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特開2024-126911ヘッドサスペンションアッセンブリおよびディスク装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126911
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ヘッドサスペンションアッセンブリおよびディスク装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/21 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G11B21/21 D
G11B21/21 101P
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035662
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 晃司
(57)【要約】
【課題】磁気ヘッドの接着を安定化することが可能なヘッドサスペンションアッセンブリおよびディスク装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、ヘッドサスペンションアッセンブリは、支持板と、ジンバル部を有し支持板の上に設けられた配線部材と、ジンバル部に隙間を置いて対向した被接着面を有するスライダとスライダに設けられたヘッド部とを有し、被接着面とジンバル部との間に位置する接着剤によりジンバル部に固定された磁気ヘッドと、を備えている。被接着面とジンバル部との間の隙間領域は、接着剤が配置される第1領域と、第1領域を囲む第2領域と、第2領域を囲んだ第3領域と、を含んでいる。第2領域における被接着面とジンバル部との間の隙間は、第1領域および第3領域における被接着面とジンバル部との間の隙間よりも大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持板と、
弾性変形可能なジンバル部を有し、前記支持板の上に設けられた配線部材と、
前記ジンバル部に隙間を置いて対向した被接着面を有するスライダと前記スライダに設けられたヘッド部とを有し、前記被接着面と前記ジンバル部との間に位置する接着剤により前記ジンバル部に固定された磁気ヘッドと、を備え、
前記被接着面と前記ジンバル部との間の隙間領域は、前記接着剤が配置される第1領域と、前記第1領域を囲む第2領域と、前記第2領域を囲んで位置する第3領域と、を含み、前記第2領域における前記被接着面とジンバル部との間の隙間は、前記第1領域および前記第3領域における前記被接着面とジンバル部との間の隙間よりも大きい、
ヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項2】
前記接着剤の外縁部の少なくとも一部は、前記第2領域に位置している、請求項1に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項3】
前記第2領域は、前記スライダの前記被接着面に形成された収容溝を含み、前記収容溝は、前記第1領域を囲むループ状に閉じた形状を有している、請求項1に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項4】
前記第2領域は、前記ジンバル部に形成された収容溝を含み、前記収容溝は、前記第1領域を囲むループ状に閉じた形状を有している、請求項1に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項5】
前記収容溝は、円環溝、長楕円溝、あるいは、多角形溝である、請求項3又は4に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項6】
前記収容溝は、深さ2~20μmに形成されている、請求項3又は4に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項7】
前記収容溝は、底面、外側面、および内側面を有し、前記外側面および内側面は、前記底面に垂直な方向に対して傾斜している、請求項3又は4に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項8】
前記スライダは、前記被接着面に設けられ前記収容溝の内側に位置する凹所を有している、請求項3に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項9】
回転自在な磁気ディスクと、
請求項1に記載のヘッドサスペンションアッセンブリと、
を備えるディスク装置。
【請求項10】
前記第2領域は、前記スライダの前記被接着面に形成された収容溝を含み、前記収容溝は、前記第1領域を囲むループ状に閉じた形状を有している、請求項9に記載のディスク装置。
【請求項11】
前記第2領域は、前記ジンバル部に形成された収容溝を含み、前記収容溝は、前記第1領域を囲むループ状に閉じた形状を有している、請求項9に記載のディスク装置。
【請求項12】
前記収容溝は、円環溝、長楕円溝、あるいは、多角形溝である、請求項10又は11に記載のディスク装置。
【請求項13】
前記収容溝は、底面、外側面、および内側面を有し、前記外側面および内側面は、前記底面に垂直な方向に対して傾斜している、請求項10又は11に記載のディスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、ヘッドサスペンションアッセンブリおよびこれを備えるディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク装置として、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)は、筐体内に配設された磁気ディスクと、磁気ディスクに対して情報の記録、読み出し行う磁気ヘッドと、磁気ヘッドを支持したヘッドアクチュエータと、を備えている。ヘッドアクチュエータは、支持シャフトの回りで回動自在に支持されたアクチュエータブロックと、アクチュエータブロックから延出した複数本のアームと、各アームの延出端に接続されたヘッドサスペンションアッセンブリ(ヘッドジンバルアッセンブリ(HGA)と称する場合もある)と、を有している。
磁気ヘッドは、スライダとスライダ内に設けられた記録再生素子とを有している。磁気ヘッドは、スライダの接着面をサスペンションのジンバル部に貼付することにより、サスペンションアッセンブリに取り付けられている。
【0003】
HGA(ヘッドジンバルアッセンブリ)の振動特性を安定化させるためには、スライダ接着の安定化を図る必要がある。通常、スライダの接着面はラッピングプロセスで平滑に研磨され、清浄度も管理されている。そのため、接着力を高めるプライマー塗布などの表面処理は行われていない。スライダの接着を安定化するためには、接着剤塗布の位置や接着面積は一定であることが望ましいが、接着剤は、非ニュートン流体であることもあり、塗布する位置や塗布量、濡れ広がりの制御が困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-305877号公報
【特許文献2】特開昭59-185066号公報
【特許文献3】実開昭61-114568号公報
【特許文献4】実開昭61-37171号公報
【特許文献5】特開昭61-3572号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2001/0009489号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の実施形態の課題は、接着剤の流動性を制御し、磁気ヘッドの接着を安定化することが可能なヘッドサスペンションアッセンブリおよびこれを備えるディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、ヘッドサスペンションアッセンブリは、支持板と、弾性変形可能なジンバル部を有し、前記支持板の上に設けられた配線部材と、前記ジンバル部に隙間を置いて対向した被接着面を有するスライダと前記スライダに設けられたヘッド部とを有し、前記被接着面と前記ジンバル部との間に位置する接着剤により前記ジンバル部に固定された磁気ヘッドと、を備えている。前記被接着面と前記ジンバル部との間の隙間領域は、前記接着剤が配置される第1領域と、前記第1領域を囲む第2領域と、前記第2領域を囲んで位置する第3領域と、を含み、前記第2領域における前記被接着面とジンバル部との間の隙間は、前記第1領域および前記第3領域における前記被接着面とジンバル部との間の隙間よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係るハードディスクドライブ(HDD)をトップカバーを分解して示す斜視図。
図2図2は、前記HDDのアクチュエータアッセンブリおよび基板ユニットを示す斜視図。
図3図3は、前記ヘッドアクチュエータアッセンブリのヘッドサスペンションアッセンブリを示す斜視図。
図4図4は、前記ヘッドサスペンションアッセンブリの分解斜視図。
図5図5は、前記ヘッドサスペンションアッセンブリの磁気ヘッドの側を示す平面図。
図6図6は、前記磁気ヘッドのスライダの被接着面の平面図。
図7図7は、図6の線B-Bに沿った前記スライダの断面図。
図8図8は、前記スライダに溝を形成するプロセスを模式的に示す断面図。
図9図9は、図5の線A-Aに沿った前記サスペンションアッセンブリの磁気ヘッド搭載部分の断面図。
図10図10は、第2実施形態に係るHDDにおける磁気ヘッドの被接着面を示す平面図。
図11図11は、第2実施形態におけるサスペンションアッセンブリの磁気ヘッド搭載部分の断面図。
図12図12は、第3実施形態に係るHDDにおける磁気ヘッドの被接着面を示す平面図。
図13図13は、第3実施形態におけるサスペンションアッセンブリの磁気ヘッド搭載部分の断面図。
図14図14は、第4実施形態に係るHDDにおける磁気ヘッドの被接着面を示す平面図。
図15図15は、第4実施形態におけるサスペンションアッセンブリの磁気ヘッド搭載部分の断面図。
図16図16は、第5実施形態に係るHDDにおけるサスペンションアッセンブリの磁気ヘッド搭載領域を示す平面図。
図17図17は、第5実施形態におけるサスペンションアッセンブリの磁気ヘッド搭載部分の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照しながら、実施形態に係るディスク装置ついて説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
(第1実施形態)
ディスク装置として、第1実施形態に係るハードディスクドライブ(HDD)について詳細に説明する。
図1は、トップカバーを外して示す第1実施形態に係るHDDの分解斜視図である。
図1に示すように、HDDは、矩形状の筐体10を備えている。筐体10は、上面の開口した矩形箱状のベース12と、カバー(トップカバー)14と、を有している。ベース12は、矩形状の底壁12aと、底壁12aの周縁に沿って立設された側壁12bとを有し、例えば、アルミニウムにより一体に成形されている。カバー14は、例えば、ステンレスにより矩形板状に形成されている。カバー14は、複数のねじ13によりベース12の側壁12b上にねじ止めされ、ベース12の上部開口を気密に閉塞する。
【0010】
筐体10の内には、ディスク状の記録媒体として複数枚、例えば、5枚の磁気ディスク18、および磁気ディスク18を支持および回転させるスピンドルモータ19が設けられている。スピンドルモータ19は、底壁12a上に配設されている。各磁気ディスク18は、例えば、直径95mm(3.5インチ)の円板状に形成され非磁性体、例えば、ガラスからなる基板と、基板の上面(第1面)および下面(第2面)に形成された磁気記録層とを有している。各磁気ディスク18は、スピンドルモータ19のハブに互いに同軸的に嵌合され、更に、クランプばね20によりクランプされている。これにより、磁気ディスク18は、所定の間隔を置いて、互いに平行に、また、底壁12aとほぼ平行に支持されている。複数枚の磁気ディスク18は、スピンドルモータ19により所定の回転数で回転される。なお、磁気ディスク18の搭載枚数は、5枚に限らず、10枚以上、12枚以下としてもよい。
【0011】
筐体10の内には、磁気ディスク18に対して情報の記録、再生を行なう複数の磁気ヘッド17、および、これらの磁気ヘッド17を磁気ディスク18に対して移動自在に支持したアクチュエータアッセンブリ22が設けられている。また、筐体10の内には、アクチュエータアッセンブリ22を回動および位置決めするボイスコイルモータ(VCM)24、磁気ヘッド17が磁気ディスク18の最外周に移動した際、磁気ヘッド17を磁気ディスク18から離間したアンロード位置に保持するランプロード機構25、および変換コネクタ等の電子部品が実装された基板ユニット(FPCユニット)21が設けられている。VCM24は、底壁12aに設けられた一対のヨーク39とヨーク39に固定された図示しない磁石とを含んでいる。ランプロード機構25は、底壁12aに立設された図示しないランプを含んでいる。
ベース12の底壁12aの外面には、図示しないプリント回路基板がねじ止めされている。プリント回路基板は、スピンドルモータ19の動作を制御するとともに、基板ユニット21を介してVCM24および磁気ヘッド17の動作を制御する制御部を構成している。
【0012】
図2は、アクチュエータアッセンブリおよび基板ユニットを示す斜視図である。図示のように、アクチュエータアッセンブリ22は、透孔31を有するアクチュエータブロック29と、透孔31内に設けられた軸受ユニット(ユニット軸受)28と、アクチュエータブロック29から延出する複数、例えば、6本のアーム32と、各アーム32に取付けられたサスペンションアッセンブリ(ヘッドジンバルアッセンブリ:HGAと称する場合もある)30と、サスペンションアッセンブリ30に支持された磁気ヘッド17と、を備えている。ベース12の底壁12aに支持シャフト(枢軸)26が立設されている。アクチュエータブロック29は、軸受ユニット28により、支持シャフト26の周りで、回動自在に支持されている。
【0013】
本実施形態において、アクチュエータブロック29および6本のアーム32はアルミニウム等により一体に成形され、いわゆるEブロックを構成している。アーム32は、例えば、細長い平板状に形成され、支持シャフト26と直交する方向に、アクチュエータブロック29から延出している。6本のアーム32は、互いに隙間を置いて、平行に設けられている。
アクチュエータアッセンブリ22は、アクチュエータブロック29からアーム32と反対の方向へ延出する支持フレーム33を有している。支持フレーム33により、VCM24の一部を構成するボイスコイル35が支持されている。図1に示したように、ボイスコイル35は、ベース12上にその1つが固定された一対のヨーク39間に位置し、これらのヨーク39、およびヨークに固定された磁石とともにVCM24を構成している。
【0014】
図2に示すように、アクチュエータアッセンブリ22は、それぞれ磁気ヘッド17を支持した10個のヘッドサスペンションアッセンブリ30を備えている。ヘッドサスペンションアッセンブリ30は各アーム32の先端部32aにそれぞれ取付けられている。複数のヘッドサスペンションアッセンブリ30は、磁気ヘッド17を上向きに支持するアップヘッドサスペンションアッセンブリと、磁気ヘッド17を下向きに支持するダウンヘッドサスペンションアッセンブリと、を含んでいる。これらのアップヘッドサスペンションアッセンブリおよびダウンヘッドサスペンションアッセンブリは、同一構造のヘッドサスペンションアッセンブリ30を上下向きを変えて配置することにより構成される。
本実施形態では、図2において、最上部のアーム32にダウンヘッドサスペンションアッセンブリ30が取付けられ、最下部のアーム32にアップヘッドサスペンションアッセンブリ30が取り付けられている。中間の4本のアーム32の各々には、アップヘッドサスペンションアッセンブリ30およびダウンヘッドサスペンションアッセンブリ30が取り付けられている。
【0015】
ヘッドサスペンションアッセンブリ30は、ほぼ矩形状のベースプレート36と、細長い板ばねからなるロードビーム38と、細長い帯状のフレキシャ(配線部材)42と、を有している。フレキシャ42は、後述するジンバル部を有し、このジンバル部に磁気ヘッド17が載置されている。ベースプレート36の基端部がアーム32の先端部32aに固定されている。ロードビーム38は、その基端部がベースプレート36の先端部に重ねて固定されている。ロードビーム38は、ベースプレート36から延出し、延出端に向かって先細に形成されている。ロードビーム38は、磁気ヘッド17を磁気ディスク18の表面に向けて付勢するばね力(反力)を生じている。また、ロードビーム38の先端からタブ40が突出している。タブ40は、前述したランプに係合可能であり、ランプと共にランプロード機構25を構成する。
【0016】
図2に示すように、FPCユニット21は、ほぼ矩形状のベース部21a、ベース部21aの一側縁から延出した細長い帯状の中継部21bと、中継部21bの先端に連続して設けられた接合部21cと、を一体に有している。ベース部21a、中継部21b、および接合部21cは、フレキシブルプリント配線基板(FPC)により形成されている。ベース部21a上に、図示しない変換コネクタ、複数のコンデンサ等の電子部品が実装され、図示しない配線に電気的に接続されている。
【0017】
中継部21bは、ベース部21aの側縁からアクチュエータブロック29に向かって延びている。接合部21cは、アクチュエータブロック29の側面(設置面)とほぼ等しい高さおよび幅の矩形状に形成されている。接合部21cは、アルミニウム等で形成された裏打ち板を介して、アクチュエータブロック29の設置面に貼付され、更に、固定ねじ65により設置面にねじ止め固定されている。接合部21cに多数の接続パッドが設けられている。接合部21cには例えば1つのヘッドIC(ヘッドアンプ)59が実装され、このヘッドIC59は配線を介して接続パッドおよびベース部21aに接続されている。更に、接合部21cには、ボイスコイル35が接続される接続端子53が設けられている。
【0018】
各ヘッドサスペンションアッセンブリ30のフレキシャ42は、磁気ヘッド17に電気的に接続された一端部と、アーム32の側縁を通ってアクチュエータブロック29まで延出した他端部と、他端部に設けられた接続端部(テール接続端子部)42cと、を有している。接続端部42cは、細長い矩形状に形成されている。接続端部42cには複数の接続端子(接続パッド)43が設けられている。これらの接続パッド43は、フレキシャ42の配線にそれぞれ接続されている。すなわち、フレキシャ42の複数の配線は、フレキシャ42のほぼ全長に亘って延び、一端は磁気ヘッド17に電気的に接続され、他端は、接続端子(接続パッド)43に接続されている。
接続端部42cに設けられた接続パッド43は、接合部21cの接続パッドに接合され、接合部21cの配線に電気的に接続されている。これにより、アクチュエータアッセンブリ22の10個の磁気ヘッド17は、それぞれフレキシャ42の配線、接続端部42c、FPCユニット21の接合部21c、中継部21bを通して、ベース部21aに電気的に接続される。
【0019】
上記のように構成されたアクチュエータアッセンブリ22をベース12上に組み込んだ状態において、図1に示したように、支持シャフト26は、スピンドルモータ19のスピンドルとほぼ平行に立設される。各磁気ディスク18は2本のヘッドサスペンションアッセンブリ30間に位置する。HDDの動作時、2本のヘッドサスペンションアッセンブリ30に支持された磁気ヘッド17は、磁気ディスク18の上面および下面にそれぞれ対向する。
【0020】
次に、ヘッドサスペンションアッセンブリ30の構成を詳細に説明する。
図3は、ヘッドサスペンションアッセンブリの磁気ヘッドの側を示す斜視図、図4は、サスペンションアッセンブリの分解斜視図、図5は、サスペンションアッセンブリの平面図である。
図3および図4に示すように、ヘッドサスペンションアッセンブリ30は、支持板として機能するサスペンション34を有している。サスペンション34は、数百ミクロン厚の金属板からなる矩形状のベースプレート36と、数十ミクロン厚の金属板からなる細長い板ばね状のロードビーム38と、を有している。ロードビーム38は、その基端部がベースプレート36の先端部に重ねて配置され、複数個所を溶接することによりベースプレート36に固定されている。ロードビーム38の先端部は、支持板の先端部を構成している。ロードビーム38の先端には、棒状のタブ40が突設されている。
【0021】
図4に示すように、ベースプレート36は、その基端部に円形の開口36aおよびこの開口36aの周囲に位置する円環状の突起部36bを有している。ベースプレート36は、突起部36bをアーム32のかしめ座面に形成された図示しない円形のかしめ孔に嵌合し、この突起部36bをかしめることで、アーム32の先端部32aに締結される。ベースプレート36の基端は、レーザ溶接、スポット溶接あるいは接着によりアーム32の先端部32aに固定されてもよい。
【0022】
サスペンションアッセンブリ30は、記録信号、再生信号および圧電素子の駆動信号を伝達するための細長い帯状のフレキシャ(配線部材)42と、フレキシャ42に実装された一対の圧電素子(例えば、PZT素子)50と、磁気ヘッド17と、を有している。図2および図3に示すように、フレキシャ42は、ロードビーム38およびベースプレート36上に配置された先端側部分42aと、ベースプレート36の側縁から外側に延出し、アーム32の側縁に沿ってアクチュエータブロック29まで延びた基端側部分42bと、基端側部分42bの延出端から延出した接続端部42cとを有している。接続端部42cは、並んで設けられた複数の接続端子(電極パッド)43を有している。これらの接続パッド43は、アクチュエータブロック29に設置された接合部21cの接続端子に電気的に接合される。
【0023】
図3図4図5に示すように、フレキシャ42の先端部は、ロードビーム38の先端部の上に位置し、弾性支持部として機能するジンバル部44を構成している。磁気ヘッド17は、ジンバル部44に載置および固定され、このジンバル部44を介してロードビーム38に支持されている。駆動素子としての一対の圧電素子50は、ジンバル部44に実装され、磁気ヘッド17の両サイドに配置されている。
【0024】
フレキシャ42は、ベースとなるステンレス等の金属薄板(金属板)46と、金属薄板46上に貼付あるいは固定された帯状の積層部材(フレキシブルプリント配線基板:FPC)48と、を有し、細長い積層板をなしている。積層部材(FPC)48は、大部分が金属薄板46に固定されたベース絶縁層と、ベース絶縁層上に形成されて、複数の信号配線、駆動配線、複数の接続パッドを構成する導電層(配線パターン)と、導電層を覆ってベース絶縁層上に積層されたカバー絶縁層と、を有している。導電層としては、例えば、銅箔を用い、この銅箔をパターニングすることにより複数の信号配線、駆動配線、および接続パッドを形成している。
フレキシャ42の先端側部分42aでは、金属薄板46がロードビーム38およびベースプレート36の表面上に貼付され、あるいは、複数の溶接点にてスポット溶接されている。一例では、金属薄板46は、ロードビーム38の基端部に溶接された2つの溶接点B1と、ロードビーム38の先端部に溶接された1つの溶接点(第2溶接部)B2と、を有している。すなわち、金属薄板46は、磁気ヘッド17のリーディング端(流出端)側に位置する溶接点B1と磁気ヘッド17のトレーリング端(流入端)側に位置する溶接点B2との少なくとも2か所でロードビーム38に溶接されている。
【0025】
ジンバル部44において、金属薄板46は、先端側に位置するほぼ矩形状のタング部(支持部)44aと、タング部44aと空間を挟んで基端側に位置するほぼ矩形状の基端部44bと、それぞれ基端部44bとタング部44aとを連結しタング部44aを変位可能に支持している弾性変形可能な一対のアウトリガー44cと、一方のアウトリガー44cからタング部44aの先端側を回って他方のアウトリガー44cまで延びた連結フレーム44dと、連結フレーム44dから延出しタング部44aの先端部に対向したほぼ矩形状の固定パッド部(第2端部)44eと、を一体に有している。固定パッド部44eは、連結フレーム44dとタング部44aとの間に位置している。
基端部44bは、ロードビーム38の表面上に貼付され、溶接点B1でロードビーム38にスポット溶接されている。固定パッド部44eは、溶接点B2でロードビーム38の先端部にスポット溶接されている。溶接点B2は、サスペンション34の中心軸線C1上に位置している。
【0026】
図4に示すように、タング部44aは、磁気ヘッド17を載置可能な大きさおよび形状に形成され、例えば、ほぼ矩形状に形成されている。タング部44aは、その幅方向の中心軸線がサスペンション34の中心軸線C1と一致するように配置されている。タング部44aは、基端部44bの側に位置する後端部がアウトリガー44cに連結されている。タング部44aは、そのほぼ中心部が、ロードビーム38の先端部に突設されたディンプル(凸部)52に当接している。タング部44aは、一対のアウトリガー44cおよび連結フレーム44dが弾性変形することにより、ディンプル52を支点として種々の向きに変位可能である。これにより、タング部44aおよびタング部44aに搭載される磁気ヘッド17は、磁気ディスク18の表面変動に柔軟に追従してロール方向あるいはピッチ方向に変位し、磁気ディスク18の表面と磁気ヘッド17との間に微小隙間を維持することができる。
【0027】
図3図4図5に示すように、ジンバル部44において、フレキシャ42の積層部材48は、金属板46上に配置され、基端部44bからタング部44aの上まで延びている。すなわち、積層部材48は、基端部44bの上に貼付された基端部48aと、タング部44aに貼付された先端部48bと、基端部48aから先端部48bまで二股状に延びている一対の帯状のブリッジ部48cと、を有している。先端部48bは、磁気ヘッド17が搭載されるヘッド設置領域を構成している。
【0028】
先端部48bには、複数の接続パッド(電極パッド)54が幅方向に並んで設けられている。また、先端部48bには、圧電素子50を接続するための複数の接続パッド(電極パッド)55が設けられている。積層部材48は、接続パッド54から先端部48bの両側縁部を回って基端部48a側に延びた複数本の信号配線Wおよび接続パッド55から基端部48a側に延びる複数本の駆動配線Wを有している。これらの信号配線Wおよび駆動配線Wは、積層部材48のほぼ全長に亘って延在し、接続端部42cの接続パッド43に繋がっている。図4に示すように、先端部48bの中央部、特に、配線Wが存在していない領域に透孔86が設けられている。後述するように、透孔86を介して、タング部44aの上に接着剤が塗布される。
【0029】
磁気ヘッド17は、ほぼ偏平な直方体形状のスライダ17aと、スライダ17aに設けられたヘッド部(記録素子(ライトヘッド)およびリード素子(リードヘッド)を含む)16と、を有している。スライダ17aは、磁気ディスク18の表面に対向する上面(ABS)17bと反対側の背面(被接着面)17cと、ロードビーム38の先端の側に位置する流出端17dと、ロードビーム38の基端部の側に位置する流入端17eと、を有している。磁気ヘッド17は、ヘッドスライダ17aの流出端17dに設けられた複数の接続パッドPTを有している。これらの接続パッドPTは、磁気ヘッド17の記録素子、リード素子、ヒータ等に電気的に接続されている。
【0030】
磁気ヘッド17は、スライダ17aの背面17cが先端部48bに対向した状態で、先端部48bに重ねてタング部44aの上に載置され、接着剤によりタング部44aに固定されている。磁気ヘッド17は長手方向の中心軸線がサスペンション34の中心軸線C1と一致するように配置され、また、磁気ヘッド17のほぼ中心部はディンプル52の上に位置している。磁気ヘッド17の接続パッドPTは、半田あるいは銀ペースト等の導電性接着剤Sd(図9参照)により先端部48bの複数の接続パッド54に電気的に接続されている。これにより、磁気ヘッド17は、接続パッド54を介して積層部材48の信号配線Wに接続されている。
【0031】
一対の圧電素子50は、例えば、矩形板状の圧電素子(PZT素子)を用いている。圧電素子50は、その長手方向(伸縮方向)が、サスペンション34の中心軸線C1と平行になるように配置されている。2つの圧電素子50は、磁気ヘッド17の幅方向の両側に配置され、互いに平行に並んで配置されている。各圧電素子50の長手方向の両端部は、先端部48bの接続パッド55に実装され電気的に接続されている。これにより、圧電素子50は、接続パッド55を介して積層部材48の駆動配線Wに接続されている。
【0032】
次に、磁気ヘッド17の実装構造について詳細に説明する。
図6は、磁気ヘッド17のスライダ17aの被接着面側を示す平面図、図7は、図6の線B-Bに沿ったスライダの溝部の断面図である。
図6に示すように、スライダ17aは、ほぼ平坦な被接着面17cと、被接着面17cに形成された環状の収容溝56とを有している。収容溝56は、被接着面17cの範囲内でループ状に閉じた形状を有している。すなわち、収容溝56は、スライダ17aのいずれの側縁にも開口していない形状としている。一例では、収容溝56は、中心軸線C1の上に中心を有する円環状に形成されている。収容溝56は、平面視で、円形の外径および円形の内径を有している。また、収容溝56の深さhは、2~20μmに形成されている。
なお、図6において、2点鎖線の円C2は、ジンバル部44の側に塗布される接着剤の塗布領域を示している。2点鎖線の円C3は、スライダ17aをジンバル部44に接着した後の接着剤の外径縁を示している。
【0033】
収容溝56は、円筒形の外周面(外側面)56a、環状の底面56c、および円筒形の内周面(内側面)56bにより規定されている。図7に示すように、外周面56aおよび内周面56bは、底面および被接着面17cに垂直な方向に対し内側に傾斜している。一例では、被接着面17cの側において外周面56aおよび内周面56bの傾き角θ1は、0.79rad以上に形成されている。底面56cの側において外周面56aおよび内周面56bの傾き角θ2は、1.46rad 以上に形成されている。言い換えると、外周面52aおよび内周面52bは、被接着面17cおよび底面56cと直角に交差せず、ある程度の傾き(θ1、θ2)を有している。収容溝56の幅Wは、10~50μm程度に設定されている。
【0034】
スライダ17aに収容溝56を形成するプロセスの一例を説明する。
図8は、溝の形成プロセスを模式的に示す断面図である。
図8(a)に示すように、スライダ17aを固定治具70の上にセットし、接着剤71によりスライダ17aを固定治具70に固定する。更に、スライダ17aの被接着面17cにレジストを塗布し、レジスト膜72を形成する。
【0035】
次いで、図8(b)に示すように、レジスト膜72の所定部位を露光した後、図8(c)に示すように、レジスト膜72の露光部位を現像および除去する。続いて、図8(d)に示すように、反応性イオンエッチング(RIE)またはイオンミリング(IM)プロセスによりスライダ17aの被接着面17cをエッチングあるいはミリングし、深さ2~20μm程度の収容溝56を形成する。溝深さの下限は、十分な効果を得られるように必要最低限必要な深さである。また、製造時間(加工時間)の観点で溝深さの上限が決められる。
その後、図8(e)に示すように、レジスト膜72を剥離し、更に、スライダ17aを固定治具70から取り外すことにより、溝形成プロセスが終了する。
【0036】
図9は、図5の線A-Aに沿ったサスペンションアッセンブリの磁気ヘッド搭載部分の断面図である。図示のように、磁気ヘッド17は、スライダ17aの被接着面17cがジンバル部44に対向した状態で、先端部48bの上に載置され、接着剤Adによりタング部44aに接着されている。この場合、接着剤Adは、予めタング部44aに塗布されている。接着剤Adは、スライダ17aの収容溝56で囲まれた閉じた図形の内側に収まる位置、ここでは、図6に示した円C2で囲まれた領域に塗布される。なお、一例として、接着剤Adは、アクリル樹脂系またはエポキシ樹脂系の接着剤を用いることができる。
【0037】
スライダ17aをタング部44aに接着する際、接着剤Adは、スライダ17aとタング部44aに挟まれ外側に広がっていくが、接着剤Adの外周部分が収容溝56に流れ込むことで収容溝56よりも外側に濡れ広がることがない。図6に円C3で示したように、かつ、図9に示すように、スライダ17aをジンバル部44に接着した後の接着剤Adの外径縁は、収容溝56の内に位置している。なお、接着剤Adの外径縁は、収容溝56の全周に亘って流れ込む場合に限らず、収容溝56の少なくとも一部に位置する場合もある。
【0038】
磁気ヘッド17の接続パッドPTは、半田あるいは銀ペースト等の導電性接着剤Sdにより先端部48bの複数の接続パッド54に電気的に接続されている。これにより、磁気ヘッド17は、接続パッド54を介して積層部材48の信号配線Wに接続されている。また、磁気ヘッド17のほぼ中心部はディンプル52の上に位置している。
【0039】
図9に示すように、ジンバル部44とスライダ17aの被接着面17cとの間の隙間領域において、収容溝56を含む円環状の第2領域G2は、接着剤が充填される円柱状の接着領域(第1領域)G1を囲んでいる。更に、第2領域G2は、周囲の第3領域G3に囲まれている。収容溝56を含む第2領域G2の隙間d1は、周囲の第3領域G3の隙間d2および第1領域G1の隙間d2よりも広く、すなわち、大きく設定されている。このように、収容溝56を含む第2領域G2は、周囲の隙間領域(第3領域G3)よりも隙間の広い広隙間領域を形成している。広隙間領域(第2領域G2)は、接着領域(第1領域G1)を囲んでいる。そのため、スライダ17aをジンバル部44に接着する際、接着領域G1に充填された接着剤Adは、スライダ17aとタング部44aに挟まれ外側に広がっていくが、接着剤の外径縁部分が広隙間領域G2に流れ込むことで収容溝56よりも外側に濡れ広がることがない。
なお、後述するように、広隙間領域(第2領域G2)は、スライダ17aに溝を設ける代わりに、ジンバル部、例えば、タング部44aの側に溝を設けることによっても形成することができる。
【0040】
一方、収容溝56において、溝の底面と溝の周面(側面)とが直交していると、底面と側面の稜線に高粘度の接着剤Adが回り込まず空間ができてしまう場合がある。この場合、接着力の低下や接着剤の未硬化の原因となり得る。これに対して、本実施形態によれば、前述したように、収容溝56の外周面52aおよび内周面52bは、被接着面17cおよび底面56cと直角に交差せず、ある程度の傾き(θ1、θ2)を持たせている。そのため、接着剤Adは、収容溝56の稜線部分(角部)に容易に回り込むことができ、空間や隙間の発生を防止することができる。これにより、接着剤Adの接着力低下および未硬化が抑制される。
【0041】
以上のように構成された第1実施形態に係るHDDによれば、ヘッドジンバルアッセンブリにおいて、ジンバル部44と磁気ヘッド17との間の隙間に接着領域(第1領域G1)を囲む隙間の広い広隙間領域(第2領域G2)を設けることにより、接着剤Adの流動を制御し接着剤Adを所望の接着位置に保持することが可能となる。本実施形態では、広隙間領域を形成する環状の収容溝56を磁気ヘッドのスライダ17aに設けることにより、接着剤Adが収容溝56に流れ込むことで接着剤Adが収容溝56よりも外側に濡れ広がることが無く、接着剤の流動を高精度に制御することができる。これにより、接着剤Adを所望の接着位置に保持し、磁気ヘッドをジンバル部に安定して接着することが可能となる。また、接着剤Adの一部が収容溝56に位置することにより、接着剤の接着面積が増大し接着力の向上を図ることが可能となる。
【0042】
本実施形態によれば、収容溝56の深さを最適化(2~20μm)し、更に、収容溝56の側面(外周面52aおよび内周面52b)は収容溝56の底面56cに垂直な方向に対してある程度の傾き(θ2)を有していることから、接着剤Adは、空間や隙間を生じることなく収容溝56の稜線部分(角部)に容易に回り込むことがでる。これにより、接着剤Adの接着力低下および未硬化が抑制され、接着力の向上を図ることができる。
以上のことから、本実施形態によれば、磁気ヘッドを安定して接着することができ、振動特性を安定化することが可能なヘッドサスペンションアッセンブリ(ヘッドジンバルアッセンブリ)、およびこれを備えるディスク装置を提供することができる。
【0043】
次に、他の実施形態に係るHDDのヘッドサスペンションアッセンブリについて説明する。以下に述べる他の実施形態において、上述した第1実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略あるいは簡略化し、第1実施形態と異なる部分を中心に詳しく説明する。
【0044】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態に係るHDDにおける磁気ヘッドの被接着面を示す平面図、図11は、第2実施形態におけるサスペンションアッセンブリの磁気ヘッド搭載部分の断面図である。
図10に示すように、第2実施形態では、磁気ヘッド17のスライダ17aは、被接着面17cに形成された円環状の収容溝56に加えて円形の凹所58を有している。凹所58は、収容溝56の内径よりも小さい外径を有し、収容溝56の内側で収容溝56と同芯に設けられている。凹所58は、収容溝56と同様の深さ(2~20μm)を有している。凹所58は、円形の底面と円筒状の側面(周面)とで規定されている。側面は、底面に垂直な方向に対して角度θ1、θ2だけ傾斜している。
【0045】
図11に示すように、ジンバル部44とスライダ17aの被接着面17cとの間の隙間領域において、収容溝56を含む第2領域G2の隙間d1および凹所58が設けられている領域G6の隙間d1は、接着領域G1の隙間d2および収容溝56の周囲の第3領域G3の隙間d2よりも広く、すなわち、大きく設定されている。このように、収容溝56を含む隙間領域G2および凹所58を含む隙間領域は、周囲の隙間領域G3よりも隙間の広い広隙間領域をそれぞれ形成している。広隙間領域G2は、接着領域(第1領域G1)を囲んでいる。そのため、スライダ17aをジンバル部44に接着する際、接着領域G1に充填された接着剤Adは、スライダ17aとタング部44aに挟まれ外側に広がっていくが、接着剤の外径縁部分が広隙間領域(G2、G6)に流れ込むことで収容溝56よりも外側に濡れ広がることがない。図10に円C3で示したように、スライダ17aをジンバル部44に接着した後の接着剤Adの外径縁は、収容溝56の内に位置している。同時に、接着剤Adの一部は、凹所58の内に流れ込み凹所58の底面および側面58aに密着している。なお、接着剤Adの外径縁は、収容溝56の全周に亘って流れ込む場合に限らず、収容溝56の少なくとも一部に位置する場合もある。
【0046】
第2実施形態において、ヘッドサスペンションアッセンブリの他の構成は、前述した第1実施形態に係るヘッドサスペンションアッセンブリの構成と同一である。第2実施形態においても、前述した第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。更に、第2実施形態では、スライダ17aの被接着面17cに凹所58を設けることにより、接着剤Adと被接着面17cとの接着面積が増大するため、接着剤Adの接着力の一層の向上を図ることができる。
【0047】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態に係るHDDにおける磁気ヘッドの被接着面を示す平面図、図13は、第3実施形態におけるサスペンションアッセンブリの磁気ヘッド搭載部分の断面図である。
図12に示すように、第3実施形態によれば、磁気ヘッド17のスライダ17aは、被接着面17cに形成された円環状の収容溝56に加えて、円環状の第2収容溝60を有している。第2収容溝60の外径および内径は、収容溝56の外径および内径よりも小さく、一例では、収容溝56の外径および内径の40~60%程度の外径および内径としている。第2収容溝60は、その中心がスライダ17aの中心軸線C1上に位置し、収容溝56と間隔を置いて設けられている。一例では、第2収容溝60は、積層部材(FPC)48と重なる位置に設けられている。
【0048】
第2収容溝60は、収容溝56と同様の深さ(2~20μm)を有している。第2収容溝60は、円環状の底面と円筒状の外周面(外側面)60aおよび内周面(内側面)60bとで規定されている。両側面60a、60bは、被接着面17cおよび底面に垂直な方向に対して前述した角度θ1、θ2だけ傾斜している。
なお、図12において、2点鎖線の円C2は、ジンバル部44の側に塗布される接着剤Adの塗布領域を示している。2点鎖線の円C3は、スライダ17aをジンバル部44に接着した後の接着剤の外径縁を示している。
【0049】
図13に示すように、磁気ヘッド17をジンバル部44に載置した状態において、被接着面17cの収容溝56が設けられた領域はタング部44aに対向し、接着剤Adによりタング部44aに接着される。一例では、被接着面17cの第2収容溝60が設けられた領域は積層部材48に対向し、接着剤Adにより積層部材48に接着される。
【0050】
タング部44aとスライダ17aの被接着面17cとの間の隙間領域において、収容溝56を含む第2領域G2の隙間d1は、収容溝56の周囲に位置する第3領域G3の隙間d2および接着領域G1の隙間d2よりも広く、すなわち、大きく設定されている。このように、収容溝56を含む隙間領域(第2領域G2)は、周囲の隙間領域(第3領域G3)よりも隙間の広い広隙間領域を形成している。この広隙間領域は、接着領域(第1領域G1)を囲んでいる。そのため、スライダ17aをタング部44aに接着する際、接着領域G1に充填された接着剤Adは、スライダ17aとタング部44aに挟まれ外側に広がっていくが、外周部分が広隙間領域(第2領域G2)に流れ込むことで収容溝56よりも外側に濡れ広がることがない。図12に円C3で示したように、スライダ17aをタング部44aに接着した後の接着剤Adの外径縁は、収容溝56の内に位置している。なお、接着剤Adの外径縁は、収容溝56の全周に亘って流れ込む場合に限らず、収容溝56の少なくとも一部に位置する場合もある。
【0051】
同様に、積層部材48とスライダ17aの被接着面17cとの間の隙間領域において、第2収容溝60が設けられている第4領域G4の隙間d3は、第2収容溝60の周囲に位置する第5領域G5の隙間d4よりも広く、すなわち、大きく設定されている。このように、第2収容溝60を含む隙間領域(第4領域G4)は、周囲の隙間領域(第5領域G5)よりも隙間の広い広隙間領域を形成している。広隙間領域は、接着領域を囲んでいる。そのため、スライダ17aをジンバル部44に接着する際、接着剤Adは、スライダ17aと積層部材48に挟まれ外側に広がっていくが、外径縁部が広隙間領域(第4領域G4)に流れ込むことで第2収容溝60よりも外側に濡れ広がることがない。図12に円C3で示したように、スライダ17aをジンバル部44に接着した後の接着剤Adの外径縁は、第2収容溝60の内に位置している。
【0052】
第3実施形態において、ヘッドサスペンションアッセンブリの他の構成は、前述した第1実施形態に係るヘッドサスペンションアッセンブリの構成と同一である。第3実施形態においても、前述した第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。更に、第3実施形態によれば、磁気ヘッド17の接着箇所を増やすことにより接着面積が増大し、より安定した接着が可能となる。
【0053】
(第4実施形態)
図14は、第4実施形態に係るHDDにおける磁気ヘッドの被接着面を示す平面図、図15は、第4実施形態におけるサスペンションアッセンブリの磁気ヘッド搭載部分の断面図である。
前述した実施形態において、スライダ17aの収容溝は、円環形状の溝としているが、収容溝の形状はこれに限らず、ループ状に閉じた形状であれば、楕円形、長楕円形、角を丸めた四角形、多角形、など、他の種々の形状を選択可能である。
【0054】
図14に示すように、第4実施形態によれば、スライダ17aの被接着面17cに設けられた収容溝56は、長楕円形あるいはトラック形状としている。収容溝56は、中心軸線C1とほぼ平行に延びる一対の直線部分とこれらの直線部分を繋ぐ一対の円弧状部分とを含んでいる。収容溝56は、中心軸線C1の軸方向において、被接着面17cの軸方向一端の近傍から軸方向他端の近傍まで延在している。
【0055】
収容溝56の深さは2~20μm程度に形成されている。収容溝56の外周面(外側面)56aおよび内周面(内側面)56bは、収容溝56の底面に垂直な方向に対して、所定角度(例えば、θ2)傾斜している。
なお、図14において、2点鎖線の2つの円C2は、ジンバル部44の側に塗布される接着剤Adの塗布領域をそれぞれ示している。2点鎖線の長楕円C3は、スライダ17aをジンバル部44に接着した後の接着剤の外径縁を示している。
【0056】
図15に示すように、磁気ヘッド17をジンバル部44に載置した状態において、被接着面17cの収容溝56が設けられた領域はタング部44aおよび積層部材48に対向し、接着剤Adによりタング部44aおよび積層部材48に接着される。
【0057】
タング部44aとスライダ17aの被接着面17cとの間の隙間領域において、収容溝56を含む第2領域G2の隙間d1は、収容溝56の周囲に位置する第3領域G3の隙間d2よりも広く、すなわち、大きく設定されている。このように、収容溝56を含む隙間領域(第2領域G2)は、周囲の隙間領域(第3領域G3)の隙間d2および接着領域G1の隙間d2よりも隙間の広い広隙間領域を形成している。この広隙間領域(第2領域G2)は、接着領域G1を囲んでいる。また、積層部材48とスライダ17aの被接着面17cとの間の隙間領域において、収容溝56が設けられている第4領域G4の隙間d3は、周囲に位置する第5領域G5の隙間d4よりも広く、すなわち、大きく設定されている。このように、収容溝56を含む第4領域G4は、周囲の隙間領域G5よりも隙間の広い広隙間領域を形成している。広隙間領域(第4領域G4)は、接着領域を囲んでいる。
【0058】
スライダ17aをタング部44aおよび積層部材48に接着する際、接着領域G1に充填された接着剤Adは、スライダ17aとタング部44aおよび積層部材48とに挟まれ外側に広がっていくが、外径縁部分の少なくとも一部が広隙間領域(第2領域G2、第4領域G4)に流れ込むことで収容溝56よりも外側に濡れ広がることがない。図14に円C3で示したように、スライダ17aをタング部44aおよび積層部材48に接着した後の接着剤Adの外径縁は、収容溝56の内に位置している。
【0059】
第4実施形態において、ヘッドサスペンションアッセンブリの他の構成は、前述した第1実施形態に係るヘッドサスペンションアッセンブリの構成と同一である。そして、第4実施形態においても、前述した第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。更に、第4実施形態によれば、磁気ヘッドの接着面積が増大し、より安定した接着が可能となる。
【0060】
(第5実施形態)
図16は、第5実施形態に係るHDDにおけるヘッドサスペンションアッセンブリの先端部およびジンバル部を示す平面図、図17は、第5実施形態におけるサスペンションアッセンブリの磁気ヘッド搭載部分の断面図である。
前述した実施形態において、収容溝は、スライダ17aの被接着面17cに設けられているが、これに限らず、ヘッドサスペンションのジンバル部44の側に設けてもよい。
【0061】
図16および図17に示すように、第5実施形態によれば、ヘッドサスペンションアッセンブリのジンバル部44、ここでは、タング部44aに収容溝56が設けられている。収容溝56は、前述した第1実施形態における収容溝56と同様の形状、構造を有している。詳細には、収容溝56は、円環形状を有し、深さ2~20μmに形成されている。収容溝56は、円環状の底面、ほぼ円筒状の外周面(外側面)および内周面(内側面)を有している。外周面および内周面は、底面に垂直な方向に対して所定角度θ1、θ2だけ傾斜している。
【0062】
図17に示すように、磁気ヘッド17をジンバル部44に載置した状態において、スライダ17aの被接着面17cはタング部44aおよび積層部材48に対向し、接着剤Adによりタング部44aに接着される。接着剤Adは、予めタング部44aの収容溝56の内側領域(接着領域G1)に塗布されている。スライダ17aをタング部44aに接着する際、接着剤Adは、スライダ17aとタング部44aに挟まれ外側に広がっていくが、接着剤Adの外周部分が収容溝56に流れ込むことで収容溝56よりも外側に濡れ広がることがない。
【0063】
タング部44aとスライダ17aの被接着面17cとの間の隙間領域において、収容溝56を含む第2領域G2の隙間d1は、収容溝56の周囲に位置する第3領域G3の隙間d2および接着剤Adが充填された接着領域(第1領域G1)の隙間d2よりも広く、すなわち、大きく設定されている。このように、収容溝56を含む隙間領域G2は、周囲の隙間領域(第3領域G3)よりも隙間の広い広隙間領域を形成している。この広隙間領域は、接着領域(第1領域G1)を囲んでいる。このように、収容溝56をジンバル部44の側に設けた構成においても、接着領域(第1領域G1)を囲む広隙間領域(第2領域G2)を形成することができる。磁気ヘッド17を接着する際、接着剤Adは、スライダ17aとタング部44aとに挟まれ外側に広がっていくが、接着剤Adの外径縁部分が広隙間領域(第2領域G2)に流れ込むことで収容溝56よりも外側に濡れ広がることがない。
【0064】
第5実施形態において、ヘッドサスペンションアッセンブリの他の構成は、前述した第1実施形態に係るヘッドサスペンションアッセンブリの構成と同一である。そして、第5実施形態においても、前述した第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0065】
本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、収容溝の形状、寸法、設置数は、上述した実施形態に限定されることなく、適宜変更可能である。また、収容溝は、スライダの被接着面およびジンバル部のいずれか一方に限らず、両方に設けてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10…筺体、12…ベース、17…磁気ヘッド、17a…スライダ、
17c…被接着面、18…磁気ディスク、22…アクチュエータアッセンブリ、
30…ヘッドサスペンションアッセンブリ、34…サスペンション、
38…ロードビーム、42…フレキシャ(配線部材)、44…ジンバル部、
44a…タング部、42…ロードビーム、46…金属板、48…積層部材(FPC)、
56,60…収容溝、Ad…接着剤、G1…第1領域、G2…第2領域(広隙間領域)、
G3…第3領域
図1
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