(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126895
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】底面型枠用テープの選定方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20240912BHJP
E04B 1/682 20060101ALI20240912BHJP
E04G 9/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E01D19/12
E04B1/682 Z
E04G9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035631
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】浅野 均
(72)【発明者】
【氏名】沖田 佳隆
(72)【発明者】
【氏名】可児 幸嗣
(72)【発明者】
【氏名】大河内 孝彦
(72)【発明者】
【氏名】北原 慎也
【テーマコード(参考)】
2D059
2E001
2E150
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG55
2E001EA03
2E001FA11
2E150BA02
2E150HF07
2E150MA01X
2E150MA11X
(57)【要約】
【課題】隣り合うプレキャスト床版の接合端面間に形成された間詰め部の底面型枠として使用されるテープを適切に選定する。
【解決手段】隣り合うプレキャスト床版1A、1Bの接合端面間に形成された間詰め部2に間詰め材3を充填する際、前記間詰め部2の底面型枠として使用されるテープ4の選定方法として、下記の試験の結果、テープの膨らみSを基準として選定する。
(試験)(1)実機を模擬した試験体の間詰め部2の底面型枠としてテープ4を貼着する。(2)間詰め材3を練り混ぜる。(3)間詰め部2に間詰め材3を打設する。(4)間詰め材3の硬化後、間詰め材3の底部が下方へ膨出した変形量であるテープの膨らみSを計測する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合うプレキャスト床版の接合端面間に形成された間詰め部に間詰め材を充填する際、前記間詰め部の底面型枠として使用されるテープの選定方法であって、
下記の試験の結果、テープの膨らみを基準として、底面型枠用テープを選定することを特徴とする底面型枠用テープの選定方法。
(試験)
(1)実機を模擬した試験体における間詰め部の底面型枠としてテープを貼着する。
(2)間詰め材を練り混ぜる。
(3)間詰め部に間詰め材を打設する。
(4)間詰め材の硬化後、間詰め材の底部の下方への膨出量であるテープの膨らみを計測する。
【請求項2】
前記間詰め部の幅に対する前記テープの膨らみが10%以下であるものを、底面型枠用テープとして用いる請求項1記載の底面型枠用テープの選定方法。
【請求項3】
前記間詰め材の硬化後、前記テープを剥がし、前記間詰め材が前記間詰め部より外側に流出した幅である間詰め材流出幅を計測し、その値を基準として、底面型枠用テープを選定する請求項1記載の底面型枠用テープの選定方法。
【請求項4】
前記間詰め部の幅に対する前記間詰め材流出幅が12%以下であるものを、底面型枠用テープとして用いる請求項3記載の底面型枠用テープの選定方法。
【請求項5】
前記間詰め材の打設時に、前記テープの剥がれが生じないものを、底面型枠用テープとして用いる請求項1記載の底面型枠用テープの選定方法。
【請求項6】
前記間詰め材の硬化後、前記テープを剥がす際に剥がしやすいものを、底面型枠用テープとして用いる請求項1記載の底面型枠用テープの選定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト床版同士の接合端面間に形成された間詰め部に間詰め材を充填する際、前記間詰め部の底面型枠として使用されるテープの選定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路橋などに使用されるプレキャスト床版の大規模更新工事では、交通事情を考慮してできる限り短期間で施工が完了することが求められている。
【0003】
従来より、プレキャスト床版同士の継手構造としては、種々のものが開発されてきた。最も一般的に多用されてきた継手構造は、所謂ループ継手である。このループ継手は、
図7に示されるように、プレキャスト床版50A、50Bの接合端面に、位置をずらして橋軸方向に突出する互いのループ状継手鉄筋51、52を適宜の間隔で配置し、このループ状継手鉄筋51、52の直角方向から補強筋53を挿入して、プレキャスト床版本体間の間詰め部に場所打ちコンクリート54を打設して隣接するプレキャスト床版50A、50B同士を接続する継手構造である。
【0004】
このような継手構造では、間詰め部に場所打ちコンクリート54を充填する際、
図7に示されるように、間詰め部の底部に両側のプレキャスト床版50A、50B間に跨がる木製の底面型枠55を設けた上で、間詰め部に場所打ちコンクリート54が打設される。この底面型枠55の固定は、プレキャスト床版50A、50Bの接合端面近傍の底面にインサート56を埋設しておき、このインサート56にねじ込まれたボルト57によって押え部材などを介して支持する構造である。
【0005】
また、間詰め部の鉄筋の設置を無くして省力化を図るとともに、間詰め材の低減などにより工期短縮を図るようにした機械式継手も、従来から提案されている(例えば、特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-63984号公報
【特許文献2】特開2021-31902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のループ状継手鉄筋の場合、間詰め部の幅(プレキャスト床版50A、50Bの接合端面間の離隔距離)が300~400mmもあったのに対して、特許文献2に記載される機械式継手構造では20mm程度に縮小できるため、間詰め材の低減などにより工期短縮が図れるようになる利点がある。
【0008】
ところが、底面型枠として、従来と同様に木製の型枠をボルトで固定する構造を採用した場合には、底面型枠の設置及び解体の作業に時間を要するため、これを簡素化することも求められていた。
【0009】
しかしながら、市販の粘着テープとしては多種多様のものが存在するため、底面型枠用のテープとして適切なものを選択しなければ、テープの膨らみや剥がれによって間詰め部のコンクリートの強度や品質の低下につながり、延いてはコンクリート構造物の信頼性が損なわれる結果となる。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、隣り合うプレキャスト床版の接合端面間の間詰め部の底面型枠として使用されるテープを適切に選定するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、隣り合うプレキャスト床版の接合端面間に形成された間詰め部に間詰め材を充填する際、前記間詰め部の底面型枠として使用されるテープの選定方法であって、
下記の試験の結果、テープの膨らみを基準として、底面型枠用テープを選定することを特徴とする底面型枠用テープの選定方法が提供される。
(試験)
(1)実機を模擬した試験体における間詰め部の底面型枠としてテープを貼着する。
(2)間詰め材を練り混ぜる。
(3)間詰め部に間詰め材を打設する。
(4)間詰め材の硬化後、間詰め材の底部の下方への膨出量であるテープの膨らみを計測する。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、隣り合うプレキャスト床版の接合端面間に形成された間詰め部に間詰め材を充填する際、前記間詰め部の底面型枠として使用されるテープを選定するに当たって、所定の試験の結果、底面型枠として使用したテープの膨らみを基準として底面型枠用テープを選定しているため、実機においてもテープの膨らみを最小限に抑えることができ、テープの膨らみが大きくなることによって生じる間詰め材の強度低下や品質の低下などが防止できる。従って、本発明に係る選定方法によって、間詰め部の底面型枠として適切なテープを選定することができる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記間詰め部の幅に対する前記テープの膨らみが10%以下であるものを、底面型枠用テープとして用いる請求項1記載の底面型枠用テープの選定方法が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明では、前記テープの膨らみの具体的な数値範囲について、間詰め部の幅に対するテープの膨らみが10%以下であるものを底面型枠用テープとして選定している。これによって、テープの膨らみを所定値以下に抑えることができ、より確実に間詰め部の品質が向上できる。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記間詰め材の硬化後、前記テープを剥がし、前記間詰め材が前記間詰め部より外側に流出した幅である間詰め材流出幅を計測し、その値を基準として、底面型枠用テープを選定する請求項1記載の底面型枠用テープの選定方法が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明では、テープの隙間から間詰め材が外側に流出した幅を間詰め材流出幅とし、これを基準として底面型枠用テープを選定しているため、実機においてもテープの隙間から間詰め材が流出するのを最小限に抑えることができ、間詰め材の品質が向上できる。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記間詰め部の幅に対する前記間詰め材流出幅が12%以下であるものを、底面型枠用テープとして用いる請求項3記載の底面型枠用テープの選定方法が提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明では、間詰め材の幅に対する間詰め材流出幅が12%以下であるものを底面型枠用テープとして選定しているため、テープの隙間から間詰め材が流出するのが所定値以下に抑えられ、より確実に間詰め材の品質が向上できる。
【0019】
請求項5に係る本発明として、前記間詰め材の打設時に、前記テープの剥がれが生じないものを、底面型枠用テープとして用いる請求項1記載の底面型枠用テープの選定方法が提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明では、間詰め材の打設時に、テープの剥がれが生じないものを用いることにより、底面型枠用テープとして更に適したテープが選定できる。
【0021】
請求項6に係る本発明として、前記間詰め材の硬化後、前記テープを剥がす際に剥がしやすいものを、底面型枠用テープとして用いる請求項1記載の底面型枠用テープの選定方法が提供される。
【0022】
上記請求項6記載の発明では、間詰め材の硬化後、テープを剥がす際に剥がしやすいものを用いることにより、底面型枠用テープとして更に適したテープが選定できる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、隣り合うプレキャスト床版の接合端面間に形成された間詰め部の底面型枠として使用されるテープが適切に選定できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】隣り合うプレキャスト床版1A、1Bの接合端面間の底面側斜視図である。
【
図4】試験体を示す、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図である。
【
図5】テープの膨らみSの測定方法を示す間詰め部2の断面図である。
【
図6】間詰め材流出幅Wの測定方法を示す間詰め部2の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
本発明に係る底面型枠用テープの選定方法は、
図1及び
図2に示されるように、隣り合うプレキャスト床版1A、1Bの接合端面間の間詰め部2に間詰め材3を充填する際、底面型枠として使用されるテープを適切に選定するための方法である。
【0027】
前記間詰め部2の幅M(プレキャスト床版1A、1Bの接合端面間の橋軸方向の離隔距離)は、30mm以下、好ましくは20mm以下となる継手構造が用いられる。このような継手構造としては、上記特許文献2などに示されるように、継手部を境に一方側のプレキャスト床版の接合端面に、水平方向に所定の間隔で、平面視で溝型断面からなる溝型係合部を備えた雌継手が縦溝を外部に臨ませた状態で埋設され、
継手部を境に他方側のプレキャスト床版の接合端面に、水平方向に所定の間隔で、先端が外部に突出形成された雄継手アンカー部と、その先端に備えられた前記溝型係合部内に挿入可能な定着部とからなる雄継手が埋設され、
一方側のプレキャスト床版の雌継手に、他方側のプレキャスト床版の雄継手が係合し、プレキャスト床版同士を結合した状態とし、前記溝型係合部の内部空間及び溝型係合部の上部側空間及び/又は下部側空間と、一方側のプレキャスト床版と他方側のプレキャスト床版との間隙部分に間詰め材が充填されたものとするのが好ましい。
【0028】
前記間詰め部2に間詰め材3を充填する際、間詰め部2の底面型枠として、テープ4が使用される。前記テープ4は、基材の片面に粘着剤が塗布された市販の粘着テープである。前記基材の材質としては、樹脂フィルム、樹脂ラミネート材、アルミ箔やステンレス箔などの金属箔などが用いられる。前記粘着剤としては、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ゴム系のいずれでもよいが、市販の粘着テープに多用されているアクリル系のものが好ましい。
【0029】
前記テープ4は、間詰め部2の幅Mより大きな幅寸法を有するものが用いられる。具体的には、38~100mm、好ましくは50~100mmのものを用いるのがよい。前記テープ4は、
図1及び
図2に示されるように、間詰め部2の底部の全長に亘って、連続して設けられるか、途中重なり部を形成しながら分断されたテープが連続的に設けられている。前記テープ4の両側部は、間詰め部2の両側に位置するプレキャスト床版1A、1Bの底面端部に貼着され、その中間の幅方向中央部は、間詰め部2の空間に面するように配置される。
【0030】
前記テープ4は、1層で構成されるか、2層以上を積層して構成される。2層以上積層する場合は、同じ材質のテープでもよいし、異なる材質のテープでもよい。好ましくは、同じ材質のテープを2層積層して配置するのがよい。1層では、間詰め材を打設した際のテープの膨らみを十分に抑えることができず、3層以上では、テープ4を貼り付ける作業に手間がかかる。また、同じ材質のテープを積層することにより、作業性が良好になるとともに、資材コストを抑えることができる。
【0031】
前記テープ4は、プレキャスト床版の側面(橋軸方向と直交する方向の両端面)にも底面型枠用テープに連続して又は底面型枠用テープとは別に配置してもよいが、この面は壁高欄やその基礎部が密着して配置されるため、型枠が不要な場合もある。
【0032】
前記間詰め材3としてはグラウト材が使用され、特にモルタルが好適であるが、その他のグラウト材を用いても構わない。
【0033】
本発明に係る底面型枠用テープの選定方法では、次の試験の結果、テープの膨らみSを基準として、適切な底面型枠用テープを選定している。試験の手順は
図3に示されるように次の通りである。
(1)実機を模擬した試験体における間詰め部2の底面型枠として所定のテープ4を貼着する。
(2)間詰め材3を練り混ぜる。
(3)間詰め部2に間詰め材3を打設する。
(4)間詰め材3の硬化後、間詰め材3の底部の下方への膨出量であるテープの膨らみSを計測する。
【0034】
前記テープ4を変えて上記試験を繰り返し、原則として前記テープの膨らみSが小さいものを底面型枠用テープとして選定する。また、後述する他の測定項目(間詰め材流出幅Wやテープの剥がれ、テープの剥がしやすさ、テープ残りの有無、ベタつきの有無等)を考慮して総合的に判断することも可能である。
【0035】
以下、前記試験について詳細に説明する。
【0036】
上記(1)の工程では、
図4に示されるように、先ずはじめに、実機を模擬した試験体を製作する。試験体は、900×300×30mmのコンクリートパネル10を2枚用意し、長手辺を水平方向に、短手辺を鉛直方向(上下方向)に向けて平面同士を対面させた状態で、これらコンクリートパネル10、10間に、間詰め部2の幅Mと同じ幅寸法を有する2本の角目地棒11を、上下方向に沿うとともに所定の離隔距離を空けて平行して挟み込むことにより、これら2本の角目地棒11、11間に間詰め部2が形成されるようにしたものである。前記角目地棒11は、コンクリートパネル10の長手辺方向の両端より内側に離隔した位置に配置され、短手辺方向(上下方向)の全長に亘って延びている。前記角目地棒11は、コーキング材を塗布することによりコンクリートパネル10、10に接着されるとともに、両コンクリートパネル10の外面側からC型クランプ(図示せず)で加圧することにより固定されている。
【0037】
前記間詰め部2には、底面型枠としてテープ4が貼着される。前記テープ4を貼着する際は、テープ4の幅方向中央部に間詰め部2が位置するように左右均等の位置に配置し、外面側から手で強く押さえ付けることにより、しわにならないようにしっかりと固定する。このとき、ローラなどを用いてテープ4の外面側から押圧力を加えてもよい。
【0038】
テープ4は、少なくとも左右の角目地棒11を含む間詰め部2の形成区間に配置され、それより外側のコンクリートパネル10の長手辺方向の両端部には設けられていない。
【0039】
前記試験体は、テープ4が設けられないコンクリートパネル10の長手辺方向の両端部でそれぞれ支持されており、テープ4が配置された区間の下方側は空間部となっている。
【0040】
上記(2)の工程では、前記間詰め部2に充填する間詰め材3を練り混ぜる。間詰め材3としてモルタルを使用する場合は、土木学会基準のJSCE-F541-2013「充填モルタルの流動性試験方法」に準拠して測定したJ14ロート流下時間が6~10秒の範囲になるように水量を調整する。
【0041】
上記(3)の工程では、間詰め部2に間詰め材3を打設する。打設高さは、実機での打設高さ(設計高さ)と同じ高さを基準とする。前記間詰め材3を打設した直後に、間詰め部2の底部におけるテープ4の剥がれや水漏れの有無を目視で確認する。
【0042】
上記(4)の工程では、間詰め材3の硬化後、
図5に示されるように、間詰め材3の底部の下方への膨出量であるテープの膨らみSを計測する。前記テープの膨らみSは、
図5に示されるように、間詰め部2に打設された間詰め材3の重量によりテープ4が下方に膨出した変形量であり、間詰め部2の幅内における膨出部の頂部とコンクリートパネル10に貼着されたテープ4の外面との高さの差を計測したものである。計測には、定規やノギス、ダイヤルゲージ、ハイトゲージ、レーザー距離計などを用いることができる。計測は、予め間詰め部2が延びる方向に沿って間隔を空けて3箇所以上の計測位置を定めておき、これらの位置における計測値の平均値をテープの膨らみSとする。
【0043】
前記テープの膨らみSは、両端の支点間距離となる間詰め部2の幅Mによっても異なるが、間詰め部2の幅Mに対して10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下であるのがよい。すなわち、S≦M×0.1、好ましくはS≦M×0.08、より好ましくはS≦M×0.05である。例えば、間詰め部2の幅Mを20mmとした場合、テープの膨らみSは2mm以下、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1mm以下であるのがよい。テープの膨らみSが間詰め部2の幅Mに対して10%を超えると、間詰め材3の重量によるテープ4の伸びが大きくなり過ぎて、間詰め材3の局部的な突出による密度の低下などにより間詰め材3の品質が低下するおそれがある。また、後述の実験の結果、テープの膨らみSを小さく抑えることができるテープを2枚重ねて貼着したケースにおいて、テープの膨らみSが1.5mm以下(間詰め部2の幅Mに対するテープの膨らみSの比RSが8%以下)であった。
【0044】
また、間詰め材3の硬化後、テープ4を剥がし、
図6に示されるように、間詰め材3が間詰め部2より外側に流出した幅である間詰め材流出幅Wを計測し、上記テープの膨らみSと併せて、この間詰め材流出幅Wを基準として、底面型枠用テープを選定してもよい。
【0045】
間詰め材流出幅Wは、試験体底面における間詰め材の全幅W
tから間詰め部2の幅Mを引いた値(W=W
t-M)として算出できる。前記間詰め材の全幅W
tは、
図6に示されるように、上記テープの膨らみSと同様の位置でもよいし別の位置でもよいが、予め間詰め部2が延びる方向に沿って間隔を空けて3箇所以上の計測位置を定めておき、これらの位置における計測値の平均値とする。前記間詰め部2の幅Mは、各角目地棒11の外側近傍の位置における計測値の平均値とする。
【0046】
前記間詰め材流出幅Wは、間詰め部2の幅Mに対して12%以下、好ましくは5%以下であるのがよい。すなわち、W≦M×0.12、好ましくはS≦M×0.05である。例えば、間詰め部2の幅Mを20mmとした場合、間詰め材流出幅Wは2.3mm以下、好ましくは1mm以下であるのがよい。間詰め材流出幅Wが間詰め部2の幅Mに対して12%を超えると、この流出部からテープが剥がれやすく、水漏れが生じやすくなるとともに、テープの剥がれによってテープの膨らみも大きくなるおそれがある。また、後述の実験の結果、テープの膨らみSを小さく抑えることができるテープを2枚重ねて貼着したケースにおいて、間詰め材流出幅Wが2.3mm以下(間詰め部2の幅Mに対する間詰め材流出幅Wの比RWが12%以下)であった。
【0047】
また、間詰め材3の硬化後、テープ4を剥がす際に、剥がしやすさを作業員の感覚で評価する。テープ4の剥がしやすさの評価基準としては、人の通常の引張力でスムーズに剥がせるか、途中で引っ掛かりや破れ、切れなどが生じないかなどを挙げることができる。
【0048】
この他、テープ4を剥がした後、テープ残りの有無やベタつきの有無などを計測し、その結果を基に、テープ残りの少ないもの、ベタつきの少ないものを底面型枠用テープとして選定してもよい。
【実施例0049】
本発明に係る底面型枠用テープの選定方法を検証するため、種々のテープ4を用いて上記の試験を行った。
【0050】
使用したテープの種類を表1に示す。なお、表中の物性値は全てメーカーのカタログから引用した数値である。
【表1】
なお、表1において、「テープ厚」は、基材と粘着剤の合計厚さであり、「引張強度」は、1枚当たりの引張強度である。また、実施例7の「第1層」「第2層」とは、2枚積層したテープのうち、試験体側を第1層とし、その外面側を第2層としたものである。
【0051】
間詰め材3として使用するモルタルの配合及び物性値を表2に示す。モルタル25kgに対して、J14ロート流下時間が許容範囲(6~10秒)となるように水量を調整した。
【表2】
なお、フレッシュモルタルの練上り温度は、電子温度計による計測の結果、25~27℃であった。このときの外気温は26~28℃、水温は20℃である。
【0052】
上記の試験体を用いて、プレキャスト床版の設計高さと同じ高さである220mmまで間詰め部2に間詰め材3を打設し、各項目の計測を行った。テープの膨らみS及び間詰め材流出幅Wの計測位置は、間詰め部2の中間部に150mmの間隔を空けて離隔する3箇所とした。
【0053】
試験の結果を表3に示す。なお、表3中、R
Sは、間詰め部2の幅Mに対するテープの膨らみSの比(R
S=S/M×100%)、R
Wは、間詰め部2の幅Mに対する間詰め材流出幅Wの比(R
W=W/M×100%)である。
【表3】
表3に示されるように、テープを2枚重ねて貼着した実施例6及び実施例7は、テープの膨らみSを1.5mm以下(間詰め部2の幅Mに対するテープの膨らみSの比R
Sを8%以下)に抑えることができるようになる。特に、アルミテープを2枚積層して貼着した実施例6は、テープの膨らみSが最も小さく、1mm以下に抑えることができる(間詰め部2の幅Mに対するテープの膨らみSの比R
Sを5%以下に抑えることができる)ため、今回の底面型枠用テープとして最適である。
【0054】
また、テープを2枚重ねて貼着した実施例6及び実施例7は、間詰め材流出幅Wを2.3mm以下(間詰め部2の幅Mに対する間詰め材流出幅Wの比RWを12%以下)に抑えることができる。特に、実施例6は、間詰め材流出幅Wも小さく、1mm以下(間詰め部2の幅Mに対する間詰め材流出幅Wの比RWを5%以下)に抑えることができるため、この点からも底面型枠用テープとして適している。更に、実施例6は、間詰め材打設時の剥がれや水漏れも無く、間詰め材硬化後のテープ4の剥がしやすさも良好であるため、この点からも底面型枠用テープとして適している。
【0055】
なお、テープ4を剥がした後、テープ残りの有無を目視で確認したところ、全てのケースにおいてテープ残りは生じなかった。また、テープ4を剥がした後、ベタつきの有無を手触りで確認したところ、全てのケースにおいて、コンクリートパネル10部分にはベタつきが無かったが、間詰め材3部分にベタつきが残る結果となった。