IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-制御方法及び測色装置 図1
  • 特開-制御方法及び測色装置 図2
  • 特開-制御方法及び測色装置 図3
  • 特開-制御方法及び測色装置 図4
  • 特開-制御方法及び測色装置 図5
  • 特開-制御方法及び測色装置 図6
  • 特開-制御方法及び測色装置 図7
  • 特開-制御方法及び測色装置 図8
  • 特開-制御方法及び測色装置 図9
  • 特開-制御方法及び測色装置 図10
  • 特開-制御方法及び測色装置 図11
  • 特開-制御方法及び測色装置 図12
  • 特開-制御方法及び測色装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126929
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】制御方法及び測色装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/50 20060101AFI20240912BHJP
   G01J 3/06 20060101ALI20240912BHJP
   G01J 3/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G01J3/50
G01J3/06
G01J3/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035700
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】宮川 正好
(72)【発明者】
【氏名】森山 雅英
(72)【発明者】
【氏名】林 徹
【テーマコード(参考)】
2G020
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020DA15
2G020DA24
2G020DA36
2G020DA43
(57)【要約】
【課題】測色対象物に対する測色器の高さが所望の高さからズレることを抑制する。
【解決手段】測色対象物10を支持する支持台41と、測色対象物10と接触した状態で測色対象物10を測色する測色部122を有する測色器100と、測色器100を支持するキャリッジ30と、支持台41上においてキャリッジ30を走査する走査機構部20と、を備える測色装置1の制御方法であって、キャリッジ30を測色対象物10から高さ方向に移動させることで、測色部122が測色対象物10に接触した状態から測色部122を測色対象物10から離間させ、高さ方向においてキャリッジ30と測色対象物10との間隔が異なる複数の位置で測色部122により測色を行う測色工程と、測色工程での測色結果に基づいて、高さ方向におけるキャリッジ30の設定位置を決定するための調整値を算出する算出工程と、を含む。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測色対象物を支持する支持台と、
前記測色対象物と接触した状態で前記測色対象物を測色する測色部を有する測色器と、
前記測色器を支持するキャリッジと、
前記支持台上において前記キャリッジを走査する走査機構部と、
を備える測色装置の制御方法であって、
前記キャリッジを前記測色対象物から高さ方向に移動させることで、前記高さ方向において前記キャリッジと前記測色対象物との間隔が異なる複数の位置で前記測色部により測色を行う測色工程と、
前記測色工程での測色結果に基づいて、前記高さ方向における前記キャリッジの設定位置を決定するための調整値を算出する算出工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の制御方法において、
前記算出工程において、前記測色工程で前記測色器が測色した測色値が所定の閾値を超えたときの前記キャリッジの前記測色対象物からの高さを比較値とし、前記比較値と基準値との差分に基づいて前記調整値を算出することを特徴とする制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の制御方法において、
前記測色工程は、前記高さ方向から見て前記測色部が前記測色対象物の中央位置に位置した状態で行われることを特徴とする制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載の制御方法において、
前記測色工程は、前記測色対象物の所定位置において複数回行われ、
前記算出工程は、複数回行われた前記測色工程での測色結果の平均値に基づいて、前記調整値を算出することを特徴とする制御方法。
【請求項5】
請求項1に記載の制御方法において、
前記測色工程は、前記測色対象物の少なくとも2か所以上で行われ、
前記算出工程は、2か所以上で行われた前記測色工程での測色結果の平均値に基づいて、前記調整値を算出することを特徴とする制御方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御方法において、
前記測色装置は、各々が識別情報を有する複数種類の前記測色器を使用可能であるとともに、前記識別情報を記憶可能な記憶部を備え、
前記測色器のうちの前記キャリッジに支持された第1測色器が有する前記識別情報のうちの第1識別情報を取得する取得工程と、
前記第1識別情報が前記記憶部に記憶されている前記識別情報と一致するか否かを判定する判定工程と、
を含み、
前記第1識別情報が前記記憶部に記憶されている前記識別情報と一致しないと前記判定工程において判定された場合、前記記憶部に前記取得工程で取得した前記第1識別情報を記憶させる記憶工程を行うとともに、前記算出工程を行うことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の制御方法において、
前記第1識別情報が前記記憶部に記憶されている前記識別情報と一致すると前記判定工程において判定された場合、前記記憶工程及び前記算出工程を行わないことを特徴とする制御方法。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御方法において、
前記キャリッジの設定位置は、前記測色対象物を測色する際の前記高さ方向における前記キャリッジの位置であることを特徴とする制御方法。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御方法において、
前記測色装置は、前記測色対象物に形成された複数のパッチについて前記キャリッジを走査することを繰り返して前記測色器で測色可能に構成され、
前記キャリッジの設定位置は、複数の前記パッチの位置に対応する第1測色位置から第2測色位置への前記キャリッジの走査において前記測色器を移動させる際の前記高さ方向における前記キャリッジの位置であることを特徴とする制御方法。
【請求項10】
測色対象物を支持する支持台と、
前記測色対象物と接触した状態で前記測色対象物を測色する測色部を有する測色器と、
前記測色器を支持するキャリッジと、
前記支持台上において前記キャリッジを走査する走査機構部と、
前記測色器と前記キャリッジと前記走査機構部とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記キャリッジを前記測色対象物から高さ方向に移動させることで、前記高さ方向において前記キャリッジと前記測色対象物との間隔が異なる複数の位置で前記測色部により測色を行い、
前記測色部の測色結果に基づいて、前記高さ方向における前記キャリッジの設定位置を決定するための調整値を算出することを特徴とする測色装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御方法及び測色装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測色対象物を測色する様々な測色装置が使用されている。例えば、特許文献1には、被測定物を測色する測色計が取り付けられる自動測色装置が開示されている。特許文献1の自動測色装置は、測色部である測色計が測色対象物である被測定物に対して非接触の状態で測色する測色装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-212001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の自動測色装置のような測色部が測色対象物に対して非接触の状態で測色する測色装置においては、測色部と測色対象物との隙間から外光が入り込み、測色精度が低下する虞がある。このため、測色対象物と接触した状態で測色対象物を測色する測色部を有する測色器を使用することが考えられる。しかしながら、このような構成の測色装置においても、測色器の製造公差のばらつきなどから、測色対象物に対して測色器が浮き上がるなどし、測色対象物に対する測色器の高さが所望の高さからズレると測色精度が低下する場合がある。また、例えば、測色対象物に形成された複数のパッチについて測色可能な測色装置においては、測色対象物と測色部との接触を抑制するために測色器を複数のパッチ間で移動する際に測色対象物と測色部との離間距離を長くすると測色時間が増加する虞がある。なお、特許文献1には、測色計の高さ方向調整に関する具体的構造の記載が無い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための、本発明の制御方法は、測色対象物を支持する支持台と、前記測色対象物と接触した状態で前記測色対象物を測色する測色部を有する測色器と、前記測色器を支持するキャリッジと、前記支持台上において前記キャリッジを走査する走査機構部と、を備える測色装置の制御方法であって、前記キャリッジを前記測色対象物から高さ方向に移動させることで、前記高さ方向において前記キャリッジと前記測色対象物との間隔が異なる複数の位置で前記測色部により測色を行う測色工程と、前記測色工程での測色結果に基づいて、前記高さ方向における前記キャリッジの設定位置を決定するための調整値を算出する算出工程と、を含むことを特徴とする。
【0006】
また、上記課題を解決するための、本発明の測色装置は、測色対象物を支持する支持台と、前記測色対象物と接触した状態で前記測色対象物を測色する測色部を有する測色器と、前記測色器を支持するキャリッジと、前記支持台上において前記キャリッジを走査する走査機構部と、前記測色器と前記キャリッジと前記走査機構部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記キャリッジを前記測色対象物から高さ方向に移動させることで、前記高さ方向において前記キャリッジと前記測色対象物との間隔が異なる複数の位置で前記測色部により測色を行い、前記測色部の測色結果に基づいて、前記高さ方向における前記キャリッジの設定位置を決定するための調整値を算出することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例に係る測色装置で使用可能な測色器の概略斜視図。
図2】本発明の一実施例に係る測色装置の斜視図。
図3】本発明の一実施例に係る測色装置の内部構成を表す斜視図。
図4】本発明の一実施例に係る測色装置のキャリッジ周辺を表す底面図であって、図1の測色器を収容した状態を表す図。
図5】本発明の一実施例に係る測色装置のキャリッジ周辺を表す背面図であって、図1の測色器を収容するとともにキャリッジを走査する際の配置を表す図。
図6】本発明の一実施例に係る測色装置のキャリッジ周辺を表す背面図であって、図1の測色器を収容するとともに図5の状態からキャリッジを下方に移動させて測色部が測色対象物と接触した瞬間の配置を表す図。
図7】本発明の一実施例に係る測色装置のキャリッジ周辺を表す背面図であって、図1の測色器を収容するとともに図6の状態からキャリッジをさらに下方に移動させて測色対象物の測色をする際の配置を表す図。
図8】本発明の一実施例に係る測色装置のキャリッジ周辺を表す背面図であって、図1の測色器を収容するとともに図7の状態からキャリッジをさらに下方に移動させてキャリッジの底面が測色対象物と接触した配置を表す図。
図9】本発明の一実施例に係る測色装置のキャリッジ周辺を表す背面図であって、図1の測色器を収容するとともにキャリッジをホームポジションに移動させた状態の配置を表す図。
図10】本発明の一実施例に係る測色装置を使用して行う制御方法の一例であって、高さ方向におけるキャリッジの設定位置を決める際のフローを表すフローチャート。
図11】キャリッジを測色対象物に接触した状態で測色した測色値に対するキャリッジを上昇させていった際の測色値の色差を表すグラフ。
図12】本発明の一実施例に係る測色装置を使用して行う制御方法の一例であって、図10のフローチャートのフローを実行する前に行う測色対象物の高さ方向の厚みを測定するフローを表すフローチャート。
図13】本発明の一実施例に係る測色装置を使用して行う制御方法の一例であって、使用する測色器を変更した際のフローを表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様の制御方法は、測色対象物を支持する支持台と、前記測色対象物と接触した状態で前記測色対象物を測色する測色部を有する測色器と、前記測色器を支持するキャリッジと、前記支持台上において前記キャリッジを走査する走査機構部と、を備える測色装置の制御方法であって、前記キャリッジを前記測色対象物から高さ方向に移動させることで、前記高さ方向において前記キャリッジと前記測色対象物との間隔が異なる複数の位置で前記測色部により測色を行う測色工程と、前記測色工程での測色結果に基づいて、前記高さ方向における前記キャリッジの設定位置を決定するための調整値を算出する算出工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、キャリッジを測色対象物から高さ方向に移動させることで、高さ方向においてキャリッジと測色対象物との間隔が異なる複数の位置で測色部により測色を行い、その測色結果に基づいて高さ方向におけるキャリッジの設定位置を決定するための調整値を算出する。すなわち、使用する測色器ごとに、例えば、測色対象物を測色する際の高さ方向におけるキャリッジの位置や、複数のパッチ間で測色器を移動させる際の高さ方向におけるキャリッジの位置など、好ましいキャリッジの設定位置を決定することができる。したがって、測色対象物に対する測色器の高さが所望の高さからズレることを抑制することができる。
【0010】
次に、第2の態様の制御方法は、第1の態様に従属する態様であって、前記算出工程において、前記測色工程で前記測色器が測色した測色値が所定の閾値を超えたときの前記キャリッジの前記測色対象物からの高さを比較値とし、前記比較値と基準値との差分に基づいて前記調整値を算出することを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、測色工程で測色器が測色した測色値が所定の閾値を超えたときのキャリッジの測色対象物からの高さを比較値とし、比較値と基準値との差分に基づいて調整値を算出する。比較値が基準値そのものとなったときのキャリッジの高さから設定位置を決定するとすると測色対象物や測色器などの製造公差などにより測色対象物から測色器が浮き上がる虞が生じるが、比較値に補正を行った値に基づいて設定位置を決定することでこのような虞を低減することができる。すなわち、測色対象物に対する測色器の高さが所望の高さからズレることを効果的に抑制することができる。
【0012】
次に、第3の態様の制御方法は、第1または第2の態様に従属する態様であって、前記測色工程は、前記高さ方向から見て前記測色部が前記測色対象物の中央位置に位置した状態で行われることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、測色工程は高さ方向から見て測色部が測色対象物の中央位置に位置した状態で行われる。測色対象物の中央位置は測色対象物の平均の平面度である場合が多いので、このような制御方法とすることで、測色対象物に対する測色器の高さが所望の高さからズレることを効果的に抑制することができる。
【0014】
次に、第4の態様の制御方法は、第1から第3のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記測色工程は、前記測色対象物の所定位置において複数回行われ、前記算出工程は、複数回行われた前記測色工程での測色結果の平均値に基づいて、前記調整値を算出することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、測色工程は測色対象物の所定位置において複数回行われ、算出工程は複数回行われた測色工程での測色結果の平均値に基づいて調整値を算出する。このように測色工程を複数回行うことで、正確な調整値を算出することができ、測色対象物に対する測色器の高さが所望の高さからズレることを効果的に抑制することができる。
【0016】
次に、第5の態様の制御方法は、第1から第4のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記測色工程は、前記測色対象物の少なくとも2か所以上で行われ、前記算出工程は、2か所以上で行われた前記測色工程での測色結果の平均値に基づいて、前記調整値を算出することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、測色工程は測色対象物の少なくとも2か所以上で行われ、算出工程は2か所以上で行われた測色工程での測色結果の平均値に基づいて調整値を算出する。測色対象物は平面度が不均一な場合があるが、このような制御方法とすることで、測色対象物に対する測色器の高さが所望の高さからズレることを効果的に抑制することができる。
【0018】
次に、第6の態様の制御方法は、第1から第5のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記測色装置は、各々が識別情報を有する複数種類の前記測色器を使用可能であるとともに、前記識別情報を記憶可能な記憶部を備え、前記測色器のうちの前記キャリッジに支持された第1測色器が有する前記識別情報のうちの第1識別情報を取得する取得工程と、前記第1識別情報が前記記憶部に記憶されている前記識別情報と一致するか否かを判定する判定工程と、を含み、前記第1識別情報が前記記憶部に記憶されている前記識別情報と一致しないと前記判定工程において判定された場合、前記記憶部に前記取得工程で取得した前記第1識別情報を記憶させる記憶工程を行うとともに、前記算出工程を行うことを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、第1識別情報が記憶部に記憶されている識別情報と一致しないと判定工程において判定された場合、記憶部に取得工程で取得した第1識別情報を記憶させる記憶工程を行うとともに、算出工程を行う。このような制御方法とすることで、新たに使用する測色器毎に算出工程を行うか否かを判定できるので、これまで使用したことがない測色器が取り付けられた場合であっても、測色対象物に対する測色器の高さが所望の高さからズレることを抑制することができる。
【0020】
次に、第7の態様の制御方法は、第6の態様に従属する態様であって、前記第1識別情報が前記記憶部に記憶されている前記識別情報と一致すると前記判定工程において判定された場合、前記記憶工程及び前記算出工程を行わないことを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、第1識別情報が記憶部に記憶されている識別情報と一致すると判定工程において判定された場合、記憶工程及び算出工程を行わない。このような制御方法とすることで、これまで使用したことがある測色器が取り付けられた場合に、キャリッジの設定位置を決定するフローを省略することができる。これにより、キャリッジの設定位置を決定するフローに掛かる時間を短縮することができる。
【0022】
次に、第8の態様の制御方法は、第1から第7のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記キャリッジの設定位置は、前記測色対象物を測色する際の前記高さ方向における前記キャリッジの位置であることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、キャリッジの設定位置は、測色対象物を測色する際の高さ方向におけるキャリッジの位置である。このため、測色対象物を測色する際の高さ方向におけるキャリッジの位置が所望の高さからズレることを効果的に抑制することができる。
【0024】
次に、第9の態様の制御方法は、第1から第7のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記測色装置は、前記測色対象物に形成された複数のパッチについて前記キャリッジを走査することを繰り返して前記測色器で測色可能に構成され、前記キャリッジの設定位置は、複数の前記パッチの位置に対応する第1測色位置から第2測色位置への前記キャリッジの走査において前記測色器を移動させる際の前記高さ方向における前記キャリッジの位置であることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、キャリッジの設定位置は、複数のパッチの位置に対応する第1測色位置から第2測色位置へのキャリッジの走査において測色器を移動させる際の高さ方向におけるキャリッジの位置である。このため、複数のパッチ間で測色器を移動させる際の高さ方向におけるキャリッジの位置が所望の高さからズレることを効果的に抑制することができる。
【0026】
次に、第10の態様の測色装置は、測色対象物を支持する支持台と、前記測色対象物と接触した状態で前記測色対象物を測色する測色部を有する測色器と、前記測色器を支持するキャリッジと、前記支持台上において前記キャリッジを走査する走査機構部と、前記測色器と前記キャリッジと前記走査機構部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記キャリッジを前記測色対象物から高さ方向に移動させることで、前記高さ方向において前記キャリッジと前記測色対象物との間隔が異なる複数の位置で前記測色部により測色を行い、前記測色部の測色結果に基づいて、前記高さ方向における前記キャリッジの設定位置を決定するための調整値を算出することを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、キャリッジを測色対象物から高さ方向に移動させることで、高さ方向においてキャリッジと測色対象物との間隔が異なる複数の位置で測色部により測色を行い、その測色結果に基づいて高さ方向におけるキャリッジの設定位置を決定するための調整値を算出する。すなわち、使用する測色器ごとに、例えば、測色対象物を測色する際の高さ方向におけるキャリッジの位置や、複数のパッチ間で測色器を移動させる際の高さ方向におけるキャリッジの位置など、好ましいキャリッジの設定位置を決定することができる。したがって、測色対象物に対する測色器の高さが所望の高さからズレることを抑制することができる。
【0028】
以下、本発明を具体的に説明する。
なお、各図に示すX-Y-Z座標系は直交座標系であり、X-Y平面が水平面であり、X-Z平面及びY-Z平面が垂直面となる。ここで、Z軸方向は鉛直方向すなわち高さ方向であって、+Z方向が鉛直上方向、-Z方向が鉛直下方向である。また、X軸方向は鉛直方向であるZ軸方向と直交する水平方向である。また、Y軸方向は水平方向であるとともにX軸方向及びZ軸方向のいずれとも直交する方向である。なお、以下の説明では、測色装置1の+Y方向側を背面方向側、測色装置1の-Y方向側を正面方向側、測色装置1の+X方向側を右方向側、測色装置1の-X方向側を左方向側としている。
【0029】
最初に、図1を参照して、本発明の一実施例の測色装置1で使用可能な測色器100の一実施例について説明する。本実施例の測色器100は、測色口106を備え、測色口106から-Z方向に光を照射して、図2で表されるような測色対象物であるカラーチャート10により反射された光を受光することで測色する光学装置である。別の表現をすると、光軸方向はZ軸方向であり、光軸の位置は測色口106の位置に対応する。
【0030】
本実施例の測色器100は、+Z方向側の面である上面121、-Z方向側の底面であって測色口106が設けられた測色面122、+Y方向側の面である背面123、-Y方向側の面である前面124、+X方向側の面である右側面125、-X方向側の面である左側面126、を有する筐体120を備えている。
【0031】
上面121には、操作部110と画面部105とがY軸方向に沿って配置されている。詳細には、上面121の+Y方向側に操作部110が設けられ、上面121の-Y方向側に画面部105が設けられている。操作部110は、Y軸方向に沿って延設されるバー形状111aとX軸方向に沿って延設されるバー形状111bとからなるプラス形ボタン111と、プラス形ボタン111の中心に設けられた決定ボタン112と、を備えている。例えば、ユーザーは、画面部105に表示される複数のメニューに対して、プラス形ボタン111を押すことで前後左右にアクティブとなるメニューを移動させ、決定ボタン112を押すことで所望のメニューを決定することができる。
【0032】
背面123には、図1などで表されるUSBケーブル50を接続することが可能な端子101が形成されている。また、本実施例の測色器100は、Y軸方向に沿って見たときに外側に向かって凸状となる凸部127及び凸部128が設けられている。詳細には、凸部127は右側面125におけるZ軸方向の中央部よりも+Z方向側の領域に設けられており、凸部128は左側面126におけるZ軸方向の中央部よりも+Z方向側の領域に設けられている。
【0033】
次に、図2から図9を参照して、本発明の一実施例の測色装置1の詳細な構成について説明する。図2は、本実施例の測色装置1の構成を表している。測色装置1は、X軸方向及びY軸方向に延設される支持台41を有する本体部40を備え、また、支持台41の一部を+Z方向側から覆うようにY軸方向に延設されるガントリー20を備えている。
【0034】
ガントリー20には、測色器100を収容可能なキャリッジ30が取り付けられる。ガントリー20は支持台41に対してX軸方向に沿って移動可能であり、キャリッジ30はガントリー20に対してY軸方向に沿って移動可能である。これらの移動は、走査とも呼ばれる。ここで、キャリッジ30は、ガントリー20に対してY軸方向に沿って移動可能であるとともに、ガントリー20に対してZ軸方向に沿って移動することも可能である。ガントリー20にはUSBケーブル50の一端が接続されるとともに、USBケーブル50の他端はキャリッジ30に収容された測色器100に接続される。
【0035】
支持台41には測定対象物の一例であるカラーチャート10を載置可能であり、カラーチャート10は例えば複数のカラーパッチ11と黒枠12等で構成される。カラーチャート10は、例えば粘着テープをカラーチャート10の周囲に貼り付けることで支持台41に固定され、例えばA3サイズまでの自動測色に対応している。ただし、ガントリー20はX軸方向から見て門形状となっており該門形状に対応する空間部21を有するので、X軸方向においてA3サイズを超えるような長尺紙も支持台41に載置することが可能である。
【0036】
なお、本体部40の-Y方向側には支持台41よりも-Z方向側に下がった位置にフロント面42が設けられ、本体部40の+Y方向側には支持台41よりも-Z方向側に下がった位置にリア面43が設けられている。そして、フロント面42には、測色装置1の操作部の一例である電源ボタン42aが設けられている。
【0037】
図3は、測色装置1の内部構成を表し、図2の外装部品を外した図である。ケースロア48の上方である+Z方向側にはフロントフレーム44とリアフレーム45が間隔を空けてX軸方向に延設されるように配置されており、ガントリー20の一部を構成する門形状をしたガントリーフレーム26がフロントフレーム44及びリアフレーム45に沿ってX軸方向に沿って移動する。
【0038】
フロントフレーム44とリアフレーム45とは本体部40の+X方向側の位置で連結軸46によって連結されており、ガントリー20をX軸方向に沿って移動させるための動力源であるガントリーモーター47から不図示の歯車群を介して連結軸46にガントリーモーター47の回転駆動が伝わる。そして、連結軸46に伝わった回転駆動により、連結軸46の-Y方向側であるフロントフレーム44側に設けられた不図示のプーリーに架けられた不図示の無端ベルトと、連結軸46の+Y方向側であるリアフレーム45側に設けられた不図示のプーリーに架けられた不図示の無端ベルトと、を周回させ、これらの無端ベルトに接続されたガントリーフレーム26を移動させる。
【0039】
ガントリーフレーム26の-Y方向側に対応する手前側にはキャリッジモーター22が固定されており、手前プーリー24と奥プーリー25に掛けられた無端状のキャリッジベルト23が、キャリッジモーター22に接続される手前プーリー24を介して周回する。キャリッジ30の一部を構成するキャリッジスライダー31は、キャリッジベルト23に固定されており、キャリッジモーター22の周回動作に伴うキャリッジベルト23の周回動作に伴ってY軸方向に沿って移動する。なお、本体部40の内部には、制御部としてのメイン基板52及びサブ基板53や、電源ボックス51などが設けられている。なお、制御部としてのメイン基板52には、情報を記憶することが可能な不揮発性の記憶部52aが設けられている。
【0040】
図4は測色器100をキャリッジ30に取り付けた状態におけるキャリッジ30周辺を表す底面図である。測色器100は、キャリッジ30に対して、キャリッジ30に設けられたリブ301でY軸方向において右側面125及び左側面126が支持されるとともに、キャリッジ30に設けられたリブ303でX軸方向において背面123及び前面124が支持される。なお、図4で表されるように、キャリッジ30の-Z方向側の面には測定対象物の幅を検出することが可能なフロント側センサー37とリア側センサー38とが設けられている。
【0041】
キャリッジ30は、駆動源であるZ軸移動方向移動モーター36の動力がモーターギア61、ウォームギア62、第1駆動ギア63、第2駆動ギア64、と順に伝わることで、図5などで表されるラックギア65を介してガントリー20に対してキャリッジ30はZ軸方向に沿ってスライド移動する。また、図4で表されるように、キャリッジ30にはガントリー20に対するキャリッジ30のZ軸方向における位置がホームポジションにあるか否かを検出するホームポジションセンサー39が設けられている。
【0042】
次に、主に図5から図9を参照して、キャリッジ30のガントリー20に対するZ軸方向における位置、すなわち、キャリッジ30及びキャリッジ30に収容された測色器100の支持台41に載置された測定対象物に対するZ軸方向における位置、について説明する。図5は、測色器100をキャリッジ30に収容させた状態でキャリッジ30を走査する際、すなわち、ガントリー20に対してキャリッジ30をY軸方向に沿って移動させる際の配置を表す図である。この際は、測色器100の測色面122及びキャリッジ30の底面302のいずれも、測定対象物であるカラーチャート10に対して、Z軸方向において隙間が空いた状態となっている。
【0043】
図6は、図5の状態からキャリッジを下方である-Z方向に移動させて測色器100の測色面122がカラーチャート10と接触した瞬間の配置を表す図である。なお、例えば、本実施例においては、この際のキャリッジ30の底面302とカラーチャート10とのZ軸方向の隙間G1は2mmとなっている。ここで、本実施例においては、測色器100は、キャリッジ30に対して、凸部127及び凸部128がキャリッジ30に設けられたリブ301に自重により引っ掛かって載置された状態で収容されているとともに、測色器100の測色面122が図4で表されるキャリッジ30の底面302に設けられた孔部302aから-Z方向に突出する構成となっている。
【0044】
このため、図7で表されるように、図6の状態からキャリッジ30をさらに-Z方向に移動させると、測色面122には測色器100の自重がかかる。なお、図7は、測色対象物の測色の際の配置、すなわち、カラーチャート10のカラーパッチ11や黒枠12の測色をする際の配置を表している。なお、例えば、本実施例においては、この際のキャリッジ30の底面302とカラーチャート10とのZ軸方向の隙間G2は1mmとなっている。別の表現をすると、本実施例の測色装置1は、測色対象物の測色の際、測色対象物に対して測色面122は接触するがキャリッジ30の底面302は隙間が設けられた状態となる。
【0045】
本実施例の測色装置1においては、測色器100の測色面122のZ軸方向から見た全周が支持台41上のカラーチャート10に接触してカラーチャート10の表面に倣った状態で測色する。このような構成であることで、測色器100の光軸開口である測色口106が測色面122で覆われた状態で測色できるので、外光の影響を受けにくく測色精度が上がる。なお、図6の状態でも外光の影響を受けにくい状態で測色することは可能であるが、キャリッジ30や測色器100や支持台41には部品の製造ばらつきなどに伴う公差が生じるので、キャリッジ30の測色器100の保持位置や測色面122から支持台41までの距離にずれが生じる場合がある。しかしながら、図6の状態からさらにキャリッジ30を下げることで、このような公差の影響を受けずに測色を行うことが可能になる。
【0046】
また、図7の状態では、キャリッジ30の底面302とカラーチャート10との間に隙間G2ができており、キャリッジ30の底面302とカラーチャート10とが離間した状態となっている。このため、キャリッジ30の重量がカラーチャート10に伝わらず、測色器100の自重のみカラーチャート10に掛かった状態になる。したがって、測色器100は適度な荷重が掛かった状態でカラーチャート10に接触するので、カラーチャート10を損傷させにくい。
【0047】
なお、本実施例の測色装置1は、様々な測色対象物の測色が可能である。本実施例の測色装置1が測色可能な測色対象物には様々な厚みのものがある。このため、本実施例の測色装置1は、使用する測色対象物に対してキャリッジ30をZ軸方向に移動させることでキャリッジ30を測色対象物に当接させ、その当接時のキャリッジ30の高さである度当て高さを測定することができる。別の観点から説明すると、キャリッジ30の度当て高さとは、測色対象物に接触したときのキャリッジ30高さのことである。具体的には、本実施例の測色装置1は、キャリッジ30の度当て高さを知るために、キャリッジ30の底面302が測色対象物に当たりZ軸移動方向移動モーター36の負荷がある閾値を超えるまでZ軸移動方向移動モーター36を駆動してキャリッジ30高さを下げ続け、その閾値を超えた高さを検出することでキャリッジ30の度当て高さを知ることができる。図8は、キャリッジ30の度当て高さを知るために、キャリッジ30の底面302が測色対象物であるカラーチャート10に度当たりZ軸移動方向移動モーター36の負荷がある閾値を超えた際の状態を表している。
【0048】
また、本実施例の測色装置1は、上記のように、ガントリー20に対するキャリッジ30のZ軸方向における位置がホームポジションにあるか否かを検出するホームポジションセンサー39が設けられている。図9は、キャリッジ30がZ軸方向においてホームポジションにある状態を表している。
【0049】
上記のように、本実施例の測色装置1は、測色対象物であるカラーチャート10を支持する支持台41と、カラーチャート10と接触した状態でカラーチャート10を測色する測色部としての測色面122を有する測色器100と、測色器100を支持するキャリッジ30と、を備えている。また、本実施例の測色装置1はガントリー20を備え、ガントリー20は、キャリッジモーター22、キャリッジベルト23、手前プーリー24及び奥プーリー25などを備え、支持台41上においてキャリッジ30を走査する走査機構部としての役割をしている。また、本実施例の測色装置1は、測色器100とキャリッジ30と走査機構部とを制御する制御部としてのメイン基板52などを備えている。
【0050】
以下に、本実施例の測色装置1を使用して行う制御方法について説明する。最初に、図10のフローチャートで表される、高さ方向におけるキャリッジの設定位置を決める際のフローについて説明する。なお、以下の制御方法は、いずれも、制御部としてのメイン基板52の制御により各ステップが実行される。本フローを開始すると、最初に、ステップS110において、キャリッジ30をカラーチャート10の所望の位置に接触させ、キャリッジ30をカラーチャート10に接触させた状態で測色する。
【0051】
次に、ステップS120において、所定量キャリッジを上昇させる。本実施例においては、例えば0.14mmキャリッジを上昇させる。そして、ステップS130で、その所定量キャリッジを上昇させた位置で測色する。
【0052】
そして、ステップS140において、キャリッジ30をカラーチャート10に接触させた状態であるステップS110での測色値と、ステップS130での測色値と、の色差を算出する。上記のように、本実施例の測色装置1は、キャリッジ30をカラーチャート10に接触させた状態である図8の状態から、キャリッジ30がカラーチャート10から離間し始める状態である図6の状態に至るまでに、キャリッジ30を概ね2mm上昇させる必要がある。このため、キャリッジ30を概ね2mm上昇させるまでは、ステップS140算出される色差は略ゼロとなる。そして、キャリッジ30を2mm上昇させた後は、さらにキャリッジ30を上昇させた状態で色差を算出するとキャリッジ30を上昇させるにつれて色差が大きくなる。
【0053】
ここで、図11は、キャリッジ30のカラーチャート10に対する上昇距離に対する色差を表すグラフである。図11で表されるように、キャリッジ30のカラーチャート10に対する上昇距離が所定以下のうちは色差が略ゼロであるが、それ以降は、キャリッジ30を上昇させるにつれて色差が大きくなっている。なお、図11において、ポイントP0は図8の状態にキャリッジ30がある場合に対応し、ポイントP1は図7の状態にキャリッジ30がある場合に対応し、ポイントP2は図6の状態にキャリッジ30がある場合に対応し、ポイントP3は図5の状態にキャリッジ30がある場合に対応し、ポイントP4は図9の状態にキャリッジ30がある場合に対応する。
【0054】
次に、ステップS150において、ステップS140で算出された色差が予め定められた閾値以上であるか否かを判断する。この判断は、制御部としてのメイン基板52で行われる。ここで、ステップS140で算出された色差が閾値未満と判断された場合は、ステップS120に戻り、ステップS120からステップS150までのフローを繰り返す。すなわち、ステップS140で算出された色差が閾値以上となるまで、0.14mmずつキャリッジ30を上昇させながら測色が行われる。一方、ステップS140で算出された色差が閾値以上と判断された場合は、ステップS160に進む。
【0055】
ステップS160においては、現在のキャリッジ30のカラーチャート10に対する高さ、すなわち、ステップS150で色差が閾値以上と判断された際のキャリッジ30のカラーチャート10に対する高さが、予め算出されている理論高さと比べてどの程度差異があるかを算出する。そして、その算出結果を記憶部52aに記憶させ、図10のフローチャートで表されるフローを終了する。
【0056】
なお、ステップS160で算出された調整値は、例えば、図7で表されるカラーチャート10のカラーパッチ11などを測色する際の高さ方向におけるキャリッジ30の設定位置や、図5で表されるキャリッジ30の走査時の高さ方向におけるキャリッジ30の設定位置を決める際に使用される。そして、例えば、カラーチャート10に設けられる隣接する複数のカラーパッチ11を連続して測色する際、第1のカラーパッチ11について図7で表されるキャリッジ30の設定位置で測色し、図5で表されるキャリッジ30の設定位置にキャリッジ30を上昇させてから第1のカラーパッチ11に隣説する第2のカラーパッチ11の測色位置まで移動し、図7で表されるキャリッジ30の設定位置までキャリッジ30を下降させてから第2のカラーパッチ11を測色する。そして、これを測色するカラーパッチ11の数だけ繰り返す。
【0057】
ここで、図10のフローチャートで表される制御方法について別の表現で説明すると、ステップS120からステップS150までのフローを繰り返すことで、キャリッジ30をカラーチャート10から高さ方向に移動させることで、高さ方向においてキャリッジ30とカラーチャート10との間隔が異なる複数の位置で測色面122により測色を行う測色工程を実行する。そして、ステップS160を実行することで、その測色工程での測色結果に基づいて、高さ方向におけるキャリッジ30の設定位置を決定するための調整値を算出する算出工程を実行することとなる。図10のフローチャートで表される制御方法においては、ステップS120からステップS150までにステップS110を加えたステップS110からステップS150までが測色工程に対応し、ステップS160が算出工程に対応する。
【0058】
上記より、図10のフローチャートで表される制御方法を実行することで、使用する測色器100ごとに、例えば、カラーチャート10を測色する際の高さ方向におけるキャリッジ30の位置や、複数のカラーパッチ11間で測色器100を移動させる際の高さ方向におけるキャリッジ30の位置など、好ましいキャリッジ30の設定位置を算出することができる。したがって、カラーチャート10に対する測色器100の高さが所望の高さからズレることを抑制することができる。なお、カラーチャート10に対する測色器100の高さを所望の高さにする手段として、別途、測色器100の高さを検出するセンサーを設けることなどが考えられるが、本実施例の制御方法を実行することでこのようなセンサーを設ける必要性をなくすことができる。
【0059】
なお、図10のフローチャートで表される制御方法においては、測色工程において測色器100を段階的に0.14mmごと上昇させて測色していた。しかしながら、このような方法に限定されない。例えば、測色工程において測色器100を連続的に上昇させつつ定期的に測色するなどしてもよい。
【0060】
ここで、図10のフローチャートで表される制御方法においては、ステップS150における色差が閾値以上か否かに基づいて、ステップS160で調整値を算出している。このことを別の表現で説明すると、算出工程では、測色工程で測色器100が測色した測色値が所定の閾値を超えたときのキャリッジ30のカラーチャート10からの高さを比較値とし、この比較値と基準値である理論高さとの差分に基づいて調整値を算出する。ここで、比較値はステップS130の測色値に対応し、基準値はステップS110の測色値に対応する。比較値が基準値そのものとなったときのキャリッジ30の高さからキャリッジ30の設定位置を決定するとするとカラーチャート10や測色器100などの製造公差などによりカラーチャート10から測色器100が浮き上がる虞が生じるが、比較値に補正を行った値に基づいてキャリッジ30の設定位置を決定することでこのような虞を低減することができる。すなわち、カラーチャート10に対する測色器100の高さが所望の高さからズレることを効果的に抑制することができる。なお、具体的には、本実施例においては、カラーチャート10から測色器100が浮き上がったときに対応する比較値から1mm下降させた値を補正を行った値としている。
【0061】
なお、カラーチャート10におけるどこの位置で測色工程を実行するかについて特に限定はない。ただし、本実施例では、測色工程は、高さ方向から見て測色部122の測色口106がカラーチャート10の中央位置に位置した状態で行われる。カラーチャート10の中央位置はカラーチャート10の平均の平面度である場合が多いので、このような制御方法とすることで、カラーチャート10に対する測色器100の高さが所望の高さからズレることを効果的に抑制することができる。なお、ここでの「中央位置」とは、概ね中央であればよい意味であり、例えば、X軸方向及びY軸方向の各々に3等分した際の、X軸方向及びY軸方向の各々の中央の領域に該当していればよい。
【0062】
また、ステップS110からステップS150までの測色工程を何回行うかについても特に限定はない。ただし、測色工程をカラーチャート10の所定位置において複数回行い、算出工程では複数回行われた測色工程での測色結果の平均値に基づいて調整値を算出することが好ましい。測色工程を複数回行うことで、正確な調整値を算出することができ、カラーチャート10に対する測色器100の高さが所望の高さからズレることを効果的に抑制することができるためである。
【0063】
また、測色工程をカラーチャート10の少なくとも2か所以上で行い、算出工程では2か所以上で行われた測色工程での測色結果の平均値に基づいて調整値を算出することが好ましい。カラーチャート10は平面度が不均一な場合があるが、このような制御方法とすることで、カラーチャート10に対する測色器100の高さが所望の高さからズレることを効果的に抑制することができるためである。
【0064】
なお、算出工程において、測色器100が測色した測色値が所定の閾値を超えたときのキャリッジ30のカラーチャート10からの高さを近似法により求めてもよい。例えば、カラーチャート10から測色器100が浮き上がると、ステップS150における色差がキャリッジ30のカラーチャート10からの高さとが略比例するようになる。よって、色差が所定の閾値を超えてから得られた色差とキャリッジ30の高さを線形近似することにより、色差が所定の閾値となるキャリッジ30のカラーチャート10からの高さを求めてもよい。
【0065】
また、本実施例の測色装置1は、本実施例の算出工程であるステップS160で算出した調整値に基づき、キャリッジ30の設定位置として、カラーチャート10のカラーパッチ11などを測色する際の高さ方向におけるキャリッジ30の位置を決定する。このため、カラーチャート10を測色する際の高さ方向におけるキャリッジ30の位置が所望の高さからズレることを効果的に抑制することができる。
【0066】
さらには、本実施例の測色装置1は、カラーチャート10に形成された複数のカラーパッチ11についてキャリッジ30を走査することを繰り返して測色器100で測色可能に構成されている。そして、本実施例の測色装置1は、本実施例の算出工程であるステップS160で算出した調整値に基づき、キャリッジ30の設定位置として、複数のカラーパッチ11のうちの第1のカラーパッチの位置に対応する第1測色位置から第1のカラーパッチに隣接する第2のカラーパッチの位置に対応する第2測色位置へのキャリッジ30の走査において測色器100を移動させる際の高さ方向におけるキャリッジ30の位置も決定する。具体的には、ステップS160で算出された調整値にキャリッジ30が例えば2mm上昇する値を加算した値を補正した値を走査する際の調整値として算出し、測色器を移動させる際のキャリッジの位置として決定している。このため、複数のパッチ間で測色器100を移動させる際の高さ方向におけるキャリッジ30の位置が所望の高さからズレることを効果的に抑制することができる。
【0067】
次に、図12のフローチャートで表される、図10のフローチャートのフローを実行する前に行う測色対象物の高さ方向の厚みを測定するフローについて説明する。図12のフローチャートのフローを開始すると、最初に、ステップS210で、Z軸移動方向移動モーター36を駆動してキャリッジ30を図9で表されるホームポジションに移動する。そして、その後、ステップS220でキャリッジモーター22を駆動してキャリッジ30をY軸方向に移動させるとともに、ステップS230でガントリーモーター47を駆動してガントリー20をX軸方向に移動させ、キャリッジ30を所望の検出位置に移動する。
【0068】
その後、キャリッジ30をカラーチャート10に複数回度当てする度当て検出ループを行う。度当て検出ループでは、最初に、ステップS240で、高さ方向であるZ軸方向に沿ってキャリッジ30を下降させる。キャリッジ30がカラーチャート10に度当たると、ステップS250で、度当たったキャリッジ30のZ軸方向における位置を取得する。度当て検出ループではステップS240からステップS260までを複数回繰り返す。
【0069】
度当て検出ループを終了すると、ステップS270で、複数回繰り返して得られた度当たったキャリッジ30のZ軸方向における位置が所定の範囲内にすべて入っているか否かを判断する。ここで、複数回繰り返して得られた度当たったキャリッジ30のZ軸方向における位置が所定の範囲内にすべて入っているとメイン基板52が判断した場合は、ステップS280に進む。一方、複数回繰り返して得られた度当たったキャリッジ30のZ軸方向における位置が所定の範囲内にすべて入っているとメイン基板52が判断しなかった場合は、ステップS340でエラー検出し、図12のフローチャートのフローを終了する。
【0070】
なお、本実施例ではステップS270でこのような処理を行ったが、このような処理ではなく、例えば、ステップS270で、所定の範囲内から外れた結果を除外してステップS280に進むことや、所定の範囲内から外れた結果を所定の上限値及び下限値に補正してステップS280に進むことなどとしてもよい。ステップS280では、Z軸移動方向移動モーター36を駆動してキャリッジ30を図9で表されるホームポジションに移動する。そして、その後、ステップS290でキャリッジモーター22を駆動してキャリッジ30をY軸方向に移動させるとともに、ステップS300でガントリーモーター47を駆動してガントリー20をX軸方向に移動させ、キャリッジ30をY軸方向のホームポジションに移動させるとともにガントリー20をX軸方向のホームポジションに移動させる。なお、図2及び図3は、キャリッジ30及びガントリー20がホームポジションにある状態を表している。
【0071】
次に、ステップS310では、度当て検出ループで検出した複数の度当て位置を平均化する、そして、ステップS320で、平均化された度当て位置を記憶部52aに記憶させる。そして、さらに、ステップS330で、平均化された度当て位置を基準にZ軸方向におけるキャリッジ30の設定位置を仮設定し、図10のフローチャートのフローを終了する。なお、この仮設定されたキャリッジ30の設定位置は、図9のフローチャートのフローを実行することで補正されて本設定される。
【0072】
次に、図13のフローチャートで表される、使用する測色器100を変更した際のフローについて説明する。上記のように、本実施例の測色装置1は、測色器100をキャリッジに対して着脱可能であり、複数種類の測色器100を使用可能である。なお、本実施例の測色装置1で使用可能な測色器100は、各々、識別情報を有している。そして、本実施例の測色装置1の記憶部52aは、各々の測色器100に対応する識別情報を記憶可能である。
【0073】
新たな測色器100をキャリッジ30に取り付け、図13のフローチャートのフローを開始すると、最初に、ステップS410で、メイン基板52は、新たに取り付けられた測色器100の識別情報が記憶部52aに記憶されているか否かを判断する。そして、新たに取り付けられた測色器100の識別情報が記憶部52aに記憶されていないと判断した場合はステップS420に進み、新たに取り付けられた測色器100の識別情報が記憶部52aに記憶されていると判断した場合はステップS430に進む。ここで、ステップS420は、図10のフローチャートで表される制御方法そのものである。
【0074】
ステップS430に進む場合、新たに取り付けられた測色器100の調整値はすでに記憶部52aに記憶されているので、この調整値に基づいて高さ方向におけるキャリッジ30の設定位置を決める。一方、ステップS420に進む場合、ステップS420を実行することにより得た図10のフローチャートのステップS160の調整値に基づいて高さ方向におけるキャリッジ30の設定位置を決める。なお、ステップS420の終了後は、新たな測色器100の識別情報と調整値とが記憶部52aに記憶される。そして、ステップS440の終了またはステップS430の終了に伴い、図13のフローチャートのフローを終了する。
【0075】
図13のフローチャートのフローについて別の表現で説明すると、ステップS410では新たに取り付けられた測色器100の識別情報を取得する。すなわち、ステップS410は、測色器100のうちのキャリッジ30に支持された第1測色器が有する識別情報のうちの第1識別情報を取得する取得工程と表現することができる。また、ステップS410では、第1識別情報が記憶部52aに記憶されている識別情報と一致するか否かを判定する判定工程とも表現することができる。そして、上記の通り、第1識別情報が記憶部52aに記憶されている識別情報と一致しないと判定工程において判定された場合、記憶部52aに取得工程で取得した第1識別情報を記憶させる記憶工程をステップS440において行うとともに、ステップS420に含まれるステップS160の算出工程を行う。
【0076】
このような制御方法を実行することで、新たに使用する測色器100毎に算出工程を行うか否かを判定できる。このため、これまで使用したことがない測色器100が取り付けられた場合であっても、カラーチャート10に対する測色器100の高さが所望の高さからズレることを抑制することができる。
【0077】
図13のフローチャートのフローにおいては、ステップS410においてステップS430に進む判断がなされた場合、別の表現をすると、第1識別情報が記憶部52aに記憶されている識別情報と一致すると判定工程において判定された場合、ステップS440の記憶工程及びステップS420に含まれるステップS160の算出工程を行わない。このような制御方法とすることで、これまで使用したことがある測色器100が取り付けられた場合に、図10で表されるキャリッジ30の設定位置を決定するフローを省略することができる。これにより、キャリッジ30の設定位置を決定するフローに掛かる時間を短縮することができる。
【0078】
ただし、このようなフローをとることに限定されない。キャリッジ30に取り付けられた測色器100の識別情報と記憶部52aに記憶された識別情報とが一致するとステップS410で判断された場合であっても、ステップS420に進み、ステップS160の算出工程を行っても良い。これは、例えば、所定時間経過した後や、測色装置1が運搬された後などにおいて、好ましい高さ方向におけるキャリッジ30の設定位置がずれる虞があるためである。
【0079】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、本実施例の測色装置1は測色対象物と接触した状態で測色対象物を測色する構成であるが、測色対象物と非接触の状態で測色対象物を測色する構成に適用してもよい。また、例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…測色装置、10…カラーチャート(測色対象物)、11…カラーパッチ、12…黒枠、20…ガントリー(走査機構部)、21…空間部、22…キャリッジモーター、23…キャリッジベルト、24…手前プーリー、25…奥プーリー、26…ガントリーフレーム、30…キャリッジ、31…キャリッジスライダー、36…Z軸移動方向移動モーター、37…フロント側センサー、38…リア側センサー、39…ホームポジションセンサー、40…本体部、41…支持台、42…フロント面、42a…電源ボタン、43…リア面、44…フロントフレーム、45…リアフレーム、46…連結軸、47…ガントリーモーター、48…ケースロア、50…USBケーブル、51…電源ボックス、52…メイン基板(制御部)、52a…記憶部、53…サブ基板、61…モーターギア、62…ウォームギア、63…第1駆動ギア、64…第2駆動ギア、65…ラックギア、100…測色器、101…端子、105…画面部、106…測色口、110…操作部、111…プラス形ボタン、111a…バー形状、111b…バー形状、112…決定ボタン、120…筐体、121…上面、122…測色面(測色部)、123…背面、124…前面、125…右側面、126…左側面、127…凸部、128…凸部、301…リブ、302…底面、302a…孔部、303…リブ、G1…隙間、G2…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13