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2024-126945樹脂成形品の製造方法、成形型及び樹脂成形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126945
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】樹脂成形品の製造方法、成形型及び樹脂成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/50 20060101AFI20240912BHJP
   B29C 33/68 20060101ALI20240912BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B29C43/50
B29C33/68
B29C43/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035729
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】大西 洋平
(72)【発明者】
【氏名】砂田 衛
(72)【発明者】
【氏名】森上 篤
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AD05
4F202AD08
4F202AD19
4F202AG01
4F202AG03
4F202AH37
4F202AR07
4F202AR12
4F202CA09
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB17
4F202CK42
4F202CM72
4F202CM82
4F202CP01
4F202CQ01
4F204AA36
4F204AD19
4F204AH37
4F204AM32
4F204FA01
4F204FA15
4F204FB01
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F204FQ15
4F204FQ38
(57)【要約】
【課題】 離型フィルムを用いた圧縮成形において、離型フィルムのシワの発生を抑制しつつ、樹脂成形後の樹脂成形品の搬送時に落下するような樹脂突起物の生成を抑制する、樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】 樹脂成形工程は、上型と下型200との間に成形対象物が配置され、キャビティ200Aの底面及び側面に離型フィルムが配置され、かつ、離型フィルム上に樹脂材料が配置された状態で、成形型を型締めして圧縮成形により樹脂成形を行うことで樹脂成形品を製造する工程であり、
搬送工程は、樹脂成形工程後に成形型を型開きし、樹脂成形品を成形型から取り出して搬送する工程であり、
下型側面部材201の上面において、下型側面部材201の内周面と隣接する箇所に、離型フィルムの厚さ以下の深さの段差201Dが形成されている、樹脂成形品の製造方法。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型を用いて樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法であって、
前記成形型は、上型及び下型を含み、
前記上型と前記下型とは互いに対向して配置され、
前記下型は、下型底面部材と下型側面部材とを含み、
前記下型底面部材の上面及び前記下型側面部材の内周面に囲まれた空間によりキャビティが形成され、前記下型底面部材の上面は前記キャビティの底面を形成し、前記下型側面部材の内周面は前記キャビティの側面を形成し、
前記樹脂成形品の製造方法は、樹脂成形工程と搬送工程とを含み、
前記樹脂成形工程は、前記上型と前記下型との間に成形対象物が配置され、前記キャビティの底面及び側面に離型フィルムが配置され、かつ、前記離型フィルム上に樹脂材料が配置された状態で、前記成形型を型締めして圧縮成形により樹脂成形を行うことで前記樹脂成形品を製造する工程であり、
前記搬送工程は、前記樹脂成形工程後に前記成形型を型開きし、前記樹脂成形品を前記成形型から取り出して搬送する工程であり、
前記下型側面部材の上面において、前記下型側面部材の内周面と隣接する箇所に、前記離型フィルムの厚さ以下の深さの段差が形成されている、樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
少なくとも前記下型側面部材における前記段差の上面に前記離型フィルムが配置された状態で前記樹脂成形工程を行う請求項1記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記下型側面部材の前記段差が環状に形成されている、請求項1又は2記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記下型側面部材における前記段差の外側端部が、前記成形対象物の配置領域の外縁よりも内側に位置する、請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記下型側面部材の上面に、前記段差よりも外側まで伸びるエアベント溝が形成されている請求項1から4のいずれか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記下型側面部材において、前記段差と前記エアベント溝とが連結されている請求項5記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記エアベント溝の外側端部は、前記成形対象物の配置領域の外縁よりも外側に位置する請求項5又は6記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂成形工程において、前記上型の下面に前記成形対象物が配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の樹脂成形品の製造方法に用いられる前記成形型。
【請求項10】
樹脂成形品の製造方法に用いる圧縮成形用の成形型であって、
前記成形型は、上型及び下型を含み、
前記上型と前記下型とは互いに対向して配置され、
前記下型は、下型底面部材と下型側面部材とを含み、
前記下型底面部材の上面及び前記下型側面部材の内周面に囲まれた空間によりキャビティが形成され、前記下型底面部材の上面は前記キャビティの底面を形成し、前記下型側面部材の内周面は前記キャビティの側面を形成し、
前記樹脂成形品の製造方法において、前記上型と前記下型との間に成形対象物が配置され、前記キャビティの底面及び側面に離型フィルムが配置され、かつ、前記離型フィルム上に樹脂材料が配置された状態で、前記成形型を型締めして圧縮成形により樹脂成形を行うことで前記樹脂成形品を製造し、
前記下型側面部材の上面において、前記下型側面部材の内周面と隣接する箇所に、前記離型フィルムの厚さ以下の深さの段差が形成されている、成形型。
【請求項11】
請求項9又は10記載の成形型と、
前記成形型における前記上型及び前記下型を型締めする型締め機構と、
を備える樹脂成形装置。
【請求項12】
さらに、前記樹脂成形後に、型開きした前記成形型から前記樹脂成形品を取り出して搬送する搬送機構を含む、請求項11記載の樹脂成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の製造方法、成形型及び樹脂成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品の製造には、成形型による圧縮成形が広く用いられている。また、この圧縮成形において、成形型からの樹脂漏れ等を防止する目的で、離型フィルムが用いられることがある。
【0003】
特許文献1には、離型フィルムを用いて圧縮成形を行う成形型の下型において、下型底面部材(圧縮型)の上面の外周縁に突起を形成し、下型側面部材(枠型)の内周面に段差を形成する構成が記載されている。特許文献1の記載によれば、この構成により、離型フィルムを下型の上面に配置して行う圧縮成形の型締め時に、離型フィルムに発生するシワを除去することができる。離型フィルムにシワを発生させないことで、そのシワに起因する樹脂成形品の不良等を抑制することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-180461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の成形型では、樹脂成形後における樹脂成形品の外周部に、下型側面部材の段差に対応する突起物が残留することになる。そのような突起物が残留すると、成形型から樹脂成形品を取り出して搬送する際に、突起物が落下するおそれがある。そのような突起物の落下は、不良品発生の要因になったり、樹脂成形装置の動作停止の要因になったりし、生産性を低下させるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、離型フィルムを用いた圧縮成形において、離型フィルムのシワの発生を抑制しつつ、樹脂成形後の樹脂成形品の搬送時に落下するような樹脂突起物の生成を抑制する、樹脂成形品の製造方法、成形型及び樹脂成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明の樹脂成形品の製造方法は、
成形型を用いて樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法であって、
前記成形型は、上型及び下型を含み、
前記上型と前記下型とは互いに対向して配置され、
前記下型は、下型底面部材と下型側面部材とを含み、
前記下型底面部材の上面及び前記下型側面部材の内周面に囲まれた空間によりキャビティが形成され、前記下型底面部材の上面は前記キャビティの底面を形成し、前記下型側面部材の内周面は前記キャビティの側面を形成し、
前記樹脂成形品の製造方法は、樹脂成形工程と搬送工程とを含み、
前記樹脂成形工程は、前記上型と前記下型との間に成形対象物が配置され、前記キャビティの底面及び側面に離型フィルムが配置され、かつ、前記離型フィルム上に樹脂材料が配置された状態で、前記成形型を型締めして圧縮成形により樹脂成形を行うことで前記樹脂成形品を製造する工程であり、
前記搬送工程は、前記樹脂成形工程後に前記成形型を型開きし、前記樹脂成形品を前記成形型から取り出して搬送する工程であり、
前記下型側面部材の上面において、前記下型側面部材の内周面と隣接する箇所に、前記離型フィルムの厚さ以下の深さの段差が形成されている、樹脂成形品の製造方法である。
【0008】
本発明の第1の成形型は、本発明の樹脂成形品の製造方法に用いられる前記成形型である。
【0009】
本発明の第2の成形型は、
樹脂成形品の製造方法に用いる圧縮成形用の成形型であって、
前記成形型は、上型及び下型を含み、
前記上型と前記下型とは互いに対向して配置され、
前記下型は、下型底面部材と下型側面部材とを含み、
前記下型底面部材の上面及び前記下型側面部材の内周面に囲まれた空間によりキャビティが形成され、前記下型底面部材の上面は前記キャビティの底面を形成し、前記下型側面部材の内周面は前記キャビティの側面を形成し、
前記樹脂成形品の製造方法において、前記上型と前記下型との間に成形対象物が配置され、前記キャビティの底面及び側面に離型フィルムが配置され、かつ、前記離型フィルム上に樹脂材料が配置された状態で、前記成形型を型締めして圧縮成形により樹脂成形を行うことで前記樹脂成形品を製造し、
前記下型側面部材の上面において、前記下型側面部材の内周面と隣接する箇所に、前記離型フィルムの厚さ以下の深さの段差が形成されている、成形型である。
なお、以下において、単に「本発明の成形型」という場合は、特に断らない限り、本発明の第1の成形型及び本発明の第2の成形型の両方を含む。
【0010】
本発明の樹脂成形装置は、
本発明の成形型と、
前記成形型における前記上型及び前記下型を型締めする型締め機構と、
を備える樹脂成形装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、離型フィルムを用いた圧縮成形において、離型フィルムのシワの発生を抑制しつつ、樹脂成形後の樹脂成形品の搬送時に落下するような樹脂突起物の生成を抑制する、樹脂成形品の製造方法、成形型及び樹脂成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の成形型の構成の一例を示す図である。図1(a)は平面図である。図1(b)は断面図である。
図2図2は、本発明の樹脂成形品の製造方法における一工程を例示する断面図である。
図3図3は、本発明の樹脂成形品の製造方法における別の一工程を例示する断面図である。
図4図4は、本発明の樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を例示する断面図である。
図5図5は、本発明の樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を例示する断面図である。
図6図6は、本発明の樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を例示する断面図である。
図7図7は、本発明の樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を例示する断面図である。
図8図8は、本発明の樹脂成形装置の構成の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、成形型は、特に限定されないが、例えば、金型であっても良く、又は、セラミック型等であっても良い。
【0014】
本発明において、樹脂突起物の生成、離型フィルムの弛み、離型フィルムのシワの発生等の現象の「抑制」という場合は、特に断らない限り、それらの現象の発生を小さく抑える場合に限定されず、それらの現象の発生をゼロにする場合も含むものとする。
【0015】
本発明において、樹脂成形品は、特に限定されないが、例えば、IC、半導体チップ等の電子素子(以下、単に「チップ」ということがある。)を樹脂封止した電子部品でもよい。より具体的には、例えば、チップを樹脂封止することにより、前記チップが樹脂封止された電子部品(完成品としての電子部品、又はパッケージ等ともいう。以下、単に「電子部品」ということがある。)とすることができる。なお、一般に、「電子部品」は、樹脂封止する前のチップをいう場合と、チップを樹脂封止した状態をいう場合とがある。ただし、本発明においては、樹脂封止する前のチップを「電子素子」ともいい、樹脂封止されたチップを「電子部品」(完成品としての電子部品)という。つまり、本発明において、「チップ」と「電子素子」とは同義であり、具体的には、例えば、IC、半導体チップ、電力制御用の半導体素子、抵抗素子、キャパシタ素子等のチップが挙げられる。なお、「半導体素子」は、例えば、半導体を素材として作られた回路素子をいう。本発明における「チップ」又は「電子素子」は、樹脂封止する前のチップであれば、特に限定されず、チップ状でなくてもよい。
【0016】
本発明において、成形前の樹脂材料及び成形後の樹脂としては、特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。また、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂を一部に含んだ複合材料であってもよい。本発明において、成形前の樹脂材料の形態としては、例えば、粉粒体状樹脂(顆粒状樹脂を含む)、液状樹脂、シート状の樹脂、タブレット状の樹脂等が挙げられる。なお、本発明において、液状樹脂とは、常温で液状であってもよいし、加熱により溶融されて液状となる溶融樹脂も含む。前記樹脂の形態は、成形型のキャビティやポット等に供給可能であれば、その他の形態でも構わない。
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態を図面に基づいて説明する。各図は、説明の便宜のため、適宜省略、誇張等をして模式的に描いている。
【実施形態1】
【0018】
本実施形態では、本発明の成形型の一例と、それを用いた樹脂成形品の製造方法の一例とについて説明する。
【0019】
図1に、本発明の成形型の構成の一例を示す。図1(a)は平面図(上面図)である。図1(b)は、図1(a)のI-I方向に見た断面図である。ただし、図1では、図示の簡略化のために、成形型の上型の図示を省略し、下型についても簡略化して図示している。
【0020】
図1に示すとおり、この成形型は、下型200を含む。また、図示していないが、この成形型は、前述のとおり、上型を含む。上型と下型200とは、上型の下面と下型200の上面とが互いに対向するように配置されている。上型の構成は特に限定されないが、例えば、後述する図2~7のように上型下面に成形対象物を固定可能な構成であってもよい。
【0021】
図示のとおり、下型200は、下型底面部材202と下型側面部材201とを含む。下型底面部材202の上面及び下型側面部材201の内周面に囲まれた空間によりキャビティ200Aが形成されている。下型底面部材202の上面はキャビティ200Aの底面を形成し、下型側面部材201の内周面はキャビティ200Aの側面を形成する。後述する図2~7で説明するとおり、上型と下型200との間に成形対象物が配置され、キャビティ200Aの底面及び側面に離型フィルムが配置され、かつ、離型フィルム上に樹脂材料が配置された状態で、成形型を型締めして圧縮成形により樹脂成形を行うことで樹脂成形品を製造する。
【0022】
また、図1の下型200では、下型底面部材202の上面の外周縁には、突起が形成されておらず面一である。
【0023】
下型側面部材201の上面において、下型側面部材201の内周面と隣接する箇所に、離型フィルムの厚さ以下の深さの段差201Dが形成されている。段差201Dの外側端部は、成形対象物の配置領域αの外縁よりも内側に位置する。また、下型側面部材201の上面に、段差201Dよりも外側まで伸びるエアベント溝201Cが形成されている。エアベント溝201Cは、下型側面部材201の上面に形成された溝である。エアベント溝201Cは複数であり、段差201Dの周囲の一部に放射状に形成されている。図1では、段差201Dとエアベント溝201Cとは連結されている。エアベント溝201Cの外側端部は、成形対象物の配置領域αの外縁よりも外側に位置する。例えば、キャビティ200A内の気体(空気等)をエアベント溝201C内に逃がすことが可能である。また、例えば、エアベント溝201Cを介して離型フィルムを吸引すること等も可能である。
【0024】
段差201Dの幅(下型側面部材201の内周面と接する側から反対側までの距離)W1は、特に限定されないが、離型フィルムへのシワの発生をさらに抑制しやすくする等の観点から、例えば0.05mm以上が好ましい。上限値は特に限定されず、成形対象物(例えば基板等)の端面から段差201Dまでの距離等にもよるが、例えば、30mm以下、20mm以下、10mm以下、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下、1mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、0.2mm以下、又は0.1mm以下である。
【0025】
また、図1では、下型側面部材201の上面において、下型側面部材201の内周面と隣接する箇所の全周(すべての箇所)に、段差201Dが形成されている。しかし、本発明はこれに限定されず、段差201Dが全周に形成されていなくてもよい。例えば、下型側面部材201の上面において下型側面部材201の内周面と隣接する箇所の一部にのみ段差201Dが設けられ、一部には段差201Dが設けられていなくてもよい。具体的には、例えば、ごく微量の樹脂材料であっても漏れることが許されない箇所などに対し、部分的に段差201Dを設けない構造でもよい。
【0026】
さらに、下型側面部材201の上面には、貫通孔201A及び貫通孔201Bが形成されている。貫通孔201Aは、段差201D及びエアベント溝201Cの外側の一部に配置され、下型側面部材201の上面から下面まで貫通している。図示のとおり、貫通孔201Aは、下型側面部材201の上面に、側方から見た断面がV字形状である溝が形成され、そのV字溝の底に、平面形状が円形である複数の貫通孔が形成された構造を有する。貫通孔201Bは、貫通孔201Aの外側の全周を囲むように配置され、下型側面部材201の上面から下面まで貫通している。後述する図2~7で説明するとおり、貫通孔201A及び貫通孔201Bを介して離型フィルムを吸引してキャビティ200Aのキャビティ面に吸着させることができる。また、後述するとおり、キャビティ200A内に、樹脂成形用の樹脂を収容可能である。
【0027】
つぎに、図2図7の模式的な工程断面図を用いて、図1の成形型及びそれを含む本発明の樹脂成形装置を用いた本発明の樹脂成形品の製造方法について、例を挙げて説明する。図2図7において、図1と同一の構成要素は、同一の符号で示している。ただし、図示の便宜上、図1とは形状等が異なる場合がある。
【0028】
まず、図2を用いて、樹脂成形装置の構成について説明する。同図に示すとおり、この樹脂成形装置における成形型は、図1に示した下型200に加え、上型100を有する。さらに、図1に示すとおり、この樹脂成形装置は、成形型に加え、外気遮断部材300と、離型フィルム吸着機構(図示せず)とを含む。上型100の型面と、下型200の型面とは、互いに対向している。上型100は、上型保持部材110の下面に固定されている。下型200は、下型保持部材210の上面に固定されている。上型100は、後述するように、基板10が固定される型である。基板10は、本発明の「成形対象物」に該当する。下型200は、後述するように、型面にキャビティが形成されていて、この型面に離型フィルムが吸着される型である。外気遮断部材300は、上型保持部材110の下面及び下型保持部材210の上面に、それぞれ、上型100及び下型200の周囲を囲むように取り付けられている。外気遮断部材300は、後述するように、上型保持部材110及び下型保持部材210とともに成形型(上型100及び下型200)を囲んで外気から遮断可能である。
【0029】
上型100は、上型本体102にフィルム押え103及びクランパ104が取り付けられて形成されている。フィルム押え103は、上型弾性部材103sを介して上型本体102の下部に取り付けられている。本実施形態では、上型弾性部材としてスプリングを用いている。フィルム押え103は、上型弾性部材103sの伸縮により上下動可能である。そして、後述するように、フィルム押え103により離型フィルムを下型側面部材201に押さえつけることができる。クランパ104は、図示のとおり、基板10を、上型本体102下面とクランパ104とで挟んで固定することができる。なお、フィルム押え103及びクランパ104の配置位置は、図2の配置に限定されず任意である。
【0030】
上型本体102及び上型保持部材110には、その上面から下面まで貫通する貫通孔100B及び300Bが設けられている。貫通孔100Bの下端は、上型本体102の下面における基板10の固定面に開いている。後述するように、貫通孔100Bの内部を吸引して減圧にすることで、基板10を上型本体102に吸着できる。貫通孔300Bの下端は、基板10の固定面の外周部分に開いている。後述するように、貫通孔300Bの内部を吸引して減圧にすることで、外気遮断部材300により囲まれた空間を陰圧にできる。
【0031】
下型200は、図1で説明したとおり、下型底面部材202と、下型側面部材201とを有する。下型側面部材201は、下型弾性部材201sを介して、下型底面部材202の上面の周縁部に取付けられている。本実施形態では、下型弾性部材としてスプリングを用いている。下型側面部材201は、下型弾性部材201sの伸縮により上下動可能である。また、図示のとおり、下型底面部材202の上面の中央部(下型側面部材201が取り付けられていない部分)と、下型側面部材201の内側面とで囲まれた空間により、キャビティ200Aが形成される。後述するとおり、キャビティ200A内に、樹脂成形用の樹脂を収容可能である。
【0032】
下型底面部材202の上面の外周縁には、前述のとおり、突起が形成されておらず面一である。
【0033】
下型側面部材201の上面には、図1で説明した段差201D及びエアベント溝201Cが形成されている。段差201D及びエアベント溝201Cの配置及び構成は、それぞれ図1で説明したとおりである。
【0034】
下型側面部材201には、前述のとおり、貫通孔201A及び201Bが設けられている。また、下型底面部材202及び下型保持部材210には、貫通孔200Bが設けられている。貫通孔200Bは、下端が下型底面部材202下面から下型保持部材210の下面にまで開いており、他端が下型底面部材202と下型側面部材201との隙間につながって、その隙間とともに貫通孔200Bを形成している。貫通孔201Aは、下型保持部材210を貫通し、さらに下型底面部材202の下面から下型側面部材201の内縁部の上面まで貫通している。貫通孔201Bは、下型保持部材210を貫通し、さらに下型底面部材202の下面から下型側面部材201の外縁部の上面まで貫通している。後述するように、離型フィルム吸着機構220により貫通孔200B、201A及び201Bの内部を吸引して減圧にすることで、下型200の型面に離型フィルムを吸着できる。そして、後述するとおり、上型100の型面と下型200の型面との間において、離型フィルムが吸着された状態で樹脂成形が行われる。なお、下型側面部材201には、離型フィルム吸着用の貫通孔があっても無くてもよいし、貫通孔がある場合も、その配置は任意である。
【0035】
離型フィルム吸着機構は、図示していないが、真空ポンプ等を用いることができる。また、図示していないが、この樹脂成形装置は、樹脂成形後に成形型を型開きし、樹脂成形品を成形型から取り出して搬送する搬送機構をさらに含む。
【0036】
外気遮断部材300は、上型保持部材110及び下型保持部材210の周縁部にそれぞれ取り付けられている。上型保持部材110と上側の外気遮断部材300との間、上側の外気遮断部材300と下側の外気遮断部材300との間、及び、下側の外気遮断部材300と下型保持部材210との間には、それぞれ、弾力性を有するOリング300Aが設けられている。
【0037】
つぎに、この樹脂成形装置を用いた樹脂成形方法の例について説明する。まず、図2に示すように、基板10を、上型本体102下面とクランパ104とで挟んで固定する。基板10は、前述のとおり、本発明における「成形対象物」に該当する。基板10の下面(上型本体102に対する固定面と反対側の面)には、図示のとおり、チップ10aが固定されている。樹脂成形時に、チップ10aを樹脂封止して、電子部品(樹脂成形品)を製造することができる。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば、基板にチップ等の部材が固定されていなくてもよい。また、例えば、基板に、チップ以外の他の部材(例えばワイヤ等)が固定されていてもよい。さらに、同図に示すとおり、離型フィルム11を、その上に載置された樹脂材料20aとともに、下型200の型面の位置まで搬送する。樹脂材料20aを離型フィルム11上に載置する手段及び方法は、特に限定されず、例えば、フィーダーなどの公知の手段、方法等を適宜用いてもよい。離型フィルム11及び樹脂材料20aを下型200の型面の位置まで搬送する手段及び方法は、特に限定されず、例えば、ローダーなどの公知の手段、方法等を適宜用いてもよい。また、樹脂材料20aは、本実施形態では顆粒状の樹脂であるが、これに限定されず、例えば、シート状の樹脂、液状の樹脂、又はタブレット状の樹脂、半固体状の流動性樹脂等であってもよい。
【0038】
つぎに、図3図4に示すとおり、離型フィルム吸着工程を行う。まず、図3に示すとおり、離型フィルム11及び樹脂材料20aを、下型200に受け渡す。さらに、矢印201a及び201bに示すとおり、下型側面部材201における貫通孔201A及び201Bの内部を、離型フィルム吸着機構(図示せず)で減圧にする。離型フィルム吸着機構は特に限定されないが、例えば、真空ポンプ等であってもよい。これにより、離型フィルム11が、下型側面部材201の上面に吸着され、キャビティ200A上に配置された離型フィルム11にテンション(張力)がかかり、離型フィルムのシワが伸ばされる。このとき、下型側面部材201に段差201Dが形成されていることで、離型フィルムが段差201Dによって伸ばされるので、離型フィルムの伸びがさらに促進される。これにより離型フィルムの弛みが抑制される。したがって、離型フィルムへのシワの発生が抑制され、そのシワに起因する樹脂成形品の不良等をも抑制することが可能である。また、下型側面部材201にエアベント溝201Cが形成されていることで、さらに離型フィルムの弛み及びシワの発生が抑制され、そのシワに起因する樹脂成形品の不良等を抑制することができる。
【0039】
さらに、図4の矢印200bに示す通り、下型側面部材201と下型底面部材202との間の空隙に連絡する貫通孔200B内を、離型フィルム吸着機構220で減圧にして吸引する。これにより、離型フィルム11にはさらにテンションがかかりシワが伸ばされるとともに、離型フィルム11は、キャビティ200Aのキャビティ面上に吸着される。このようにして、キャビティ200Aの底面及び側面に離型フィルム11が配置された状態となる。その結果、図示のとおり、樹脂材料20aは、離型フィルム11上に載置(配置)された状態で、キャビティ200A内に載置(配置)される。なお、このとき、図示のように、少なくとも下型側面部材201における段差201Dの上面に離型フィルム11を配置することが好ましい。また、離型フィルム11を下型200に吸着させる順序は、上述の順序に限定されず、離型フィルム11をキャビティ200Aのキャビティ面上にシワができないように吸着できればよく、離型フィルム11の種類に応じて適宜変更することができる。
【0040】
また、図4の矢印100bに示すとおり、上型本体102の貫通孔100Bの内部を、成形対象物吸着機構(図示せず)で減圧にして吸引する。成形対象物吸着機構は特に限定されないが、例えば、真空ポンプ等であってもよい。これにより、基板10は、その上面全体が上型本体102の下面に吸着されて、より強固に固定される。なお、例えば、図2又は図3の段階で、このように基板10の上型本体102への吸着を開始してもよい。
【0041】
なお、本実施形態では、基板(成形対象物)を上型に保持(固定)する機構として、クランパによる挟持に加え、減圧による吸着を用いている。これにより、基板を吸着する力が増大し、離型フィルムを剥離する力も大きくなる。ただし、本発明において、成形対象物を上型に保持する機構は、これに限定されず、例えば、クランパによる挟持のみでもよい。
【0042】
本実施形態では、成形型は、その内部に設けられたヒータ(図示せず)により常時予備加熱されており、樹脂材料20aは、離型フィルム11とともにキャビティ200A内に載置されたときから溶融し始め、やがて溶融樹脂20bとなる。溶融樹脂20bは、溶融した「樹脂材料」に該当する。なお、成形型の予備加熱は、離型フィルム吸着工程(図3図4)に先立ち、又は離型フィルム吸着工程と同時に行ってもよい。また、離型フィルム吸着工程後に成形型の予備加熱を開始してもよい。
【0043】
つぎに、図5図7に示すとおり、樹脂成形工程及び搬送工程を行う。なお、樹脂成形工程は、前述のとおり、上型と下型との間に成形対象物が配置され、キャビティの底面及び側面に離型フィルムが配置され、かつ、離型フィルム上に樹脂材料が配置された状態で、成形型を型締めして圧縮成形により樹脂成形を行うことで樹脂成形品を製造する工程である。搬送工程は、前述のとおり、樹脂成形工程後に成形型を型開きし、樹脂成形品を成形型から取り出して搬送する工程である。
【0044】
まず、下型保持部材210を上昇させ、下型200を外気遮断部材300とともに上昇させる。それにより、図5に示すとおり、まず、上下の外気遮断部材300が、各Oリング300Aを介して閉じ、成形型(上型100及び下型200)が、上型保持部材110と下型保持部材210と外気遮断部材300により外気から遮断される。この上型保持部材110、下型保持部材210、及び外気遮断部材300で囲まれた空間Sを、以下「外気遮断空間内」という場合がある。外気遮断部材300が閉じるのとほぼ同時に、フィルム押え103が、離型フィルム11を介して下型側面部材201に接触し、離型フィルム11が下型側面部材201とフィルム押え103との間に挟持される。この時、上型100と下型200はまだ型締めされておらず、基板10と溶融樹脂20bはまだ接触していない。この状態で、矢印300bに示すように、上型100の貫通孔300Bの内部を、外気遮断部材内部減圧機構(図示せず)で減圧する。これにより、外気遮断空間S内を陰圧にする。なお、外気遮断部材内部減圧機構は特に限定されないが、例えば、真空ポンプ等であってもよい。
【0045】
その後、図6に示すとおり、下型保持部材210(下型200)をさらに上昇させる。これにより、チップ10aが溶融樹脂20bに浸漬されるとともに、基板10が溶融樹脂20bに接触する。このようにして溶融樹脂20bがキャビティ200Aに充填された状態となり、上型100と下型200とが型締めされる。このとき、下型底面部材202の上面の外周縁には突起が形成されておらず面一であるために、下型底面部材202の上面の外周縁の高さは、下型側面部材201における段差201Dの高さよりも低くなっている。これにより、製造された樹脂成形品には、下型底面部材202の上面の外周縁の突起(段差)に対応する突起物が発生しない。そのため、成形型から樹脂成形品を取り出して搬送する際に、そのような突起物が落下しない。したがって、そのような突起物の落下が不良品発生の要因になったり、脂成形装置の動作停止の要因になったりし、生産性を低下させるおそれがない。さらに、そのような突起物の発生により樹脂材料が無駄になることもないため、歩留まりもよい。これに加えて、基板10の有効領域を低減させることがないので、基板10を効率的に利用することができる。
【0046】
また、段差201Dの深さは、前述のとおり、離型フィルム11の厚さ以下である。これにより、段差201Dの部分に溶融樹脂20bが入り込んで硬化し、余剰樹脂部(樹脂バリ)を形成する現象を抑制できる。また、段差201Dの深さが離型フィルム11の厚さ以下であれば、仮に段差201Dの部分に溶融樹脂20bが入り込んでも、その量はごくわずかである。そのため、前述のような余剰樹脂部が形成されても、きわめて薄く軽量な余剰樹脂部になるので、そのような余剰樹脂部の落下による問題が起こりにくい。
【0047】
なお、このとき、平面視において、段差201Dが基板10の端面より内側に形成されていればよく、例えば、段差201Dの外側端面から基板10の端面までの距離W2を、1mm以上とすることができる。距離W2の上限値は特に限定されないが、例えば、50mm以下、40mm以下、30mm以下、20mm以下、10mm以下、5mm以下、4mm以下、3mm以下、又は2mm以下である。なお、距離W2は、段差201Dの外側端面と成形対象物(基板10)の配置領域の外縁との間の距離と表現することもできる。
【0048】
型締め後、外気遮断空間S内を大気圧に戻す。なお、外気遮断空間S内を大気圧に戻すタイミングは、型締め後で、溶融樹脂20bの硬化が完了するまでになされればよい。
【0049】
さらに、図7に示すとおり、溶融樹脂20bを固化(硬化)させて樹脂成形工程を完了させ、樹脂成形品を製造するとともに、離型フィルムを樹脂成形品から剥離する。
【0050】
まず、図6のように型締めした状態で、溶融樹脂20bを固化させる。例えば、溶融樹脂20bが熱硬化性樹脂の場合は、成形型を、その内部のヒーターによりさらに加熱することによって、硬化樹脂(図7に示す硬化樹脂20)としてもよい。また、例えば、溶融樹脂20bが熱可塑性樹脂の場合は、成形型の加熱を停止し、放冷するか、又は成形型を急冷することで、溶融樹脂20bを固化させ、硬化樹脂20としてもよい。なお、型締め後も下型保持部材210には、下型200を上昇させるように力が働いているため、溶融樹脂20bは圧縮されながら硬化する。これにより、基板10、チップ10a及び硬化樹脂20を含む樹脂成形品30(図7)を製造することができる。
【0051】
その後、成形型を型開きし、樹脂成形品を成形型から取り出して搬送する搬送工程を行う。具体的には、まず、図7に示すとおり、下型保持部材210を下降させ、下型200及び外気遮断部材300を下降させ、上型100と下型200とを型開きする。これにより、図示のとおり、硬化樹脂20に密着した離型フィルム11が硬化樹脂20から剥離する。さらにその後、搬送機構(図示せず)により樹脂成形品30を成形型から取り出して搬送する。
【0052】
以上のようにして、本実施形態の樹脂成形品の製造方法を実施し、基板10の一方の面が硬化樹脂20で樹脂成形された樹脂成形品30を製造することができる。
【0053】
本発明の成形型によれば、例えば、成形条件に依存せず、かつ成形エリア外に樹脂だまりを設けることなく、極めてシンプルな構成により樹脂成形品と離型フィルムとの離型性を改善することも可能である。
【実施形態2】
【0054】
本実施形態では、本発明の樹脂成形装置の全体の構成及びそれを用いた樹脂成形品の製造方法の一例について説明する。
【0055】
図8を参照して、樹脂成形装置1を用いた樹脂成形方法の一例について説明する。樹脂成形装置1では、樹脂材料として顆粒状樹脂20a(図2~4参照)を用いている。まず、基板供給・収納モジュール41において、基板供給部44から基板載置部50に基板10(図2~7参照)を送り出す。次に、基板搬送機構51を所定位置S1から-Y方向に移動させて基板載置部50から基板10を受け取る。基板搬送機構51を所定位置S1に戻す。次に、本樹脂成形装置1に3つ備えられている成形モジュール42A~42Cのうち、例えば、成形モジュール42Bの所定位置P1まで+X方向に基板搬送機構51を移動させる。次に、成形モジュール42Bにおいて、基板搬送機構51を-Y方向に移動させて下型200上の所定位置C1に停止させる。次に、基板搬送機構51を上昇させて基板10を上型100に固定する。その後、基板搬送機構51を基板供給・収納モジュール41の所定位置S1まで戻す。
【0056】
なお、基板搬送機構51は、後述するように、樹脂成形後に、型開きした成形型から樹脂成形品を取り出して搬送するための「搬送機構」としても用いることができる。
【0057】
次に、離型フィルム供給機構53に収容された離型フィルム11を、材料搬送機構56が受け取り、成形モジュール42Bの成形型の下型200まで搬送し、下型200のキャビティ200Aに設置する。
【0058】
次に、X-Yテーブル52を所定位置T1から-Y方向に移動させて、X-Yテーブル52を樹脂材料収容枠54の下方の所定位置に停止させる。X-Yテーブル52の上に樹脂材料収容枠54を載置する。樹脂材料収容枠54が載置されたX-Yテーブル52を+X方向に移動させて、樹脂材料収容枠54を樹脂材料投入機構55の下方の所定位置に停止させる。X-Yテーブル52をX方向及びY方向に移動させることによって、樹脂材料投入機構55から樹脂材料収容枠54に所定量の樹脂材料20a(図2~4参照)を供給する。樹脂材料収容枠54が載置されたX-Yテーブル52を所定位置T1に戻す。
【0059】
次に、材料搬送機構56を所定位置M1から-Y方向に移動させて、X-Yテーブル52の上に載置されている樹脂材料収容枠54を受け取る。材料搬送機構56を所定位置M1に戻す。次に、材料搬送機構56を成形モジュール42Bの所定位置P1まで-X方向に移動させる。次に、成形モジュール42Bにおいて、材料搬送機構56を-Y方向に移動させて下型200上の所定位置C1に停止させる。材料搬送機構56を下降させて、樹脂材料20aをキャビティ200Aに設置された離型フィルム11の上面に供給する。供給が終了した後、材料搬送機構56を所定位置M1まで戻す。
【0060】
次に、成形モジュール42Bにおいて、本発明の樹脂成形品の製造方法における「樹脂成形工程」を行う。この「樹脂成形工程」は、上型と前記下型との間に基板(成形対象物)10が配置され、キャビティ200Aの底面及び側面に離型フィルム11(図2~7参照)が配置され、かつ、離型フィルム11上に樹脂材料が配置された状態で、成形型を型締めして圧縮成形により樹脂成形を行うことで樹脂成形品30を製造する。本実施形態では、型締め機構60によって下型200を上昇させ、上型100と下型200とを型締めして樹脂成形し、樹脂成形品30を製造する。この「樹脂成形工程」は、さらに具体的には、例えば、図5図7で説明したようにして行うことができる。
【0061】
樹脂成形工程後に、本発明の樹脂成形品の製造方法における「搬送工程」を行う。この搬送工程は、成形型を型開きし、樹脂成形品30を成形型から取り出して搬送する工程である。具体的には、まず、樹脂成形が完了した後、成形型の上型100と下型200とを型開きする。成形型を型開きした後に、基板供給・収納モジュール41の所定位置S1から下型200上の所定位置C1に基板搬送機構51を移動させて、樹脂成形品30を受け取る。次に、基板搬送機構51を移動させ、基板載置部50に樹脂成形品30を受け渡す。基板載置部50から樹脂成形品収納部45に樹脂成形品30を収納する。
【0062】
本実施形態においては、基板供給・収納モジュール41と材料供給モジュール43との間に、3個の成形モジュール42A、42B、42CをX方向に並べて装着した。ただし、成形モジュールの数は、3つに限定されず、任意である。また、基板供給・収納モジュール41と材料供給モジュール43とを1つのモジュールにして、そのモジュールに1個の成形モジュール42AをX方向に並べて装着してもよい。これにより、成形モジュール42A、42B、・・・を増減することができる。したがって、生産形態や生産量に対応して、樹脂成形装置1の構成を最適にすることができるので、生産性の向上を図ることができる。
【0063】
本実施形態においては、離型フィルム11を供給する離型フィルム供給機構53を材料供給モジュール43内に設けた。これに限らず、離型フィルム11を供給する離型フィルム供給機構53を、材料供給モジュール43内でなく、新たに離型フィルム供給モジュールとして設けることができる。この場合には、例えば、離型フィルム供給モジュールが、成形モジュール42Cと材料供給モジュール43との間又は成形モジュール42Cと反対側の材料供給モジュール43の隣に装着するとよい。このようにすれば、従来の装置に離型フィルム供給モジュールを追加するだけで樹脂成形装置1を構成することができる。
【0064】
さらに、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
【0065】
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載し得るが、以下には限定されない。

(付記1)
成形型を用いて樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法であって、
前記成形型は、上型及び下型を含み、
前記上型と前記下型とは互いに対向して配置され、
前記下型は、下型底面部材と下型側面部材とを含み、
前記下型底面部材の上面及び前記下型側面部材の内周面に囲まれた空間によりキャビティが形成され、前記下型底面部材の上面は前記キャビティの底面を形成し、前記下型側面部材の内周面は前記キャビティの側面を形成し、
前記樹脂成形品の製造方法は、樹脂成形工程と搬送工程とを含み、
前記樹脂成形工程は、前記上型と前記下型との間に成形対象物が配置され、前記キャビティの底面及び側面に離型フィルムが配置され、かつ、前記離型フィルム上に樹脂材料が配置された状態で、前記成形型を型締めして圧縮成形により樹脂成形を行うことで前記樹脂成形品を製造する工程であり、
前記搬送工程は、前記樹脂成形工程後に前記成形型を型開きし、前記樹脂成形品を前記成形型から取り出して搬送する工程であり、
前記下型側面部材の上面において、前記下型側面部材の内周面と隣接する箇所に、前記離型フィルムの厚さ以下の深さの段差が形成されている、樹脂成形品の製造方法。
(付記2)
少なくとも前記下型側面部材における前記段差の上面に前記離型フィルムが配置された状態で前記樹脂成形工程を行う付記1記載の樹脂成形品の製造方法。
(付記3)
前記下型側面部材の前記段差が環状に形成されている、付記1又は2記載の樹脂成形品の製造方法。
(付記4)
前記下型側面部材における前記段差の外側端部が、前記成形対象物の配置領域の外縁よりも内側に位置する、付記1から3のいずれかに記載の樹脂成形品の製造方法。
(付記5)
前記下型側面部材の上面に、前記段差よりも外側まで伸びるエアベント溝が形成されている付記1から4のいずれかに記載の樹脂成形品の製造方法。
(付記6)
前記下型側面部材において、前記段差と前記エアベント溝とが連結されている付記5記載の樹脂成形品の製造方法。
(付記7)
前記エアベント溝の外側端部は、前記成形対象物の配置領域の外縁よりも外側に位置する付記5又は6記載の樹脂成形品の製造方法。
(付記8)
前記樹脂成形工程において、前記上型の下面に前記成形対象物が配置される、付記1から7のいずれかに記載の樹脂成形品の製造方法。
(付記9)
付記1から8のいずれかに記載の樹脂成形品の製造方法に用いられる前記成形型。
(付記10)
樹脂成形品の製造方法に用いる圧縮成形用の成形型であって、
前記成形型は、上型及び下型を含み、
前記上型と前記下型とは互いに対向して配置され、
前記下型は、下型底面部材と下型側面部材とを含み、
前記下型底面部材の上面及び前記下型側面部材の内周面に囲まれた空間によりキャビティが形成され、前記下型底面部材の上面は前記キャビティの底面を形成し、前記下型側面部材の内周面は前記キャビティの側面を形成し、
前記樹脂成形品の製造方法において、前記上型と前記下型との間に成形対象物が配置され、前記キャビティの底面及び側面に離型フィルムが配置され、かつ、前記離型フィルム上に樹脂材料が配置された状態で、前記成形型を型締めして圧縮成形により樹脂成形を行うことで前記樹脂成形品を製造し、
前記下型側面部材の上面において、前記下型側面部材の内周面と隣接する箇所に、前記離型フィルムの厚さ以下の深さの段差が形成されている、成形型。
(付記11)
付記9又は10記載の成形型と、
前記成形型における前記上型及び前記下型を型締めする型締め機構と、
を備える樹脂成形装置。
(付記12)
さらに、前記樹脂成形後に、型開きした前記成形型から前記樹脂成形品を取り出して搬送する搬送機構を含む、付記11記載の樹脂成形装置。
【符号の説明】
【0066】
1 樹脂成形装置
10 基板(成形対象物)
10a チップ
11 離型フィルム
20 硬化樹脂(成形された樹脂)
20a 樹脂材料
20b 溶融樹脂
30 樹脂成形品
41 基板供給・収納モジュール
42A、42B、42C 成形モジュール
43 材料供給モジュール
44 基板供給部
45 樹脂成形品収納部
50 基板載置部
51 基板搬送機構
52 X-Yテーブル
53 離型フィルム供給機構
54 樹脂材料収容枠
55 樹脂材料投入機構
56 材料搬送機構
60 型締め機構
100 上型
100B 貫通孔
102 上型本体
103 フィルム押え
103s 上型弾性部材
104 クランパ
110 上型保持部材
200 下型
200A キャビティ
200B 貫通孔
201A、201B 貫通孔
201C エアベント溝
201D 段差
201 下型側面部材
201s 下型弾性部材
202 下型底面部材
210 下型保持部材
220 離型フィルム吸着機構
300 外気遮断部材
300B 貫通孔
α 成形対象物の配置領域
S 外気遮断空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-04-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型を用いて樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法であって、
前記成形型は、上型及び下型を含み、
前記上型と前記下型とは互いに対向して配置され、
前記下型は、下型底面部材と下型側面部材とを含み、
前記下型底面部材の上面及び前記下型側面部材の内周面に囲まれた空間によりキャビティが形成され、前記下型底面部材の上面は前記キャビティの底面を形成し、前記下型側面部材の内周面は前記キャビティの側面を形成し、
前記樹脂成形品の製造方法は、樹脂成形工程と搬送工程とを含み、
前記樹脂成形工程は、前記上型と前記下型との間に成形対象物が配置され、前記キャビティの底面及び側面に離型フィルムが配置され、かつ、前記離型フィルム上に樹脂材料が配置された状態で、前記成形型を型締めして圧縮成形により樹脂成形を行うことで前記樹脂成形品を製造する工程であり、
前記搬送工程は、前記樹脂成形工程後に前記成形型を型開きし、前記樹脂成形品を前記成形型から取り出して搬送する工程であり、
前記下型側面部材の上面において、前記下型側面部材の内周面と隣接する箇所に、前記離型フィルムの厚さ以下の深さの段差が形成されている、樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
少なくとも前記下型側面部材における前記段差の上面に前記離型フィルムが配置された状態で前記樹脂成形工程を行う請求項1記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記下型側面部材の前記段差が環状に形成されている、請求項記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記下型側面部材における前記段差の外側端部が、前記成形対象物の配置領域の外縁よりも内側に位置する、請求項記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記下型側面部材の上面に、前記段差よりも外側まで伸びるエアベント溝が形成されている請求項記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記下型側面部材において、前記段差と前記エアベント溝とが連結されている請求項5記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記エアベント溝の外側端部は、前記成形対象物の配置領域の外縁よりも外側に位置する請求項記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂成形工程において、前記上型の下面に前記成形対象物が配置される、請求項記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
請求項記載の樹脂成形品の製造方法に用いられる前記成形型。
【請求項10】
樹脂成形品の製造方法に用いる圧縮成形用の成形型であって、
前記成形型は、上型及び下型を含み、
前記上型と前記下型とは互いに対向して配置され、
前記下型は、下型底面部材と下型側面部材とを含み、
前記下型底面部材の上面及び前記下型側面部材の内周面に囲まれた空間によりキャビティが形成され、前記下型底面部材の上面は前記キャビティの底面を形成し、前記下型側面部材の内周面は前記キャビティの側面を形成し、
前記樹脂成形品の製造方法において、前記上型と前記下型との間に成形対象物が配置され、前記キャビティの底面及び側面に離型フィルムが配置され、かつ、前記離型フィルム上に樹脂材料が配置された状態で、前記成形型を型締めして圧縮成形により樹脂成形を行うことで前記樹脂成形品を製造し、
前記下型側面部材の上面において、前記下型側面部材の内周面と隣接する箇所に、前記離型フィルムの厚さ以下の深さの段差が形成されている、成形型。
【請求項11】
請求項9又は10記載の成形型と、
前記成形型における前記上型及び前記下型を型締めする型締め機構と、
を備える樹脂成形装置。
【請求項12】
さらに、前記樹脂成形後に、型開きした前記成形型から前記樹脂成形品を取り出して搬送する搬送機構を含む、請求項11記載の樹脂成形装置。