(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012691
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】撹拌軸及びそれを備えた熱交換装置
(51)【国際特許分類】
B01F 35/93 20220101AFI20240123BHJP
B01F 27/2122 20220101ALI20240123BHJP
B01F 27/112 20220101ALI20240123BHJP
B01F 35/30 20220101ALI20240123BHJP
B01F 27/70 20220101ALI20240123BHJP
B01F 27/72 20220101ALI20240123BHJP
B01F 35/31 20220101ALI20240123BHJP
【FI】
B01F35/93
B01F27/2122
B01F27/112
B01F35/30
B01F27/70
B01F27/72
B01F35/31
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200347
(22)【出願日】2023-11-28
(62)【分割の表示】P 2020038380の分割
【原出願日】2020-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 晃史
(72)【発明者】
【氏名】愿山 靖子
(72)【発明者】
【氏名】大濱 徳也
(72)【発明者】
【氏名】大野 淳平
(72)【発明者】
【氏名】小林 大介
(72)【発明者】
【氏名】三木 貴文
(57)【要約】
【課題】軸受部などの熱に弱い部分に熱媒体の熱を伝えにくくしながら、できるだけ高い温度の撹拌軸により被処理物を加熱しながら撹拌できるようにする。
【解決手段】撹拌軸50に、円柱状軸部51と、円柱状軸部51の軸心を通る中央流路52と、円柱状軸部51の外周よりも半径方向外側に延びる撹拌羽根53と、中央流路52に挿入され、一端が中央流路52に連通し、他端から熱媒体が供給され又は排出される熱媒体給排路19a,55aを軸心に有する内管19とを設ける。内管19の外側に、内管19の外周との間に、中央流路52と連通する内管外周流路21と、内管外周流路21の外周を覆い、内部に密閉された真空空間が形成された筒状の真空部22とを設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に熱媒体を流通させる熱媒体流路が形成され、外周に撹拌羽根が設けられた撹拌軸であって、
円柱状軸部と、
上記円柱状軸部の軸心を通る中央流路と、
上記円柱状軸部の外周よりも半径方向外側に延びる撹拌羽根と、
上記中央流路に挿入され、一端が上記中央流路に連通し、他端から熱媒体が供給され又は排出される熱媒体給排路(19a,55a)を内部に有する内管とを備えており、
上記内管の外側には、内管の外周との間に、上記中央流路と連通する内管外周流路と、該内管外周流路の外周を覆い、軸受部によって回転可能に支持される上記円柱状軸部の領域において内部に密閉された真空空間が形成された筒状の真空部(22)とが設けられている
ことを特徴とする撹拌軸。
【請求項2】
請求項1に記載の撹拌軸において、
上記真空部(22)は、両端のフランジ部(19b,19c)との間に第1パイプ(19d)と、該第1パイプ(19d)よりも外径の大きい第2パイプ(19e)とが密閉状に溶接されている
ことを特徴とする撹拌軸。
【請求項3】
上記請求項1又は2に記載の撹拌軸と、
上記撹拌軸に連結され、上記中央流路及び上記熱媒体給排路の一方に熱媒体を供給し、上記中央流路及び上記熱媒体給排路の他方から戻ってきた熱媒体を回収するロータリジョイントと、
上記撹拌軸を、上記軸受部を介して回転可能に支持するケーシングと、
上記熱媒体を、上記ロータリジョイントを介して供給及び回収する熱媒体循環装置とを備えている
ことを特徴とする熱交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中央流路に内管が挿入される二重管構造の撹拌軸及びそれを備えた熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二重管構造の混合機撹拌軸で、この撹拌軸の軸端を構成する内管と外管とを有し、軸内管を経て熱媒体が送入され内管と外管との間の環状間隙を経て熱媒体が返送される型式の熱媒体通過軸が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この種の二重管構造のものでは、撹拌軸の熱が、撹拌軸を回転可能に支持する、比較的高温に弱い軸受やグランドパッキンにも伝わるので、撹拌軸の加熱温度が制限されるという問題がある。
【0004】
そこで、この熱媒体通過軸は、環状間隙内の外管内面に接して、断熱材を充填した断熱スリーブを配置して撹拌軸の熱を軸受やグランドパッキンに伝わりにくくしている。また、断熱スリーブの代わりに排気可能な金属製ケースを設け、この内部を脱気して真空にすることも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、スリーブ内に断熱材を充填するのは面倒であり、また、スリーブを真空状態にする排気可能な構成にするためには、全体の構造が複雑になる、という問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軸受部などの熱に弱い部分に熱媒体の熱を伝えにくくしながら、できるだけ高い温度の撹拌軸により被処理物を加熱しながら撹拌できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、第1の発明では、内部に熱媒体を流通させる熱媒体流路が形成され、外周に撹拌羽根が設けられた撹拌軸を対象とし、
上記撹拌軸は、
円柱状軸部と、
上記円柱状軸部の軸心を通る中央流路と、
上記円柱状軸部の外周よりも半径方向外側に延びる撹拌羽根と、
上記中央流路に挿入され、一端が上記中央流路に連通し、他端から熱媒体が供給され又は排出される熱媒体給排路(19a,55a)を内部に有する内管とを備えており、
上記内管の外側には、内管の外周との間に、上記中央流路と連通する内管外周流路と、該内管外周流路の外周を覆い、軸受部によって回転可能に支持される上記円柱状軸部の領域において内部に密閉された真空空間が形成された筒状の真空部(22)とが設けられている。
【0009】
上記の構成によると、内管の熱媒体給排路及び内管外周流路には、高温の熱媒体が流通するが、その周りを覆うように溶接などにより筒状の密閉された真空空間が形成された真空部によって、その外周の円柱状軸部へ熱が伝わりにくくなる。したがって、高温の熱媒体を内管の熱媒体給排路及び内管外周流路に流通させても、その外周を支持する軸受部やグランドパッキンに熱が伝わりにくくなる。このため、できるだけ高い温度の熱媒体を撹拌軸内部に流通させた場合でも、軸受部などの支持部が熱によって損傷することが避けられる。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、
上記真空部(22)は、両端のフランジ部(19b,19c)との間に第1パイプ(19d)と、該第1パイプ(19d)よりも外径の大きい第2パイプ(19e)とが密閉状に溶接されている。
【0011】
第3の発明の熱交換装置は、
第1又は第2の発明の撹拌軸と、
上記撹拌軸に連結され、上記中央流路及び上記熱媒体給排路の一方に熱媒体を供給し、上記中央流路及び上記熱媒体給排路の他方から戻ってきた熱媒体を回収するロータリジョイントと、
上記撹拌軸を、軸受部を介して回転可能に支持するケーシングと、
上記熱媒体を、上記ロータリジョイントを介して供給及び回収する熱媒体循環装置とを備えている。
【0012】
上記の構成によると、ロータリジョイントから高温の熱媒体を流通させても、軸受部等に熱が伝わりにくいので、軸受部等の熱による損傷を防ぎながら、効果的に被処理物を加熱しながら撹拌することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、軸受部などの熱に弱い部分に熱媒体の熱を伝えにくくしながらできるだけ高い温度の撹拌軸により被処理物を加熱しながら撹拌できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明の実施形態に係る、撹拌軸を有する混練機の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
-混練機の構成-
図2に本願発明に係る熱交換装置としての混練機10を示し、この混練機10は、例えば、密閉箱状のケーシング1を有し、このケーシング1の一端上部に被処理物(原料)Aの供給口2が設けられ、他端下部に排出口3が設けられた連続混練機である。また、ケーシング1の外周にはジャケット4が形成されており、このジャケット4内には、公知の熱媒体循環装置20によって熱媒体Cが流通可能となっている。
【0017】
ケーシング1には、図示しないモータにより回転可能に例えば一対の撹拌軸50が支持されている。例えば、一端側がグランドパッキン7により軸支されるとともに、上記モータが接続され、他端は、グランドパッキン7及び軸受部8に軸支されると共に、熱媒体循環装置20からの熱媒体Cを供給及び回収するロータリジョイント14が接続されている。撹拌軸50のロータリジョイント14側には、例えば1個の逆送り用スクリュパドル16が外嵌されている。撹拌軸50のモータ側には、順送り用スクリュパドル18が複数個外嵌されている。この順送り用スクリュパドル18の形状は特に限定されない。上記逆送り用スクリュパドル16は、順送り用スクリュパドル18を、逆方向に取り付けたものでもよい。
【0018】
図2に示すように、撹拌軸50は、内部に熱媒体循環装置20からの熱媒体Cを流通させる熱媒体流路が形成され、外周に被処理物Aを撹拌するための撹拌羽根53が設けられている。熱媒体流路は、後述する中央流路52、羽根側流路54、熱媒体給排路55a等よりなる。
【0019】
具体的には、撹拌軸50は、円柱状軸部51と、円柱状軸部51の軸心を通る中央流路52とを備えている。円柱状軸部51の長手方向中央部分には、円柱状軸部51の外周よりも半径方向外側に延び、軸方向に互いに間隔をあけて設けられる複数の撹拌羽根53が突出形成されている。撹拌羽根53には、一端が中央流路52に連通し、撹拌羽根53の内を通って他端が中央流路52に連通する羽根側流路54が形成されている。ただし、この撹拌羽根53の形状は特に限定されず、例えば、連続する螺旋状のもので構成してもよいし、羽根側流路54は形成されていなくてもよい。
【0020】
中央流路52には、中空軸状(管状)の仕切り部材55が挿入されている。
図1に示すように、仕切り部材55は、例えば、ロータリジョイント14の内管19に溶接で連結されて撹拌軸50と回転一体に支持されている。この仕切り部材55は、内管19の中心に延びる熱媒体給排路19aに連通する熱媒体給排路55aを軸心に有し、内管19の基端側がロータリジョイント14に接続されて熱媒体Cが供給され、開放された仕切り部材55の他端から熱媒体Cを排出するように構成されている。仕切り部材55は、中央流路52に挿入され、中央流路52を、撹拌羽根53に対応する位置で上流側と下流側とで仕切って上流側を羽根側流路54の一端に連通させ下流側を羽根側流路54の他端に連通させる役割を有する。
【0021】
上記中央流路52の先端は、モータ側のグランドパッキン7の位置までは延びていない。このため、モータ側のグランドパッキン7は、撹拌軸50内部に流通する熱媒体Cの熱の影響は受けにくい。
【0022】
しかしながら、
図1及び
図3に拡大して示すように、ロータリジョイント14側の内管19の外側には、内管19の外周との間に、中央流路52と連通する内管外周流路21が形成されているので、ロータリジョイント14側のグランドパッキン7の内部は、熱媒体Cの影響を受けやすくなっている。
【0023】
そこで、本実施形態では、内管外周流路21の外周は、内部に真空空間が形成された筒状の真空部22によって覆われている。例えば、この筒状の真空部22は、中央流路52の内径とほぼ同一の内径を有することで、内管19の外周面との間で、仕切り部材55と中央流路52との間で形成された外側流路と連通する空間を形成している。その外径は、内部に適度な真空空間を形成できる程度の大きさに設定されている。この真空空間は、内管19の成形時に例えば10-2~10-4Paとなるように密閉されている。例えば、両端のフランジ部19b,19cとの間に内径が中央流路52と等しい第1パイプ19dと、第1パイプ19dよりも外径の大きい第2パイプ19eとを密閉状に溶接するとよい。
【0024】
さらに、真空部22の外周面と、円柱状軸部51の内周面との間に円周方向に連続した内側空気層23を形成する隙間が確保されている。この隙間は、第2パイプ19eの外径を、円柱状軸部51に形成した貫通孔(中央流路52)の内径よりも小さく設定することで確保される。
【0025】
しかも、真空部22の外周に対応する円柱状軸部51は、この円柱状軸部51の外周との間に円周方向に連続する隙間を形成する円筒状スリーブ24で覆われている。例えば、円筒状スリーブ24の長手方向中間の内径を長手方向両側端部よりも大きくすることで、円柱状軸部51の外周との間に隙間が確保されている。この隙間によって、円周方向に連続する外側空気層25が形成されている。
【0026】
-混練機の作動-
次に、本実施形態に係る混練機10の作動について説明する。
【0027】
供給口2よりケーシング1内に原料Aを供給すると、原料Aは順送り用スクリュパドル18の送り作用により、排出口3側に向かって送られ、撹拌羽根53の回転による混練作用を受けて、加熱されながら十分に混練された後、排出口3から製品(混練被処理物)Bとして排出される。このとき、原料Aの供給量を調整して、加熱度合を調節する。
【0028】
この間、ケーシング1には、図示省略した出入口よりジャケット4内に熱媒体Cが循環され、原料Aを加熱する。例えば、ケーシング1の内部は、350℃程度まで加熱される。また、
図2に示すように、ロータリジョイント14から内管19の熱媒体給排路19aを通って熱媒体給排路55aにも熱媒体Cが供給され、中央流路52の奥深くから、仕切り部材55の外周、羽根側流路54及び内管19の内管外周流路21を通って再び、ロータリジョイント14に戻り、熱媒体循環装置20に返送される。
【0029】
本実施形態では、ケーシング1内部と同じ350℃程度まで撹拌軸50を加熱するためには、内管19の熱媒体給排路19a及び内管外周流路21には、高温の熱媒体が流通するが、その周りを覆う筒状の真空部22によって、その外周の円柱状軸部51へ熱が伝わりにくくなる。しかも、真空部22の外周に内側空気層23を形成する隙間が設けられているので、真空部22の熱がさらに円柱状軸部51に伝わりにくくなる。
【0030】
また、円筒状スリーブ24の内周の隙間に形成された外側空気層25により、円柱状軸部51からの熱がさらにグランドパッキン7や軸受部8に伝わりにくくなる。
【0031】
したがって、ケーシング1内部と同じ350℃程度まで撹拌軸50を加熱するために高温の熱媒体Cを内管19の熱媒体給排路19a及び内管外周流路21に流通させても、その外周を支持するグランドパッキン7や軸受部8に熱が伝わりにくくなる。このため、できるだけ高い温度の熱媒体を撹拌軸50内部全体に流通させてもグランドパッキン7、軸受部8などの支持部が熱によって損傷することが避けられる。
【0032】
このように本実施形態では、真空部22の周辺において、意図的に撹拌軸50の外周へ温度が伝わりにくいゾーンを設定できる。内管19は、管で構成されているので、長さ、外径、材質などを任意に変更できる。また、消耗時にも内管19を交換すればよいので、交換を容易かつ安価に行える。さらに、撹拌軸50単体での断熱性能評価を実施できるので、装着後のトラブルを効果的に防ぐことができる。また、撹拌軸50において、真空層と空気層とを確保できるので、容易に断熱効果を向上させることができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る撹拌軸50によると、グランドパッキン7、軸受部8などの熱に弱い部分に熱媒体の熱を伝えにくくしながらできるだけ高い温度の撹拌軸50により被処理物を加熱しながら撹拌できる。
【0034】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0035】
すなわち、上記実施形態では、混練機10において、撹拌軸50を2本平行に並べているが、撹拌軸50は、1本のみで使用されてもよい。
【0036】
上記実施形態では、仕切り部材55の内部にロータリジョイント14から供給される熱媒体Cを熱媒体給排路19a及び熱媒体給排路55aを通して中央流路52内に供給するようにしているが、内管19外周の中央流路52内に供給され、内管19及び仕切り部材55の外周に沿いながら羽根側流路54を通ってモータ側へ流れた熱媒体Cを、仕切り部材55の熱媒体給排路55a及び内管19の熱媒体給排路19aを通してロータリジョイント14側へ排出するようにしてもよい。
【0037】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0038】
1 ケーシング
2 供給口
3 排出口
4 ジャケット
7 グランドパッキン
8 軸受部
10 混練機(熱交換装置)
14 ロータリジョイント
16 逆送り用スクリュパドル
18 順送り用スクリュパドル
19 内管
19a 熱媒体給排路
19b,19c フランジ部
19d 第1パイプ
19e 第2パイプ
20 熱媒体循環装置
21 内管外周流路
22 真空部
23 内側空気層
24 円筒状スリーブ
25 外側空気層
50 撹拌軸
51 円柱状軸部
52 中央流路
53 撹拌羽根
54 羽根側流路
55 仕切り部材
55a 熱媒体給排路
A 原料
B 製品
C 熱媒体