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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126913
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240912BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240912BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 652C
H01L29/78 652M
H01L29/78 652G
H01L29/78 652T
H01L29/78 658E
H01L29/78 652D
H01L29/78 652B
H01L29/78 652K
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035666
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池山 和希
(57)【要約】
【課題】耐圧低下が抑制された窒化物半導体装置を提供する。
【解決手段】窒化物半導体装置1は、導電層11と、前記導電層の上面の少なくとも一部に設けられている窒化物半導体の凸領域12と、前記導電層の上方に設けられているn型のドリフト層13であって、前記凸領域の上方において上向きに先細り形状の先細り領域13bを含む、ドリフト層と、前記ドリフト層の前記先細り領域に隣接しているp型のボディ層14と、を備え、前記ドリフト層及び前記ボディ層がエピ層10である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体装置(1,2,3,4,5,6,7,8)であって、
導電層(11,22,103)と、
前記導電層の上面の少なくとも一部に設けられている窒化物半導体の凸領域(12,112,212)と、
前記導電層の上方に設けられているn型のドリフト層(13)であって、前記凸領域の上方において上向きに先細り形状の先細り領域(13b)を含む、ドリフト層と、
前記ドリフト層の前記先細り領域に隣接しているp型のボディ層(14)と、を備え、
前記ドリフト層及び前記ボディ層がエピ層(10)である、窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記導電層がn型の窒化物半導体層(11,103)であり、
前記ドリフト層のn型不純物濃度が前記窒化物半導体層のn型不純物濃度よりも低い、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記凸領域(12,212)は、前記窒化物半導体層の一部によって構成されている、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記凸領域は、その下端部に幅狭部(112b)を有している、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記導電層の上面に設けられているとともに開口(42a)を有するマスク層(42)であって、前記開口を通過して前記凸領域の前記幅狭部が配置されている、マスク層、をさらに備えている、請求項4に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記凸領域は、前記ドリフト層よりもn型不純物濃度が高い、請求項5に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記ボディ層の下端(14a)は、前記凸領域の上端(12a)よりも上方に位置する、請求項1~6のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
窒化物半導体装置(1,2,3,6,7,8)の製造方法であって、
n型の窒化物半導体層(11)の上面をエッチングして凸領域(12,212)を形成する凸領域形成工程と、
前記窒化物半導体層の上面から結晶成長して前記窒化物半導体層よりもn型不純物濃度が低いn型のドリフト層(13)を成膜する工程であって、前記ドリフト層は前記窒化物半導体層の上方に設けられており、前記凸領域の上方において上向きに先細り形状の先細り領域(13b)を含む、ドリフト層成膜工程と、
前記ドリフト層の上面から結晶成長してp型のボディ層(14)を成膜する工程であって、前記ボディ層は前記ドリフト層の前記先細り領域に隣接している、ボディ層成膜工程と、を備える窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項9】
窒化物半導体装置(4)の製造方法であって、
窒化物半導体層(11,103)の上面にマスク層(42)を形成する工程であって、前記マスク層は開口(42a)を有する、マスク層形成工程と、
前記マスク層の開口から露出する前記窒化物半導体層の前記上面から結晶成長して凸領域(112)を形成する凸領域形成工程と、
前記マスク層を除去するマスク層除去工程と、
前記窒化物半導体層の前記上面から結晶成長してn型のドリフト層(13)を成膜する工程であって、前記ドリフト層は前記窒化物半導体層の上方に設けられており、前記凸領域の上方において上向きに先細り形状の先細り領域(13b)を含む、ドリフト層成膜工程と、
前記ドリフト層の上面から結晶成長してp型のボディ層(14)を成膜する工程であって、前記ボディ層は前記ドリフト層の前記先細り領域に隣接している、ボディ層成膜工程と、を備える窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項10】
窒化物半導体装置(4,5)の製造方法であって、
窒化物半導体層(11,103)の上面にマスク層(42)を形成する工程であって、前記マスク層は開口(42a)を有する、マスク層形成工程と、
前記マスク層の開口から露出する前記窒化物半導体層の前記上面から結晶成長して凸領域(112)を形成する凸領域形成工程と、
前記凸領域から結晶成長してn型のドリフト層(13)を成膜する工程であって、前記ドリフト層は前記窒化物半導体層の上方に設けられており、前記凸領域の上方において上向きに先細り形状の先細り領域(13b)を含む、ドリフト層成膜工程と、
前記ドリフト層の上面から結晶成長してp型のボディ層(14)を成膜する工程であって、前記ボディ層は前記ドリフト層の前記先細り領域に隣接している、ボディ層成膜工程と、を備える窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記ボディ層の上面から結晶成長してn型のソース層(15)を形成するソース層形成工程、をさらに備える、請求項8~10のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記ボディ層の上面から結晶成長してp型のコンタクト層(16)を形成するコンタクト層形成工程、をさらに備える、請求項8~10のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記凸領域は、前記ドリフト層よりもn型不純物濃度が高い、請求項9又は10に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記ボディ層の下端(14a)は、前記凸領域の上端(12a)よりも上方に位置する、請求項8~10のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、窒化物半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体装置は、n型のドリフト層上にp型のボディ層が部分的に設けられた構造を有しいている。p型のボディ層を形成するためには、イオン注入技術又は再エピ成長技術のいずれかが選択され得る。しかしながら、窒化物半導体で構成された半導体層にイオン注入技術を利用して高活性なp型の拡散領域を形成することは難しい。このため、特許文献1及び特許文献2は、再エピ成長技術を利用してドリフト層上にボディ層を形成する技術を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-60985号公報
【特許文献2】特開2021-90015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討によると、再エピ層のうち初期層は、例えばシリコン、酸素、炭素等の不純物が多く取り込まれ、高濃度なn型領域になることが分かってきた。このような高濃度なn型領域の存在は、窒化物半導体装置の耐圧を低下させ得る。本明細書は、耐圧低下が抑制された窒化物半導体装置とその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する窒化物半導体装置(1,2,3,4,5,6,7,8)は、導電層(11,22,103)と、前記導電層の上面の少なくとも一部に設けられている窒化物半導体の凸領域(12,112,212)と、前記導電層の上方に設けられているn型のドリフト層(13)であって、前記凸領域の上方において上向きに先細り形状の先細り領域(13b)を含む、ドリフト層と、前記ドリフト層の前記先細り領域に隣接しているp型のボディ層(14)と、を備えていてもよい。前記導電層は、不純物を含む半導体であってもよく、又は、金属であってもよい。前記ドリフト層及び前記ボディ層がエピ層(10)であってもよい。この窒化物半導体装置では、前記ドリフト層及び前記ボディ層がエピ層で構成されているので、これらエピ層を再エピ成長させるときの初期層に形成される高濃度なn型領域は、少なくとも前記凸領域の周囲に形成される。この窒化物半導体装置では、前記ドリフト層が前記凸領域の上方に設けられているので、高濃度なn型領域とp型の前記ボディ層の間には前記ドリフト層が介在する。さらに、前記ドリフト層は、前記凸領域の上方において前記先細り領域を含む。このため、前記先細り領域に隣接する前記ボディ層は、前記凸領域から離れる向きに傾斜している。このように、本明細書が開示する窒化物半導体装置は、高濃度なn型領域とp型の前記ボディ層の間に距離が確保されるので、耐圧低下が抑制された構造を有している。
【0006】
本明細書が開示する窒化物半導体装置(1,2,3,6,7,8)の1つの製造方法は、n型の窒化物半導体層(11)の上面をエッチングして凸領域(12,212)を形成する凸領域形成工程と、前記窒化物半導体層の上面から結晶成長して前記窒化物半導体層よりもn型不純物濃度が低いn型のドリフト層(13)を成膜する工程であって、前記ドリフト層は前記窒化物半導体層の上方に設けられており、前記凸領域の上方において上向きに先細り形状の先細り領域(13b)を含む、ドリフト層成膜工程と、前記ドリフト層の上面から結晶成長してp型のボディ層(14)を成膜する工程であって、前記ボディ層は前記ドリフト層の前記先細り領域に隣接している、ボディ層成膜工程と、を備えていてもよい。この製造方法によると、耐圧低下が抑制された構造を有する窒化物半導体装置を製造することができる。
【0007】
本明細書が開示する窒化物半導体装置(4)の1つの製造方法は、窒化物半導体層(11,103)の上面にマスク層(42)を形成する工程であって、前記マスク層は開口(42a)を有する、マスク層形成工程と、前記マスク層の開口から露出する前記窒化物半導体層の前記上面から結晶成長して凸領域(112)を形成する凸領域形成工程と、
前記マスク層を除去するマスク層除去工程と、前記窒化物半導体層の前記上面から結晶成長してn型のドリフト層(13)を成膜する工程であって、前記ドリフト層は前記窒化物半導体層の上方に設けられており、前記凸領域の上方において上向きに先細り形状の先細り領域(13b)を含む、ドリフト層成膜工程と、前記ドリフト層の上面から結晶成長してp型のボディ層(14)を成膜する工程であって、前記ボディ層は前記ドリフト層の前記先細り領域に隣接している、ボディ層成膜工程と、を備えていてもよい。この製造方法によると、耐圧低下が抑制された構造を有する窒化物半導体装置を製造することができる。
【0008】
本明細書が開示する窒化物半導体装置(4,5)の1つの製造方法は、窒化物半導体層(11,103)の上面にマスク層(42)を形成する工程であって、前記マスク層は開口(42a)を有する、マスク層形成工程と、前記マスク層の開口から露出する前記窒化物半導体層の前記上面から結晶成長して凸領域(112)を形成する凸領域形成工程と、前記凸領域から結晶成長してn型のドリフト層(13)を成膜する工程であって、前記ドリフト層は前記窒化物半導体層の上方に設けられており、前記凸領域の上方において上向きに先細り形状の先細り領域(13b)を含む、ドリフト層成膜工程と、前記ドリフト層の上面から結晶成長してp型のボディ層(14)を成膜する工程であって、前記ボディ層は前記ドリフト層の前記先細り領域に隣接している、ボディ層成膜工程と、を備えていてもよい。この製造方法によると、耐圧低下が抑制された構造を有する窒化物半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】窒化物半導体装置の一実施形態の要部断面図を模式的に示す。
図2図1に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図3図1に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図4図1に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図5図1に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図6図1に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図7図1に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図8図1に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図9図1に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図10図1に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図11図1に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図12図1に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図13図1に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図14図1に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図15】窒化物半導体装置の一実施形態の要部断面図を模式的に示す。
図16図15に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図17図15に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図18図15に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図19図15に示す窒化物半導体装置の変形例の要部断面図を模式的に示す。
図20図19に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図21図19に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図22】窒化物半導体装置の一実施形態の要部断面図を模式的に示す。
図23】窒化物半導体装置の一実施形態の要部断面図を模式的に示す。
図24図23に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図25図23に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図26図23に示す窒化物半導体装置の変形例の要部断面図を模式的に示す。
図27図23に示す窒化物半導体装置の変形例の要部断面図を模式的に示す。
図28図23に示す窒化物半導体装置の変形例の要部断面図を模式的に示す。
図29】窒化物半導体装置の一実施形態の要部断面図を模式的に示す。
図30図29に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図31図29に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図32図29に示す窒化物半導体装置の製造過程における要部断面図を模式的に示す。
図33】窒化物半導体装置の一実施形態の要部断面図を模式的に示す。
図34】窒化物半導体装置の一実施形態の要部断面図を模式的に示す。
図35】窒化物半導体装置の一実施形態の要部断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本明細書が開示する技術が適用された半導体装置及びその製造方法について説明する。以下の説明では、各図を通して実質的に共通する構成要素については共通の符号を付し、その説明を省略することがある。また、図示明瞭化を目的として、繰り返し配置されている構造についてはその一部のみに符号を付す。
【0011】
本願明細書でいう「窒化物半導体」とは、InAlGa1-X-YN(ただし、0≦X≦1、0≦Y≦1)で定義される化合物である。
【0012】
(第1実施形態の窒化物半導体装置1)
図1に示すように、窒化物半導体装置1は、n+型の窒化物半導体層11と、n+型の窒化物半導体の凸領域12と、n-型の窒化物半導体のドリフト層13と、p-型の窒化物半導体のボディ層14と、n++型の窒化物半導体のソース層15と、を備えている。この例では、これら各層及び領域はいずれも窒化ガリウム(GaN)で構成されている。ドリフト層13とボディ層14とソース層15は、後述の製造方法で説明するように、窒化物半導体層11の上面から再エピ成長技術を利用して成膜された層であり、エピ層10とも称される。
【0013】
窒化物半導体層11は、この例ではGaN自立基板である。窒化物半導体層11は、その上面から窒化半導体がエピタキシャル成長可能な下地基板であればよく、GaN自立基板に代えて、例えば、GaN-on-Si基板であってもよく、GaN-on-SiC基板であってもよく、GaN-on-サファイア基板であってもよい。窒化物半導体層11のn型不純物濃度は、特に限定されるものではないが、例えば1×1017~1×1022cm-3であってもよい。窒化物半導体層11は、窒化物半導体装置1における機能からドレイン層とも称される。なお、窒化物半導体層11は、導電層の一例である。
【0014】
凸領域12は、窒化物半導体層11の上面の少なくとも一部に設けられており、窒化物半導体層11の上面から上方に向けて突出している。凸領域12は、後述の製造方法で説明するように、窒化物半導体層11の上面をエッチングして形成された領域であり、窒化物半導体層11の一部でもある。凸領域12は、平面視したときに、一方向に沿って長く延びていてもよく、島状に分散配置されていてもよい。なお、凸領域12は、窒化物半導体であればよく、その導電型及び不純物濃度は特に限定されるものではない。例えば、凸領域12がp型の窒化物半導体であってもよい。また、凸領域12は単層で構成されていなくてもよい。例えば、凸領域12は不純物濃度が異なる複数の層が積層して構成されていてもよく、異なる導電型の層が積層して構成されていてもよく、アンドープの層を含んで積層して構成されていてもよい。
【0015】
ドリフト層13は、凸領域12を被覆するとともに窒化物半導体層11の上方に設けられている。ドリフト層13のn型不純物濃度は、窒化物半導体層11のn型不純物濃度よりも低い。ドリフト層13のn型不純物濃度は、特に限定されるものではないが、例えば1×1015~1×1018cm-3であってもよい。
【0016】
ドリフト層13は、平板状領域13aと、先細り領域13bと、を有している。平板状領域13aは、窒化物半導体層11上においてエピ層10の面方向に、即ち、窒化物半導体層11の上面に対して平行に延びた平板状の形態を有している。この例では、平板状領域13aは、窒化物半導体層11の上面と凸領域12の頂面及び側面に接しており、所定の厚みを有している。先細り領域13bは、平板状領域13aの上面の一部に設けられており、凸領域12の上方において上向きに先細り形状の形態を有している。先細り領域13bは、エピ層10の上面まで延びている。先細り領域13bの側面は、平板状領域13aの上面に接する位置からエピ層10の上面の位置まで連続的に傾斜している。このように、先細り領域13bは、断面が台形状に構成されている。
【0017】
ドリフト層13のうち窒化物半導体層11の上面ならびに凸領域12の頂面及び側面と接する部分に高濃度なn型領域13cが存在する。または、窒化物半導体層11の上面ならびに凸領域12の頂面及び側面とドリフト層13の間に高濃度なn型領域13cが介在している、ということもできる。後述の製造方法で説明するように、この高濃度なn型領域13cは、再エピ成長時の初期層である。
【0018】
ボディ層14は、ドリフト層13上に設けられている。より具体的には、ボディ層14は、ドリフト層13の平板状領域13a上であって、ドリフト層13の先細り領域13bの側面に隣接して配置されている。ボディ層14の一部は、エピ層10の上面に露出する位置に配置されている。このように、ボディ層14は、下方に向けて先細り形状の形態を有している。ボディ層14の下端14aは、凸領域12の上端12aよりも上方に位置している。この例に代えて、ボディ層14の下端14aは、凸領域12の上端12aよりも下方に設けられていてもよい。即ち、ボディ層14は、その下端14aが隣り合う凸領域12の間の領域に侵入するように構成されていてもよい。
【0019】
ソース層15は、ボディ層14上に設けられており、エピ層10の上面に露出する位置に配置されている。ソース層15は、ボディ層14によってドリフト層13から隔てられている。
【0020】
窒化物半導体装置1はさらに、ドレイン電極22と、ソース電極24と、プレーナー型の絶縁ゲート30と、を備えている。
【0021】
ドレイン電極22は、窒化物半導体層11の下面に接するように設けられており、窒化物半導体層11にオーミック接触している。ソース電極24は、絶縁ゲート30を覆うようにエピ層10の上方に設けられている。ソース電極24は、エピ層10の上面からソース層15を貫通してボディ層14に達するコンタクト部24aを有している。ソース電極24のコンタクト部24aは、ボディ層14及びソース層15にオーミック接触している。
【0022】
絶縁ゲート30は、エピ層10の上面の一部に設けられており、ゲート絶縁膜32及びゲート電極34を有している。ゲート絶縁膜32は、エピ層10の上面に接している。ゲート電極34は、ゲート絶縁膜32を介してエピ層10の上面に対向している。特に、ゲート電極34は、ドリフト層13の先細り領域13bとソース層15を隔てるボディ層14にゲート絶縁膜32を介して対向するように設けられている。また、ゲート電極34は、層間絶縁膜36によってソース電極24から絶縁されている。
【0023】
次に、窒化物半導体装置1の動作を説明する。使用時には、例えばソース電極24よりもドレイン電極22が正となる電圧が印加される。ゲート電極34にゲート閾値電圧よりも高い正電圧が印加されると、ドリフト層13の先細り領域13bとソース層15を隔てるボディ層14に反転層が形成され、窒化物半導体装置1がターンオンする。このとき、反転層を経由してソース層15から先細り領域13bに電子が流入する。先細り領域13bに流入した電子は、その先細り領域13bを縦方向に流れて窒化物半導体層11に向かう。これにより、ドレイン電極22とソース電極24が導通する。
【0024】
ゲート電極34がソース電極24と同電位にされると、反転層が消失し、窒化物半導体装置1がターンオフする。このとき、ドリフト層13とボディ層14のpn接合面からドリフト層13内に空乏層が伸びる。特に、ドリフト層13のうち先細り領域13bは、実質的に完全空乏化される。ここで、窒化物半導体装置1では、高濃度なn型領域13cが、ドリフト層13とボディ層14のpn接合面から離れた位置に形成されている。窒化物半導体装置1では、ドリフト層13が窒化物半導体層11の上面ならびに凸領域12の頂面及び側面を被覆するように設けられているので、高濃度なn型領域13cとボディ層14の間にはn型不純物濃度が低いドリフト層13が介在する。さらに、ドリフト層13は、凸領域12の上方において先細り領域13bを含む。このため、先細り領域13bに隣接するボディ層14は、凸領域12から離れる向きに傾斜している。このように、窒化物半導体装置1では、高濃度なn型領域13cとボディ層14の間に距離が確保されるので、ドリフト層13とボディ層14のpn接合面から伸びる空乏層の伸展が阻害されることが抑制される。この結果、窒化物半導体装置1は高い耐圧を有することができる。
【0025】
(窒化物半導体装置1の製造方法)
まず、図2に示すように、GaN自立基板である窒化物半導体層11を準備する。次に、図3に示すように、エッチング技術を利用して窒化物半導体層11の上面の一部を除去し、凸領域12を形成する。
【0026】
次に、図4及び図5に示すように、エピタキシャル成長技術を利用して窒化物半導体層11の上面ならびに凸領域12の頂面及び側面からドリフト層13を結晶成長させる。このとき、成長温度、ガス流量及び圧力等を調整することにより、凸領域12の上方に先細り領域13bを形成することができる。また、再エピ層であるドリフト層13のうち初期層は、例えばシリコン、酸素、炭素等の不純物が多く取り込まれ、高濃度なn型領域13cが形成される。この例では、ドリフト層13のうち窒化物半導体層11の上面ならびに凸領域12の側面及び頂面と接する部分に高濃度なn型領域13cが形成される。この例では、窒化物半導体層11の上面ならびに凸領域12の頂面及び側面からドリフト層13を結晶成長させていたが、この例に代えて、高濃度なn型エピ層を成長させた後に、ドリフト層13を結晶成長させてもよい。
【0027】
次に、図6に示すように、エピタキシャル成長技術を利用してドリフト層13の上面からボディ層14を結晶成長させる。このとき、成長温度、ガス流量及び圧力等を調整することにより、ボディ層14の上面にはドリフト層13の先細り領域13bの形状に対応した凹凸を形成することができる。
【0028】
次に、図7に示すように、エピタキシャル成長技術を利用してボディ層14の上面からソース層15を結晶成長させる。このとき、成長温度、ガス流量及び圧力等を調整することにより、ソース層15の上面の平坦に形成することができる。この例に代えて、成長温度、ガス流量及び圧力等を調整することにより、ソース層15の上面に凹凸が形成されるようにソース層15が成膜されてもよい。ドリフト層13とボディ層14とソース層15は、同一チャンバー内で連続成長して形成され、エピ層10を構成する。
【0029】
次に、図8に示すように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)又は異方性ウェットエッチング技術を利用してエピ層10の上面を平坦化し、ドリフト層13の先細り領域13bを露出させる。
【0030】
次に、図9に示すように、成膜技術を利用してエピ層10の上面にゲート絶縁膜32及びゲート電極34を成膜する。
【0031】
次に、図10に示すように、エッチング技術を利用してゲート電極34の一部を除去し、絶縁ゲート30を形成する。
【0032】
次に、図11に示すように、成膜技術を利用してゲート電極34を覆うようにエピ層10上に層間絶縁膜36を形成する。
【0033】
次に、図12に示すように、エッチング技術を利用して層間絶縁膜36及びゲート絶縁膜32の一部を除去し、エピ層10の上面を露出させる。さらに、エッチング技術を利用してエピ層10の上面からソース層15を貫通してボディ層14に達するコンタクトホールを形成する。
【0034】
最後に、窒化物半導体層11の下面にドレイン電極22を形成し、エピ層10の上面にソース電極24を形成することにより、窒化物半導体装置1を製造することができる。
【0035】
(窒化物半導体装置1の製造方法の変形例)
まず、図13に示すように、GaN自立基板である窒化物半導体層11を準備する。次に、エピタキシャル成長技術を利用して窒化物半導体層11の上面からn型エピ層11aを結晶成長させる。n型エピ層11aのn型不純物濃度は、窒化物半導体層11のn型不純物濃度よりも低い。なお、n型エピ層11aに代えて、アンドープのエピ層が形成されてもよい。
【0036】
次に、図14に示すように、エッチング技術を利用してn型エピ層11aを貫通するとともに窒化物半導体層11の上面の一部を除去し、凸領域12を形成する。このように、この製造方法で形成される凸領域12は、n型不純物濃度が相対的に濃い層が下側に配置され、n型不純物濃度が相対的に薄い層(又は、アンドープの層)が上側に配置された積層体で構成されている。
【0037】
その後、図4図12で説明した工程を実施することにより、窒化物半導体装置1を製造することができる。この製造方法によると、ドリフト層13を結晶成長させるとき(図4及び図5参照)の初期層である高濃度なn型領域13cに含まれるn型不純物が、凸領域12の低濃度なn型エピ層11a(又は、アンドープの層)に拡散し、n型領域13cのn型不純物濃度が低下し得る。このため、この製造方法によると、より高耐圧な窒化物半導体装置1を製造することができる。
【0038】
(第2実施形態の窒化物半導体装置2)
図15に示されるように、窒化物半導体装置2は、コンタクト層16を備えていることを特徴としている。コンタクト層16は、ボディ層14上に設けられており、エピ層10の上面に露出する位置に配置されている。コンタクト層16のp型不純物濃度は、ボディ層14のp型不純物濃度よりも高い。このような構成によると、ボディ層14とソース電極24は、コンタクト層16を介して低いコンタクト抵抗で接続される。また、コンタクト層16が設けられている場合、ソース電極24のコンタクト部24a(図1参照)は不要である。窒化物半導体装置2も、窒化物半導体装置1と同様に、高い耐圧を有することができる。
【0039】
(窒化物半導体装置2の製造方法)
ボディ層14を成膜するまでの工程は、窒化物半導体装置1の製造方法と同一である(図2図6図13図14参照)。次に、図16に示すように、エピタキシャル成長技術を利用してボディ層14の上面からコンタクト層16を結晶成長させる。このとき、成長温度、ガス流量及び圧力等を調整することにより、コンタクト層16の上面の平坦に形成することができる。この例に代えて、成長温度、ガス流量及び圧力等を調整することにより、コンタクト層16の上面に凹凸が形成されるようにコンタクト層16が成膜されてもよい。ドリフト層13とボディ層14とコンタクト層16は、同一チャンバー内で連続成長して形成され、エピ層10を構成する。
【0040】
次に、図17に示すように、CMP又は異方性ウェットエッチング技術を利用してエピ層10の上面を平坦化し、ドリフト層13の先細り領域13bを露出させる。
【0041】
次に、図18に示すように、イオン注入技術を利用してエピ層10の表面の一部にn型不純物を注入し、ソース層15を形成する。
【0042】
その後、窒化物半導体装置1の製造方法と同一の工程により、絶縁ゲート30、層間絶縁膜36、ドレイン電極22及びソース電極24を形成することにより、窒化物半導体装置2を製造することができる。
【0043】
(窒化物半導体装置2の変形例)
図19に示されるように、窒化物半導体装置2の変形例は、イオン注入に代えて、成膜技術を利用してエピ層10の上面の一部にソース層15が成膜されていることを特徴としている。窒化物半導体装置2の変形例も、窒化物半導体装置1と同様に、高い耐圧を有することができる。
【0044】
(窒化物半導体装置2の変形例の製造方法)
エピ層10の上面を平坦化するまでの工程は、窒化物半導体装置2の製造方法と同一である(図16図17参照)。次に、図20に示すように、エピ層10の上面にマスク82を形成する。マスク82は、ソース層15の形成範囲に対応して開口している。次に、エッチング技術を利用してマスク82の開口から露出するエピ層10の上面をエッチングし、窪み15aを形成する。なお、この窪み15aは、ソース層15とチャネルの接続を良好なものにするために形成されるものであり、必ずしも形成される必要はない。
【0045】
次に、図21に示すように、成膜技術を利用してソース層15を成膜する。ソース層15は、エピ層10の窪み15a内に所定の厚みで形成される。次に、マスク82をリフトオフし、マスク82上に堆積したGaN堆積物を除去する。その後、上記した他の窒化物半導体装置の製造方法と同一の工程により、窒化物半導体装置2の変形例を製造することができる。
【0046】
(第3実施形態の窒化物半導体装置3)
図22に示されるように、窒化物半導体装置3は、トレンチ型の絶縁ゲート130を備えていることを特徴としている。絶縁ゲート130は、エピ層10の上面からソース層15及びボディ層14を貫通してドリフト層13の先細り領域13bに達するトレンチ内に設けられている。ゲート絶縁膜132は、そのトレンチの内壁に設けられている。ゲート電極134は、そのトレンチ内に設けられており、ゲート絶縁膜132を介してソース層15、ボディ層14及びドリフト層13の先細り領域13bの各々に対向している。ゲート電極134は、層間絶縁膜36によってソース電極24から絶縁されている。窒化物半導体装置3も、窒化物半導体装置1と同様に、高い耐圧を有することができる。なお、窒化物半導体装置3も、窒化物半導体装置2と同様に、コンタクト層16が設けられていてもよい。
【0047】
(窒化物半導体装置3の製造方法)
ソース層15を成膜するまでの工程は、窒化物半導体装置1の製造方法と同一である(図2図7参照)。ここで、ソース層15を成膜するとき、成長温度、ガス流量及び圧力等を調整することにより、ソース層15の上面の平坦にしてもよいし、ソース層15の上面に凹凸が形成されるようにソース層15が成膜されてもよい。次に、エッチング技術を利用してエピ層10の上面からソース層15及びボディ層14を貫通してドリフト層13の先細り領域13bに達するトレンチを形成する。次に、既知の製造技術を利用してトレンチ内に絶縁ゲート130を形成する。上記した他の窒化物半導体装置の製造方法と同一の工程により、窒化物半導体装置3を製造することができる。なお、ソース電極24のコンタクト部24aは、絶縁ゲート130用のトレンチを形成するときに同時に形成してもよいし、別の工程で形成してもよい。
【0048】
(第4実施形態の窒化物半導体装置4)
図23に示されるように、窒化物半導体装置4は、窒化物半導体層11とドリフト層13の間に絶縁体のマスク層42が設けられていることを特徴としている。マスク層42は、特に限定されるものではないが、例えば酸化シリコン、窒化シリコン又はDLCであってもよい。マスク層42には開口42aが形成されており、凸領域112がその開口42aを通過するように配置されている。凸領域112は、後述の製造方法で説明するように、マスク層42の開口42aに露出する窒化物半導体層11の上面から結晶成長して形成されたエピ層である。凸領域112は、マスク層42上において開口42aよりも幅広に形成されている。換言すると、凸領域112は、その下端部に幅狭部112bを有しており、その幅狭部112bがマスク層42の開口42aを通過するように配置されている。この例では、凸領域112の断面形状が三角形状である。凸領域112の断面形状は、エピ成長して形成するときの成長条件により様々な形状とすることができる。また、凸領域11は、隣り合う凸領域112が繋がるような大きさで形成されてもよい。凸領域112のn型不純物濃度は、ドリフト層13のn型不純物濃度よりも高い。凸領域112のn型不純物濃度は、特に限定されるものではないが、例えば1×1016~1×1020cm-3であってもよい。
【0049】
(窒化物半導体装置4の製造方法)
まず、図24に示すように、GaN自立基板である窒化物半導体層11を準備する。次に、成膜技術を利用して窒化物半導体層11の上面にマスク層42を成膜する。次に、エッチング技術を利用してマスク層42の一部を除去し、開口42aを形成する。
【0050】
次に、図25に示すように、エピタキシャル成長技術を利用してマスク層42の開口42aに露出する窒化物半導体層11の上面から凸領域112を結晶成長させる。上記したように、この時の成長条件により、凸領域112の断面形状は様々な形状とすることができ、凸領域112は隣り合う凸領域112が繋がるような大きさで形成することもできる。その後、上記した他の窒化物半導体装置の製造方法と同一の工程により、窒化物半導体装置4が製造される。この製造方法によると、マスク層42によって窒化物半導体層11に存在している転位がドリフト層13に伝搬することが抑制される。このため、窒化物半導体装置4は、低リーク電流な特性を有することができる。窒化物半導体装置4では、マスク層42によって電流経路が遮られている。しかしながら、凸領域112のn型不純物濃度が高く調整されているので、オン抵抗の増大が抑えられている。
【0051】
上記では、GaN自立基板である窒化物半導体層11を下地基板として用いた例を説明した。この例に代えて、図26示すように、GaN-on-Si基板100を下地基板として窒化物半導体装置4を構成してもよい。GaN-on-Si基板100は、シリコン層101とバッファ層102とGaN層103が積層して構成されており、シリコン層101上にバッファ層102を介してGaN層103を結晶成長して形成される。マスク層42を備えた窒化物半導体装置4は、転位の伝搬を抑制することができる。このため、このような転位の多いGaN-on-Si基板100を下地基板として用いたとしても、窒化物半導体装置4は良好な特性を有することができる。なお、GaN-on-Si基板100に代えてGaN-on-SiC基板又はGaN-on-サファイア基板を下地基板として用いても同様である。GaN-on-Si基板、GaN-on-SiC基板又はGaN-on-サファイア基板を下地基板に用いて製造することことにより、低コストで窒化物半導体装置4を製造することができる。
【0052】
GaN-on-Si基板100のバッファ層102は抵抗が高い。このため、図27に示すように、エッチング技術を利用してシリコン層101とバッファ層102の一部を除去してドレイン電極22とGaN層103が接するように構成してもよい。この場合、マスク層42の開口42aの下方にはドレイン電極22が配置されるようにシリコン層101とバッファ層102の一部を除去してもよい。この例では、マスク層42の開口42aを通過する電流経路に対応してドレイン電極22が配置されるので、抵抗を低下させる効果が高い。残存させたシリコン層101とバッファ層102によってウェハハンドリング中の強度を確保しつつ、抵抗を低下させることができる。
【0053】
図28に示すように、窒化物半導体装置4では、マスク層42が除去されていてもよい。この例の窒化物半導体装置4は、図25に示すように、凸領域112を形成した後、ドリフト層13を成膜する前に、エッチング技術を利用してマスク層42を除去することで製造される。
【0054】
(第5実施形態の窒化物半導体装置5)
図29に示されるように、窒化物半導体装置5は、窒化物半導体層11が除去されていることを特徴としている。凸領域112がドレイン電極22の上面の一部に設けられている。ドリフト層13が凸領域112を被覆するとともにドレイン電極22の上面に接するように設けられている。なお、ドレイン電極22は、導電層の一例である。
【0055】
(窒化物半導体装置5の製造方法)
図30に示すように、窒化物半導体層11上に各種構造を形成する工程は、窒化物半導体装置4の製造方法と同一である。
【0056】
次に、図31に示すように、CMP技術、ウェットエッチング技術又はレーザー剥離技術を利用して窒化物半導体層11を除去する。
【0057】
次に、図32に示すように、ウェットエッチング技術を利用してマスク層42を除去する。
【0058】
その後、ドリフト層13及び凸領域112の下面にドレイン電極22を成膜することで、窒化物半導体装置5が製造される。
【0059】
窒化物半導体装置5も、窒化物半導体装置4と同様に、GaN-on-Si基板、GaN-on-SiC基板又はGaN-on-サファイア基板を下地基板に用いて製造することができる。特に、窒化物半導体装置5では、GaN-on-Si基板、GaN-on-SiC基板又はGaN-on-サファイア基板が最終的に除去されるので、高抵抗なバッファ層が存在しない。GaN-on-Si基板、GaN-on-SiC基板又はGaN-on-サファイア基板が下地基板に用いられる窒化物半導体装置5は、低いオン抵抗を有するとともに低コストで製造され得る。
【0060】
上記で説明した各実施形態の窒化物半導体装置は、以下で説明するように変形することができる。
【0061】
凸領域12,112の断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば台形状、半円状又は三角形状であってもよい。また、図33に示す窒化物半導体装置6のように、隣り合う凸領域212が繋がるように構成されていてもよい。即ち、窒化物半導体層11の上面に平坦面がなく、窒化物半導体層11の上面の全体に凸領域212が形成されていてもよい。
【0062】
上記各実施形態では、ボディ層14に形成される反転層がチャネルとなる構造を例示した。この例に代えて、本明細書が開示する技術は、2次元電子ガス層がチャネルとなる構造に適用することもできる。図34に示す窒化物半導体装置7は、プレーナー型の絶縁ゲート30とエピ層10の間にヘテロ接合層50を備えていることを特徴とする。ヘテロ接合層50は、下側窒化物半導体層52と上側窒化物半導体層54を有している。下側窒化物半導体層52は、エピ層10の上面に接している。下側窒化物半導体層52は、例えば窒化ガリウムであってもよい。上側窒化物半導体層54は、下側窒化物半導体層52に接しており、下側窒化物半導体層52を介してエピ層10の上面に対向している。上側窒化物半導体層54は、下側窒化物半導体層52よりもバンドギャップが広い窒化物半導体であり、例えば窒化アルミニウムガリウムであってもよい。これにより、下側窒化物半導体層52と上側窒化物半導体層54のヘテロ接合面近傍に2次元電子ガス層が形成される。2次元電子ガス層の電子密度は、ゲート電極34に印可する電圧によって制御可能である。このように、窒化物半導体装置7では、2次元電子ガス層がチャネルとなる構造を備えており、スイッチング素子として動作することができる。窒化物半導体装置7では、ボディ層14に反転層のチャネルが形成されない。このため、窒化物半導体装置7では、他の例に比較してボディ層14のp型不純物の濃度を高くしてもよい。なお、絶縁ゲート30のゲート絶縁膜32がp型の窒化物半導体に置換されてもよい。この場合の窒化物半導体装置も、同様の作用機能を有することができる。
【0063】
本明細書が開示する技術は、図35に示す窒化物半導体装置8にも適用することができる。窒化物半導体装置8は、ゲート電極234がボディ層14の上面にオーミック接触していることを特徴とする。窒化物半導体装置8では、ゲート電極234に印可する電圧に基づいてドリフト層13の先細り領域13bとボディ層14のpn接合に形成される空乏層幅を制御することができる。これにより、ゲート電極234に印可する電圧に基づいてドリフト層13の先細り領域13bを流れる電流密度を制御することができる。窒化物半導体装置8は、スイッチング素子として動作することができる。窒化物半導体装置8も、窒化物半導体装置7と同様に、ボディ層14に反転層のチャネルが形成されない。このため、窒化物半導体装置8も、他の例に比較してボディ層14のp型不純物の濃度を高くしてもよい。
【0064】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0065】
(特徴1)
窒化物半導体装置(1,2,3,4,5,6,7,8)であって、
導電層(11,22,103)と、
前記導電層の上面の少なくとも一部に設けられている窒化物半導体の凸領域(12,112,212)と、
前記導電層の上方に設けられているn型のドリフト層(13)であって、前記凸領域の上方において上向きに先細り形状の先細り領域(13b)を含む、ドリフト層と、
前記ドリフト層の前記先細り領域に隣接しているp型のボディ層(14)と、を備え、
前記ドリフト層及び前記ボディ層がエピ層(10)である、窒化物半導体装置。
【0066】
(特徴2)
前記導電層がn型の窒化物半導体層(11,103)であり、
前記ドリフト層のn型不純物濃度が前記窒化物半導体層のn型不純物濃度よりも低い、特徴1に記載の窒化物半導体装置。
【0067】
(特徴3)
前記凸領域(12,212)は、前記窒化物半導体層の一部によって構成されている、特徴2に記載の窒化物半導体装置。
【0068】
(特徴4)
前記凸領域は、その下端部に幅狭部(112b)を有している、特徴1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【0069】
(特徴5)
前記導電層の上面に設けられているとともに開口(42a)を有するマスク層(42)であって、前記開口を通過して前記凸領域の前記幅狭部が配置されている、マスク層、をさらに備えている、特徴4に記載の窒化物半導体装置。
【0070】
(特徴6)
前記凸領域は、前記ドリフト層よりもn型不純物濃度が高い、特徴5に記載の窒化物半導体装置。
【0071】
(特徴7)
前記ボディ層の下端(14a)は、前記凸領域の上端(12a)よりも上方に位置する、特徴1~6のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0072】
(特徴8)
窒化物半導体装置(1,2,3,6,7,8)の製造方法であって、
n型の窒化物半導体層(11)の上面をエッチングして凸領域(12,212)を形成する凸領域形成工程と、
前記窒化物半導体層の上面から結晶成長して前記窒化物半導体層よりもn型不純物濃度が低いn型のドリフト層(13)を成膜する工程であって、前記ドリフト層は前記窒化物半導体層の上方に設けられており、前記凸領域の上方において上向きに先細り形状の先細り領域(13b)を含む、ドリフト層成膜工程と、
前記ドリフト層の上面から結晶成長してp型のボディ層(14)を成膜する工程であって、前記ボディ層は前記ドリフト層の前記先細り領域に隣接している、ボディ層成膜工程と、を備える窒化物半導体装置の製造方法。
【0073】
(特徴9)
窒化物半導体装置(4)の製造方法であって、
窒化物半導体層(11,103)の上面にマスク層(42)を形成する工程であって、前記マスク層は開口(42a)を有する、マスク層形成工程と、
前記マスク層の開口から露出する前記窒化物半導体層の前記上面から結晶成長して凸領域(112)を形成する凸領域形成工程と、
前記マスク層を除去するマスク層除去工程と、
前記窒化物半導体層の前記上面から結晶成長してn型のドリフト層(13)を成膜する工程であって、前記ドリフト層は前記窒化物半導体層の上方に設けられており、前記凸領域の上方において上向きに先細り形状の先細り領域(13b)を含む、ドリフト層成膜工程と、
前記ドリフト層の上面から結晶成長してp型のボディ層(14)を成膜する工程であって、前記ボディ層は前記ドリフト層の前記先細り領域に隣接している、ボディ層成膜工程と、を備える窒化物半導体装置の製造方法。
【0074】
(特徴10)
窒化物半導体装置(4,5)の製造方法であって、
窒化物半導体層(11,103)の上面にマスク層(42)を形成する工程であって、前記マスク層は開口(42a)を有する、マスク層形成工程と、
前記マスク層の開口から露出する前記窒化物半導体層の前記上面から結晶成長して凸領域(112)を形成する凸領域形成工程と、
前記凸領域から結晶成長してn型のドリフト層(13)を成膜する工程であって、前記ドリフト層は前記窒化物半導体層の上方に設けられており、前記凸領域の上方において上向きに先細り形状の先細り領域(13b)を含む、ドリフト層成膜工程と、
前記ドリフト層の上面から結晶成長してp型のボディ層(14)を成膜する工程であって、前記ボディ層は前記ドリフト層の前記先細り領域に隣接している、ボディ層成膜工程と、を備える窒化物半導体装置の製造方法。
【0075】
(特徴11)
前記ボディ層の上面から結晶成長してn型のソース層(15)を形成するソース層形成工程、をさらに備える、特徴8~10のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0076】
(特徴12)
前記ボディ層の上面から結晶成長してp型のコンタクト層(16)を形成するコンタクト層形成工程、をさらに備える、特徴8~10のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0077】
(特徴13)
前記凸領域は、前記ドリフト層よりもn型不純物濃度が高い、特徴9又は10に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0078】
(特徴14)
前記ボディ層の下端(14a)は、前記凸領域の上端(12a)よりも上方に位置する、特徴8~13のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0079】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0080】
1,2,3,4,5,6,7,8:窒化物半導体装置、 10:エピ層、 11:窒化物半導体層、 12,112,212:凸領域、 13:ドリフト層、 14:ボディ層、 15:ソース層、 16:コンタクト層、 22:ドレイン電極、 24:ソース電極、 30,130:絶縁ゲート、 32,132:ゲート絶縁膜、 34,134,234:ゲート電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35