかれやすくなる。そのため、第1流路FP1を流れる電解液Esをより円滑に第2方向D2(イオン交換膜50側)に案内することができる。したがって、上記作用をより高精度に実現することができる。
【0108】
(8)第8の態様に係る電解セル11は、(3)から(7)のうちいずれか1つの電解セル11であって、前記セパレータ本体は、前記第1面に沿う方向であって前記第1方向D1とは交差した第3方向D3で前記第1溝40d1と隣り合い、前記第1方向D1に沿う第2流路FP2を規定する第2溝40d2を有し、前記流れ方向変化部44は、前記セパレータ本体から前記イオン交換膜50に向けて突出した複数の第2突起442を含み、前記複数の第2突起442は、前記第2溝40d2の内部に配置されてもよい。
【0109】
これにより、第1流路FP1を流れる電解液Esの少なくとも一部は、第1給電体を介して、第1流路FP1に第3方向D3で隣り合う第2流路FP2に流入することができる。そして、第2流路FP2に流入した電解液Esの少なくとも一部に対しても上記作用が実現される。また、第2流路FP2を流れる電解液Esの少なくとも一部は、第1給電体を介して、第1流路FP1に流入することができる。
【0110】
(9)第9の態様に係る電解セル11は、(8)の電解セル11であって、前記複数の第1突起441に含まれる少なくとも2つの突起440と、前記複数の第2突起442に含まれる少なくとも2つの突起440とは、前記第1方向D1に関して千鳥状に配置されてもよい。
【0111】
これにより、第1流路FP1から第2流路FP2に流入した電解液Esの少なくとも一部は、第2突起442にあたりやすくなるため、第2突起442にあたった電解液Esの流れ方向は、第2流路FP2内でも第2方向D2に変化する。また、第2流路FP2から第1流路FP1に流入した電解液Esの少なくとも一部は、第1突起441にあたりやすいため、第1突起441にあたった電解液Esの流れ方向は、第1流路FP1内でも第2方向D2に変化する。したがって、例えば千鳥状に配置されていない場合と比較して、上記作用をより高精度に実現することができる。
【0112】
(10)第10の態様に係る電解セル11は、(1)の電解セル11であって、前記流れ方向変化部44は、メッシュ構造体または多孔質体である流路形成部材443であってもよい。
【0113】
これにより、第1方向D1に流れる電解液Esの少なくとも一部は、第1触媒層に向けて第2方向D2を流れるようにメッシュ構造体により案内される。このため、案内された電解液Esは、第1給電体の内部における、第1触媒層の近傍で第1触媒層に電解されている電解液Esを入れ替えるように拡散させる。すなわち、より具体的な構成で上記作用を実現することができる。
【0114】
(11)第11の態様に係る電解セル11は、(10)の電解セル11であって、前記流路形成部材443は、導電性を有し、前記第1セパレータと前記第1給電体との間に設けられて前記第1セパレータと前記第1給電体とを電気的に接続してもよい。
【0115】
これにより、電解液Esが流れる流路を第1セパレータに設けたとしても、例えば流路形成部材443が電導性を有しない場合と比較して、第1セパレータから第1給電体へ電解還元に必要な電気をより伝えやすい。
【0116】
(12)第12の態様に係る電解セル11は、(10)または(11)の電解セル11であって、前記流路形成部材443の空隙率は、前記第1給電体の空隙率よりも大きくてもよい。
【0117】
これにより、第1給電体の内部と比較して、流路形成部材443の内部を電解液Esが流れやすい。その結果、流路形成部材443から第1給電体に電解液Esを円滑に供給することができる。
【0118】
(13)第13の態様に係る電解セル11は、(10)から(12)のうちいずれか1つの電解セル11であって、前記流路形成部材443は、前記第2方向D2における流路抵抗が前記第1方向D1における流路抵抗と比べて小さくてもよい。
【0119】
これにより、流路形成部材443の内部を流れる電解液Esは、第1方向D1よりも第2方向D2に流れやすい。その結果、上記作用をより高精度に実現することができる。
【0120】
(14)第14の態様に係る電解装置1は、(1)から(13)のうちいずれか1つの電解セル11と、前記電解セル11に前記電解液Esを供給する電解液供給部20と、前記電解セル11に電圧を印加する電源部30と、を備えている。
【符号の説明】
【0121】
1…電解装置、10…電解セルスタック、11…電解セル、20…電解液供給部、20a…陰極側供給部、20b…陽極側供給部、21…水素気液分離装置、22…第1ポンプ、23…水素回収部、24…第1電解液供給部、26…酸素気液分離装置、27…第2ポンプ、28…酸素回収部、29…第2電解液供給部、30…電源部、40…電解槽、40d…溝、40d´…凹部、40d1…第1溝、40d2…第2溝、40p1…第1部分、40p2…第2部分、40s…溝底面、41…陰極セパレータ、41a…第1内面、41b…第1内面とは反対側を向く面、42b…第2内面とは反対側を向く面、41e1,42e1…第1セパレータ端部、41e2,42e2…第2セパレータ端部、42…陽極セパレータ、42a…第2内面、43…膜電極接合体、44…流れ方向変化部、44s…変化部、44t…接続部、47…陰極、48…陽極、50…イオン交換膜、50a…第1交換膜面、50b…第2交換膜面、50e…外縁部、54…陰極触媒層、55…陰極給電体、55a…第1陰極面、55b…第2陰極面、56…陽極触媒層、57…陽極給電体、57a…第1陽極面、57b…第2陽極面、61…第1集電体、62…第2集電体、63…第1絶縁体、64…第2絶縁体、65…第1絶縁材、66…第2絶縁材、67…第1エンドフランジ、68…第2エンドフランジ、70…支持部、71…第1支持部、72…第2支持部、80…封止部、81…第1封止部、82…第2封止部、410…陰極セパレータ本体、420…陽極セパレータ本体、440…突起、440a…上流面、440b…下流面、440c…接続面、441…第1突起、442…第2突起、443…流路形成部材、C…中央部、D1…第1方向、D1u…上流側、D1d…下流側、D2…第2方向、D3…第3方向、Es…電解液、FP…流路、FP1…第1流路、FP2…第2流路、L1,L2,L3,L4…配管ライン、S…収容空間、Sa…陰極室、Sb…陽極室