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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126941
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電子部品加工用粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240912BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20240912BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/21
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035723
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】櫻山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】内田 寛明
(72)【発明者】
【氏名】村上 由夏
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA11
4J004AA15
4J004CA03
4J004CA04
4J004CA05
4J004CA06
4J004CA07
4J004CB01
4J004CC02
4J004CD08
4J004CD09
4J004CD10
4J004CE01
4J004DB02
4J004FA08
4J040DF001
4J040ED001
4J040EH031
4J040EK031
4J040JA09
4J040JB02
4J040JB07
4J040LA06
4J040MA02
4J040PA23
4J040PA33
4J040PA42
5F063AA16
5F063AA18
5F063AA41
5F063BA48
5F063CA06
5F063DD30
5F063EE07
5F063EE22
5F063EE25
5F063EE43
5F063EE44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ウォータージェットレーザー加工時の基材の切断を抑制する電子部品加工用粘着テープを提供する。
【解決手段】繊維を含有するメッシュシート1と、メッシュシートの一方の面に配置された粘着層2と、を有する電子部品加工用粘着テープであって、メッシュシートが、式(1)を満たす。
A×T≧9000(1)
式(1)において、Aは上記繊維の平均線径(μm)、Tは下記式(2)で表される上記メッシュシートの非開口部のレーザーの透過率(%)を示す。
=(T-B)/(100-B)×100(2)
式(2)において、Tは上記メッシュシートのレーザーの透過率(%)、Bは上記メッシュシートの開口率(%)を示す。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含有するメッシュシートと、前記メッシュシートの一方の面に配置された粘着層と、を有する電子部品加工用粘着テープであって、
前記メッシュシートが、下記式(1)を満たす、電子部品加工用粘着テープ。
A×T≧9000 (1)
(上記式(1)において、Aは前記繊維の平均線径(μm)、Tは下記式(2)で表される前記メッシュシートの非開口部のレーザーの透過率(%)を示す。
=(T-B)/(100-B)×100 (2)
(上記式(2)において、Tは前記メッシュシートのレーザーの透過率(%)、Bは前記メッシュシートの開口率(%)を示す。))
【請求項2】
繊維を含有するメッシュシートと、前記メッシュシートの一方の面に配置された粘着層と、を有する電子部品加工用粘着テープであって、
前記繊維の平均線径が、100μm以上であり、
下記式(2)で表される前記メッシュシートの非開口部のレーザーの透過率Tが、60%以上である、電子部品加工用粘着テープ。
=(T-B)/(100-B)×100 (2)
(上記式(2)において、Tは前記メッシュシートのレーザーの透過率(%)、Bは前記メッシュシートの開口率(%)を示す。)
【請求項3】
前記繊維の平均線径が、100μm以上であり、前記メッシュシートの非開口部のレーザーの透過率が、60%以上である、請求項1に記載の電子部品加工用粘着テープ。
【請求項4】
ナイロン繊維を含有するメッシュシートと、前記メッシュシートの一方の面に配置された粘着層と、を有する電子部品加工用粘着テープであって、
前記ナイロン繊維の平均線径が、100μm以上であり、
前記ナイロン繊維が、モノフィラメントであり、
前記粘着層の厚さが、25μm以上である、電子部品加工用粘着テープ。
【請求項5】
繊維を含有するメッシュシートと、前記メッシュシートの一方の面に配置された粘着層と、を有する電子部品加工用粘着テープであって、
ウォータージェットレーザー加工後の引張強さが、10N/10mm以上である、電子部品加工用粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着層が、エネルギー線硬化型粘着層であり、
エネルギー線照射後の前記メッシュシートと前記粘着層との間の剥離力が、エネルギー線照射後のガラス基板に対する粘着力以上である、請求項1から請求項5までのいずれかに記載の電子部品加工用粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着層が、微粘着型粘着層であり、
前記メッシュシートと前記粘着層との間の剥離力が、ガラス基板に対する粘着力以上である、請求項1から請求項5までのいずれかに記載の電子部品加工用粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品加工用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
被加工基板をチップに分割する、いわゆるダイシング工程においては、被加工基板およびチップを保護および固定するために、ダイシングテープと呼ばれる粘着テープが用いられている。
【0003】
近年、ダイシング方法として、ウェータージェットによってガイドされるレーザーを用いた加工方法が提案されている。以下、この方法をウォータージェットレーザー加工と称する。
【0004】
粘着テープは、通常、基材と粘着層とを有する。例えば特許文献1~4に記載されているように、ウォータージェットレーザー加工の場合、水の跳ね返りによるチッピングを抑制するため、粘着テープを構成する基材には、水流を透過できる、不織布、織物、編物、穴あけ加工されたシート等の多孔質基材が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3824874号公報
【特許文献2】特許第4087144号公報
【特許文献3】特開2005-167042号公報
【特許文献4】特許第5000370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザーには、水分に吸収されやすいものもあれば、水分に吸収されにくいものもある。そこで、ウォータージェットレーザー加工においては、水に対する吸収率を低くして、加工効率を上げるために、短波長のレーザーを用いることが検討されている。
【0007】
しかし、一般に、レーザーの波長が短いほど、エネルギーが高く、物質に対する吸収率が高くなる。そのため、ウォータージェットレーザー加工において、短波長のレーザーを用いると、加工時に粘着テープを構成する多孔質基材が切断されてしまう、あるいは加工時に多孔質基材が脆弱になり切断されやすくなるという問題がある。
【0008】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ウォータージェットレーザー加工時の基材の切断を抑制することが可能な電子部品加工用粘着テープを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態は、繊維を含有するメッシュシートと、上記メッシュシートの一方の面に配置された粘着層と、を有する電子部品加工用粘着テープであって、上記メッシュシートが、下記式(1)を満たす、電子部品加工用粘着テープを提供する。
A×T≧9000 (1)
(上記式(1)において、Aは上記繊維の平均線径(μm)、Tは下記式(2)で表される上記メッシュシートの非開口部のレーザーの透過率(%)を示す。
=(T-B)/(100-B)×100 (2)
(上記式(2)において、Tは上記メッシュシートのレーザーの透過率(%)、Bは上記メッシュシートの開口率(%)を示す。))
【0010】
本開示の他の実施形態は、繊維を含有するメッシュシートと、上記メッシュシートの一方の面に配置された粘着層と、を有する電子部品加工用粘着テープであって、上記繊維の平均線径が、100μm以上であり、下記式(2)で表される上記メッシュシートの非開口部のレーザーの透過率Tが、60%以上である、電子部品加工用粘着テープを提供する。
=(T-B)/(100-B)×100 (2)
(上記式(2)において、Tは上記メッシュシートのレーザーの透過率(%)、Bは上記メッシュシートの開口率(%)を示す。)
【0011】
本開示の他の実施形態は、ナイロン繊維を含有するメッシュシートと、上記メッシュシートの一方の面に配置された粘着層と、を有する電子部品加工用粘着テープであって、上記ナイロン繊維の平均線径が、100μm以上であり、上記ナイロン繊維が、モノフィラメントであり、上記粘着層の厚さが、25μm以上である、電子部品加工用粘着テープを提供する。
【0012】
本開示の他の実施形態は、繊維を含有するメッシュシートと、上記メッシュシートの一方の面に配置された粘着層と、を有する電子部品加工用粘着テープであって、ウォータージェットレーザー加工後の引張強さが、10N/10mm以上である、電子部品加工用粘着テープを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本開示は、ウォータージェットレーザー加工時の基材の切断を抑制することが可能な電子部品加工用粘着テープを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示における電子部品加工用粘着テープを例示する概略断面図である。
図2】本開示における電子部品加工用粘着テープを構成するメッシュシートを例示する概略平面図および断面図である。
図3】本開示における電子部品加工用粘着テープを例示する概略断面図である。
図4】引張強さの測定に用いる試験片の作製方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定されるべきではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であり、限定して解釈されるべきではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0016】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0017】
また、本明細書において、「シート」には、「フィルム」と呼ばれる部材も含まれる。
【0018】
本開示における電子部品加工用粘着テープは、4つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
【0019】
I.第1実施態様
本開示における電子部品加工用粘着テープの第1実施態様は、繊維を含有するメッシュシートと、上記メッシュシートの一方の面に配置された粘着層と、を有する電子部品加工用粘着テープであって、上記メッシュシートが、下記式(1)を満たす。
A×T≧9000 (1)
上記式(1)において、Aは上記繊維の平均線径(μm)、Tは下記式(2)で表される上記メッシュシートの非開口部のレーザーの透過率(%)を示す。
=(T-B)/(100-B)×100 (2)
上記式(2)において、Tは上記メッシュシートのレーザーの透過率(%)、Bは上記メッシュシートの開口率(%)を示す。
【0020】
図1は、本実施態様の電子部品加工用粘着テープを例示する概略断面図である。図1に例示するように、電子部品加工用粘着テープ10は、繊維を含有するメッシュシート1と、メッシュシート1の一方の面に配置された粘着層2とを有する。
【0021】
図2(a)~(c)は、本実施態様の電子部品加工用粘着テープにおけるメッシュシートを例示する概略平面図および断面図である。図2(b)は図2(a)の拡大図であり、図2(c)は図2(b)の断面図である。図2(a)~(c)に示すように、メッシュシート1は、メッシュ織物であり、繊維20が経糸21および緯糸22に配置されている。また、メッシュシート1は、平面視において、経糸21および緯糸22で囲まれた開口部23と、経糸21および緯糸22を有し、開口部23以外の非開口部24とを有する。図2(a)~(c)において、a1は経糸21の線径、a2は緯糸22の線径、b1は経糸21間の開口、b2は緯糸22間の開口を示す。
【0022】
本実施態様においては、ウォータージェットレーザー加工時のメッシュシートの切断を抑制するために、上記式(1)を導出した。上記式(1)において、繊維の平均線径Aが太ければ、ウォータージェットレーザー加工時のメッシュシートの切断を抑制できる。また、上記式(1)において、メッシュシートの非開口部のレーザーの透過率が高ければ、ウォータージェットレーザー加工時のメッシュシートの切断を抑制できる。また、上記式(1)において、メッシュシートの非開口部のレーザーの透過率が低くても、繊維の平均線径Aが太ければ、ウォータージェットレーザー加工時にメッシュシートが切断しにくくなると考えられる。また、繊維の平均線径Aが細くても、メッシュシートの非開口部のレーザーの透過率が高ければ、ウォータージェットレーザー加工時にメッシュシートが切断しにくくなると考えられる。
【0023】
よって、本実施態様においては、メッシュシートが上記式(1)を満たすことにより、ウォータージェットレーザー加工時のメッシュシートの切断を抑制できる。
【0024】
したがって、本実施態様の電子部品加工用粘着テープは、ウォータージェットレーザー加工により被加工基板をダイシングする場合に好適に用いることができる。
【0025】
以下、本実施態様の電子部品加工用粘着テープの各構成について説明する。
【0026】
1.メッシュシート
本実施態様におけるメッシュシートは、繊維を含有し、下記式(1)を満たし、粘着層を支持する部材である。
【0027】
(1)式(1)
本実施態様におけるメッシュシートは、下記式(1)を満たす。
A×T≧9000 (1)
上記式(1)において、Aは上記繊維の平均線径(μm)、Tは下記式(2)で表される上記メッシュシートの非開口部のレーザーの透過率(%)を示す。
=(T-B)/(100-B)×100 (2)
上記式(2)において、Tは上記メッシュシートのレーザーの透過率(%)、Bは上記メッシュシートの開口率(%)を示す。
【0028】
メッシュシートが上記式(1)を満たすことにより、ウォータージェットレーザー加工時のメッシュシートの切断を抑制できる。
【0029】
メッシュシートは、下記式(1-1)を満たすことが好ましい。
A×T≧10000 (1-1)
【0030】
繊維の平均線径Aは、上記式(1)を満たしていれば特に限定されないが、例えば、90μm以上であり、100μm以上であってもよく、110μm以上であってもよく、120μm以上であってもよく、150μm以上であってもよい。また、繊維の平均線径Aは、例えば、500μm以下であり、300μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。上記平均線径が小さすぎると、ウォータージェットレーザー加工時のウォータージェットによる圧力およびレーザーによる熱によって、メッシュシートが切断される、あるいはメッシュシートが脆弱になる可能性がある。一方、上記平均線径が大きすぎると、水の透過性が損なわれる可能性がある。なお、繊維がマルチフィラメントである場合、繊維の平均線径は、マルチフィラメントの平均線径をいう。
【0031】
ここで、繊維の平均線径Aは、無作為に選んだ10本の経糸の線径および10本の緯糸の線径の算術平均値とする。経糸の線径および緯糸の線径はそれぞれ、デジタルマイクロスコープを用いて測定する。デジタルマイクロスコープとしては、キーエンス社製「デジタルマイクロスコープVHX-2000」を使用できる。
【0032】
メッシュシートの非開口部のレーザーの透過率Tは、上記式(1)を満たしていれば特に限定されないが、例えば、50%以上であり、70%以上であってもよく、90%以上であってもよい。上記透過率が低すぎると、ウォータージェットレーザー加工時にメッシュシートがレーザーを吸収して放射する熱によって、メッシュシートが切断される、あるいはメッシュシートが脆弱になる可能性がある。
【0033】
メッシュシートの非開口部のレーザーの透過率Tは、メッシュシートのレーザーの透過率Tおよびメッシュシートの開口率を用いて、上記式(2)で表される。
【0034】
メッシュシートのレーザーの透過率Tは、上記式(1)および(2)を満たしていれば特に限定されず、少なくともメッシュシートの開口率Bよりも大きければよい。
【0035】
ここで、メッシュシートのレーザーの透過率Tは、メッシュシートの波長532nmの透過率である。なお、本開示においては、短波長レーザーの例として、YAGレーザーの第2高調波である波長532nmを採用した。
【0036】
メッシュシートの開口率Bは、上記式(1)を満たしていれば特に限定されないが、例えば、10%以上80%以下であり、20%以上70%以下であってもよく、30%以上60%以下であってもよい。上記開口率が小さすぎると、水の透過性が損なわれる可能性がある。一方、上記開口率が大きすぎると、粘着層との密着性が低下する可能性がある。
【0037】
ここで、メッシュシートの開口率B(%)は、下記式(3)で表される。
B=[C/(C+A)]×100 (3)
上記式(3)において、Aは繊維の平均線径(μm)、Cは繊維間の平均開口(μm)である。
【0038】
繊維間の平均開口Cは、上記式(1)を満たしていれば特に限定されないが、チップサイズより小さいことが好ましく、例えば、ミリメートルオーダー以下である。具体的には、繊維間の平均開口Cは、1μm以上500μm以下であり、5μm以上200μm以下であってもよく、10μm以上100μm以下であってもよい。上記平均開口が小さすぎると、水の透過性が損なわれる可能性がある。一方、上記平均開口が大きすぎると、粘着層との密着性が低下する可能性がある。
【0039】
ここで、繊維間の平均開口は、無作為に選んだ10箇所の経糸間の開口および10箇所の緯糸間の開口の算術平均値とする。経糸間の開口および緯糸間の開口はそれぞれ、デジタルマイクロスコープを用いて測定する。デジタルマイクロスコープとしては、キーエンス社製「デジタルマイクロスコープVHX-2000」を使用できる。
【0040】
経糸の線径、緯糸の線径、経糸間の開口、緯糸間の開口、およびメッシュシートのレーザーの透過率を測定する際には、電子部品加工用粘着テープから粘着層を除去し、メッシュシートを取り出す。粘着層の除去方法としては、粘着層を溶媒で溶解する方法が挙げられる。溶媒としては、粘着層の形成に用いた粘着剤組成物に含有される溶媒を使用できる。
【0041】
(2)メッシュシートの材料
メッシュシートは、メッシュ織物が用いられる。メッシュシートの材料は、レーザーの透過率が高いことが好ましい。メッシュシートの材料としては、化学繊維、天然繊維、無機繊維等の繊維が挙げられる。化学繊維の材質としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、スチレン-エチレン-ブテン共重合体、スチレン-エチレン-ペンテン共重合体、レーヨン、酢酸セルロースが挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、アイオノマー等が挙げられる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。ポリアミドとしては、ナイロン、アラミド等が挙げられる。ナイロンとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12等が挙げられる。天然繊維の材質としては、例えば、綿、絹、羊毛が挙げられる。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
中でも、ナイロン繊維が好ましい。ナイロンは、アミド結合を有するため、極性が高い。また、後述するように、粘着層にはアクリル系樹脂を用いることが好ましく、一般的に、アクリル系粘着剤は極性が高い。そのため、ナイロン繊維を含有するメッシュシートは、粘着層との密着性が高くなる傾向にある。
【0043】
メッシュ織物の織り方は、特に限定されず、例えば、平織、綾織、朱子織が挙げられる。
【0044】
経糸および緯糸はそれぞれ、モノフィラメントであってもよく、マルチフィラメントであってもよい。中でも、モノフィラメントが好ましい。モノフィラメントは、細い繊維が束になっているマルチフィラメントと比べて、ウォータージェットレーザー加工時に切れにくいからである。
【0045】
メッシュシートの粘着層側の面には、粘着層との密着性を向上させるために、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、特に限定されず、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、アルカリ処理等が挙げられる。
【0046】
(3)メッシュシートの厚さ
メッシュシートの厚さは、粘着層を支持できれば特に限定されず、例えば、180μm以上600μm以下であり、200μm以上500μm以下であってもよく、220μm以上400μm以下であってもよい。
【0047】
ここで、メッシュシートの厚さは、ダイヤルシックネスゲージまたはデジタルシックネスゲージ等の厚み計を用いて測定し、無作為に選んだ10箇所の厚さの算術平均値とする。
【0048】
メッシュシートの厚さを測定する際には、電子部品加工用粘着テープから粘着層を除去し、メッシュシートを取り出す。粘着層の除去方法は、上述した通りである。
【0049】
2.粘着層
本実施態様における粘着層は、ダイシング時は、電子部品加工用粘着テープに被加工基板およびチップを十分に固定でき、ピックアップ時は、電子部品加工用粘着テープからチップを容易に剥離できるものであれば、特に限定されない。粘着層としては、例えば、エネルギー線硬化性を有するエネルギー線硬化型粘着層、微粘着性を示す微粘着型粘着層を挙げることができる。中でも、エネルギー線硬化型粘着層が好ましい。エネルギー線硬化型粘着層であれば、初期粘着力を大きくすることができる。以下、各粘着層について説明する。
【0050】
(1)エネルギー線硬化型粘着層
エネルギー線硬化型粘着層は、エネルギー線照射により粘着力が低下する粘着層である。エネルギー線硬化型粘着層において、ダイシング時は、その初期粘着力により、電子部品加工用粘着テープに被加工基板およびチップを十分に固定できる。また、ピックアップ時は、エネルギー線を照射することで粘着力が低下して剥離性が向上するため、電子部品加工用粘着テープからチップを容易に剥離できる。
【0051】
エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が挙げられる。中でも、汎用性等の観点から、紫外線、電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0052】
エネルギー線硬化型粘着層は、後述の粘着特性を満たしていれば特に限定されず、例えば、樹脂(粘着主剤)と、エネルギー線硬化性化合物とを少なくとも含有できる。粘着層がエネルギー線硬化性化合物を含有することにより、エネルギー線の照射によりエネルギー線硬化性化合物を硬化させることで、粘着力を低下させることができ、また、このとき凝集力が高まるため、剥離が容易になる。
【0053】
(a)樹脂(粘着主剤)
樹脂(粘着主剤)としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂等、一般に粘着剤の主剤として用いられる樹脂が挙げられる。中でも、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂を用いることにより、被着体への糊残りを低減できる。
【0054】
よって、粘着層は、アクリル系樹脂と、エネルギー線硬化性化合物と、架橋剤とを少なくとも含有することが好ましい。粘着層内において、アクリル系樹脂は、通常、架橋剤によりアクリル系樹脂間が架橋されてなる架橋体として存在するが、架橋体と共にアクリル系樹脂の単体が含まれていてもよい。
【0055】
(アクリル系樹脂)
アクリル系樹脂としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステルを単独重合させた(メタ)アクリル酸エステル重合体、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させた(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルおよび他の単量体の具体例としては、特開2012-31316号公報に開示されるものが挙げられる。他の単量体は単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ここでの主成分とは、共重合割合が51質量%以上であることを意味し、好ましくは65質量%以上である。
【0056】
中でも、アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な水酸基含有モノマーとの共重合により得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体、または(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーとの共重合により得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体を好適に用いることができる。
【0057】
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方をいう。
【0058】
共重合可能な水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーとしては、特に限定されず、例えば特開2012-31316号公報に開示される水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーが用いられる。
【0059】
アクリル系樹脂の重量平均分子量としては、例えば、20万以上100万以下であることが好ましく、20万以上80万以下であることがより好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量を上記範囲内とすることで、十分な初期粘着力を発揮できる。
【0060】
ここで、本明細書において、重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際のポリスチレン換算値である。重量平均分子量は、例えば、測定装置に東ソー株式会社製のHLC-8220GPCを、カラムに東ソー株式会社製のTSKGEL-SUPERMULTIPORE-HZ-Mを、溶媒にTHFを、標準品として分子量が1050、5970、18100、37900、96400、706000の標準ポリスチレンを用いることで測定する。
【0061】
また、アクリル系樹脂が、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーとの(メタ)アクリル酸エステル共重合体である場合、上記水酸基含有モノマーと上記カルボキシル基含有モノマーとの質量比としては、例えば、51:49~100:0であることが好ましく、中でも75:25~100:0であることが好ましい。各モノマーの質量比が上記範囲内であれば、エネルギー線照射による効果的な粘着力の低下が期待でき、糊残りの発生を抑制できる。
【0062】
また、アクリル系樹脂は、エネルギー線硬化性を有していてもよく、例えば、側鎖にエネルギー線硬化性官能基を有していてもよい。エネルギー線硬化性官能基としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有することが好ましく、具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0063】
(b)エネルギー線硬化性化合物
エネルギー線硬化性化合物は、エネルギー線の照射を受けて重合するものであれば特に限定されず、例えば、エネルギー線硬化性官能基を有する化合物が挙げられる。
【0064】
エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、エネルギー線硬化性モノマー、エネルギー線硬化性オリゴマー、エネルギー線硬化性ポリマーが挙げられる。なお、エネルギー線硬化性ポリマーは、上記の樹脂(粘着主剤)とは異なるポリマーである。中でも、エネルギー線照射前後の粘着力のバランスの観点から、エネルギー線硬化性オリゴマーが好ましい。また、エネルギー線硬化性モノマー、エネルギー線硬化性オリゴマー、エネルギー線硬化性ポリマーを組み合わせて用いてもよい。例えば、エネルギー線硬化性オリゴマーに加えてエネルギー線硬化性モノマーを用いる場合には、エネルギー線を照射した際に、粘着層を三次元架橋により硬化させて粘着力を低下させるとともに、凝集力を高めてチップ側へ転着させないようにすることができる。
【0065】
また、エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物等が挙げられる。中でも、ラジカル重合性化合物が好ましい。硬化速度が速く、また、多種多様な化合物から選択することができ、さらには、エネルギー線照射前後の粘着力等の物性を容易に制御することができる。
【0066】
また、エネルギー線硬化性化合物のエネルギー線硬化性官能基の数を調整することにより、上記エネルギー線照射後の粘着力の制御が可能である。上述したように、例えば、エネルギー線硬化性官能基の数が多くなると、エネルギー線照射後の粘着層の架橋密度が高くなり、上記エネルギー線照射後の粘着力が小さくなる傾向にある。
【0067】
エネルギー線硬化性化合物において、エネルギー線硬化性官能基の数は、1分子中に2個以上であることが好ましく、1分子中に3個以上であることがより好ましく、4個以上であることがさらに好ましい。エネルギー線硬化性官能基の数が上記範囲内であれば、エネルギー線照射後の粘着層の架橋密度が十分となるので、所望の剥離性を実現することができる。また、凝集力の低下による糊残りの発生を抑制できる。また、エネルギー線硬化性官能基の数の上限は、特に限定されない。
【0068】
エネルギー線硬化性化合物は、ラジカル重合性オリゴマーであることが好ましく、ラジカル重合性多官能オリゴマーであることがより好ましい。ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば特開2012-31316号公報に開示されるものが挙げられる。
【0069】
また、エネルギー線硬化性化合物として、ラジカル重合性オリゴマーおよびラジカル重合性モノマーを用いてもよく、中でも、ラジカル重合性多官能オリゴマーおよびラジカル重合性多官能モノマーを用いてもよい。ラジカル重合性モノマーとしては、例えば特開2010-173091号公報に開示されるものが挙げられる。
【0070】
また、エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー、(メタ)アクリレート系ポリマー等を挙げることができる。また、エネルギー線硬化性化合物として、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等を用いることもできる。
【0071】
また、エネルギー線硬化性化合物は、市販品を用いてもよい。例えば、三菱ケミカル社製のウレタンアクリレート「紫光UV7620EA(分子量:4100)」;根上工業社製のウレタンアクリレート「アートレジンUN-905(分子量:50000~210000)」、「アートレジンUN-905DU1(分子量:26000)」、「アートレジンUN-951SC(分子量:12500)」、「アートレジンUN-952(分子量:6500~9500)」、「アートレジンUN-953(分子量:14000~40000)」、「アートレジンUN-954(分子量:4200)」、「アートレジンH-219(分子量:25000~50000)」、「アートレジンH-315M(分子量:6600)」、「アートレジンH-417M(分子量:4000)」;大成ファインケミカル社製のアクリルウレタンポリマー「8BR-600(分子量:100000)」;DIC社製のポリマーアクリレート「ユニディックV-6850」;共栄社化学社製のアクリルポリマー「SMP-250AP(分子量:20000~30000)」、「SMP-360A(分子量:20000~30000)」;昭和電工マテリアルズ社製のアクリル樹脂アクリレート「HA7975」等が挙げられる。
【0072】
エネルギー線硬化性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、30,000以下が好ましく、10,000以下がより好ましく、8,000以下がさらに好ましい。エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量が上記範囲であれば、アクリル系樹脂(粘着主剤)と十分な相溶性を示し、粘着層が、エネルギー線照射前には所望の粘着力を示し、エネルギー線照射後には糊残りの発生が抑制され、容易に剥離可能となる。一方、エネルギー線硬化性樹脂組成物の重量平均分子量は、例えば、500以上である。
【0074】
また、エネルギー線硬化性化合物の含有量を調整することにより、エネルギー線照射後の粘着力の制御が可能である。エネルギー線硬化性化合物の含有量が多いと、エネルギー線照射後の粘着力が小さくなる傾向にある。
【0075】
エネルギー線硬化性化合物の含有量としては、例えば、樹脂(粘着主剤)100質量部に対して、5質量部以上150質量部以下が好ましく、20質量部以上100質量部以下がより好ましく、50質量部以上80質量部以下がさらに好ましい。エネルギー線硬化性化合物の含有量が上記範囲内であれば、エネルギー線照射後の粘着層の架橋密度が十分となるので、所望の剥離性を実現することができる。また、凝集力の低下による糊残りの発生を抑制できる。
【0076】
(c)重合開始剤
粘着層は、樹脂(粘着主剤)およびエネルギー線硬化性化合物に加えて、重合開始剤を含有できる。
【0077】
重合開始剤としては、一般的な光重合開始剤を用いることができる。具体的には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α-ヒドロキシケトン類、ベンジルメチルケタール類、α-アミノケトン類、ビスアシルフォスフィンオキサイド類が挙げられる。エネルギー線硬化性化合物としてウレタンアクリレートを使用する場合には、重合開始剤がビスアシルフォスフィン系重合開始剤であることが好ましい。この重合開始剤は耐熱性を有するため、メッシュシートを介して粘着層にエネルギー線を照射する場合であっても、確実にエネルギー線硬化性化合物を硬化できる。
【0078】
重合開始剤は、波長230nm以上に吸収を有することが好ましく、波長300nm以上400nm以下に吸収を有することが好ましい。このような重合開始剤は、波長300nm以上の幅の広いエネルギー線を吸収し、エネルギー線硬化性化合物の重合反応を誘発する活性種を効率的に生成することができる。そのため、少量のエネルギー線照射量でもエネルギー線硬化性化合物を効率的に硬化させることができ、容易に剥離可能となる。また、上述したように、メッシュシートには樹脂等を用いることができ、樹脂には、波長300nm程度までのエネルギー線を吸収するものの、波長300nm程度以上のエネルギー線を透過するものが多い。さらに、近年では、エネルギー線照射装置において、波長300nm以上のLEDランプを使用することが多い。そのため、波長230nm以上に吸収を有する重合開始剤を用いることにより、メッシュシートを透過したエネルギー線を利用してエネルギー線硬化性化合物を硬化させることができる。
【0079】
重合開始剤の含有量は、例えば、樹脂(粘着主剤)およびエネルギー線硬化性化合物の合計100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下が好ましく、0.5質量部以上6質量部以下がより好ましい。重合開始剤の含有量が上記範囲に満たないと、エネルギー線硬化性化合物の重合反応が十分起こらず、エネルギー線照射後の粘着層の粘着力が過剰に高くなり、剥離性を実現することができない場合がある。一方、重合開始剤の含有量が上記範囲を超えると、エネルギー線照射面の近傍にしかエネルギー線が届かず、粘着層の硬化が不十分となる場合がある。また、凝集力が低下し、糊残りの発生の原因となる場合もある。
【0080】
(d)架橋剤
粘着層は、樹脂(粘着主剤)およびエネルギー線硬化性化合物に加えて、架橋剤を含有できる。
【0081】
架橋剤は、少なくとも樹脂(粘着主剤)間を架橋するものであれば特に限定されず、樹脂(粘着主剤)の種類等に応じて適宜選択される。例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤の具体例としては、特開2012-31316号公報に開示されるものが挙げられる。架橋剤は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
架橋剤の含有量は、架橋剤の種類に応じて適宜設定され、例えば、樹脂(粘着主剤)100質量部に対して、0.01質量部以上15質量部以下が好ましく、0.01質量部以上10質量部以下がより好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲に満たないと、密着性が劣る場合や、チップを剥離する際に粘着層が凝集破壊を起こして糊残りが生じる場合がある。一方、架橋剤の含有量が上記範囲を超えると、エネルギー線照射後の粘着層中に架橋剤が未反応モノマーとして残留することで、凝集力の低下により糊残りの発生の原因となる場合がある。
【0083】
(e)添加剤
粘着層は、必要に応じて、各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、粘着付与剤、耐電防止剤、可塑剤、シランカップリング剤、金属キレート剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、防腐剤、消泡剤、ぬれ性調整剤等が挙げられる。
【0084】
(f)その他
エネルギー線硬化型粘着層の形成方法としては、例えば、セパレータ上に粘着剤組成物を塗布する方法が挙げられる。粘着層の形成後は、粘着層上にメッシュシートを配置することにより、メッシュシートと粘着層とセパレータとをこの順に有する電子部品加工用粘着テープが得られる。
【0085】
(2)微粘着型粘着層
微粘着型粘着層は、微粘着性を示す粘着層である。
【0086】
微粘着型粘着層においては、初期粘着力が低いものの、ダイシング時は、電子部品加工用粘着テープに被加工基板およびチップを十分に固定できる。また、初期粘着力が低いことから、再剥離性に優れており、ピックアップ時は、電子部品加工用粘着テープからチップを容易に剥離できる。
【0087】
ここで、微粘着型粘着層が微粘着性を示すとは、ダイシング時は、電子部品加工用粘着テープに被加工基板およびチップを十分に固定でき、ピックアップ時は、電子部品加工用粘着テープからチップを容易に剥離できる程度の粘着力を示すことをいう。
【0088】
微粘着型粘着層は、後述の粘着特性を満たしていれば特に限定されない。中でも、微粘着型粘着層は、アクリル系樹脂を少なくとも含むことが好ましく、アクリル系樹脂および架橋剤を含むことがより好ましい。
【0089】
ここで、微粘着型粘着層がアクリル系樹脂を含むとは、微粘着型粘着層内において、アクリル系樹脂が、架橋を形成せずに単体で存在していてもよく、アクリル系樹脂間もしくはアクリル系樹脂と他の樹脂との間で架橋形成されてなる架橋体として存在していてもよく、上記単体および上記架橋体の両方が存在していてもよい。
【0090】
ここで、粘着層がアクリル系樹脂を含むとは、粘着層内において、アクリル系樹脂が、架橋を形成せずに単体で存在していてもよく、アクリル系樹脂間もしくはアクリル系樹脂と他の樹脂との間で架橋形成されてなる架橋体として存在していてもよく、上記単体および上記架橋体の両方が存在していてもよい。
【0091】
(a)アクリル系樹脂
アクリル系樹脂としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステルを単独重合させた(メタ)アクリル酸エステル重合体、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させた(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。
【0092】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル共重合体において(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするとは、共重合体において、他の単量体よりも(メタ)アクリル酸エステルの割合が30質量%よりも多いことをいい、具体的には、共重合割合が51質量%以上であることをいう。
【0093】
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方をいう。
【0094】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1以上30以下の直鎖状または分岐状のアルキルエステル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル等を使用できる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、特開2014-101457号公報で開示されるものが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルは1種または2種以上を含んでいてもよい。中でも、炭素数1以上18以下、特に炭素数1以上8以下の(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。アクリル系樹脂のガラス転移温度が後述する範囲内になりやすく、粘着層の粘着性を向上できる。
【0095】
上記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルとモノマーまたはオリゴマーとの共重合体であってもよい。(メタ)アクリル酸エステルの他に必要に応じて他のモノマーまたはオリゴマーを共重合成分として含むことで、凝集力、耐熱性等の改質を図れる。上記共重合成分は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な官能基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。また、共重合成分として、シアノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー等の窒素含有モノマーを用いてもよい。上記共重合成分は、アクリル酸エステル重合体に共重合成分として含まれてもよい。
【0096】
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、例えば、10万以上200万以下であることが好ましく、20万以上100万以下であることがより好ましく、40万以上80万以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量が上記範囲よりも小さいと、粘着層の糊残りが生じる可能性がある。一方、重量平均分子量が上記範囲よりも大きいと、粘着力が高くなり、剥離性が低下する可能性がある。
【0097】
アクリル系樹脂のガラス転移温度は、例えば、-100℃以上0℃以下であることが好ましく、-80℃以上-20℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度が上記範囲にあるアクリル系樹脂を主剤として用いることにより、所望の粘着特性が得られやすくなる。
【0098】
アクリル系樹脂のガラス転移温度は、使用するモノマー単位の種類や、組み合わせるモノマー単位の比率等を変更することにより、適宜調整できる。アクリル系樹脂は、モノマーを単独重合した重合体(ホモポリマー)の場合であっても、ガラス転移温度が上記範囲となる場合がある。しかし、ホモポリマーのガラス転移温度が上記範囲にないようなモノマー単位の使用が、制限されるわけではない。種々のモノマー単位を組み合わせて共重合した共重合体のガラス転移温度が、上記範囲内にあればよい。
【0099】
ここで、本明細書において、ガラス転移温度は、損失正接(tanδ)のピークトップの値に基づく方法(DMA法)により測定された値を意味する。また、損失正接は、損失弾性率/貯蔵弾性率の値により決定される。これら弾性率は、重合体または共重合体に対して一定の周波数で力を付与したときの応力を、動的粘弾性測定装置を用いて測定される。
【0100】
アクリル系樹脂は、上述した(メタ)アクリル酸エステル、モノマー、オリゴマー等の単量体を、通常の溶液重合、塊状重合、乳化重合または懸濁重合等の方法により重合させることにより得られる。
【0101】
(b)架橋剤
架橋剤は、アクリル系樹脂を架橋させることが可能な架橋剤であればよく、一般的な架橋剤を使用できる。架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤等が挙げられる。
【0102】
架橋剤の含有量は、例えば、アクリル系樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であり、好ましくは0.3質量部以上10質量部以下である。架橋剤の含有量が上記範囲内であることにより、所望の粘着特性が得られやすくなる。
【0103】
(c)他の成分
粘着層は、必要に応じて、例えば、滑剤、可塑剤、充填剤、フィラー、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、光安定剤、着色剤等の任意の添加剤を含んでいてもよい。
【0104】
(d)その他
微粘着型粘着層の形成方法は、上記エネルギー線硬化型粘着層の形成方法と同様である。
【0105】
(3)粘着層の厚さ
粘着層の厚さは、所望の粘着力が得られる厚さであればよく、例えば、10μm以上であり、25μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。メッシュシートの表面には、開口部および非開口部による凹凸が存在する。粘着層の厚さが所定の値以上であることにより、メッシュシート表面の凹凸を平らにすることができる。これにより、電子部品用粘着シートと被加工基板またはチップとの密着性を高め、ウォータージェットレーザー加工の際のチップ飛びの発生を抑制できる。また、粘着層の厚さが薄すぎると、メッシュシートとの密着性が低下する可能性がある。また、エネルギー線硬化型粘着層の場合、粘着層の厚さが薄すぎると、粘着層のメッシュシート側の面からの酸素阻害により、硬化不良が生じる可能性がある。一方、粘着層の厚さは、例えば、200μm以下である。粘着層の厚さが厚すぎると、水の透過性が低下する可能性がある。
【0106】
なお、図3に例示するように、粘着層2の厚さTは、メッシュシート1の粘着層2側の最表面を基準面Sとしたとき、基準面Sから、粘着層2のメッシュシート1側の最表面までの長さとする。
【0107】
3.他の構成
本実施態様の電子部品加工用粘着テープは、上記のメッシュシートおよび粘着層の他に、必要に応じて、他の構成を有していてもよい。
【0108】
本実施態様の電子部品加工用粘着テープは、粘着層のメッシュシートとは反対側の面にセパレータを有していてもよい。
【0109】
4.電子部品加工用粘着テープの特性
(1)エネルギー線硬化型粘着層
粘着層がエネルギー線硬化型粘着層である場合、エネルギー線照射後のメッシュシートと粘着層との間の剥離力が、エネルギー線照射後のガラス基板に対する粘着力以上であることが好ましい。これにより、被着体への糊残りを抑制できる。
【0110】
粘着層がエネルギー線硬化型粘着層である場合、電子部品加工用粘着テープにおいて、エネルギー線照射前のガラス板に対する粘着力は、例えば、0.5N/25mm以上40N/25mm以下であってもよい。また、エネルギー線照射後のガラス板に対する粘着力は、例えば、2.0N/25mm以下が好ましい。エネルギー線照射後のガラス板に対する粘着力の下限は、特に限定されず、例えば0.01N/25mm以上である。
【0111】
ここで、ガラス板に対する粘着力は、JIS Z0237:2022(粘着テープ・粘着シート試験方法)の試験方法の方法1(温度23℃湿度50%、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠し、幅25mm、剥離角度180°、剥離速度300mm/minの条件で、試験片の長さ方向に剥がすことにより、測定する。ガラス板は、大阪硝子工業社製のフロート板ガラス(大きさ150mm×70mm、厚さ2mm)を使用する。
【0112】
粘着層がエネルギー線硬化型粘着層である場合、電子部品加工用粘着テープにおいて、エネルギー線照射後のメッシュシートと粘着層との間の剥離力は、例えば、上記のエネルギー線照射後のガラス板に対する粘着力以上であり、上記のエネルギー線照射後のガラス板に対する粘着力の2倍以上であってもよい。上記剥離力が上記範囲である場合には、エネルギー線照射後のメッシュシートと粘着層との密着性が高くなるため、被着体への糊残りを抑制できる。一方、上記剥離力の上限は、特に限定されない。例えば、エネルギー線照射後のメッシュシートと粘着層との間の剥離力が非常に大きい場合には、後述のエネルギー線照射後のメッシュシートと粘着層との間の剥離力の測定方法において、メッシュシートと粘着層との間の剥離力が、電子部品加工用粘着テープと被着体との間の剥離力以上となり、メッシュシートと粘着層との間で剥離しないこともある。
【0113】
ここで、エネルギー線照射後のメッシュシートと粘着層との間の剥離力は、T字剥離試験法により、測定する。具体的には、まず、メッシュシートと粘着層とセパレータとをこの順に有する電子部品加工用粘着テープを準備する。この際、電子部品加工用粘着テープにおいて、粘着層のメッシュシートとは反対側の面にセパレータが配置されていない場合には、粘着層のメッシュシートとは反対側の面にセパレータを配置する。次いで、電子部品加工用粘着テープの粘着層にエネルギー線を照射し、硬化させる。例えば、電子部品加工用粘着テープのメッシュシート側の面からエネルギー線を照射する。次いで、電子部品加工用粘着テープからセパレータを剥離して、粘着層を露出させる。次に、電子部品加工用粘着テープの粘着層の面に、被着体(日東電工社製 ポリエステル粘着テープNO.31B)を、2kgのローラを用いて貼り合わせ(1往復)、幅25mmに切断する。その後、6時間エージングし、試験片を作製する。次に、試験片のメッシュシートと粘着層との間で、試験片の長さ方向に強制的に剥離し、試験片のメッシュシートと粘着層との間で剥離された部分の端をそれぞれ引張試験機のつかみ具で止め、剥離速度300mm/min、剥離距離50mmの条件で、T字剥離を行うことにより、エネルギー線照射後のメッシュシートと粘着層との間の剥離力を測定する。測定環境は、温度23℃、湿度50%RHとする。引張試験機としては、例えば、エー・アンド・デイ社製のテンシロンRTF1150を用いることができる。
【0114】
エネルギー線照射後のメッシュシートと粘着層との間の剥離力を制御する手段としては、例えば、メッシュシートの繊維の線径を調整する方法、メッシュシートに表面処理を施す方法、粘着層の厚さを調整する方法、粘着層に含有される成分や組成を調整する方法、粘着層形成時やメッシュシートおよび粘着層の貼合時のエージング温度を調整する方法等が挙げられる。
【0115】
メッシュシートの繊維の線径を調整する方法においては、例えば、粘着層の厚さが一定である場合、繊維の平均線径は小さいほうが、メッシュシートと粘着層との接触面積が大きくなるので、メッシュシートと粘着層との密着性が良くなり、上記剥離力が大きくなる傾向にある。
【0116】
また、メッシュシートに表面処理を施す方法においては、例えば、メッシュシートに表面処理を施すことによって、上記剥離力を大きくすることができる。
【0117】
また、粘着層の厚さを調整する方法においては、メッシュシートの繊維の平均線径が一定である場合、粘着層の厚さは厚いほうが、メッシュシートと粘着層との接触面積が大きくなるので、メッシュシートと粘着層との密着性が良くなり、上記剥離力が大きくなる傾向にある。
【0118】
また、粘着層に含有される成分や組成を調整する方法としては、具体的には、エネルギー線硬化性化合物の含有量、官能基数、分子量を調整する方法、粘着付与剤を添加する方法が挙げられる。例えば、エネルギー線硬化性化合物の含有量が少ないと、上記剥離力が大きくなる傾向にあり、一方で、エネルギー線硬化性化合物の含有量が多いと、上記剥離力が小さくなる傾向にある。また、例えば、エネルギー線硬化性化合物のエネルギー線硬化性官能基の数が少ないと、上記剥離力が大きくなる傾向にあり、一方で、エネルギー線硬化性化合物のエネルギー線硬化性官能基の数が多いと、上記剥離力が小さくなる傾向にある。また、例えば、エネルギー線硬化性化合物の分子量が小さいと、上記剥離力が大きくなる傾向にあり、一方で、エネルギー線硬化性化合物の分子量が大きいと、上記剥離力が小さくなる傾向にある。また、例えば、粘着付与剤を添加すると、上記剥離力が大きくなる傾向にある。
【0119】
また、粘着層形成時やメッシュシートおよび粘着層の貼合時のエージング温度を調整する方法においては、例えば、エージング温度が高いと、上記剥離力が大きくなる傾向にあり、一方で、エージング温度が低いと、上記剥離力が小さくなる傾向にある。
【0120】
(2)微粘着型粘着層
粘着層が微粘着型粘着層である場合、メッシュシートと粘着層との間の剥離力が、ガラス基板に対する粘着力以上であることが好ましい。これにより、被着体への糊残りを抑制できる。
【0121】
粘着層が微粘着型粘着層である場合、電子部品加工用粘着テープにおいて、ガラス板に対する粘着力は、6.0N/25mm以下であり、3.0N/25mm以下であってもよく、0.5N/25mm以下であってもよい。一方、ガラス板に対する粘着力は、例えば、0.05N/25mm以上である。
【0122】
ここで、ガラス板に対する粘着力の測定方法は、上記エネルギー線硬化型粘着層の場合のガラス板に対する粘着力の測定方法と同様である。
【0123】
粘着層が微粘着型粘着層である場合、電子部品加工用粘着テープにおいて、メッシュシートと粘着層との間の剥離力は、例えば、上記のエネルギー線照射後のガラス板に対する粘着力以上であり、上記のエネルギー線照射後のガラス板に対する粘着力の2倍以上であってもよい。上記剥離力が上記範囲である場合には、メッシュシートと粘着層との密着性が高くなるため、被着体への糊残りを抑制できる。一方、上記剥離力の上限は、特に限定されない。例えば、エネルギー線照射後のメッシュシートと粘着層との間の剥離力が非常に大きい場合には、後述のエネルギー線照射後のメッシュシートと粘着層との間の剥離力の測定方法において、メッシュシートと粘着層との間の剥離力が、電子部品加工用粘着テープと被着体との間の剥離力以上となり、メッシュシートと粘着層との間で剥離しないこともある。
【0124】
ここで、メッシュシートと粘着層との間の剥離力は、T字剥離試験法により、測定する。具体的には、まず、電子部品加工用粘着テープの粘着層の面に、被着体(日東電工社製 ポリエステル粘着テープNO.31B)を、2kgのローラを用いて貼り合わせ(1往復)、幅25mmに切断する。その後、6時間エージングし、試験片を作製する。次に、試験片のメッシュシートと粘着層との間で、試験片の長さ方向に強制的に剥離し、試験片のメッシュシートと粘着層との間で剥離された部分の端をそれぞれ引張試験機のつかみ具で止め、剥離速度300mm/min、剥離距離50mmの条件で、T字剥離を行うことにより、エネルギー線照射後のメッシュシートと粘着層との間の剥離力を測定する。測定環境は、温度23℃、湿度50%RHとする。引張試験機としては、例えば、エー・アンド・デイ社製のテンシロンRTF1150を用いることができる。
【0125】
メッシュシートと粘着層との間の剥離力を制御する手段としては、例えば、メッシュシートの繊維の線径を調整する方法、メッシュシートに表面処理を施す方法、粘着層の厚さを調整する方法、粘着層に含有される成分や組成を調整する方法、粘着層形成時やメッシュシートおよび粘着層の貼合時のエージング温度を調整する方法が挙げられる。
【0126】
メッシュシートの繊維の線径を調整する方法、メッシュシートに表面処理を施す方法、粘着層の厚さを調整する方法、粘着層形成時やメッシュシートおよび粘着層の貼合時のエージング温度を調整する方法については、上記エネルギー線硬化型粘着層の場合と同様である。
【0127】
また、粘着層に含有される成分や組成を調整する方法としては、具体的には、粘着付与剤を添加する方法が挙げられる。例えば、粘着付与剤を添加すると、上記剥離力が大きくなる傾向にある。
【0128】
(3)引張強さ
電子部品用粘着テープにおいて、ウォータージェットレーザー加工後の引張強さは、例えば、10N/10mm以上であることが好ましく、20N/10mm以上であってもよく、50N/10mm以上であってもよい。上記引張強さが上記範囲であることにより、ウォータージェットレーザー加工時のメッシュシートの切断をより抑制できる。また、ダイシング後のピックアップ時または転写時の粘着層の破断を抑制できる。一方、上記引張強さの上限は、特に限定されない。
【0129】
ウォータージェットレーザー加工後の引張強さは、JIS K7127:1999に準拠して測定する。具体的な測定条件を下記に示す。引張試験機としては、例えば、エー・アンド・デイ社製「テンシロンRTF1150」を用いることができる。ウォータージェットレーザー加工後の引張強さの測定方法の詳細については、実施例の項に記載する。
<測定条件>
・試験片:10mm×60mmの短冊形
・標線間距離:25mm
・引張速度:200mm/min
【0130】
また、電子部品用粘着テープにおいて、ウォータージェットレーザー加工前の引張強さに対する、ウォータージェットレーザー加工後の引張強さの比率は、例えば、20%以上であることが好ましい。上記比率が上記範囲であれば、ウォータージェットレーザー加工を安定的に行うことができる。
【0131】
5.用途
本実施態様の電子部品加工用粘着テープは、ダイシングテープとして用いることができる。中でも、本実施態様の電子部品加工用粘着テープは、レーザー加工により被加工基板をダイシングする際のダイシングテープとして好適に用いることができる。特に、本実施態様の電子部品加工用粘着テープは、ウォータージェットレーザー加工により被加工基板をダイシングする際のダイシングテープとして好適に用いることができる。
【0132】
II.第2実施態様
本開示における電子部品加工用粘着テープの第2実施態様は、繊維を含有するメッシュシートと、上記メッシュシートの一方の面に配置された粘着層と、を有する電子部品加工用粘着テープであって、上記繊維の平均線径が、100μm以上であり、下記式(2)で表される上記メッシュシートの非開口部のレーザーの透過率Tが、60%以上である。
=(T-B)/(100-B)×100 (2)
上記式(2)において、Tは上記メッシュシートのレーザーの透過率(%)、Bは上記メッシュシートの開口率(%)を示す。
【0133】
図1は、本実施態様の電子部品加工用粘着テープを例示する概略断面図である。図1に例示するように、電子部品加工用粘着テープ10は、繊維を含有するメッシュシート1と、メッシュシート1の一方の面に配置された粘着層2とを有する。
【0134】
図2(a)~(c)は、本実施態様の電子部品加工用粘着テープにおけるメッシュシートを例示する概略平面図および断面図である。図2(a)~(c)については、上記第1実施態様の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0135】
本実施態様においては、繊維の平均線径が所定の値以上であり、メッシュシートの非開口部のレーザーの透過率が所定の値以上であることにより、ウォータージェットレーザー加工時のメッシュシートの切断を抑制できる。
【0136】
したがって、本実施態様の電子部品加工用粘着テープは、ウォータージェットレーザー加工により被加工基板をダイシングする場合に好適に用いることができる。
【0137】
本実施態様の電子部品加工用粘着テープの各構成については、上記第1実施態様の電子部品加工用粘着テープの各構成と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0138】
III.第3実施態様
本開示における電子部品加工用粘着テープの第3実施態様は、ナイロン繊維を含有するメッシュシートと、上記メッシュシートの一方の面に配置された粘着層と、を有する電子部品加工用粘着テープであって、上記ナイロン繊維の平均線径が、100μm以上であり、上記ナイロン繊維が、モノフィラメントであり、上記粘着層の厚さが、25μm以上である。
【0139】
図1は、本実施態様の電子部品加工用粘着テープを例示する概略断面図である。図1に例示するように、電子部品加工用粘着テープ10は、ナイロン繊維を含有するメッシュシート1と、メッシュシート1の一方の面に配置された粘着層2とを有する。
【0140】
図2(a)~(c)は、本実施態様の電子部品加工用粘着テープにおけるメッシュシートを例示する概略平面図および断面図である。図2(a)~(c)については、上記第1実施態様の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0141】
本実施態様においては、ナイロン繊維がモノフィラメントである。モノフィラメントは、切れにくいという利点を有する。また、モノフィラメントは、マルチフィラメントと比較して、メッシュシートのレーザーの透過率を高めることができる。よって、本実施態様においては、ナイロン繊維の平均線径が所定の値以上であり、ナイロン繊維がモノフィラメントであることにより、ウォータージェットレーザー加工時のメッシュシートの切断を抑制できる。
【0142】
また、メッシュシートの表面には、開口部および非開口部による凹凸が存在する。本実施態様においては、粘着層の厚さが所定の値以上であることにより、メッシュシート表面の凹凸を平らにすることができる。これにより、電子部品用粘着シートと被加工基板またはチップとの密着性を高め、ウォータージェットレーザー加工の際のチップ飛びの発生を抑制できる。半導体分野においては、チップの微細化が要求されているが、微細なチップに対してもチップ飛びを効果的に抑制できる。また、粘着層の厚さが所定の値以上であることにより、メッシュシートと粘着層との密着性を高め、被着体への糊残りの発生を抑制できる。また、粘着層がエネルギー線硬化型粘着層である場合、粘着層の厚さが所定の値以上であることにより、粘着層のメッシュシート側の面からの酸素阻害を抑制し、硬化不良を抑制できる。
【0143】
また、ナイロンは、アミド結合を有するため、極性が高い。また、粘着層にはアクリル系樹脂を用いることが好ましく、一般的に、アクリル系粘着剤は極性が高い。よって、本実施態様において、メッシュシートがナイロン繊維を含有することによっても、メッシュシートと粘着層との密着性を高めることができ、被着体への糊残りの発生を抑制できる。
【0144】
したがって、本実施態様の電子部品加工用粘着テープは、ウォータージェットレーザー加工により被加工基板をダイシングする場合に好適に用いることができる。
【0145】
本実施態様の電子部品加工用粘着テープの各構成については、上記第1実施態様の電子部品加工用粘着テープの各構成と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0146】
IV.第4実施態様
本開示における電子部品加工用粘着テープの第4実施態様は、繊維を含有するメッシュシートと、上記メッシュシートの一方の面に配置された粘着層と、を有する電子部品加工用粘着テープであって、ウォータージェットレーザー加工後の引張強さが、10N/10mm以上である。
【0147】
図1は、本実施態様の電子部品加工用粘着テープを例示する概略断面図である。図1に例示するように、電子部品加工用粘着テープ10は、繊維を含有するメッシュシート1と、メッシュシート1の一方の面に配置された粘着層2とを有する。
【0148】
図2(a)~(c)は、本実施態様の電子部品加工用粘着テープにおけるメッシュシートを例示する概略平面図および断面図である。図2(a)~(c)については、上記第1実施態様の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0149】
本実施態様においては、ウォータージェットレーザー加工後の引張強さが所定の値以上であることにより、ウォータージェットレーザー加工時のメッシュシートの切断を抑制できる。また、ダイシング後のピックアップ時または転写時の粘着層の破断を抑制できる。
【0150】
したがって、本実施態様の電子部品加工用粘着テープは、ウォータージェットレーザー加工により被加工基板をダイシングする場合に好適に用いることができる。
【0151】
本実施態様の電子部品加工用粘着テープの各構成については、上記第1実施態様の電子部品加工用粘着テープの各構成と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0152】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0153】
以下、実施例および比較例を示し、本開示をさらに説明する。
【0154】
[実施例1]
粘着主剤(アクリル酸共重合体)100質量部と、ウレタンアクリレート(紫外線硬化性化合物、9官能、分子量4100、有効分65%)50質量部と、光重合開始剤(IGM Resins B.V.「Omnirad 819」)1.5質量部と、架橋剤(イソシアネート系硬化剤(トリレンジイソシアネート(TDI)系アダクト型(トリメチロールプロパン付与物))、固形分75%)3質量部とを、トルエンおよびメチルエチルケトンの混合溶媒(質量比1:1)で希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
【0155】
ポリエチレンテレフタレート(PET)セパレータ(ニッパ株式会社製「PET50×1-M-J2」、厚さ50μm)上に、乾燥後の厚さが50μmとなるように上記粘着剤組成物を塗布し、110℃オーブンで3分間乾燥させて、粘着層を形成した。
【0156】
ポリプロピレンメッシュシート(NBCメッシュテック社製「PP 70目」)を、上記粘着層上にラミネートした後、40℃で3日間エージングを行い、電子部品加工用粘着テープを作製した。
【0157】
[実施例2]
ポリエチレンメッシュシート(NBCメッシュテック社製「PE 70目」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電子部品加工用粘着テープを作製した。
【0158】
[実施例3]
芯部がポリプロピレン(PP)であり、鞘部がポリエチレン(PE)である芯鞘構造の繊維を含むポリオレフィンメッシュシート(NBCメッシュテック社製「ESP-50T」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電子部品加工用粘着テープを作製した。
【0159】
[実施例4]
ナイロンメッシュシート(NBCメッシュテック社製「NB90」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電子部品加工用粘着テープを作製した。
【0160】
[実施例5]
ポリエチレンメッシュシート(NBCメッシュテック社製「PE 120目/ME」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電子部品加工用粘着テープを作製した。
【0161】
[実施例6]
ポリエステルメッシュシート(NBCメッシュテック社製「TB60」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電子部品加工用粘着テープを作製した。
【0162】
[比較例1]
ポリエステルメッシュシート(NBCメッシュテック社製「T-NO.80T」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電子部品加工用粘着テープを作製した。
【0163】
[比較例2]
ナイロンメッシュシート(NBCメッシュテック社製「N-NO.110S」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電子部品加工用粘着テープを作製した。
【0164】
[比較例3]
ナイロンメッシュシート(NBCメッシュテック社製「N-NO.175T」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電子部品加工用粘着テープを作製した。
【0165】
[評価]
(1)式(1)
各パラメータを測定し、式(1)の左辺を算出した。
【0166】
(2)引張強さ
引張試験機として、エー・アンド・デイ社製「テンシロンRTF1150」を用い、JIS K7127:1999に準拠して、下記条件にてウォータージェットレーザー加工前の引張強さを測定した。
<測定条件>
・試験片:10mm×60mmの短冊形
・標線間距離:25mm
・引張速度:200mm/min
【0167】
また、ウォータージェットレーザー加工後の引張強さの測定に際しては、下記方法により試験片を作製した。まず、図4に示すように、電子部品加工用粘着テープ10を30mm×60mmの大きさに切断し、ガラス板31上に、メッシュシートがガラス板側、粘着層が外側を向くように、電子部品加工用粘着テープ10を配置し、カプトンテープ32で固定し、加工用積層体30を得た。ウォータージェットレーザー加工のダイシング装置(SYNOVA社製「レーザー・マイクロジェット」)を用いて、加工用積層体30に、粘着層側の面から、レーザー波長532nm、カットスピード100mm/s、レーザービーム径(ウォータージェット径)50μmの条件にて、図4中の矢印で示すように、同一箇所に10パスした。次に、図4中の一点鎖線で示すように、カッターを用いて、電子部品加工用粘着テープ10の中央部を幅10mmで切断し、試験片33とした。
【0168】
(3)ウォータージェットレーザー加工後の伸長時の破断
上記と同様にして、ウォータージェットレーザー加工後の試験片を作製した。引張試験機として、エー・アンド・デイ社製「テンシロンRTF1150」を用い、JIS K7127:1999に準拠して、下記条件にて引張試験を行った。
<測定条件>
・試験片:10mm×60mmの短冊形
・標線間距離:25mm
・引張速度:200mm/min
【0169】
伸長時の破断は、下記基準にて評価した。
A:60%伸長時に破断しなかった。
B:10%伸長時に破断しなかった。
C:10%伸長時に破断した。
【0170】
(4)メッシュシートと粘着層との間の剥離力
メッシュシートと粘着層との間の剥離力は、エー・アンド・デイ社製のテンシロンRTF1150を用い、T字剥離試験法により測定した。具体的には、まず、電子部品加工用粘着テープの粘着層の面に、被着体(日東電工社製 ポリエステル粘着テープNO.31B)を、2kgのローラを用いて貼り合わせ(1往復)、幅25mmに切断した。その後、6時間エージングし、試験片を作製した。次に、試験片のメッシュシートと粘着層との間で、試験片の長さ方向に強制的に剥離し、試験片のメッシュシートと粘着層との間で剥離された部分の端をそれぞれ引張試験機のつかみ具で止め、剥離速度300mm/min、剥離距離50mmの条件で、T字剥離を行うことにより、エネルギー線照射後のメッシュシートと粘着層との間の剥離力を測定した。測定環境は、温度23℃、湿度50%RHとした。
【0171】
(5)ガラス板に対する粘着力
ガラス板に対する粘着力は、JIS Z0237:2022(粘着テープ・粘着シート試験方法)の試験方法の方法1(温度23℃湿度50%、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠し、幅25mm、剥離角度180°、剥離速度300mm/minの条件で、試験片の長さ方向に剥がすことにより、測定した。ガラス板は、大阪硝子工業社製のフロート板ガラス(大きさ150mm×70mm、厚さ2mm)を用いた。
【0172】
(6)糊残り
上記のガラス板に対する粘着力の測定後のガラス板を目視で観察し、糊残りの有無を判定した。糊残りは、下記基準にて評価した
A:糊残りがなかった。
B:一部糊残りがあった。
C:糊残りがあった。
【0173】
(7)チップ飛び
6インチウェハ用リングフレームに電子部品加工用粘着テープを貼り、電子部品加工用粘着テープに、厚さ625μmの6インチのシリコンウェハを貼着固定した。ウォータージェットレーザー加工のダイシング装置(SYNOVA社製「レーザー・マイクロジェット」)を用いて、カットスピード100mm/s、レーザー波長532nm、ウォータージェット径40μm、水圧250Barの条件にて、各ライン10パスし、2mm間隔で縦横各11本のラインを形成して、チップサイズ2mm×2mmのチップ100個にダイシングした。そして、チップ飛びの有無を確認した。
【0174】
【表1】
【0175】
実施例4について、レーザー波長を532nmから355nmに変更して、ウォータージェットレーザー加工を行ったところ、表1と同様の結果が得られた。
【符号の説明】
【0176】
1 … メッシュシート
2 … 粘着層
10 … 電子部品加工用粘着テープ
20 … 繊維
21 … 経糸
22 … 緯糸
23 … 開口部
24 … 非開口部
図1
図2
図3
図4