(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126908
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】筋力測定方法、筋力測定プログラム、筋力測定システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/22 20060101AFI20240912BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240912BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20240912BHJP
A63B 21/008 20060101ALI20240912BHJP
A63B 24/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61B5/22 200
A61B5/11 210
A61B5/107 300
A61B5/11 200
A63B21/008
A63B24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035659
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】322005909
【氏名又は名称】株式会社エムスポルト
(74)【代理人】
【識別番号】230117846
【弁護士】
【氏名又は名称】長友 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100217032
【弁理士】
【氏名又は名称】常本 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】松田 直樹
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB15
4C038VB40
(57)【要約】 (修正有)
【課題】重心高や運動速度とセットで筋力を測定することにより、スポーツ種目やポジションごとに必要な筋力の定量的な評価を可能とする。
【解決手段】筋力測定システムにおいて、
アーム部材と油圧ダンパーとを備えたトレーニングマシンにおいて、
油圧ダンパーの油圧を検出する圧力センサと、アーム部材の加速度を検出する加速度センサとを備え、
油圧に基づいて油圧ダンパーに作用する作用力を算出する手段と、加速度に基づいてアーム部が水平面となす角度を算出する手段と、支点と力点、支点と作用点との距離、アーム部が水平面となす角度に基づいて、力点に作用する筋力が支点まわりに生成する第1の力のモーメントを算出する手段と、作用点となる油圧ダンパーに作用する作用力が支点まわりに生成する第2の力のモーメントを算出する手段と、第1の力のモーメント及び第2の力のモーメントに基づいて、被験者が発生させた筋力を算出する手段と、を備える。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の筋力を測定するための方法であって、
所定の支点に支持され、前記被験者が発生させた筋力(F)の伝達により移動するアーム部材と、当該アーム部材に対し抵抗力を付与する油圧ダンパーとを備えたトレーニングマシンにおいて、
前記油圧ダンパーの発生油圧データ(p′)を検出する圧力センサと、前記アーム部材の加速度データ(α)を検出する加速度センサとを備え、
前記油圧ダンパーの発生油圧データ(p′)と、前記アーム部材の加速度データを取得するセンサデータ取得ステップと、
前記取得した発生油圧データ(p′)に基づいて、油圧ダンパーに作用する作用力(P)を算出する作用力算出ステップと、
前記取得した加速度データ(α)に基づいて、前記アーム部が水平面となす角度(θ)を算出するアーム部対水平面角度算出ステップと、
前記支点と、前記アーム部材の前記被験者が力を加える力点との距離(L1)、及び、前記支点と作用点となる前記油圧ダンパーとの距離(L2)、及び、前記アーム部が水平面となす角度(θ)に基づいて、
前記アーム部材の前記被験者が力を加える力点に作用する筋力(F)が前記支点まわりに生成する第1の力のモーメントを算出するステップと、
前記作用点となる前記油圧ダンパーに作用する作用力(P)が前記支点まわりに生成する第2の力のモーメントを算出するステップと、
前記算出した第1の力のモーメント、及び前記第2の力のモーメント、及び油圧ダンパーに作用する作用力(P)に基づいて、前記被験者が発生させた筋力(F)を算出するステップと、
を備えたことを特徴とする筋力測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の筋力測定方法において、
さらに、少なくとも前記アーム部の重量に基づいて当該アーム部の重量が前記支点まわりに生成する第3の力のモーメントを算出するステップと、
当該算出した第3の力のモーメントに基づいて前記被験者が発生させた筋力(F)を補正するアーム重量補正ステップと、
を備えたことを特徴とする筋力測定方法。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1つに記載の筋力測定方法において、
さらに、前記被験者の重心高の基準となる重心高基準位置情報を取得又は算出するステップと、
前記重心高基準位置情報及び、前記アーム部対水平面角度算出ステップによって算出した前記アーム部が水平面に対する角度(θ)に基づいて、前記被験者の重心高を算出する重心高算出ステップと、を備え、
前記被験者の重心高毎に前記被験者が発生させた筋力(F)を算出し、
前記被験者の重心高毎の筋力(F)を表示すること、
を特徴とする筋力測定方法。
【請求項4】
請求項1又は2のいずれか1つに記載の筋力測定方法において、
さらに、前記被験者の膝角度の基準となる膝角度基準位置情報を取得するステップと、
前記取得した膝角度基準位置情報及び、前記アーム部対水平面角度算出ステップによって算出した前記アーム部が水平面に対する角度(θ)に基づいて、前記被験者の膝角度を算出するステップと、を備え、
前記被験者の膝角度毎に前記被験者が発生させた筋力(F)を算出し、
前記被験者の膝角度毎の筋力(F)を表示すること、
を特徴とする筋力測定方法。
【請求項5】
請求項3に記載の筋力測定方法において、
前記取得した加速度データ(α)に基づいて、前記被験者の鉛直方向の運動速度に対応する前記アーム部の力点における上昇速度(VZ)を算出する上昇速度算出ステップを備え、
ライブビュー表示する際に、前記被験者の重心高毎に前記被験者が発生させた筋力(F)と共に、上昇速度(VZ)を表示すること、
を特徴とする筋力測定方法。
【請求項6】
請求項4に記載の筋力測定方法において、
前記取得した加速度データ(α)に基づいて、前記被験者の膝の角速度に対応する前記アーム部の力点における角速度(Vθ)を算出する角速度算出ステップを備え、
ライブビュー表示する際に、前記被験者の膝角度毎に前記被験者が発生させた筋力(F)と共に、角速度(Vθ)を表示すること、を特徴とする筋力測定方法。
【請求項7】
請求項3に記載の筋力測定方法において、
さらに、前記上昇速度算出ステップで算出した上昇速度(VZ)の最大値を抽出する最大上昇速度抽出ステップを備え、
前記被験者の鉛直方向の運動速度である上昇速度(VZ)が最大となる重心高を特定すること、を特徴とする筋力測定方法。
【請求項8】
請求項4に記載の筋力測定方法において、
さらに、前記角速度算出ステップで算出した角速度の最大値を抽出する最大角速度抽出ステップを備え、
前記被験者の膝の回転方向の運動速度である回転速度が最大となる膝角度を特定すること、
を特徴とする筋力測定方法。
【請求項9】
コンピュータに、請求項1~2のいずれか1つに記載の筋力測定方法を実行させるためのプログラム。
【請求項10】
コンピュータに、請求項3に記載の筋力測定方法を実行させるためのプログラム。
【請求項11】
コンピュータに、請求項4に記載の筋力測定方法を実行させるためのプログラム。
【請求項12】
コンピュータに、請求項5に記載の筋力測定方法を実行させるためのプログラム。
【請求項13】
コンピュータに、請求項6に記載の筋力測定方法を実行させるためのプログラム。
【請求項14】
被検者の筋力を測定するためのシステムであって、
所定の支点に支持され、前記被験者が発生させた筋力(F)の伝達により移動するアーム部材と、当該アーム部材に対し抵抗力を付与する油圧ダンパーとを備えたトレーニングマシンにおいて、
前記油圧ダンパーの発生油圧データ(p′)を検出する圧力センサと、前記アーム部材の加速度データ加速度データ(α)を検出する加速度センサとを備え、
前記油圧ダンパーの発生油圧データ(p′)と、前記アーム部材の加速度データを取得するセンサデータ取得手段と、
前記取得した発生油圧データ(p′)に基づいて、油圧ダンパーに作用する作用力(P)を算出する作用力算出手段と、
前記取得した加速度データ(α)に基づいて、前記アーム部が水平面となす角度(θ)を算出するアーム部対水平面角度算出手段と、
前記支点と、前記アーム部材の前記被験者が力を加える力点との距離(L1)、及び、前記支点と作用点となる前記油圧ダンパーとの距離(L2)、及び、前記アーム部が水平面となす角度(θ)に基づいて、
前記アーム部材の前記被験者が力を加える力点に作用する筋力(F)が前記支点まわりに生成する第1の力のモーメントを算出する手段と、
前記作用点となる前記油圧ダンパーに作用する作用力(P)が前記支点まわりに生成する第2の力のモーメントを算出する手段と、
前記算出した第1の力のモーメント、及び前記第2の力のモーメント、及び油圧ダンパーに作用する作用力(P)に基づいて、前記被験者が発生させた筋力(F)を算出する手段と、
を備えたことを特徴とする筋力測定システム。
【請求項15】
請求項14に記載の筋力測定システムにおいて、
さらに、少なくとも前記アーム部の重量に基づいて当該アーム部の重量が前記支点まわりに生成する第3の力のモーメントを算出する手段と、
当該算出した第3の力のモーメントに基づいて前記被験者が発生させた筋力(F)を補正するアーム重量補正手段と、
を備えたことを特徴とする筋力測定システム。
【請求項16】
請求項14又は15のいずれか1つに記載の筋力測定システムにおいて、
さらに、前記被験者の重心高の基準となる重心高基準位置情報を取得又は算出する手段と、
前記重心高基準位置情報及び、前記アーム部対水平面角度算出手段によって算出した前記アーム部が水平面に対する角度(θ)に基づいて、前記被験者の重心高を算出する重心高算出手段を備え、
前記被験者の重心高毎に前記被験者が発生させた筋力(F)を算出し、
前記被験者の重心高毎の筋力(F)を表示すること、
を特徴とする筋力測定システム。
【請求項17】
請求項14又は15のいずれか1つに記載の筋力測定システムにおいて、
さらに、前記被験者の膝角度の基準となる膝角度基準位置情報を取得する手段と、
前記取得した膝角度基準位置情報及び、前記アーム部対水平面角度算出手段によって算出した前記アーム部が水平面に対する角度(θ)に基づいて、前記被験者の膝角度を算出する手段を備え、
前記被験者の膝角度毎に前記被験者が発生させた筋力(F)を算出し、
前記被験者の膝角度毎の筋力(F)を表示すること、
を特徴とする筋力測定システム。
【請求項18】
請求項16に記載の筋力測定システムにおいて、
前記取得した加速度データ(α)に基づいて、前記被験者の鉛直方向の運動速度に対応する前記アーム部の力点における上昇速度(VZ)を算出する上昇速度算出手段を備え、
ライブビュー表示する際に、前記被験者の重心高毎に前記被験者が発生させた筋力(F)と共に、上昇速度(VZ)を表示すること、
を特徴とする筋力測定システム。
【請求項19】
請求項17に記載の筋力測定システムにおいて、
前記取得した加速度データ(α)に基づいて、前記被験者の膝の角速度に対応する前記アーム部の力点における角速度(Vθ)を算出する角速度算出手段を備え、
ライブビュー表示する際に、前記被験者の膝角度毎に前記被験者が発生させた筋力(F)と共に、角速度(Vθ)を表示すること、
を特徴とする筋力測定システム。
【請求項20】
請求項16に記載の筋力測定システムにおいて、
さらに、前記上昇速度算出手段で算出した上昇速度(VZ)の最大値を抽出する最大上昇速度抽出手段を備え、
前記被験者の鉛直方向の運動速度である上昇速度(VZ)が最大となる重心高を特定すること、
を特徴とする筋力測定システム。
【請求項21】
請求項17に記載の筋力測定システムにおいて、
さらに、前記角速度算出手段で算出した角速度の最大値を抽出する最大角速度抽出手段を備え、
前記被験者の膝の回転方向の運動速度である回転速度が最大となる膝角度を特定すること、
を特徴とする筋力測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーニングマシンを利用した筋力測定方法、筋力測定プログラム、及び筋力測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会を迎えて、椅子などからの立ち上がり能力、日常の歩行能力、転倒防止能力などの改善を目的とした各種のトレーニング方法及び、ロコモ度テストなどの立ち上がり能力の試験方法などが提案されている。
また、陸上競技をはじめ、バレーボール(以下、図面及び明細書で「バレー」と略すことがある)、バスケット、バトミントン、サッカーなどの競技種目に取り組むアスリートの運動能力の改善や分析を科学的に行うスポーツ科学の研究が盛んに行われている。
このような状況の下、各種のスポーツジムが利用され、全国各地のジムにおいても盛況を呈している。
【0003】
スポーツジムでは、トレーニングマシンとして、所定のアームと作動機構に対し、抵抗として油圧ダンパーを用いた装置(以下、「油圧式トレーニングマシン」という)が用いられている。
油圧式トレーニングマシンは、発揮された力に対して負荷がかかるので安全性が確保できることや、油圧ダンパーの往復抵抗を利用したトレーニングを行うことで、直接動作を起こす主動筋と、その動作を緩めたり止めたりする拮抗筋を交互に収縮させることができ、関節と筋肉をバランス良くトレーニングできるメリットがある。
また、油圧ダンパーの負荷を変化させるようにすれば、訓練目的に応じて、最適な負荷を伴ったトレーニングが可能となるといったメリットもある。
【0004】
しかし、油圧式トレーニングマシンは構造が比較的簡易で、低コストで設置可能である反面、トレーニング自体に用いることができても、筋力を測定して評価するという利用に用いることができなかった。
そこで、筋力測定専用の測定装置として、例えば、特許文献1にロードセルを用いた技術が用いられている。
【0005】
また、特許文献2には、脚部の曲げ伸ばし時の脚力をトレーニングする油圧式トレーニングマシンにおいて、油圧ダンパーに圧力センサを設けると共に、油圧ダンパーのストロークや操作レバー(被動レバー)の回動角度を検出する1又は2以上のセンサを設ける技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、膝の回転トルクを鍛える油圧式トレーニングマシンにおいて、油圧ダンパーに圧力センサを設けると共に、操作レバー(被動レバー)の回動角度を検出するセンサを設ける技術が開示されている。
【0007】
また、立ち上がり動作時の筋力評価については、油圧式トレーニングマシンを利用する技術ではなく、下肢にセンサを装着する技術として、特許文献4の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実登2525055号公報
【特許文献2】特開平04-126165号公報
【特許文献3】特開2018-082734号公報
【特許文献4】特開2020-192307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載の技術では、ロードセルを用いるため、筋力を正確に測定できる半面、複雑なメカニズムと、微小な信号を正確に増幅させるための電子回路などを備えた数百万円~数千万円という価格帯の装置が必要となり、非常に高価であるため、個々のトレーニングマシンに設置し、トレーニングを行いながら筋力も測定するという利用は想定されておらず、個々のトレーニングジムに導入するには難しいという不都合があった。
より詳細には、ロードセルは、ひずみに比例して電気抵抗が変化する4箇所のひずみゲージでホイートストンブリッジを形成して、ひずみに比例した非常に小さな電圧信号が出力されるのを検出し、この小さな信号を増幅し、数値として表示する仕組みを必要とし、装置の規模が大きく高価であるため、個々のトレーニングマシンに設置し、トレーニングを行いながら筋力も測定するという利用ができないという課題があった。
【0010】
また、特許文献1に記載の技術では、
図1に示すように、基本的に回転トルクを直接測定する構造を有しているため、他の運動における筋力の測定には、別途、専用のアタッチメントを付加して測定する必要があった。
【0011】
これに対応する技術として、油圧式トレーニングマシンの油圧ダンパーに、圧力センサを設けたうえで、油圧ダンパーのストロークや、人が操作する操作レバー(被動レバー)の回動角度などを検出するセンサを設ける技術が考案された。
例えば、特許文献2の明細書には、先行技術として、脚部の曲げ伸ばし時の脚力をトレーニングする油圧式トレーニングマシンの油圧ダンパーに、圧力センサ及び油圧ダンパーのストローク量を検出するためのポテンショメータを付加するとともに、利用者が力を加える被動レバーの回動角度を検出するためのエンコーダを被動レバーに付加することで、トレーニングマシンを利用してトレーニングを行いつつ、筋力を測定する技術が開示されている。
【0012】
この特許文献2の明細書中の先行技術の構成例を示したものが
図2である。
図2の装置では油圧ダンパー40の発生圧力を検出する圧力センサ50と、油圧ダンパー40のストロークを検出するポテンショメータ52と、被動レバーの回動角度を検出するエンコーダ54とをトレーニングマシンに取付ける必要があり、検出部の構成が複雑になるという問題があった(課題A)。
【0013】
そこで、これらの課題を解決するため、特許文献2の目的とする改良技術が提案された。
特許文献2の目的とする改良技術を図示したものが
図3である。
図3(A)は特許文献2の目的とする改良技術の構成を示し、
図3(B)は特許文献2の目的とする改良技術を実現するために必要な油圧ダンパーの圧力と速度の関係を示す特性図である。
確かに、
図3(A)の構成によれば、油圧ダンパー40に圧力センサ50を付加するだけで、油圧ダンパーのもつ圧力・速度特性に着目して、圧力から速度を逆算して、速度を積分してストロークを算出し、筋力曲線を生成することが期待できる。
【0014】
しかし、
図3(B)に示すように、速度が低速~中程度の場合、わずかな圧力の差で、導出される速度が大きく変化することから、圧力センサに通常発生する誤差と相まって、圧力から速度を逆算して、速度を積分してストロークを算出する過程におけるストロークの算出誤差が大きくなるという不都合があった。
このため、ストロークに基づいて算出する被動レバーの回動角度についても、算出誤差が大きくなり、ひいては、被動レバーの回動角度に基づいて算出した膝角度の算出誤差も大きくなり、膝角度毎の正確な筋力測定ができないという不都合があった(課題B)。
すなわち、あくまで、油圧ダンパーのストローク毎ないし膝角度毎の大まかな筋力表示が可能であるということに留まり、トレーニングの成果を正確に見える化することができないというものであった。
【0015】
また、特許文献2の目的とする改良技術では、単に、ダンパーのストローク量を算出し、ストローク量から被動レバーの回動角度を算出し、被動レバーの回動角度に基づいて膝角度を算出しているため、個人ごとの足の長さなど体格差に対応した膝角度を算出できるわけではないという問題点があった。
すなわち、筋力測定に際して、膝油圧ダンパー40のストローク量と、個人ごとの体格に合わせて校正した変位量(膝角度など)との関係について考慮されていないため、個人ごとの体格に応じた変位量と筋力の関係について、正確に測定することができないという問題があった(課題C)。
端的には、ストロークが同じでも、個人の足の長さに応じて、そのストロークを膝角度に変換した場合の膝角度の数値が個人ごとに異なることへの配慮が全くなされていないという問題である。
【0016】
そこで、特許文献3の技術が提案された。
特許文献3には、膝の回転トルクを鍛える油圧式トレーニングマシンにおいて、油圧ダンパーに圧力センサを設けると共に、操作レバー(被動レバー)の回動角度を検出するセンサ(ジャイロセンサ)を設ける技術が開示されている。
特許文献3の技術によれば、トレーニングマシンの機構として、膝角度と被動レバーの角度とが略同一になる構成になっており、ジャイロセンサの数値から算出した膝角度の数値を、実際の被験者の膝角度と略同一とみなすことができるため、課題Cをある程度解決することができた。
【0017】
しかし、特許文献2、3の技術では、スポーツの種目やポジションによって、必要となる筋力が異なる点について、どのような指標に基づいて筋力を評価すればよいのかといった問題意識がなく、トレーニング効果を定量的に評価することができないという問題があった(課題D)。
ここで、課題Dの詳細について、
図5~
図6を用いて説明する。
図5は、バレーボールのアタッカーの運動の特徴を示す図であり、
図6は、バレーボールのブロッカーの運動の特徴を示す図である。
【0018】
図5によれば、バレーボールのアタッカーはネットの高さを大きく超える高い位置からのアタックが求められ、比較的低い位置から力を溜めて高くジャンプするといった、膝関節の屈曲が大きい、低い重心位置からのモーションの大きなジャンプが求められることが分かる。また、この場合、かなり低い重心位置から速い上昇速度が求められるという特徴がある。
【0019】
他方、
図6によれば、バレーボールのブロッカーは、相手からの不意を衝く攻撃に対処するため、通常のレシーブ動作に加え、相手からのアタック攻撃に対処するために、比較的高い位置を保った状態でポジショニングを行いつつ、ブロック動作を行うために、膝関節の屈曲が小さい、高い重心位置からモーションの小さなジャンプが求められるという相違がある。また、この場合、ある程度高い重心位置から、早い上昇速度が求められるという特徴がある。
そこで、これらの競技毎の特徴、及びポジション毎に求められる動作の特徴に応じて、適切な指標で筋力を評価できるように、競技特性や運動特性に応じた筋力の定量化が課題となっていた(課題Dの詳細)。
【0020】
また、運動によって発生した変位量として考慮する対象が、単に、ストローク量や膝角度に留まっており、高齢者の歩行能力や立ち上がり能力を正しく評価するための変位量として、どのような指標に基づけばよいのかといった問題意識がなく、高齢者の歩行能力や立ち上がり能力を定量的に評価することができないという問題があった(課題E)。
ここで、課題Eの詳細について、
図7~
図8を用いて説明する。
図7は、高齢者のロコモ度テストの内容を示す図であり、反動をつけずに両足で立ち上がり、立ち上がって3秒間保持するという内容を示している。
図8は、高齢者のロコモ度テストの内容を示す図であり、片足を上げたまま
反動をつけずに片足で立ち上がり、立ち上がって片足を上げたまま3秒間保持するという内容を示している。
ロコモ度テストの場合、これは高齢者が日常生活で椅子から立ち上がる際の筋力や、歩行の際のバランス調整する能力を測定しようとするものであるが、このようなゆっくりと立ち上がる動作で必要とする筋力を、適切な指標で評価できるように、ロコモ度テストの運動特性に応じた筋力評価の定量化が課題となっていた(課題Eの詳細)。
【0021】
また、特許文献3では等速運動を前提としているため、筋力測定における運動速度の評価に対する考慮にも欠けるという問題があった(課題F)。
より具体的には、課題D、課題Eは、スポーツの種目やポジション毎の筋力評価、及び高齢者特有の運動機能の評価の指標としてどのような指標に基づけばよいのか、という問題意識に基づくものであるが、課題Fは、課題D、課題Eとともに、それぞれの運動の運動速度にも着目する必要があるのではないか、という問題意識に基づくため、最終的には、課題D、E、Fを総合的に検討する必要があることになる。
【0022】
なお、運動速度という点については、特許文献4の技術で、脛に取り付けた加速度センサ又は角度センサの変位を、時間軸で見える化している点で、時間単位の変位量(速度と同視することができる指標)として評価できる面があるが、一定の負荷をかけた状態で発生する筋力との関係における運動速度を評価するというわけではないので、本願発明の課題D、E、Fとは問題意識を異にしている。
【0023】
このように、特許文献2の目的とする改良技術によれば、検出部の構成が複雑になるという問題(課題A)を解決できるものの、課題C、D、E、Fを解決するには至らなかった。
また、特許文献3の技術によれば、膝角度と被動レバーの角度とが略同一になる油圧式トレーニングマシンを利用することで、課題Cをある程度解決することができたが、課題D、E、Fを解決するには至らなかった。
また、特許文献4の技術によっても、課題D、E、Fなどを解決するには至らなかった。
【0024】
ここで課題C、D、Eを解決するために、バレーのアタッカーの運動の特徴を改めて分析してみると、膝関節の屈曲が大きい、低い重心位置からのモーションの大きなジャンプが求められるということは、見方を変えると、かなり低い重心位置からの(早い速度での)立ち上がりに置き換えて分析することが可能である(
図5の吹き出しを参照)。
また、バレーのブロッカーの運動の特徴については、膝関節の屈曲が小さい、高い重心位置からモーションの小さなジャンプが求められるということは、見方を変えると、ある程度高い重心位置からの(早い速度での)立ち上がりに置き換えて分析することが可能である(
図6の吹き出しを参照)。
注目されるのは、いずれも、重心位置と運動速度を踏まえつつ筋力を分析すれば、スポーツの種目やポジションに適した筋力の評価が可能であるという見通しが得られるということである。
【0025】
また、高齢者の歩行能力や運動能力を評価する定性的なロコモ度テストについても、
図7の運動では、関節がほぼ直角に曲がった状態から両足での立ち上がりが求められるということは、重心高でみると、低い重心位置からの(ゆっくりした速度での)立ち上がりに置き換えて分析することが可能である(
図7の吹き出しを参照)。
また、
図8の運動では、関節がほぼ直角に曲がった状態から、片足を上げたままでの立ち上がりが求められるということは、重心高でみると、低い重心位置からの(ゆっくりした速度での)立ち上がりに置き換えて分析することが可能である(
図8の吹き出しを参照)。
【0026】
また、
図5~8の運動は、いずれも、特許文献1~3が、椅子に座ったままの状態で脚部の曲げ伸ばしを行う際の筋力を測定するのに留まるのに対し、全身の関節と筋肉が連携しあう、総合関節運動及び総合筋力運動における筋力を測定することになる点で相違する点にも着目できる。
【0027】
今回、筋力を測定する際に利用する油圧式トレーニングマシンの一例として、スクワット訓練装置を用いるが、スクワット時の筋力測定に際し、重心位置と運動速度も加味して筋力を測定することで、スポーツ競技のジャンプ動作に求められる筋力、及び高齢者の歩行能力や運動能力の評価を行うことができるかがポイントとなる。
ここで、以上のようなスポーツの種目やポジションごとの筋力評価、及び高齢者の歩行能力や運動能力の評価の指標として、重心位置と運動速度に着目した指標が適切であるかどうかの検討のために、各運動で作用する筋肉や関節について確認してみることにする。
【0028】
図9は、スポーツ競技のジャンプ動作に求められる筋肉と関節について図示したものである。
また、
図10は、高齢者の立位、歩行に必要な筋肉と関節について図示したものである。
また、
図11は、スクワット時に必要となる筋肉と関節について図示したものである。
【0029】
図9によれば、スポーツ競技のジャンプ動作に求められる筋力を発揮するための筋肉としては、膝を曲げる際に使用するハムストリングス、及び膝を伸ばす際に使用される大腿四頭筋と、床を蹴る際に使用する下腿三頭筋及びつま先を使う際に使用する前脛骨筋が中心的な役割を果たすとともに、股関節を稼働させる際に重要な役割を果たす大臀筋が用いられていることが示されている。
また、上半身を安定した状態に保ったうえで、下半身の筋力を発揮させることが必要となるため、下半身の筋肉に加え、腹筋群及び背筋群などの上半身の筋肉も用いられていることが示されている。
【0030】
図10によれば、高齢者の歩行の際に求められる筋力を発揮するための筋肉としては、膝を曲げる際に使用するハムストリングス、及び膝を伸ばす際に使用される大腿四頭筋を中心に、股関節を稼働させる際に重要な役割を果たす大臀筋が用いられていることが示されている。
また、上半身を安定した状態に保ったうえで、下半身の筋力を発揮させることが必要となるため、下半身の筋肉に加え、腹筋群と背筋群及び腰回りの腸腰筋と中臀筋などの上半身の筋肉も用いられていることが示されている。
なお、(ロコモ度テスト等)高齢者の立位の際に用いられる筋力は、後述のスクワット時(低速時)の筋肉と略同一であるため、図及び説明を省略する。
【0031】
他方、
図11によれば、スクワット時に用いられる筋肉として、上半身を安定させたうえで下半身の筋力を発揮するために、
図9及び
図10に記載した筋肉と略同一の筋肉が用いられることが示されており、また、筋肉と連動して稼働する関節も、
図9及び
図10と概ね同様であることが分かる。
【0032】
従って、スポーツ競技におけるジャンプに求められる筋力の評価、及び高齢者の立位、歩行の際に求められる筋力の評価は、スクワット時に用いられる筋力の評価によって代替できるものであり、かつ、重心の高さごとの筋力、および運動速度を加味すれば、比較的運動速度の速いスポーツ競技における筋力の評価、及び比較的低速な高齢者の立位、歩行の際の運動能力の評価を正しく行える可能性があることが分かる。
【0033】
このように、スクワット時の運動は、複数の筋肉を利用した総合筋力運動であって、かつ、複数の関節を稼働させる総合関節運動の複合運動であり、スポーツ競技におけるジャンプに求められる筋力の評価、及び高齢者の立位、歩行の際に求められる筋力の評価に適していることが分かる。
他方、特許文献1~3のように、従来技術の多くは、椅子に座った状態での筋力を測定するものであり、主に太ももより下肢の筋肉を使った運動時の筋力を測定する点で、腰の関節や腰及び上半身の筋肉までも含めた総合筋力運動及び総合関節運動時の筋力を測定するものではなく、スポーツ競技におけるジャンプに求められる筋力の評価、及び高齢者の立位、歩行の際に求められる筋力の評価を正しく行うことができなかったと考えられる。
【0034】
そこで、本願発明では、既存の油圧式トレーニングマシンを用いつつ、必要最小限のセンサを追加することにより、複数の筋肉を利用した総合筋力運動及び複数の関節を稼働させる総合関節運動における筋力について、重心高および運動速度を含む所定の評価指標を定立して、筋力を測定することにより、スポーツの種目及びポジションごとの筋力の適切かつ定量的な評価を可能とすることを目的とする。
また、定性的な評価であるロコモ度テストに代わる高齢者等の立位、歩行能力の定量的な評価を可能とすることを目的とする。
【0035】
図4は、本発明の一実施例を示す図であって、
図4(A)は、あえて従来技術の
図2及び
図3と同じ態様の構成で比較した場合の構成の一例を示すイメージ図であり、
図4(B)は、本発明のスクワット訓練装置の図で比較した場合の構成の一例を示すイメージ図である。
本発明では、被験者の重心高(又は膝角度)、及び上昇速度などの運動速度(又は膝角度の角速度)などを把握したうえで、重心高毎の筋力を測定したり、どの重心高で、どの程度の運動速度を記録したかという観点で筋力を測定したりすることで、スポーツ種別やポジションごとの筋力の評価、及び高齢者の立位、歩行能力の評価に適した定量的な指標を提示することを目的とする。
このため、
図4(A)(B)に示すように、圧力センサ50のほか、加速度センサ60などを用いて、重心高や運動速度を把握しつつ、筋力の測定を行うことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0036】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、
被検者の筋力を測定するための方法であって、
所定の支点に支持され、前記被験者が発生させた筋力(F)の伝達により移動するアーム部材と、当該アーム部材に対し抵抗力を付与する油圧ダンパーとを備えたトレーニングマシンにおいて、
前記油圧ダンパーの発生油圧データ(p′)を検出する圧力センサと、前記アーム部材の加速度データ(α)を検出する加速度センサとを備え、
前記油圧ダンパーの発生油圧データ(p′)と、前記アーム部材の加速度データ(α)を取得するセンサデータ取得ステップと、
前記取得した発生油圧データ(p′)に基づいて、油圧ダンパーに作用する作用力(P)を算出する作用力算出ステップと、
前記取得した加速度データ(α)に基づいて、前記アーム部が水平面となす角度(θ)を算出するアーム部対水平面角度算出ステップと、
前記支点と、前記アーム部材の前記被験者が力を加える力点との距離(L1)、及び、前記支点と作用点となる前記油圧ダンパーとの距離(L2)、及び、前記アーム部が水平面となす角度(θ)に基づいて、
前記アーム部材の前記被験者が力を加える力点に作用する筋力(F)が前記支点まわりに生成する第1の力のモーメントを算出するステップと、
前記作用点となる前記油圧ダンパーに作用する作用力(P)が前記支点まわりに生成する第2の力のモーメントを算出するステップと、
前記算出した第1の力のモーメント、及び前記第2の力のモーメント、及び油圧ダンパーに作用する作用力(P)に基づいて、前記被験者が発生させた筋力(F)を算出するステップと、
を備えたことを特徴とする筋力測定方法である。
【0037】
第2の発明は、
第1の発明の筋力測定方法において、
さらに、少なくとも前記アーム部の重量に基づいて当該アーム部の重量が前記支点まわりに生成する第3の力のモーメントを算出するステップと、
当該算出した第3の力のモーメントに基づいて前記被験者が発生させた筋力(F)を補正するアーム重量補正ステップと、
を備えたことを特徴とする筋力測定方法である。
【0038】
第3の発明は、
第1又は第2の発明のいずれか1つに記載の筋力測定方法において、
さらに、前記被験者の重心高の基準となる重心高基準位置情報を取得又は算出するステップと、
前記重心高基準位置情報及び、前記アーム部対水平面角度算出ステップによって算出した前記アーム部が水平面に対する角度(θ)に基づいて、前記被験者の重心高を算出する重心高算出ステップと、を備え、
前記被験者の重心高毎に前記被験者が発生させた筋力(F)を算出し、
前記被験者の重心高毎の筋力(F)を表示すること、
を特徴とする筋力測定方法である。
【0039】
第4の発明は、
第1又は第2の発明のいずれか1つに記載の筋力測定方法において、
さらに、前記被験者の膝角度の基準となる膝角度基準位置情報を取得するステップと、
前記取得した膝角度基準位置情報及び、前記アーム部対水平面角度算出ステップによって算出した前記アーム部が水平面に対する角度(θ)に基づいて、前記被験者の膝角度を算出するステップと、を備え、
前記被験者の膝角度毎に前記被験者が発生させた筋力(F)を算出し、
前記被験者の膝角度毎の筋力(F)を表示すること、
を特徴とする筋力測定方法である。
【0040】
第5の発明は、
第3の発明に記載の筋力測定方法において、
前記取得した加速度データ(α)に基づいて、前記被験者の鉛直方向の運動速度に対応する前記アーム部の力点における上昇速度(VZ)を算出する上昇速度算出ステップを備え、
ライブビュー表示する際に、前記被験者の重心高毎に前記被験者が発生させた筋力(F)と共に、上昇速度(VZ)を表示すること、
を特徴とする筋力測定方法である。
【0041】
第6の発明は、
第4の発明に記載の筋力測定方法において、
前記取得した加速度データ(α)に基づいて、前記被験者の膝の角速度に対応する前記アーム部の力点における角速度(Vθ)を算出する角速度算出ステップを備え、
ライブビュー表示する際に、前記被験者の膝角度毎に前記被験者が発生させた筋力(F)と共に、角速度(Vθ)を表示すること、を特徴とする筋力測定方法である。
【0042】
第7の発明は、
第3の発明に記載の筋力測定方法において、
さらに、前記上昇速度算出ステップで算出した上昇速度(VZ)の最大値を抽出する最大上昇速度抽出ステップを備え、
前記被験者の鉛直方向の運動速度である上昇速度(VZ)が最大となる重心高を特定すること、を特徴とする筋力測定方法である。
【0043】
第8の発明は、
第4の発明に記載の筋力測定方法において、
さらに、前記角速度算出ステップで算出した角速度の最大値を抽出する最大角速度抽出ステップを備え、
前記被験者の膝の回転方向の運動速度である回転速度が最大となる膝角度を特定すること、
を特徴とする筋力測定方法である。
【0044】
第9の発明は、コンピュータに、第1~2の発明のいずれか1つに記載の筋力測定方法を実行させるためのプログラムである。
第10の発明は、コンピュータに、第3の発明に記載の筋力測定方法を実行させるためのプログラムである。
第11の発明は、コンピュータに、第4の発明に記載の筋力測定方法を実行させるためのプログラムである。
第12の発明は、コンピュータに、第5の発明に記載の筋力測定方法を実行させるためのプログラムである。
第13の発明は、コンピュータに、第6の発明に記載の筋力測定方法を実行させるためのプログラムである。
【0045】
第14の発明は、
被検者の筋力を測定するためのシステムであって、
所定の支点に支持され、前記被験者が発生させた筋力(F)の伝達により移動するアーム部材と、当該アーム部材に対し抵抗力を付与する油圧ダンパーとを備えたトレーニングマシンにおいて、
前記油圧ダンパーの発生油圧データ(p′)を検出する圧力センサと、前記アーム部材の加速度データ(α)を検出する加速度センサとを備え、
前記油圧ダンパーの発生油圧データ(p′)と、前記アーム部材の加速度データ(α)を取得するセンサデータ取得手段と、
前記取得した発生油圧データ(p′)に基づいて、油圧ダンパーに作用する作用力(P)を算出する作用力算出手段と、
前記取得した加速度データ(α)に基づいて、前記アーム部が水平面となす角度(θ)を算出するアーム部対水平面角度算出手段と、
前記支点と、前記アーム部材の前記被験者が力を加える力点との距離(L1)、及び、前記支点と作用点となる前記油圧ダンパーとの距離(L2)、及び、前記アーム部が水平面となす角度(θ)に基づいて、
前記アーム部材の前記被験者が力を加える力点に作用する筋力(F)が前記支点まわりに生成する第1の力のモーメントを算出する手段と、
前記作用点となる前記油圧ダンパーに作用する作用力(P)が前記支点まわりに生成する第2の力のモーメントを算出する手段と、
前記算出した第1の力のモーメント、及び前記第2の力のモーメント、及び油圧ダンパーに作用する作用力(P)に基づいて、前記被験者が発生させた筋力(F)を算出する手段と、
を備えたことを特徴とする筋力測定システムである。
【0046】
第15の発明は、
第14の発明に記載の筋力測定システムにおいて、
さらに、少なくとも前記アーム部の重量に基づいて当該アーム部の重量が前記支点まわりに生成する第3の力のモーメントを算出する手段と、
当該算出した第3の力のモーメントに基づいて前記被験者が発生させた筋力(F)を補正するアーム重量補正手段と、
を備えたことを特徴とする筋力測定システムである。
【0047】
第16の発明は、
第14又は第15の発明のいずれか1つに記載の筋力測定システムにおいて、
さらに、前記被験者の重心高の基準となる重心高基準位置情報を取得又は算出する手段と、
前記重心高基準位置情報及び、前記アーム部対水平面角度算出手段によって算出した前記アーム部が水平面に対する角度(θ)に基づいて、前記被験者の重心高を算出する重心高算出手段を備え、
前記被験者の重心高毎に前記被験者が発生させた筋力(F)を算出し、
前記被験者の重心高毎の筋力(F)を表示すること、
を特徴とする筋力測定システムである。
【0048】
第17の発明は、
第14又は第15の発明のいずれか1つに記載の筋力測定システムにおいて、
さらに、前記被験者の膝角度の基準となる膝角度基準位置情報を取得する手段と、
前記取得した膝角度基準位置情報及び、前記アーム部対水平面角度算出手段によって算出した前記アーム部が水平面に対する角度(θ)に基づいて、前記被験者の膝角度を算出する手段を備え、
前記被験者の膝角度毎に前記被験者が発生させた筋力(F)を算出し、
前記被験者の膝角度毎の筋力(F)を表示すること、
を特徴とする筋力測定システムである。
【0049】
第18の発明は、
第16の発明に記載の筋力測定システムにおいて、
前記取得した加速度データ(α)に基づいて、前記被験者の鉛直方向の運動速度に対応する前記アーム部の力点における上昇速度(VZ)を算出する上昇速度算出手段を備え、
ライブビュー表示する際に、前記被験者の重心高毎に前記被験者が発生させた筋力(F)と共に、上昇速度(VZ)を表示すること、
を特徴とする筋力測定システムである。
【0050】
第19の発明は、
第17の発明に記載の筋力測定システムにおいて、
前記取得した加速度データ(α)に基づいて、前記被験者の膝の角速度に対応する前記アーム部の力点における角速度(Vθ)を算出する角速度算出手段を備え、
ライブビュー表示する際に、前記被験者の膝角度毎に前記被験者が発生させた筋力(F)と共に、角速度(Vθ)を表示すること、
を特徴とする筋力測定システムである。
【0051】
第20の発明は
第16の発明に記載の筋力測定システムにおいて、
さらに、前記上昇速度算出手段で算出した上昇速度(VZ)の最大値を抽出する最大上昇速度抽出手段を備え、
前記被験者の鉛直方向の運動速度である上昇速度(VZ)が最大となる重心高を特定すること、
を特徴とする筋力測定システムである。
【0052】
第21の発明は、
第17の発明に記載の筋力測定システムにおいて、
さらに、前記角速度算出手段で算出した角速度の最大値を抽出する最大角速度抽出手段を備え、
前記被験者の膝の回転方向の運動速度である回転速度が最大となる膝角度を特定すること、
を特徴とする筋力測定システムである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】従来技術を示す図であって、回転トルクを直接測定するロードセルを利用する態様の筋力測定装置の一例を示す図である。である。
【
図2】従来技術を示す図であって、油圧式トレーニングマシンにおいて、油圧ダンパー40の発生圧力を検出する圧力センサ50と、油圧ダンパー40のストロークを検出するポテンショメータ52と、被動レバーの回動角度を検出するエンコーダ54とを設ける態様の筋力測定装置の一例を示す図である。
【
図3】従来技術を示す図であって、
図2の態様から、圧力センサ50と、ポテンショメータ52を取り去り、油圧ダンパー40の発生圧力を検出する圧力センサ50だけで筋力を測定する筋力測定装置の一例を示す図である。
図3(A)は特許文献2の目的とする改良技術の構成を示し、
図3(B)は特許文献2の目的とする改良技術を実現するために必要な油圧ダンパーの圧力と速度の関係を示す特性図である。
【
図4】本発明の一実施例を示す図であって、
図4(A)は、あえて従来技術の
図2及び
図3と同じ態様の構成で比較した場合の構成の一例を示すイメージ図であり、
図4(B)は、本発明のスクワット訓練装置の図で比較した場合の構成の一例を示すイメージ図である。
【
図5】バレーボールのアタッカーの運動の特徴を示す図であって、バレーボールのアタッカーは、比較的低い位置から力を溜めて高くジャンプするといった、膝関節の屈曲が大きい、低い重心位置からのモーションの大きなジャンプが求められることを示す図である。
【
図6】バレーボールのブロッカーの運動の特徴を示す図であって、バレーボールのブロッカーは、比較的高い位置を保った状態でポジショニングを行いつつ、ブロック動作を行うために、膝関節の屈曲が小さい、高い重心位置からモーションの小さなジャンプが求められることを示す図である。
【
図7】高齢者のロコモ度テストの内容を示す図であり、反動をつけずに両足で立ち上がり、立ち上がって3秒間保持するという内容を示している。
【
図8】高齢者のロコモ度テストの内容を示す図であり、片足を上げたまま反動をつけずに片足で立ち上がり、立ち上がって片足を上げたまま3秒間保持するという内容を示している。
【
図9】スポーツ競技のジャンプ動作に求められる筋肉と関節を示す図であって、主に使用する筋肉、補助的に使用する筋肉、主に稼働する関節を示している。
【
図10】高齢者の立位、歩行に必要な筋肉と関節を示す図であって、主に使用する筋肉、補助的に使用する筋肉、主に稼働する関節を示している。
【
図11】スクワット時に必要となる筋肉と関節を示す図であって、主に使用する筋肉、補助的に使用する筋肉、主に稼働する関節を示している。
【
図12】スクワット訓練装置の一例を示す図(斜視図)である。
【
図13】スクワット訓練装置の一例を示す図(側面図)である。
【
図14】スクワット訓練装置を利用した場合の本発明の測定装置200の構成の一例を示す図である。
【
図15】膝屈伸訓練装置の一例を示す図(側面図)である。
【
図16】膝屈伸訓練装置を利用した場合の本発明の測定装置200の構成の一例を示す図である。
【
図17】スクワット訓練装置を利用した場合の本発明の測定装置の構成を模式的に表現した図であって、装置の各部における力の関係を示すことで、スクワット選択時の筋力を算出するための基礎となる図である。
【
図18】スクワット訓練装置を利用した場合の本発明の測定装置の構成を模式的に表現した図であって、被験者の重心高を算出するための基礎となる図である。
【
図19】膝屈伸訓練装置を利用した場合の本発明の測定装置の構成を模式的に表現した図であって、装置の各部における力の関係を示すことで、膝屈伸選択時の筋力を算出するための基礎となる図である。
【
図20】本発明の筋力測定システムにおける画面表示(ユーザーインターフェース)の状態遷移の一例を示す図である。
【
図21】本発明の筋力測定システムにおける被験者の情報を入力するための利用者登録時の入力画面表示の一例を示す図である。
【
図22】本発明の筋力測定システムにおける測定モード選択時の入力画面表示の一例を示す図である。
【
図23】本発明の筋力測定システムにおけるスクワット選択時の初期設定を行う際の入力画面表示の一例を示す図である。
【
図24】本発明の筋力測定システムにおけるスクワット選択時の各被験者の重心高の基準となる重心高基準位置情報を取得する際の初期設定の入力画面表示であって、重心高基準位置情報として各被験者の最大高さの情報、又は現在の重心高の情報を取得する際の初期設定を行う場合の入力画面表示の一例を示す図である。
【
図25】本発明の筋力測定システムにおける膝屈伸選択時の初期設定を行う際の入力画面表示の一例を示す図である。
【
図26】本発明の筋力測定システムにおける膝屈伸選択時の各被験者の膝角度の基準となる膝角度基準位置情報を取得する際の初期設定の入力画面表示であって、膝角度基準位置情報として各被験者の膝を完全に伸ばした状態の情報、又は現在の膝角度の情報を取得する際の初期設定を行う場合の入力画面表示の一例を示す図である。
【
図27】本発明のスクワット選択時の筋力測定結果のライブビュー画面表示であって、直前の数回の測定における重心高ごとの筋力を表示しつつ、現在測定中の重心高ごとの筋力をリアルタイムで表示するとともに、上昇速度(VZ)をバーグラフ形式で表示した場合の一例を示す図である。
【
図28】本発明の膝屈伸選択時の筋力測定結果のライブビュー画面表示であって、直前の数回の測定における膝角度ごとの筋力を表示しつつ、現在測定中の膝角度ごとの筋力をリアルタイムで表示するとともに、膝角度の角速度をバーグラフ形式で表示した場合の一例を示す図である。
【
図29】本発明のスクワット選択時の筋力測定結果の画面表示であって、被験者の重心高ごとの筋力、及び最大上昇速度を発生した重心高を表示した場合の画面表示の一例を示す図である。
【
図30】本発明のスクワット選択時の筋力測定結果の画面表示であって、バレーボールの選手(アタッカー)の重心高ごと筋力、及び、最大上昇速度を発生した重心高を表示した場合の画面表示の一例を示す図である。
【
図31】本発明のスクワット選択時の筋力測定結果の画面表示であって、バレーボールの選手(ブロッカー)の重心高ごと筋力、及び、最大上昇速度を発生した重心高を表示した場合の画面表示の一例を示す図である。
【
図32】本発明のスクワット選択時の筋力測定結果の画面表示であって、高齢者の改善前及び改善後の重心高ごと筋力の測定結果の一例を示す図である。
【
図33】本発明の膝屈伸選択時の膝伸展時の筋力測定結果の画面表示の一例を示す図である。
【
図34】本発明の膝屈伸選択時の膝屈曲時の筋力測定結果の画面表示の一例を示す図である。
【
図35】本発明の筋力測定システムの機能ブロックの一例を示す図である。
【
図36】本発明の筋力測定システムの構成の一例を示す図であって、サーバー又はクラウド330側でデータ処理を行い、設定情報の入力と結果表示を端末側で行う態様の例を示す図である。
【
図37】本発明のシステム構成の一例を示す図であって、設定情報の入力と測定結果の表示を端末310又は320側で行うと共に、データ処理も端末310又は320側で行う態様の例を示す図である。
【
図38】本発明における被験者の利用者登録に関するデータ構成の一例を示す図である。
【
図39】本発明における被験者の筋力の測定結果に関するデータ構成の一例を示す図である。
【
図40】本発明における被験者のスクワット選択時の筋力の測定結果に関するデータ構成の一例を示す図である。
【
図41】本発明における被験者の膝屈伸選択時の筋力の測定結果に関するデータ構成の一例を示す図である。
【
図42】本発明における圧力センサ、加速度センサの取得データの一例を示す図である。
【
図43】本発明における利用者登録処理のフローチャートの一例を示す図である。
【
図44】本発明における測定条件設定処理のフローチャートの一例を示す図である。
【
図45】本発明におけるスクワット選択時の筋力測定処理のフローチャートの一例を示す図である。
【
図46】本発明における膝屈伸選択時の筋力測定処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0054】
<用語の説明>
◇油圧式トレーニングマシンとは、油圧シリンダによって負荷をかけながら筋肉のトレーニングを行う装置をいう。早く押し出す際には強い力が必要となり、ゆっくり押し出す際には弱い力で良いのが特徴で、利用者の筋力に応じて無理のないトレーニングを行うことができる。このため、体に急な負荷がかかることが無いので、筋肉痛や肉離れが起きにくく、運動中に動作を中止すると、負荷はその時点でなくなる点で安全性が高い。このため、スポーツ選手だけでなく、高齢者も無理なく安全に使えるため、フィットネスジムなどでも導入が進み、広く普及している。構造的には、所定のアームと作動機構に対し、抵抗として油圧ダンパーを設ける構造となっている。
【0055】
◇油圧ダンパーは、ピストンと、ピストンに接続されたピストンロッドと、シリンダと、オイルで構成されている。外部の力が、ピストンロッドを介してピストンを押すときに、シリンダ内に充填されたオイルを押すことで、オイルの抵抗により一定の抵抗力(負荷)を発生させる。油圧ダンパーの内部は、オイルが行き来するための部屋が複数設けられており、オイルが通る孔(オリフィス)の大きさに応じて、抵抗力(負荷)を変化させることができる。オイルが通る孔(オリフィス)の大きさは、ダイヤル等で変化させる機構を備えた油圧ダンパーを用いることができる。油圧の性質により、早く動かすと負荷は大きくなり、ゆっくり動かすと負荷は小さくなる傾向があり、ダイヤルで選択した絞り量と、運動速度に応じた抵抗力を発生させることができる。また、力を抜いてもその場所で止まるため、高齢者でも安全なトレーニングが可能となる。
【0056】
◇利用者とは、油圧式トレーニングマシンを利用してトレーニングを行う者、及び、本発明の筋力測定システムを利用して筋力を測定しようとする者をいう。
◇被験者とは、本発明の筋力測定システムを利用しようとする利用者のうち、実際に筋力測定システムで筋力測定を行っている状態の者をいう。
【0057】
◇ロコモとは、「ロコモティブシンドローム」の略で、「ロコモティブシンドローム」とは、骨や関節の病気、筋力の低下、バランス能力の低下によって転倒・骨折しやすくなることで、自立した生活ができなくなり、介護が必要となる危険性が高い状態を指している。
◇ロコモ度テストとは、所定の高さの台に腰かけた状態からの立ち上がり動作によって下肢筋力を調べるテストと歩幅を調べるテストによって、ロコモ度を確認するテストである。
◇ロコモ度1とは、移動機能の低下が始まっている状態を指し、立ち上がりテストにおいて、どちらか一方の脚で40cmの台から立ち上がれないが、両脚で20cmの台からは立ち上がれる状態をいう。ロコモ度2とは、移動機能の低下が進行している状態を指し、両脚で20cmの台からは立ち上がれないが、30cmの台から立ち上がれる状態をいう。ロコモ度3とは、移動機能の低下が進行し、社会参加に支障をきたしている状態を指し、両脚で30cmの台から立ち上がれない状態をいう。いずれの状態も、定性的な確認にとどまり、筋力を定量的に評価できるわけではないという不都合がある。
【0058】
◇スクワットとは、直立した状態から膝関節の屈曲・伸展を繰り返す運動で、下半身、特に大腿四頭筋、ハムストリングス、前脛骨筋、下腿三頭筋、大臀筋などの筋力アップに大きな効果を持つとされる。また、背筋群、腹筋群など体全体の筋肉も含めた総合筋力運動でもあり、さらに膝関節、足首の関節、股関節などの間接とも連動した総合関節運動である点で、椅子に着座した膝屈伸動作とは相違する。
本発明の油圧式トレーニングマシンを利用する場合には、利用者の体重による負荷に加え、油圧ダンパーの負荷が加わるため、トレーニング効果を一層高めることが期待できる。また、油圧式トレーニングマシンを利用することで、立ち上がりの軌道を安定させ、正確な筋力の測定を可能とし、定量的な筋力の評価に役立つ。この点で、体に加速度センサなどのセンサを付加して筋力を測定する技術(特許文献4)とは相違する。
◇重心高は姿勢によって変わるが、まっすぐ立ち上がった立位時において、成人男性は身長の約56%、成人女性は約55%という統計値がある。本発明においては、まっすぐ立ち上がった状態(重心高の最大値)に対するその時点の重心高の割合(%)で算出しているが、身長に対して重心高の割合(%)を乗じた実際の重心高(m)で算出してもよい。
【0059】
◇膝屈伸とは、膝関節の曲げ伸ばしをいい、膝を伸ばした状態から曲げていく動作を膝屈曲、膝を曲げた状態から伸ばしていく動作を膝伸展と呼ぶ。
◇加速度センサとは、加速度の測定を目的とした慣性センサの1つで、2軸の加速度センサの場合は平面内の慣性運動(X軸とZ軸などの直行2軸)を検出でき、3軸の加速度センサの場合は3次元の慣性運動(直行3軸方向の並進運動)を検出することができる。加速度とは、単位時間当たりの速度の変化率を意味し、
加速度センサによって、重力、動き、振動、衝撃を測定することが可能である。加速度センサの数値に基づいて、傾き(重力方向検出)、平行移動(動き・振動・衝撃・落下)、速度(1階積分)、移動量などの変位(2階積分)などを算出することができる。
センサ素子としては、バネと重りが一体化した物に加速度が加わったときの位置変化を捉え外部からの力により取り付けた重りが移動することでその位置変化を測定する方式、変位の計測には周波数の変化や静電容量の変化を測定する方式、ピエゾ効果による電気抵抗の変化を測定する方式、などがある。
【0060】
◇筋力カーブとは、横軸に重心高又は膝角度をとり、縦軸に筋力の数値をとったときに、筋力の数値が表す直線又は曲線をいう。
◇筋力グラフとは、筋力カーブが表されたグラフをいう。
◇アーム部の重量は、被験者の筋力測定に際し、実際に発生した筋力を減じるファクターであるため、支点から力点までのアーム部の重量によって発生する力のモーメントを第3の力のモーメントと定義して、補正項として用いるものとする。なお、膝屈伸の場合は、被験者の下腿と足の重量が、支点から力点までのアーム部の重量と同様に、実際に発生した筋力を減じるファクターとなるため、膝屈伸の場合の第3の力のモーメントには、支点から力点までのアーム部の重量に加え、下腿と足の重量を力点において換算した重量による力のモーメントも合算するようにしてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明の実施例について説明する。
なお、説明中の油圧式トレーニングマシン、各種センサの配置、及びシステムの構成はあくまで例示であって、他の形状や配置にも適用できる。
【0062】
1-1.油圧式トレーニングマシンについて
1-1-2.スクワット訓練装置
図12、13を用いて、本発明で用いる油圧式トレーニングマシンの一例について説明する。
図12は、スクワット訓練装置220の一例を示す図(斜視図)であり、
図13は、スクワット訓練装置220の一例を示す図(側面図)である。
スクワット訓練装置220は、利用者が持ち手223を手で握って、肩パッド224に肩を当てたうえで、しゃがんだ状態から所定の速度で立ち上がるという、いわゆるスクワット訓練を行うための装置である。
【0063】
利用者が加えた力は肩パッド224付近の力点10を介してアーム222に伝達され、アーム回転軸225を支点30として、作用点20としての油圧ダンパー入力軸226に伝達される。
訓練の際には、油圧ダンパー40の抵抗力(負荷)をダイヤル等で調整し、適当な負荷を発生させたうえで、利用者の能力や強化する筋力に応じたトレーニングを行うことができる。
【0064】
1-1-2.膝屈伸訓練装置
図15は、膝屈伸訓練装置230の一例を示す図(側面図)である。斜視図は省略した。
膝屈伸訓練装置230は、利用者が座面に腰かけて、膝を伸ばす動作(伸展)を行う場合には、円柱状パッド(外側)233に足の甲付近を当て、膝を曲げる動作(屈曲)を行う場合には、円柱状パッド(内側)234に足首付近を当てることで、主に膝まわりの筋肉や関節のトレーニングを行う装置である。
利用者が加えた力は円柱状パッド(外側)及び円柱状パッド(内側)の中央付近の力点10を介してアーム232に伝達され、アーム回転軸235を支点30として、作用点20としての油圧ダンパー入力軸236に伝達される。
訓練の際には、油圧ダンパー40の抵抗力(負荷)をダイヤル等で調整し、適当な負荷を発生させたうえで、利用者の能力や強化する筋力に応じたトレーニングを行うことができる点は、スクワット訓練装置220と同様である。
【0065】
1-2.測定装置について
1-2-1.スクワット訓練装置を利用した測定装置について
図14は、スクワット訓練装置220を利用した測定装置200の一例を示す図である。
図14によれば、被験者600が、肩パット224を介してアーム222に力を加え、アーム回転軸225を支点30として、油圧ダンパー40に力が伝達される様子が示されている。
ここで、肩パット224に力が加わる点を力点10、アーム回転軸225を支点30、油圧ダンパー入力軸226を作用点20とみなすことができる。
作用点20に加えられた力は、油圧ダンパー40に取り付けられた油圧センサ50によって検出され、アーム222に取り付けられた加速度センサ60によって、アーム222が移動する加速度を検出することができる。
【0066】
圧力センサ50は、油圧ダンパー40内の油圧の単位面積当たりの圧力データを検出する。
取得した圧力データに油圧ダンパー40のシリンダの断面積に乗じることで、油圧ダンパーに作用する力を算出することができる。
加速度センサ60は、アームが上下する平面の2次元方向(X軸、Y軸)の2軸センサで足りるが、適宜、被験者の正面に対して左右方向(Z軸)も検出できる3軸センサを用いてもよい。3軸センサを用いた場合には、被験者の正面に対して左右方向(Z軸)の加速度の変位は無視すれば足りる。
なお、傾きの検出や移動距離の検出だけであれば、1軸の加速度センサでも測定できるが、1軸だけだと感度が弱くなる領域が存在するため、2軸目の加速度センサを設けることで、絶えず一定以上の感度で傾きや移動距離を測定することが可能となる。
【0067】
加速度センサ60で取得したデータは、直接的にはアーム222の移動量や移動速度の算出に用いられると共に、最終的には、アーム222が水平面となす角度(θ)や被験者600の重心高、及び立ち上がり速度(上昇速度(VZ))などの算出に用いられる。
アーム222が水平面となす角度(θ)が0度であることの判定は、静止状態で加速度センサのY軸方向の加速度が最大となり、X軸方向の加速度が0となる場合をもって判定可能である。
なお、システムの管理者がアーム222を水平位置に置いた状態で、加速度センサの0点設定を行うことで、アーム222が水平面となす角度(θ)が0度であることと加速度センサの値を対応付けるようにしてもよい。
【0068】
これらの各種センサによって検出したセンサデータは、測定装置に設けられた通信手段240によって、情報処理装置(例えば、端末310、端末320、サーバーまたはクラウド330)に送信される。
なお、通信手段240は油圧センサ50、又は加速度センサ60などの各種センサに内蔵されていてもよいし、各種センサとは別に、測定装置200の一部に取り付けられていてもよい。
また、通信手段240が各種センサとは別に設けられている場合、通信手段と各種センサとが有線で接続されていてもよいし、無線で接続するようにしてもよい。
【0069】
1-2-2.膝屈伸訓練装置を利用した測定装置について
図16は、膝屈伸訓練装置230を利用した測定装置200の一例を示す図である。
図16によれば、被験者600が、円柱状パッド(内側)234又は円柱状パッド(外側)233を介してアーム232に力を加え、アーム回転軸235を支点30として、油圧ダンパー40に力が伝達される様子が示されている。
ここで、 アーム232に力が加わる点を力点10、アーム回転軸235を支点30、油圧ダンパー入力軸236を作用点20とみなすことができる。
作用点20に加えられた力は、油圧ダンパー40に取り付けられた油圧センサ50によって検出され、アーム232に取り付けられた加速度センサ60によって、アーム232が移動する加速度を検出することができる。
【0070】
これらの各種センサの構成、及び各種センサによって検出したセンサデータの取り扱い、及び通信手段240による情報処理装置(例えば、端末310、端末320、サーバーまたはクラウド330)へのデータ送信については、スクワット訓練装置220を利用した測定装置200と同様であるため、説明を省略する。
【0071】
2.筋力の計算方法について
2-1.スクワット選択時
2-1-1.スクワット選択時の筋力の計算
次に、スクワット選択時における被験者600が発生させた筋力の算出方法について説明する。
【0072】
図17は、
図14の測定装置の構成を模式化した図であって、被験者の力を受ける力点10、及び油圧ダンパーに入力される力の作用点20に作用する力を模式化した図である。
図17において、Fは被験者によって発生した力、Mはアーム222の重量、Pは油圧ダンパーに作用する力、L1は支点30から力点10までの長さ(この場合、アーム222の長さに相当)、L2は支点30から作用点20までの長さ、θはアーム222が水平面となす角度をそれぞれ示している。
【0073】
図17によれば、それぞれのモーメントを算出することで、スクワット選択時に被験者600が発生させる筋力を算出できることがわかる。
説明の便宜上、被験者が発生する力(F)が支点30まわりに発生する力のモーメントを第1の力のモーメント、油圧ダンパー40に作用する力(P)が支点30まわりに発生する力のモーメントを第2の力のモーメント、アーム222の重量(M)によって支点30まわりに発生する力のモーメントを第3の力のモーメントと呼ぶことにする。
【0074】
スクワット訓練装置220の構成上、被験者600がアーム222を押す力はアーム222に対し90度の方向から加えられるので第1の力のモーメントはF・L1と表され、アーム222が水平面となす角度θを考慮して第2の力のモーメントはP・cosθ・L2、第3の力のモーメントはM・cosθ・L1で表される。
【0075】
以上の力のモーメントの関係を式で表現すると、
図17に示すように、以下のように表すことができる。
F・L1 = P・cosθ・L2+M・cosθ・L1 (数式1)
ここで、圧力センサで取得した単位面積当たりの圧力をp′、油圧ダンパーのシリンダの断面積をSとすると、油圧ダンパーに作用する力(P)は以下のように表すことができる。
P=p′・S (数式2)
【0076】
なお、第3の力のモーメントはアームの重量(M)によって、被験者が発生した力がロスする分(重力に対して持ち上げる方向の運動の場合)、又は被験者が発生する力にプラスされる分(重力に対して下げる方向の運動の場合)を補正するものであり、精度を高めるための補正であるので、訓練効果(筋力の変化)を正確に把握するためには、この補正を行うことが望ましいが、精度を求めない場合には補正を行わないこととしてもよい。
アームの有効長L1は訓練装置の構成によって様々な値をとることができるが、例えば、0.875mの数値を用いることができる。
また、支点30から作用点20までの長さL2は、訓練装置の構成や油圧ダンパーの配置によって変動するが、例えば、0.445mの数値を用いることができる。
【0077】
また、アーム重量Mは訓練装置の構成(アーム222の長さや太さ、材質等)によって変動し、例えば、55N(約5.6kgf)の数値を用いることができる。
また、単位面積当たりの圧力をp′の単位(Pa)は、1bar=105Pa=105N/平方メートル、で換算することができる。
また、シリンダ半径r(m)は選択する油圧ダンパー40によって変動するが、例えば、0.014mのものを利用することができる。その場合のシリンダ面積S(平方メートル)は、π・r・r=0.000196π(平方メートル)と算出できる。
【0078】
また、アーム222が水平面となす角度θは、加速度センサ60によって取得した加速度データに基づいて算出される。より具体的には、加速度データからアーム222の力点10の変位(移動距離)を算出し、三角関数を用いてアーム222が水平面となす角度を算出することができる。
なお、加速度データから変位(移動距離)を算出する方法としては、加速度データの検出が一定時間間隔のサンプリングによって離散的に行われるため、変位(移動距離)の算出は、台形公式を用いた二回積分(一回積分で速度を算出し、二回積分で変位(移動距離)を算出)を利用する方法などが知られているが、公知技術であるため詳細は省略する。
また、アーム222の力点10の移動速度、すなわち、被験者600が立ち上がる速度(上昇速度(VZ))についても、加速度データを一回積分することで得られるが、公知技術であるため詳細は省略する。
【0079】
2-1-2.スクワット選択時の重心高の計算
次に、被験者600の重心高の算出方法について説明する。
図18は、アーム被験者600の重心高を算出するための模式図である。
静止立位(Z)を基準として、被験者600の運動に応じて変化した高さ(Y)を算出することで、重心高J(%)を求める。
図18において、L1は支点30から力点10までの長さ(この場合、アーム222の長さに相当)、Δθは静止立位からのアーム角度変化量、Yは静止立位からのアーム端(力点10)の移動距離、Zは静止立位時のアーム端(肩パッド224(力点10)の高さをそれぞれ示している。
ここで、アーム222が十分に長い場合、弦(Y)の傾きは無視し、垂直移動とみなすことができるので、静止立位からのアーム端(力点10)の移動距離Yは、
図18に示すように、以下のように表すことができる。
移動距離Y = 2L1・sin(Δθ/2) (数式3)
また、静止立位時の重心高を100とした場合の重心高J(%)は、以下のように表すことができる。
重心高J(%)= (Z-Y)/Z・100 (数式4)
ここで、静止立位からのアーム角度変化量Δθは、前述のアーム222が水平面となす角度θの算出と基本的に同じであり、加速度センサの加速度データに基づいて算出され、より具体的には、加速度データからアーム222の力点10の変位(距離)を算出し、三角関数を用いてアーム222が水平面となす角度を算出され、基準位置が静止立位か水平面かの違いがあるだけであるので、詳細は省略する。
【0080】
静止立位時のアーム端高さ(Z)は、別途、筋力測定システムの利用者登録によって取得した身長から算出してもよいし(
図21参照)、入力画面表示における最大の高さの設定によって(
図24参照)、被験者600の入力操作によって取得してもよい。あるいは、いずれか一方をデフォルト値として、他方で補正するようなキャリブレーションとして利用してもよい。
なお、静止立位時のアーム端高さ(Z)を身長から算出する場合は、身長と肩の高さの統計データから、身長(m)×0.884を用いることができる。
また、以降の測定結果のグラフでは、静止立位時の重心高を100とした場合の重心高Jを用いたが、実際の重心高(成人男性の場合、身長×0.56)を用いてもよい。
【0081】
2-1-3.小括
以上のように、圧力センサで取得した単位面積当たりの圧力p′をもとに油圧ダンパーに作用する力(P)を算出し(数式2)、加速度センサの加速度データに基づいて算出したアーム222が水平面となす角度θの数値を、力のモーメントの式(数式1)に代入することにより、被験者600が発生した筋力Fを算出することができる。
また、上昇速度(VZ)は、サンプリング間隔を考慮して、移動距離Yの単位時間当たりの移動距離から算出することができる。
そして、算出した重心高毎に、筋力データの数値をプロットすることで筋力カーブを示した筋力グラフを生成することができる。
【0082】
2-2.膝屈伸選択時
2-2-1.膝屈伸選択時の筋力の計算
次に、膝屈伸選択時における被験者600が発生させた筋力の算出方法について説明する。
図19は、
図16の測定装置200の構成を模式化した図であって、被験者の力を受ける力点10、及び油圧ダンパーに入力される力の作用点20に作用する力を模式化した図である。
図19において、Fは被験者600によって発生した力、Mはアーム222の重量、Tは膝から足首まで(下腿610)と足612の合計重量tを力点の個所で換算した重量である。
また、Pは油圧ダンパーに作用する力、L1は支点30から力点10までの長さ、L2は支点30から作用点20までの長さ、θはアーム222が水平面となす角度、φは油圧ダンパー40のピストンロッド41とアーム222となす角度、をそれぞれ示している。
【0083】
図19によれば、それぞれのモーメントを算出することで、膝屈伸選択時に被験者600が発生させる筋力を算出できることがわかる。
説明の便宜上、被験者が発生する力(F)が支点30まわりに発生する力のモーメントを第1の力のモーメント、油圧ダンパー40に作用する力(P)が支点30まわりに発生する力のモーメントを第2の力のモーメント、アーム232の重量(M)によって支点30まわりに発生する力のモーメントを第3の力のモーメントと呼ぶことにする。
【0084】
膝屈伸訓練装置230の構成上、被験者600がアーム232を押す力はアーム232に対し90度の方向から加えられるので第1の力のモーメントはF・L1と表され、ピストンロッド41となす角度φを考慮して第2の力のモーメントはP・cosφ・L2、第3の力のモーメントはM・cosθ・L1で表される。
なお、膝屈伸の場合は、被験者の下腿と足の重量tが、支点から力点までのアーム部の重量と同様に、実際に発生した筋力を減じるファクターとなるため、膝屈伸の場合の第3の力のモーメントには、支点から力点までのアーム部の重量に加え、下腿と足の重量を力点において換算した重量Tによる力のモーメントも合算するようにしてもよい。この場合、第3の力のモーメントは(M+T)・cosθ・L1で表される。
【0085】
以上の力のモーメントの関係を式で表現すると、
図19に示すように、以下のように表すことができる。
F・L1 = P・cosφ・L2±(M+T)・cosθ・L1 (数式5)
ここで、膝から足首まで(下腿610)と足612の重量をtとすると、力点10における被験者600の下腿610と足612の重量tの換算値Tは、以下のように表すことができる。
T=t・0.606 (数式6)
また、圧力センサで取得した単位面積当たりの圧力をp′、油圧ダンパーのシリンダの断面積をSとすると、油圧ダンパーに作用する力(P)はP=p′・Sで表される点は、前述の数式2と同様である。
P= p′・S (数式2)
また、下腿610と足612の重量tは、体重に比例し、以下のように表すことができる。
t=体重(N)×0.061 (数式7)
また、油圧ダンパー40のピストンロッド41とアーム222となす角度φは、アーム232が水平面となす角度θに比例し、一例として、以下のように表すことができる。
φ=-1.1×θ+59.2 (数式8)
【0086】
なお、第3の力のモーメントは、アームの重量(M)及び被験者600の下腿610と足612の重量t(換算値T)による影響を補正する項であり、精度を高めるための補正であるので、訓練効果(筋力の変化)を正確に把握するためには、これらの補正を行うことが望ましいが、アームの重量(M)による力のモーメント、又は下腿610と足612の重量t(換算値T)による力のモーメントのいずれか一方の補正だけを行ってもよいし、精度を求めない場合には、補正を行わないこととしてもよい。
補正する場合において、膝伸展の場合(足を上げる方向の場合)には、被験者600が発生した筋力をロスした分としてプラス方向に補正し、膝屈曲の場合(足を下げる方向の場合)には、被験者600が発生した筋力に上乗せされた分としてマイナス方向に補正する。
【0087】
アームの有効長L1は訓練装置の構成によって様々な値をとることができるが、例えば、膝伸展の場合に0.350m、膝屈曲の場合に0.315mの数値を用いることができる。両者で数値が異なるのは、下腿610の脛側でアーム232と当接する場合の方が、下腿610のアキレス腱側でアーム232と当接する場合よりも、アームの実効長さが長くなるためである。
また、支点30から作用点20までの長さL2は、訓練装置の構成や油圧ダンパーの配置によって変動するが、例えば、0.445mの数値を用いることができる。
また、アーム重量Mは訓練装置の構成(アーム232の長さや太さ、材質等)によって変動し、例えば、38N(約3.9kgf)の数値を用いることができる。
【0088】
2-2-2.小括
圧力センサで取得した単位面積当たりの圧力p′をもとに油圧ダンパーに作用する力(P)を算出し(数式2)、加速度センサの加速度データに基づいて算出したアーム232が水平面となす角度θの数値を、力のモーメントの式(数式5)に代入することにより、被験者600が発生した筋力Fを算出することができる。
また、膝の角速度(Vθ)は、サンプリング間隔を考慮して、θの単位時間当たりの変位量から算出することができる。
そして、算出した膝角度毎に、筋力データの数値をプロットすることで筋力カーブを示した筋力グラフを生成することができる。
【0089】
3.筋力測定システムについて
3-1.画面表示(ユーザーインターフェース)の状態遷移
次に、筋力測定システムの画面表示(ユーザーインターフェース)の状態遷移について説明する。
図20は、本発明の筋力測定システムにおける画面表示(ユーザーインターフェース)の状態遷移の一例を示す図である。
図20に示すように、利用者は、筋力測定システムにログインし、メインメニューの中から、適宜、利用者一覧を選択して利用者登録及び利用者の情報を更新したり、測定条件設定を選択して測定条件を設定のうえで測定を開始したり、測定履歴一覧を選択して過去の測定結果の履歴を確認したりすることができる。
【0090】
3-2.各入力画面表示について
次に、
図21~
図26を用いて、入力画面表示及び入力受付処理について説明する。
【0091】
(1)利用者登録の入力画面表示
図21は、利用者登録の入力画面表示の一例であり、利用者(被験者600と同義)の身長、体重、生年月日、性別、氏名などの情報を入力し、登録を行う。
入力されたデータは、記憶部150に利用者情報として保存される。
また、身長のデータは、静止立位時のアーム端高さ(Z)や重心高の算出に用いられ、体重のデータは、下腿と足の重量(t)の算出にも用いられる。
【0092】
(2)測定モード選択の入力画面表示
図22は、測定モード選択の入力画面表示の一例であり、メインメニューから測定条件設定を選択し、スクワットまたは膝屈伸のトレーニングを行う際の筋力測定の選択画面を示している。
【0093】
(3)スクワット選択時の入力画面表示
図23は、
図22でスクワットを選択した際の入力画面表示の一例であり、ダンパー目盛り(抵抗値)、及び測定の回数などの設定を行う際の入力画面を示している。
ダンパー目盛りと抵抗の数値は、使用する油圧ダンパーによって変わるが、目盛り1の場合に5kN、目盛り2で6kN、目盛り3で11kN、目盛り4で12kN、目盛り5で15kNなどのものを用いることができる。
利用者の年齢、性別、身長や体重、運動経験などの属性によって、訓練に最適なダンパーの抵抗値が変わり、適宜、利用者の属性によってダンパー目盛りが設定される。
【0094】
(4)スクワット選択時の最大高さの高さの入力画面表示
図24は、スクワット選択時の入力画面表示の一例であり、最大の高さ又は現在の重心高の設定を行う際の入力画面を示している。
最大の高さは、静止立位時のアーム端の高さ(肩パッドの高さ)に相当し、身長を基準に、身長×0.884による計算で算出することができるが、本設定により設定してもよい。あるいは、いずれか一方をデフォルト値として、他方で補正するようなキャリブレーションとして利用してもよい。
利用者は、脚を完全に伸ばして立った状態でOKボタンを押下することで、その時点のアーム端の高さ(肩パッドの高さ)を最大の高さとして設定する。
あるいは、脚を完全に伸ばすことができない場合は、現在の重心高を別途測定したうえで入力することもできる。
【0095】
(5)膝屈伸選択時の入力画面表示
図25は、膝屈伸選択時の入力画面表示の一例であり、メインメニューから測定条件設定を選択し、
図22で膝屈伸を選択した際の、入力画面表示である。
図25では、一例として、左右のいずれの膝を測定するか、あるいは両側の膝を選択するかという設定が可能であることを示している。
このあと、ダンパー目盛り(抵抗値)、および測定回数の設定を行う画面に移行するが、
図23と同様であるため説明を省略する。
【0096】
(6)膝屈伸選択時の入力画面表示
図26は、膝屈伸選択時の入力画面表示の一例であり、膝角度が0度の設定、又は現在の膝角度の設定を行う際の、入力画面を示している。
利用者は、膝を完全に伸ばした状態でOKボタンを押下することで、その時点の膝角度を0度として設定する。
あるいは、膝を完全に伸ばすことができない場合は、現在の膝角度を別途測定したうえで入力することもできる。
【0097】
3-3.測定結果の画面表示について
次に、
図27~
図34を用いて、測定結果の画面表示について説明する。
【0098】
図27は、スクワット選択時の筋力測定結果のライブビュー画面表示の一例を示す図である。
図27によれば、直前の数回の測定における重心高ごとの筋力を表示しつつ、現在測定中の重心高ごとの筋力をリアルタイムで表示するとともに(太線部分)、上昇速度(VZ)をバーグラフ形式で表示する様子が示されている。
なお、図では、重心高は、まっすぐ立ち上がった状態(重心高の最大値)に対する重心高の割合(%)で表示しているが、身長に対して重心高の割合(%)を乗じた実際の重心高(m)で表示してもよい。
このように、本発明によれば、重心高毎の筋力を表示しつつ、上昇速度(VZ)を表示することで、スポーツ種別ごと、ポジションごと、あるいは高齢者の立位歩行能力の訓練に必要な筋力および運動速度(この場合は上昇速度(VZ))を把握しつつ訓練を行うことが可能となる。
【0099】
図28は、膝屈伸選択時の筋力測定結果のライブビュー画面表示の一例を示す図である。
図28によれば、直前の数回の測定における膝角度ごとの筋力を表示しつつ、現在測定中の膝角度ごとの筋力をリアルタイムで表示するとともに、膝角度の角速度をバーグラフ形式で表示する様子が示されている。
ここで、
図28の下段のスピードの表示は、単位時間当たりの角速度を示しており、左側が膝伸展時の角速度、右側が膝屈曲時の角速度を示している。
図28は、現在膝伸展の筋力を測定中である状態を示しているので、左側にスピード表示のバーグラフが表示されていることが分かる。
このように、本発明によれば、重心高毎の筋力を表示しつつ、上昇速度(VZ)を表示することで、スポーツ種別ごと、ポジションごと、あるいは高齢者の立位歩行能力の訓練に必要な筋力および運動速度(この場合は膝の角速度)を把握しつつ訓練を行うことが可能となる。
【0100】
図29は、本発明のスクワット選択時の筋力測定結果の画面表示であって、被験者の重心高ごとの筋力、及び最大上昇速度を発生した重心高を表示した場合の画面表示の一例を示す図である。
メインメニュー画面から、測定履歴一覧を選択し、測定結果確認メニューにより、過去の測定結果を参照した際の表示、もしくは直前の測定結果を表示した際の画面表示である。
複数回の測定を行った結果のうち、任意の1回の測定結果を表示するほか、筋力のピークの平均値を計算したうえで平均値に最も近い測定結果を表示してもよいし、複数の測定結果の平均値のグラフを生成して表示してもよい。
図29によれば、重心高毎に筋力カーブを把握でき、最大上昇速度を記録したときの重心高及び最大上昇速度の数値を確認することができることが分かる。
【0101】
図30は、本発明のスクワット選択時の筋力測定結果の画面表示であって、バレーボールの選手(アタッカー)の重心高ごと筋力、及び、最大上昇速度を発生した重心高を表示した場合の画面表示の一例を示す図である。
図30によれば、バレーボールの選手(アタッカー)の場合、重心高の広い範囲で筋力が高いが、特に重心が低い位置から立ち上がる際の筋力が高く、バレーボールのアタッカーというポジションに適合していることが分かる。
また、一般男性や後述のバレーボールの選手(ブロッカー)と比較して、比較的低い重心高から最大上昇速度が出ていることが分かる。この点も、低い位置から筋力を発揮して最大速度でジャンプすることが求められるというアタッカーのポジションに必要な「速度と筋力」の関係がうまく見える化されていると考えられる。
【0102】
このような指標を利用することで、効率的な訓練が可能になるほか、訓練の目標の数値化、あるいは、錬度の高い選手の筋力カーブに基づいて、練度の低い選手の筋力向上の目標とすることも可能となる。
また、最大上昇速度が1.3m/sと早く、最大筋力が1600Nとかなり大きな数値になっていることがわかるが、油圧式トレーニングマシンの特徴として、高速における油圧ダンパーの抵抗力が大きく、スポーツ選手の速い動作に適応した抵抗力が発揮されていることによるものである。
【0103】
図31は、本発明のスクワット選択時の筋力測定結果の画面表示であって、バレーボールの選手(ブロッカー)の重心高ごと筋力、及び、最大上昇速度を発生した重心高を表示した場合の画面表示の一例を示す図である。
図31によれば、バレーボールの選手(ブロッカー)の場合、重心がやや高い位置から立ち上がる際の筋力が高く、バレーのセッターというポジションに適合していることが分かる。
また、比較的高い重心高のときに最大上昇速度が出ていることが分かる。この点も、比較的高い位置から筋力を発揮して、ある程度伸びあがったときに最大速度になるようにジャンプすることが求められるというアタッカーのポジションに必要な「速度と筋力」の関係がうまく見える化されていると考えられる。
このような指標を利用することで、効率的な訓練が可能になるほか、訓練の目標の数値化、あるいは、錬度の高い選手の筋力カーブに基づいて、練度の低い選手の筋力向上の目標とすることも可能となる。
【0104】
図32は、本発明のスクワット選択時の筋力測定結果の画面表示であって、高齢者の改善前及び改善後の重心高ごと筋力の測定結果の一例を示す図である。
図32のグラフのうち、実線が高齢者(80代男性)のトレーニング前の筋力カーブであり、一点鎖線が高齢者(80代男性)のトレーニング後の筋力カーブを示している。また、比較のために、点線で健常者(50代男性)の一般的な筋力カーブを示した。
図32の筋力カーブ(実線:高齢者(80代男性))によれば、高齢者の場合、全体的に筋力の低下がみられ、特に重心高が低いところから立ち上がる際の筋力が不足していることがわかる。
また、最大上昇速度が0.5m/sと比較的遅く、最大筋力が700Nとやや低い数値になっていることがわかるが、油圧式トレーニングマシンの特徴として、低速における油圧ダンパーの抵抗力が小さく、高齢者のゆっくりとした立ち上がり動作に適応した抵抗力が発揮されていることによるものである。
【0105】
これは、椅子から立ち上がる際など日常生活の筋力が弱いことを示しており、QOL(Quality Of Life)低下の要因の一つになっていると考えられる。
そして、このような重心がやや低い位置から立ち上がる際の筋力の向上が日常生活の満足度を向上させ、QOL向上の目安になることが期待できる。
図32によれば、トレーニング後は、低い重心位置からの筋力向上が目覚ましく、QOL向上が期待できることが見える化できていることが分かる。
【0106】
図33、34は、本発明の膝屈伸選択時の膝伸展時、及び膝屈曲時の筋力測定結果の画面表示の一例を示す図である。
図33、34は、メインメニュー画面から、測定履歴一覧を選択し、測定結果確認メニューにより、過去の測定結果を参照した際の表示、もしくは直前の測定結果を表示した際の画面表示である。
複数回の測定を行った結果のうち、任意の1回の測定結果を表示するほか、筋力のピークの平均値を計算したうえで平均値に最も近い測定結果を表示してもよいし、複数の測定結果の平均値のグラフを生成して表示してもよい。
図33、34によれば、膝角度毎に筋力カーブが把握でき、最大角速度を記録したときの膝角度と最大角速度の数値を確認することができることが分かる。
【0107】
3-4.筋力測定システムの機能ブロック、システム構成
次に、
図35~
図37を用いて、筋力測定システムの機能ブロック、システム構成について説明する。
【0108】
図35は、本発明の筋力測定システムの機能ブロックの一例を示す図である。
本発明の筋力測定システムは、大きく分けて、被験者600の筋力データを測定する測定部210、測定したデータを送信する通信部120、測定したデータを処理する制御部140、測定条件や測定したデータを記憶する記憶部150、測定条件の設定などの入力を行うための入力部130、測定結果を出力または表示するための出力部160によって構成される。
【0109】
記憶部150には、各種のプログラムが記憶されており、プログラムはRAM(ランダムアクセスメモリ)などの一時記憶手段などにロードされて、中央処理装置(図示せず)がプログラムの各ステップを実行することにより、制御部140の筋力データ算出手段などの各手段を構成する。
【0110】
図36は、本発明の筋力測定システムの構成の一例を示す図であって、サーバー又はクラウド330側でデータ処理を行い、設定情報の入力と結果表示を端末側で行う態様の例を示す図である。
測定装置200は、スクワット訓練装置220などの訓練装置と圧力センサ50等の各種センサ等で構成され、ネットワーク500を介して、サーバー又はクラウド330、及び端末310、320と接続されている。
各種センサで測定したデータは、サーバー又はクラウド330に送信され、サーバー又はクラウド330内の制御部140、記憶部150によってデータ処理され、筋力データの算出、重心高の算出、筋力カーブを描いた筋力グラフの生成などが行われる。
【0111】
端末310、320は、利用者登録、測定条件の設定など、利用者の入力を受け付けるタッチ式又はキーボードなどの入力手段、及び筋力グラフなどの測定結果を表示するための表示デバイスなどの測定結果出力手段を備える。
なお、端末310、320における筋力グラフなどの測定結果の表示は、サーバー又はクラウド330内の制御部140、記憶部150によってデータ処理されて生成した筋力グラフをダウンロードすること、又は、サーバー又はクラウド330内に仮想的に構成されたリモートデスクトップなどによって表示される。
【0112】
ネットワーク500は、有線、または無線の通信回線であり、例えば、WAN(Wide Area Network)などのインターネット、LAN(Local Area Network)、衛星回線、公衆電話回線等である。
LANとしては、有線LAN、無線LANなどを用いることができる。無線の通信回線としては、無線LANのほかBluetooth(登録商標)などの各種の無線技術を用いることができる。
【0113】
本発明のシステム構成は、前述のようなクライアントサーバー構成のほか、 利用者登録や設定情報の入力と、筋力データの算出、重心高の算出、筋力カーブを描いた筋力グラフの生成などのデータ処理、及び筋力グラフなどの表示を、端末310又は320側で行う構成を採用することもできる。
このような構成の一例を示したのが
図37である。
図37によれば、各種の処理を一装置内で行う、いわゆるスタンドアローン構成の一例が示されている。
【0114】
以上のような構成のほか、
図36と
図37のハイブリッドのような構成を採用することも可能である。
例えば、端末310又は320側で利用者登録や設定情報の入力と、筋力データの算出、重心高の算出、筋力カーブを描いた筋力グラフの生成などのデータ処理、及び筋力グラフなどの表示を行いつつ、利用者全体の登録管理、過去の測定結果の記憶と管理をサーバー又はクラウド330側で行う等、様々なシステム構成を採用することができる。
【0115】
端末310又は320は、一定の処理能力のあるコンピュータであればよく、デスクトップパソコン、ノートパソコン、携帯電話、スマートフォン、またはスマートウォッチ、VRヘッドセットなどの頭部に装着するゴーグルタイプのヘッドアップディスプレイや眼鏡タイプの端末など、各種の携帯情報端末やPDA (Personal Digital Assistant)であっても構わない。
【0116】
また、図示しないが、サーバー又はクラウド330、端末310又は320は、データを処理して各種の処理を行うための中央処理装置(CPU)からなる制御部、プログラムや各種データを記憶したり処理の途中経過を一時的に記憶する記憶部、各種の入力処理を受け付けるための入力部、測定結果を印刷したり表示するための出力部、通信ネットワークと通信するための通信部などを備えている(
図35を参照)。
【0117】
3-5.筋力測定システムのデータ構成例
次に、
図38~
図42を用いて、発明の筋力測定システムのデータ構成例について説明する。
図38は、本発明における被験者の利用者登録に関するデータ構成の一例を示す図である。データ構成としては、氏名、生年月日、年齢、身長、体重、性別、・・・、訓練目的、スポーツ種別、ポジション、測定結果の格納先などの項目が記録される。
【0118】
図39は、本発明における被験者の筋力の測定結果に関するデータ構成の一例を示す図である。データ構成としては、測定年月日 時刻、訓練種別、ダンパー目盛り(抵抗値)、測定回数、・・・、疲労係数(%)、・・・元データの格納先などの項目が記録される。疲労係数(%)は測定開始時と終了時の筋力の比率を意味する。
【0119】
図40は、本発明における被験者のスクワット選択時の筋力の測定結果に関するデータ構成の一例を示す図である。データ構成としては、測定年月日 時刻、訓練種別、ダンパー目盛り(抵抗値)、最大伸展力(N)、最大伸展力時の重心高(%)、最大上昇速度(cm/sec)、最大上昇速度時の重心高(%)、・・・、体重比(N/kg)、・・・、元データの格納先、筋力グラフの格納先などの項目が記録される。
【0120】
図41は、本発明における被験者の膝屈伸選択時の筋力の測定結果に関するデータ構成の一例を示す図である。データ構成としては、測定年月日と時刻、訓練種別、ダンパー目盛り(抵抗値)、右脚と左脚のどちらを測定するのか、脚伸展時なのか脚屈伸時なのか、最大トルク(N・m)、最大トルク時の角度(deg)、最大角速度(deg/sec)、最大角速度時の角度(deg)、・・・、体重比(N/kg)、・・・などの項目が記録される。
【0121】
図42は、本発明における圧力センサ50、加速度センサ60の取得データの一例を示す図である。データ構成としては、測定年月日と時刻ごとに、などの項目が記録される。ダンパー目盛り、圧力センサ取得データ、加速度センサ取得データ(X)、加速度センサ取得データ(Y)、加速度センサ取得データ(Z)、などが記録されている。
圧力センサ50によって取得したデータは、
図17、
図19に示す計算式によって筋力データを算出するのに用いられ、加速度センサ60によって取得したデータはアーム222が水平面となす角度(θ)や重心高、上昇速度(VZ)、膝角度、膝の角速度などを算出するのに用いられる。
【0122】
3-6.筋力測定システムのフローチャート
次に、
図43~
図46のフローチャートを用いて、本発明の筋力測定システムの処理フローについて説明する。
【0123】
図43は、本発明における利用者登録処理のフローチャートの一例を示す図である。
利用者は、メインメニューから利用者一覧を選択し、利用者登録(初めての場合)又は利用者更新(情報を更新する場合)を行う(
図20参照)。
図21に示すように、利用者登録画面表示が行われ(S1-1)、筋力を測定するための基礎情報として、身長、体重、年齢、性別、氏名などの入力を行う(ステップS1-2)。
この際、適宜パスワードの入力を求めることができる(図示せず)。
入力が完了すると、IDが発行され(ステップS1-3)、利用者登録が完了する(ステップS1-4)。
【0124】
図44は、本発明における測定条件設定処理のフローチャートの一例を示す図である。
利用者は、メインメニューから測定条件設定を選択し、測定のための条件設定を行う(
図20参照)。
まず、筋力計測対象として、(スクワット/膝屈伸)のいずれの測定を行うかの選択画面が表示される(ステップS2-1)。
【0125】
スクワットを選択した場合(ステップS2-2のS)、ダンパー目盛り(抵抗値)及び測定回数の入力を行い(ステップS2-3、S2-4)、
図24に示すような重心高基準位置情報の取得を行い(ステップS2-5)、測定条件の保存を行う(ステップS2-6)。
膝屈伸を選択した場合(ステップS2-2のH)、ダンパー目盛り(抵抗値)及び測定回数の入力を行い(ステップS2-7、S2-8)、(右膝/左膝/両膝)のいずれを測定するかの選択を行い(ステップS2-9)、
図26に示すような膝角度基準位置情報の取得を行い(ステップS2-10)、測定条件の保存を行う(ステップS2-11)。
【0126】
図45は、本発明におけるスクワット選択時の筋力測定処理のフローチャートの一例を示す図である。
圧力センサ及び加速度センサなどのセンサデータを取得し(ステップS3-1)、
図17に示すような力のモーメントを算出し(必要に応じて、第1~第3の力のモーメント、又は第1~第2の力のモーメント)(ステップS3-2)、被験者600の発生した力点における筋力を算出する(ステップS3-3)。
【0127】
また、同時に、
図18に示すような測定の各時点における重心高、及び上昇速度(VZ)を算出し(ステップS3-4)、重心高毎の筋力グラフを生成し(ステップS3-5)、適宜、上昇速度(VZ)をバーグラフで表示しつつ、重心高ごとの筋力グラフをライブビュー表示し(ステップS3-6)、設定回数の測定を完了するまで、ステップS3-1~ステップS3-6を繰り替えし(ステップS3-7のN)、設定回数の測定を行うと終了する(ステップS3-7のY)。
また、生成した筋力グラフは、日時、利用者ID、測定条件、及び圧力センサ及び加速度センサなどのセンサデータと共に、記憶部150に保存される(ステップS3-8)。
【0128】
図46は、本発明における膝屈伸選択時の筋力測定処理のフローチャートの一例を示す図である。
圧力センサ及び加速度センサなどのセンサデータを取得し(ステップS4-1)、
図19に示すような力のモーメントを算出し(必要に応じて、第1~第3の力のモーメント、又は第1~第2の力のモーメント)(ステップS4-2)、被験者600の発生した力点における筋力を算出する(ステップS4-3)。
【0129】
また、同時に、測定の各時点における膝角度、角速度を算出し(ステップS4-4)、膝角度毎の筋力グラフを生成し(ステップS4-5)、膝角度ごとの筋力グラフをライブビュー表示し(ステップS4-6)、設定回数の測定を完了するまで、ステップS4-1~ステップS4-6を繰り替えし(ステップS4-7のN)、設定回数の測定を行うと終了する(ステップS4-7のY)。
また、生成した筋力グラフは、日時、利用者ID、測定条件、及び圧力センサ及び加速度センサなどのセンサデータと共に、記憶部150に保存される(ステップS4-8)。
【0130】
4.小括
以上のように、本発明の筋力測定方法、プログラム、システムによれば、既存の油圧式トレーニングマシンを用いつつ、必要最小限のセンサを追加することにより、複数の筋肉を利用した総合筋力運動及び複数の関節を稼働させる総合関節運動における筋力について、重心高および運動速度を含む所定の評価指標を定立して、筋力を測定することにより、スポーツの種目及びポジションごとの筋力の適切かつ定量的な評価が可能となる。
また、定性的な評価であるロコモ度テストに代わる高齢者等の立位、歩行能力の定量的な評価が可能となる。
また、被験者の重心高(又は膝角度)、及び上昇速度などの運動速度(又は膝角度の角速度)などを把握したうえで、重心高毎の筋力を測定したり、どの重心高で、どの程度の運動速度を記録したかという観点で筋力を測定したりすることで、スポーツ種別やポジションごとの筋力の評価、及び高齢者の立位、歩行能力の評価に適した定量的な指標を提示することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の筋力測定方法、プログラム、システムは、スクワット訓練装置や膝屈伸訓練装置以外にも、様々な油圧式トレーニングマシンに適用することができる。
また、筋力の測定結果をもとに、最大の力を発揮するダンパー目盛り(抵抗値)を提案したり、訓練に最適なダンパー目盛り(抵抗値)を提案したりすることもでき、より効果的な訓練を可能とすることが期待できる。
まや、各個人ごとに時系列比較をして訓練の効果を見える化するなどして、トレーニングのモチベーションを高めることが期待できる。
【符号の説明】
【0132】
10 力点
20 作用点
30 支点
40 圧力ダンパー
50 圧力センサ
60 加速度センサ
100 筋力測定システム
200 測定装置
210 測定部
220 スクワット訓練装置
222 アーム
230 膝屈伸訓練装置
232 アーム
240 通信手段
300 サーバー又はクラウド
310 端末
320 端末
500 ネットワーク
600 被験者