(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012689
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】体組成測定システム及び体組成測定プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0537 20210101AFI20240123BHJP
【FI】
A61B5/0537 100
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199953
(22)【出願日】2023-11-27
(62)【分割の表示】P 2019095199の分割
【原出願日】2019-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000133179
【氏名又は名称】株式会社タニタ
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】児玉 美幸
(72)【発明者】
【氏名】久米川 真弓
(72)【発明者】
【氏名】武藤 有悟
(57)【要約】
【課題】 利用者が、集団の中での自己の体組成の位置づけについての情報を得ることができる体組成測定システム及び体組成測定プログラムを提供する。
【解決手段】 体組成測定システム10であって、利用者の体組成の測定値を取得する体組成測定部363と、利用者の測定値の集団の中での位置づけを示す情報である位置づけ情報を求める位置づけ情報取得部364と、を備える。体組成測定部363は、利用者の体組成を測定することで測定値を取得する。位置づけ情報取得部364は、記憶部35に記憶された位置づけ算出式又は位置づけ表を用いて位置づけ情報を求める。位置づけ算出式又は位置づけ表は、年齢、性別、人種、スポーツ種、会社等のカテゴリごとに用意されており、位置づけ情報取得部364は、任意のカテゴリを選択して位置づけ情報を求める。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の体組成の測定値を取得する体組成測定部と、
前記利用者の前記測定値の集団の中での位置づけを示す情報である位置づけ情報を求める位置づけ情報取得部と、
を備える、体組成測定システム。
【請求項2】
前記体組成測定部は、前記利用者の前記体組成を測定することで前記測定値を取得する、請求項1に記載の体組成測定システム。
【請求項3】
前記位置づけ情報取得部は、前記体組成の前記測定値と位置づけ情報との関係を規定した位置づけ算出式又は位置づけ表を用いて、前記利用者の前記測定値の前記位置づけ情報を求める、請求項1又は2に記載の体組成測定システム。
【請求項4】
前記位置づけ情報取得部は、前記体組成の前記測定値と複数の体組成の測定値からなる母集団とに基づいて、前記位置づけ情報を求める、請求項1又は2に記載の体組成測定システム。
【請求項5】
前記位置づけ算出式又は前記位置づけ表は、複数の体組成の測定値からなる母集団から生成される、請求項3に記載の体組成測定システム。
【請求項6】
前記位置づけ算出式又は前記位置づけ表は、カテゴリが異なる母集団ごとに用意され、
前記位置づけ情報取得部は、選択されたカテゴリの母集団の前記位置づけ算出式又は前記位置づけ表を用いて前記位置づけ情報を求める、請求項5に記載の体組成測定システム。
【請求項7】
前記母集団を格納するサーバをさらに備える、請求項4から6のいずれかに記載の体組成測定システム。
【請求項8】
前記サーバは、前記母集団から位置づけ算出式又は位置づけ表を生成し、
前記位置づけ情報取得部は、前記位置づけ算出式又は前記位置づけ表を前記サーバから取得して保存し、保存された前記位置づけ算出式又は前記位置づけ表を用いて前記利用者の前記測定値の前記位置づけ情報を求める、請求項5又は6を引用する請求項7に記載の体組成測定システム。
【請求項9】
前記位置づけ情報取得部は、前記利用者が属するカテゴリの母集団を選択する、請求項4、6及び8のいずれかに記載の体組成測定システム。
【請求項10】
前記位置づけ情報取得部は、前記利用者によって選択された任意のカテゴリの母集団を選択する、請求項4、6及び8のいずれかに記載の体組成測定システム。
【請求項11】
前記体組成測定部で取得された前記測定値は、前記サーバの前記母集団に加えられる、請求項7又は8に記載の体組成測定システム。
【請求項12】
利用者の体組成の測定値を取得する体組成測定部と、
カテゴリが異なる複数の集団のうちの選択された集団の体組成に対する前記測定値の評価を求める評価部と、
を備える、体組成測定システム。
【請求項13】
コンピュータを、
生体電気インピーダンス法に基づいて利用者の体組成の測定値を取得する体組成測定部、及び
前記利用者の前記測定値の集団の中での位置づけを示す情報である位置づけ情報を求める位置づけ情報取得部、
として機能させる体組成測定プログラム。
【請求項14】
コンピュータを、
利用者の体組成の測定値を取得する体組成測定部、及び
カテゴリが異なる複数の集団のうちの選択された集団の体組成に対する前記測定値の評価を求める評価部、
として機能させる体組成測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取得した体組成の測定値に基づいて測定値の位置づけ情報を求める体組成測定システム及び体組成測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身長、体重、年齢、性別等の情報と測定により得られた人体の各部位の生体電気インピーダンスとに基づいて、体組成の測定値を取得する体組成計が知られている。
【0003】
この取得された体組成の測定値から、被測定者の体組成の変化を知ることができる。例えば、特許文献1には、利用者の最新の入力された基礎代謝量と既に記憶された基礎代謝量とを比較する生体測定装置が開示されている。また、特許文献2には、利用者の測定値と標準値とを比較して、この利用者の測定値が低いか、高いか、標準レベルか、等の評価を算出する体組成計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-41811号公報
【特許文献2】特開2007-244728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の体組成計によれば、利用者は、自己の体組成の測定値が標準値より高いか低いかしか知ることはできず、集団の中での自己の体組成の位置づけについてより詳しい情報が得られなかった。また、測定値を評価するための基準がどの集団の測定値に基づくものであるかも不明確であった。
【0006】
本発明は、利用者が、集団の中での自己の体組成の位置づけについての情報を得ることができる体組成測定システム及び体組成測定プログラムを提供することを目的の一つとする。また、本発明は、自己の体組成の測定値を特定の集団と比較したときの評価を得ることができる体組成測定システム及び体組成測定プログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の体組成測定システムは、利用者の体組成の測定値を取得する体組成測定部と、利用者の測定値の集団の中での位置づけを示す情報である位置づけ情報を求める位置づけ情報取得部とを備える。
【0008】
この構成により、利用者の体組成の測定値の位置づけ情報が得られるので、この位置づけ情報をもって利用者の体組成の測定値の集団の中での位置づけを取得できる。なお、位置づけ情報は、例えば、偏差値である。
【0009】
体組成測定部は、利用者の体組成を測定することで測定値を取得してもよい。
【0010】
この構成により、体組成測定部は利用者の体組成を測定することで測定値を取得できる。
【0011】
位置づけ情報取得部は、体組成の測定値と位置づけ情報との関係を規定した位置づけ算出式又は位置づけ表を用いて、利用者の測定値の位置づけ情報を求めてもよい。
【0012】
この構成により、位置づけ算出式又は位置づけ表を用いて容易に利用者の体組成の測定値の位置づけ情報を求めることができる。なお、位置づけ算出式又は位置づけ表は、例えば、偏差値算出式又は偏差値表である。
【0013】
位置づけ情報取得部は、体組成の測定値と複数の体組成の測定値からなる母集団とに基づいて、位置づけ情報を求めてもよい。
【0014】
この構成により、位置づけ算出式又は位置づけ表を用いることなく、利用者の体組成の測定値の集団の中での位置づけ情報を取得できる。
【0015】
位置づけ算出式又は位置づけ表は、複数の体組成の測定値からなる母集団から生成されてもよい。
【0016】
この構成により、位置づけ算出式又は位置づけ表は、複数の体組成の測定値からなる母集団から生成できる。なお、位置づけ式又は位置づけ表は、体組成計、タブレット、スマートフォン等の端末装置が生成してもよいし、サーバが生成してもよい。
【0017】
位置づけ算出式又は位置づけ表は、カテゴリが異なる母集団ごとに用意されていてよく、位置づけ情報取得部は、選択されたカテゴリの母集団の位置づけ算出式又は位置づけ表を用いて位置づけ情報を求めてもよい。
【0018】
この構成により、特定のカテゴリの集団における自己の体組成の測定値の位置づけを取得できる。
【0019】
母集団を格納するサーバをさらに備えてもよい。
【0020】
この構成により、母集団をサーバに格納できる。
【0021】
サーバは、母集団から位置づけ算出式又は位置づけ表を生成し、位置づけ情報取得部は、位置づけ算出式又は位置づけ表をサーバから取得して保存し、保存された位置づけ算出式又は位置づけ表を用いて利用者の測定値の位置づけ情報を求めてもよい。
【0022】
この構成により、位置づけ情報を求めるための位置づけ算出式や位置づけ表がサーバで生成されるので、サーバが新たな測定値を収集して母集団を更新し、位置づけ算出式や位置づけ表を更新した場合には、位置づけ情報取得部は新たな位置づけ算出式や位置づけ表をサーバから取得して、保存されている位置づけ算出式や位置づけ表を更新し、更新された位置づけ算出式や位置づけ表を用いて利用者の体組成の測定値の位置づけ情報を求めることができる。特に、サーバにおいて、新たな母集団の体組成の測定値のデータが得られた場合には、そのような新たな母集団に対する位置づけ情報を得ることができることになる。
【0023】
位置づけ情報取得部は、利用者が属するカテゴリの母集団を選択してもよい。
【0024】
この構成により、利用者は自己と関連性があると想定される他人と比較した場合の自己の体組成の測定値の位置づけを取得できる。
【0025】
位置づけ情報取得部は、利用者によって選択された任意のカテゴリの母集団を選択してもよい。
【0026】
この構成により、利用者は自己の属性に関わらずに任意のカテゴリにおける自己の体組成の測定値の位置づけ情報を取得できる。例えば、利用者が一般人である場合にも、プロアスリート集団における自己の位置づけ情報を取得できる。
【0027】
体組成測定部で取得された測定値は、サーバの母集団に加えられてもよい。
【0028】
この構成により、利用者が位置づけ情報を求めるために体組成の測定値を取得することで、母集団に新たな測定値が加わるので、母集団を容易に更新できる。
【0029】
本発明の別の態様の体組成測定システムは、利用者の体組成の測定値を取得する体組成測定部と、カテゴリが異なる複数の集団のうちの選択された集団の体組成に対する測定値の評価を求める評価部とを備えた構成を有している。
【0030】
この構成により、自己の体組成の測定値を特定の集団と比較したときの評価を得ることができる。選択される集団は、利用者自身が属する集団であっても、利用者自身が属しない集団であってもよい。
【0031】
本発明の一態様の体組成測定プログラムは、コンピュータを、生体電気インピーダンス法に基づいて利用者の体組成の測定値を取得する体組成測定部、及び利用者の測定値の集団の中での位置づけを示す情報である位置づけ情報を求める位置づけ情報取得部として機能させる。
【0032】
この構成によっても、利用者の体組成の測定値の位置づけ情報が得られるので、この位置づけ情報をもって利用者の体組成の測定値の集団の中での位置づけを取得できる。
【0033】
本発明の別の態様の体組成測定プログラムは、コンピュータを、利用者の体組成の測定値を取得する体組成測定部、及びカテゴリが異なる複数の集団のうちの選択された集団の体組成に対する測定値の評価を求める評価部として機能させる。
【0034】
この構成によっても、自己の体組成の測定値を特定の集団と比較したときの評価を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の体組成測定システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態の体組成計を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態の体組成計の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態のグラフの例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態の偏差値表の例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態の測定結果の表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0037】
図1は、本発明の実施の形態の体組成測定システム10の構成を示すブロック図である。体組成測定システム10は、複数の体組成計30と、複数の体組成計30と通信ネットワーク40を介して通信可能に接続されるサーバ20とを備えている。通信ネットワーク40は、イントラネット等の所定の組織内で閉じたネットワークであってもよいし、インターネットであってもよい。また、サーバ20と各体組成計30との間の通信は、有線通信でもよいし、無線通信でもよく、部分的に無線通信が用いられてもよい。
【0038】
図2は、本発明の実施の形態の体組成計30を示す図である。体組成計30は、体重と生体情報としての体組成とを測定できる。体組成計30は、本体部31と、入力部32と、出力部33とを備える。
【0039】
本体部31は、内部に体重を計測するためのロードセルを備えており、利用者の体重を測定できる。また、本体部31は、上面の左側に通電用電極341Lと測定用電極342Lとを備え、上面の右側に通電用電極341Rと測定用電極342Rとを備えている。利用者は、裸足で本体部31の上に乗って直立し、生体情報を計測する。このとき、通電用電極341Lには左足の指の付け根が接触し、測定用電極342Lには左足のかかとが接触し、通電用電極341Rには右足の指の付け根が接触し、測定用電極342Rには右足のかかとが接触する。
【0040】
体組成計30は、例えば、通電用電極341L、341Rに電極を流して測定用電極342L、42Rで電位差を測定し、生体電気インピーダンスを測定する4電極式の体組成計である。なお、体組成計30が8電極式のときは、体組成計30は、身体の各部位の生体電気インピーダンスを測定することもできる。
【0041】
入力部32は、体組成計30に情報を入力する入力手段である。入力部32による情報の入力方法は、例えば、手動による方法、記録媒体を介する方法、有線通信による方法、無線通信による方法、その他の方法でもよい。
【0042】
手動による入力方法は、例えば、ボタン式、ダイヤル式、タッチセンサ式でもよい。記録媒体を介する方法の記録媒体は、例えば、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROMでもよい。無線通信による方法の無線通信は、例えば、インターネット、Wi-Fi(登録商標)等の無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)等の近距離無線通信でもよい。
【0043】
利用者は、入力部32を操作し、体組成計30に利用者の情報を入力する。利用者は、例えば、体組成測定システム10外の測定手段によって取得された体組成の測定値を入力してもよい。また、利用者は、例えば、利用者の身長、年齢、性別等の情報を入力し、体組成計30は、これらの情報と、測定で得られた体重と、生体電気インピーダンス等とを組み合わせることで、体組成の測定値を取得してもよい。体組成計30は、体組成の測定値として、例えば、体脂肪率、体脂肪量、筋肉量、腹筋/背筋比、体水分量、骨量、内臓脂肪、基礎代謝等を測定する。なお、入力される体組成の測定値は実測値でなくてもよく、例えば、利用者の興味がある体組成について架空の測定値を入力してもよい。
【0044】
出力部33は、体組成計30の測定結果を出力する出力手段である。出力部33は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又はOLED(Organic Light Emitting Diode)を備える表示パネルである。出力部33は、例えば、体重、体組成の測定値等の測定結果を出力する。出力部33は、例えば、利用者の測定結果を反映した数値、文字、音声その他の形式で出力してもよい。
【0045】
図3は、本発明の実施の形態の体組成計の構成を示すブロック図である。体組成計30は、入力部32と、記憶部35と、出力部33と、制御部36とを備える。
【0046】
記憶部35は、メモリである。メモリは、例えば、揮発性メモリ(例えば、RAM(Random Access Memory))、不揮発性メモリ(例えば、ROM(Read Only Memory))等でもよい。記憶部35は、例えば、制御部36が実行するプログラム、利用者が入力部32を操作して入力した情報、体組成計30が体組成の測定値を取得するための統計情報、体組成計30が取得した体組成の測定値等を記憶する。また、記憶部35は、例えば、利用者の測定値の位置づけ情報を求めるための後述する位置づけ算出式又は位置づけ表を記憶する。
【0047】
制御部36は、入力部32と、記憶部35と、出力部33と、体重測定部361と、生体電気インピーダンス測定部362と、体組成測定部363と、位置づけ情報取得部364とを制御する制御装置である。制御部36は、中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)を備える。制御部36は、各部と接続されており、各部の動作を制御する。制御部36は、記憶部35に記憶された本実施の形態の体組成測定プログラムを実行することにより、各部の機能を実現する。なお、各部の機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の個別のハードウェアによって実現されてもよい。
【0048】
体重測定部361は、利用者の体重を測定する体重測定手段である。体重測定部361は、上述したロードセルを用いて体重を計測する。具体的には、ロードセルは荷重に応じて変形する金属部材の起歪体と、起歪体に貼られる歪みゲージとにより構成される。利用者が体組成計30の上に乗ると、利用者の荷重によりロードセルの起歪体が撓んで歪ゲージが伸縮する。歪みゲージの抵抗値(出力値)は、その伸縮に応じて変化する。体重測定部361は、荷重がかかっていないときのロードセルの出力値(ゼロ点)と荷重がかかったときの出力値との差から体重を演算する。なお、ロードセルを用いた体重の測定に関する構成は、一般の体重計と同様の構成を用いればよい。
【0049】
生体電気インピーダンス測定部362は、測定により生体電気インピーダンスの値を取得する測定手段である。生体電気インピーダンス測定部362は、
図2に示した通電用電極341L、341Rと測定用電極342L、342Rとを介して、体に微弱な電流を流し生体電気インピーダンスの値を取得する。
【0050】
体組成測定部363は、体組成の測定値を取得する体組成測定手段である。体組成の測定値は、例えば、上述したように体組成測定システム10外の測定手段によって取得された体組成の測定値が入力されることで取得されてもよい。また、体組成の測定値は、例えば、上述したように生体電気インピーダンス法に基づいて、取得された生体電気インピーダンスの値と、身長、年齢、性別、体重等の情報とに基づいて取得されてもよい。体組成測定部363は、体組成計30に備えられてもよい。
【0051】
位置づけ情報取得部364は、取得された体組成の測定値を用いて測定値の位置づけ情報を求める位置づけ情報取得手段である。位置づけ情報は、集団の中での位置づけを示す情報である。位置づけ情報は、標準値よりも高い、低いという3値等に分類するよりも、具体的に位置づけを知ることができるという点で優れている。本実施の形態では、位置づけ情報は、偏差値である。なお、位置づけ情報は、例えば、
図4に示すように任意の集団における体組成データの分布を示すグラフ100に、自身の体組成データが属する位置を示す(星印)ことで生成されてもよいし、集団の中の順位、存在確率等でもよい。また、集団は、架空の集団や理想の集団でもよい。位置づけ情報取得部364は、サーバ20、体組成計30、タブレット、スマートフォン等の端末装置のいずれかに備えられてもよい。本実施の形態では、位置づけ情報取得部364は、体組成計30に備えられる。
【0052】
記憶部35には、位置づけ情報取得部364が位置づけ情報を求める際に用いられる位置づけ算出式又は位置づけ表が保存されている。位置づけ算出式は、位置づけ情報を求めたい測定値を代入することで、この測定値の位置づけ情報を算出する式である。また、位置づけ表は、測定値ごとに位置づけ情報が定められた表である。位置づけ情報を求めたい測定値が得られると、位置づけ表を参照することで、この測定値に対応する位置づけ情報を求めることができる。本実施の形態では、位置づけ算出式又は位置づけ表は、偏差値算出式又は偏差値表である。偏差値算出式は、特定の母集団の測定値の平均値及び標準偏差を係数として含む。
【0053】
体組成計30は、通信ネットワーク40を介してサーバ20から偏差値算出式又は偏差値表をダウンロードして、記憶部35に記憶する。サーバ20は、偏差値算出式又は偏差値表を生成する。サーバ20は、偏差値算出式又は偏差値表を生成するための母集団となる複数の体組成の測定値を取得する。
【0054】
上述のように、体組成の測定値には、体脂肪率、体脂肪量、筋肉量等の複数の項目があるので、サーバ20は、体組成の測定値の各々の項目について、偏差値算出式又は偏差値表を算出する。なお、サーバ20は、既存の項目について、偏差値算出式又は偏差値表を算出するだけではなく、既存の項目の組み合わせで得られた項目について、偏差値算出式又は偏差値表を算出してもよい。例えば、体脂肪率と筋肉量と基礎代謝量とを組み合わせることで「太りにくさ」という項目の評価値を得て、この評価値について、偏差値算出式や偏差値表が算出されてもよい。
【0055】
偏差値は周知のように、偏差値算出式(1)によって求められる。
【数1】
ここで、Tiは、個々の偏差値であり、xiは、個々の体組成の測定値であり、xバーは、所定の母集団の体組成の測定値の平均値であり、sは、所定の母集団の体組成の測定値の標準偏差である。
【0056】
また、標準偏差sは、以下の式(2)によって求められる。
【数2】
ここで、nは、データ(体組成の測定値)の総数である。
【0057】
サーバ20は、取得した複数の測定値を、例えば、利用者の年齢、性別、地域、国、人種、職種、スポーツ種、会社等のカテゴリごとに分けて測定値の母集団を用意し、この母集団ごとに、式(2)を用いて標準偏差を計算し、偏差値算出式(1)を生成する。
【0058】
このとき、一人のデータ(体組成の測定値)が複数の母集団に属していてもよい。また、母集団は、例えば、季節、過去から現在までの特定の期間等の時期ごとに用意されてもよい。体組成計30の入力部32は、通信ネットワーク40を介してサーバ20から、サーバ20にて生成された偏差値算出式をダウンロードして、記憶部35に記憶する。
【0059】
サーバ20は、偏差値算出式から偏差値表を作成して、上述した偏差値算出式に代えて、又は上述した偏差値算出式に加えて、偏差値表を体組成計30に提供してもよい。この場合に、体組成計30は、サーバ20から偏差値表をダウンロードして記憶部35に記憶する。偏差値表は、生成された偏差値算出式に基づいて、測定値と偏差値との関係を表形式で規定したものである。
【0060】
また、サーバ20は、測定値と存在確率との関係をあらかじめ計算して偏差値表に含めて体組成計30に提供してもよい。存在確率は、測定値ごとに、その測定値が母集団の中の上位%内に入るかを計算することで求めることができる。
【0061】
サーバ20は、上述した体脂肪率、体脂肪量、筋肉量、腹筋/背筋比、体水分量、骨量、内臓脂肪、基礎代謝等の他の体組成の項目についても同様に、また、上述した年齢、性別、地域等の他のカテゴリについても同様に、偏差値算出式を求め、あるいは、各測定値と偏差値及び存在確率との関係を規定した偏差値表を生成する。
【0062】
図5は、本発明の実施の形態の偏差値表200の例を示す図である。偏差値表200は、「日本人 10-20代 男性」の体脂肪率(%)と、偏差値と、存在確率とを対応づけている。偏差値表200には、測定値として離散的な値である整数値が規定されている。
【0063】
偏差値表200を用いて測定値から偏差値を求める場合において、体組成測定部363が測定値である体脂肪率を小数の単位まで求めているときは、位置づけ情報取得部364は、小数点以下を四捨五入(又は切り捨て、又は切り上げ)して偏差値表200を参照する。
【0064】
例えば、体組成測定部363にて測定された体脂肪率が21.2%であるときは、体組成計30は、これを四捨五入して体脂肪率21%とし、偏差値表200を参照して、偏差値52と存在確率44%とを取得する。あるいは、偏差値表200において、測定値が範囲で規定されていてもよい。
【0065】
サーバ20は、位置づけ情報取得部364が、サーバ20から偏差値算出式(1)を取得しているときは、体組成測定部363で測定された体組成の測定値を偏差値算出式(1)に代入することで、この測定値の偏差値を算出する。
【0066】
記憶部35には、各体組成の測定値の項目について、複数のカテゴリの偏差値算出式又は偏差値表が記憶されている。位置づけ情報取得部364は、これらの複数の偏差値算出式又は偏差値表からいずれかを選択して用いることで、体組成測定部363で測定された測定値の偏差値を取得する。この場合に、位置づけ情報取得部364がいずれのカテゴリの偏差値算出式又は偏差値表を選択するかは、位置づけ情報取得部364が自動で決定してもよく、あるいは、利用者が入力部32を操作して指定をすることで決定してもよい。
【0067】
具体的には、位置づけ情報取得部364が自動的にカテゴリを選択する場合には、位置づけ情報取得部364は、利用者の属性情報に合致するカテゴリを自動で選択してもよい。例えば、位置づけ情報取得部364が利用者の属性として、利用者が特定のスポーツの選手であることを把握している場合には、このスポーツの選手の測定値を母集団とするカテゴリを選択してもよい。また、例えば、位置づけ情報取得部364が利用者の属性として、測定する時間帯が夜に多いことを把握している場合には、この測定習慣の利用者の測定値を母集団とするカテゴリを選択してもよい。
【0068】
また、利用者が任意にカテゴリを選択する場合には、利用者は自己の属性に関係なく母集団を選択して、偏差値を求めることができる。例えば、日ごろ健康増進のために運動を行っている一般人が、特定のプロスポーツチームの選手の測定値を母集団とするカテゴリを選択して、その中での自己の偏差値を知るという楽しみ方も可能である。また、自己の職業とは異なる職業の人の測定値を母集団とするカテゴリを選択することで、転職しようとしている職種において自らの体力で通用するか否かの判断等にも用いることができる。さらに、カテゴリの作り方を工夫することで、様々な楽しみ方ないし活用方法を提供することができる。
【0069】
図6は、本発明の実施の形態の測定結果の表示画面300を示す図である。この表示画面300は、出力部33に表示される。表示画面300では、体組成の各項目の測定値の偏差値及びその存在確率と、他人との比較において利用者が優れている点を説明する「あなたの自慢ポイント」と、現状より優れた偏差値や存在確率を達成するための体組成の測定値の変化量を説明する内容とが表示される。
【0070】
具体的には、
図6の例の表示画面300では、測定値の偏差値とその存在確率として、体脂肪率は、偏差値52で存在確率44%、筋肉量は、偏差値72で存在確率7%、骨量は、偏差値50で存在確率45%、基礎代謝は、偏差値69%で存在確率9%、内臓脂肪は、偏差値40で存在確率40%、と表示される。特に、存在確率が低い筋肉量と基礎代謝とには、他の項目と区別するための「☆」のマークが表示される。
【0071】
また、「あなたの自慢ポイント」として、「あなたは、同年代の日本人の中で、筋肉量の多さ、基礎代謝の高さで希少価値☆が高いです!!」と表示される。目標として、「<全結果で存在確率10%を切る「超希少価値人間」までの道>/・あと「5%」体脂肪率を減らす。/・あと「レベル2」内臓脂肪を減らす。」と表示される。なお、目標は、ユーザの操作によって設定されてもよく、現時点の偏差値、存在確率等の結果から自動で設定されてもよい。
【0072】
体組成測定部363で取得された体組成の測定値は、位置づけ情報取得部364にて偏差値を取得するために用いられるほか、体組成計30から通信ネットワーク40を介してサーバ20に送られる。このとき、体組成計30は、その体組成の測定値の利用者の属性とともに体組成の測定値をサーバ20に送る。
【0073】
サーバ20は、複数の体組成計30から体組成の測定値と利用者の属性を取得して、該当するカテゴリの母集団に追加する。サーバ20には、このようにして母集団に新たなデータが追加される。サーバ20は、定期的ないしは指示を受けたときに、新たな母集団を用いて偏差値算出式を生成し直し、偏差値表を生成する場合には、新たな母集団を用いて偏差値表を生成し直す。
【0074】
体組成計30は、サーバ20にて新たに生成された偏差値算出式又は偏差値表をダウンロードして、記憶部35に保存してあった偏差値算出式又は偏差値表を、ダウンロードした新たな偏差値算出式又は偏差値表で置き換えることで、偏差値算出式又は偏差値算出表を更新する。体組成計30は、定期的に更新してもよいし、利用者の指示に応じて更新してもよいし、他のトリガ(例えば、体組成計30を起動したとき)に応じて更新してもよい。
【0075】
以上のように、本実施の形態では、体組成計が生体電気インピーダンス法に基づいて体組成の測定値を取得する。そして、体組成計がこの測定値と利用者の属するカテゴリの偏差値算出式又は偏差値表とに基づいて測定値の偏差値を取得し、利用者は、体組成の測定値の集団の中での位置づけを取得できる。
【0076】
また、偏差値を求めるための偏差値表や偏差値算出式がサーバ20で生成されるので、サーバ20が新たな測定値を収集して母集団を更新し、偏差値表や偏差値算出式を更新した場合には、位置づけ情報取得部364は新たな偏差値表や偏差値算出式をサーバ20から取得して、保存されている偏差値表や偏差値算出式を更新し、更新された偏差値表や偏差値算出式を用いて利用者の体組成の測定値の偏差値を求めることができる。このとき、利用者が偏差値を求めるために体組成の測定値を取得することで、母集団に新たな測定値が加わるので、母集団を容易に更新できる。
【0077】
また、サーバ20では複数の利用者の体組成測定値を収集して母集団を更新するため、自身の体組成の変化だけでなく、他の利用者の体組成の変化も、自身の体組成の偏差値の要素となる。そのため、ある利用者の体組成自体は変化がない場合であっても、当該利用者の体組成の偏差値が変化することがあり、飽きさせないと共に、健康意識の向上が期待できる。
【0078】
また、この偏差値算出式又は偏差値表は、定期的に更新され、体組成計に定期的にダウンロードされているため、更新された偏差値算出式又は偏差値表に基づいて測定値の偏差値を取得できる。
【0079】
(変形例)
上述した実施の形態では、本体部31、入力部32、出力部33、表示部34、記憶部35、及び制御部36が一体となって体組成計30を構成していたが、本体部31以外の構成については、体組成計30とは別の情報処理装置に備えられ、そのような体組成計と情報処理装置とで本実施の形態の体組成計30が構成されてもよい。この場合に、当該情報処理装置と体組成計30とは、有線又は無線で通信する。情報処理装置は、例えば、スマートフォン、タブレット等の情報処理装置であってもよい。
【0080】
また、位置づけ情報取得部364は、体組成計30側ではなく、サーバ20側に備えられていてもよい。この場合には、体組成計30は、偏差値算出式や偏差値表をサーバ20からダウンロードする必要はなく、体組成測定部363で取得された体組成の測定値を、通信ネットワーク40を介してサーバ20に送信し、サーバ20は位置づけ情報取得部364で偏差値を求めて、体組成計30に返す。なお、所定の母集団の平均値xバーと標準偏差sとが、サーバ20に格納されているのであれば、サーバ20は母集団に基づかなくとも、当該平均値xバーと当該標準偏差sとから偏差値を求めて、体組成計30に返すことができる。
【0081】
また、上述した実施の形態では、サーバ20が母集団となる複数の体組成の測定値から偏差値算出式及び偏差値表を生成して各体組成計30に供給していたが、体組成計30が偏差値算出式や偏差値表を生成する機能を有してもよい。この場合には、サーバ20から体組成計30に対して複数の体組成の測定値が与えられ、体組成計30では、カテゴリごとの母集団のデータを用いて偏差値算出式や偏差値表を生成する。なお、所定の母集団の平均値xバーと標準偏差sとが、統計情報として記憶部35に記憶されているのであれば、位置づけ情報取得部364は母集団に基づかなくとも、当該平均値xバーと当該標準偏差sとから、偏差値算出式や偏差値表を生成できる。
【0082】
また、上述した実施の形態では、体組成計30が新たな偏差値算出式や偏差値表をサーバ20から取得すると、古い偏差値算出式や偏差値表を削除して新しい偏差値算出式や偏差値表に置き換えることで更新を行ったが、これに代えて、体組成計30において、古い偏差値算出式や偏差値表を削除せずに維持しておき、必要に応じて古い偏差値算出式や偏差値表を参照して偏差値を求めてもよい。
【0083】
また、体組成測定部363で得た体組成の測定値を記憶部35に記憶しておいて、位置づけ情報取得部364が、過去の体組成の測定値を持ち出して、最新又は任意の過去の偏差値算出式や偏差値表を用いて偏差値を求めてもよい。
【0084】
また、上述した体組成測定システム10では、利用者の体組成の測定値を特定の集団の体組成の測定値と比較したときの評価を得るために、偏差値を採用したが、体組成測定システム10では、利用者の体組成の測定値を様々な集団の体組成の測定値と比較したときの評価を得るために、必ずしも偏差値を採用しなくてもよい。
【0085】
すなわち、本実施の形態の体組成測定システム10は、利用者の体組成を測定することで測定値を取得する体組成測定部363と、カテゴリが異なる複数の集団のうちの選択された集団の体組成に対する、利用者の体組成の測定値の評価を求める評価部とを備えたものである。利用者の体組成の測定値の評価は、例えば、選択された集団の体組成の測定値の平均との比較結果であってもよく、あるいは存在確率であってもよい。上述した実施の形態の位置づけ情報取得部364は、評価部の一態様である。この体組成測定システム10により、自己の体組成の測定値を特定の集団と比較したときの評価を得ることができる。
【符号の説明】
【0086】
10・・・体組成測定システム
20・・・サーバ
30・・・体組成計
40・・・通信ネットワーク
31・・・本体部
32・・・入力部
33・・・出力部
341L,R・・・通電用電極
342L,R・・・測定用電極
35・・・記憶部
36・・・制御部
361・・・体重測定部
362・・・生体電気インピーダンス測定部
363・・・体組成測定部
364・・・位置づけ情報取得部
100・・・グラフ
200・・・位置づけ表
300・・・表示画面