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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126892
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ベントタンク
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20240912BHJP
   B05B 3/02 20060101ALI20240912BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B05C11/10
B05B3/02 G
B05C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035625
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱川 健史
(72)【発明者】
【氏名】浅井 一夫
【テーマコード(参考)】
4F033
4F042
【Fターム(参考)】
4F033PA01
4F033PB02
4F033PD01
4F042AB00
4F042CA01
4F042CB02
4F042CB08
4F042CB20
4F042CC04
4F042CC07
4F042CC08
4F042CC15
4F042CC30
(57)【要約】
【課題】エアベント処理によりベントタンクに排出された塗布液を、清浄な状態で再利用することが可能なベントタンクを提供する。
【解決手段】塗布器20から排出される塗布液を回収するベントタンク10であって、塗布液を貯留するタンク本体11と、タンク本体11に挿入され、塗布器20から排出された塗布液を、タンク本体11に導くベント配管12と、タンク本体11に挿入され、洗浄液をタンク本体11内に噴出する洗浄ノズル13とを備え、洗浄ノズル13は、洗浄液をタンク本体11内に全方位に噴出するノズル部13aを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布器から排出される塗布液を回収するベントタンクであって、
前記塗布液を貯留するタンク本体と、
前記タンク本体に挿入され、前記塗布器から排出された前記塗布液を、前記タンク本体に導くベント配管と、
前記タンク本体に挿入され、洗浄液を前記タンク本体内に噴出する洗浄ノズルと
を備え、
前記洗浄ノズルは、前記洗浄液を前記タンク本体内に全方位に噴出するノズル部を備えている、ベントタンク。
【請求項2】
前記ノズル部は、前記洗浄液を前記タンク本体内に全方位に噴出する複数の噴出孔を有する、請求項1に記載のベントタンク。
【請求項3】
前記ノズル部は、少なくとも1つ以上の噴出孔を有し、前記ノズル部が回転しながら、前記噴出孔から前記洗浄液を噴出する、請求項1に記載のベントタンク。
【請求項4】
前記タンク本体内の液面を検出する液面センサをさらに備え、
前記ノズル部は、該ノズル部の下端部が、前記液面センサの設置位置よりも上方に位置するように、前記タンク本体内に配置されている、請求項1に記載のベントタンク。
【請求項5】
前記タンク本体の内壁部は、前記ノズル部から噴射される前記洗浄液が、前記ベント配管によって遮られて届かない死角領域を有し、
前記死角領域に向かって洗浄液を噴出するノズル部を有する補助洗浄ノズルをさらに備えている、請求項1に記載のベントタンク。
【請求項6】
前記洗浄ノズルは、
前記タンク本体の中央部に鉛直方向に挿入された軸部と、
前記軸部に連結して、水平方向に延びる連結部と、
前記連結部の先端部に取り付けれ、洗浄液を噴出する噴出孔を有するノズル部と
を備え、
前記軸部及び前記連結部は、内部に洗浄液が流れる流路を有し、
前記連結部が、前記軸部を中心に回転しながら、前記ノズル部の噴出孔から洗浄液を噴出する、請求項1に記載のベントタンク。
【請求項7】
前記連結部は、その中心部で、前記軸部に連結しており、
前記連結部の両先端部に、それぞれ、前記ノズル部が取り付けられている、請求項6に記載のベントタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布器から排出される塗布液を回収するベントタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板等の基板に塗布液を塗布する装置として、塗布液を吐出するスリットノズルを有する塗布器を備えた塗布装置が知られている。スリットノズルは、塗布器の幅方向に長く形成されており、塗布器を基板に対して相対的に移動させながら、スリットノズルから塗布液を吐出することによって、基板の表面に塗布膜が形成される。
【0003】
塗布器内には、塗布液を一時的に貯留するマニホールドが設けられているが、マニホールドに気泡等のエアが混入した状態で塗布を行うと、塗布液を吐出する圧力が変動するため、塗布ムラの要因になる。
【0004】
特許文献1には、マニホールドに混入する気泡を含む塗布液を、吸引ポンプで吸引して、塗布液貯蔵タンク(ベントタンク)に排出する方法(以下、「エアベント処理」という)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-131788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エアベント処理によりベントタンクに排出された塗布液を、塗布器に循環して、再利用を図りたいという要望がある。
【0007】
しかしながら、例えば、液晶ディスプレイに使用されるカラーフィルタは、3種類(RGB)のカラーレジスト(塗布液)を、ガラス基板上に塗布する工程を繰り返し行うことによって製造される。そのため、ベントタンクに排出された塗布液を、塗布器に循環して再利用を図る場合、塗布液を交換する毎に、ベントタンク内を洗浄する必要がある。
【0008】
ベントタンク内の洗浄は、ベントタンク内を洗浄液で置換することによって一定の効果は得られるが、エアベント処理を行う際に、塗布液の液跳ねによりベントタンクの内壁(特に天井蓋)に付着した塗布液を完全に除去することは難しい。もし、洗浄液で除去されずに残った塗布液が、交換した塗布液に混ざると、品質を低下させる要因となる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、エアベント処理によりベントタンクに排出された塗布液を、清浄な状態で再利用することが可能なベントタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るベントタンクは、塗布器から排出される塗布液を回収するベントタンクであって、塗布液を貯留するタンク本体と、タンク本体に挿入され、塗布器から排出された塗布液を、タンク本体に導くベント配管と、タンク本体に挿入され、洗浄液をタンク本体内に噴出する洗浄ノズルとを備え、洗浄ノズルは、洗浄液をタンク本体内に全方位に噴出するノズル部を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エアベント処理によりベントタンクに排出された塗布液を、清浄な状態で再利用することが可能なベントタンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態におけるベントタンクを備えた塗布装置を模式的に示して図である。
図2】本実施形態におけるベントタンクの構成を模式的に示した断面図である。
図3】ベントタンクの変型例を示した図である。
図4A】ベントタンクの他の変型例を示した図である。
図4B図4AのIV-IV線に沿った断面図である。
図5A】ベントタンクの他の変型例を示した図である。
図5B図5AのV-V線に沿った断面図である。
図6A】ベントタンクの他の変型例を示した図である。
図6B図6AのVI-VI線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本実施形態におけるベントタンクを備えた塗布装置を模式的に示した図である。
【0015】
図1に示すように、塗布装置は、塗布液を吐出するスリットノズル21を有する塗布器20と、塗布器20内に設けられたマニホールド22から排出される塗布液を回収するベントタンク10を備えている。
【0016】
スリットノズル21は、塗布器20の幅方向に長く形成されており、塗布器20を基板(不図示)に対して相対的に移動させながら、スリットノズル21から塗布液を吐出することによって、基板の表面に塗布膜が形成される。
【0017】
塗布器20内には、塗布液を一時的に貯留するマニホールド22が設けられており、塗布液は、バルブ60を開けて、供給ポンプ40を作動することによって、供給配管50、51を通って、供給孔23からマニホールド22内に供給される。マニホールド22の下側は、スリットノズル21に連通しており、マニホールド22に供給された塗布液は、スリットノズル21から吐出される。なお、塗布時には、バルブ61、62、63、66は閉じられている。
【0018】
(エアベント処理)
塗布器20は、マニホールド22に存在する気泡等のエアを含む塗布液を排出させるベント孔24、25、26を有している。エアベント処理は、バルブ60、61、62、63を開けて、マニホールド22に、供給孔23から塗布液を供給することによって行われ、エアを含む塗布液は、ベント孔24、25、26から、それぞれ、排出配管52、53、54、55を通って、ベントタンク10に排出される。
【0019】
ベントタンク10の底部には、排出ポート57が設けられており、ベントタンク10に溜まった塗布液を、バルブ65を開けて、排出ポート57から外部に排出することができる。また、ベントタンク10に所定量の塗布液が溜まると、塗布液を、バルブ66を開けて、排出ポート57から配管58を通じて供給ポンプ40に循環させることによって、エアベント処理でベントタンク10に排出された塗布液を再利用することができる。
【0020】
(ベントタンクの構成)
図2は、本実施形態におけるベントタンク10の構成を模式的に示した断面図である。
【0021】
図2に示すように、ベントタンク10は、塗布液を貯留するタンク本体11と、タンク本体11に挿入され、マニホールド22から排出された塗布液を、タンク本体11に導くベント配管12と、タンク本体11に挿入され、洗浄液をタンク本体11内に噴出する洗浄ノズル13とを備えている。ベント配管12及び洗浄ノズル13は、それぞれ、天井蓋11aに固定され、排出配管55及び洗浄液供給配管56に連結している。また、タンク本体11の底部11bには、排出ポート57が設けられている。
【0022】
洗浄ノズル13は、洗浄液供給配管56から供給された洗浄液を、タンク本体11内に全方位に噴出するノズル部13aを備えている。ここで、「全方位に噴出する」とは、図2の点線の矢印に示すように、タンク本体11の内壁の全領域に洗浄液が届くように、ノズル部13aから360°の方向に洗浄液を噴出することを意味する。
【0023】
ノズル部13aの構造は特に限定されず、例えば、ノズル部13aに複数の噴出孔を設け、各噴出孔からの洗浄液の噴出方向を、タンク本体11内の全方位に向くように調整しておけばよい。あるいは、ノズル部13aに、少なくとも1つ以上の噴出孔を設け、ノズル部13aを回転させながら、噴出孔から噴出する洗浄液が、タンク本体11の内壁の全領域に届くように行ってもよい。
【0024】
本実施形態によれば、タンク本体11に挿入された洗浄ノズル13のノズル部13aから、洗浄液をタンク本体11内に全方位に噴出することによって、タンク本体11の天井蓋11aを含む全ての内壁に付着した塗布液を確実に除去することができる。これにより、エアベント処理によりベントタンク10に排出された塗布液を、清浄な状態で再利用することが可能となる。
【0025】
(ベントタンクの変型例)
図3は、ベントタンク10の変型例を示した図である。
【0026】
図3に示すように、本変型例におけるベントタンク10は、図2に示したベントタンク10の構成に加え、タンク本体11内の液面を検出する液面センサ14をさらに備えている。この場合、ノズル部13aは、ノズル部13aの下端部が、液面センサ14の設置位置よりも上方に位置するように、タンク本体11内に配置される。
【0027】
このような構成により、ベントタンク10に溜まった塗布液の液面が、液面センサ14の設置位置に達した時点で、エアベント処理による塗布液の排出を停止することによって、ノズル部13aが、塗布液に浸漬するのを避けることができる。これにより、ノズル部13aに設けた噴出孔が塗布液で詰まるのを防止することができるため、噴出孔からの洗浄液の噴出を正常に維持することができる。また、ノズル部13aが回転機構を有している場合、ノズル部13aの回転を正常に維持することができる。
【0028】
図4Aは、ベントタンク10の他の変型例を示した図で、図4Bは、図4AのIV-IV線に沿った断面図である。
【0029】
図4A及び図4Bに示すように、本変型例におけるベントタンク10は、図2に示したベントタンク10の構成に加え、洗浄液を噴出するノズル部15aを有する補助洗浄ノズル15をさらに備えている。なお、補助洗浄ノズル15は、天井蓋11aに固定され、洗浄液供給配管59に連結している。
【0030】
図4Bに示すように、タンク本体11内には、ベント配管12が配置されているため、タンク本体11の内壁は、ノズル部13aから噴射される洗浄液が、ベント配管12によって遮られて届かない死角領域Aを有している。補助洗浄ノズル15のノズル部15aは、少なくとも、死角領域Aを含む内壁に向かって洗浄液を噴出するように構成されている。
【0031】
このような構成により、タンク本体11の死角領域Aを含む全ての内壁に付着した塗布液を確実に除去することができる。これにより、エアベント処理によりベントタンク10に排出された塗布液を、清浄な状態で再利用することが可能となる。
【0032】
なお、本変型例では、タンク本体11内に、1つのベント配管12が配置されている例を示したが、複数のベント配管12が配置されている場合、ノズル部13aから噴射される洗浄液が届かない死角領域Aが複数ある場合もある。このような場合は、全ての死角領域Aを含む内壁に向かって洗浄液が噴出するように、複数の補助洗浄ノズル15を設ければよい。
【0033】
図5Aは、ベントタンク10の他の変型例を示した図で、図5Bは、図5AのV-V線に沿った断面図である。
【0034】
図5A及び図5Bに示すように、本変型例におけるベントタンク10は、洗浄ノズル13が、タンク本体11の中央部に鉛直方向に挿入された軸部13bと、軸部13bに連結して、水平方向に延びる連結部13cと、連結部13cの先端部に取り付けられ、洗浄液を噴出する噴出孔を有するノズル部13aとを備えている。
【0035】
軸部13b及び連結部13cは、内部に洗浄液が流れる流路を有し、図5Bに示すように、連結部13cが、軸部13bを中心に回転しながら、ノズル部13aの噴出孔から洗浄液を噴出する。
【0036】
このような構成により、連結部13cの先端部に取り付けられたノズル部13aは、軸部13bを中心に回転しながら洗浄液を噴出するため、タンク本体11の内壁に、ノズル部13aから噴射される洗浄液が、ベント配管12によって遮られて届かない死角領域を生じさせない。そのため、タンク本体11の内壁に付着した塗布液を確実に除去することができる。これにより、エアベント処理によりベントタンク10に排出された塗布液を、清浄な状態で再利用することが可能となる。
【0037】
ノズル部13aの構造は特に限定されず、図2に示したノズル部13aと同様に、例えば、洗浄液をタンク本体11内に全方位に噴出する構造や、回転機構を備えた構造であってもよい。
【0038】
また、図5Bに示すように、ベント配管12が、連結部13cの回転と干渉する位置にある場合は、連結部13cを、ベント配管12と干渉しない範囲で、回転させればよい。
【0039】
図6Aは、ベントタンク10の他の変型例を示した図で、図6Bは、図6AのVI-VI線に沿った断面図である。
【0040】
図6A及び図6Bに示すように、本変型例におけるベントタンク10は、図5A及び図5Bに示したベントタンク10において、連結部13cを、その中心部で、軸部13bに連結し、連結部13cの両先端部に、それぞれ、ノズル部13a、13aを取り付け点が異なる。
【0041】
このような構成により、連結部13cの両先端部に取り付けられたノズル部13a、13aは、軸部13bを中心に回転しながら、洗浄液を噴出するため、タンク本体11の内壁に、ノズル部13a、13aから噴射される洗浄液が、ベント配管12によって遮られて届かない死角領域を生じさせない。そのため、タンク本体11の内壁に付着した塗布液を確実に除去することができる。これにより、エアベント処理によりベントタンク10に排出された塗布液を、清浄な状態で再利用することが可能となる。
【0042】
なお、図6Bに示すように、ベント配管12が、連結部13cの回転と干渉する位置にある場合は、連結部13cを、ベント配管12と干渉しない範囲で、回転させればよい。
【0043】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態では、塗布器20内のマニホールド22から排出される塗布液を、ベントタンク10に回収する場合を例に説明したが、マニホールド22以外の塗布器20内に存在する塗布液を、ベントタンク10に回収してもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 ベントタンク
11 タンク本体
11a 天井蓋
11b 底部
12 ベント配管
13 洗浄ノズル
13a ノズル部
13b 軸部
13c 連結部
14 液面センサ
15 補助洗浄ノズル
15a ノズル部
20 塗布器
21 スリットノズル
22 マニホールド
23 供給孔
24、25、26 ベント孔
40 供給ポンプ
50、51 供給配管
52、53、54、55 排出配管
56、59 洗浄液供給配管
57 排出ポート
58 配管
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B