(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126924
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 11/14 20130101AFI20240912BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240912BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20240912BHJP
H01G 9/12 20060101ALI20240912BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20240912BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20240912BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240912BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20240912BHJP
H01M 50/566 20210101ALI20240912BHJP
【FI】
H01G11/14
H01G11/84
H01G9/00 290M
H01G9/12 B
H01M50/342 101
H01M50/107
H01G11/78
H01M50/548 201
H01M50/566
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035686
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】黒木 隆史
(72)【発明者】
【氏名】川崎 裕介
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H012
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078AB01
5E078HA24
5E078LA08
5H011AA13
5H011KK01
5H012BB01
5H012DD05
5H043AA04
5H043AA19
5H043HA17F
5H043LA02
(57)【要約】
【課題】端子部材の接続性、防爆弁の防爆機能を高めた電子部品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】素子を収納するケース(4)と、ケースに設定された第1ケース面部(基底部6-1)と、第1ケース面部から突出させた第2ケース面部(突出底部6-2)と、第1ケース面部と第2ケース面部とに繋がった立壁部(6-4)と、第2ケース面部に備えてケースの内圧上昇により開弁し、ケースから気体を放出させる防爆弁(10)とを含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子を収納するケースと、
前記ケースに設定された第1ケース面部と、
前記第1ケース面部から突出させた第2ケース面部と、
前記第1ケース面部と前記第2ケース面部とを繋ぐ立壁部と、
前記第2ケース面部に備えて前記ケースの内圧上昇により開弁し、前記ケースから気体を放出させる防爆弁と、
を含む、電子部品。
【請求項2】
さらに、前記ケースに接続される端子部材を含み、この端子部材が少なくとも前記立壁部に溶接されている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記端子部材はさらに、前記第1ケース面部に溶接されている、請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記立壁部または前記第1のケース面部が前記第2ケース面部より肉厚である、請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第2ケース面部の周縁部が前記立壁部で補強され、さらに前記端子部材との溶接部で補強されている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項6】
前記端子部材と前記立壁部の突合せ長が前記立壁部の周回長の少なくとも4分の1であり、または4分の1以上である、請求項2に記載の電子部品。
【請求項7】
ケース部材でケースを成形し、このケースに第1ケース面部および第2ケース面部とともに前記第1ケース面部と前記第2ケース面部を繋ぐ立壁部を成形する工程と、
前記第2ケース面部に防爆弁を形成する工程と、
を含む、電子部品の製造方法。
【請求項8】
さらに、端子部材を少なくとも前記立壁部に溶接し、または前記立壁部および前記第1ケース面部に溶接する工程を含む、請求項7に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防爆弁を含むたとえば、キャパシタ、コンデンサ、電池などの電子部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電子部品において、動作時、充満するガスでケースの内圧が上昇し、ケースの変形や急激なガス排出を回避するために防爆弁が設置されていることは既に知られている。ケースの内圧が所定圧を超えたとき、防爆弁を速やかに開弁させ、ケースから速やかにガスを排出させることにより、不測の事態を回避することができる。この防爆弁はケース側やケースを封口する封口部材に設置されている。
【0003】
このような防爆弁を備える電子部品に関し、蓄電デバイスの底部に複数の溝を備えて防爆機構を備えたケース構造が知られている(たとえば、特許文献1、段落0050、0051)。
【0004】
防爆機構については、ケースを封口する封口板に貫通孔を塞ぐゴム薄層を備えて防爆機構を果たすことが知られている(たとえば、特許文献2、
図1およびその説明)。
【0005】
また、電子部品は、その部品本体たとえば、ケースに端子部材を取り付け、この端子部材が電子部品と基板の固定や部品間接続などに用いられる。
【0006】
電子部品の固定に関し、ケースに設けた突起に取付脚を備えることが知られている(たとえば、特許文献3)。また、アキシャルタイプの電子部品では、ケース両端に金属部材を配置し、各金属部材にリード線を接続して基板との固定および電気的接続を行うことが知られている(たとえば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-145478号公報
【特許文献2】実公昭51-8679号公報
【特許文献3】実開昭55-122334号公報
【特許文献4】実開昭50-106654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、キャパシタ、コンデンサ、電池などの電子部品において、防爆弁が果たす防爆機能は電子部品の動作上、信頼性を確保するために不可欠である。たとえば、アルミケースに形成される防爆弁には、防爆弁の機能範囲やケース内圧を作用させる応力面の肉厚などが影響する。
【0009】
アキシャルタイプの電子部品ではたとえば、ケース側に端子部材を備える必要がある。この端子部材の接続には溶接などの接続方法が一般的である。溶接は、ケース部材や端子部材の接続箇所だけでなくその周囲をも歪みなどを生じさせることが知られている。このため、防爆弁の機能エリアに溶接による応力を作用させると、防爆弁の機能に影響するという課題がある。
【0010】
このような課題に鑑み、防爆弁の機能エリアを縮小すれば、所定の防爆機能が得られないし、防爆弁と溶接箇所を遠ざけることはケース容積を大きくし、電子部品の小型化やコンパクト化を妨げるという課題がある。
【0011】
本開示の発明者は、斯かる課題に鑑み、防爆弁の機能エリアの周囲を強化すれば防爆機能の信頼性を高めることができるし、ケースに接続される端子部材の溶接の影響をも回避できるとの知見を得た。
【0012】
そこで、本開示の目的は、端子部材の接続性、防爆弁の防爆機能の信頼性を高めた電子部品およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本開示の電子部品によれば、素子を収納するケースと、前記ケースに設定された第1ケース面部と、前記第1ケース面部から突出させた第2ケース面部と、前記第1ケース面部と前記第2ケース面部とを繋ぐ立壁部と、前記第2ケース面部に備えて前記ケースの内圧上昇により開弁し、前記ケースから気体を放出させる防爆弁と、
を含んでいる。
【0014】
この電子部品において、さらに、前記ケースに接続される端子部材を含み、この端子部材が少なくとも前記立壁部に溶接されてもよい。
【0015】
この電子部品において、前記端子部材はさらに、前記第1ケース面部に溶接されてもよい。
【0016】
この電子部品において、前記立壁部または前記第1のケース面部が前記第2ケース面部より肉厚であってもよい。
【0017】
この電子部品において、前記第2ケース面部の周縁部が前記立壁部で補強され、さらに前記端子部材との溶接部で補強されてもよい。
【0018】
この電子部品において、前記端子部材と前記立壁部の突合せ長が前記立壁部の周回長の少なくとも4分の1であり、または4分の1以上であってもよい。
【0019】
上記目的を達成するため、本開示の電子部品の製造方法によれば、ケース部材でケースを成形し、このケースに第1ケース面部および第2ケース面部とともに前記第1ケース面部と前記第2ケース面部を繋ぐ立壁部を成形する工程と、前記第2ケース面部に防爆弁を形成する工程とを含んでいる。
【0020】
この電子部品のいずれかの製造方法において、さらに、端子部材を少なくとも前記立壁部に溶接し、または前記立壁部および前記第1ケース面部に溶接する工程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0021】
本開示の電子部品によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) 第1ケース面部と第2ケース面部とを立壁部により連結できるとともに、立壁部に端子部材を接続でき、防爆弁の防爆機能と端子部材との接続性、防爆機能の信頼性、端子部材との接続性を高め、電子部品の信頼性を高めることができる。
【0022】
(2) 立壁部に端子部材をたとえば、レーザー溶接などの溶接によって接続でき、端子部材の接続による防爆弁を含む防爆部への影響を回避でき、端子部材の接続による防爆機能の低下を防止できる。
【0023】
(3) 立壁部に端子部材を接続する場合、ケースに対する端子部材の位置決めを立壁部によって行うことができるとともに、立壁部に端子部材を強固に接続することができる。
【0024】
(4) ケース内の内圧上昇を第2ケース面部側に集中させることができ、内圧上昇に伴う第1ケース面部を含むケースの変形を防止でき、防爆弁を開弁させてケース内から気体を速やかに大気に放出させることができる。
【0025】
(5) 第1ケース面部に端子部材を載置して立壁部に接続でき、第1ケース面部に端子部材を支持させることができ、端子部材の安定性を高めることができる。
【0026】
(6) 端子部材と第1ケース面部との間に隙間を持たせれば、端子部材と立壁部のレーザー溶接時、膨張した空気を放出させることができる。
【0027】
本開示の電子部品の製造方法によれば、既述の(1)~(4)の何れかの効果が得られる電子部品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、一実施の形態に係る蓄電デバイスの一部を切り欠いて示す平面図である。
【
図2】
図2のAは、
図1のIIA-IIA線断面を示す断面図であり、
図2のBは、
図2のAに示すB部の拡大断面図である。
【
図3】
図3は、蓄電デバイスおよび接続前のバスバーを示す図である。
【
図4】
図4は、溶接部の溶接長と溶接強度の関係性を示す図である。
【
図5】
図5のAは、突出底部の直径と防爆弁の膨れ量の関係性を示す図であり、
図5のBは、突出底部の直径と防爆弁の中央部圧力の関係性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔一実施の形態〕
本開示の一実施の形態について、本開示の実施例の符号を参照して説明する。本開示に係る電子部品(蓄電デバイス2)は、ケース4、第1ケース面部(基底部6-1)、第2ケース面部(突出底部6-2)、立壁部6-4および防爆弁10を備える。ケース4は電子部品における素子を収納する部材である。このケース4は、第1ケース面部と第2ケース面部を備える。第2ケース面部は、立壁部6-4の厚みを除く範囲であり、第1ケース面部から突出させている。ケース4の底面部には第1ケース面部および第2ケース面部が含まれる。したがって、端子部材(バスバー12)を載置する機能を持つ第1ケース面部(基底部6-1)と内圧上昇する時のケース変形を集中させる機能を持つ第2ケース面部(突出底部6-2)とが立壁部6-4より分離される。
【0030】
第1ケース面部および第2ケース面部の間には第1ケース面部および第2ケース面部を繋ぐ立壁部6-4が含まれる。この立壁部6-4はたとえば、第1ケース面部および第2ケース面部と交差方向に立設されたケース4の壁部であり、第1ケース面部および第2ケース面部を除いた範囲で特定される(
図2のA)。
【0031】
そして、第2ケース面部には防爆弁が備えられる。この防爆弁は、ケースの内圧上昇により開弁し、ケースから気体を放出させることができる。
【実施例0032】
図1は、一実施例の形態に係る蓄電デバイス2を示している。
図1に示す構成は一例であり、本開示が斯かる構成に限定されるものではない。
【0033】
この蓄電デバイス2は、本開示の電子部品の一例である。この蓄電デバイス2はたとえば、円筒形のケース4を備える。このケース4の底部には基底部6-1および突出底部6-2が同心円状に形成されている。蓄電デバイス2に用いられるケース4は円筒形に限定されない。ケース4の底部が角筒形状など非円形であれば、その底面部にある基底部6-1および突出底部6-2は相似形とすればよい。
【0034】
基底部6-1は本開示の第1ケース面部の一例である。この例では基底部6-1は、その周縁部に円筒状の側壁部6-3を備えている。
【0035】
突出底部6-2は本開示の第2ケース面部の一例であり、基底部6-1から突出している。この突出底部6-2は防爆部8を含むとともに、突出底部6-2の周縁に基底部6-1から軸方向に立ち上がった円筒状の立壁部6-4を備えている。
【0036】
防爆部8は防爆弁10を備えている。この防爆弁10は、ケース4の底面中心Oから特定の角度θ1(たとえば、θ1=120度)で放射状に形成されたY字形溝部である。防爆弁10は、肉薄の溝部であり、ケース4の内圧上昇が閾値を超えたとき、開弁する。つまり、開弁時、防爆弁10にその薄肉の溝部分で断裂を生じ、この断裂で生じた破断片が内圧上昇を受けて捲り上がり、その断裂部からケース4内の気体が放出される。
【0037】
防爆弁10の中心からの長さをL1、防爆部8の防爆面積をS1とすれば、防爆面積S1は式1で表すことができる。この防爆面積S1は主として防爆機能を果たす部分を表している。
【0038】
S1=π×(L1/2)2 ・・・式1
【0039】
立壁部6-4は本開示の立壁部の一例であり、基底部6-1と突出底部6-2とを繋ぐ壁部である。
【0040】
この蓄電デバイス2において、基底部6-1の直径をD1、立壁部6-4の直径をD2とすれば、D1に対するD2の比率(D2/D1、ただし、D2は立壁部6-4の厚みt3が含む。)はたとえば、60%~80%の範囲に設定すればよい。
図1のD1がたとえば、25mmの場合、D2が15~20mmであることが好ましい。つまり、
図5のAからD2は20mm以下がよい。この場合、バスバー12とケース4の接続安定性がよい。
図5のBからD2は15mm以上がよい。この場合、防爆弁10の開弁特性を考慮すれば、防爆弁10の中心部のケース部材(たとえば、アルミ)の応力が低い場合、防爆弁10の開弁動作が低下するおそれがある。
【0041】
そして、この立壁部6-4にはバスバー12が接続されている。このバスバー12は本開示の端子部材の一例である。このバスバー12は、立壁部6-4に溶接部14で溶接され、この溶接にはたとえば、レーザー溶接が用いられる。接続手段としてはレーザー溶接以外の溶接または固着手段であってもよい。
【0042】
バスバー12の幅をW1とすれば、この幅W1の大きさは、防爆弁10に設定された角度θ1、立壁部6-4の直径D2に応じて決定すれば、式2で表すことができる。
【0043】
W1=D2×sin(θ1/2)<D2 ・・・式2
【0044】
この場合、立壁部6-4とバスバー12とを接触させる両者の突合せ長をL2とすれば、この突合せ長L2は、式3で表すことができる。
【0045】
L2=π×D2×θ1÷360 ・・・式3
【0046】
ここで、θ1=120度であれば、突合せ長L2は、式3より次のように表すことができる。
【0047】
L2=π×D2×120÷360=π×D2÷3 ・・・式4
【0048】
したがって、式2に示す幅W1は、θ1=120度の範囲に設定された突合せ長L2を充足させることができる。
【0049】
<
図1のIIA-IIA線断面>
図2のAは、蓄電デバイス2の一部を省略するとともに、
図1のIIA-IIA線断面を示している。
【0050】
立壁部6-4はケース部材の成形により突出底部6-2とともに成形された壁部である。この立壁部6-4は基底部6-1から交差方向(たとえば、垂直方向)に立ち上がっており、突出底部6-2と交差方向(たとえば、垂直方向)に形成され、基底部6-1と突出底部6-2との間に段差を設けている。
【0051】
ケース4には図示しない素子が収納される。バスバー12は陰極側の端子部を構成し、ケース4の封口部16側には、陽極側に端子部18が配置されている。
【0052】
立壁部6-4で包囲された凹部の直径をD3とすると、直径D3は突出底部6-2の直径D2、立壁部6-4の厚みt3を用いて式5に表すことができる。
【0053】
D3=D2-t3×2 ・・・・式5
【0054】
立壁部6-4で包囲された凹部内に設定された受圧面積をS2とすると、この受圧面積S2は、式6で表すことができる。
【0055】
S2=π×(D3÷2)2
=π×{D2÷2-t3}2>S1 ・・・式6
【0056】
したがって、立壁部6-4で包囲された受圧面積S2に対し、ケース4内の圧力を作用させることができる。
【0057】
<溶接部14>
溶接部14では、立壁部6-4にバスバー12が溶接されているとともに、この実施の形態では溶接ナゲット20がバスバー12、立壁部6-4および基底部6-1の3部材に波及しており、バスバー12は基底部6-1とも溶接されている。
【0058】
基底部6-1の厚みをt1、突出底部6-2および防爆部8の厚みをt2、立壁部6-4の厚みをt3、立壁部6-4のうち間隔部の高さをd(≧0)、立壁部6-4の高さをh、防爆弁10の厚みをt4、バスバー12の厚みをt5とすれば、次のような大小関係にある。
【0059】
t3>t1、t1=t3またはt1≒t3
t1、t3>t2>t4
h=t1+t2+d
h>t5+t1、h=t5+t1またはh≒t5+t1
このように立壁部6-4は、基底部6-1と同等以上の肉厚に設定され、突出底部6-2ないし防爆部8の周囲部を補強している。
【0060】
<
図2のAのB部>
図2のBは、
図2のAのB部を拡大して示している。溶接部14には溶接ナゲット20が形成されている。溶接ナゲット20は、バスバー12と立壁部6-4の突合せ部に対するレーザー照射で生じたバスバー12、立壁部6-4および基底部6-1の溶融金属の硬化部である。この例では、レーザー照射を受けたバスバー12および立壁部6-4が溶接され、溶接ナゲット20が基底部6-1に波及してバスバー12および立壁部6-4の溶接とともに基底部6-1にも溶接されている。
【0061】
<溶接前の蓄電デバイス2のおよびバスバー12>
図3は、溶接前の蓄電デバイス2の一部およびバスバー12を示している。バスバー12には、突出底部6-2の立壁部6-4に嵌合させるための嵌合部22が形成されている。この嵌合部22は、立壁部6-4と共通の曲率からなる円弧面を備えている。
【0062】
バスバー12は矢印mで示すように、ケース4の立壁部6-4に嵌合部22を嵌合させ、これらの突合せ面に沿ってレーザーを照射し、溶接部14(
図1)が形成される。
【0063】
この嵌合部22が備える立壁部6-4との突合せ長をL2、たとえば、角度θ1=120度とすれば、この突合せ長L2は前記式4で表すことができる。
【0064】
嵌合部22が立壁部6-4と接触する突合せ面積をS3とすると、この突合せ面積S3は、θ1=120度の場合、突合せ長L2およびバスバー12の厚みt5を用いて式7で表すことができる。
【0065】
S3=L2×t5=(π×D2÷3)×t5 ・・・式7
【0066】
そして、溶接部14の溶接長をL3(
図1)、溶接部14の角度をθ2とすれば、この溶接長L3は式8で表すことができる。
【0067】
L3=π×D2×θ2÷360<L2 ・・・式8
【0068】
図示の蓄電デバイス2では突合せ長L2より溶接長L3は短く(L2>L3)設定し、突合せ長L2は溶接長L3より長く設定しているが、同一(L2=L3)またはほぼ同一(L2≒L3)としてもよい。
【0069】
<蓄電デバイス2の製造工程>
バスバー12を含む蓄電デバイス2の製造工程は本開示の電子部品の製造方法の一例である。この製造工程には、ケース4の成形工程、防爆弁10の形成工程、バスバー12の接続工程が含まれる。
【0070】
ケース4の成形工程には、アルミニウムなどの金属材料からなるケース部材でケース4を成形する工程、ケース4に基底部6-1および突出底部6-2を成形する工程が含まれる。この工程には、基底部6-1とともに側壁部6-3を成形する工程、基底部6-1と突出底部6-2との間に立壁部6-4を成形する工程が含まれる。
【0071】
防爆弁10の形成工程には突出底部6-2に対して防爆弁10を形成する工程が含まれる。防爆弁10の形成工程は突出底部6-2の成形工程と同時であってもよい。
【0072】
バスバー12の接続工程には立壁部6-4にバスバー12を溶接する工程が含まれる。この溶接工程にはバスバー12と立壁部6-4の溶接により、その溶接部14に成長する溶接ナゲット20が基底部6-1に波及する工程が含まれる。
【0073】
<レーザー溶接>
レーザー溶接は、ケース4の立壁部6-4と嵌合させたバスバー12の嵌合部22の突合せ面に沿ってレーザーを照射すればよい。レーザー照射は目的とする溶接長L3の範囲で行えばよく、立壁部6-4およびバスバー12の円弧面に沿って行えばよい。
【0074】
<一実施例の効果>
この一実施の形態によれば、次の何れかの効果が得られる。
【0075】
(1) 基底部6-1および突出底部6-2と立壁部6-4による分離性
ケース4の底面部に基底部6-1とともに突出底部6-2が成形され、基底部6-1に対して突出底部6-2が立壁部6-4によって分離されており、基底部6-1と突出底部6-2および立壁部6-4の分離性を高めることができる。立壁部6-4とバスバー12とを接続する溶接部14が立壁部6-4側に集中させることができ、突出底部6-2と溶接部14とを分離させることができる。
【0076】
防爆部8に対して立壁部6-4のケース部材の厚みを厚く設定でき、防爆部8とバスバー12との接続とを分離できる。
【0077】
(2) ケース4の底面部の強化
ケース4の底面部に基底部6-1に対して立壁部6-4とともに突出底部6-2が突出しており、これらによりケース4の底面部を強化できる。
【0078】
(3) 突出底部6-2の防護性
突出底部6-2は基底部6-1から立ち上がる立壁部6-4を以て補強されるので、突出底部6-2の防護性を高めることができる。突出底部6-2には防爆弁10を含む防爆部8が形成されており、これらを防護することができる。
【0079】
(4) 防爆機能の強化
突出底部6-2に形成されている防爆弁10を含む防爆部8は、その周囲部が環状の立壁部6-4で防護されているので、防爆弁10を含む防爆部8の防爆機能を防護し、防護機能を強化することができる。
【0080】
(5) 防爆部8を除くケース4の変形抑止
突出底部6-2はケース4の底面部から外部に突出しており、ケース4の内圧上昇を防爆部8に集中させることができ、防爆機能を高めることができる。このため、ケース4の内圧上昇を突出底部6-2側にガイドして防爆部8側に作用させることができるので、防爆部8以外のケース4側の変形を防止できる。
【0081】
(6) 立壁部6-4の強化
立壁部6-4にはバスバー12がたとえば、溶接によって接続されるので、このバスバー12との接続により立壁部6-4を強化できる。
【0082】
(7) バスバー12の位置決め性
立壁部6-4に対して嵌合部22を嵌合させることで、立壁部6-4に対してバスバー12を容易に位置決めすることができる。つまり、バスバー12の中心線を立壁部6-4の中心に合致させることができ、バスバー12の立壁部6-4の円周方向の位置を決定することができ、突出底部6-2に対するバスバー12の位置決め精度を高めることができる。
【0083】
(8) 立壁部6-4とバスバー12の接続強化
溶接ナゲット20を立壁部6-4と同一方向に成長させることができ、立壁部6-4とバスバー12の接続強化を図ることができるとともに、突出底部6-2にある防爆部8に対する溶接の影響を回避できる。立壁部6-4とバスバー12の接続は突合せ溶接、バスバー12と基底部6-1とは重ね溶接を併用させることができ、バスバー12のケース4に対する接続を強化することができる。
【0084】
(9) 立壁部6-4とバスバー12の溶接の簡易化
立壁部6-4にバスバー12の嵌合部22を嵌合させ、この嵌合部22に沿ってレーザーを照射すればよく、溶接作業を容易化できるとともに、立壁部6-4とバスバー12の接続の信頼性を高めることができる。
【0085】
(10) バスバー12のケース4に対する溶接の選択性
バスバー12の溶接で形成される溶接ナゲット20は立壁部6-4に成長させ、さらには立壁部6-4および基底部6-1に成長させることができる。したがって、バスバー12とケース4の溶接は少なくともバスバー12と立壁部6-4の溶接、バスバー12と立壁部6-4および基底部6-1の溶接が可能である。好ましくは、バスバー12と立壁部6-4の溶接でよく、より好ましくは、バスバー12と立壁部6-4および基底部6-1の溶接でもよい。基底部6-1の厚みt1を立壁部6-4の厚みt3と同等にしておけば、溶接による穿孔を回避することができる。
【0086】
(11) 基底部6-1によるバスバー12の支持性
第1ケース面部に端子部材を載置して立壁部に接続でき、第1ケース面部に端子部材を支持させることができ、端子部材の安定性を高めることができる。
【0087】
(12) レーザー溶接時の膨張空気の放出
バスバー12と基底部6-1との間に隙間を持たせれば、バスバー12と立壁部6-4のレーザー溶接時、膨張した空気を放出させることができる。
【0088】
<溶接長L3と溶接強度の関係性>
図4は、溶接長L3と溶接強度の関係性を示す図である。
【0089】
溶接長L3と溶接強度の関係性について、実験により確認した。この実験では、バスバー12の幅W1を任意に変更し、溶接長L3=4~20〔mm〕に設定した場合の溶接部14が持つ溶接強度を測定した。
【0090】
この実験によれば、
図4に示すように、溶接長L3:L3=4~20〔mm〕に対し、溶接強度として12.5〔mm〕で500〔N〕が得られた。この実験結果から溶接長L3の増加にしたがって高い溶接強度が得られた。この実験結果から、L3=12.5〔mm〕以上に設定すれば、高い溶接強度が得られることが確認された。
【0091】
<突出底部6-2の直径D2と防爆弁10の膨れ量の関係性>
図5のAは、突出底部6-2の直径D2と防爆弁10の膨れ量の関係性を示す図である。
【0092】
突出底部6-2の直径D2と防爆弁10の膨れ量の関係性について、実験により確認した。この実験では、突出底部6-2の直径D2をD2=12~24〔mm〕に設定されたケース4に1.8〔MPa〕を印加した際の防爆弁10の膨れ量を測定した。
【0093】
この実験によれば、
図5のAに示すように、突出底部6-2の直径D2をD2=12~24〔mm〕に対し、防爆弁10の膨れ量〔mm〕が測定された。この実験結果から突出底部6-2の直径D2の増加に従って防爆弁10に二次関数様の膨れ量〔mm〕が得られた。この実験結果から、想定されるケース内圧力=1.8〔MPa〕では突出底部6-2の直径D2=20〔mm〕以下であれば、防爆弁10の膨れ量〔mm〕は許容値であることが確認された。
【0094】
<突出底部6-2の直径D2と防爆弁10の中央部圧力の関係性>
図5のBは、突出底部6-2の直径D2と防爆弁10の中央部圧力の関係性を示す図である。
【0095】
突出底部6-2の直径D2と防爆弁10の中央部圧力の関係性について、実験により確認した。この実験では、突出底部6-2の直径D2をD2=12~18〔mm〕に設定されたケース4に1.8〔MPa〕を印加した際の防爆弁10の中央部圧力を測定した。
【0096】
この実験によれば、
図5のBに示すように、突出底部6-2の直径D2をD2=12~18〔mm〕に対し、防爆弁10の中央部部材(アルミ)の応力が測定された。この実験結果から突出底部6-2の直径D2の増加に従って防爆弁10の中央部圧力が二次関数様に増加することが確認された。この実験結果から、想定されるケース内圧力=1.8〔MPa〕では突出底部6-2の直径D2=15〔mm〕以上であれば、防爆弁10を動作するに必要な中央部圧力が確認された。
【0097】
〔他の実施の形態〕
(1) バスバー12の幅W1
一実施の形態ではバスバー12の幅W1が防爆弁10の角度θに対応した幅に設定されているが、防爆弁10の角度θと無関係に設定してもよい。
【0098】
このバスバー12の幅W1は、突出底部6-2、立壁部6-4の直径D2に無関係に任意の幅に設定してよい。
【0099】
(2) バスバー12の形態
バスバー12の形態について、一実施の形態では平板状であるが、L字形に折り曲げられた形態でもよい。
【0100】
バスバー12の嵌合部22は、立壁部6-4の周面に合致する円弧面部で形成しているが、立壁部6-4に嵌合させる円筒状またはリング状であってもよい。
【0101】
(3) 側壁部6-3の形態
側壁部6-3は、突出底部6-2の底面ないしバスバー12と一致させているが、突出底部6-2またはバスバー12の面部から側壁部6-3を突出させてもよい。
【0102】
(4) 防爆弁10の形態
一実施の形態ではY字形に形成しているが、-形状、X字形状、+形状、複数の溝部を中心から放射状に形成した形態など、何れでもよい。
【0103】
(5) 蓄電デバイス2など、電子部品の形態
一実施の形態では蓄電デバイス2にアキシャルタイプを例示しているが、本開示はラジアルタイプの蓄電デバイスなどの電子部品であってもよい。
【0104】
以上説明したように、本開示の最も好ましい蓄電デバイスの実施形態等について説明したが、本開示は上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または明細書に開示された本開示の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本開示の範囲に含まれることは言うまでもない。
本開示の電子部品およびその製造方法は、第1ケース面部である基底部6-1と第2ケース面部である突出底部6-2とに繋がった立壁部6-4を備え、この立壁部6-4に端子部材であるバスバー12を接続でき、防爆弁の防爆機能と端子部材との接続性、防爆機能の信頼性を高めることができるなど、有用である。