(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126896
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】車両用成形天井材とその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20240912BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20240912BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240912BHJP
B29C 43/20 20060101ALI20240912BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240912BHJP
B32B 1/00 20240101ALI20240912BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B60R13/02 A
C09J7/35
C09J201/00
B29C43/20
B32B7/025
B32B1/00 Z
B60R16/02 620Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035632
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】509069892
【氏名又は名称】株式会社HOWA
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 智博
(72)【発明者】
【氏名】明智 茂治
【テーマコード(参考)】
3D023
4F100
4F204
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
3D023BB03
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3D023BE28
4F100AB17B
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4J040NA19
(57)【要約】
【課題】車両の機器又は装置に対して送電又は通信を行うルーフハーネスの組付け工数の削減を図ると共に、従来よりも省スペースで車室内空間を確保し得る車両用成形天井材とその製造方法を提供する。
【解決手段】車両の機器又は装置に対して送電又は通信を行うための回路を備えた車両用の成形天井材10,20,30である。成形天井材10,20,30は、薄板状に構成された導電路構成体5を有する一体成形品である。導電路構成体5は、三次元の面状の成形体で構成された基材層2の面形状に沿った形状である。導電路構成体5は、耐熱性を備えた第1絶縁性フィルム5aと、第1絶縁性フィルム5a上に配置され送電又は通信用の回路を構成する導電体5bと、導電体5bを覆う耐熱性を備えた絶縁性第2フィルム5cとを有する。したがって、成形天井材10,20,30の成形後の後工程において、ルーフハーネスを組み付ける必要がなく、工数を短縮できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の機器又は装置に対して送電又は通信を行うための回路を備えた車両用成形天井材であって、
耐熱性を備えた第1絶縁性フィルムと、前記第1絶縁性フィルム上に配置され前記回路を構成する導電体と、前記導電体を覆う耐熱性を備えた第2絶縁性フィルムと、が積層された薄板状の導電路構成体を有し、
前記導電路構成体が、三次元の面状の成形体とされた基材層の面形状に沿った形状とされた、一体成形品である、車両用成形天井材。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用成形天井材であって、
前記導電路構成体は、前記基材層の車体側の面に沿って積層された裏材よりも車体側の面において、面接着された第1接着部を有する、車両用成形天井材。
【請求項3】
請求項1に記載された車両用成形天井材であって、
前記基材層の車体側の面に沿って積層された裏材と前記基材層との間に、前記導電路構成体が配設されており、
前記導電路構成体と前記裏材の車室内側の面、又は前記導電路構成体と前記基材層の車体側の面の少なくとも一方が、面接着された第2接着部を有する、車両用成形天井材。
【請求項4】
請求項1に記載された車両用成形天井材であって、
前記基材層の車室内側の面に沿って積層された表皮材と前記基材層との間に前記導電路構成体が配設されており、
前記導電路構成体と前記基材層の車室内側の面、又は前記導電路構成体と前記表皮材の車体側の面の少なくとも一方が、面接着された第3接着部を有する、車両用成形天井材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載された車両用成形天井材であって、
前記導電路構成体は、導電性薄膜からなる前記導電体を有するフレキシブルプリント基板である、車両用成形天井材。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載された車両用成形天井材であって、
前記導電路構成体は、前記導電体が構成する前記回路を前記車両の機器又は装置用の配線と接続する端子部を有する、車両用成形天井材。
【請求項7】
車両の機器又は装置に対して送電又は通信を行うための回路を備えた車両用成形天井材の製造方法であって、
耐熱性を備えた第1絶縁性フィルムと、前記第1絶縁性フィルム上に配置され前記回路を構成する導電体と、前記導電体を覆う耐熱性を備えた第2絶縁性フィルムとが積層された薄板状の導電路構成体を、平板状の基材層に積層させて積層体を構成する積層工程と、
前記基材層と前記導電路構成体を含む前記積層体を、成形型で一体にして三次元の面状に成形し、成形に伴い前記導電路構成体を前記基材層の面形状に沿った形状とする成形工程と、を含む、車両用成形天井材の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載された車両用成形天井材の製造方法であって、
前記積層工程は、
前記導電路構成体において、前記基材層の車体側の面に積層される裏材と対向する面に、接着層を形成する接着層形成工程と、
前記裏材の車体側の面に前記導電路構成体を貼り合わせる第1貼合工程と、を含む、車両用成形天井材の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載された車両用成形天井材の製造方法であって、
前記積層工程は、
耐熱性のシート部材で構成され前記シート部材の片面に貼り剥がし可能な粘着面を有する第1搬送治具に、前記導電路構成体における前記接着層と反対側の面を前記粘着面に貼り合わせて、前記導電路構成体を仮固定する、仮固定工程と、
前記導電路構成体が仮固定された前記第1搬送治具を、前記導電路構成体の前記接着層が前記裏材の車体側の面と対向するように、前記裏材よりも車体側に配設させる、第1配設工程と、を含み、
前記導電路構成体が仮固定された前記第1搬送治具と前記基材層と前記裏材とを含む前記積層体の両側縁を保持しながら移送する移送工程と、
前記成形工程の後に、前記導電路構成体を残して前記裏材の車体側の面から前記第1搬送治具を剥がす剥がし工程と、を含む、車両用成形天井材の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載された車両用成形天井材の製造方法であって、
前記接着層は、熱可塑性樹脂を含む、車両用成形天井材の製造方法。
【請求項11】
請求項7に記載された車両用成形天井材の製造方法であって、
前記積層工程は、前記基材層の車体側の面、又は前記基材層の車体側の面に積層される裏材の車室内側の面に、前記導電路構成体を貼り合わせる、第2貼合工程を含み、
前記積層体は、前記基材層と前記裏材の間に前記導電路構成体が配設される、車両用成形天井材の製造方法。
【請求項12】
請求項7に記載された車両用成形天井材の製造方法であって、
前記積層工程は、前記導電路構成体を含む回路部と前記回路部から面内方向に延在した保持部とを有するシート部材で構成される第2搬送治具を、前記基材層の車体側の面に積層される裏材と前記基材層の間に配設させる、第2配設工程を含み、
前記第2搬送治具と前記基材層と前記裏材とを含む前記積層体の両側縁を保持しながら移送する移送工程と、
前記成形工程の後に、成形体の外周縁をトリムすると共に、前記回路部を残して、前記第2搬送治具の前記保持部の少なくとも一部をトリムするトリム工程と、を含む、車両用成形天井材の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載された車両用成形天井材の製造方法であって、
前記第2搬送治具は、片面又は両面に熱可塑性樹脂を含む不織布又は熱可塑性樹脂フィルムが積層されている、車両用成形天井材の製造方法。
【請求項14】
請求項7に記載された車両用成形天井材の製造方法であって、
前記積層工程は、前記基材層の車室内側の面に積層される表皮材の車体側の面、又は前記基材層の車室内側の面に、前記導電路構成体を貼り合わせる、第3貼合工程を含み、
前記積層体は、前記基材層と前記表皮材との間に前記導電路構成体が配設される、車両用成形天井材の製造方法。
【請求項15】
請求項7から請求項14のいずれか一項に記載された車両用成形天井材の製造方法であって、
前記導電路構成体は、導電性薄膜からなる前記導電体を有するフレキシブルプリント基板である、車両用成形天井材の製造方法。
【請求項16】
請求項7から請求項14のいずれか一項に記載された車両用成形天井材の製造方法であって、
前記積層工程において配設される前記導電路構成体は、前記導電体が構成する前記回路を前記車両の機器又は装置用の配線と接続する端子部を有する、車両用成形天井材の製造方法。
【請求項17】
請求項7から請求項14のいずれか一項に記載された車両用成形天井材の製造方法であって、
前記積層工程は、前記導電路構成体を自動装置によって配設又は被接着面に貼り合わせる、車両用成形天井材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用成形天井材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の内部には、車両に搭載された電気・電子機器などへの電力供給や信号通信に用いるためのワイヤハーネスが配備されている。例えば、特許文献1には、車両の天井に配備されるルーフ用ワイヤハーネスが開示されている。このルーフ用ワイヤハーネスは、成形天井材に仮止めされた状態で、成形天井材と共に車両の天井部に固定される。ワイヤハーネスを車両用の天井材に固定する方法としては、円筒状に束ねたハーネスを天井材に両面テープで貼り付ける方法等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用の天井材にハーネスを固定する場合、車両の天井部に設置される電装品の装備によりハーネスの回路数が多くなり、これに伴い束ねたハーネスの径も大きくなり、かつ天井材への貼り付け箇所も増加する。また、天井材に両面テープを用いてハーネスを貼り付ける作業は、規定時間内に手作業で行う必要があるため、複数名の作業員を要し、作業の習熟も必要であった。そのため、ハーネスの貼り付け作業工程において工数がかかり、加工コストが高くなる傾向にあった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両の機器又は装置に対して送電又は通信を行うルーフハーネス等の組付け工数の削減を図ると共に、従来よりも省スペースで車室内空間を確保し得る車両用成形天井材とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用成形天井材の一つの特徴は、車両の機器又は装置に対して送電又は通信を行うための回路を備えた車両用成形天井材であって、耐熱性を備えた第1絶縁性フィルムと、前記第1絶縁性フィルム上に配置され前記回路を構成する導電体と、前記導電体を覆う耐熱性を備えた第2絶縁性フィルムとが積層された薄板状の導電路構成体を有し、前記導電路構成体が、三次元の面状の成形体とされた基材層の面形状に沿った形状とされた、一体成形品である。
【0007】
上記構成の一つの特徴及び利点は、車両用成形天井材は基材層と導電路構成体を含む一体成形品である。導電路構成体は、耐熱性を備えた第1絶縁性フィルムと第2絶縁性フィルムの間に、車両の機器又は装置に対して送電又は通信用の回路を構成する導電体が配置されている。したがって、車両用成形天井材は、成形された後の工程において、送電又は通信用のルーフハーネスを組み付ける必要がなく、工数を短縮できる。さらに、導電路構成体は薄板状であり、基材層の面形状に沿った形状になっている。すなわち、導電路構成体は、車両用成形天井材の厚さに影響を及ぼすことなく配設されている。よって、車両用成形天井材の軽量化と省スペース化を図ることができ、車室内空間を確保し得る。
【0008】
上記車両用成形天井材について、前記導電路構成体は、前記基材層の車体側の面に沿って積層された裏材よりも車体側の面において、面接着された第1接着部を有する構成であっても良い。
【0009】
上記構成の一つの特徴及び利点は、成形天井材の裏材より車体側の面、すなわち成形天井材の最裏面に、導電路構成体が配設されている。導電路構成体は、裏材よりも車体側の面において面接着され固定されている。したがって、導電路構成体の剥がれや位置ずれが抑制され、回路の位置の安定を図ることができる。また、導電路構成体は薄板状であるため、成形天井材と車体の間のスペースを必要とせず、車室内空間を確保し易い。
【0010】
上記車両用成形天井材について、前記基材層の車体側の面に沿って積層された裏材と前記基材層との間に、前記導電路構成体が配設されており、前記導電路構成体と前記裏材の車室内側の面、又は前記導電路構成体と前記基材層の車体側の面の少なくとも一方が、面接着された第2接着部を有する構成であっても良い。
【0011】
上記構成の一つの特徴及び利点は、基材層と裏材の間、すなわち成形天井材の中間に導電路構成体が配設されている。さらに導電路構成体は、裏材の車室内側の面又は基材層の車体側の面のうち少なくとも一方に対して面接着により固定されている。したがって、導電路構成体の剥がれ防止、回路の位置の安定を図ることができる。また、導電路構成体は薄板状であり、成形天井材の厚さや形状に影響なく組付けられているため、車室内空間を確保し易い。
【0012】
上記車両用成形天井材について、前記基材層の車室内側の面に沿って積層された表皮材と前記基材層との間に前記導電路構成体が配設されており、前記導電路構成体と前記基材層の車室内側の面、又は前記導電路構成体と前記表皮材の車体側の面の少なくとも一方が、面接着された第3接着部を有する構成であっても良い。
【0013】
上記構成の一つの特徴及び利点は、基材層と表皮材の間、すなわち成形天井材の中間に導電路構成体が配設されている。さらに導電路構成体は、基材層の車室内側の面又は表皮材の車体側の面のうち少なくとも一方に対して面接着により固定されている。したがって、導電路構成体の剥がれ防止、回路の位置の安定を図ることができる。また、成形天井材の車室内側に近い位置に導電路構成体を配設することで、例えば車室内の照明等として利用し得る。
【0014】
上記車両用成形天井材について、前記導電路構成体は、導電性薄膜からなる前記導電体を有するフレキシブルプリント基板であっても良い。
【0015】
上記構成の一つの特徴及び利点は、成形天井材は導電路構成体として導電性薄膜からなる導電体を有するフレキシブルプリント基板が一体化して組付けられている。導電体は、成形天井材における送電又は通信用の回路の配置の自由度に寄与する。また、成形天井材の成形後に、後工程でフレキシブルプリント基板を貼り合わせる必要がなく、製造工程を短縮できる。
【0016】
上記車両用成形天井材について、前記導電路構成体は、前記導電体が構成する前記回路を前記車両の機器又は装置用の配線と接続する端子部を有する構成であっても良い。
【0017】
上記構成の一つの特徴及び利点は、成形天井材における導電路構成体は、端子部を有している。端子部は、回路を車両の機器又は装置用に配線と接続し得る。したがって、成形天井材の成形後に、後工程でコネクタ差し込み形状を形成する必要がない。よって、製造工程を短縮できると共に、製造コストを削減し得る。
【0018】
上記課題を解決する車両用成形天井材の製造方法の一つの特徴は、車両の機器又は装置に対して送電又は通信を行うための回路を備えた車両用成形天井材の製造方法であって、耐熱性を備えた第1絶縁性フィルムと、前記第1絶縁性フィルム上に配置され前記回路を構成する導電体と、前記導電体を覆う耐熱性を備えた第2絶縁性フィルムとが積層された薄板状の導電路構成体を、平板状の基材層に積層させて積層体を構成する積層工程と、前記基材層と前記導電路構成体を含む前記積層体を、成形型で一体にして三次元の面状に成形し、成形に伴い前記導電路構成体を前記基材層の面形状に沿った形状とする成形工程とを含む。
【0019】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、基材層と導電路構成体を含む積層体を一体成形することにより、車両用成形天井材を製造する。導電路構成体は、耐熱性を備えた第1絶縁性フィルムと第2絶縁性フィルムの間に、車両の機器又は装置に対して送電又は通信用の回路を構成する導電体が配置されている。したがって、車両用成形天井材は、成形後の後工程において、送電又は通信用のルーフハーネスを組み付ける必要がなく、工数を短縮できる。さらに、導電路構成体は薄板状であり、基材層の面形状に沿った形状とされる。すなわち、導電路構成体を、車両用成形天井材の厚さに影響を及ぼすことなく配設し得る。よって、車両用成形天井材の軽量化と省スペース化を図ることができる。これにより、車室内空間を確保し得る車両用成形天井材を提供できる。
【0020】
上記車両用成形天井材の製造方法について、前記積層工程は、前記導電路構成体において、前記基材層の車体側の面に積層される裏材と対向する面に、接着層を形成する接着層形成工程と、前記裏材の車体側の面に前記導電路構成体を貼り合わせる第1貼合工程とを含んでも良い。
【0021】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、積層工程において、裏材よりも車体側の面、すなわち成形天井材の最裏面に導電路構成体が配設される。積層工程には、接着層形成工程と第1貼合工程が含まれる。導電路構成体は、裏材と対向する面に接着層が形成され、裏材の車体側の面に貼り合わされる。すなわち、導電路構成体は裏材に面接着されて固定される。したがって、導電路構成体の剥がれや位置ずれを抑制し、回路の位置の安定を図ることができる。
【0022】
上記車両用成形天井材の製造方法について、前記積層工程は、耐熱性のシート部材で構成され前記シート部材の片面に貼り剥がし可能な粘着面を有する第1搬送治具に、前記導電路構成体における前記接着層と反対側の面を前記粘着面に貼り合わせて、前記導電路構成体を仮固定する仮固定工程と、前記導電路構成体が仮固定された前記第1搬送治具を、前記導電路構成体の前記接着層が前記裏材の車体側の面と対向するように、前記裏材よりも車体側に配設させる第1配設工程とを含み、前記導電路構成体が仮固定された前記第1搬送治具と前記基材層と前記裏材とを含む前記積層体の両側縁を保持しながら移送する移送工程と、前記成形工程の後に、前記導電路構成体を残して前記裏材の車体側の面から前記第1搬送治具を剥がす剥がし工程とを含んでも良い。
【0023】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、積層工程には、仮固定工程と第1配設工程が含まれる。仮固定工程において、耐熱性のシート部材で構成される第1搬送治具の所定の位置に、導電路構成体を貼り合わせて仮固定する。そして、第1配設工程において、導電路構成体が仮固定された状態の第1搬送治具を、裏材より車体側に配設させる。これにより、成形天井材における導電路構成体の位置が定まり易く、安定して所定位置に導電路構成体を配設できる。そして第1搬送治具を利用することで、限られたスペースでも導電路構成体を容易に配設できる。積層体を移送するときは、裏材と第1搬送治具の間に導電路構成体が配設されており、第1搬送治具の両側縁が保持される。よって、移送時の導電路構成体の剥がれや位置ずれを抑制し得る。さらに第1搬送治具の粘着面は、貼り剥がし可能である。これにより成形工程の後、第1搬送治具を成形体から剥がすことができ、最裏面に導電路構成体が配設された車両用成形天井材を提供し得る。また第1搬送治具は、再利用し得る。
【0024】
上記車両用成形天井材の製造方法について、前記接着層は、熱可塑性樹脂を含んでも良い。
【0025】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、導電路構成体に形成される接着層は、熱可塑性樹脂を含む。したがって、積層体が成形工程で加熱及び加圧されると、接着層の熱可塑性樹脂が溶融し、導電路構成体と裏材の車体側の面が面接着される。これにより、導電路構成体が裏材の車体側の面に貼り合わされた一体成形品を製造できる。
【0026】
上記車両用成形天井材の製造方法について、前記積層工程は、前記基材層の車体側の面、又は前記基材層の車体側の面に積層される裏材の車室内側の面に、前記導電路構成体を貼り合わせる第2貼合工程を含み、前記積層体は、前記基材層と前記裏材の間に前記導電路構成体が配設される。
【0027】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、積層工程には、第2貼合工程が含まれる。導電路構成体は、基材層の車体側の面、又は裏材の車室内側の面に貼り合わされ、基材層又は裏材と共に積層される。これにより、基材層と裏材の間、すなわち成形天井材の中間に導電路構成体を挟むように配設する。したがって、導電路構成体の剥がれ防止、回路の位置の安定を図ることができる。また、積層工程で導電路構成体を組み込むため、成形後の成形天井材にルーフハーネスを組み込む必要がない。よって作業工数の削減を図ることができる。
【0028】
上記車両用成形天井材の製造方法について、前記積層工程は、前記導電路構成体を含む回路部と前記回路部から面内方向に延在した保持部とを有するシート部材で構成される第2搬送治具を、前記基材層の車体側の面に積層される裏材と前記基材層の間に配設させる、第2配設工程を含み、前記第2搬送治具と前記基材層と前記裏材とを含む前記積層体の両側縁を保持しながら移送する移送工程と、前記成形工程の後に、成形体の外周縁をトリムすると共に、前記回路部を残して、前記第2搬送治具の前記保持部の少なくとも一部をトリムするトリム工程とを含んでも良い。
【0029】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、積層工程には、第2配設工程が含まれる。第2搬送治具は、導電路構成体と含む回路部と、回路部から延在した保持部を有するシート部材で構成される。第2配設工程では、基材層と裏材の間に第2搬送治具を配設させる。これにより、成形天井材における導電路構成体の位置が定まり易く、安定して所定位置に導電路構成体を配設できる。すなわち第2搬送治具を利用することで、導電路構成体を積層間に容易に組み込むことができる。積層体を移送するときは、第2搬送治具の保持部が保持される。よって、移送時の導電路構成体の位置ずれを抑制し得る。第2搬送治具は導電路構成体と同様に薄いため、成形天井材の厚さや形状に影響することなく一体に成形できる。さらに成形後は、成形体と共に第2搬送治具の保持部をトリムできる。
【0030】
上記車両用成形天井材の製造方法について、前記第2搬送治具は、片面又は両面に熱可塑性樹脂を含む不織布又は熱可塑性樹脂フィルムが積層されていても良い。
【0031】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、第2搬送治具は、片面又は両面に熱可塑性樹脂を含む不織布又は熱可塑性樹脂フィルムが積層されている。したがって、積層体が成形工程で加熱及び加圧されると、第2搬送治具の不織布又はフィルムの熱可塑性樹脂が溶融し、第2搬送治具は、基材層と接する面及び裏材と接する面のうちいずれか一方の面、又は両面において面接着される。これにより、第2搬送治具に含まれる導電路構成体の位置が固定される。
【0032】
上記車両用成形天井材の製造方法について、前記積層工程は、前記基材層の車室内側の面に積層される表皮材の車体側の面、又は前記基材層の車室内側の面に、前記導電路構成体を貼り合わせる第3貼合工程を含み、前記積層体は、前記基材層と前記表皮材との間に前記導電路構成体が配設される。
【0033】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、積層工程には、第3貼合工程が含まれる。導電路構成体は、基材層の車室内側の面、又は表皮材の車体側の面に貼り合わされ、基材層又は表皮材と共に積層される。これにより、基材層と表皮材の間、すなわち成形天井材の中間に導電路構成体を挟むように配設する。したがって、導電路構成体の剥がれ防止、回路の位置の安定を図ることができる。また、積層工程で導電路構成体を組み込むため、成形後の成形天井材に人手を使ってルーフハーネスを組み込む必要がない。よって作業工数の削減を図ることができる。
【0034】
上記車両用成形天井材の製造方法について、前記導電路構成体は、導電性薄膜からなる前記導電体を有するフレキシブルプリント基板であっても良い。
【0035】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、導電路構成体として導電性薄膜からなる導電体を有するフレキシブルプリント基板が一体化して組付けられる。導電体は、成形天井材における送電又は通信用の回路の配置の自由度に寄与する。また、成形工程でフレキシブルプリント基板が一体化されるため、成形天井材の製造工程を短縮できると共に、製造コストを削減し得る。
【0036】
上記車両用成形天井材の製造方法について、前記積層工程において配設される前記導電路構成体は、前記導電体が構成する前記回路を前記車両の機器又は装置用の配線と接続する端子部を有していても良い。
【0037】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、積層工程で配設される導電路構成体は、端子部を有している。端子部は、回路を車両の機器又は装置用に配線と接続し得る。したがって、成形天井材の成形後に、後工程でコネクタ差し込み形状を形成する必要がない。よって、製造工程を短縮できると共に、製造コストを削減し得る。
【0038】
上記車両用成形天井材の製造方法について、前記積層工程は、前記導電路構成体を自動装置によって配設又は被接着面に貼り合わせても良い。
【0039】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、積層工程において、導電路構成体が自動装置により配設又は被接着面に貼り合わされる。したがって、人が立ち入ることが難しい場合や、人手による作業が難しい場合であっても、容易に導電路構成体を組み込むことができる。よって、作業員の身体的負担を軽減し得る。そして、成形天井材の最裏面や積層間など任意の位置に導電路構成体を組み込むことができる。また、成形後の成形天井材に人手を使ってルーフハーネスを組み込む必要がなく、作業工数の削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、上記構成をとることにより、車両の機器又は装置に対して送電又は通信を行うルーフハーネス等の組付け工数の削減を図ると共に、従来よりも省スペースで車室内空間を確保し得る車両用成形天井材とその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】第1実施形態に係る成形天井材の斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る成形天井材の断面構成を模式的に示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る仮固定工程を模式的に示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る積層工程を模式的に示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る移送工程を模式的に示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る剥がし工程とトリム工程を模式的に示す図である。
【
図7】第2実施形態に係る成形天井材の斜視図である。
【
図8】第2実施形態に係る成形天井材の断面構成を模式的に示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る積層工程を模式的に示す図である。
【
図10】第2実施形態に係るトリム工程を模式的に示す図である。
【
図11】第3実施形態に係る成形天井材の断面構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
<車両用成形天井材の構成(第1実施形態)>
以下に、本発明の実施形態について、図を用いて説明する。車両には屋根として鋼板製の天井パネルが構成されている。第1実施形態に係る車両用の成形天井材10は、この天井パネルの車室内側に装着される天井材であり、送電又は通信用回路を備えている。この回路は、車両の機器若しくは装置に対して送電を行い、又は車両の機器若しくは装置に対して通信を行うためのものである。
図1、
図2に示すように、成形天井材10は、基材層2、裏材3、表皮材4、導電路構成体5を含む積層体が熱プレスによって加熱及び加圧成形された一体成形品である。なお本実施形態においては、車両及び成形天井材10の前後、左右方向を
図1に示す方向に定めて説明する。
【0043】
成形天井材10は、三次元の面状の成形体で構成された基材層2と、裏材3と、表皮材4を有する。裏材3は、基材層2の車体側(天井パネル側)の面に沿って積層されている。表皮材4は、基材層2の車室内側の面に沿って積層されている。導電路構成体5は、裏材3よりも車体側の面、すなわち成形天井材10の最裏面に配設されており、基材層2の面形状に沿った形状とされている。導電路構成体5と裏材3は互いに接する面において面接着されており、第1接着部12が形成されている。また、車両の天井パネルには、成形天井材10を通じて室内灯、空調吹出口等の各種の装備品が装着される。これに伴い、成形天井材10は車両用装備品の各配設部位に対応して孔が形成されている。
【0044】
導電路構成体5は、薄板状に構成され、柔軟性と耐熱性を備えている。
図2を参照として、本実施形態における導電路構成体5は、耐熱性及び絶縁性を備えたベースフィルム5a(第1絶縁性フィルム)上に導電性薄膜からなる導電体5bが配置され、導電体5bを覆うように耐熱性及び絶縁性を備えたカバーフィルム5c(第2絶縁性フィルム)が積層された、フレキシブルプリント基板である。フレキシブルプリント基板は、例えばポリイミド等の薄く柔らかいベースフィルム5aと銅箔等の薄い導電性金属を貼り合わせた基板において回路を形成し、回路を覆うようにポリイミド等のカバーフィルム5cを貼り合わせて構成されている。
【0045】
導電路構成体5の導電体5bの構成、導電路構成体5が配設される位置等は、成形天井材10における送電又は通信用回路の配置に応じて、適宜設定される。例えば導電路構成体5は、成形天井材10の中央付近において前後方向に帯状に延在する。また、導電路構成体5は、導電路構成体5の任意の箇所に端子部5dが設けられている。端子部5dは、導電体5bがカバーフィルム5cで覆われずに露出している部位であり、回路を車両の機器又は装置用の配線と接続する。
【0046】
基材層2は、
図2に示すように、芯材6と、芯材6の両面に積層された繊維補強材7,8で構成され、熱硬化性接着剤等で固化されている。芯材6は、成形天井材10の形状保持と剛性確保のために設けられており、車室内の吸音、断熱を有する態様も採り得る。芯材6は、繊維系、段ボール系、ウレタン系、発泡オレフィン系等、種々適用できる。本実施形態に係る芯材6は、例えばウレタンフォームが選択される。
【0047】
芯材6の車体側の面には第1の繊維補強材7が、車室内側の面には第2の繊維補強材8がそれぞれ積層されている。第1と第2の繊維補強材7,8は、その表面に熱硬化性接着剤が塗布、又は含浸されて、芯材6の両面にそれぞれ接着されており、成形天井材10の形状保持と剛性向上に寄与する。また、第2の繊維補強材8の車室内側に不織布層が積層されても良い。
【0048】
裏材3は、第1の繊維補強材7の車体側に積層されている。裏材3には、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリルニトリル系等、種々の合成繊維不織布が適用できる。また、裏材3と第1の繊維補強材7の間に非通気性樹脂フィルムが積層されても良い。
【0049】
表皮材4は、第2の繊維補強材8の車室内側に積層されている。表皮材4は、成形天井材10の意匠面を担う部位である。表皮材4は、例えば表面層と、ウレタンフォームシートが積層されたものが選択される。表面層は、ファブリック、クロス、ニット等の布帛や、織布、不織布、希毛布等の布部材、合成皮革、人工皮革、本革等、種々適用できる。ウレタンフォームシートは、成形天井材10に柔らかい触感を得るためにウレタン樹脂発泡体からなる軟質層を適用して積層される。なお、ウレタンフォームシートが積層されない構成としても良い。
【0050】
第1接着部12は、導電路構成体5と裏材3の車体側の面とが互いに面接着した部位である。例えば第1接着部12は、後述する導電路構成体5における接着層の熱可塑性樹脂が熱溶融し、裏材3の車体側の面に含侵して固化することで形成されている。第1接着部12は、導電路構成体5と裏材3の車体側の面とが接着剤又は両面テープによって互いに面接着した構成としても良い。
【0051】
<車両用成形天井材の製造工程(第1実施形態)>
次に、上記第1実施形態に係る成形天井材10の製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法は、積層工程、移送工程、成形工程、剥がし工程、及びトリム工程を含む。また積層工程は、接着層形成工程、仮固定工程、第1配設工程、及び第1貼合工程を含む。
【0052】
積層工程では、
図4に示すように、成形天井材10を構成する表皮材4、芯材6、第1と第2の繊維補強材7,8、裏材3のそれぞれの平板状の原反と、導電路構成体5を積層させる。芯材6と芯材6の両面に積層された繊維補強材7,8が基材層2に相当する。導電路構成体5は、後述する第1搬送治具14に仮固定されて配設される。
【0053】
積層工程には、導電路構成体5における裏材3と対向する面に、接着層を形成する接着層形成工程が含まれる。導電路構成体5は、例えばフレキシブルプリント基板が選択される。導電路構成体5は、ベースフィルム5a側又はカバーフィルム5c側のいずれか一方の面に、接着層が形成される。接着層は、例えば熱可塑性樹脂フィルムで構成される。また、導電路構成体5には、導電体5bが構成する回路を車両の機器又は装置用の配線と接続する端子部5dが形成されている。
【0054】
積層工程には、第1搬送治具14に導電路構成体5を仮固定する仮固定工程が含まれる。第1搬送治具14は、耐熱性と伸縮性を備えたシート部材で構成されている。シート部材は、例えばゴム製シートやフィルム等、適宜選択できる。第1搬送治具14は、芯材6や裏材3等の原反と同等の幅のシート部材が梯子状に切り抜き加工されている。第1搬送治具14は、前後方向に延在する左右の側縁部15と、左右方向に延在して両側縁部15を連結する連結部16が形成される。第1搬送治具14は、シート部材の片面に、弱い粘着性を備えた貼り剥がし可能な粘着面14aを有する。
【0055】
仮固定工程では、
図3に示すように、第1搬送治具14の粘着面14aに、導電路構成体5における接着層と反対側の面を貼り合わせて、導電路構成体5を第1搬送治具14の所定位置に仮固定する。このときの位置合わせのため、第1搬送治具14には、例えば導電路構成体5を貼り合わせる位置に予め目印が印刷されている。
【0056】
積層工程では、
図4に示すように、基材層2の車体側の面に裏材3を積層させる。また、導電路構成体5が仮固定された第1搬送治具14を、導電路構成体5の接着層が裏材3の車体側の面に接するように、裏材3の車体側に配設させる。このとき第1搬送治具14の位置を裏材3等の原反に揃えることで、導電路構成体5を成形天井材10の面における一定の位置に配設できる。第1搬送治具14は、粘着面14aにより裏材3の車体側の面に貼り合わされる。これに伴い、導電路構成体5は裏材3の車体側の面に貼り合わされる。また、基材層2の車室内側の面には、表皮材4を積層させる。積層工程では、例えば積層体の車室内側の面が上側、車体側の面が下側を向くように、すなわち表皮材4が一番上、第1搬送治具14が一番下に位置するように積層される。なお、表皮材4が一番下、第1搬送治具14が一番上に位置するように積層される態様であっても良い。
【0057】
上述するように、本実施形態に係る積層工程には、裏材3よりも車体側に第1搬送治具14を配設させる第1配設工程と、裏材3の車体側の面に導電路構成体5を貼り合わせる第1貼合工程が含まれる。
【0058】
移送工程では、
図5に示すように、導電路構成体5が仮固定された第1搬送治具14、裏材3、基材層2、表皮材4を含む積層体を成形型に移送する。積層体は、その両側縁が挟み込み部材18で挟まれ、まとめて保持された状態で移送される。このとき第1搬送治具14の両側縁部15も保持されているため、導電路構成体5が位置ずれすることなく移送され得る。
【0059】
成形工程では、積層体を、成形型で加熱及び加圧することにより、三次元の面状に一体成形する。成形に伴い、導電路構成体5は基材層2の面形状に沿った形状になる。また、導電路構成体5の接着層の例えば熱可塑性樹脂が熱溶融する等して、導電路構成体5と裏材3が接する面同士が面接着され、第1接着部12が形成される。
【0060】
成形工程の後、
図6に示すように、成形工程後の成形体を上下反転させる。剥がし工程では、導電路構成体5を残して裏材3の車体側の面から第1搬送治具14を剥がす。第1搬送治具14は、成形天井材の製造工程で再利用できる。
【0061】
剥がし工程の後、トリム工程では、成形体の外周縁17を成形天井材10の外周形状に合わせてトリムする。トリムされた成形天井材10は、後工程で付属部品が取り付けられる。
【0062】
本実施形態に係る成形天井材10は、第1搬送治具14を用いることなく、例えば片面に粘着剤が塗布された導電路構成体5のみを、ロボット等の自動装置によって配設又は裏材3の車体側の面(被接着面)に貼り合わせても良い。この場合、固定された裏材3の車体側の面に向かって、下方から導電路構成体5を貼り合わせても良い。
【0063】
<車両用成形天井材の構成(第2実施形態)>
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用の成形天井材20は、
図7に示すように、車両の天井パネルの車室内側に装着される天井材である。成形天井材20は、導電路構成体5を有する三次元の面状の一体成形品である。本実施形態においては、車両及び成形天井材20の前後、左右方向を
図7に示す方向に定めて説明する。なお、第1実施形態と実質的に同様の構成については、説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0064】
成形天井材20は、
図8を参照として、三次元の面状の成形体で構成された基材層2と、裏材3と、表皮材4を有する。裏材3は、基材層2の車体側の面に沿って積層されている。表皮材4は、基材層2の車室内側の面に沿って積層されている。裏材3と基材層2との間には、後述する第2搬送治具24の回路部25と保持部26の一部が配設されている。回路部25は、導電路構成体5が含まれており、この構成によって裏材3と基材層2との間に導電路構成体5が配設される。第1実施形態と同様に、導電路構成体5は、導電性薄膜からなる導電体5bを有するフレキシブルプリント基板であり、回路を車両の機器又は装置用の配線と接続する端子部5dを有する。
【0065】
導電路構成体5を含む第2搬送治具24の一部と、裏材3の車室内側の面は面接着されており、第2接着部22が形成されている。例えば第2接着部22は、後述する導電路構成体5における接着層及び保持部26の接着層、例えば熱可塑性樹脂が熱溶融する等して、裏材3の車室内側の面に含侵して固化することで形成されている。第2接着部22は、接着剤又は両面テープによる接着であっても良い。第2接着部22は、第2搬送治具24と基材層2の車体側が接する面同士が面接着して形成されても良い。また、第2搬送治具24の両側の面に第2接着部22が形成された構成としても良い。
【0066】
<車両用成形天井材の製造工程(第2実施形態)>
次に、上記第2実施形態に係る成形天井材20の製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法は、積層工程、移送工程、成形工程、トリム工程を含む。また積層工程は、第2配設工程、第2貼合工程を含む。なお、第1実施形態と実質的に同様の工程については、説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0067】
積層工程では、
図9に示すように、成形天井材20を構成する表皮材4、芯材6、第1と第2の繊維補強材7,8、裏材3のそれぞれの平板状の原反と、導電路構成体5を積層させる。芯材6と芯材6の両面に積層された繊維補強材7,8が基材層2に相当する。導電路構成体5は、後述する第2搬送治具24と一体になっている。
【0068】
第2搬送治具24は、伸縮性を備えたシート部材で構成され、導電路構成体5を含む回路部25と、回路部25から面内方向に延在した保持部26を有する。回路部25は、例えば成形天井材20の中央付近に配設され、前後方向に延在する(
図7参照)。回路部25における導電路構成体5として、フレキシブルプリント基板が選択される。回路部25は、ベースフィルム5a側又はカバーフィルム5c側のいずれか一方の面に、接着層が形成される。接着層は、例えば熱可塑性樹脂フィルムで構成される。接着層は、導電路構成体5の両側の面に形成しても良い。また、導電路構成体5には、導電体5bが構成する回路を車両の機器又は装置用の配線と接続する端子部5dが形成されている。
【0069】
保持部26は、例えば複数のフィルムが積層された多層フィルムが選択される。保持部26の片面(回路部25の接着層側と同一の面)には、接着層として例えば熱可塑性樹脂フィルムが積層される。熱可塑性樹脂フィルムは、保持部26の両面に積層されても良い。また、熱可塑性樹脂フィルムに代えて、熱可塑性樹脂を含む不織布が積層された構成としても良い。保持部26は、成形天井材20の左右方向において回路部25の例えば片側に延在する。保持部26における回路部25側と反対側の側縁は、後述する移送工程において挟み込み部材により保持される。保持部26における回路部25側は、回路部25と連結される複数の連結部27が形成される。連結部27は間隔をあけて成形天井材20の前後方向に配設されている。連結部27を部分的に配設することにより、第2搬送治具24が占める面積を減らし、成形天井材20の厚さや形状への影響をより少なくし得る。
【0070】
第2搬送治具24は、回路部25と保持部26を一枚続きのフィルムで構成しても良い。例えば、導電路構成体5のベースフィルム5aとカバーフィルム5cが保持部26まで延在する構成としても良い。また、保持部26は、回路部25の両側に延在する構成としても良い。また、例えば熱可塑性樹脂フィルム又は熱可塑性樹脂を含む不織布を、回路部25と保持部26を含む第2搬送治具24の片面又は両面に積層させても良い。
【0071】
図9に示すように、積層工程では、基材層2の車体側の面に裏材3を積層させる。基材層2と裏材3の間には、導電路構成体5を含む第2搬送治具24を配設させる。第2搬送治具24を配設する位置は、任意に設定される。例えば、第2搬送治具24における保持部26の側縁が、基材層2や裏材3の原反の側縁と揃うように配設しても良い。第2搬送治具24は、裏材3の車室内側の面に貼り合わされる。これに伴い、導電路構成体5は裏材3の車室内側の面に貼り合わされる。これにより、導電路構成体5を成形天井材20の面における一定の位置に配設できる。第2搬送治具24の熱可塑性樹脂フィルムは、裏材3の車室内側の面と接する。また、基材層2の車室内側の面に表皮材4を積層させる。積層工程では、例えば積層体の車室内側の面が上側、車体側の面が下側を向くように積層される。
【0072】
移送工程では、裏材3、導電路構成体5を含む第2搬送治具24、基材層2、表皮材4を積層させた積層体を成形型に移送する。積層体は、その両側縁が挟み込み部材で挟まれ、まとめて保持された状態で移送される。このとき第2搬送治具24の保持部26も保持されているため、導電路構成体5が位置ずれすることなく移送され得る。
【0073】
図10に示すように、成形工程では、積層体を、成形型で加熱及び加圧することにより、三次元の面状に一体成形する。成形に伴い、導電路構成体5は基材層2の面形状に沿った形状になる。また、導電路構成体5の接着層及び保持部26の接着層、例えば熱可塑性樹脂が熱溶融して、第2搬送治具24と裏材3が接する面同士が面接着し、第2接着部22が形成される。成形工程後、成形体を上下反転させる。
【0074】
成形工程の後、トリム工程では、加圧成形された成形体の外周縁28を成形天井材20の外周形状に合わせてトリムする。第2搬送治具24は、回路部25を残して、保持部26の少なくとも一部がトリムされる。トリムされた成形天井材20は、後工程で付属部品が取り付けられる。
【0075】
上述するように、本実施形態に係る積層工程には、第2搬送治具24を裏材3と基材層2の間に配設する第2配設工程と、裏材3の車室内側の面に導電路構成体5を貼り合わせる第2貼合工程が含まれる。第2配設工程、及び第2貼合工程は、第2搬送治具24の熱可塑性樹脂フィルムが基材層2の車体側の面と接するように、第2搬送治具24を配設しても良い。これにより、導電路構成体5が基材層2の車体側の面に貼り合わされる。この場合には、成形工程において加熱及び加圧することにより、第2搬送治具24と基材層2が接する面同士が面接着される。
【0076】
本実施形態に係る成形天井材20は、例えば第2搬送治具24の片面に粘着剤を塗布又は両面テープ等によって粘着層を形成しても良い。そして、積層工程において、基材層2と裏材3の間に導電路構成体5が配設されるように、第2搬送治具24の粘着層が形成された面を基材層2の車体側の面、又は裏材3の車室内側の面に貼り合わせても良い。この場合、ロボット等の自動装置によって、被接着面に第2搬送治具24を貼り合わせても良い。
【0077】
また、成形天井材20は、第2搬送治具24を含まず、導電路構成体5のみが基材層2と裏材3の間に配設された構成としても良い。この場合には、第2搬送治具24を用いることなく、例えば片面に粘着剤が塗布された導電路構成体5のみを、ロボット等の自動装置によって貼り合わせても良い。
【0078】
<車両用成形天井材の構成(第3実施形態)>
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用の成形天井材30は、第1実施形態と同様に、車両の天井パネルの車室内側に装着される天井材である。成形天井材30は、導電路構成体5を有する三次元の面状の一体成形品である。なお、第1実施形態、又は第2実施形態と実質的に同様の構成については、説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0079】
成形天井材30は、
図11を参照として、三次元の面状の成形体で構成された基材層2と、裏材3と、表皮材4を有する。裏材3は、基材層2の車体側の面に沿って積層されている。表皮材4は、基材層2の車室内側の面に沿って積層されている。表皮材4と基材層2との間には、第2搬送治具24の回路部25と保持部26の一部が配設されている。第2実施形態と同様に、回路部25は導電路構成体5が含まれており、この構成によって表皮材4と基材層2の間に導電路構成体5が配設されている。導電路構成体5は、第1実施形態と同様に、導電性薄膜からなる導電体5bを有するフレキシブルプリント基板であり、回路を車両の機器又は装置用の配線と接続する端子部5dを有する。
【0080】
導電路構成体5を含む第2搬送治具24の一部と、基材層2の車室内側の面は面接着されており、第3接着部32が形成されている。第3接着部32は、例えば導電路構成体5における接着層及び保持部26の接着層、例えば熱可塑性樹脂が熱溶融し、基材層2の車室内側の面に含侵して固化することで形成されている。第3接着部32は、接着剤又は両面テープによる接着であっても良い。第3接着部32は、第2搬送治具24と表皮材4の車体側が接する面同士が面接着して形成されても良い。また、第2搬送治具24の両側の面に第3接着部32が形成された構成としても良い。
【0081】
<車両用成形天井材の製造工程(第3実施形態)>
次に、上記第3実施形態に係る成形天井材30の製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法は、積層工程、移送工程、成形工程、トリム工程を含む。また積層工程は、第3配設工程、第3貼合工程を含む。なお、第1実施形態、又は第2実施形態と実質的に同様の工程については、説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0082】
積層工程では、
図11を参照として、成形天井材30を構成する表皮材4、芯材6。第1と第2の繊維補強材7,8、裏材3のそれぞれの平板状の原反と、導電路構成体5を積層させる。芯材6と芯材6の両面に積層された繊維補強材7,8が基材層2に相当する。導電路構成体5は、第2搬送治具24と一体になっている。第2搬送治具24の構成は第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0083】
積層工程では、基材層2の車体側の面に裏材3を積層させる。また、基材層2の車室内側の面に表皮材4を積層させる。基材層2と表皮材4の間には、導電路構成体5を含む第2搬送治具24を配設する。第2搬送治具24を配設する位置は、任意に設定される。例えば、第2搬送治具24における保持部26の側縁が、基材層2や表皮材4の原反の側縁と揃うように配設しても良い。第2搬送治具24は、基材層2の車室内側の面に貼り合わされる。これに伴い、導電路構成体5は基材層2の車室内側の面に貼り合わされる。第2搬送治具24の熱可塑性樹脂フィルムは、基材層2の車室内側の面と接する。積層工程では、例えば積層体の車室内側の面が上側、車体側の面が下側を向くように積層される。
【0084】
積層工程の後、第2実施形態と同様にして、移送工程で裏材3、基材層2、導電路構成体5を含む第2搬送治具24、表皮材4を積層させた積層体を成形型に移送する。成形工程では、積層体を、成形型で加熱及び加圧することにより、三次元の面状に一体成形する。成形に伴い、導電路構成体5は基材層2の面形状に沿った形状になる。また、導電路構成体5の接着層及び保持部26の接着層、例えば熱可塑性樹脂が熱溶融して、第2搬送治具24と基材層2が接する面同士が面接着し、第3接着部32が形成される。成形工程の後、第2実施形態と同様にトリム工程を経て、後工程で成形天井材30に付属部品が取り付けられる。
【0085】
上述するように、本実施形態に係る積層工程には、第2搬送治具24を基材層2と表皮材4の間に配設する第3配設工程と、基材層2の車室内側の面に導電路構成体5を貼り合わせる第3貼合工程が含まれる。第3配設工程、及び第3貼合工程は、第2搬送治具24の熱可塑性樹脂フィルムが表皮材4の車体側の面と接するように、第2搬送治具24を配設しても良い。この場合には、成形工程において加熱及び加圧することにより、第2搬送治具24と表皮材4が接する面同士が面接着される。
【0086】
本実施形態に係る成形天井材30は、例えば第2搬送治具24の片面に粘着剤を塗布又は両面テープ等によって粘着層を形成しても良い。そして、積層工程において、基材層2と表皮材4の間に導電路構成体5が配設されるように、第2搬送治具24の粘着層が形成された面を基材層2の車室内側の面、又は表皮材4の車体側の面に貼り合わせても良い。この場合、ロボット等の自動装置によって、被接着面に第2搬送治具24を貼り合わせても良い。
【0087】
また、成形天井材30は、第2搬送治具24を含まず、導電路構成体5のみが基材層2と表皮材4の間に配設された構成としても良い。この場合には、第2搬送治具24を用いることなく、例えば片面に粘着剤が塗布された導電路構成体5のみを、ロボットなどの自動装置によって被接着面に貼り合わせても良い。
【0088】
<実施形態の効果>
上記第1から第3の実施形態によれば、車両用の成形天井材10,20,30は基材層2と導電路構成体5を含む一体成形品である。導電路構成体5は、耐熱性及び絶縁性を備えたベースフィルム5a(第1絶縁性フィルム)とカバーフィルム5c(第2絶縁性フィルム)の間に、車両の機器又は装置に対して送電又は通信用の回路を構成する導電体5bが配置されている。したがって、成形天井材10,20,30は、成形された後の工程において、送電又は通信用のルーフハーネスを組み付ける必要がなく、工数を短縮できる。さらに、導電路構成体5は薄板状であり、基材層2の面形状に沿った形状になっている。すなわち、導電路構成体5は、成形天井材10,20,30の厚さに影響を及ぼすことなく配設されている。よって、成形天井材10,20,30の軽量化と省スペース化を図ることができ、車室内空間を確保し得る。
【0089】
上記第1から第3の実施形態に係る成形天井材10,20,30は、導電路構成体5として、導電性薄膜からなる導電体5bを有するフレキシブルプリント基板が一体化して組付けられている。導電体5bは、成形天井材10,20,30における送電又は通信用の回路の配置の自由度に寄与する。また、成形天井材10,20,30は成形工程でフレキシブルプリント基板が一体化されるため、後工程で貼り合わせる必要がない。よって、製造工程を短縮できると共に、製造コストを削減し得る。
【0090】
上記第1から第3の実施形態に係る成形天井材10,20,30における導電路構成体5は、端子部5dを有している。端子部5dは、回路を車両の機器又は装置用に配線と接続し得る。したがって、成形天井材10,20,30の成形後に、後工程でコネクタ差し込み形状を形成する必要がない。よって、製造工程を短縮できると共に、製造コストを削減し得る。
【0091】
上記第1から第3の実施形態に係る成形天井材10,20,30の製造方法によれば、積層工程において、導電路構成体5を、平板状の基材層2に積層させて積層体を構成する。導電路構成体5は、基材層2より車体側又は車室内側に配設される。そして、成形工程において基材層2と導電路構成体5を含む積層体を一体成形する。導電路構成体5は、耐熱性及び絶縁性を備えたベースフィルム5aとカバーフィルム5cの間に、車両の機器又は装置に対して送電又は通信用の回路を構成する導電体5bが配置されている。したがって、成形天井材10,20,30は、成形後の後工程において、送電又は通信用のルーフハーネスを組み付ける必要がなく、工数を短縮できる。さらに、導電路構成体5は薄板状であり、基材層2の面形状に沿った形状とされる。すなわち、導電路構成体5を、成形天井材10,20,30の厚さに影響を及ぼすことなく配設し得る。よって、成形天井材10,20,30の軽量化と省スペース化を図ることができる。これにより、車室内空間を確保し得る成形天井材10,20,30を提供できる。
【0092】
上記第1から第3の実施形態に係る導電路構成体5は、耐熱性と柔軟性を備えている。したがって、成形型で基材層2などと共に加熱及び加圧した場合に成形体の形状になじみ易く、車両の機器又は装置に対して送電又は通信用の回路を備えた一体成形品を容易に製造できる。
【0093】
上記第1から第3の実施形態に係る成形天井材10,20,30の製造工程において、積層工程で配設される導電路構成体5は、端子部5dを有している。端子部5dは、回路を車両の機器又は装置用に配線と接続し得る。したがって、成形天井材10,20,30の成形後に、後工程でコネクタ差し込み形状を形成する必要がない。よって、製造工程を短縮できると共に、製造コストを削減し得る。
【0094】
上記第1から第3の実施形態に係る成形天井材10,20,30の製造工程では、積層工程において、導電路構成体5をロボット等の自動装置により配設又は被接着面に貼り合わせても良い。これにより、人が立ち入ることが難しい場合や、人手による作業が難しい場合であっても、容易に導電路構成体5を組み込むことができる。したがって、作業員の身体的負担を軽減し得る。そして、成形天井材10,20,30の最裏面や積層間など任意の位置に導電路構成体5を組み込むことができる。また、成形後の成形天井材10,20,30に人手を使ってルーフハーネスを組み込む必要がなく、作業工数の削減を図ることができる。
【0095】
上記第1実施形態に係る成形天井材10は、裏材3よりも車体側の面、すなわち成形天井材10の最裏面に導電路構成体5が配設されている。導電路構成体5は、裏材3よりも車体側の面において面接着され固定されている。したがって、導電路構成体の剥がれや位置ずれが抑制され、回路の位置の安定を図ることができる。また、導電路構成体は薄板状であるため、成形天井材と車体の間のスペースを必要とせず、車室内空間を確保し易い。
【0096】
上記第1実施形態に係る成形天井材10の製造工程は、積層工程において、裏材3よりも車体側の面、すなわち成形天井材10の最裏面に導電路構成体5が配設される。積層工程には、接着層形成工程と第1貼合工程が含まれる。導電路構成体5は、裏材3と対向する面に接着層が形成され、裏材3の車体側の面に貼り合わされる。すなわち、導電路構成体5は裏材3に面接着されて固定される。したがって、導電路構成体5の剥がれや位置ずれを抑制し、回路の位置の安定を図ることができる。
【0097】
上記第1実施形態に係る成形天井材10の製造工程は、積層工程に仮固定工程と第1配設工程が含まれる。仮固定工程において、耐熱性のシート部材で構成される第1搬送治具14の所定の位置に、導電路構成体5を貼り合わせて仮固定する。そして、第1配設工程において、導電路構成体5が仮固定された状態の第1搬送治具14を、裏材3より車体側に配設させる。これにより、成形天井材10における導電路構成体5の位置が定まり易く、安定して所定位置に導電路構成体5を配設できる。そして第1搬送治具14を利用することで、限られたスペースでも導電路構成体5を容易に配設できる。積層体を移送するときは、裏材3と第1搬送治具14の間に導電路構成体5が配設されており、第1搬送治具14の両側縁部15が保持される。よって、移送時の導電路構成体5の剥がれや位置ずれを抑制し得る。さらに第1搬送治具14の粘着面14aは、貼り剥がし可能である。これにより成形工程の後、第1搬送治具14を成形体から剥がすことができ、最裏面に導電路構成体5が配設された車両用の成形天井材10を提供し得る。また第1搬送治具14は、再利用し得る。
【0098】
上記第1実施形態に係る第1搬送治具14は、耐熱性と伸縮性を備えている。したがって、成形型で基材層2などと共に加熱及び加圧した場合に成形体の形状になじみ易く、成形天井材10の形状に影響を与えることなく一体成形できる。
【0099】
上記第1実施形態に係る成形天井材10の製造工程において、導電路構成体5に形成される接着層は、熱可塑性樹脂を含む。したがって、積層体が成形工程で加熱及び加圧されると、接着層の熱可塑性樹脂が溶融し、導電路構成体5と裏材3の車体側の面が面接着される。これにより、導電路構成体5が裏材3の車体側の面に貼り合わされた一体成形品を製造できる。
【0100】
上記第2実施形態に係る成形天井材20は、基材層2と裏材3の間、すなわち成形天井材20の中間に、導電路構成体5が挟まれて配設されている。さらに導電路構成体5は、裏材3の車室内側の面又は基材層2の車体側の面のうち少なくとも一方に対して面接着により固定されている。したがって、導電路構成体5の剥がれ防止、回路の位置の安定を図ることができる。また、導電路構成体5は薄板状であり、成形天井材20の厚さや形状に影響なく組付けられているため、車室内空間を確保し易い。
【0101】
上記第2実施形態に係る成形天井材20の製造工程は、積層工程に第2貼合工程が含まれる。導電路構成体5は、基材層2の車体側の面、又は裏材3の車室内側の面に貼り合わされ、基材層2又は裏材3と共に積層される。これにより、基材層2と裏材3の間、すなわち成形天井材20の中間に導電路構成体5を挟むように配設する。したがって、導電路構成体5の剥がれ防止、回路の位置の安定を図ることができる。また、積層工程で導電路構成体5を組み込むため、成形後の成形天井材20にルーフハーネスを組み込む必要がない。よって作業工数の削減を図ることができる。
【0102】
上記第2実施形態に係る成形天井材20の製造工程は、積層工程に第2配設工程が含まれる。第2搬送治具24は、導電路構成体5と含む回路部25と、回路部25から延在した保持部26を有するシート部材で構成される。第2配設工程では、基材層2と裏材3の間に第2搬送治具24を配設させる。これにより、成形天井材20における導電路構成体5の位置が定まり易く、安定して所定位置に導電路構成体5を配設できる。すなわち第2搬送治具24を利用することで、導電路構成体5を積層間に容易に組み込むことができる。積層体を移送するときは、第2搬送治具24の保持部26が保持される。よって、移送時の導電路構成体5の位置ずれを抑制し得る。第2搬送治具24は導電路構成体5と同様に薄いため、成形天井材20の厚さや形状に影響することなく一体に成形できる。さらに成形後は、成形体と共に第2搬送治具24の保持部26をトリムできる。第3実施形態についても、同様の効果を奏する。
【0103】
上記第2実施形態に係る第2搬送治具24は、伸縮性を備えている。したがって、成形型で基材層2などと共に加熱及び加圧した場合に成形体の形状になじみ易く、成形天井材20の形状に影響を与えることなく一体成形できる。第3実施形態についても、同様の効果を奏する。
【0104】
上記第2実施形態に係る成形天井材20の製造工程において、第2搬送治具24は、片面又は両面に熱可塑性樹脂を含む不織布又は熱可塑性樹脂フィルムが積層されている。したがって、積層体が成形工程で加熱及び加圧されると、第2搬送治具24の不織布又はフィルムの熱可塑性樹脂が溶融し、第2搬送治具24は、基材層2と接する面及び裏材3と接する面のうちいずれか一方の面、又は両面において面接着される。これにより、第2搬送治具24に含まれる導電路構成体5の位置が固定される。第3実施形態についても、同様の効果を奏する。
【0105】
上記第3実施形態に係る成形天井材30は、基材層2と表皮材4の間、すなわち成形天井材30の中間に、導電路構成体5が挟まれて配設されている。さらに導電路構成体5は、基材層2の車室内側の面又は表皮材4の車体側の面のうち少なくとも一方に対して面接着により固定されている。したがって、導電路構成体5の剥がれ防止、回路の位置の安定を図ることができる。成形天井材30の車室内側に近い位置に導電路構成体5を配設することで、例えば車室内の照明等として利用し得る。
【0106】
上記第3実施形態に係る成形天井材30の製造工程は、積層工程に第3貼合工程が含まれる。導電路構成体5は、基材層2の車室内側の面、又は表皮材4の車体側の面に貼り合わされ、基材層2又は表皮材4と共に積層される。これにより、基材層2と表皮材4の間、すなわち成形天井材30の中間に導電路構成体5を挟むように配設する。したがって、導電路構成体5の剥がれ防止、回路の位置の安定を図ることができる。また、積層工程で導電路構成体5を組み込むため、成形後の成形天井材30に人手を使ってルーフハーネスを組み込む必要がない。よって作業工数の削減を図ることができる。
【0107】
本発明に係る車両用の成形天井材10,20,30とその製造方法は、上記実施形態において説明した外観、構成等に限られず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除、構成の組み合わせにより、その他各種の形態で実施できるものである。
【0108】
上記実施形態に係る導電路構成体5として、フレキシブルプリント基板を選択した例を示したが、これに限られず、例えばフレキシブルフラットケーブルを選択できる。フレキシブルフラットケーブルは、第1絶縁性フィルムと第2絶縁性フィルムの間に、薄いケーブル状の導電体が挟まれて配設された構成とされる。
【0109】
本発明に係るフレキシブルプリント基板は、例えば印刷やエッチングなどにより回路パターンが形成された構成等、種々の態様が含まれるものである。
【0110】
上記実施形態に係る基材層2の構成として、ウレタンフォームの芯材6と繊維補強材7,8を積層させた構成の例を示したが、これに限られず、種々の構成を適用できる。例えばガラス繊維と熱可塑性樹脂を含んだ芯材の両面に、不織布からなる繊維層が積層された成形体、あるいは成形不織布などを基材層の構成として選択しても良い。
【0111】
上記実施形態では、積層工程で積層体の車室内側の面が上側、車体側の面が下側を向くように積層させて、加圧成形後に上下反転させる例を示している。これに限られず、積層体の車室内側の面が下側、車体側の面が上側を向くように積層し、加圧成形しても良い。
【符号の説明】
【0112】
2 基材層
3 裏材
4 表皮材
5 導電路構成体
5a ベースフィルム(第1絶縁性フィルム)
5b 導電体
5c カバーフィルム(第2絶縁性フィルム)
5d 端子部
6 芯材
7 第1の繊維補強材
8 第2の繊維補強材
10 成形天井材(車両用成形天井材)
12 第1接着部
14 第1搬送治具
14a 粘着面
15 側縁部
16 連結部
17 外周縁
18 挟み込み部材
20 成形天井材(車両用成形天井材)
22 第2接着部
24 第2搬送治具
25 回路部
26 保持部
27 連結部
28 外周縁
30 成形天井材(車両用成形天井材)
32 第3接着部