(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126882
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ラケットフレーム
(51)【国際特許分類】
A63B 49/022 20150101AFI20240912BHJP
A63B 102/02 20150101ALN20240912BHJP
【FI】
A63B49/022
A63B102:02
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035610
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保富 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直暉
(57)【要約】
【課題】ラケットフレームの貫通孔の壁面にストリングが当たることを抑制することによりスピン性能を向上させることができる。
【解決手段】ラケットフレーム10は、フェース部1を備えている。フェース部1は、内周面ISと、外周面OSと、第1端部(先端部)11と、第2端部(後端部)12と、側端部13とを含んでいる。フェース部1には、フェース部1の周方向に複数の貫通孔Hが設けられている。複数の貫通孔Hの各々は、フェース部1の内周面ISおよび外周面OSを貫通している。複数の貫通孔Hは、互いに隣り合う第1孔H1および第2孔H2を含んでいる。第1孔H1および第2孔H2は、第1端部(先端部)11、第2端部(後端部)12および側端部13の少なくともいずれかに配置されており、かつ外周面OSから内周面ISに向かって互いの距離が近くなるように傾斜している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップ部と、
前記グリップ部に接続されたシャフト部と、
前記シャフト部に接続されたフェース部とを備え、
前記フェース部、前記シャフト部および前記グリップ部は第1方向に並んで配置されており、
前記フェース部は、内周面と、外周面と、前記第1方向において前記グリップ部と反対側に位置する先端部と、前記第1方向において前記グリップ部側に位置する後端部と、前記第1方向と直交する第2方向に位置する側端部とを含み、
前記フェース部には、前記フェース部の周方向に複数の貫通孔が設けられており、
前記複数の貫通孔の各々は、前記フェース部の前記内周面および前記外周面を貫通しており、
前記複数の貫通孔は、互いに隣り合う第1孔および第2孔を含み、
前記第1孔および前記第2孔は、前記先端部、前記後端部および前記側端部の少なくともいずれかに配置されており、かつ前記外周面から前記内周面に向かって互いの距離が近くなるように傾斜している、ラケットフレーム。
【請求項2】
前記複数の貫通孔は、互いに隣り合う第3孔および第4孔を含み、
前記第3孔は、前記第2孔に隣り合うように配置されており、
前記第4孔は、前記第3孔に対して前記第2孔と反対側に配置されており、
前記第3孔および前記第4孔は、前記先端部に配置されており、かつ前記外周面から前記内周面に向かって互いの距離が近くなるように傾斜している、請求項1に記載のラケットフレーム。
【請求項3】
前記第1方向に沿って延在する前記フェース部の中心線に対して、前記第1孔が傾斜する角度の絶対値は前記第2孔が傾斜する角度の絶対値以下であり、前記第3孔が傾斜する角度の絶対値は前記第4孔が傾斜する角度の絶対値以下である、請求項2に記載のラケットフレーム。
【請求項4】
前記中心線に対して、前記第1孔が傾斜する角度の絶対値は前記第2孔が傾斜する角度の絶対値よりも小さく、前記第3孔が傾斜する角度の絶対値は前記第4孔が傾斜する角度の絶対値よりも小さい、請求項3に記載のラケットフレーム。
【請求項5】
前記第1孔および前記第3孔の各々の傾斜する角度は反時計回りに2°以上4°以下であり、
前記第2孔および前記第4孔の各々の傾斜する角度は時計回りに3°以上5°以下である、請求項4に記載のラケットフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラケットフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラケットでは縦方向および横方向にストリングが張られることで打球面が形成される。例えば、特許第6943608号公報(特許文献1)に記載されたラケットでは、ラケットフレームにストリングを挿通する複数の挿通路が形成され、縦方向および横方向の少なくとも一方の両側で複数のストリングが非対称位置に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スピン性能の向上のために打球面の面内方向へのストリングの動きが重要である。ラケットフレームに設けられた挿通路(貫通孔)に通されたストリングが貫通孔の内面に当たるとストリングの動きが制限される。そのため、ストリングの動きが制限されないようにラケットフレームに設けられた貫通孔の内面にストリングが当たることを抑制することが求められる。上記公報に記載されたラケットでは、ラケットフレームの貫通孔の内面にストリングが当たることを抑制することはできない。したがって、ストリングの動きが制限されるため、スピン性能を向上させることはできない。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的はラケットフレームの貫通孔の内面にストリングが当たることを抑制することによりスピン性能を向上させることができるラケットフレームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のラケットフレームは、グリップ部と、グリップ部に接続されたシャフト部と、シャフト部に接続されたフェース部とを備えている。フェース部、シャフト部およびグリップ部は第1方向に並んで配置されている。フェース部は、内周面と、外周面と、第1方向においてグリップ部と反対側に位置する先端部と、第1方向においてグリップ部側に位置する後端部と、第1方向と直交する第2方向に位置する側端部とを含んでいる。フェース部には、フェース部の周方向に複数の貫通孔が設けられている。複数の貫通孔の各々は、フェース部の内周面および外周面を貫通している。複数の貫通孔は、互いに隣り合う第1孔および第2孔を含んでいる。第1孔および第2孔は、先端部、後端部および側端部の少なくともいずれかに配置されており、かつ外周面から内周面に向かって互いの距離が近くなるように傾斜している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ラケットフレームの貫通孔の内面にストリングが当たることを抑制することによりスピン性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係るラケットフレームを概略的に示す正面図である。
【
図2】実施の形態に係るラケットを概略的に示す拡大正面図である。
【
図5】本実施の形態のラケットでのラケットフレームの複数の貫通孔とストリングとの位置関係を概略的に示す拡大斜視図である。
【
図7】本実施の形態のラケットでのラケットフレームにストリングが張られた状態を説明するための正面図である。
【
図8】比較例のラケットでのラケットフレームの複数の貫通孔とストリングとの位置関係を概略的に示す拡大正面図である。
【
図9】比較例のラケットでのラケットフレームの複数の貫通孔とストリングとの位置関係を概略的に示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、特に言及しない限り、以下の図面において同一または対応する部分には同一の参照符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0010】
図1を参照して、本実施の形態に係るラケットフレーム10の構造について説明する。以下の図では、説明の便宜のため、複数の貫通孔Hは適時省略されている。本実施の形態に係るラケットフレーム10は、フェース部1と、シャフト部2と、グリップ部3とを備えている。フェース部1、シャフト部2およびグリップ部3は、第1方向(縦方向)D1に並んで配置されている。シャフト部2は、第1方向D1において、フェース部1とグリップ部3の間に配置されている。
【0011】
ラケットフレーム10に用いられる材質は、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)である。ただし、ラケットフレーム10に用いられる材質は、CFRPに限られない。例えば、ラケットフレーム10に用いられる材質として、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic)等を用いることができる。
【0012】
フェース部1は、平面視において、楕円環形状を有している。平面視におけるフェース部1の長手方向は、第1方向D1に沿っている。平面視におけるフェース部1の短手方向は、第1方向D1と直交する第2方向(横方向)D2に沿っている。平面視におけるフェース部1の奥行き方向は、第1方向D1および第2方向D2に直交する第3方向(厚み方向)D3に沿っている。
【0013】
フェース部1は、第1方向D1において、第1端(先端)1aと第2端(後端)1bとを有している。第1端1aは、第1方向D1において、フェース部1におけるグリップ部3と反対側に位置する端である。第1端1aは、第1方向D1においてフェース部1の最も先に位置している。第2端1bは、第1方向D1において、グリップ部3側に位置する端である。第2端1bは、第1方向D1においてフェース部1の最も後に位置している。
【0014】
フェース部1は、第1端1aを有する第1端部(先端部)11と、第2端1bを有する第2端部(後端部)12とを含んでいる。第1端部(先端部)11は、第1方向D1においてグリップ部3と反対側に位置する。第1端部11は、第1端1aを中心としてフェース部1の周方向に沿って延びている。第2端部(後端部)12は、第1方向D1においてグリップ部3側に位置する。第2端部12は、第2端1bを中心としてフェース部1の周方向に沿って延びている。第2端部12は、第1方向D1において、第1端部11と間隔を隔てて配置されている。第2端部12はヨーク部である。
【0015】
フェース部1は、側端部13を含んでいる。側端部13は、第1方向D1と直交する第2方向D2に位置する。側端部13は、第3端部(左端部)13aおよび第4端部(右端部)13bを有している。第3端部13aは、第1端部11と第2端部12との間に配置されており、かつ第1端部11の一端と第2端部12の一端とを接続している。第4端部13bは、第1端部11と第2端部12との間に配置されており、かつ第1端部11の他端と第2端部12の他端とを接続している。第4端部13bは、第2方向D2において、第3端部13aと間隔をあけて配置されている。
【0016】
フェース部1は、内周面ISおよび外周面OSを含んでいる。フェース部1の第1端部11、第2端部12、第3端部13aおよび第4端部13bの各々は、内周面ISおよび外周面OSを有している。フェース部1には、フェース部1の周方向に複数の貫通孔Hが設けられている。複数の貫通孔Hは、フェース部1の周方向に間隔をあけて配置されている。
【0017】
複数の貫通孔Hの各々は、フェース部1の内周面ISおよび外周面OSを貫通している。複数の貫通孔Hの各々はそれぞれ内面を有している。複数の貫通孔Hの各々の内面は、フェース部1の内周面ISおよび外周面OSを貫通している。複数の貫通孔Hの各々の内面の内側端はフェース部1の内周面ISに接続されており、複数の貫通孔Hの各々の内面の外側端はフェース部1の外周面OSに接続されている。複数の貫通孔Hは、第1端部11、第2端部12、第3端部13aおよび第4端部13bの各々に設けられている。
【0018】
第1端部11に設けられた複数の貫通孔Hの各々と、第2端部12に設けられた複数の貫通孔Hの各々とはそれぞれ第1方向D1において向かい合っている。第3端部13aに設けられた複数の貫通孔Hの各々と、第4端部13bに設けられた複数の貫通孔Hの各々とはそれぞれ第2方向D2において向かい合っている。
【0019】
シャフト部2は、第1分岐部材2Aと第2分岐部材2Bとを有している。グリップ部3は、ラケット100の使用者が握る部分である。グリップ部3は、ラケットフレーム10の長手方向に沿って延在している。グリップ部3は、ラケットフレーム10の第2端部12側にある。
【0020】
図2~
図7を参照して、本実施の形態に係るラケットフレーム10およびラケット100の構造について説明する。
【0021】
図2および
図7を参照して、本実施の形態に係るラケット100は、ラケットフレーム10と、ストリング20とを備えている。ストリング20は、ラケットフレーム10のフェース部1に張られている。ストリング20は、複数の貫通孔Hの各々に通されている。ストリング20は、複数のメインストリング部201と、複数のクロスストリング部202と、複数の折り返し部203とを有している。
【0022】
ストリング20の材料は、例えばポリエステル、ナイロンなどである。ストリング20の直径は、例えば1.20mm以上1.30mm以下である。ストリング20の直径は、例えば1.20mm、1.25mm、1.30mmなどであってもよい。ストリング20の張力は、例えば40lbs以上60lbs以下である。ストリング20の張力は、例えば40lbs、50lbs、60lbsなどであってもよい。
【0023】
複数のメインストリング部201は、第1端部11に配置された複数の貫通孔Hの各々と第2端部12に配置された複数の貫通孔Hの各々との間を第1方向D1に沿って延びている。複数のクロスストリング部202は、第3端部13aに配置された複数の貫通孔Hの各々と第4端部13bに配置された複数の貫通孔Hの各々との間を第2方向D2に沿って延びている。
【0024】
複数の折り返し部203は、複数の貫通孔Hよりも外側に配置されている。複数の折り返し部203は、第1端部11、第2端部12、第3端部13aおよび第4端部13bの各々においてフェース部1の周方向に隣り合う貫通孔Hの間に配置されている。つまり、ストリング20は、第1端部11、第2端部12、第3端部13aおよび第4端部13bの各々においてフェース部1の周方向に隣り合う貫通孔Hよりも外側で折り返されている。
【0025】
図2~
図6を参照して、ラケットフレーム10のフェース部1に設けられた複数の貫通孔Hの詳細について説明する。
【0026】
図2および
図3を参照して、ラケットフレーム10のフェース部1は、グロメット15をさらに備えている。グロメット15は、ストリング20を保護する。グロメット15の材料は、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴムなどである。グロメット15の材料は、例えばナイロン樹脂であってもよい。1つのグロメット15に1つの貫通孔Hが設けられている。グロメット15の孔の最小の幅は、ストリング20の幅よりも大きい。
【0027】
複数の貫通孔Hは、第1端1aおよび第2端1bを通るフェース部1の中心線CL(仮想線)に対して、線対称に設けられている。なお、中心線CLは、グリップ部3の中心軸を通る。複数の貫通孔Hは、第1孔H1および第2孔H2を含んでいる。第1孔H1および第2孔H2は、第1端部(先端部)11、第2端部(後端部)12および側端部13の少なくともいずれかに配置されている。本実施の形態では、第1孔H1および第2孔H2は、第1端部(先端部)11、第2端部(後端部)12および側端部13の全てに配置されている。また、複数の貫通孔Hは、第3孔H3および第4孔H4を含んでいる。第1孔H1、第2孔H2、第3孔H3および第4孔H4は、ストリング20のメインストリング部201が通される孔である。
【0028】
第1端部(先端部)11に配置された、第1孔H1、第2孔H2、第3孔H3および第4孔H4は、この順に中心線CLから離れるように配置されている。
【0029】
図3および
図4を参照して、第1孔H1および第2孔H2は互いに隣り合っている。第1孔H1は、中心線CLに最も近い位置に配置されている。第2孔H2は、第1孔H1に対して中心線CLとは反対側に配置されている。第1孔H1および第2孔H2は、外周面OSから内周面ISに向かって互いの距離が近くなるように傾斜している。第1孔H1の中心を通る中心線および第2孔H2の中心を通る中心線はそれぞれフェース部1の中心線CLに沿う方向に対して互いに反対側に傾斜している。
【0030】
第3孔H3および第4孔H4は互いに隣り合っている。第3孔H3は、第2孔H2に隣り合うように配置されている。第3孔H3は、第2孔H2に対して第1孔H1とは反対側に配置されている。第4孔H4は、第3孔H3に対して第2孔H2とは反対側に配置されている。第3孔H3および第4孔H4は、第1端部(先端部)11に配置されている。第3孔H3および第4孔H4は、外周面OSから内周面ISに向かって互いの距離が近くなるように傾斜している。第3孔H3の中心を通る中心線および第4孔H4の中心を通る中心線はそれぞれフェース部1の中心線CLに沿う方向に対して互いに反対側に傾斜している。
【0031】
第1方向D1に沿って延在するフェース部1の中心線CLに対して、第1孔H1が傾斜する角度の絶対値は第2孔H2が傾斜する角度の絶対値以下であり、第3孔H3が傾斜する角度の絶対値は第4孔H4が傾斜する角度の絶対値以下である。好ましくは、中心線CLに対して、第1孔H1が傾斜する角度の絶対値は第2孔H2が傾斜する角度の絶対値よりも小さく、第3孔H3が傾斜する角度の絶対値は第4孔H4が傾斜する角度の絶対値よりも小さい。
【0032】
第1孔H1および第3孔H3の各々の傾斜する角度は反時計回りに例えば2°以上4°以下であり、第2孔H2および第4孔H4の各々の傾斜する角度は時計回りに例えば3°以上5°以下である。好ましくは、第1孔H1および第3孔H3の各々の傾斜する角度は反時計回りに3°であり、第2孔H2および第4孔H4の各々の傾斜する角度は時計回りに4°である。本実施の形態では、反時計回りを+(プラス)とし、時計回りを-(マイナス)と規定している。
【0033】
図5を参照して、複数の貫通孔Hの各々の平面形状は、例えば円形状である。つまり、この場合、複数の貫通孔Hの表面および裏面の各々の平面形状は円形状である。なお、貫通孔Hの平面形状は、円形状に限定されず、例えばX字形状であってもよい。
【0034】
また、複数の貫通孔Hは、第2端部(後端部)12に配置された、第1孔H1、第2孔H2、第3孔H3および第4孔H4を含んでいる。第2端部(後端部)12に配置された、第1孔H1、第2孔H2、第3孔H3および第4孔H4は、第1端部(先端部)11と同様に配置されている。
【0035】
図2および
図6を参照して、複数の貫通孔Hは、側端部13に配置された、第1孔H1、第2孔H2、第3孔H3および第4孔H4を含んでいる。本実施の形態では、第1孔H1、第2孔H2、第3孔H3および第4孔H4は、第3端部13aに設けられている。第1孔H1、第2孔H2、第3孔H3および第4孔H4は、第4端部13bに設けられていてもよい。第1孔H1、第2孔H2、第3孔H3および第4孔H4は、ストリング20のクロスストリング部202が通される孔である。
【0036】
側端部13に配置された、第1孔H1、第2孔H2、第3孔H3および第4孔H4の配置について説明する。第1孔H1および第2孔H2は互いに隣り合っている。第1孔H1は、第1方向D1においてフェース部1の中央に最も近い位置に配置されている。第2孔H2は、第1孔H1に対し第1方向D1においてフェース部1の中央とは反対側に配置されている。第1孔H1および第2孔H2は、外周面OSから内周面ISに向かって互いの距離が近くなるように傾斜している。第1孔H1の中心を通る中心線および第2孔H2の中心を通る中心線は、第1方向D1においてフェース部1の中央に沿う方向に対して傾斜している。
【0037】
第3孔H3および第4孔H4は互いに隣り合っている。第3孔H3は、第4孔H4に隣り合うように配置されている。第3孔H3は、第2孔H2に対して第1孔H1とは反対側に配置されている。第4孔H4は、第3孔H3に対して第2孔H2とは反対側に配置されている。第3孔H3および第4孔H4は、外周面OSから内周面ISに向かって互いの距離が近くなるように傾斜している。第3孔H3の中心を通る中心線および第4孔H4の中心を通る中心線は、第1方向D1においてフェース部1の中央に沿う方向に対して傾斜している。
【0038】
図7を参照して、本実施の形態のラケット100でのラケットフレーム10にストリング20が張られた状態を説明する。ラケットフレーム10のフェース部1において、第1端部(先端部)11および第2端部(後端部)12にストリング20が張られた状態を説明する。ストリング20の複数の折り返し部203は、第1折り返し部203a、第2折り返し部203b、第3折り返し部203c、第4折り返し部203dおよび第5折り返し部203eを含んでいる。第1孔H1を通るメインストリング部201と、第2孔H2を通るメインストリング部201とは、第1折り返し部203aを介して接続されている。第2孔H2を通るメインストリング部201と、第3孔H3を通るメインストリング部201とは、第2折り返し部203bを介して接続されている。第3孔H3を通るメインストリング部201と第4孔H4を通るメインストリング部201とは、第3折り返し部203cを介して接続されている。第4孔H4を通るメインストリング部201と、第4孔H4の外側の貫通孔Hを通るメインストリング部201とは第4折り返し部203dを介して接続されている。第4孔H4の外側の貫通孔Hを通るメインストリング部201と、さらに外側の貫通孔Hを通るメインストリング部201とは第5折り返し部203eを介して接続されている。また、図示しないが、側端部13にも同様にストリング20が張られている。つまり、第3端部(左端部)13aおよび第4端部(右端部)13bに同様にストリング20が張られている。
【0039】
なお、上記では、第1孔H1、第2孔H2、第3孔H3および第4孔H4は、中心線CLに対して片側に配置されている。しかしながら、第1孔H1、第2孔H2、第3孔H3および第4孔H4は、第1孔H1および第2孔H2が中心線CLを挟んで中心線CLに対して対称に配置されていてもよい。
【0040】
次に、実施の形態の作用効果について比較例と対比して説明する。
【0041】
図8および
図9を参照して、比較例のラケットフレーム10では、第1孔H1、第2孔H2、第3孔H3および第4孔H4の各々は、フェース部1の中心線CLに沿って延びている。そのため、ストリング20が張られることで打球面が形成される際に、ストリング20の張力により折り返し部203の両側に位置する第1孔H1および第2孔H2の各々の内面の内周面IS側にストリング20が当たる。
【0042】
本実施の形態に係るラケットフレーム10では、第1孔H1および第2孔H2は、外周面OSから内周面ISに向かって互いの距離が近くなるように傾斜している。そのため、折り返し部203の両側に第1孔H1および第2孔H2が位置すると、第1孔H1および第2孔H2の内面の内周面IS側にストリング20が当たることを抑制することができる。したがって、ラケットフレーム10の貫通孔Hの内面にストリング20が当たることを抑制することによりスピン性能を向上させることができる。
【0043】
また、第1孔H1および第2孔H2は、第1端部(先端部)11、第2端部(後端部)12および側端部13の少なくともいずれかに配置されている。第1端部(先端部)11の縦のストリング20(メインストリング部201)は、打点に近いため、スピン性能に対する影響が大きい。したがって、第1孔H1および第2孔H2が第1端部(先端部)11に配置されていることによって、打球面の面内方向へのストリング20の動きを確保することによりスピン性能を向上させることができる。
【0044】
また、縦のストリング20(メインストリング部201)は、横のストリング20(クロスストリング部202)よりもスピン性能に影響を与える。したがって、第1孔H1および第2孔H2が第2端部(後端部)12に配置されていることによって、打球面の面内方向へのストリング20の動きを確保することによりスピン性能を向上させることができる。
【0045】
また、横のストリング20(クロスストリング部202)は、縦のストリング20(メインストリング部201)よりもスピン性能に与える影響は小さいが、スピン性能に影響を与える。したがって、第1孔H1および第2孔H2が側端部13に配置されていることによって、打球面の面内方向へのストリング20の動きを確保することによりスピン性能を向上させることができる。
【0046】
また、ラケットフレーム10の貫通孔Hの内面にストリング20が当たることを抑制することにより外観を向上させることができる。
【0047】
また、ラケットフレーム10の貫通孔Hの内面にストリング20が当たることを抑制することによりグロメット15とストリング20の損傷を抑えることができるため、グロメット15とストリング20の耐久性を向上させることができる。
【0048】
本実施の形態に係るラケットフレーム10では、第3孔H3および第4孔H4は、外周面OSから内周面ISに向かって互いの距離が近くなるように傾斜している。そのため、折り返し部203の両側に第3孔H3および第4孔H4が位置すると、第3孔H3および第4孔H4の内周の内周面IS側にストリング20が当たることを抑制することができる。したがって、ラケットフレーム10の貫通孔Hの内面にストリング20が当たることをさらに抑制することによりスピン性能をさらに向上させることができる。
【0049】
本実施の形態に係るラケットフレーム10では、第1方向D1に沿って延在するフェース部1の中心線CLに対して、第1孔H1が傾斜する角度の絶対値は第2孔H2が傾斜する角度の絶対値以下であり、第3孔H3が傾斜する角度の絶対値は第4孔H4が傾斜する角度の絶対値以下である。これにより、貫通孔Hの内面にストリング20が当たることを効果的に抑制することができることを本発明者らは見出した。
【0050】
本実施の形態に係るラケットフレーム10では、中心線CLに対して、第1孔H1が傾斜する角度の絶対値は第2孔H2が傾斜する角度の絶対値よりも小さく、第3孔H3が傾斜する角度の絶対値は第4孔H4が傾斜する角度の絶対値よりも小さい。これにより、貫通孔Hの内面にストリング20が当たることを効果的に抑制することができることを本発明者らは見出した。
【0051】
本実施の形態に係るラケットフレーム10では、第1孔H1および第3孔H3の各々の傾斜する角度は反時計回りに2°以上4°以下であり、第2孔H2および第4孔H4の各々の傾斜する角度は時計回りに3°以上5°以下である。これにより、貫通孔Hの内面にストリング20が当たることを効果的に抑制することができることを本発明者らは見出した。
【0052】
本実施の形態に係るラケット100は、上記のラケットフレーム10と、複数の貫通孔Hに通されたストリング20を備えている。そのため、ラケットフレーム10の貫通孔Hの内面にストリング20が当たることを抑制することによりスピン性能を向上させることができる。
【0053】
(実施例)
次に、本実施の形態に係るラケットフレームおよびラケットの実施例について比較例と対比して説明する。
【0054】
本実施例では実施例1~5について比較例1~6と対比してストリング20が張られることで打球面が形成された状態を検証した。実施例1~5は、本実施の形態に係るラケットフレームおよびラケットと同様の構造を備えている。実施例1~5では、第1孔および第3孔の各々の傾斜する角度は反時計回りに2°以上4°以下であり、第2孔および第4孔の各々の傾斜する角度は時計回りに3°以上5°以下である。
【0055】
比較例1では、第1孔および第3孔の各々の傾斜する角度は反時計回りに1°であり、第2孔および第4孔の各々の傾斜する角度は時計回りに1°である。比較例2では、第1孔および第3孔の各々の傾斜する角度は反時計回りに5°であり、第2孔および第4孔の各々の傾斜する角度は時計回りに5°である。比較例3では、第1孔および第3孔の各々の傾斜する角度は反時計回りに10°であり、第2孔および第4孔の各々の傾斜する角度は時計回りに10°である。
【0056】
比較例4では、第1孔および第3孔の各々の傾斜する角度は反時計回りに1°であり、第2孔および第4孔の各々の傾斜する角度は時計回りに1°である。比較例5では、第1孔および第3孔の各々の傾斜する角度は反時計回りに5°であり、第2孔および第4孔の各々の傾斜する角度は時計回りに5°である。比較例6では、第1孔および第3孔の各々の傾斜する角度は反時計回りに10°であり、第2孔および第4孔の各々の傾斜する角度は時計回りに10°である。
【0057】
実施例1では、ストリングの材料はポリエステルであり、ストリングの直径は1.25mmであり、ストリングの張力は50lbsである。実施例2では、ストリングの材料はポリエステルであり、ストリングの直径は1.25mmであり、ストリングの張力は60lbsである。実施例3では、ストリングの材料はポリエステルであり、ストリングの直径は1.20mmであり、ストリングの張力は50lbsである。実施例4では、ストリングの材料はポリエステルであり、ストリングの直径は1.20mmであり、ストリングの張力は60lbsである。実施例5では、ストリングの材料はナイロン(マルチフィラメント)であり、ストリングの直径は1.30mmであり、ストリングの張力は40lbsである。
【0058】
比較例1~3では、ストリングの材料はポリエステルであり、ストリングの直径は1.25mmであり、ストリングの張力は50lbsである。比較例4~6では、ストリングの材料はポリエステルであり、ストリングの直径は1.25mmであり、ストリングの張力は60lbsである。
【0059】
比較例1~6のいずれも第1孔、第2孔、第3孔および第4孔の内面の内周側にストリングが当たった。それに対して、実施例1~5のいずれも第1孔、第2孔、第3孔および第4孔の内面の内周側にストリングが当たらなかった。また、実施例1~5のいずれも折り返し部と反対側において第1孔、第2孔、第3孔および第4孔の中央付近にストリングが位置した。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 フェース部、2 シャフト部、3 グリップ部、10 ラケットフレーム、11 第1端部(先端部)、13 側端部、20 ストリング、100 ラケット、CL 中心線、D1 第1方向、D2 第2方向、D3 第3方向、H 貫通孔、H1 第1孔、H2 第2孔、H3 第3孔、H4 第4孔、IS 内周面、OS 外周面。