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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126871
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】遠心送風機および空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20240912BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
F04D29/44 P
F04D29/44 X
F04D29/66 J
F04D29/66 N
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035581
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】澤田 大貴
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB45
3H130AC11
3H130BA09A
3H130BA66A
3H130CA04
3H130CA09
3H130CA21
3H130DA02Z
3H130EA06A
3H130EA07A
3H130EB01A
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ベルマウスの裏側に空気が巻き込まれて発生した渦を無害化して空気のスムーズな流れを確保するとともに、送風機の回転軸方向端部側での風量を増加させる遠心送風機を提供する。
【解決手段】ケーシング110は、羽根車の外周に対向する内周面と回転軸との距離が巻き始めPから巻き終わりに向かうに従って大きくなる渦巻き部を備え、渦巻き部は、羽根車の外周側を覆う外周板部130と、中央部に吸込口121を有する側板部120とを備え、吸込口は、軸方向内側へ向かうに従って内径が減少するベルマウス122を備え、ベルマウスと径方向外側に間隔を空けて側板部から回転軸方向に延在する環状凸部140を設け、環状凸部は、ベルマウスと同心円状をなし、ベルマウスよりも高さが低く、ベルマウスとの間に空気が流れ込む空間Sを形成している。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の羽根を備え回転軸に接続されて回転することで前記複数の羽根の間を介して遠心方向に排気を行う羽根車と、
前記羽根車を収容し吹出口を有するケーシングと、
を備え、
前記ケーシングは、前記羽根車の前記複数の羽根に対向する内周面と前記回転軸との距離が巻き始めから巻き終わりに向かうに従って漸次大きくなる渦巻き部を備え、
前記渦巻き部は、前記羽根車の外周側を覆う外周板部と、中央部に吸込口を有する側板部とを備え、
前記吸込口は、前記回転軸方向内側へ向かうに従って内径が減少するベルマウスを備え、
前記ベルマウスと前記ベルマウスの径方向外側に間隔を空けて前記側板部から前記回転軸方向内側に延在する環状凸部を設け、
前記環状凸部は、前記ベルマウスと同心円状をなして前記ベルマウスとの間に空気が流れ込む空間を形成し、かつ、前記ベルマウスよりも軸方向の高さが低い遠心送風機。
【請求項2】
前記環状凸部は、前記吹出口を臨む箇所に切欠を有する請求項1に記載の遠心送風機。
【請求項3】
複数の羽根を備え回転軸に接続されて回転することで前記複数の羽根の間を介して遠心方向に排気を行う羽根車と、
前記羽根車を収容し吹出口を有するケーシングと、
を備え、
前記ケーシングは、前記羽根車の前記複数の羽根に対向する内周面と前記回転軸との距離が巻き始めから巻き終わりに向かうに従って漸次大きくなる渦巻き部を備え、
前記渦巻き部は、前記羽根車の外周側を覆う外周板部と、中央部に吸込口を有する側板部とを備え、
前記吸込口は、前記回転軸方向内側へ向かうに従って内径が減少するベルマウスを備え、
前記ベルマウスと前記ベルマウスの径方向外側に間隔を空けて前記側板部から前記回転軸方向に延在する環状凸部を設け、
前記環状凸部は、前記ベルマウスと同心円状をなして前記ベルマウスとの間に空気が流れ込む空間を形成し、かつ、前記吹出口を臨む箇所に切欠を有する遠心送風機。
【請求項4】
前記切欠は、前記環状凸部の先端から根元に至るまで前記環状凸部の前記回転軸方向の高さの全高に亘る請求項2または3に記載の遠心送風機。
【請求項5】
前記環状凸部は、前記切欠側へ向かうに従って高さが低くなる請求項2または3に記載の遠心送風機。
【請求項6】
前記環状凸部の外径は、前記羽根車の環状部材の外径よりも小径である請求項2または3に記載の遠心送風機。
【請求項7】
前記環状凸部は、前記側板部の底面に設けた板部または基部の上に設けられている請求項2または3に記載の遠心送風機。
【請求項8】
前記側板部の底面に設けた板部または基部は、前記ベルマウスの外周部で前記回転軸方向の高さが周方向で異なる請求項7に記載の遠心送風機。
【請求項9】
筺体に、請求項2または3に記載の遠心送風機と、熱交換器と、を備えた空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心送風機及びこれを備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
シロッコファン等の遠心送風機のケーシングの中央部には、円形の吸込口が設けられ、吸込口には回転軸方向内側に向かうに従って内径が減少するベルマウスが設けられる(例えば特許文献1参照)。吸込口に吸い込まれた空気は、ベルマウスを通過することで風速が上昇するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-61278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベルマウスから吸い込まれた空気が羽根車によって遠心方向に排気されるとき、ベルマウスの裏側(ケーシングにおける送風機の回転軸方向の端部側の内面)に空気が巻き込まれて渦になり、渦によって有効流路断面積(流路抵抗を考慮した実質的な流路断面積)が狭くなるという問題があった。当該渦の影響により、ケーシングの回転軸方向端部側は吹出口に向かう風の流れが少ないため、渦による影響を低減させて風量を増加させたいとの要請があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ベルマウスの裏側に空気が巻き込まれて発生した渦の成長を抑制して空気のスムーズな流れを確保して、送風機の風量を増加させることができる遠心送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の羽根を備え回転軸に接続されて回転することで前記複数の羽根の間を介して遠心方向に排気を行う羽根車と、前記羽根車を収容し吹出口を有するケーシングと、を備え、前記ケーシングは、前記羽根車の前記複数の羽根に対向する内周面と前記回転軸との距離が巻き始めから巻き終わりに向かうに従って漸次大きくなる渦巻き部を備え、前記渦巻き部は、前記羽根車の外周側を覆う外周板部と、中央部に前記吸込口を有する側板部とを備え、前記吸込口は、前記回転軸方向内側へ向かうに従って内径が減少するベルマウスを備え、前記ベルマウスと前記ベルマウスの径方向外側に間隔を空けて前記側板部から前記回転軸方向内側に延在する環状凸部を設け、前記環状凸部は、前記ベルマウスと同心円状をなして前記ベルマウスとの間に空気が流れ込む空間を形成し、かつ、前記ベルマウスよりも軸方向の高さが低い遠心送風機である。
【0007】
また、本発明は、複数の羽根を備え回転軸に接続されて回転することで前記複数の羽根の間を介して遠心方向に排気を行う羽根車と、前記羽根車を収容し吹出口を有するケーシングと、を備え、前記ケーシングは、前記羽根車の前記複数の羽根に対向する内周面と前記回転軸との距離が巻き始めから巻き終わりに向かうに従って漸次大きくなる渦巻き部を備え、前記渦巻き部は、前記羽根車の外周側を覆う外周板部と、中央部に吸込口を有する側板部とを備え、前記吸込口は、前記回転軸方向内側へ向かうに従って内径が減少するベルマウスを備え、前記ベルマウスと前記ベルマウスの径方向外側に間隔を空けて前記側板部から前記回転軸方向に延在する環状凸部を設け、前記環状凸部は、前記ベルマウスと同心円状をなして前記ベルマウスとの間に空気が流れ込む空間を形成し、かつ、前記吹出口を臨む箇所に切欠を有する遠心送風機である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ベルマウスの裏側に空気が巻き込まれて発生した渦の成長を抑制して空気のスムーズな流れを確保して、送風機の風量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態の空気調和機を示す平断面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】実施形態の遠心送風機を示す断面図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5図3のV-V線断面図である。
図6】実施形態の遠心送風機を斜め前方から視た斜視図である。
図7】実施形態の遠心送風機を斜め後方から視た斜視図である。
図8】実施形態の遠心送風機を示す側面図である。
図9】実施形態におけるケーシングの一部断面図である。
図10】実施形態におけるケーシングの一部断面図である。
図11】実施形態におけるケーシングの平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.空気調和機の全体構造
図1図5を参照して実施形態の空気調和機1について説明する。これらの図において符号10は筺体である。筺体10は、図中左側の端面に空気吸込部11と右側の端面に空気吹出部12とを備えている。空気吸込部11と空気吹出部12はそれぞれ矩形状に形成された開口である。筺体10の内部には仕切板13が取り付けられることで左室10aと右室10bに仕切られ、仕切板13に遠心送風機100が取り付けられている。
【0011】
遠心送風機100はケーシング110を備え、ケーシング110には、固定板111が固定されている。固定板111は仕切板13にボルト、ナット等により取り付けられており、これにより、遠心送風機100は、左室10aに配置されるとともに、左室10aと右室10bは、仕切板13と固定板111によって、右室10bの空気が左室10aへ漏れるのを防ぐようにシール性が確保されている。
【0012】
遠心送風機100はシロッコファンであり、ケーシング110に羽根車150を収容し、羽根車150の円板状をなす主板151にファンモータ152の回転軸153を接続して構成されている。主板151には円筒状をなす羽根部154が取り付けられている。羽根部154は、一対の環状部材154aに複数の羽根154bの一端が固定されたもので、羽根154bの他端を主板151に固定することで主板151に固定されている。羽根154bは前向き羽根であり、羽根部154は図2において時計回りの方向に回転する。なお、図3図5では回転軸153の図示を省略している。
【0013】
筺体10の右室10bには、筺体10に固定したブラケット14に取り付けられた熱交換器160が配置されている。熱交換器160は、遠心送風機100から送られる空気に対して除湿、冷却、または加温して空気吹出部12から放出する。なお、熱交換器160は遠心送風機100の上流側に配置することもできる。すなわち、右室10bに遠心送風機100を配置し、左室10aに熱交換器160を配置することもできる。
【0014】
2.遠心送風機の構成
図3図11を参照して実施形態の遠心送風機100を説明する。なお、以下の説明においては、ファンモータ152の回転軸153の方向を「軸方向」、軸方向と直交する方向を「径方向」、回転軸153を中心とした回転方向を「周方向」と称する。また、「上」および「下」といった用語は、図3における上、下を示すものとする。さらに、空気流の流れる方向を「上流側」および「下流側」と称する。
【0015】
遠心送風機100のケーシング110は、軸方向に直交する平面に沿って2分割したものを樹脂で射出成形し、成形した部品を接着や溶着等によって結合したものである。ケーシング110は、その側面を覆う側板部120と、外周面を覆う外周板部130とを有する。側板部120は、羽根部154の内側空間に空気を導く吸込口121を備え、吸込口121は、羽根部154の内側空間を臨む位置に設けられた円形の開口である。
【0016】
吸込口121は羽根部154と同心円状をなしており、その内径は羽根154bの内径よりも大きく設定されている。吸込口121の縁部にはベルマウス122が形成されている。ベルマウス122は、軸方向内側へ向かって徐々に内径が減少しており、吸込口121に吸い込まれた空気は、ベルマウス122を通過することで風速が上昇する。ベルマウス122は、テーパ状または断面弧状に形成されている。そして、羽根部154に吸い込まれた空気は、羽根154bの間を通って羽根部154の遠心方向に排気される。
【0017】
ケーシング110の外周板部130の内側には、渦巻き状の流路である渦巻き部131(図3参照)が形成されている。渦巻き部131は、外周板部130と羽根部154の間の隙間が最小となる部分を巻き始めPとし、そこから周方向に進むに従って隙間(断面積)が徐々に大きくなる構造を有している。たとえば、渦巻き部131は、インボリュート曲線に添った断面形状を有している。なお、渦巻き部131の断面形状はインボリュート曲線に限定されず、例えばアルキメデス螺旋など任意の渦巻形状を採用することができる。
【0018】
渦巻き部131は巻き終わりQまで任意の曲線に沿う形状を成している。すなわち、渦巻き部131のインボリュート曲線に沿った断面形状は巻き終わりQで終了し、巻き終わりQからその先は、矩形状の開口からなる吹出口132に至る流路を形成するディフューザ部133が設けられている。渦巻き部131では空気流は回転軸153を中心とした旋回流となるが、ディフューザ部133では直線的な空気流となる。
【0019】
ディフューザ部133は、巻き終わりQ側から吹出口132に至るまでの間に位置する中間部には、固定板111が固定されている。固定板111は矩形の板であり、側板部120および外周板部130から上下方向および左右方向に突出している。固定板111は、ケーシング110と一体に射出成形で形成されているが、ケーシング110と別に作製してケーシング110に接着等の手段で取り付けてもよい。
【0020】
図3に示すように、固定板111から吹出口132までの部分には、固定板111よりも上流側の部分に対して上方へ向けて傾斜する拡開部145が形成されている。拡開部145と、拡開部145に対向する下壁部146との距離は、巻き終わりQ側から吹出口132に向かうに従って徐々に増加しており、側板部120と、拡開部145と、下壁部146とにより形成される流路断面積は、吹出口132に向かうに従って徐々に増加している。
【0021】
図9図11に示すように、ベルマウス122の径方向外側には、ベルマウス122と隙間を空けて軸方向に延在する環状凸部140が形成されている。なお、図9図11はケーシング110を軸方向と直交する面で半割にした一部断面図であり、図の軸方向反対側も同様に形成され、軸方向で対称とされている。なお、軸方向で非対称であってもよい。環状凸部140は、ベルマウス122と同心円状をなし、ベルマウス122との間に空気が流れ込む空間Sを形成し、その空間Sには他の部材は入り込まない。環状凸部140には環状凸部140の先端と羽根部154との間から空気が流れ込む。
【0022】
環状凸部140の側板部120からの先端までの軸方向の高さはベルマウス122の側板部120から先端までの高さよりも低い。言い換えると、環状凸部140の先端から羽根部154までの距離は、ベルマウス122の先端から羽根部154までの距離より大きい。これにより、羽根部154と環状凸部140との間に空間Sに空気が流れ込む隙間が形成される。また、環状凸部140の外径は、羽根部154の環状部材154aの外径よりも小さい。さらに、環状凸部140は、側板部120から一段高くなった基部141の上に形成されている。図9の左側に示すように、環状凸部140の一部は、側板部120から直接軸方向内側に延在している。このように、環状凸部140は、基部141から延在する部分と、側板部120から延在する部分とからなっている。なお、基部141に代えて側板部120に板を敷設しても良い。
【0023】
ベルマウス122は、全周に亘って形成されているが、環状凸部140は、吹出口132を臨む箇所に切欠142を有する。切欠142は、環状凸部140の先端から根元に至るまで環状凸部140の全高に亘って形成されている。すなわち、環状凸部140は全周に亘って形成されておらず、一部分はベルマウス122と外周板部130との間に環状凸部140が存在しない。なお、切欠142は設けずに環状凸部140が全周に亘って形成されていても良い。このように、切欠142に面している空間Sは、吹出口132に向かって開放されている。
【0024】
図10に示すように、環状凸部140は切欠142側に向かって、一段または二段に亘って高さが低くなる基部143が形成されている。基部143は、環状凸部140の一端部では巻き始めP付近から切欠142に向かって設けられ、他端部では巻き終わりQ付近から切欠142に向かって設けられている。巻き始めP付近から設けられている基部143は一段であり、巻き終わりQ付近から設けられている基部143は二段である。なお、基部143に代えて高さが徐々に低くなるスロープに形成することもできる。
【0025】
3.作用および効果
ファンモータ152が回転することにより、羽根部154が回転し、羽根154bの作用により吸込口121から空気が吸引される。吸引された空気はケーシング110内で羽根154bの隙間を通って遠心方向に排出され、渦巻き部131からディフューザ部133へと流れ、吹出口132から吹き出される。
【0026】
ここで、ベルマウス122から吸い込まれた空気が羽根部154によって遠心方向に排気されるとき、遠心方向に排出された空気は外周板部130に衝突し、軸方向外側、すなわち側板部120側のベルマウス122と外周板部130の間に流れ込み渦になる。環状凸部140が無い場合は、最大でベルマウス122と外周板部130の間の径方向距離と略同一の直径の渦流が形成される。渦流が形成される領域は吹出口132へ向かう空気の流れに寄与しないため、渦巻部131における吹出口132に向かう空気の流れが形成される実質的な流路の断面積(有効流路断面積)が狭くなる。一方で、環状凸部140が設けられていることで、この渦は、環状凸部140とベルマウス122との間の空間Sに収容されることで大きく成長することが抑制される。そのため、渦巻部131における環状凸部140よりも径方向外側の空気の流れを阻害しないようになる。
【0027】
一般に、吸込口121から吸引される空気は主板151に沿って羽根車154の径方向外側に位置する渦巻き部131内部に排出されるので、渦巻き部131内部において回転軸方向中央と比較して回転軸方向外側(側板部120側)は風量が少なくなる。しかし、上記実施形態では、吸込口121から吸引される空気の流れが環状凸部140とベルマウス122との間の空間Sに発生した渦の作用で遠心送風機の軸方向端部側へ偏向される。これにより、遠心送風機の軸方向端部側の風量が確保される。したがって、上記実施形態では、風量を増加させることができる。
【0028】
ところで、渦巻部131の巻き終わりより下流側では舌部134によって空気の流れが吹出口132方向へ強制的に変えられることに伴い、渦巻部131において主流の流れに寄与しなかった軸方向端部側で発生した渦流が主流と混合し、吹出口132へ向かう流れに変えられる。すなわち、吹出口132に向かう風の流れが形成される流路の断面積(有効流路断面積)が渦巻部131と比較して広くなる。そのため、ベルマウス122と外周板部130の間に渦流が発生することを許容でき、渦流の成長を抑制する環状凸部140を設ける必要が無いので、上記実施形態は吹出口132を臨む箇所に切欠142を有している。切欠142によって、渦巻部131における吹出口132に向かう空気の流れが形成される実質的に有効な流路断面積を更に拡大できるので、風量増加に寄与する。
【0029】
また、上記実施形態では、環状凸部140の切欠142側の端部は、切欠142側へ向かうに従って高さが段階的に低くなるから、切欠142側へ向かうに従って渦巻部131の有効な流路断面積が徐々に大きくなるため空気がスムーズに流れつつ上記効果を得ることができる。
【0030】
上記実施形態では、環状凸部140の外径は、羽根車154の環状部材154aの外径よりも小さいから、羽根部154が発生させる空気のスムーズな流れを阻害しない。
【0031】
また、環状凸部140は、基部141から延在する部分と、側板部120から延在する部分とからなっているから、例えば吹出口132に近い側で空間Sの深さを深くすることにより、流路断面積を増大させて風量を増加させるとの上記効果を確実に得ることができる。なお、基部141は、周方向に向かって互いに間隔を空けて複数設けることもできる。
【0032】
なお、環状凸部140は全周に亘って側板部120から軸方向内側に延在させることができる。空間Sが深い程大きい渦を収容することができ、その分、有効流路断面積を大きく取ることができ、最大風量を増加することができる。
【0033】
4.変更例
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように種々の変更が可能である。
i)環状凸部140の高さをベルマウス122の高さよりも低くする構成と、環状凸部140が吹出口132を臨む箇所に切欠142を有する構成のいずれか一方を採用することができる。すなわち、切欠142が無い形態であっても、環状凸部140が設けられていることによる渦の成長抑制効果が得られる。
【0034】
ii)羽根車150の羽根部154に代えて主板に複数の羽根を固定したインペラを使用することができる。
【0035】
iii)空気調和機1では、2個の羽根車150を用いているが、羽根車150は1個あるいは3個以上であってもよい。
iv)空気調和機1には加湿器やエアフィルタを設置することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…空気調和機、10…筺体、10a…左室、10b…右室、11…空気吸込部、12…空気吹出部、13…仕切板、14…ブラケット、100…遠心送風機、110…ケーシング、111…固定板、120…側板部、121…吸込口、122…ベルマウス、130…外周板部、131…渦巻き部、132…吹出口、133…ディフューザ部、134…舌部、140…環状凸部、141…基部、142…切欠、143…基部、145…拡開部、146…下壁部、150…送風ファン、151…主板、152…ファンモータ、153…回転軸、154…羽根部、154a…環状部材、154b…羽根、160…熱交換器、P…巻き始め、Q…巻き終わり、S…空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の羽根を備え回転軸に接続されて回転することで前記複数の羽根の間を介して遠心方向に排気を行う羽根車と、
前記羽根車を収容し吹出口を有するケーシングと、
を備え、
前記ケーシングは、前記羽根車の前記複数の羽根に対向する内周面と前記回転軸との距離が巻き始めから巻き終わりに向かうに従って漸次大きくなる渦巻き部を備え、
前記渦巻き部は、前記羽根車の外周側を覆う外周板部と、中央部に吸込口を有する側板部とを備え、
前記吸込口は、前記回転軸方向内側へ向かうに従って内径が減少するベルマウスを備え、
前記ベルマウスと前記ベルマウスの径方向外側に間隔を空けて前記側板部から前記回転軸方向内側に延在する環状凸部を設け、
前記環状凸部は、前記ベルマウスと同心円状をなして前記ベルマウスとの間に空気が流れ込む空間を形成し、かつ、前記ベルマウスよりも軸方向の高さが低く、前記環状凸部は、前記吹出口を臨む箇所に切欠を有する遠心送風機。
【請求項2】
複数の羽根を備え回転軸に接続されて回転することで前記複数の羽根の間を介して遠心方向に排気を行う羽根車と、
前記羽根車を収容し吹出口を有するケーシングと、
を備え、
前記ケーシングは、前記羽根車の前記複数の羽根に対向する内周面と前記回転軸との距離が巻き始めから巻き終わりに向かうに従って漸次大きくなる渦巻き部を備え、
前記渦巻き部は、前記羽根車の外周側を覆う外周板部と、中央部に吸込口を有する側板部とを備え、
前記吸込口は、前記回転軸方向内側へ向かうに従って内径が減少するベルマウスを備え、
前記ベルマウスと前記ベルマウスの径方向外側に間隔を空けて前記側板部から前記回転軸方向に延在する環状凸部を設け、
前記環状凸部は、前記ベルマウスと同心円状をなして前記ベルマウスとの間に空気が流れ込む空間を形成し、かつ、前記吹出口を臨む箇所に切欠を有する遠心送風機。
【請求項3】
前記切欠は、前記環状凸部の先端から根元に至るまで前記環状凸部の前記回転軸方向の高さの全高に亘る請求項またはに記載の遠心送風機。
【請求項4】
前記環状凸部は、前記切欠側へ向かうに従って高さが低くなる請求項またはに記載の遠心送風機。
【請求項5】
前記環状凸部の外径は、前記羽根車の環状部材の外径よりも小径である請求項またはに記載の遠心送風機。
【請求項6】
前記環状凸部は、前記側板部の底面に設けた板部または基部の上に設けられている請求項またはに記載の遠心送風機。
【請求項7】
前記側板部の底面に設けた板部または基部は、前記ベルマウスの外周部で前記回転軸方向の高さが周方向で異なる請求項に記載の遠心送風機。
【請求項8】
筺体に、請求項またはに記載の遠心送風機と、熱交換器と、を備えた空気調和機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、複数の羽根を備え回転軸に接続されて回転することで前記複数の羽根の間を介して遠心方向に排気を行う羽根車と、前記羽根車を収容し吹出口を有するケーシングと、を備え、前記ケーシングは、前記羽根車の前記複数の羽根に対向する内周面と前記回転軸との距離が巻き始めから巻き終わりに向かうに従って漸次大きくなる渦巻き部を備え、前記渦巻き部は、前記羽根車の外周側を覆う外周板部と、中央部に吸込口を有する側板部とを備え、前記吸込口は、前記回転軸方向内側へ向かうに従って内径が減少するベルマウスを備え、前記ベルマウスと前記ベルマウスの径方向外側に間隔を空けて前記側板部から前記回転軸方向内側に延在する環状凸部を設け、前記環状凸部は、前記ベルマウスと同心円状をなして前記ベルマウスとの間に空気が流れ込む空間を形成し、かつ、前記ベルマウスよりも軸方向の高さが低く、前記環状凸部は、前記吹出口を臨む箇所に切欠を有する遠心送風機である。