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特開2024-126955CT撮影用治具及びそれを用いたCT撮影装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126955
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】CT撮影用治具及びそれを用いたCT撮影装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20240912BHJP
【FI】
G01N23/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035743
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】原 拓生
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001HA14
2G001JA08
2G001QA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単な構成で被検査物を所望の角度で保持することができ、しかも、コーンビームアーチファクト及び散乱線によるノイズを抑制可能なCT撮影用治具及びそれを用いたCT撮影装置を提供する。
【解決手段】ベース21と、ベース21に設置された複数の支持棒22と、複数の支持棒22のそれぞれに、ベース21表面から離れた位置に設けられた支持部と、を備え、支持部により、被検査物Aの下方に空間が設けられた状態で、被検査物Aがベース21表面から浮き上がった位置で支持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに設置された複数の支持棒と、
前記複数の支持棒のそれぞれに、前記ベース表面から離れた位置に設けられた支持部と、
を備え、
前記支持部により、前記被検査物の下方に空間が設けられた状態で、前記被検査物が前記ベース表面から浮き上がった位置で支持されるCT撮影用治具。
【請求項2】
前記複数の支持部は、前記被検査物の角度に応じて異なった位置に設けられ、
前記支持部により、前記被検査物が前記ベース表面に対して所定の角度で支持される請求項1に記載のCT撮影用治具。
【請求項3】
前記支持部が、前記支持棒の一部及び紐状部材によって構成され、
前記複数の支持棒は、前記ベースから離れた高さにそれぞれ切り欠き部が設けられ、
前記紐状部材が前記複数の支持棒の切り欠き部に保持され、
前記支持棒の一部及び前記紐状部材により、前記被検査物が支持されている請求項1又は請求項2のいずれかに記載のCT撮影用治具。
【請求項4】
前記切り欠き部が、前記複数の支持棒のそれぞれに複数設けられ、
前記紐状部材が、前記複数の支持棒の高さの異なる前記切り欠き部に保持されている請求項3に記載のCT撮影用治具。
【請求項5】
前記支持棒は、3本以上であり、
前記3本以上の支持棒の少なくとも1本は、弾性部材から構成され、
前記被検査物は、前記3本以上の支持棒の間に挿入された状態において、前記支持棒の弾性力により保持されている請求項1又は請求項2のいずれかに記載のCT撮影用治具。
【請求項6】
前記複数の支持棒の少なくとも1本と前記紐状部材は、弾性部材から構成され、
前記被検査物は、前記複数の支持棒の間に挿入された状態において、前記紐状部材の弾性力により前記被検査物側に付勢された前記支持棒により保持されている請求項3に記載のCT撮影用治具。
前記紐状部材は
【請求項7】
前記支持部として、前記支持棒の一部に設けられた突起部及び/又は前記支持棒の端部を備えた請求項1又は請求項2のいずれかに記載のCT撮影用治具。
【請求項8】
被検査物を載置する検査台と、
前記被検査物にX線を照射するX線発生器と、
前記X線発生器に対向して配置されるX線検出器と、
を備え、
前記検査台の上に請求項1又は請求項2のいずれかに記載のCT撮影用治具を配置してなるCT撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、CT撮影用治具及びそれを用いたCT撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コーンビーム状のX線ビームを照射するCT撮影装置が使用されている。コーンビームCT撮影装置は、X線を照射するX線発生器と、X線を検出する二次元画素配列のX線検出器が対向して配置される。X線源とX線検出器の間には回転可能な検査台が設けられている。検査台に載置された被検査物に対してX線が照射されている間、この検査台が1回転することで、被検査物の全方位にX線が照射される。この1回転中に数百から数千という多数のX線照射方位からX線検出器によって収集された透視画像の集合を画像再構成すると断層像を得ることができる。
【0003】
コーンビームCT撮影装置においては、コーンビームアーチファクトと呼ばれる現象が生じてしまう。すなわち、被検査物の回転軸に垂直な体軸断面の輪郭は、X線ビームの光軸上又は光軸に近い体軸断面に関しては鮮明であるが、X線ビームの光軸から離れるほど体軸断面の輪郭は不鮮明となり、体軸断面の層間などが明瞭に区別できなくなる。そのため、コーンビームアーチファクトを発生させないように、回転軸と被検査物を掲載する面の法線が平行にならないように固定する必要がある。また、コーンビームCT撮影装置では、散乱線が発生して画質劣化が生じる問題がある。
【0004】
これらの問題に対応するため、予め角度をつけた治具の上面に被検査物を固定したり、X線吸収や散乱が少ないプラスチックやカーボンなどで作られた治具の上面に被検査物を保持したりする方法が用いられている。しかし、このような方法では、治具本体からの散乱が発生してしまうため画質劣化が生じるだけではなく、被検査物ごとに治具の大きさや形状、さらには被検査物を支持する上面の角度を変更しなくてはならず手間がかかる。
【0005】
そこで、特許文献1では、ゴニオステージを用いてコーンビームアーチファクトを除去する方法を提案している。すなわち、ゴニオステージは、ステージ面中央の垂線上に回転中心を持ち、円弧動作することから、被検査物の寸法、形状に応じて適切な支持角度を得ることができコーンビームアーチファクトを効果的に除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第7148267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1では、被検査物の回転軸と掲載面の法線が平行にならないように固定することはできるものの、ゴニオステージがあることで散乱線や金属アーチファクトが 多く発生してしまう。特に、ゴニオステージは、被検査物の支持面の角度を変更するために、アリ溝とウォームギア、あるいはクロスローラとマイクロメータヘッドのような機械部品が必要であり、これらの部品によって発生する散乱線や金属アーチフェクトの影響による画質劣化を避けることが困難であった。
【0008】
本発明の実施形態は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡単な構成で被検査物を所望の角度で保持することができ、しかも、コーンビームアーチファクト及び散乱線によるノイズを抑制可能なCT撮影用治具及びそれを用いたCT撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態のCT撮影用治具は、次のような構成を備える。
(1)ベース。
(2)前記ベースに設置された複数の支持棒。
(3)前記複数の支持棒のそれぞれに、前記ベース表面から離れた位置に設けられた支持部。
(4)前記支持部により、前記被検査物の下方に空間が設けられた状態で、前記被検査物が前記ベース表面にから浮き上がった位置で支持されるCT撮影用治具。
【0010】
実施形態のCT撮影用治具は、更に次のような構成を備えてもよい。
(1)前記複数の支持部は、前記被検査物の角度に応じて異なった位置に設けられ、前記支持部により、前記被検査物が前記ベース表面に対して所定の角度で支持される。
(2)前記支持部が、前記支持棒の一部及び紐状部材によって構成され、前記複数の支持棒は、前記ベースから離れた高さにそれぞれ切り欠き部が設けられ、前記紐状部材が前記複数の支持棒の切り欠き部に保持され、前記支持棒の一部及び前記紐状部材により、前記被検査物が支持されている。
(3)前記切り欠き部が、前記複数の支持棒のそれぞれに複数設けられ、前記紐状部材が、前記複数の支持棒の高さの異なる前記切り欠き部に保持されている。
(4)前記支持棒は、3本以上であり、前記3本以上の支持棒の少なくとも1本は、弾性部材から構成され、前記被検査物は、前記3本以上の支持棒の間に挿入された状態において、前記支持棒の弾性力により保持されている。
(5)前記複数の支持棒の少なくとも1本と前記紐状部材は、弾性部材から構成され、前記被検査物は、前記複数の支持棒の間に挿入された状態において、前記紐状部材の弾性力により前記被検査物側に付勢された前記支持棒により保持されている。
(6)前記支持部として、前記支持棒の一部に設けられた突起部及び/又は前記支持棒の端部を備える。
【0011】
実施形態のCT撮影用治具を用いたCT撮影装置は、更に次のような構成を備えてもよい。
(1)被検査物を載置する検査台。
(2)前記被検査物にX線を照射するX線発生器。
(3)前記X線発生器に対向して配置されるX線検出器。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態のCT撮影用治具を用いたCT撮影装置の全体構成を示す断面図である。
図2】本実施形態のCT撮影用治具を示す斜視図であり、(a)被検査物を搭載していない状態、(b)支持棒と紐状部材の弾性力を示す状態、(c)被検査物を搭載している状態である。
図3】他の実施形態のCT撮影用治具を示す斜視図であり、(a)被検査物を搭載していない状態、(b)支持棒と紐状部材の弾性力を示す状態、(c)被検査物を搭載している状態である。
図4】他の実施形態のCT撮影用治具の全体構成を示す斜視図である。
図5】他の実施形態のCT撮影用治具の全体構成を示す斜視図である。
図6】他の実施形態において、複数の被検査物を支持した状態を示す斜視図である。
図7】他の実施形態において、ベースの形状及び支持棒の固定状態を説明する図であり、(a)はベースに複数の穴を設けたもの、(b)はベースにT溝を設けたもの、(c)及び(d)はT溝及び支持棒の下部に設けた凸部形状の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1.構成]
[1-1.CT撮影装置の全体構成]
以下、第1の実施形態に係るCT撮影装置100について、図1を参照しつつ説明する。第1実施形態のCT撮影装置100は、リチウムイオン電池や半導体デバイスなどといった小型電子部品から鋳物部品などを高分解能で検査する産業用のコーンビームCT(CBCT)機能を有するCT撮影装置100である。
【0014】
CT撮影装置100は、被検査物Aの非破壊検査に供する装置である。CT撮影装置100は、被検査物Aの周囲に当該被検査物Aを透過するX線ビーム2を照射し、被検査物Aを透過したことで減弱したX線量を検出する。この検出結果に基づいて被検査物Aの断面画像であるCT画像を生成する。CT撮影装置100は、生成された複数のCT画像から3D画像を生成する。
【0015】
このようなCT撮影装置100は、被検査物Aを載置する検査台1、被検査物AにX線を照射するX線発生器3、X線発生器3に対向して配置される受光面を有するX線検出器4、制御部5を備える。
【0016】
検査台1は、被検査物Aを載置する載置面を有する台である。検査台1は、被検査物Aを載置する試料テーブルを備える。検査台1は、載置面に直交する方向を軸に載置面を回転昇降させる検査台回転昇降機構11と、載置面に平行な方向又は垂直な方向に当該載置面を移動させる検査台移動機構12と、を備える。
【0017】
検査台回転昇降機構11は、検査台1の内部又は下に設けられ、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。検査台回転昇降機構11は、載置面に直交する方向に検査台1を昇降させることで、載置面の高さを調整することができる。載置面の高さを調整することにより、X線の光軸Idを被検査物Aの中心又はユーザの任意の位置に合わせることが可能となる。検査台回転昇降機構11は、載置面と直交する方向を回転軸として回転可能である。X線ビーム2が照射されている間、この検査台1が回転することで、被検査物Aの全方位にX線ビーム2が照射される。
【0018】
検査台移動機構12は、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。図1及び図2に示すように、検査台移動機構12は、サーボモータの駆動により、検査台1の載置面に垂直な方向(x方向)又は平行な方向(y方向)に被検査物Aを移動させる。検査台移動機構12の移動によって、X線ビーム2の光軸Idに被検査物Aを合わせることができる。
本実施形態では、X線発生器3は、例えば、反射型又は透過型のマイクロフォーカスX線管であり、X線ビーム2を発生させる。なお、X線に限らず、例えばγ線など被検査物Aを透過するものを用いることができる。X線発生器3の下には、X線発生器3を支持するX線発生器支持フレーム31が設けられている。
【0019】
X線発生器3は、被検査物Aを透過するX線ビーム2を照射する。X線ビーム2は、X線発生器3の焦点を頂点とし、コーン角を有して円錐状に拡がるX線の束である。本実施形態では、X線発生器3は、例えば、反射型又は透過型のマイクロフォーカスX線管であり、X線ビーム2を発生させる。なお、X線に限らず、例えばγ線など被検査物Aを透過するものを用いることができる。X線発生器3の下には、X線発生器3を支持するX線発生器支持フレーム31が設けられている。
【0020】
X線検出器4は、X線発生器3に対向して配置される。X線検出器4は、X線発生器3から照射されたX線ビーム2が被検査物Aに照射されることにより、X線の透過経路に応じて減弱したX線強度の二次元分布が検出する。X線検出器4は、表示部6に透視画像を出力する。X線検出器4は、受光面として二次元画素配列の撮像領域を有し、例えばフラットパネルディテクタ(FPD)により構成されるものを使用するとよい。フラットパネルディテクタ(FPD)は、X線変換膜(シンチレータ)を平面状に配置し、フォトダイオードで発光を検出する。X線検出器4は、撮像領域の中心が、X線発生器3の光軸Idと一致するように設置されるとよい。X線検出器4の下には、X線検出器4を支持するX線検出器支持フレーム41が設けられている。
【0021】
制御部5は、図1に示すように、検査台回転昇降機構11及び検査台移動機構12を制御する検査台機構制御部51と、X線ビーム2を制御するX線制御部52と、X線検出器4から取得した透視画像に対して再構成を行うデータ処理部53と、を備える。制御部5は、コンピュータ及びドライバ回路により構成される。コンピュータは、HDDまたはSSDといったストレージ、RAM、CPUなどにより構成される。なお、制御部5には図示しない入力部が接続され、ユーザはこの入力部を介して制御部5にCT撮影装置100の各構成を制御させる。
【0022】
検査台機構制御部51は、検査台回転昇降機構11及び検査台移動機構12を制御することにより、検査台1に載置された被検査物WをX線ビーム2の光軸Idに合わせ、また被検査物Wの向きを変える。X線制御部52は、高電圧発生器7を介して、X発生器1から照射されるX線ビーム2を制御し、被検査物WにX線ビーム2を照射させる。すなわち、検査台機構制御部51及びX線制御部52の制御により、被検査物Wに対してX線ビーム2を照射させ、被検査物Wの透視画像をX線検出器3から取得することができる。
【0023】
データ処理部53は、X線検出器4からオフセットデータやゲインデータなどの各種データを取得するスキャン制御部531と、この各種データに基づき透視画像を再構成する再構成部532と、を備える。データ処理部53は、再構成部532が再構成した透視画像を表示部6に表示する。
【0024】
[1-2.CT撮影用治具の構成]
検査台1の試料テーブル上には、一例として図2(a)~(c)に示すようなCT撮影用治具200が配置される。図2(a)に示すように、CT撮影用治具200は、検査台1の載置面上に載置されるベース21と、ベース21に設置された複数の支持棒22と、複数の支持棒22にそれぞれ設けられた支持部の一つである紐状部材23とを備える。
【0025】
ベース21は、支持棒22を設置する板状のものであり、形状は円形、三角形、四角形など様々なものが採用できる。ベース21には、支持棒22を接着剤などで固定してもよいが、図7に示すように、支持棒22を立てる位置を変更できるようにすることで汎用的に使うことができる。例えば、図7(a)に示すように、ベース21に複数の穴211を設け、これら複数の穴211に支持棒22の下部を挿入するものが使用できる。また、図7(b)~(d)に示すように、ベース21にアリ溝212を縦横に形成し、支持棒22の下部に凸部223aや三角形の係合部223bを形成しておき、アリ溝212に凸部223aや係合部223bを係合させた状態で、支持棒22をアリ溝212に沿ってスライドさせることで、支持棒22の位置を調整することができる。
【0026】
支持棒22は、細長い棒状の部材であり、本実施形態では、図2(b)に示すように、ベース21上において三角形の頂点となるように所定の間隔で3本の支持棒22が配置される。支持棒22は、被検査物Aの下に空間を設けて安定的に被検査物Aを固定するため、本実施形態のように3本用いることが好ましいが、被検査物Aの形状や支持角度、あるいは支持部の形状に応じて、2本又は4本以上でも良い。
【0027】
支持棒22の材質は、散乱線の発生を低減するため、カーボン、プラスチック全般、木材など原子番号密度が小さく、固い材料であるとよい。なお、固い材料からなる支持棒22としては、固くて変形することがない部材でもよいが、本実施形態では、棒の全体が弾力的に湾曲する弾力性を有する部材を使用する。また、支持棒22は、図示のような直線状でベースから垂直に立ち上がった部材に限定されず、ベース22に対して斜めに固定されたもの、あるいは、支持棒22全体やその一部が円弧状に湾曲したもの、支持棒22の一部に階段状の屈曲部やループ部、さらには突起や枝部を有するものなどが使用できる。
【0028】
支持部とは、複数の支持棒22のそれぞれに、ベース21の表面から離れた位置に設けられ、被検査物Aを支持する部分を意味する。支持部により、被検査物Aの下方に空間が設けられた状態で、被検査物Aがベース21の表面から浮き上がった位置で支持される。本実施形態において、支持棒22に設けられる支持部としては、支持棒22とは別体に設けられたループ状の紐状部材23と、支持棒22の一部(支持棒22の棒状部分の表面や上端面)が使用される。ループ状の紐状部材23は、本実施形態では、輪ゴムのように弾力性のある材料から構成され、3本の支持棒22の外側に引き伸ばされた状態ではめ込まれる。
【0029】
複数の支持棒22には、ベース21から離れた高さに、紐状部材23を支持棒22に取り付けるための切り欠き部221が設けられる。ルーブ状の紐状部材23は、3本の支持棒22の外側から各支持棒22の切り欠き部221に紐状部材23が係合するようにはめ込まれ、保持される。切り欠き部221は、各支持棒22について1か所だけ設けてもよいが、被検査物Aの大きさに合わせてベース21から紐状部材23までの高さを適宜変更可能なように、複数個所設けておくとよい。本実施形態では、図2(a)に示すように、ループ状の紐状部材23は、被検査物Aの角度に応じて異なった位置に設けられる。支持部の一部であるループ状の紐状部材23が異なった位置に設けられることにより、図2(c)に示すように、被検査物Aがベース21の表面に対して所定の角度で支持される。
【0030】
紐状部材23は、ゴム、テグス、釣り糸、結束バンドのようなもので、支持棒22を締め込むことができるものを用いるとよい。なお、紐状部材23としては、固くて変形することがない部材でもよいが、本実施形態では、弾力性を有する部材を使用する。散乱線を防ぐため、紐状部材23の材質は、金属でないものが望ましい。図2(b)に示すように、本実施形態では、輪ゴムのような弾力性のある紐状部材23を使用することにより、ベース21に固定された3本の支持棒22が中心部に向かって絞められる。これにより、支持棒22の内側に挿入された被検査物Aを保持する面を簡単に作ることができる。弾力性のある紐状部材23の代わりに、結束バンドのような締め付け可能な部材であっても、3本の支持棒23をその中心側に締め付けることができるので、本実施形態の紐状部材23として適している。
【0031】
[2.作用]
前記のような構成を有する第1実施形態のCT撮影用治具200及びCT撮影用治具200を用いたCT撮影装置について、図1及び図2を参照しつつ説明する。
【0032】
検査台1の試料テーブルの上に、CT撮影用治具200が配置される。CT撮影用治具200のベース21には、3本の支持棒22が配置され、支持棒22は弾力性のある紐状部材23により内側に絞めつけられている。その状態で、被検査物Aは、支持棒22の内側に挿入される。
【0033】
支持棒22自体及び紐状部材23は弾力性のある部材からなるため、図2(b)に示すように、3本の支持棒22には中心に向かって締まる力が加わり、被検査物Aの底面の一部は紐状部材23に保持された状態で、かつ、被検査物Aの側面は3本の支持棒22で把持した状態で安定的に固定する。その際、図2(c)に示すように、被検査物Aの下方には、ベース21から一定の空間が設けられた状態となり、被検査物Aはベース21の表面にから浮き上がった位置で固定される。
【0034】
このようにCT撮影用治具200により、被検査物Aを保持した状態において、X線発生器3は、被検査物Aを透過するX線ビーム2を照射する。X線発生器3から照射されたX線ビーム2は、CT撮影用治具200に保持された被検査物A及び検査台1を挟んでX線発生器3に対向して設けられたX線検出器4により、X線の透過経路に応じて減弱したX線強度の二次元分布が検出される。
【0035】
X線検出器4から検出されたオフセットデータやゲインデータなどの各種データは、スキャン制御部531に取得される。この各種データは再構成部532により再構成され、再構成した被検査物Aの透視画像が表示部6に表示される。
【0036】
[3.効果]
本実施形態の効果は、以下の通りである。
(1)本実施形態のCT撮影用治具200は、コーンビームアーチファクト及び散乱線によるノイズを低減し、被検査物の形状に応じて簡単に固定することができる。特に、被検査物Aの下に空間を設けることができため、被検査物Aを搭載している検査台1や試料テーブルからの散乱線によるノイズを低減することにより、良質な透過画像を得ることが可能となる。
【0037】
(2)本実施形態の線検査用治具200は、複数の支持棒22にそれぞれ設けられた複数の支持部により、被検査物Aがベース21の表面に対して所定の角度で支持される。そのため、コーンビームアーチファクトを効果的に除去することができ、より良質な透過画像を得ることが可能となる。
【0038】
(3)本実施形態の線検査用治具200は、固定された3本の支持棒22を弾力性のある紐状部材23で絞めつけることで、被検査物Aを保持する面を簡単に作ることができ、かつ、支持棒22には内側に締まる力が加わるため被検査物Aを安定的に固定することができる。
【0039】
(4)本実施形態の線検査用治具200は、複数の支持棒22のそれぞれに切り欠き部221が複数設けられ、紐状部材23が、複数の支持棒22の高さの異なる切り欠き部221に保持されている。そのため、所望の撮影範囲や被検査物Aの形状に合わせて、簡単に被検査物Aを固定することができる。また、検査台1やX線発生器3やX線検出器4など他の部分については従来技術と同様な構成を用いることができるため、低コストでコーンビームアーチファクト及び散乱線によるノイズを低減した透視画像を得ることができる。
【0040】
[4.他の実施形態]
本明細書においては、本実施形態に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0041】
(1)上記実施形態では、被検査物Aはベース21の表面に対して所定の角度で支持されているが、図3(a)~(c)に示すように、紐状部材23を同じ高さにして、被検査物Aがベース21表面にから浮き上がった位置で保持してもよい。被検査物Aの材質や撮影条件などによりコーンビームアーチファクトの影響をあまり考えなくて良い場合には、紐状部材23を同じ高さにし、被検査物Aの下方に空間を設けるだけでも、被検査物Aを保持している部品から発生する散乱線による画質劣化を防ぐことができ、良質な透過画像を得ることが可能となる。
【0042】
(2)上記実施形態では、支持棒22及び紐状部材23を用いて、被検査物Aを固定したが、図4に示すように、紐状部材23を用いずに、3本以上の支持棒22を用いて被検査物Aを保持してもよい。この場合、3本以上の支持棒22の少なくとも1本は弾性部材から構成され、被検査物Aは、ベース22に設置された3本以上の支持棒22の間に挿入された状態において、支持棒22の弾性力により、被検査物Aの下に空間が設けられた状態で固定されている。紐状部材23を用いないため、より少ない材料で、簡単な構成により、被検査物Aを固定することが可能となる。
【0043】
(3)上記実施形態では、支持棒22及び紐状部材23を用いて、被検査物Aを固定したが、図5に示すように、紐状部材23を用いずに、支持棒22の一部に被検査物Aを保持する突起部222を設けて、突起部222により被検査物Aを保持してもよい。紐状部材23を用いないため、より少ない材料で、被検査物Aを固定することが可能となる。突起部222は、3本の支持棒22の中心部に向かって突出する形状で、被検査物Aの大きさや重量に合わせて、その厚みや大きさを調整する。支持棒22に設ける突起部222の場所は、図5に示したものに限られず、被検査物Aの下方に空間を設けて保持できるのであれば、下方でもあってもよい。また、被検査物Aの下方に空間を設けて保持できるのであれば、突起部222に限られず、支持棒22の端部であってもよい。長さを変えた支持棒22を用いることにより、突起部222や支持棒22の端部を組み合わせて、被検査物Aの下方に空間を設けて被検査物Aを保持することも可能である。なお、突起部222が大きいものであると、突起部222から発生する散乱線による影響を受けてしまうため、突起部222はあまり大きなものでない方が好ましい。
【0044】
(4)上記実施形態では、支持棒22に対して1つの紐状部材22を固定したが、図6に示すように、支持棒22に対して2つ以上の紐状部材22を固定して、複数の被検査物Aを配置も可能である。この構成によれば、一度に複数の被検査物Aの透視画像を得ることができ、撮影時間の短縮を図ることができる利点がある。
【0045】
(5)上記実施形態では、紐状部材23を使用したが、紐状ではなく、網(ネット)状であってもよい。また、紐状部材23の上面又は下面の一部に散乱線の発生の少ない材料の補助板を配置して被検査物Aを固定してもよい。
【0046】
(6)上記実施形態では、支持棒22の長さや太さは同じものを使用したが、各支持棒22は長さや太さを変えた棒を用いてもよい。
【符号の説明】
【0047】
100 CT撮影装置
1 検査台
11 検査台回転昇降機構
12 検査台移動機構
2 X線ビーム
3 X線発生器
31 X線発生器支持フレーム
4 X線検出器
41 X線検出器支持フレーム
5 制御部
51 検査台機構制御部
52 X線制御部
53 データ処理部
531 スキャン制御部
532 再構成部
6 表示部
7 高電圧発生器
200 CT撮影用治具
21 ベース
211 穴
212 アリ溝
22 支持棒
221 切り欠き部
222 突起部
223a 凸部
223b 係合部
23 紐状部材
A 被検査物
Id 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7