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  • 特開-圧入装置 図1
  • 特開-圧入装置 図2
  • 特開-圧入装置 図3
  • 特開-圧入装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126888
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】圧入装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/02 20060101AFI20240912BHJP
   B21D 39/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B23P19/02 B
B21D39/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035616
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】横井 宏和
(72)【発明者】
【氏名】平田 尚之
(72)【発明者】
【氏名】北村 英樹
(72)【発明者】
【氏名】内田 洵喜
【テーマコード(参考)】
3C030
【Fターム(参考)】
3C030BB02
3C030BB04
3C030BC19
3C030BC24
(57)【要約】
【課題】本発明では、異なる部品に対して装置の入れ替えを不要にする圧入装置を提供することを課題とする。
【解決手段】軸受W1と、軸受W1よりも外径の小さいストレートピンW2とをワークへ圧入する圧入装置1であって、軸受W1を保持する外側保持部11と、外側保持部11の内側に設けられ、ストレートピンW2を保持する内側保持部12と、軸受W1およびストレートピンW2を圧入する圧入部20と、を備え、圧入部20は、外側保持部11および内側保持部12に対して昇降可能に設けられることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、前記第1部材よりも外径の小さい第2部材とをワークへ圧入する圧入装置であって、
前記第1部材を保持する外側保持部と、
前記外側保持部の内側に設けられ、前記第2部材を保持する内側保持部と、
前記第1部材および前記第2部材を圧入する圧入部と、を備え、
前記圧入部は、前記外側保持部および前記内側保持部に対して昇降可能に設けられることを特徴とする圧入装置。
【請求項2】
前記第1部材は圧入方向に貫通する貫通孔をその内側に有し、
前記内側保持部は前記貫通孔内に設けられ、前記第2部材を保持する請求項1記載の圧入装置。
【請求項3】
前記内側保持部に保持された前記第2部材は、前記外側保持部に保持された前記第1部材よりも圧入方向に突出して設けられ、
前記第2部材は圧入方向と反対方向の押圧により、当該方向へ退避可能に設けられる請求項1記載の圧入装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を構成する部品には、軸受などの複数の部材を圧入して組み立てられるものが存在する。そして、複数の圧入装置を入れ替えて複数の部材を圧入する設備が従来から存在する。
【0003】
例えば特許文献1には、複数の圧入・かしめヘッドを具備するヘッド交換装置が開示されている。1番目の圧入・かしめヘッドをヘッドホルダに取り付けて圧入動作が行われると、ヘッド交換用のアームによって1番目の圧入・かしめヘッドが取り外しされ、2番目の圧入・かしめヘッドがヘッドホルダに装着される、といったように、順次ヘッドの組み換えおよび圧入動作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-306842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧入動作の度に圧入装置を入れ替える構成では、組み換えによる作業時間の増加、設備増によるコストや必要スペースの増加という問題があった。
【0006】
本発明では、異なる部品に対して装置の入れ替えを不要にする圧入装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、第1部材と、前記第1部材よりも外径の小さい第2部材とをワークへ圧入する圧入装置であって、前記第1部材を保持する外側保持部と、前記外側保持部の内側に設けられ、前記第2部材を保持する内側保持部と、前記第1部材および前記第2部材を圧入する圧入部と、を備え、前記圧入部は、前記外側保持部および前記内側保持部に対して昇降可能に設けられることを特徴とする。
【0008】
本発明の圧入装置によれば、第1部材の内側に第2部材を保持する構成により、2部材を同時に保持してそれぞれ圧入することができる。従って、圧入する部材ごとに圧入装置を持ち替える必要がないため、持ち替え時間の削減により圧入動作にかかる時間を小さくできる。また、圧入装置を減らすことができ、コストダウンおよび省スペース化を実現できる。
【0009】
また本発明の圧入装置は、前記第1部材は圧入方向に貫通する貫通孔をその内側に有し、前記内側保持部は前記貫通孔内に設けられ、前記第2部材を保持する構成とすることができる。これにより、圧入装置が、第1部材の内側の貫通孔により形成された空間を利用して、第2部材を保持できる。
【0010】
また本発明の圧入装置は、前記内側保持部に保持された前記第2部材は、前記外側保持部に保持された前記第1部材よりも圧入方向に突出して設けられ、 前記第2部材は圧入方向と反対方向の押圧により、当該方向へ退避可能に設けることができる。これにより、第1部材の圧入動作時に、第2部材が妨げにならない位置へ退避させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、異なる2部材の圧入時に、圧入装置の持ち替えを省略できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る圧入装置の構成を示す断面図である。
図2】(a)~(c)は、図1の圧入装置により軸受を圧入する様子を示す断面図である。
図3】(a)~(d)は、図1の圧入装置によりストレートピンを圧入する様子を示す断面図である。
図4】圧入装置により2部材を同時に圧入する様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では、について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る圧入装置を示す断面図である。本実施形態では、一例として、軸受とストレートピンを圧入する圧入装置について説明する。
【0015】
図1に示すように、圧入装置1は、外側保持部11と、内側保持部12と、圧入部20とを有する。外側保持部11は筒状に形成され、その内側に内側保持部12および圧入部20が設けられる。図1の下方向が部材を圧入する圧入方向である。以下、図1の上下方向を単に上下方向とも称する。ただし、この上下方向は必ずしも重力方向およびその反対方向を意味するものではない。
【0016】
外側保持部11は、その内周面側の圧入方向の他端側(図1の下側)に、プランジャ13を介して、第1部材としての軸受W1を保持する。プランジャ13は軸受W1の外周面に対して径方向の内側方向に当接する。プランジャ13は周方向に複数(本実施形態では三つ)設けられ、周方向の複数箇所で軸受W1を保持する。外側保持部11は、軸受W1、内側保持部12、ストレートピンW2をその内側に保持する大径の筒部と、大径の筒部に連続して設けられ、その内側に圧入部20の基端部を保持する小径の筒部とを有する。小径の筒部はその一端側でスプリング15に接続される。
【0017】
内側保持部12は円筒状をなす。内側保持部12は、その内周面側の圧入方向の他端側に、プランジャ14を介して、第2部材としてのストレートピンW2を保持する。また内側保持部12は、圧入方向の一端側でスプリング16に接続される。内側保持部12は、軸受W1の内側に設けられた貫通孔W1a内に配置される。内側保持部12は、ストレートピンW2の下端部が突出した状態でストレートピンW2を保持する。これにより、ストレートピンW2の圧入動作時に、圧入装置1とワーク側の形状との干渉を回避できる。プランジャ14は周方向に複数(本実施形態では三つ)設けられ、周方向の複数箇所でストレートピンW2を保持する。
【0018】
圧入部20は、外側圧入部21と内側圧入部22とを有し、各部材を圧入する部分である。外側保持部11は、スプリング15を介して圧入部20の図1の上端側に接続されており、圧入部20は外側保持部11に対して圧入方向およびその反対方向である図1の上下方向に相対移動可能(昇降可能)に設けられる。内側保持部12は、スプリング16を介して内側圧入部22に接続されており、内側圧入部22はスプリング16に対して上下方向に相対移動可能(昇降可能)に設けられる。
【0019】
外側圧入部21はその一端側の軸部に対して、円筒状部が圧入方向に連続して設けられる。この円筒状部は外側保持部11の内側に配置される。外側圧入部21は軸受W1の端面の外周側部分に対して圧入方向の一端側から当接し、軸受W1に対して圧入方向の圧力を加える部分である。
【0020】
内側圧入部22は外側圧入部21に保持される。内側圧入部22はストレートピンW2の上端に当接可能に設けられ、ストレートピンW2に対して圧入方向の圧力を加える部分である。
【0021】
次に、上記の圧入装置1により、軸受W1およびストレートピンW2を圧入する様子について説明する。以下では、一例として、軸受W1を先に圧入し、その後、ストレートピンW2を圧入する場合について説明する。ただし、圧入の順序はこれに限らず、ストレートピンW2を先に圧入したり、ワークW3の構成によっては軸受W1とストレートピンW2を同時に圧入してもよい。
【0022】
まず、図2(a)に示すように、圧入装置1の外側保持部11に軸受W1を、内側保持部12にストレートピンW2をそれぞれ保持させ、ワークW3の軸受圧入部W3aに接近させる。そして図2(b)に示すように、外側保持部11の圧入側の端部をワークW3に当接させる。この際、圧入側に突出したストレートピンW2の圧入側端部がワークW3に当接して押圧されることにより、スプリング16が圧縮されてストレートピンW2および内側保持部12が圧入方向と反対方向へ退避する。これにより、ストレートピンW2の突出部を、軸受W1の圧入動作の妨げにならないようにすることができる。
【0023】
図2(b)の状態から圧入装置1をさらに圧入方向へ加圧することにより、外側保持部11がワークW3に押し当てられてスプリング15(図1参照)が圧縮され、図2(c)に示すように外側圧入部21が軸受W1をワークW3の軸受圧入部W3aに圧入する。別の言い方をすると、スプリング15の圧縮分だけ、圧入部20および軸受W1が圧入装置1のその他の部分およびワークW3に対して圧入方向へ相対移動し、軸受W1がワークW3の軸受圧入部W3aに圧入される。圧入動作後、スプリング15のバネ力により外側圧入部21を元の位置に復元させる。
【0024】
その後、軸受W1の圧入動作を完了した圧入装置1を上方へ退避させ、図3(a)に示すように、ワークW3のストレートピン圧入部W3b上方へ移動させる。そして、圧入装置1を下降させ、図3(b)に示すように、内側保持部12の圧入側端部をワークW3に当接させる。この状態で、圧入装置1を圧入方向へ加圧することにより、スプリング16が圧縮されて圧入部20および外側保持部11がその分だけ下降する。
【0025】
そして、図3(c)に示すように、内側圧入部22の圧入側端部がストレートピンW2に当接する。この状態で、圧入装置1をさらに圧入方向へ加圧することにより、スプリング16がさらに圧縮され、図3(d)に示すように、内側圧入部22がストレートピンW2をワークW3のストレートピン圧入部W3bに圧入する。別の言い方をすると、スプリング16の圧縮分だけ、圧入部20およびストレートピンW2が圧入装置1のその他の部分およびワークW3に対して圧入方向へ相対移動し、ストレートピンW2がワークW3のストレートピン圧入部W3bに圧入される。圧入動作後、スプリング16のバネ力により内側圧入部22を元の位置に復元させる。
【0026】
以上により、軸受W1およびストレートピンW2の圧入動作が完了する。圧入動作を完了した圧入装置1を上方へ退避させ、次に圧入する軸受W1およびストレートピンW2を保持させる。
【0027】
以上のように本実施形態では、第1部材である軸受W1の内側の貫通孔W1aにより形成された空間を利用して、その部分に内側保持部12、内側圧入部22および第2部材であるストレートピンW2を配置する。これにより、1つの圧入装置1で異なる2部材を保持し、それぞれの部材を圧入することができる。従って、圧入する部材ごとに圧入装置を持ち替える必要がないため、持ち替え時間の削減により圧入動作にかかる時間を小さくできる。また、圧入装置を減らすことができ、コストダウンおよび省スペース化を実現できる。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0029】
以上の説明では、異なる2部材を別々に圧入する場合を示したが、第2部材の圧入位置が第1部材の圧入位置の内側に配置されるような場合には、2部材を同時に圧入する構成であってもよい。例えば図4に示すように、第1部材としての軸受W1をワークW3の圧入部W3aへ、第2部材としてのストレートピンW2をワークW3の圧入部W3bへ同時に圧入することができる。これにより、前述の実施形態に加えて、圧入動作の回数を減らすことができるため、さらに圧入動作の時間を小さくできる。
【0030】
圧入装置が圧入する異なる2部材は、上記実施形態のように種類の異なる2部材である必要はなく、中空部を有する第1部材の内側に、第2保持部および第2部材が配置可能であればよい。例えば同じ部材として、2種類のオイルシールであってもよい。また、3種類以上を保持して圧入する圧入装置であってもよい。圧入装置が保持する第1部材としては、本実施形態の他に、オイルシールやブッシュなどが挙げられる。また第2部材としてはストレートピンの他、オイルシールが挙げられる。また圧入対象となるワークとして、例えばトランスミッション、トランスアクスルのケースやリアカバー、電飾カバーなどが挙げられる。しかし、これに限るものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 圧入装置
11 外側保持部
12 内側保持部
20 圧入部
21 外側圧入部
22 内側圧入部
W1 軸受(第1部材)
W1a 貫通孔
W2 ストレートピン(第2部材)
W3 ワーク
図1
図2
図3
図4