(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126879
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】エレベータ避難支援装置およびエレベータ避難支援方法
(51)【国際特許分類】
B66B 3/00 20060101AFI20240912BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B66B3/00 G
B66B3/00 L
G08B25/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035599
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小宮 健人
【テーマコード(参考)】
3F303
5C087
【Fターム(参考)】
3F303CB24
3F303CB31
3F303DC26
5C087AA19
5C087DD02
5C087DD04
5C087DD18
5C087EE15
5C087GG68
5C087GG82
(57)【要約】 (修正有)
【課題】災害発生時にエレベータの利用者に対して迅速な避難支援を実現できるエレベータ避難支援装置およびエレベータ避難支援方法を提供する。
【解決手段】エレベータ避難支援装置は、混雑状況検知センサと、乗車数検知センサと、歩行補助具検知センサと、混雑状況から混雑度合いを判断する混雑状況判断処理部と、混雑度合いに応じて避難経路とは異なる第2避難経路を作成する経路判断処理部と、を備え、経路判断処理部は、混雑度合いに基づいて一定時間経過後の混雑状況を予測する状況予測処理部と、予測した一定時間経過後の混雑状況と、歩行補助具検知センサが検知したエレベータ利用者の情報と、エレベータ利用者の人数の情報と、に基づいて、エレベータ利用者の一定時間経過後の避難状況を予測する避難時間予測処理部と、を有し、避難経路が使用できないと判断した場合に、第2避難経路をサイネージ装置に出力する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエレベータを有する建物において、前記エレベータを利用するエレベータ利用者を災害発生時に前記建物の出入口へと誘導する避難経路を表示するサイネージ装置を有するエレベータ避難支援装置であって、
前記建物内および前記避難経路における災害避難者の混雑状況を検知する混雑状況検知センサと、
前記エレベータ利用者の人数を検知する乗車数検知センサと、
前記エレベータ内で通常歩行移動が困難である前記エレベータ利用者を検知する歩行補助具検知センサと、
前記混雑状況から混雑度合いを判断する混雑状況判断処理部と、
前記混雑度合いに応じて前記避難経路とは異なる第2避難経路を作成する経路判断処理部と、を備え、
前記経路判断処理部は、前記混雑度合いに基づいて、一定時間経過後の前記混雑状況を予測する混雑状況予測処理部と、予測した一定時間経過後の前記混雑状況と、前記歩行補助具検知センサが検知した前記エレベータ利用者の情報と、前記エレベータ利用者の人数の情報と、に基づいて、前記エレベータ利用者の一定時間経過後の避難状況を予測する避難時間予測処理部と、を有し、前記避難経路が使用できないと判断した場合に、前記第2避難経路を前記サイネージ装置に出力する
エレベータ避難支援装置。
【請求項2】
前記経路判断処理部は、作成した前記第2避難経路のうち、予測した一定時間経過後の前記混雑状況と、前記エレベータ利用者の一定時間経過後の避難状況と、に基づいて、前記第2避難経路を決定する
請求項1に記載のエレベータ避難支援装置。
【請求項3】
前記経路判断処理部は、前記混雑度合いが第1閾値を超えたら混雑フラグを立て、前記混雑度合いが前記第1閾値を下回ったら混雑解消フラグを立てる
請求項1に記載のエレベータ避難支援装置。
【請求項4】
前記歩行補助具検知センサは、前記エレベータ利用者のうち、歩行補助具の使用者、ベビーカーの使用者、妊婦、高齢者、および子供の少なくともいずれかを、前記通常歩行移動が困難である前記エレベータ利用者として検知する
請求項1に記載のエレベータ避難支援装置。
【請求項5】
前記経路判断処理部は、一定時間経過後の前記混雑状況を予測することで、前記エレベータ利用者の前記出入口までの移動時間を算出する
請求項1に記載のエレベータ避難支援装置。
【請求項6】
複数のエレベータを有する建物において、前記エレベータを利用するエレベータ利用者を災害発生時に前記建物の出入口へと誘導する避難経路を表示するエレベータ避難支援方法であって、
前記建物内および前記避難経路における災害避難者の混雑状況と、前記エレベータ利用者の人数と、前記エレベータ内で通常歩行移動が困難である前記エレベータ利用者と、を検知し、
検知した前記混雑状況から混雑度合いを判断し、
前記混雑度合いに応じて前記避難経路とは異なる第2避難経路を作成し、
前記混雑度合いに基づいて、一定時間経過後の前記混雑状況を予測し、
前記混雑状況と、前記通常歩行移動が困難である前記エレベータ利用者の情報と、前記エレベータ利用者の人数の情報と、に基づいて、前記エレベータ利用者の一定時間経過後の避難状況を予測し、前記避難経路が使用できないと判断した場合に、前記第2避難経路を前記エレベータ利用者に表示する
エレベータ避難支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ避難支援装置およびエレベータ避難支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1には、エレベータのタッチパネル操作盤が、災害発生時に操作画面から災害用画面に自動的に切り替わる構成が開示されている。これにより、エレベータの乗客に対して円滑な避難を支援できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、災害時において、タッチパネル操作盤を通してエレベータの乗客に対して避難経路を表示した場合に、建物外部への出入口が設置されているエレベータ停止階では、災害から避難しようと多くの災害避難者が同時に出入口に向かって移動する。これにより、出入口からエレベータホールまで災害避難者の混雑が発生し、その混雑によって災害避難者が滞留するため、新たに出入口階までエレベータで移動してきた別の災害避難者がエレベータホールに降りることができず、避難が滞ってしまうという課題が生じる。また、これにより、災害時のエレベータの運転効率が低下し、出入口階とは別の階にいる災害避難者を迅速に避難させられない課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
複数のエレベータを有する建物において、前記エレベータを利用するエレベータ利用者を災害発生時に前記建物の出入口へと誘導する避難経路を表示するサイネージ装置を有するエレベータ避難支援装置であって、前記建物内および前記避難経路における災害避難者の混雑状況を検知する混雑状況検知センサと、前記エレベータ利用者の人数を検知する乗車数検知センサと、前記エレベータ内で通常歩行移動が困難である前記エレベータ利用者を検知する歩行補助具検知センサと、前記混雑状況から混雑度合いを判断する混雑状況判断処理部と、前記混雑度合いに応じて前記避難経路とは異なる第2避難経路を作成する経路判断処理部と、を備え、前記経路判断処理部は、前記混雑度合いに基づいて、一定時間経過後の前記混雑状況を予測する混雑状況予測処理部と、予測した一定時間経過後の前記混雑状況と、前記歩行補助具検知センサが検知した前記エレベータ利用者の情報と、前記エレベータ利用者の人数の情報と、に基づいて、前記エレベータ利用者の一定時間経過後の避難状況を予測する避難時間予測処理部と、を有し、前記避難経路が使用できないと判断した場合に、前記第2避難経路を前記サイネージ装置に出力する。
【0006】
また、前記建物内および前記避難経路における災害避難者の混雑状況と、前記エレベータ利用者の人数と、前記エレベータ内で通常歩行移動が困難である前記エレベータ利用者と、を検知し、検知した前記混雑状況から混雑度合いを判断し、前記混雑度合いに応じて前記避難経路とは異なる第2避難経路を作成し、前記混雑度合いに基づいて、一定時間経過後の前記混雑状況を予測し、前記混雑状況と、前記通常歩行移動が困難である前記エレベータ利用者の情報と、前記エレベータ利用者の人数の情報と、に基づいて、前記エレベータ利用者の一定時間経過後の避難状況を予測し、前記避難経路が使用できないと判断した場合に、前記第2避難経路を前記エレベータ利用者に表示するエレベータ避難支援方法を採用する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、災害発生時にエレベータの利用者に対して迅速な避難支援を実現できるエレベータ避難支援装置およびエレベータ避難支援方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、エレベータかごの説明図
【
図2】本発明の一実施形態に係る、混雑状況検知センサの設置例
【
図3】本発明の一実施形態に係る、災害発生時における本避難経路の表示例
【
図4】本発明の一実施形態に係る、災害発生時における第2避難経路の表示例
【
図5】本発明の一実施形態に係る、エレベータ避難支援装置の機能ブロック図
【
図6】本発明の一実施形態に係る、エレベータ避難支援装置のフローチャート
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0010】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0011】
(本発明の実施形態と全体構成)
(
図1)
エレベータかご1は、歩行補助具検知センサ2、サイネージ装置3、乗車数検知センサ4を有する。サイネージ装置3は、災害が発生すると、通常の表示画面から災害対応画面に自動的に切り替わり、さらにアナウンス等によってエレベータ利用者に対して出入り口までの避難経路を表示して、避難誘導を促す。これにより、エレベータ利用者は、エレベータが出入口階に到着すれば、出入口まで円滑に避難できる。なお、災害が発生したかどうかは、例えば、建物内に設置されている火災報知器や地震感知器による応答を検出することで判断されるが、建物の設備管理者が災害を確認して災害発生を判断するような形態であってもよい。
【0012】
乗車数検知センサ4は、エレベータかご1内のエレベータ利用者の人数を検知して把握する。乗車数検知センサ4がエレベータ利用者の人数を検知する方法として、例えば、利用者の荷重情報等から算出して推定する方法であってもよいし、エレベータかご1内に向けて設置される監視カメラ等を通じて得た画像情報から人数を検知してもよい。
【0013】
また、歩行補助具検知センサ2は、エレベータかご1に乗車しているエレベータ利用者の中で、通常歩行移動が困難であり、例えば杖や車椅子等の歩行補助に必要な道具を所持している人がいるかどうかを検知する。歩行補助具検知センサ2が通常歩行移動が困難なエレベータ利用者を検知する方法として、例えば、多光軸ドアセンサを利用して各エレベータ利用者の属性を判断し検知してもよいし、エレベータかご1内に向けて設置される監視カメラ等を通じて得た画像情報からエレベータ利用者の属性を検知してもよい。
【0014】
また、歩行補助具検知センサ2が検知する人は、杖や車椅子を利用している人だけでなく、例えばベビーカー等を使用している人や、平均的な歩行スピードで歩行することが難しいと推測される妊婦、高齢者、子供等を検知できるようにしてもよい。これにより、エレベータかご1内のエレベータ利用者の属性を判断する。
【0015】
(
図2)
図2は、災害時にサイネージ装置3の表示画面3aに表示される、出入口7が設置されているエレベータ停止階(出入口階)についての説明図である。なお、建物に複数のエレベータ8が設置されていることを想定して
図2を示している。出入口階には、災害避難者の混雑具合を検知するための混雑状況検知センサ5が複数設置されている。混雑状況検知センサ5は、例えば、建物内の災害避難者について、単位面積当たりの人口密度等を基準にして、出入口階における災害避難者の混雑状況を判断する。
【0016】
なお、混雑状況検知センサ5は、センサによる災害避難者の混雑状況判断に限らず、例えば、カメラ等で建物の設備管理者が混雑状況を直接的に確認して判断するような形態であってもよい。また、混雑状況検知センサ5は、エレベータホール付近の災害避難者の滞留を抑制する目的が達成できるのであれば、必ずしも検知対象階の全体を把握できるように設置される必要はなく、少なくとも出入口7付近やエレベータ8付近にとどめて設置するだけでもよい。
【0017】
また、混雑状況検知センサ5は、出入口階だけに設置されるのではなく、他のエレベータ停止階に設置されていてもよく、これにより、出入口階に災害避難者が滞留した場合に、他のエレベータ停止階に一度降ろした災害避難者の混雑状況も、同様に把握することができる。またこれによって、一定時間経過後に別の階に降ろした災害避難者を再びエレベータに乗せて、時間差を使って出入口階まで残りの災害避難者を移動させることで、建物全体における災害避難者の出入口7までの迅速な避難誘導に貢献する。
【0018】
(
図3)
災害発生を検知すると、サイネージ装置3の表示画面3aには、各エレベータ8の位置から出入口7までの本避難経路9を表示する。なお、説明の都合上、エレベータ8のうち出入口7に近いものをエレベータ8a、出入口7から遠いものをエレベータ8bとした。また、エレベータ8aから出入口7までの本避難経路9を本避難経路9a、エレベータ8bから出入口7までの本避難経路9を本避難経路9bとする。
【0019】
災害避難者は、本避難経路9a,9bに従って、エレベータホール8cから出入口7まで移動するが、災害避難者の人数が多い場合、避難に時間がかかる場合は、本避難経路9a,9b上で徐々に災害避難者の混雑が発生する。このような混雑状況では、エレベータホール8cで災害避難者が滞留し、別のエレベータ8で出入口階まで移動してきた避難者がエレベータホール8cに降りることができないため、本避難経路9a,9bが避難誘導に貢献できず、逆に避難を遅らせてしまう可能性がある。
【0020】
(
図4)
前述の
図3で発生した状況を改善するため、出入口階に到達していないエレベータ利用者向けに、新たに本避難経路9とは別に第2避難経路10を作成する。作成した第2避難経路10は、出入口階に到達していないエレベータ利用者に対してサイネージ装置3の表示画面3aを介して表示される。この第2避難経路10の作成は、歩行補助具検知センサ2で検知したエレベータごとにおける災害避難者の属性や、乗車数検知センサ4で検知したエレベータごとにおける乗車人数の情報に基づいて行われる。なお、作成する第2避難経路10の候補の一例として、
図4には第2避難経路10a~10dを図示した。
【0021】
第2避難経路10の作成基準は、例えば、本避難経路9を避けつつ滞りなく避難できる経路であり、かつエレベータ8a,8bから出入口7までなるべく右左折しない、できるだけ出入口7までの距離が短い、路幅が広い、バリアフリーである等の環境条件を多く有する経路を優先する。
【0022】
第2避難経路10a~10dは、出入口階に到達していないエレベータ利用者に対してすべてを表示するわけではなく、混雑状況に応じていずれかの第2避難経路10を優先して表示する。例えば、前述した本避難経路9a,9bが使用できず、第2避難経路10a,10cを表示画面3aに表示している場合、第2避難経路10aが混雑したら、出入口階に到達していないエレベータ8aの利用者には第2避難経路10bを表示して、第2避難経路10cが混雑したら、出入口階に到達していないエレベータ8bの利用者には第2避難経路10dを表示する。このようにすることで、出入口階における出入口7までの混雑状況の改善に貢献する。
【0023】
(
図5)
エレベータ避難支援装置100は、前述した混雑状況検知センサ5、乗車数検知センサ4、歩行補助具検知センサ2、から取得した情報の処理を行う情報処理部として、混雑状況判断処理部50、経路判断処理部60を有する。経路判断処理部60は、混雑状況予測処理部60a、避難時間予測処理部60bを有する。
【0024】
混雑状況判断処理部50は、混雑状況検知センサ5が検知した混雑状況についての信号の内容に基づいて、対象エリアの災害避難者の混雑度合いを判断する。
【0025】
経路判断処理部60は、混雑状況判断処理部50で判断された混雑度合いに応じて、本避難経路9とは異なる複数の第2避難経路10を作成する。具体的に、経路判断処理部60において、混雑状況予測処理部60aは、混雑状況判断処理部50で判断処理した混雑度合いに基づいて、一定時間経過後の出入口階での混雑状況を予測する。また、避難時間予測処理部60bは、混雑状況判断処理部50で判断処理した混雑度合いと、乗車数検知センサ4で検知した出入口階に到達していないエレベータの乗車数の情報と、歩行補助具検知センサ2で検知した出入口階に到達していないエレベータ利用者(災害避難者)の属性の情報と、に基づいて、一定時間経過後において、エレベータ利用者が出入口階において出入口7まで移動する移動時間を予測する。
【0026】
なお、混雑状況予測処理部60aで算出される予測の混雑状況と、避難時間予測処理部60bで算出される予測の移動時間(避難時間)とは、例えば、各データを機械学習の学習済みのモデルによって解析し算出する方法等が用いられることで、予測される。
【0027】
経路判断処理部60は、予測した混雑状況と災害避難者の避難状況とに基づいて、本避難経路9が使用できないと判断した場合に、出入口階に到着していないエレベータ利用者に対して、作成した第2避難経路10のうち、適切な第2避難経路10を表示する。
【0028】
このようにすることで、経路判断処理部60は、出入口階に未到着の災害避難者にとって最適な避難経路を判断してサイネージ装置3に表示させることで、避難支援に貢献できる。また、建物に複数のエレベータ8がある場合であっても、災害時におけるエレベータの運転効率が向上して、出入口階以外にいる災害避難者の迅速な避難を支援できる。
【0029】
(
図6)
エレベータ避難支援装置100の処理フローについて説明する。エレベータ避難支援装置100は、ステップS101で、建物内で災害が発生しているかどうかを判断する。災害が発生している場合、ステップS102でエレベータ利用者に対して本避難経路9を表示する。災害が発生していない場合は、フローを終了する。
【0030】
ステップS103では、エレベータ避難支援装置100は、エレベータ利用者に表示した本避難経路9上において、災害避難者の混雑を検知したかどうかを判断する。本避難経路9においての災害避難者の混雑は、例えば、単位面積当たりの人口密度等が所定の第1閾値を上回ったかどうかで判断し、所定の第1閾値より上回ったら、ステップS104で混雑フラグを立てる。これにより、本避難経路9とは異なる第2避難経路10を表示する準備を行う。ステップS103で、本避難経路9上の災害避難者の混雑を検知しない場合は、ステップS102で本避難経路9の表示を継続する。
【0031】
ステップS105では、ステップS104で立てた混雑フラグを確認すると、出入口階に到着していないエレベータ利用者の属性を考慮して、そのエレベータ利用者の出入口7までの避難時間を算出し、その予測避難時間が所定の閾値を超えるかどうかを判断する。予測避難時間が所定の閾値を超えるのであれば、ステップS107に進む。ステップS105で、予測避難時間が所定の閾値を超えずに所定の閾値以内に収まっていれば、ステップS106で本避難経路9の表示を継続する。
【0032】
ステップS107で、本避難経路9とは別に、例えば、ルート決定用のテーブルデータで予め作成された複数の第2避難経路10において、出入口7まで混雑していない第2避難経路10があるかどうかを判断する。混雑していない第2避難経路10がある場合、ステップS108で、その第2避難経路10を、出入口階に到着していないエレベータ8の利用者に対して表示する。複数の第2避難経路10のうち、混雑していない第2避難経路10がない場合は、ステップS109で混雑フラグを消して、ステップS102で引き続き本避難経路9を表示し続ける。これにより、作成された第2避難経路10での避難時間が長い場合は、混雑フラグが立っていることが確認されても、本避難経路9を提示するようにして、迅速な避難誘導に貢献する。
【0033】
ステップS108から次のフローは、ステップS110とステップS111に分岐する。ステップS110では、出入口階に到着していないエレベータの利用者(災害避難者)に表示している第2避難経路10において、災害避難者の混雑を検知したかどうかを判断する。ステップS110で表示している第2避難経路10の混雑を検知した場合は、再びステップS107で、表示していない別の第2避難経路10の中で混雑していない第2避難経路10があるかどうかを判断する。
【0034】
ステップS111では、前述したステップS104の混雑フラグについて、本避難経路9の混雑が解消する予測がたつことを検知したかを判断する。混雑解消の予測は、例えば、混雑フラグが立つ条件である所定の第1閾値を、混雑状況検知センサ5で検知した災害避難者の単位面積あたりの人口密度が下回ったかどうかで判断する。災害避難者の単位面積あたりの人口密度が所定の第1閾値を下回り、本避難経路9の混雑解消の予測を検知した場合、ステップS112で混雑解消フラグを立てる。ステップS111で混雑解消の予測ができない場合は、ステップS108の第2避難経路の表示を継続する。
【0035】
ステップS113で、ステップS112で立った混雑解消フラグを確認すると、本避難経路9において、災害避難者の混雑の解消を検知したかどうか判断する。混雑解消の判断は、例えば、混雑解消フラグが消える条件である所定の第2閾値を、混雑状況検知センサ5で検知した単位面積あたりの人口密度が下回ったかどうかで判断する。単位面積あたりの人口密度が所定の第2閾値を下回れば、本避難経路9における混雑が解消できたと判断し、混雑フラグおよび混雑解消フラグを消す。ステップS113で混雑の解消を検知できない場合は、混雑解消フラグのみを消して、混雑フラグを立てたまま、ステップS108で第2避難経路10の表示を継続する。ステップS114で、混雑フラグおよび混雑解消フラグを消したら、第2避難経路10の表示を止め、ステップS102で本避難経路9の表示に戻る。
【0036】
このように、本避難経路9と第2避難経路10を、エレベータ停止階における災害避難者の混雑状況に応じて、出入口階に未到着のエレベータ利用者に使い分けて表示することで、迅速な避難支援を実現できる。
【0037】
なお、予め作成された複数の第2避難経路10の複数経路のうち、災害避難者の属性から判断して移動速度が所定の基準よりも遅いと判断される場合は、混雑していると判断されていても出入口7まで距離の短い第2避難経路10を選択するようにしてもよい。
【0038】
また、本発明は、災害発生時の災害避難者の避難誘導だけでなく、例えばイベントなどで一定の場所に移動時の利用客が混雑することが見込まれ、人の流れが読みやすい場合にも同様に適用できる。
【0039】
以上説明した本発明の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0040】
(1)複数のエレベータ8を有する建物において、エレベータ8を利用するエレベータ利用者を災害発生時に建物の出入口へと誘導する避難経路を表示するサイネージ装置3を有するエレベータ避難支援装置100であって、建物内および避難経路における災害避難者の混雑状況を検知する混雑状況検知センサ5と、エレベータ利用者の人数を検知する乗車数検知センサ4と、エレベータ内で通常歩行移動が困難であるエレベータ利用者を検知する歩行補助具検知センサ2と、混雑状況から混雑度合いを判断する混雑状況判断処理部50と、混雑度合いに応じて避難経路とは異なる第2避難経路10を作成する経路判断処理部60と、を備える。経路判断処理部60は、混雑度合いに基づいて、一定時間経過後の混雑状況を予測する混雑状況予測処理部60aと、予測した一定時間経過後の混雑状況と、歩行補助具検知センサ2が検知したエレベータ利用者の情報と、エレベータ利用者の人数の情報と、に基づいて、エレベータ利用者の一定時間経過後の避難状況を予測する避難時間予測処理部60bと、を有し、避難経路が使用できないと判断した場合に、第2避難経路10をサイネージ装置3に出力する。このようにしたことで、災害発生時にエレベータの利用者に対して迅速な避難支援を実現できるエレベータ避難支援装置100を提供できる。
【0041】
(2)経路判断処理部60は、作成した第2避難経路10のうち、予測した一定時間経過後の混雑状況と、エレベータ利用者の一定時間経過後の避難状況と、に基づいて、第2避難経路10を決定する。このようにしたことで、出入口階に到着していないエレベータ利用者に対して、最適な第2避難経路10を表示することができる。
【0042】
(3)経路判断処理部60は、混雑度合いが第1閾値を超えたら混雑フラグを立て、混雑度合いが第1閾値を下回ったら混雑解消フラグを立てる。このようにしたことで、出入口階における災害避難者の混雑状況に応じて、出入口階に到着していないエレベータ利用者に対して、最適な第2避難経路10を表示することができる。
【0043】
(4)歩行補助具検知センサ2は、エレベータ利用者のうち、歩行補助具の使用者、ベビーカーの使用者、妊婦、高齢者、および子供の少なくともいずれかを、通常歩行移動が困難であるエレベータ利用者として検知する。このようにしたことで、エレベータ利用者の属性を判断して、出入口階に到着していないエレベータ利用者に対して、最適な第2避難経路10を表示することができる。
【0044】
(5)経路判断処理部は60、一定時間経過後の混雑状況を予測することで、エレベータ利用者の出入口までの移動時間を算出する。このようにしたことで、エレベータ利用者の属性か予測できる避難時間に基づいて、出入口階に到着していないエレベータ利用者に対して、最適な第2避難経路10を表示することができる。
【0045】
(6)複数のエレベータ8を有する建物において、エレベータ8を利用するエレベータ利用者を災害発生時に建物の出入口へと誘導する避難経路を表示するエレベータ避難支援方法であって、建物内および避難経路における災害避難者の混雑状況と、エレベータ利用者の人数と、エレベータ内で通常歩行移動が困難であるエレベータ利用者と、を検知し、検知した混雑状況から混雑度合いを判断し、混雑度合いに応じて避難経路とは異なる第2避難経路10を作成し、混雑度合いに基づいて、一定時間経過後の混雑状況を予測し、混雑状況と、通常歩行移動が困難であるエレベータ利用者の情報と、エレベータ利用者の人数の情報と、に基づいて、エレベータ利用者の一定時間経過後の避難状況を予測し、避難経路が使用できないと判断した場合に、第2避難経路10をエレベータ利用者に表示する。このようにしたことで、災害発生時にエレベータの利用者に対して迅速な避難支援を実現できるエレベータ避難支援方法を提供できる。
【0046】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や他の構成を組み合わせることができる。また本発明は、上記の実施形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 エレベータかご
2 歩行補助具検知センサ
3 サイネージ装置
3a 表示画面
4 乗車数検知センサ
5 混雑状況検知センサ
6 階段
7 出入口
8 エレベータ
8a 第1エレベータ
8b 第2エレベータ
8c エレベータホール
9 本避難経路
10 第2避難経路
50 混雑状況判断処理部
60 経路判断処理部
60a 混雑状況予測処理部
60b 避難時間予測処理部
100 エレベータ避難支援装置