(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126960
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ジェットディスペンス用導電性ペースト、塗布方法、硬化物及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
C09J 9/02 20060101AFI20240912BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C09J9/02
H01B1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035754
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 弓依
(72)【発明者】
【氏名】高本 真
(72)【発明者】
【氏名】日下 慶一
【テーマコード(参考)】
4J040
5G301
【Fターム(参考)】
4J040CA042
4J040EC002
4J040ED002
4J040EF002
4J040EK032
4J040FA131
4J040HA066
4J040HA306
4J040HB41
4J040HD32
4J040HD35
4J040HD36
4J040JA05
4J040JB02
4J040JB10
4J040KA12
4J040KA16
4J040KA32
4J040LA09
4J040MA02
4J040MB09
4J040NA20
4J040PA24
4J040PA30
5G301DA03
5G301DA36
5G301DA42
5G301DD01
5G301DD02
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】吐出時におけるノズルからの吐出性を良好にするとともに、待機時におけるノズルからの垂れ性を改善すること。
【解決手段】銀粒子、モノマー、シリカ粒子を含み、前記シリカ粒子の走査型電子顕微鏡画像の解析により求められるメジアン径(D
50)が1nm以上50nm以下であり、せん断速度100rpm、50℃の条件で測定される粘度η
100(50℃)が、0.01Pa・s以上5.0Pa・s以下であり、せん断速度5rpm、50℃の条件で測定される粘度η
5(50℃)に対する、せん断速度0.5rpm、50℃の条件で測定される粘度η
0.5(50℃)の比(η
0.5(50℃)/η
5(50℃))であるチキソ指数R
1が、4.5以上20.0以下である、
導電性ペースト。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀粒子、
モノマー、
シリカ粒子を含み、
前記シリカ粒子の走査型電子顕微鏡画像の解析により求められるメジアン径(D50)が1nm以上50nm以下であり、
せん断速度100rpm、50℃の条件で測定される粘度η100(50℃)が、0.01Pa・s以上5.0Pa・s以下であり、
せん断速度5rpm、50℃の条件で測定される粘度η5(50℃)に対する、せん断速度0.5rpm、50℃の条件で測定される粘度η0.5(50℃)の比(η0.5(50℃)/η5(50℃))であるチキソ指数R1が、4.5以上20.0以下である、ジェットディスペンス用導電性ペースト。
【請求項2】
請求項1に記載のジェットディスペンス用導電性ペーストであって、
前記シリカ粒子のBET法による比表面積が10m2/g以上700m2/g以下である、ジェットディスペンス用導電性ペースト。
【請求項3】
請求項1または2に記載のジェットディスペンス用導電性ペーストであって、
せん断速度5rpm、25℃の条件で測定される粘度η5(25℃)に対する、せん断速度0.5rpm、25℃の条件で測定される粘度η0.5(25℃)の比(η0.5(25℃)/η5(25℃))であるチキソ指数R2が、4.0以上6.0以下である、ジェットディスペンス用導電性ペースト。
【請求項4】
請求項1または2に記載のジェットディスペンス用導電性ペーストであって、
せん断速度50rpm、50℃の条件で測定される粘度η50(50℃)に対する、せん断速度5rpm、50℃の条件で測定される粘度η5(50℃)の比(η5(50℃)/η50(50℃))であるチキソ指数R3が、2.0以上4.0以下である、ジェットディスペンス用導電性ペースト。
【請求項5】
請求項1または2に記載のジェットディスペンス用導電性ペーストであって、
せん断速度50rpm、25℃の条件で測定される粘度η50(25℃)に対する、せん断速度50rpm、50℃の条件で測定される粘度η50(50℃)の比(η50(50℃)/η50(25℃))である温度依存粘度変化率r1が、0.2以上0.4以下である、ジェットディスペンス用導電性ペースト。
【請求項6】
請求項1または2に記載のジェットディスペンス用導電性ペーストであって、
前記モノマーが(メタ)アクリル酸エステルを含む、ジェットディスペンス用導電性ペースト。
【請求項7】
請求項1または2に記載のジェットディスペンス用導電性ペーストであって、
前記モノマーが、分子内に重合性二重結合を一つ有する単官能(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に重合性二重結合を二つ有する二官能(メタ)アクリル酸エステルと、を含む、ジェットディスペンス用導電性ペースト。
【請求項8】
請求項1または2に記載のジェットディスペンス用導電性ペーストであって、
(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を含むポリマーをさらに含む、ジェットディスペンス用導電性ペースト。
【請求項9】
請求項1または2に記載のジェットディスペンス用導電性ペーストをジェットディスペンス法により被着面に塗布する塗布方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載のジェットディスペンス用導電性ペーストの硬化物。
【請求項11】
基材と、
請求項1または2に記載のジェットディスペンス用導電性ペーストの硬化物である接着層を介して上記基材上に搭載された半導体素子と、
を備える半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジェットディスペンス用導電性ペースト、塗布方法、硬化物及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の電子部品は、例えば接着層を介して基板上に搭載される。このような接着層には導電性が求められることがあり、このような場合、例えば金属粒子を含有する樹脂組成物により導電性接着層を形成することがある。
【0003】
金属粒子を含有する樹脂組成物として、特許文献1には、(A)プレート型銀微粒子と、(B)前記(A)成分以外の平均粒子径が0.5~30μmである銀粉と、(C)熱硬化性樹脂と、を含み、前記(A)成分の銀微粒子と前記(B)成分の銀粉の合計量を100質量部としたとき、前記(C)成分が1~20質量部配合されていることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ジェットディスペンス法によって導電性ペーストを塗布することが検討されている。ジェットディスペンス法によって導電性ペーストを塗布する場合、吐出時におけるノズルからの吐出性を良好にするとともに、待機時におけるノズルからの垂れ性を改善することが求められる。
吐出性として具体的には、ノズルからの吐出時にノズル詰まりが生じないこと、吐出されたペーストが糸引きせずに着弾すること等が求められる。
また、垂れ性改善とは、ジェットディスペンス待機時においてノズルからペーストが垂れないようにすることであり、これによりノズルの出口がペーストで汚染されるのが防止される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下に示すジェットディスペンス用導電性ペースト、塗布方法、硬化物及び半導体装置が提供される。
[1]
銀粒子、
モノマー、
シリカ粒子を含み、
前記シリカ粒子の走査型電子顕微鏡画像の解析により求められるメジアン径(D50)が1nm以上50nm以下であり、
せん断速度100rpm、50℃の条件で測定される粘度η100(50℃)が、0.01Pa・s以上5.0Pa・s以下であり、
せん断速度5rpm、50℃の条件で測定される粘度η5(50℃)に対する、せん断速度0.5rpm、50℃の条件で測定される粘度η0.5(50℃)の比(η0.5(50℃)/η5(50℃))であるチキソ指数R1が、4.5以上20.0以下である、ジェットディスペンス用導電性ペースト。
[2]
上記[1]に記載のジェットディスペンス用導電性ペーストであって、
前記シリカ粒子のBET法による比表面積が10m2/g以上700m2/g以下である、ジェットディスペンス用導電性ペースト。
[3]
上記[1]または[2]に記載のジェットディスペンス用導電性ペーストであって、
せん断速度5rpm、25℃の条件で測定される粘度η5(25℃)に対する、せん断速度0.5rpm、25℃の条件で測定される粘度η0.5(25℃)の比(η0.5(25℃)/η5(25℃))であるチキソ指数R2が、4.0以上6.0以下である、ジェットディスペンス用導電性ペースト。
[4]
上記[1]~[3]のいずれかに記載のジェットディスペンス用導電性ペーストであって、
せん断速度50rpm、50℃の条件で測定される粘度η50(50℃)に対する、せん断速度5rpm、50℃の条件で測定される粘度η5(50℃)の比(η5(50℃)/η50(50℃))であるチキソ指数R3が、2.0以上4.0以下である、ジェットディスペンス用導電性ペースト。
[5]
上記[1]~[4]のいずれかに記載のジェットディスペンス用導電性ペーストであって、
せん断速度50rpm、25℃の条件で測定される粘度η50(25℃)に対する、せん断速度50rpm、50℃の条件で測定される粘度η50(50℃)の比(η50(50℃)/η50(25℃))である温度依存粘度変化率r1が、0.2以上0.4以下である、ジェットディスペンス用導電性ペースト。
[6]
上記[1]~[5]のいずれかに記載のジェットディスペンス用導電性ペーストであって、
前記モノマーが(メタ)アクリル酸エステルを含む、ジェットディスペンス用導電性ペースト。
[7]
上記[1]~[6]のいずれかに記載のジェットディスペンス用導電性ペーストであって、
前記モノマーが、分子内に重合性二重結合を一つ有する単官能(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に重合性二重結合を二つ有する二官能(メタ)アクリル酸エステルと、を含む、ジェットディスペンス用導電性ペースト。
[8]
上記[1]~[7]のいずれかに記載のジェットディスペンス用導電性ペーストであって、
(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を含むポリマーをさらに含む、ジェットディスペンス用導電性ペースト。
[9]
上記[1]~[8]のいずれかに記載のジェットディスペンス用導電性ペーストをジェットディスペンス法により被着面に塗布する塗布方法。
[10]
上記[1]~[8]のいずれかに記載のジェットディスペンス用導電性ペーストの硬化物。
[11]
基材と、
上記[1]~[8]のいずれかに記載のジェットディスペンス用導電性ペーストの硬化物である接着層を介して上記基材上に搭載された半導体素子と、
を備える半導体装置。
【0007】
なお、本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストはジェットディスペンス以外のディスペンスにも用いることができ、特にジェットディスペンス用途に好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吐出時におけるノズルからの吐出性が良好であるとともに、待機時におけるノズルからの垂れ性が改善されたジェットディスペンス用導電性ペーストが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図2】本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストをジェットディスペンス法により被着面に塗布する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペースト中の成分のうち、ペーストを硬化させる際に揮発する溶剤等の成分のことを揮発性成分と呼ぶ。一方、ペーストを硬化させた際に硬化物に残存する成分のことを不揮発性成分と呼ぶ。また、不揮発性成分のうち、銀粒子及びシリカ粒子以外の成分のことをワニス成分と呼ぶ。
【0012】
[ジェットディスペンス用導電性ペースト]
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストは、銀粒子、モノマー、シリカ粒子を含み、上記シリカ粒子の走査型電子顕微鏡画像の解析により求められるメジアン径(D50)が1nm以上50nm以下であり、せん断速度100rpm、50℃の条件で測定される粘度η100(50℃)が、0.01Pa・s以上5.0Pa・s以下であり、せん断速度5rpm、50℃の条件で測定される粘度η5(50℃)に対する、せん断速度0.5rpm、50℃の条件で測定される粘度η0.5(50℃)の比(η0.5(50℃)/η5(50℃))であるチキソ指数R1が、
4.5以上20.0以下である。
【0013】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストによると、吐出時におけるノズルからの吐出性向上と、待機時におけるノズルからの垂れ性改善とが両立される。
【0014】
<ジェットディスペンス法>
まず、ジェットディスペンス法による塗布の概要について、
図2を用いて説明する。
【0015】
ジェットディスペンス用導電性ペーストの塗布は、
図2に示すとおり、ペースト供給路101から供給されたペースト103が、ヒーター107で囲まれた加温ブロック内に充填され、ロッド105の押出しにより、バルブシート109を経由してノズル111から基板30の表面へ液滴113として吐出されることにより行われる。
【0016】
ノズル111の直径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、そして、好ましくは1000μm以下、より好ましくは700μm以下、さらに好ましくは500μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。
【0017】
ノズル111からの吐出圧は、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.02MPa以上であり、そして、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下、さらに好ましくは0.1MPa以下である。
【0018】
ヒーター107の温度、すなわち加温ブロック内に充填されたペーストに対する加熱温度は、例えば20℃以上90℃以下、好ましくは30℃以上60℃以下、より好ましくは35℃以上50℃以下である。これにより、安定的な塗布処理を実現することができる。
【0019】
<レオロジー特性>
鋭意検討の結果、本発明者は、ジェットディスペンス用導電性ペーストが下記(i)~(iii)を満たすことにより、レオロジー特性が適切になり、吐出時におけるノズルからの吐出性を良好になるとともに、待機時におけるノズルからの垂れ性が改善されるということを見出した。
(i)銀粒子、モノマーおよび走査型電子顕微鏡画像の解析により求められるメジアン径(D50)が1nm以上50nm以下のシリカ粒子を含有すること
(ii)せん断速度100rpm、50℃で測定したときの粘度η100(50℃)が、0.01Pa・s以上5.0Pa・s以下であること
(iii)せん断速度5rpm、50℃の条件で測定される粘度η5(50℃)に対する、せん断速度0.5rpm、50℃の条件で測定される粘度η0.5(50℃)の比(η0.5(50℃)/η5(50℃))が、4.5以上20.0以下であること
【0020】
ジェットディスペンス用導電性ペーストが上記(i)~(iii)の要件を満たすことにより上述の課題が解決されるメカニズムは明らかではないが、上記(i)~(iii)の要件をすべて満たすことによりペーストのレオロジー特性が適切な範囲に調整され、吐出時のような大きなせん断エネルギーが係る場面ではペーストの粘度が下がり吐出性が向上し、一方、待機時のようなせん断エネルギーがかからない場面ではペーストの粘度が上がりノズルからの垂れが抑制されるというメカニズムが推測される。
【0021】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストの、せん断速度5rpm、50℃で測定される粘度η5(50℃)に対する、せん断速度0.5rpm、50℃で測定される粘度η0.5(50℃)の比(η0.5(50℃)/η5(50℃))であるチキソ指数R1は、4.5以上20.0以下であり、好ましくは5.0以上10.0以下であり、より好ましくは5.0以上7.0以下であり、さらに好ましくは5.0以上6.5以下である。このようにすれば、吐出性およびノズルからの垂れ性を、より一層改善することができる。
【0022】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストの、せん断速度5rpm、25℃で測定される粘度η5(25℃)に対する、せん断速度0.5rpm、25℃で測定される粘度η0.5(25℃)の比(η0.5(25℃)/η5(25℃))であるチキソ指数R2は、好ましくは4.0以上6.0以下、より好ましくは4.1以上5.5以下、さらに好ましくは4.3以上5.0以下である。このようにすれば、吐出性およびノズルからの垂れ性を、より一層改善することができる。
【0023】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストの、せん断速度50rpm、50℃で測定される粘度η50(50℃)に対する、せん断速度5rpm、50℃で測定される粘度η5(50℃)の比(η5(50℃)/η50(50℃))であるチキソ指数R3は、好ましくは2.5以上4.0以下、より好ましくは3.0以上3.5以下である。このようにすれば、吐出性およびノズルからの垂れ性を、より一層改善することができる。
【0024】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストの、せん断速度50rpm、25℃で測定される粘度η50(25℃)に対する、せん断速度50rpm、50℃で測定される粘度η50(50℃)の比(η50(50℃)/η50(25℃))である温度依存粘度変化率r1は、好ましくは0.2以上0.4以下、より好ましくは0.25以上0.4以下、さらに好ましくは0.3以上0.35以下である。このようにすれば、吐出性およびノズルからの垂れ性を、より一層改善することができる。
【0025】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストの、せん断速度0.5rpm、25℃の条件で測定される粘度η0.5(25℃)は、好ましくは1Pa・s以上100Pa・s以下、より好ましくは10Pa・s以上80Pa・s以下、さらに好ましくは20Pa・s以上70Pa・s以下である。このようにすれば、吐出性およびノズルからの垂れ性を、より一層改善することができる。
【0026】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストの、せん断速度5rpm、25℃の条件で測定される粘度η5(25℃)は、好ましくは0.1Pa・s以上20Pa・s以下、より好ましくは1Pa・s以上20Pa・s以下、さらに好ましくは5Pa・s以上15Pa・s以下である。このようにすれば、吐出性およびノズルからの垂れ性を、より一層改善することができる。
【0027】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストの、せん断速度50rpm、25℃の条件で測定される粘度η50(25℃)は、好ましくは0.01Pa・s以上10Pa・s以下、より好ましくは0.1以上10Pa・s以下、さらに好ましくは1Pa・s以上8Pa・s以下、さらに好ましくは3Pa・s以上7Pa・s以下である。このようにすれば、吐出性およびノズルからの垂れ性を、より一層改善することができる。
【0028】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストの、せん断速度100rpm、25℃の条件で測定される粘度η100(25℃)は、好ましくは0.01Pa・s以上10Pa・s以下、より好ましくは0.1以上10Pa・s以下、さらに好ましくは1Pa・s以上8Pa・s以下、さらに好ましくは3Pa・s以上7Pa・s以下である。このようにすれば、吐出性およびノズルからの垂れ性を、より一層改善することができる。
【0029】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストの、せん断速度0.5rpm、50℃の条件で測定される粘度η0.5(50℃)は、好ましくは0.1Pa・s以上50Pa・s以下、より好ましくは1Pa・s以上50Pa・s以下、さらに好ましくは10Pa・s以上50Pa・s以下、さらに好ましくは12Pa・s以上40Pa・s以下である。このようにすれば、吐出性およびノズルからの垂れ性を、より一層改善することができる。
【0030】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストの、せん断速度5rpm、50℃の条件で測定される粘度η5(50℃)は、好ましくは0.01Pa・s以上10Pa・s以下、より好ましくは0.1Pa・s以上10Pa・s以下、さらに好ましくは1Pa・s以上10Pa・s以下、さらに好ましくは2Pa・s以上7Pa・s以下である。このようにすれば、吐出性およびノズルからの垂れ性を、より一層改善することができる。
【0031】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストの、せん断速度50rpm、50℃の条件で測定される粘度η50(50℃)は、好ましくは0.01Pa・s以上2.0Pa・s以下、より好ましくは0.1Pa・s以上2.0Pa・s以下、さらに好ましくは1.0Pa・s以上2.0Pa・s以下、さらに好ましくは1.3Pa・s以上1.5Pa・s以下である。このようにすれば、吐出性およびノズルからの垂れ性を、より一層改善することができる。
【0032】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストを、せん断速度100rpm、50℃の条件で測定される粘度η100(50℃)は、好ましくは0.01Pa・s以上1.6Pa・s以下、より好ましくは0.1Pa・s以上1.6Pa・s以下、さらに好ましくは1.0Pa・s以上1.6Pa・s以下、さらに好ましくは1.1Pa・s以上1.3Pa・s以下である。このようにすれば、吐出性およびノズルからの垂れ性を、より一層改善することができる。
【0033】
本実施形態のジェットディスペンス用導電性ペーストは、上述の通り特定のレオロジー特性を有するものであるが、走査型電子顕微鏡画像の解析により求められるメジアン径(D50)が1nm以上50nm以下のシリカ粒子を用いるとともに、銀粒子およびモノマーを適切に選択することにより、このような特定のレオロジー特性を発現させることができる。
【0034】
<各成分>
以下、本実施形態のジェットディペンス用導電性ペーストが含有する各成分について説明する。
【0035】
(銀粒子)
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストは銀粒子を含有する。
本実施形態に係る銀粒子は、ジェットディペンス用導電性ペーストにより接着層10が形成された後、熱処理が施されることにより、凝集して連結構造を形成する。この連結構造により、導電性や熱伝導性、基材への密着性が発現する。
【0036】
本実施形態に係る銀粒子の含有量は、ジェットディスペンス用導電性ペースト全体を100質量部としたとき、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは60質量部以上、さらに好ましくは65質量部以上、さらに好ましくは70質量部以上である。これにより、ジェットディスペンス用導電性ペーストから形成される接着層の導電性および熱伝導性がより向上する。
本実施形態に係る銀粒子の含有量は、ジェットディスペンス用導電性ペースト全体を100質量部としたとき、好ましくは99質量部以下、より好ましくは95質量部以下、さらに好ましくは90質量部以下、さらに好ましくは85質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。これにより、モノマーやポリマー等の含有量が確保され、塗布作業性や、接着層の柔軟性がより向上する。
【0037】
本実施形態に係る銀粒子のレーザ回折散乱法による体積基準のメジアン径(D50)は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上である。これにより、比表面積の過度な増大が抑制され、接触熱抵抗による熱伝導性の低下が抑制される。
本実施形態に係る銀粒子のレーザ回折散乱法による体積基準のメジアン径(D50)は、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下、さらに好ましくは6μm以下、さらに好ましくは4μm以下である。これにより、銀粒子同士の連結構造をより一層緻密にすることが可能になる。
【0038】
なお、本実施形態に係る銀粒子のD50は、市販のレーザ式粒度分布計(例えば、(株)島津製作所製「SALD-7000」等)を用いて測定することができる。
【0039】
本実施形態に係る銀粒子の形状は、特に限定されないが、例えば球状、楕球状、フレーク状、および鱗片状等を挙げることができる。本実施形態においては、銀粒子が球状粒子を含むことが好適である。これにより、銀粒子の凝集の均一性を向上させることができる。また、コストを低減させる観点からは、銀粒子がフレーク状粒子を含む態様を採用することもできる。さらには、コストの低減と凝集均一のバランスを向上させる観点から、銀粒子が球状粒子とフレーク状粒子の双方を含んでいてもよい。
【0040】
(モノマー)
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストはモノマーを含有する。
【0041】
本実施形態のジェットディペンス用導電性ペーストが含むモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、エポキシモノマー、アリルモノマー、シアネートモノマーおよびマレイミドモノマー等からなる群から選択される一種または二種以上を含み、熱伝導性向上及び密着性向上等の観点から、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルを含む。
【0042】
本実施形態に係るモノマーの含有量は、本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストのワニス成分全体を100質量部としたとき、例えば10質量部以上、好ましくは20質量部以上、より好ましくは25質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上である。これにより、ジェットディペンス用導電性ペーストにより形成される接着層の柔軟性がより向上し、接着層と基板との密着性がより向上する。
本実施形態に係るモノマーの含有量は、本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストのワニス成分全体を100質量部としたとき、例えば80質量部以下、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。これにより、銀粒子の含有量が確保され、接着層の導電性および熱伝導性がより向上する。また、ペーストの粘度が過度に低下することが防止される。
【0043】
本実施形態に係るモノマーの分子量は特に限定されないが、例えば150以上、好ましくは160以上、より好ましくは180以上であり、そして、例えば2000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは600以下である。
【0044】
本実施形態に係るモノマーは、分子内に重合性二重結合を一つ有する単官能(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に重合性二重結合を二つ有する二官能(メタ)アクリル酸エステルと、を含むことが好ましい。これにより接着層の強度がより向上される。
【0045】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペースト中の単官能(メタ)アクリル酸エステルに対する二官能(メタ)アクリル酸エステルのモル比((二官能(メタ)アクリル酸エステルのモル数)/(単官能(メタ)アクリル酸エステルのモル数))は、好ましくは0.1以上2.0以下、より好ましくは1.0以上1.5以下である。これにより、接着層の強度と柔軟性のバランスがより高度に両立される。
【0046】
本実施形態に係る単官能(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャルブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4-ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、およびこれらの誘導体からなる群から選択される一種または二種以上を含む。
【0047】
本実施形態に係る二官能(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびこれらの誘導体からなる群から選択される一種または二種以上を含む。
【0048】
本実施形態に係る(メタ)アクリル酸エステルは、一官能(メタ)アクリル酸エステルおよび二官能(メタ)アクリル酸エステル以外に、分子内に重合性二重結合を三つ以上有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを含んでもよい。
【0049】
(シリカ粒子)
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストは、走査型電子顕微鏡画像の解析により求められるメジアン径(D50)が1nm以上50nm以下のシリカ粒子を含有する。
【0050】
本実施形態に係るシリカ粒子の走査型電子顕微鏡画像の解析により求められるメジアン径(D50)は1nm以上50nm以下と非常に微細であり、このような微細なシリカ粒子がペースト中で他成分と相互作用することにより、ペーストのレオロジー特性が適切な範囲に調整されるものと推測される。
【0051】
本実施形態に係るシリカ粒子の走査型電子顕微鏡画像の解析により求められるメジアン径(D50)は1nm以上であり、吐出性をより一層向上させる観点、及び吐出待機時におけるノズルからの垂れを抑制する観点から、好ましくは2nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは7nm以上、さらに好ましくは9nm以上である。そして、本実施形態に係るシリカ粒子の走査型電子顕微鏡画像の解析により求められるメジアン径(D50)は50nm以下であり、吐出性をより一層向上させる観点、及び吐出待機時におけるノズルからの垂れを抑制する観点から、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下、さらに好ましくは15nm以下である。
【0052】
なお、走査型電子顕微鏡画像の解析により求められるメジアン径(D50)は、市販の画像処理ソフト(例えば、MediaCybernetics社製「Image-Pro Plus5.1J」等)を用いて求めることができる。
【0053】
本実施形態に係るシリカ粒子の含有量は、本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペースト全体を100質量部としたとき、例えば0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは0.7質量部以上である。これにより、ジェットディペンス用導電性ペーストのレオロジー特性がより適切な範囲に調整される。
本実施形態に係るシリカ粒子の含有量は、本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペースト全体を100質量部としたとき、例えば50質量部以下、好ましくは20質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。これにより、銀粒子やモノマー等他成分の含有量が十分確保され、導電性や熱伝導性、ジェットディペンス用導電性ペーストにより形成される接着層の柔軟性等がより適切な範囲に調整される。
【0054】
本実施形態に係るシリカ粒子の形状は、特に限定されず、球状であってもよいし、複数の粒子が凝集または融着した凝集したものであってもよい。また、中空状であってもよい。
【0055】
本実施形態に係るシリカ粒子のBET法による比表面積は、吐出性をより一層向上させる観点、及び吐出待機時におけるノズルからの垂れを抑制する観点から、好ましくは10m2/g以上、より好ましくは20m2/g以上、さらに好ましくは50m2/g以上、さらに好ましくは100m2/g以上、さらに好ましくは125m2/g以上である。そして、本実施形態に係るシリカ粒子のBET法による比表面積は、吐出性をより一層向上させる観点、及び吐出待機時におけるノズルからの垂れを抑制する観点から、好ましくは700m2/g以下、より好ましくは500m2/g以下、さらに好ましくは200m2/g以下、さらに好ましくは175m2/g以下である。
なお、本実施形態に係るシリカ粒子のBET法による比表面積は、例えば、JIS Z 8830:2013(ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)に準拠して、窒素ガス吸着により求めることができる。
【0056】
(ポリマー)
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストは、好ましくはポリマーを含む。
【0057】
本実施形態に係るポリマーは特に限定されないが、本実施形態に係るポリマーは、例えば(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を含むポリマー、ブタジエン由来の構造単位を含むポリマー、アリル化合物由来の構造単位を含むポリマー、フェノール化合物由来の構造単位を含むポリマー、ベンゾオキサジン化合物由来の構造単位を含むポリマー、エポキシ系ポリマー、メラミン系ポリマー、不飽和ポリエステル系ポリマー、マレイミド系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、シアネート系ポリマー及びエラストマーからなる群から選択される一種または二種以上を含み、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を含むポリマー、ブタジエン由来の構造単位を含むポリマー及びアリル化合物由来の構造単位を含むポリマーからなる群から選択される一種または二種以上を含み、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を含むポリマーを含む。
【0058】
本実施形態係るポリマーは、好ましくはエポキシ基等の架橋性基を有するポリマーを含む。これにより架橋構造が形成され、接着層の強度がより一層向上する。
【0059】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストがポリマーを含む場合、ポリマーの含有量は、本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストのワニス成分全体を100質量部としたとき、例えば10質量部以上、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは40質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上である。これにより、ジェットディペンス用導電性ペーストから形成される接着層の柔軟性がより向上し、接着層と基板との密着性が向上する。
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストがポリマーを含む場合、ポリマーの含有量は、本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストのワニス成分全体を100質量部としたとき、例えば90質量部以下、好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下、さらに好ましくは70質量以下である。これにより、銀粒子の含有量が確保され、導電性および熱伝導性がより適切な範囲に調整される。また、ペーストの粘度が過度に上昇することが防止される。
【0060】
(カップリング剤)
無機粒子と他成分の相溶性向上、ペーストと基板の密着性向上等の観点から、本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストは、好ましくはカップリング剤を含む。
【0061】
本実施形態に係るカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン;3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン;γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-6-(アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ベンゼンジメタナン等のアミノシラン;ジ-tert-ブチルシラン、へキシルシラン、オクチルシラン等のアルキルシラン;γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドシラン;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン;ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン等が挙げられ、これらのうちの一種または二種以上を組み合せて用いることができる。
【0062】
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストがカップリング剤を含む場合、カップリング剤の含有量は、本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストのワニス成分全体を100質量部としたとき、例えば0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.7質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上である。これにより、無機粒子とカップリング剤とが十分に反応し、両者の相溶性がより向上する。
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストのワニス成分全体を100質量部としたとき、カップリング剤の含有量は、例えば20質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。これにより、モノマーの硬化反応への悪影響が抑えられる。
【0063】
(ラジカル重合開始剤)
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストは、好ましくはラジカル重合開始剤を含む。本実施形態に係るラジカル重合開始剤の種類は特に限定されず、反応系中においてラジカルを発生させることができるものであればよい。
【0064】
本実施形態に係るラジカル重合開始剤は、例えば過酸化物系のラジカル重合開始剤を含む。
【0065】
(硬化剤)
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストは、好ましくは硬化剤を含む。本実施形態に係る硬化剤の種類は特に限定されず、ペーストを硬化させられるものであればよい。
【0066】
本実施形態に係る硬化剤は、例えば脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジヒドラジド、酸無水物、およびフェノール化合物からなる群から選択される一種または二種以上を含む。
【0067】
(溶剤)
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストは好ましくは溶剤を含む。
【0068】
本実施形態に係る溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、DIBK(ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、DAA(ジアセトンアルコール)等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、DBE(二塩基酸エステル)、EEP(3‐エトキシプロピオン酸エチル)、DMC(ジメチルカーボネート)等のエステル類;ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n‐ブチルアルコール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、BCSA(ブチルセロソルブアセテート)等のセロソルブ類;NMP(N‐メチル‐2‐ピロリドン)、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAC(ジメチルアセトアミド)等の含窒素溶媒類からなる群から選択される一種または二種以上を含む。
【0069】
本実施形態に係る溶剤の含有量は、本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペースト全体を100質量部としたとき、例えば0.1質量部以上、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは0.7質量部以上、さらに好ましくは0.9質量部以上である。これにより塗布作業性がより一層向上する。
本実施形態に係る溶剤の含有量は、本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペースト全体を100質量部としたとき、例えば50質量部以下、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。これにより接着層形成に際しての溶剤の除去がより容易になる。
【0070】
(その他の導電性金属粒子)
本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストは、銀粒子以外のその他の導電性金属粒子を含有してもよい。本実施形態に係るその他の導電性金属粒子は、例えば、金、白金、パラジウム、銅及びニッケル、並びにこれらの金属の合金からなる群から選択される一種または二種以上を含む。
【0071】
(その他の成分)
本実施形態のジェットディスペンス用導電性ペーストは、上記の成分の他に、必要に応じて、例えば、カーボンブラック等の着色剤、シリコーンオイルの固形低応力化成分、消泡剤、界面活性剤、各種重合禁止剤及び酸化防止剤等から選択される一種または二種以上を含む。
【0072】
本実施形態のジェットディスペンス用導電性ペーストは、上記の各成分を公知の方法により混合することにより得ることができる。
【0073】
[塗布方法]
本実施形態に係る塗布方法は、上記のジェットディスペンス用導電性ペーストをジェットディスペンス法により被着面に塗布する塗布方法である。
【0074】
本実施形態に係る塗布方法では、例えば、
図2に示すとおり、ペースト供給路101から供給されたペースト103が、ヒーター107で囲まれた加温ブロック内に充填され、ロッド105の押出しによりバルブシート109を経由してノズル111から基板30の表面へ、液滴113として吐出されることにより行われる。
【0075】
本実施形態に係る塗布方法では上記のジェットディスペンス用導電性ペーストを用いており、上記のジェットディスペンス用導電性ペーストはノズルからの吐出性向上と、待機時におけるノズルからの垂れ性改善とが両立されているため、本実施形態に係る塗布方法によると、吐出時におけるノズルからの吐出性向上と、待機時におけるノズルからの垂れ性改善とが両立される。
【0076】
ノズル111の直径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、そして、好ましくは1000μm以下、より好ましくは700μm以下、さらに好ましくは500μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。
【0077】
ノズル111からの吐出圧は、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.02MPa以上であり、そして、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下、さらに好ましくは0.1MPa以下である。
【0078】
ヒーター107の温度、すなわち加温ブロック内に充填されたペーストに対する加熱温度は、例えば20℃以上90℃以下、好ましくは30℃以上60℃以下、より好ましくは35℃以上50℃以下である。これにより、安定的な塗布処理を実現することができる。
【0079】
[硬化物]
本実施形態に係る硬化物は、上記のジェットディスペンス用導電性ペーストの硬化物である。
【0080】
本実施形態の硬化物を得るための硬化の様式は特に限定されないが、例えば、熱処理によりジェットディスペンス用導電性ペースト中の成分を硬化させることにより得ることができる。
【0081】
ジェットディスペンス用導電性ペーストの熱処理温度は、好ましくは150℃以上、より好ましくは175℃以上、さらに好ましくは200℃以上であり、そして、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下、さらに好ましくは300℃以下である。
【0082】
[半導体装置]
本実施形態に係る半導体装置は、基材と、上記のジェットディスペンス用導電性ペーストの硬化物である接着層を介して前記基材上に搭載された半導体素子と、を備える。
【0083】
本実施形態に係る半導体装置の一例について
図1を用いて説明する。
【0084】
図1は、本実施形態に係る半導体装置100を示す断面図である。本実施形態に係る半導体装置100は、基板30と、上記のジェットディスペンス用導電性ペーストの硬化物である接着層10を介して基板30上に搭載された半導体素子20と、を備えている。
【0085】
半導体素子20と基板30は、例えばボンディングワイヤ40等を介して電気的に接続される。
半導体素子20は、例えばモールド樹脂50により封止される。
基板30の半導体素子20を搭載した面とは反対の面には、例えば半田ボール60が形成される。
【0086】
接着層10の厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上、例えば10μm以上、例えば20μm以上であり、そして、例えば100μm以下、例えば70μm以下である。
【0087】
基板30の材質は、例えばエポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂等の樹脂、またはセラミックである。また、基板30の表面は、ジェットディスペンス用導電性ペーストとの接着性をよくするために、銀などの金属により被膜されていてもよい。
【0088】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0089】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
<ジェットディスペンス用導電性ペーストの調製>
表1および2に示す配合に従い各成分を均一に混合することによりジェットディスペンス用導電性ペーストを調整した。表1および2に示す成分の詳細は以下のとおりである。
【0091】
・モノマー1(フェノキシエチルメタクリレート、製品名:ライトエステルPO、共栄社化学社製)
・モノマー2(1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、製品名:ライトエステル1,6HX、共栄社化学社製)
【0092】
・ポリマー1(エポキシ基を含有するアクリルポリマー、製品名:ARUFON(登録商標)UG4035、東亞合成社製)
・ポリマー2(無水マレイン酸変性ポリブタジエン、製品名:Ricobond1731、クレイバレー社製)
・ポリマー3(アリルポリマー、製品名:1,4-Cyclohexanedicarboxylic acid, di-2-propenyl ester, polymer with 1,2-propanediol、関東化学社製)
【0093】
・ラジカル重合開始剤1(過酸化物系ラジカル重合開始剤、製品名:パーカドックスBC、化薬ヌーリオン社製)
【0094】
・銀粒子1(D50:3μm、鱗片状)
・銀粒子2(D50:2μm、鱗片状)
・銀粒子3(D50:2.7μm、鱗粉状)
【0095】
・シリカ粒子1(D50:12nm、比表面積:150±25m2/g)
【0096】
・溶剤1(Ethylene Glycol Mono-n-butyl Ether Acetate、東京化成工業社製)
【0097】
<粘度測定>
Brook Field粘度計を用いて、下記の測定温度とせん断速度にて、調製直後のジェットディスペンス用導電性ペーストの粘度を測定した。結果を表2に示す。
η0.5(25℃):せん断速度0.5rpm、測定温度25℃
η5(25℃):せん断速度5rpm、測定温度25℃
η50(25℃):せん断速度50rpm、測定温度25℃
η100(25℃):せん断速度100rpm、測定温度25℃
η0.5(50℃):せん断速度0.5rpm、測定温度50℃
η5(50℃):せん断速度5rpm、測定温度50℃
η50(50℃):せん断速度50rpm、測定温度50℃
η100(50℃):せん断速度100rpm、測定温度50℃
【0098】
また、チキソ指数R1(η0.5(50℃)/η5(50℃))、チキソ指数R2(η0.5(25℃)/η5(25℃))、チキソ指数R3(η5(50℃)/η50(50℃))および温度依存粘度変化率r1(η50(50℃)/η50(25℃))を算出した。結果を表2に示す。
【0099】
<ジェットディスペンス試験>
得られたジェットディスペンス用導電性ペーストを100メッシュでろ過し、加温ブロックに充填した。次いで、この加温ブロックを装着したジェットディスペンサ(機種名:HV Valve、SSI Japan社製)を用いて、ノズル直径150μm、ノズル‐基板間距離1mm以下、吐出圧0.05MPa、吐出時間0.4ms、吐出間隔時間100ms、加温温度35℃の条件にてガラス製基板上に1000点(50点×20列)打点塗布した。
【0100】
(吐出時におけるノズル詰まり抑制)
ノズルが詰まらずに打点塗布できた打点の数により、吐出時におけるノズル詰まり抑制を評価した。結果を表2に示す。
良:1000個
可:800個以上999個以下
不可:799個以下
【0101】
(吐出時における糸引き発生抑制)
吐出性の指標として、吐出時におけるノズルからの糸引きを評価した。すなわち、上記の条件により打点塗布したペーストを目視観察し、基板上への塗布形状が略半球形状とならなかったものの割合を算出し、下記の基準により評価した。結果を表2に示す。
良:1%未満
可:1%以上5%未満
不可:5%以上
【0102】
(吐出待機時における垂れ抑制)
吐出待機時におけるノズルからの垂れ性を評価した。すなわち、上記の条件で塗布を行い、ジェットディスペンサ停止させた後30分経過時にノズル先端を目視観察し、下記の基準により評価した。結果を表2に示す。
良:ペーストがノズル先端付着しなかった。
可:ペーストがノズル先端に付着したが、ノズル先端から落下しなかった。
不可:ペーストがノズル先端に付着し、さらにノズル先端から落下した。
【0103】
【0104】
【0105】
実施例では吐出時のノズル詰まりが抑制された。また、実施例では糸引き発生も抑制された。さらに、実施例では待機時のペーストの垂れも抑制された。これらのことから、本実施形態に係るジェットディスペンス用導電性ペーストによると、吐出時におけるノズルからの吐出性が良好になるとともに、待機時におけるノズルからの垂れ性が改善されることがわかる。