(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126969
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】制御装置、及び制御装置における通信方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/024 20160101AFI20240912BHJP
【FI】
H02P29/024
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035770
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 未也
(72)【発明者】
【氏名】深代 晃汰
(72)【発明者】
【氏名】笛木 正弘
(72)【発明者】
【氏名】森 桂一
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 裕司
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA05
5H501AA20
5H501CC04
5H501HA08
5H501HB07
5H501JJ30
5H501LL52
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】同一システム上における通信によるノイズ発振を低減させる。
【解決手段】モータ制御装置10は、モータの駆動を制御するための回路の少なくとも一部を構成するMCU12及びプリドライバ13を含み、MCU12は、MCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するタイミングであるか否かを判断してMCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するタイミングであると判断したときに通信実行指令を出力する通信時機判断部121と、通信実行指令が入力されたときにMCU12とプリドライバ13との間の通信を実行する通信部122と、を備え、通信時機判断部121は、MCU12とプリドライバ13との間の通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならないタイミングを、MCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するタイミングであると判断する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MCU及びICを含み、
前記MCUは、
前記MCUと前記ICとの間の通信を実行するタイミングであるか否かを判断して前記MCUと前記ICとの間の通信を実行するタイミングであると判断したときに通信実行指令を出力する通信時機判断部と、
前記通信実行指令が入力されたときに前記MCUと前記ICとの間の通信を実行する通信部と、を備え、
前記通信時機判断部は、前記MCUと前記ICとの間の通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならないタイミングを、前記MCUと前記ICとの間の通信を実行するタイミングであると判断する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記MCU及び前記ICはモータの駆動を制御するための回路の少なくとも一部を構成し、
前記MCUと前記ICとの間の通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならない前記タイミングが、前記MCU及び前記ICの上位の制御装置であるECUから前記MCUの前記通信時機判断部へと前記モータの停止指令が入力されたタイミングである、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
MCU及びICを含み、
前記MCUは、
前記ICの設定の書き込みに必要とされる通信量(「書込み通信量」と称する)と前記ICの現状の設定の読み出しに必要とされる通信量(「読出し通信量」と称する)とを比較して、前記書込み通信量よりも前記読出し通信量のほうが多い場合に通信実行指令を出力し、前記書込み通信量よりも前記読出し通信量のほうが少ない場合に前記ICの現状の設定の内容を読み出す読出し実行指令を出力する通信量比較部と、
読み出された前記ICの前記現状の設定の内容が正常であるか否かを判断して前記ICの前記現状の設定の内容が異常である場合に通信実行指令を出力する設定内容判断部と、
前記読出し実行指令が入力されたときは前記MCUと前記ICとの間で前記ICの現状の設定を読み出すための通信を実行し、前記通信実行指令が入力されたときは前記MCUと前記ICとの間で前記ICの設定を書き込むための通信を実行する通信部と、を備える、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
前記MCU及び前記ICはモータの駆動を制御するための回路の少なくとも一部を構成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
MCU及びICを含む制御装置において実行される方法であって、
前記MCUと前記ICとの間の通信を実行するタイミングであるか否かを判断するステップと、
前記MCUと前記ICとの間の通信を実行するタイミングであると判断したときに前記MCUと前記ICとの間の通信を実行するステップと、を有し、
前記MCUと前記ICとの間の通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならないタイミングを、前記MCUと前記ICとの間の通信を実行するタイミングであると判断する、
ことを特徴とする制御装置における通信方法。
【請求項6】
前記MCU及び前記ICはモータの駆動を制御するための回路の少なくとも一部を構成し、
前記MCUと前記ICとの間の通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならない前記タイミングが、前記MCU及び前記ICの上位の制御装置であるECUから前記MCUへと前記モータの停止指令が入力されたタイミングである、
ことを特徴とする請求項5に記載の制御装置における通信方法。
【請求項7】
MCU及びICを含む制御装置において実行される方法であって、
前記ICの設定の書き込みに必要とされる通信量(「書込み通信量」と称する)と前記ICの現状の設定の読み出しに必要とされる通信量(「読出し通信量」と称する)とを比較するステップと、
前記書込み通信量よりも前記読出し通信量のほうが多い場合に前記MCUと前記ICとの間で前記ICの設定を書き込むための通信を実行するステップと、
前記書込み通信量よりも前記読出し通信量のほうが少ない場合に前記MCUと前記ICとの間で前記ICの現状の設定を読み出すための通信を実行するステップと、
読み出された前記ICの前記現状の設定の内容が正常であるか否かを判断するステップと、
読み出された前記ICの前記現状の設定の内容が異常である場合に前記MCUと前記ICとの間で前記ICの設定を書き込むための通信を実行するステップと、を有する、
ことを特徴とする制御装置における通信方法。
【請求項8】
前記MCU及び前記ICはモータの駆動を制御するための回路の少なくとも一部を構成する、
ことを特徴とする請求項7に記載の制御装置における通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、及び制御装置における通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
同一システム上にMCU(Micro Controller Unit)及びIC(Integrated Circuit)を有するモータ駆動システムにおいて、MCUやICは、例えばICの設定書込みやICのフェール情報読出しなどのために定期的に通信(具体的には例えば、SPI(Serial Peripheral Interface)通信)を実行している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通信の実行中はノイズ発振し、ノイズ発振の発生頻度、発生条件によっては、通信に伴うノイズ発振が電磁波障害を惹き起こす場合がある。このため、電子機器に、例えば、誤作動、機能低下、データの損失、安全上のリスクなどの多くの有害な結果を惹き起こす場合がある、という問題がある。
【0005】
そこで本発明は、1つの側面では、同一システム上における通信によるノイズ発振を低減させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る制御装置は、MCU及びICを含み、前記MCUは、前記MCUと前記ICとの間の通信を実行するタイミングであるか否かを判断して前記MCUと前記ICとの間の通信を実行するタイミングであると判断したときに通信実行指令を出力する通信時機判断部と、前記通信実行指令が入力されたときに前記MCUと前記ICとの間の通信を実行する通信部と、を備え、前記通信時機判断部は、前記MCUと前記ICとの間の通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならないタイミングを、前記MCUと前記ICとの間の通信を実行するタイミングであると判断する、ようにしてもよい。
【0007】
本発明に係る制御装置は、前記MCU及び前記ICはモータの駆動を制御するための回路の少なくとも一部を構成し、前記MCUと前記ICとの間の通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならない前記タイミングが、前記MCU及び前記ICの上位の制御装置であるECUから前記MCUの前記通信時機判断部へと前記モータの停止指令が入力されたタイミングである、ようにしてもよい。
【0008】
本発明に係る制御装置は、MCU及びICを含み、前記MCUは、前記ICの設定の書き込みに必要とされる通信量(「書込み通信量」と称する)と前記ICの現状の設定の読み出しに必要とされる通信量(「読出し通信量」と称する)とを比較して、前記書込み通信量よりも前記読出し通信量のほうが多い場合に通信実行指令を出力し、前記書込み通信量よりも前記読出し通信量のほうが少ない場合に前記ICの現状の設定の内容を読み出す読出し実行指令を出力する通信量比較部と、読み出された前記ICの前記現状の設定の内容が正常であるか否かを判断して前記ICの前記現状の設定の内容が異常である場合に通信実行指令を出力する設定内容判断部と、前記読出し実行指令が入力されたときは前記MCUと前記ICとの間で前記ICの現状の設定を読み出すための通信を実行し、前記通信実行指令が入力されたときは前記MCUと前記ICとの間で前記ICの設定を書き込むための通信を実行する通信部と、を備える、ようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る制御装置は、前記MCU及び前記ICはモータの駆動を制御するための回路の少なくとも一部を構成する、ようにしてもよい。
【0010】
本発明に係る制御装置における通信方法は、MCU及びICを含む制御装置において実行される方法であって、前記MCUと前記ICとの間の通信を実行するタイミングであるか否かを判断するステップと、前記MCUと前記ICとの間の通信を実行するタイミングであると判断したときに前記MCUと前記ICとの間の通信を実行するステップと、を有し、前記MCUと前記ICとの間の通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならないタイミングを、前記MCUと前記ICとの間の通信を実行するタイミングであると判断する、ようにしてもよい。
【0011】
本発明に係る制御装置における通信方法は、前記MCU及び前記ICはモータの駆動を制御するための回路の少なくとも一部を構成し、前記MCUと前記ICとの間の通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならない前記タイミングが、前記MCU及び前記ICの上位の制御装置であるECUから前記MCUへと前記モータの停止指令が入力されたタイミングである、ようにしてもよい。
【0012】
本発明に係る制御装置における通信方法は、MCU及びICを含む制御装置において実行される方法であって、前記ICの設定の書き込みに必要とされる通信量(「書込み通信量」と称する)と前記ICの現状の設定の読み出しに必要とされる通信量(「読出し通信量」と称する)とを比較するステップと、前記書込み通信量よりも前記読出し通信量のほうが多い場合に前記MCUと前記ICとの間で前記ICの設定を書き込むための通信を実行するステップと、前記書込み通信量よりも前記読出し通信量のほうが少ない場合に前記MCUと前記ICとの間で前記ICの現状の設定を読み出すための通信を実行するステップと、読み出された前記ICの前記現状の設定の内容が正常であるか否かを判断するステップと、読み出された前記ICの前記現状の設定の内容が異常である場合に前記MCUと前記ICとの間で前記ICの設定を書き込むための通信を実行するステップと、を有する、ようにしてもよい。
【0013】
本発明に係る制御装置における通信方法は、前記MCU及び前記ICはモータの駆動を制御するための回路の少なくとも一部を構成する、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、1つの側面では、同一システム上における通信によるノイズ発振を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係るモータ制御装置における通信方法が実行される、本発明の実施の形態に係るモータ制御装置の構成の例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係るモータ制御装置のMCUの機能構成を説明する図である。
【
図3】実施の形態1に係るモータ制御装置及びモータ制御装置における通信方法の処理内容を説明する図である。
【
図4】実施の形態2に係るモータ制御装置のMCUの機能構成を説明する図である。
【
図5】実施の形態2に係るモータ制御装置及びモータ制御装置における通信方法の処理内容を説明する図である。
【
図6】実施の形態2に係るモータ制御装置及びモータ制御装置における通信方法の処理手順を説明するフロー図である。
【
図7】実施の形態3に係るモータ制御装置のMCUの機能構成を説明する図である。
【
図8A】実施の形態3に係るモータ制御装置及びモータ制御装置における通信方法の処理内容を説明する図である。
【
図8B】実施の形態3に係るモータ制御装置及びモータ制御装置における通信方法の処理内容を説明する図である。
【
図9】実施の形態3に係るモータ制御装置及びモータ制御装置における通信方法の処理手順を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。下記の実施の形態(具体的には、実施の形態1乃至実施の形態3)では、本発明に係る制御装置における通信方法が
図1に示す本発明に係る制御装置の一例において実行される場合を例に挙げて説明する。
【0017】
(装置の構成)
図1は、本発明に係る制御装置及び制御装置における通信方法の具体的な構成態様の例としての、実施の形態(具体的には、実施の形態1乃至実施の形態3)に係るモータ制御装置における通信方法が実行される、実施の形態に係るモータ制御装置10の構成の例を示すブロック図である。
【0018】
実施の形態に係るモータ制御装置10は、車両に搭載される3相交流モータ20(3相:U相、V相、及びW相)の駆動を制御するための機序である。3相交流モータ20は、具体的には、オイルを循環させる電動オイルポンプを駆動するモータである。ここで、本発明に係る制御装置における通信方法が適用され得る装置、回路(即ち、本発明に係る制御装置)はモータの駆動を制御するための装置、回路に限定されるものではなく、
図1に示すモータ制御装置10は本発明に係る制御装置における通信方法が適用され得る装置、回路の構成のあくまでも一例であるので詳細な説明は省略するが、概略は下記のとおりである。
【0019】
モータ制御装置10は、電源回路11、MCU(Micro Controller Unit)12、プリドライバ13、及びFET(Field Effect Transistor)ブリッジ14を含む。
【0020】
電源回路11は、直流電源電圧VCC、VDCを生成する。直流電源電圧VCCは、MCU12用の電源電圧(電源電位)であり、MCU12の端子VCCへと供給される。直流電源電圧VDCは、3相交流モータ20のインバータ駆動用の電源電圧(駆動電圧)であり、プリドライバ13の端子VDCへと供給される。
【0021】
MCU12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やメモリなどを含むチップとして構成される。MCU12のCPUは、メモリに記憶されているプログラムやデータを読み出して、所定の処理を行うように構成されている。
【0022】
MCU12は、制御信号UT,UB,VT,VB,WT,WBを生成してプリドライバ13へと供給する。制御信号UT,UBは、FETブリッジ14内のU相に係るスイッチング素子のオン/オフを制御するための信号である。制御信号VT,VBは、FETブリッジ14内のV相に係るスイッチング素子のオン/オフを制御するための信号である。制御信号WT,WBは、FETブリッジ14内のW相に係るスイッチング素子のオン/オフを制御するための信号である。
【0023】
プリドライバ13は、FETブリッジ14内のスイッチング素子を駆動するための駆動回路に相当し、IC(Integrated Circuit)により構成される。プリドライバ13は、MCU12から供給される制御信号UT,UB,VT,VB,WT,WBに従って生成される各スイッチング素子を制御するための信号を、6個の出力端子を介して、FETブリッジ14の各スイッチング素子の制御端子へと供給する。プリドライバ13は、すなわち、MCU12から供給される制御信号UT,UB,VT,VB,WT,WBに基づいて、FETブリッジ14内の6個のスイッチング素子のスイッチング動作(即ち、オン/オフ)を制御する。
【0024】
FETブリッジ14は、プリドライバ13から6個の入力端子を介して供給される、6個のスイッチング素子のスイッチング動作(即ち、オン/オフ)を制御するための信号に従って3相交流モータ20をインバータ駆動する。FETブリッジ14は、3相交流モータ20をインバータ駆動するための6個のスイッチング素子を備えており、具体的には、ブリッジ回路の上側に位置する3個の上アーム(ハイサイド)のスイッチング素子と、ブリッジ回路の下側に位置する3個の下アーム(ローサイド)のスイッチング素子とを備えている。各スイッチング素子は、電界効果トランジスタ(FET)によって構成されている。FETブリッジ14の3個の出力端子は、3相交流モータ20の3個のコイル(即ち、U相コイル、V相コイル、及びW相コイル;図示省略)それぞれに接続されている。
【0025】
MCU12とプリドライバ13とは、通信を実行し、具体的には例えばSPI(Serial Peripheral Interface)通信を実行する。
図1に示す例では、MCU12をSPIメイン(又は、SPIマスター)とするとともにプリドライバ13をSPIサブノード(又は、SPIスレーブ)として4線式のSPI通信が実行される。
【0026】
この場合、SPIメインとしてのMCU12から、通信信号として、チップセレクト用の信号/CS(尚、/はCSの上に付される─を表す)、メイン出力-サブノード入力の信号SDI、及び、通信の同期をとるための、当該MCU12によって生成されるクロック信号SCLKが、SPIサブノードとしてのプリドライバ13へと送信される。また、SPIサブノードとしてのプリドライバ13から、メイン入力-サブノード出力の信号SDOが、SPIメインとしてのMCU12へと送信される。
【0027】
メイン出力-サブノード入力の信号SDIは、プリドライバ13においてFETブリッジ14内の6個のスイッチング素子のスイッチング動作の制御を行うための、MCU12(SPIメイン)からプリドライバ13(SPIサブノード)に対するデータである。メイン入力-サブノード出力の信号SDOは、プリドライバ13(SPIサブノード)からMCU12(SPIメイン)に対するデータである。
【0028】
また、プリドライバ13から、ダイアグ信号DIAGが、MCU12のダイアグ端子DIAGへと送信される。ダイアグ信号DIAGは、例えば3相交流モータ20の異常を示す情報(「フェール情報」や「ダイアグ情報」とも称される)に相当する電気的な信号である。なお、ダイアグ信号DIAGが出力されると、MCU12及びプリドライバ13の上位の制御装置であるECU(Electronic Control Unit;
図1には図示していない)は、ダイアグ信号DIAGの内容を確認し、例えば、軽微な異常を示すダイアグ信号(フェール情報)であるか即時保護すべき異常を示すダイアグ信号(フェール情報)であるかなどに応じて、フェールセーフ処理を実行したり他の処理や制御を実行したりする。
【0029】
また、MCU12から、リセット信号/RESET(尚、/はRESETの上に付される─を表す)が、プリドライバ13のイネーブル端子ENAへと送信される。例えば、プリドライバ13や3相交流モータ20をもとの状態に復帰させる場合に、MCU12からプリドライバ13のイネーブル端子ENAに対してリセット信号/RESETが印加される。
【0030】
ここで、MCU12によるプリドライバ13の設定(例えば、通電方式の設定、異常検出機能に関するフォルト(Fault)設定(過熱、低電圧、ゲートドライブ、ウォッチドッグ等の有効/無効設定)、過電流(Vds)異常の検出しきい値、通知方法、センシング無効時間の設定)の書き込みが、システム(具体的には、モータ制御装置10)の電源投入時や稼働開始までに一度実施される。そのうえで、例えばシステムの稼働中に電源電圧変動によってプリドライバ13がリセットされた場合などには、初期化設定(具体的には、電源投入時と同じ設定)を再度実施する必要がある。しかしながら、電源電圧変動がいつ発生するかは分からない。そこで、いつ発生するか分からない例えば電源電圧変動によるプリドライバ13のリセットに早期に対応する(具体的には、初期化設定する)ため、MCU12とプリドライバ13との間で定期的に通信を実行してプリドライバ13の設定の書き込みを実施するようにすることが考えられる。
【0031】
また、MCU12とIC(即ち、この実施の形態におけるプリドライバ13に相当するIC)との間で通信可能であるように構成することにより、例えば、モータ制御装置10が制御する仕組みや機器の仕様、モータ制御装置10に関連する仕組みや機器の仕様、また、システム稼働中の状況などに合わせてICの設定を書き換えて適宜変更することが可能となる。
【0032】
しかしながら、通信の実行中はノイズ発振し、システム稼働中の通信に伴うノイズ発振が電磁波障害を惹き起こす場合がある。そこで、本発明は、通信によるノイズ発振を低減させるために、通信を実行するタイミングを限定したり(実施の形態1)、通信量が多く不要な通信を禁止したり(実施の形態2)、通信を実行するタイミングを限定するとともに通信量が多く不要な通信を禁止したり(実施の形態3)するようにしている。
【0033】
(実施の形態1)
図2は、本発明に係る制御装置の具体的な構成態様の例としての、実施の形態1に係るモータ制御装置10のMCU12の機能構成を説明する図である。
図3は、本発明に係る制御装置及び制御装置における通信方法の具体的な構成態様の例としての、実施の形態1に係るモータ制御装置10及びモータ制御装置における通信方法の処理内容を説明する図である。
【0034】
実施の形態1に係るモータ制御装置10は、モータの駆動を制御するための回路の少なくとも一部を構成するMCU12及びプリドライバ13を含み、MCU12は、MCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するタイミングであるか否かを判断してMCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するタイミングであると判断したときに通信実行指令を出力する通信時機判断部121と、通信実行指令が入力されたときにMCU12とプリドライバ13との間の通信を実行する通信部122と、を備え、通信時機判断部121は、MCU12とプリドライバ13との間の通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならないタイミングを、MCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するタイミングであると判断する、ようにしている。
【0035】
また、実施の形態1に係るモータ制御装置における通信方法は、MCU12及びプリドライバ13を含むモータ制御装置において実行される方法であって、MCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するタイミングであるか否かを判断するステップと、MCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するタイミングであると判断したときにMCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するステップと、を有し、MCU12とプリドライバ13との間の通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならないタイミングを、MCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するタイミングであると判断する、ようにしている。
【0036】
この実施の形態では、MCU12及びプリドライバ13の上位の制御装置であるECU30からMCU12の通信時機判断部121へと3相交流モータ20の停止指令(具体的には、停止指令に相当する電気的な信号)が入力されたタイミングで、通信時機判断部121から通信実行指令が出力されてMCU12の通信部122へと入力され、通信部122によってMCU12とプリドライバ13との間の通信が実行されてMCU12からプリドライバ13への設定の書き込みが実施される。そして、ECU30から3相交流モータ20の停止指令が発信されたタイミングで通信が実行された後は、(ECU30が3相交流モータ20の駆動指令を発信したうえで)次にECU30から3相交流モータ20の停止指令が発信されるまでの間は、MCU12とプリドライバ13との間において、プリドライバ13の設定の書き込みに関わる通信は実行されない。
【0037】
なお、例えば3相交流モータ20が回転しすぎていたり回転していなかったりするなどの異常が発生してECU30がその異常を検知した場合にはECU30は停止指令を発信するので、そのタイミングでMCU12とプリドライバ13との間の通信が実行されてMCU12からプリドライバ13への設定の書き込みが実施される。
【0038】
MCU12とプリドライバ13との間で通信を実行するタイミング(言い換えると、トリガー、きっかけ)は、ECU30から3相交流モータ20の停止指令が発信されたタイミングに限定されるものではなく、通信に伴う電磁波ノイズが放出されても支障のないタイミングであればよい。具体的には、MCU12とプリドライバ13との間の通信は、MCU12とプリドライバ13との間の通信を要因として生じるノイズが、別の要因で生じるノイズと競合することを避けるタイミングで実行されればよい。言い換えると、MCU12とプリドライバ13との間の通信は、当該通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならないタイミングで実行される。すなわち、MCU12の通信時機判断部121は、MCU12とプリドライバ13との間の通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならないタイミングを、MCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するタイミングであると判断する。
【0039】
この実施の形態では、3相交流モータ20の駆動中はプリドライバ13を要因とするノイズが発生するので当該ノイズとの競合を避けるためにMCU12とプリドライバ13との間の通信は実行しないようにし、3相交流モータ20の停止中はプリドライバ13を要因とするノイズが無くなるので通信を実行する。そして、MCU12の通信時機判断部121は、ECU30から3相交流モータ20の停止指令が発信されたタイミングを、MCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するタイミングであると判断する(延いては、通信実行指令を出力する)。
【0040】
また、回路(特に、MCU12と、当該MCU12との間で通信を実行するIC(即ち、この実施の形態におけるプリドライバ13に相当するIC)と、の組合せ)が他の仕組みや機器を制御する場合には、制御対象の仕組みや機器それぞれに応じた、通信に伴う電磁波ノイズが放出されても支障のないタイミングで、即ち、MCU12とICとの間の通信を要因として生じるノイズが別の要因で生じるノイズと競合することを避けるタイミングで、言い換えると、MCU12とICとの間の通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならないタイミングで、MCU12とICとの間の通信が実行される。
【0041】
例えば、MCUとICとの組合せが、車両のインストルメントパネル内に設置されている表示部(ディスプレイ)に表示する時計などの表示機能を担っており、表示切替と休み(尚、スリープ機能でなく)とが交互に繰り返されるシステムの場合は、時計などの表示機能が稼働していない休み(即ち、一の表示切替を行った後に次に表示切替を行うまでの間)のタイミングで、MCUとICとの間の通信が実行されるようにしてもよい。
【0042】
また、MCUにスリープ機能を実装しているシステムの場合は、スリープの前後に当該のMCUに係る機能が稼働しない時間があるので、イグニッション(即ち、MCU電源)オフからスリープの間や、イグニッション(MCU電源)オンからウェイクアップの間で、MCUとICとの間の通信が実行されるようにしてもよい。
【0043】
(実施の形態2)
図4は、本発明に係る制御装置の具体的な構成態様の例としての、実施の形態2に係るモータ制御装置10のMCU12の機能構成を説明する図である。
図5は、本発明に係る制御装置及び制御装置における通信方法の具体的な構成態様の例としての、実施の形態2に係るモータ制御装置10及びモータ制御装置における通信方法の処理内容を説明する図である。
図6は、実施の形態2に係るモータ制御装置10及びモータ制御装置における通信方法の処理手順を説明するフロー図である。
【0044】
実施の形態2に係るモータ制御装置10は、モータの駆動を制御するための回路の少なくとも一部を構成するMCU12及びプリドライバ13を含み、MCU12は、プリドライバ13の設定の書き込みに必要とされる通信量(「書込み通信量」と称する)とプリドライバ13の現状の設定の読み出しに必要とされる通信量(「読出し通信量」と称する)とを比較して、書込み通信量よりも読出し通信量のほうが多い場合に通信実行指令を出力し、書込み通信量よりも読出し通信量のほうが少ない場合にプリドライバ13の現状の設定の内容を読み出す読出し実行指令を出力する通信量比較部123と、読み出されたプリドライバ13の現状の設定の内容が正常であるか否かを判断してプリドライバ13の現状の設定の内容が異常である場合に通信実行指令を出力する設定内容判断部124と、読出し実行指令が入力されたときはMCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の現状の設定を読み出すための通信を実行し、通信実行指令が入力されたときはMCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の設定を書き込むための通信を実行する通信部122と、を備える、ようにしている。
【0045】
また、実施の形態2に係るモータ制御装置における通信方法は、MCU12及びプリドライバ13を含むモータ制御装置において実行される方法であって、プリドライバ13の設定の書き込みに必要とされる通信量(即ち、書込み通信量)とプリドライバ13の現状の設定の読み出しに必要とされる通信量(即ち、読出し通信量)とを比較するステップS1、S2と、書込み通信量よりも読出し通信量のほうが多い場合(ステップS2:No)にMCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の設定を書き込むための通信を実行するステップS3と、書込み通信量よりも読出し通信量のほうが少ない場合(ステップS2:Yes)にMCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の現状の設定を読み出すための通信を実行するステップS4と、読み出されたプリドライバ13の現状の設定の内容が正常であるか否かを判断するステップS5と、読み出されたプリドライバ13の現状の設定の内容が異常である場合(ステップS5:No)にMCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の設定を書き込むための通信を実行するステップS6と、を有する、ようにしている。
【0046】
この実施の形態では、MCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するか否かの検証が行われて、検証の結果に基づいて必要に応じてMCU12とプリドライバ13との間の通信が実行されてMCU12からプリドライバ13への設定の書き込みが実施される。
【0047】
具体的には、まず、MCU12の通信量比較部123は、プリドライバ13の設定の書き込みに必要とされる通信量(即ち、書込み通信量)と、プリドライバ13の現状の設定(レジスタ)の読み出しに必要とされる通信量(即ち、読出し通信量)とを取得する(ステップS1)。
【0048】
書込み通信量及び読出し通信量は、例えば、モータ制御装置10の設計段階において把握されるようにしてよい。すなわち、プリドライバ13の設定の書き込みが実施される際には、プリドライバ13のレジスタとの間で通信が実行されてMCU12から信号が送信されるところ、設定項目に応じて複数のレジスタに対して書き込みが実施される。そして、通信(具体的には例えば、SPI通信)は1つのレジスタに対して1つずつ送信される。このため、設定するレジスタ数が書込み通信量(つまり、通信回数)となるので、設定するレジスタ数が設計されることにより書込み通信量が決定される。読出し通信量も、同様に、読み出すレジスタ数が設計されることにより決定される。なお、設計段階に見積もられた書込み通信量と読出し通信量とから、書込み通信量と読出し通信量とのうちのどちらの通信量が多いかが判断できる場合には、ステップS1の処理に代わり、書込み通信量よりも読出し通信量が少ない場合であればプリドライバ13の設定の書き込みのための通信を実行し、書込み通信量が読出し通信量よりも多い場合であればプリドライバ13の現状の設定の読み出しのための通信を実行するように設計してもよい。また、モータ制御装置10の設計段階において決定され把握されたMCU12とプリドライバ13との間の通信における書込み通信量及び読出し通信量が例えばMCU12内のメモリに予め記憶され、ステップS1の処理として、これら記憶された書込み通信量及び読出し通信量が読み込まれるようにしてもよい。
【0049】
ここで、書込み通信量と読出し通信量とを取得するタイミング(延いては、MCU12とプリドライバ13との間の通信を必要に応じて実行するタイミング)は、予め定められた所定の間隔で行われてもよく、或いは所定のトリガー、きっかけに従って行われてもよい。
【0050】
次に、MCU12の通信量比較部123は、ステップS1で取得した書込み通信量と読出し通信量とを比較し、書込み通信量よりも読出し通信量のほうが少ないか否かを判断する(ステップS2)。
【0051】
上述のとおり書込み通信量及び読出し通信量はモータ制御装置10の設計段階において決定され把握されるので、モータ制御装置10の設計段階において決定され把握されたMCU12とプリドライバ13との間の通信における書込み通信量と読出し通信量との大小関係が例えばMCU12内のメモリに予め記憶され、ステップS2の処理として、この記憶された大小関係が読み込まれるようにしてもよい。このこともふまえ、上記のステップS1の処理とこのステップS2の処理とは実質的にひと纏まりの処理として実行されてよい。
【0052】
そして、書込み通信量よりも読出し通信量のほうが多い場合(ステップS2:No)は、MCU12の通信量比較部123から通信実行指令が出力されてMCU12の通信部122へと入力され、通信部122によってMCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の設定を書き込むための通信が実行される(ステップS3)。これにより、所定の間隔やトリガー、きっかけ(ステップS1)に従う当該のタイミングに対応するMCU12とプリドライバ13との間の通信は終了する。
【0053】
一方で、書込み通信量よりも読出し通信量のほうが少ない場合(ステップS2:Yes)は、MCU12の通信量比較部123から読出し実行指令が出力されてMCU12の通信部122へと入力され、通信部122によってMCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の現状の設定を読み出すための通信が実行される(ステップS4)。そして、読み出された、プリドライバ13の現状の設定の内容がMCU12の設定内容判断部124へと伝送される。
【0054】
そのうえで、MCU12の設定内容判断部124は、読み出された設定の内容が正常であるか否かを判断する(ステップS5)。設定内容判断部124は、例えば、レジスタの値(具体的には、1又は0)が、現状において設定されているべき値と一致しているときは読み出された設定の内容が正常であると判断し、一方で、現状において設定されているべき値と一致していないときは読み出された設定の内容が異常であると判断する。
【0055】
設定内容判断部124は、具体的には例えば、電源投入時にプリドライバ13に対して設定した内容がそのまま保持されているか否かに基づいて、読み出された設定の内容が正常であるか否かを判断してもよい。なお、プリドライバ13に誤作動、エラーが発生した場合に、電源投入時にプリドライバ13に対して設定された内容が変わる。例えば、MCU12の電源電圧には異常がない一方でプリドライバ13の電源電圧が変動した場合などに、プリドライバ13がリセットされることにより、電源投入時にプリドライバ13に対して設定された内容がリセットされて変わる。
【0056】
また、システムの稼働中の時点各々における適正な内容(言い換えると、設定されているべき内容)との対比に基づいて、読み出された設定の内容が正常であるか否かを判断してもよい。
【0057】
そして、読み出された設定の内容が異常である場合(ステップS5:No)は、MCU12の設定内容判断部124から通信実行指令が出力されてMCU12の通信部122へと入力され、通信部122によってMCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の設定を書き込むための通信が実行される(ステップS6)。これにより、所定の間隔やトリガー、きっかけ(ステップS1)に従う当該のタイミングに対応するMCU12とプリドライバ13との間の通信は終了する。
【0058】
一方で、読み出された設定の内容が正常である場合(ステップS5:Yes)は、MCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の設定を書き込むための通信は実行されずに、所定の間隔やトリガー、きっかけ(ステップS1)に従う当該のタイミングに対応するMCU12とプリドライバ13との間の通信は終了する。
【0059】
(実施の形態3)
図7は、本発明に係る制御装置の具体的な構成態様の例としての、実施の形態3に係るモータ制御装置10のMCU12の機能構成を説明する図である。
図8A及び
図8Bは、本発明に係る制御装置及び制御装置における通信方法の具体的な構成態様の例としての、実施の形態3に係るモータ制御装置10及びモータ制御装置における通信方法の処理内容を説明する図である。
図9は、実施の形態3に係るモータ制御装置10及びモータ制御装置における通信方法の処理手順を説明するフロー図である。
【0060】
実施の形態3に係るモータ制御装置10は、モータの駆動を制御するための回路の少なくとも一部を構成するMCU12及びプリドライバ13を含み、MCU12は、MCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するタイミングであるか否かを判断してMCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するタイミングであると判断したときに通信検証指令を出力する通信時機判断部121と、通信検証指令が入力されたときにプリドライバ13の設定の書き込みに必要とされる通信量(「書込み通信量」と称する)とプリドライバ13の現状の設定の読み出しに必要とされる通信量(「読出し通信量」と称する)とを比較して、書込み通信量よりも読出し通信量のほうが多い場合に通信実行指令を出力し、書込み通信量よりも読出し通信量のほうが少ない場合にプリドライバ13の現状の設定の内容を読み出す読出し実行指令を出力する通信量比較部123と、プリドライバ13の現状の設定の内容が正常であるか否かを判断してプリドライバ13の現状の設定の内容が異常である場合に通信実行指令を出力する設定内容判断部124と、読出し実行指令が入力されたときはMCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の現状の設定を読み出すための通信を実行し、通信実行指令が入力されたときはMCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の設定を書き込むための通信を実行する通信部122と、を備える、ようにしている。
【0061】
また、実施の形態3に係るモータ制御装置における通信方法は、MCU12及びプリドライバ13を含むモータ制御装置において実行される方法であって、MCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するタイミングであるか否かを判断するステップと、MCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するタイミングであると判断したとき(ステップS1)にプリドライバ13の設定の書き込みに必要とされる通信量(即ち、書込み通信量)とプリドライバ13の現状の設定の読み出しに必要とされる通信量(即ち、読出し通信量)とを比較するステップS2、S3と、書込み通信量よりも読出し通信量のほうが多い場合(ステップS3:No)にMCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の設定を書き込むための通信を実行するステップS4と、書込み通信量よりも読出し通信量のほうが少ない場合(ステップS3:Yes)にMCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の現状の設定を読み出すための通信を実行するステップS5と、読み出されたプリドライバ13の現状の設定の内容が正常であるか否かを判断するステップS6と、読み出されたプリドライバ13の現状の設定の内容が異常である場合(ステップS6:No)にMCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の設定を書き込むための通信を実行するステップS7と、を有する、ようにしている。
【0062】
この実施の形態では、上記の実施の形態1のように通信を実行するタイミングを限定するとともに上記の実施の形態2のように通信量が多く不要な通信を禁止するようにしており、通信を実行するタイミングの限定に纏わる構成や考え方については実施の形態1と共通であり、また、通信量が多く不要な通信の禁止に纏わる構成や考え方については実施の形態2と共通であり、実施の形態1や実施の形態2と共通、同等の構成や考え方については説明を適宜省略する。
【0063】
この実施の形態では、MCU12及びプリドライバ13の上位の制御装置であるECU30からMCU12へと3相交流モータ20の停止指令(具体的には、停止指令に相当する電気的な信号)が入力されたタイミングで、MCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するか否かの検証が行われて、検証の結果に基づいて必要に応じてMCU12とプリドライバ13との間の通信が実行されてMCU12からプリドライバ13への設定の書き込みが実施される。
【0064】
具体的には、まず、ECU30からMCU12の通信時機判断部121へと3相交流モータ20の停止指令が入力される(ステップS1)と、通信時機判断部121から通信検証指令が出力されてMCU12の通信量比較部123へと入力され、通信量比較部123は、プリドライバ13の設定の書き込みに必要とされる通信量(即ち、書込み通信量)と、プリドライバ13の現状の設定(レジスタ)の読み出しに必要とされる通信量(即ち、読出し通信量)とを取得する(ステップS2)。
【0065】
ステップS1の処理に関し、通信検証指令が出力されるタイミング(言い換えると、トリガー、きっかけ;延いては、MCU12とプリドライバ13との間の通信を必要に応じて実行するタイミング)は、ECU30から3相交流モータ20の停止指令が発信されたタイミングに限定されるものではなく、通信に伴う電磁波ノイズが放出されても支障のないタイミングであればよい。具体的には、通信検証指令の出力は、MCU12とプリドライバ13との間の通信を要因として生じるノイズが、別の要因で生じるノイズと競合することを避けるタイミングで実行されればよい。言い換えると、通信検証指令の出力は、MCU12とプリドライバ13との間の通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならないタイミングで実行される。すなわち、MCU12の通信時機判断部121は、MCU12とプリドライバ13との間の通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならないタイミングを、MCU12とプリドライバ13との間の通信を実行するタイミングであると判断する。
【0066】
この実施の形態では、3相交流モータ20の駆動中はプリドライバ13を要因とするノイズが発生するので当該ノイズとの競合を避けるために通信検証指令の出力(延いては、MCU12とプリドライバ13との間の通信)は実行しないようにし、3相交流モータ20の停止中はプリドライバ13を要因とするノイズが無くなるので通信検証指令の出力を実行する。そして、MCU12の通信時機判断部121は、ECU30から3相交流モータ20の停止指令が発信されたタイミングを、検証指令を出力する(延いては、MCU12とプリドライバ13との間の通信を必要に応じて実行する)タイミングであると判断する。
【0067】
また、回路(特に、MCU12と、当該MCU12との間で通信を実行するIC(即ち、この実施の形態におけるプリドライバ13に相当するIC)と、の組合せ)が他の仕組みや機器を制御する場合には、制御対象の仕組みや機器それぞれに応じた、通信に伴う電磁波ノイズが放出されても支障のないタイミングで、即ち、MCU12とICとの間の通信を要因として生じるノイズが別の要因で生じるノイズと競合することを避けるタイミングで、言い換えると、MCU12とICとの間の通信とは別の要因でノイズが発生するタイミングと重ならないタイミングで、通信検証指令の出力(延いては、MCU12とICとの間の通信)が実行される。
【0068】
また、ステップS2の処理に関し、上記の実施の形態2に関連して説明した構成と同様に、モータ制御装置10の設計段階において決定され把握されたMCU12とプリドライバ13との間の通信における書込み通信量及び読出し通信量が例えばMCU12内のメモリに予め記憶され、ステップS2の処理として、これら記憶された書込み通信量及び読出し通信量が読み込まれるようにしてもよい。
【0069】
次に、MCU12の通信量比較部123は、ステップS2で取得した書込み通信量と読出し通信量とを比較し、書込み通信量よりも読出し通信量のほうが少ないか否かを判断する(ステップS3)。
【0070】
ステップS3の処理に関し、上記の実施の形態2に関連して説明した構成と同様に、モータ制御装置10の設計段階において決定され把握されたMCU12とプリドライバ13との間の通信における書込み通信量と読出し通信量との大小関係が例えばMCU12内のメモリに予め記憶され、ステップS3の処理として、この記憶された大小関係が読み込まれるようにしてもよい。このこともふまえ、上記のステップS2の処理とこのステップS3の処理とは実質的にひと纏まりの処理として実行されてよい。
【0071】
そして、書込み通信量よりも読出し通信量のほうが多い場合(ステップS3:No)は、MCU12の通信量比較部123から通信実行指令が出力されてMCU12の通信部122へと入力され、通信部122によってMCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の設定を書き込むための通信が実行される(ステップS4)。これにより、一の停止指令の入力(ステップS1)に対応するMCU12とプリドライバ13との間の通信は終了する。そして、(ECU30が3相交流モータ20の駆動指令を発信したうえで)次にECU30から3相交流モータ20の停止指令が発信されるまでの間は、MCU12とプリドライバ13との間において、プリドライバ13の設定の書き込みに関わる通信は実行されない(
図8A参照)。
【0072】
一方で、書込み通信量よりも読出し通信量のほうが少ない場合(ステップS3:Yes)は、MCU12の通信量比較部123から読出し実行指令が出力されてMCU12の通信部122へと入力され、通信部122によってMCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の現状の設定を読み出すための通信が実行される(ステップS5)。そして、読み出された、プリドライバ13の現状の設定の内容がMCU12の設定内容判断部124へと伝送される。
【0073】
そのうえで、MCU12の設定内容判断部124は、読み出された設定の内容が正常であるか否かを判断する(ステップS6)。設定内容判断部124は、例えば、レジスタの値(具体的には、1又は0)が、現状において設定されているべき値と一致しているときは読み出された設定の内容が正常であると判断し、一方で、現状において設定されているべき値と一致していないときは読み出された設定の内容が異常であると判断する。
【0074】
設定内容判断部124は、具体的には例えば、電源投入時にプリドライバ13に対して設定した内容がそのまま保持されているか否かに基づいて、読み出された設定の内容が正常であるか否かを判断してもよい。なお、プリドライバ13に誤作動、エラーが発生した場合に、電源投入時にプリドライバ13に対して設定された内容が変わる。例えば、MCU12の電源電圧には異常がない一方でプリドライバ13の電源電圧が変動した場合などに、プリドライバ13がリセットされることにより、電源投入時にプリドライバ13に対して設定された内容がリセットされて変わる。
【0075】
また、システムの稼働中の時点各々における適正な内容(言い換えると、設定されているべき内容)との対比に基づいて、読み出された設定の内容が正常であるか否かを判断してもよい。
【0076】
そして、読み出された設定の内容が異常である場合(ステップS6:No)は、MCU12の設定内容判断部124から通信実行指令が出力されてMCU12の通信部122へと入力され、通信部122によってMCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の設定を書き込むための通信が実行される(ステップS7)。これにより、一の停止指令の入力(ステップS1)に対応するMCU12とプリドライバ13との間の通信は終了する。そして、(ECU30が3相交流モータ20の駆動指令を発信したうえで)次にECU30から3相交流モータ20の停止指令が発信されるまでの間は、MCU12とプリドライバ13との間において、プリドライバ13の設定の書き込みに関わる通信は実行されない(
図8B参照)。
【0077】
一方で、読み出された設定の内容が正常である場合(ステップS6:Yes)は、MCU12とプリドライバ13との間でプリドライバ13の設定を書き込むための通信は実行されずに、一の停止指令の入力(ステップS1)に対応するMCU12とプリドライバ13との間の通信は終了する。そして、(ECU30が3相交流モータ20の駆動指令を発信したうえで)次にECU30から3相交流モータ20の停止指令が発信されるまでの間は、MCU12とプリドライバ13との間において、プリドライバ13の設定の書き込みに関わる通信は実行されない(
図8B参照)。
【0078】
(作用効果)
実施の形態(具体的には、実施の形態1乃至実施の形態3)に係るモータ制御装置10及びモータ制御装置における通信方法によれば、通信を実行するタイミングを限定したり通信量が多く不要な通信を禁止したりするようにしているので、ノイズ発振の頻度を減らしたりノイズ発振する状況を制限したりすることができ、同一システム上における通信によるノイズ発振を低減させることが可能となり、延いては電磁波障害による電子機器への悪影響の発生を低減させることが可能となる。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成態様は上記の実施の形態に限定されるものではなく、上記の実施の形態に、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変形や変更などが加えられた形態も本発明に含まれる。
【0080】
例えば、上記の実施の形態では車両に搭載される3相交流モータ20の駆動を制御するための機序としてモータ制御装置10が構成されて(言い換えると、MCU12及びプリドライバ13はモータの駆動を制御するための回路の少なくとも一部を構成して)MCU12とプリドライバ13との間で通信が実行されるようにしているが、本発明に係る装置の制御対象はモータに限定されるものではなく、また、MCU12の通信相手はプリドライバ13には限定されない。すなわち、MCU12と通信を実行する相手方はどのようなICであってもよい。
【0081】
また、上記の実施の形態ではMCU12とプリドライバ13(即ち、1個のIC)とが通信を実行するようにしているが、MCU12と通信を実行するICの個数は、1個に限定されるものではなく、2個以上でもよい。MCU12と通信を実行するICの個数が2個以上である場合、実施の形態2のステップS1,S2の処理並びに実施の形態3のステップS2,S3の処理では、MCU12の通信相手のICごとに、通信量が取得される(尚、MCU12内のメモリに記憶された書込み通信量及び読出し通信量が読み込まれてもよい)とともに通信量が比較される(尚、MCU12内のメモリに記憶された、書込み通信量と読出し通信量との大小関係が読み込まれてもよい)。
【0082】
また、上記の実施の形態ではMCU12とプリドライバ13との間でSPI通信が実行されるようにしているが、MCU12とプリドライバ13との間で実行される通信の種類、規格はSPI通信に限定されるものではなく、MCU12とプリドライバ13との間で他の種類、規格の通信が実行されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 モータ制御装置
11 電源回路
12 MCU
121 通信時機判断部
122 通信部
123 通信量比較部
124 設定内容判断部
13 プリドライバ
14 FETブリッジ
20 3相交流モータ
30 ECU