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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126993
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】運転制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/14 20060101AFI20240912BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B60L7/14
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035806
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 由起夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 靖彦
【テーマコード(参考)】
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
5H030AA01
5H030AS08
5H030FF41
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC06
5H125BC08
5H125BE00
5H125CB02
5H125EE27
5H125EE55
(57)【要約】
【課題】減速時に回生電力を出力可能なジェネレータと回生電力を充電可能なバッテリとを備えた車両に対して、バッテリの電力消費の無駄を抑えながら、バッテリの過充電を避けることができる運転制御システムを提供する。
【解決手段】車両の位置情報を取得する位置情報取得部21と、バッテリの充電率を取得する充電率取得部22と、位置情報に基づいて回生電力を予測する予測部23と、バッテリの出力を制御する制御部24とを備えている。制御部24は、充電率取得部22及び予測部23の情報からバッテリの予測充電率を演算し、予測充電率が閾値を超えるとき、予めバッテリの出力を抑制する事前抑制制御を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速時に回生電力を出力可能なジェネレータと、前記回生電力を充電可能なバッテリと、を備えた車両の運転制御システムであって、
前記車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記バッテリの充電率を取得する充電率取得部と、
前記位置情報に基づいて、前記回生電力を予測する予測部と、
前記バッテリの出力を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記充電率取得部及び前記予測部の情報から前記バッテリの予測充電率を演算し、当該予測充電率が閾値を超えるとき、予め前記バッテリの出力を抑制する事前抑制制御を実行する運転制御システム。
【請求項2】
前記事前抑制制御は、前記予測充電率が前記閾値を超える期間に発生する余剰エネルギーに基づいて、前記バッテリの抑制電力量を設定する請求項1に記載の運転制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記予測充電率が、前記閾値よりも小さい所定値以上であるとき、前記バッテリの電力を前記車両の走行駆動モータに消費させる請求項1又は2に記載の運転制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記予測充電率が、前記閾値よりも小さい所定値以上であるとき、前記バッテリの電力を前記ジェネレータに冷却流体を循環させるポンプに消費させる請求項1又は2に記載の運転制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速時に回生電力を出力可能なジェネレータと回生電力を充電可能なバッテリとを備えた車両に対して用いられる運転制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
前述のようなジェネレータとバッテリとを備えた車両では、例えばバッテリの充電率が高い状態で下り坂での走行が開始されて、ジェネレータから回生電力が出力された場合、バッテリが速やかに満充電となり過充電になる可能性があるので、これに対して特許文献1に記載の技術が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、バッテリの充電率が高い状態で、ジェネレータからの回生電力がバッテリに充電されると、これと並行してバッテリの電力を必要以上に消費することにより、バッテリが過充電にならないようにしている。この場合、特許文献1に記載の技術では、車両のエアコンのコンプレッサを必要以上に作動させることにより、バッテリの電力を消費している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-137335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術によると、バッテリの過充電を避ける為に、バッテリの電力を必要以上に消費しているので、バッテリの電力消費に無駄が生じ易く、バッテリの電力消費の無駄を抑えるという面で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、減速時に回生電力を出力可能なジェネレータと回生電力を充電可能なバッテリとを備えた車両に対して、バッテリの電力消費の無駄を抑えながら、バッテリの過充電を避けることができる運転制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の運転制御システムは、減速時に回生電力を出力可能なジェネレータと、前記回生電力を充電可能なバッテリと、を備えた車両の運転制御システムであって、前記車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記バッテリの充電率を取得する充電率取得部と、前記位置情報に基づいて、前記回生電力を予測する予測部と、前記バッテリの出力を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記充電率取得部及び前記予測部の情報から前記バッテリの予測充電率を演算し、当該予測充電率が閾値を超えるとき、予め前記バッテリの出力を抑制する事前抑制制御を実行する。
【0008】
本構成によると、位置情報取得部が取得する車両の位置情報に基づいて、この後にジェネレータが出力する回生電力が、予測部により予測される。例えば、車両の前方に長い下り坂が存在すれば、予測される回生電力は大きい値になると考えられ、車両の前方に短い下り坂が存在すれば、予測される回生電力は小さい値になると考えられる。
【0009】
制御部は、充電率取得部により取得されるバッテリの充電率と、予測部により予測される回生電力とに基づいて、予測される回生電力がバッテリに充電された場合のバッテリの予測充電率を演算する。
【0010】
制御部は、バッテリの予測充電率が閾値を超える場合、バッテリが過充電になる可能性があると判断して、バッテリの出力を抑制する事前抑制制御を実行する。事前抑制制御によりバッテリの出力が抑制されると、バッテリの電力により作動する機器の作動が抑えられるので、機器の作動が抑えられた後は、機器を十分に作動させてもよい状態となる。この状態について、機器の作動が抑えられた後は、機器が多くの電力を必要とする状態になると言うことができる。
【0011】
これによって、事前抑制制御により機器の作動が抑えられた後、回生電力がバッテリに充電される場合、これと並行して機器を十分に作動させて、バッテリの電力を消費することにより、バッテリの過充電を避けることができる。この場合、バッテリの電力が機器により消費されても、機器が多くの電力を必要とする状態であるので、機器によるバッテリの電力消費に無駄は少ない。
【0012】
以上のように、ジェネレータからの回生電力がバッテリに充電されることに並行してバッテリの電力が消費される場合、バッテリの電力により作動する機器の作動を事前に抑えておく。その結果、機器によるバッテリの電力消費に無駄が少なくなり、バッテリの電力消費の無駄を抑えながら、バッテリの過充電を避けることができる運転制御システムを得ることができる。
【0013】
他の構成として、前記事前抑制制御は、前記予測充電率が前記閾値を超える期間に発生する余剰エネルギーに基づいて、前記バッテリの抑制電力量を設定すると好適である。
【0014】
事前抑制制御による抑制が小さ過ぎる場合、機器を十分に作動させてもよい状態が得られず、機器が多くの電力を必要とする状態が得られない。この為、機器の作動が抑えられた後に回生電力がバッテリに充電されると、バッテリの電力が十分に消費されずに、バッテリが過充電になる可能性がある。事前抑制制御による抑制が大き過ぎる場合、機器の作動が大きく抑えられるので、これに伴う不都合が生じる可能性がある。
【0015】
本構成によると、バッテリの予測充電率が閾値を超える期間に発生する余剰エネルギーに基づいて、事前抑制制御によるバッテリの抑制電力量が設定される。例えば余剰エネルギーが大きい場合、バッテリの抑制電力量を大きなものに設定すればよく、例えば余剰エネルギーが小さい場合、バッテリの抑制電力量を小さなものに設定すればよい。
【0016】
これによって、事前抑制制御が適正に実行されるようになるのであり、事前抑制制御による抑制が小さ過ぎることによるバッテリの過充電を避けることが可能になる。また、事前抑制制御による抑制が大き過ぎることによる不都合を避けることが可能になる。その結果、運転制御システムの機能を向上させることができる。
【0017】
他の構成として、前記制御部は、前記予測充電率が、前記閾値よりも小さい所定値以上であるとき、前記バッテリの電力を前記車両の走行駆動モータに消費させると好適である。
【0018】
本構成によると、例えばハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)等のように、車両を走行させる走行駆動モータが備えられた車両において、予測充電率が閾値よりも小さい所定値以上であると、バッテリの電力が走行駆動モータにより消費される。バッテリの電力が消費されても、予測充電率が閾値を超える場合、事前抑制制御が実行される。バッテリの電力が消費されることにより、予測充電率が閾値を超えない場合、事前抑制制御は実行されない為、事前にバッテリの電力を消費しておくことによって、事前抑制制御を実行する必要がない状態が生じ易くなる。
【0019】
事前抑制制御を実行する必要がない状態が生じ易くなることにより、事前抑制制御が実行されてバッテリの電力により作動する機器の作動が抑えられた場合に生じる不都合を、少なくすることができる。前述の不都合の一例として、例えばバッテリの電力により作動する機器がエアコンのコンプレッサである場合、コンプレッサの作動が抑えられて、キャビンの温度が一時的に上昇することが考えられる。
【0020】
他の構成として、前記制御部は、前記予測充電率が、前記閾値よりも小さい所定値以上であるとき、前記バッテリの電力を前記ジェネレータに冷却流体を循環させるポンプに消費させると好適である。
【0021】
本構成によると、予測充電率が閾値よりも小さい所定値以上であると、バッテリの電力が、ジェネレータに冷却流体を循環させるポンプにより消費される。バッテリの電力が消費されても、予測充電率が閾値を超える場合、事前抑制制御が実行される。バッテリの電力が消費されることにより、予測充電率が閾値を超えない場合、事前抑制制御は実行されない為、事前にバッテリの電力を消費しておくことによって、事前抑制制御を実行する必要がない状態が生じ易くなる。
【0022】
事前抑制制御を実行する必要がない状態が生じ易くなることにより、事前抑制制御が実行されてバッテリの電力により作動する機器の作動が抑えられた場合に生じる不都合を、少なくすることができる。前述の不都合の一例として、例えばバッテリの電力により作動する機器がエアコンのコンプレッサである場合、コンプレッサの作動が抑えられて、キャビンの温度が一時的に上昇することが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】駆動ユニット及び運転制御システムの概要を示す概略図である。
図2】事前抑制制御及び回生電力の状態を示す図である。
図3】事前抑制制御のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の運転制御システムが用いられた燃料電池車(車両の一例)について説明する。
【0025】
(燃料電池車の基本構成)
図1に、燃料電池車の駆動ユニット20が示されている。燃料電池1、昇圧コンバータ2及びインバータ3が、駆動ユニット20に設けられている。燃料電池1の電力が、電力供給ライン6を介して昇圧コンバータ2及びインバータ3に出力され、インバータ3からトランスアクスル4に供給される。
【0026】
電力供給ライン6から電力が供給されるエアコンプレッサ7が、駆動ユニット20に設けられている。エアコンプレッサ7により、酸化剤としての酸素を含む空気が燃料電池1に供給される。燃料としての水素ガスが、水素タンク(図示せず)から燃料電池1に供給される。
【0027】
モータユニット5(ジェネレータに相当)(走行駆動モータに相当)を有するトランスアクスル4が、駆動ユニット20に設けられている。インバータ3からの電力により、モータユニット5が駆動されて、モータユニット5の動力により走行用の車輪8が駆動される。モータユニット5は、車両の減速時等に、回生電力を発電するジェネレータ(M/G)として機能する。
【0028】
昇圧/降圧コンバータ10及びサプライバッテリ12(バッテリに相当)が、駆動ユニット20に設けられている。電力供給ライン6からの電力が昇圧/降圧コンバータ10に供給され、昇圧/降圧コンバータ10からの電力が、高圧電力ライン11を介してサプライバッテリ12に供給される。
【0029】
サブシステム13が、駆動ユニット20に設けられている。サプライバッテリ12からの電力により作動する空調システム9、水素リサキュレーションポンプ(図示せず)及びFCクーリングウォータポンプ(図示せず)等が、サブシステム13に設けられている。
【0030】
降圧コンバータ14、補機バッテリ16及び補機システム17が、駆動ユニット20に設けられている。高圧電力ライン11からの電力が降圧コンバータ14に供給され、降圧コンバータ14からの電力が、低圧電力ライン15を介して補機バッテリ16に供給される。補機バッテリ16からの電力により作動するクーリングファン(図示せず)及びバッテリクーリングブロア(図示せず)等が、補機システム17に設けられている。
【0031】
トランスアクスル4において、モータユニット5が回生電力を発電するジェネレータ(M/G)として機能すると、モータユニット5で発電された回生電力は、電力供給ライン6、昇圧/降圧コンバータ10及び高圧電力ライン11を介して、サプライバッテリ12に供給されて充電される。
【0032】
(制御ユニットの構成)
図1に示すように、制御ユニット18が設けられている。制御ユニット18は、マイクロプロセッサやDSP(digital signsl processor)を有したECUとして機能する。ソフトウェアとしての位置情報取得部21と、充電率取得部22と、予測部23と、制御部24と、地図データ格納部25とを有する運転制御システムが制御ユニット18に設けられている。
【0033】
位置情報取得部21は、衛星測位システムにより位置情報を取得する受信部(図示せず)の情報と、車両の傾き(ピッチ角度やロール角度、ヨー角度)を検出する慣性計測部(図示せず)の情報とにより、車両の位置情報及び方位情報を取得する。
【0034】
前述の衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)には、代表的なものとしてGPS(Global Positioning System)がある。GPSは、地球の上空を周回する複数のGPS衛星や、GPS衛星の追跡と管制を行う管制局や、測位を行う対象(車両)が備える受信部を使用して、車両の位置を計測するものである。
【0035】
サプライバッテリ12の充電率A2を検出する残量センサ19が、駆動ユニット20に設けられており、残量センサ19の検出情報が制御ユニット18に入力されている。充電率取得部22は、残量センサ19の検出情報により、サプライバッテリ12の充電率A2を取得する。
【0036】
予測部23は、位置情報取得部21の車両の位置情報及び方位情報と、地図データ格納部25の地図データとに基づいて、この後に車両がどのような走行を行うのかを予測し(車両が上り坂を走行するのか、車両が下り坂を走行するのか等を予測し)、この予測に基づいてモータユニット5により出力される回生電力(回生電力予測値A1)を予測する。
【0037】
例えば車両が長い下り坂や傾斜角度の大きな下り坂を走行することが予測されると、回生電力予測値A1は大きな値になると考えられる。例えば車両が短い下り坂や傾斜角度の小さい下り坂を走行することが予測されると、回生電力予測値A1は小さな値になると考えられる。
【0038】
以上の構成により、減速時に回生電力を出力可能なジェネレータ(モータユニット5)と、回生電力を充電可能なバッテリ(サプライバッテリ12)と、を備えた車両の運転制御システムにおいて、車両の位置情報を取得する位置情報取得部21と、バッテリ(サプライバッテリ12)の充電率A2を取得する充電率取得部22と、位置情報に基づいて、回生電力を予測する予測部23とが備えられている。
【0039】
(制御ユニットにおける制御部の作動)(その1)
制御ユニット18において、制御部24は、充電率取得部22の情報(サプライバッテリ12の充電率A2)、及び予測部23の情報(回生電力予測値A1)に基づいて、以下の説明のように作動する。
【0040】
図2及び図3に示すように、車両の走行中において、位置情報取得部21により車両の位置情報及び方位情報が取得される(時点T1)(ステップ#1)。車両の位置情報及び方位情報と地図データとに基づいて、予測部23により回生電力予測値A1が予測される(ステップ#2)。これと同時に充電率取得部22により、サプライバッテリ12の充電率A21が取得される(時点T1)(ステップ#3)。
【0041】
前述の充電率A21のサプライバッテリ12に、回生電力予測値A1の回生電力が充電されると、サプライバッテリ12の充電率A21がどのような値になるかという、サプライバッテリ12の予測充電率A31が、制御部24により演算される(時点T1)(ステップ#4)。
【0042】
予測充電率A31が比較的低い第1所定値B1(例えば、50%~60%)よりも大きい状態であると(時点T1)(ステップ#5のYes)、制御部24は、昇圧コンバータ2及び昇圧/降圧コンバータ10(図1参照)を操作することにより、燃料電池1の電力のモータユニット5への出力を抑制し、サプライバッテリ12の電力をモータユニット5に出力(又は出力増大)して、サプライバッテリ12の電力を消費させる(ステップ#6)。
【0043】
燃料電池1の電力のモータユニット5への出力の抑制及びサプライバッテリ12の電力のモータユニット5への出力(出力増大)は、時点T1から時点T2に亘って所定時間TT1の間だけ行われる。この場合、時点T2(所定時間TT1)は、図1に示すモータユニット5による回生電力の出力が開始されると予測される時点T3よりも、前に設定される。
【0044】
以上の構成により、制御部24は、予測充電率A31が、閾値(第2所定値B2)よりも小さい所定値(第1所定値B1)以上であるとき、バッテリ(サプライバッテリ12)の電力を車両の走行駆動モータ(モータユニット5)に消費させる。
【0045】
(制御ユニットにおける制御部の作動)(その2)
図2及び図3に示すように、所定時間TT1が経過すると、充電率取得部22により、サプライバッテリ12の充電率A22が再取得される(時点T2)(ステップ#7)。制御部24により、サプライバッテリ12の新たな充電率A22と回生電力予測値A1とに基づいて、サプライバッテリ12の予測充電率A32が再演算される(時点T2)(ステップ#8)。
【0046】
新たな予測充電率A32が比較的高い第2所定値B2(例えば、80%~100%)(閾値に相当)よりも大きい状態であると(時点T2)(ステップ#9のYes)、制御部24は、図1に示す空調システム9のコンプレッサ(図示せず)の出力を抑制して、サプライバッテリ12から空調システム9に出力される電力を抑制する事前抑制制御を、時点T2から時点T3に亘って実行する(ステップ#11)。
【0047】
この場合、時点T2において、新たな予測充電率A32における第2所定値B2を超える分が零(又は微小値)となるようにする為には、図1に示すモータユニット5による回生電力の出力が開始されると予測される時点T3から、空調システム9のコンプレッサの出力をどれだけ増大させればよいか(サプライバッテリ12から空調システム9に出力される電力をどれだけ増大させて、サプライバッテリ12の電力をどれだけ消費すればよいか)が、制御部24により演算される。
【0048】
前述の演算の結果ように、時点T3から空調システム9のコンプレッサの出力を増大させる為には(サプライバッテリ12の電力を消費する為には)、時点T2から時点T3において、空調システム9のコンプレッサの出力を事前にどれだけ抑制すればよいかが、制御部24により演算され、サプライバッテリ12から空調システム9に出力される電力を事前にどれだけ抑制すればよいかという抑制電力量A4が、制御部24により演算される(ステップ#10)。
【0049】
従って、事前抑制制御(ステップ#11)により、時点T2から時点T3において、サプライバッテリ12から空調システム9に出力される電力が、抑制電力量A4だけ抑制されるように、空調システム9のコンプレッサの出力が抑制される。
【0050】
以上の構成により、制御部24は、充電率取得部22及び予測部23の情報からバッテリ(サプライバッテリ12)の予測充電率A32を演算し、予測充電率A32が閾値(第2所定値B2)を超えるとき、予めバッテリ(サプライバッテリ12)の出力を抑制する事前抑制制御を実行する。事前抑制制御は、予測充電率A32が閾値(第2所定値B2)を超える期間に発生する余剰エネルギーに基づいて、バッテリ(サプライバッテリ12)の抑制電力量A4を設定する。
【0051】
(制御ユニットにおける制御部の作動)(その3)
図2及び図3に示すように、制御部24により事前抑制制御が実行されて、時点T3に達して、図1に示すモータユニット5による回生電力の出力が開始されると(ステップ#12のYes)、制御部24により、図1に示す空調システム9のコンプレッサの出力が増大されて、サプライバッテリ12の電力の消費が増大される(ステップ#13)。
【0052】
これにより、モータユニット5による回生電力の出力がサプライバッテリ12充電されることに並行して、サプライバッテリ12の電力が空調システム9のコンプレッサにより多く消費されるので、サプライバッテリ12の過充電が避けられる。モータユニット5による回生電力の出力が終了すると、制御部24により、空調システム9のコンプレッサの出力が通常に戻される。
【0053】
時点T2から時点T3(ステップ#11)において、サプライバッテリ12から空調システム9に出力される電力の抑制が抑制電力量A4に達する前に、モータユニット5による回生電力の出力が開始された場合、制御部24により事前抑制制御が停止されて、空調システム9のコンプレッサの出力の増大(サプライバッテリ12の電力の消費の増大)が開始される(ステップ#13)。
【0054】
前述のような場合、第2所定値B2が例えば100%であると、モータユニット5による回生電力の出力が終了する少し前に、サプライバッテリ12が過充電になる可能性があるので、第2所定値B2を100%ではなく例えば80%程度に設定しておけばよい。
【0055】
モータユニット5による回生電力の出力が終了した時点において、サプライバッテリ12の電力の消費が抑制電力量A4に相当する分に達していなくても、制御部24により、空調システム9のコンプレッサの出力が通常に戻される。
【0056】
(発明の実施の第1別形態)
図3のステップ#6において、制御部24が以下の説明のように作動してもよい。
【0057】
モータユニット5に冷却流体を循環させるポンプ(図示せず)が、駆動ユニット20に設けられており、サプライバッテリ12の電力によりポンプが作動する。予測充電率A31が第1所定値B1よりも大きい状態であると、制御部24は、サプライバッテリ12からポンプに出力される電力を増大させて、サプライバッテリ12の電力を消費させる。
【0058】
前述の冷却流体は、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水、パラフィン系等の絶縁油、又はハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の冷媒である。
【0059】
以上の構成によって、制御部24は、予測充電率A31が、閾値(第2所定値B2)よりも小さい所定値(第1所定値B1)以上であるとき、バッテリ(サプライバッテリ12)の電力をジェネレータ(モータユニット5)に冷却流体を循環させるポンプに消費させる。
【0060】
(発明の実施の第2別形態)
冷蔵装置や冷凍装置を備えた保冷車や冷凍車の場合、空調システム9に代えて、制御部24により冷蔵装置や冷凍装置が、図3のステップ#11,#13に示すように操作されてもよい。
【0061】
(発明の実施の第3別形態)
図1,2,3に示す構成及び(発明の実施の第2別形態)において、事前抑制制御(ステップ#11)により、空調システム9(冷蔵装置や冷凍装置)に出力される電力の抑制が開始されてから抑制電力量A4に達する前に、キャビンの乗員が不快に感じる状態になることが予想される場合(カーゴの食品等が影響を受ける状態になることが予想される場合)、以下の説明のように構成してもよい。
【0062】
空調システム9(冷蔵装置や冷凍装置)に出力される電力の抑制が開始されてから、抑制電力量A4に達する前に、キャビンの温度が設定温度(乗員が不快に感じると考えられる温度)に達すると(カーゴの温度が設定温度(食品等が影響を受けると考えられる温度)に達すると)、事前抑制制御が中止されて、空調システム9(冷蔵装置や冷凍装置)への電力の供給が通常に戻される。
【0063】
前述のような場合、第2所定値B2が例えば100%であると、モータユニット5による回生電力の出力が終了する少し前に、サプライバッテリ12が過充電になる可能性があるので、第2所定値B2を100%ではなく例えば80%程度に設定しておけばよい。
【0064】
(発明の実施の第4別形態)
車両の屋根部に調光式のサンルーフが設けられ、サンルーフへの電力の供給の強弱により、サンルーフの透明度が明暗に変更できるように構成された場合、空調システム9に代えて、制御部24によりサンルーフへの電力の出力が、図3のステップ#11,#13に示すように操作されてもよい。
【0065】
(発明の実施の第5別形態)
車両のリヤガラスにおける結露防止の電熱線において、空調システム9に代えて、制御部24により電熱線への電力の出力が、図3のステップ#11,#13に示すように操作されてもよい。
【0066】
(発明の実施の第6別形態)
図1,2,3に示す構成及び(発明の実施の第1別形態)~(発明の実施の第5別形態)の事前抑制制御において、サプライバッテリ12からの電力の出力が抑制されることに加えて、補機バッテリ16からの電力の出力も抑制されるように構成し、サプライバッテリ12からの電力の出力の抑制と補機バッテリ16からの電力の出力の抑制との合計が、抑制電力量A4となるように構成してもよい。
【0067】
(発明の実施の第7別形態)
第1所定値B1及び第2所定値B2において、第1所定値B1が第2所定値B2よりも小さいという関係を維持しながら、第1所定値B1が変更可能に構成されてもよく、第2所定値B2が変更可能に構成されてもよい。
【0068】
(発明の実施の第8別形態)
運転システムにおいて、図1に示す位置情報取得部21、充電率取得部22、予測部23、制御部24及び地図データ格納部25の全てを車両に設けるのではなく、予測部23と制御部24と地図データ格納部25とを、車両から離れた管制センター(図示せず)に設けてもよい。
【0069】
前述の構成によると、位置情報取得部21の車両の位置情報及び方位情報と、充電率取得部22の検出情報とが、車両の制御ユニット18から管制センターに送信される。管制センターにおいて、地図データ格納部25の地図データに基づき、予測部23により回生電力予測値A1が予測され、制御部24により予測充電率A31,A32が演算される。回生電力予測値A1及び予測充電率A31,A32に基づく制御部24の操作指令が、管制センターから車両の制御ユニット18に送信され、車両において図3のステップ#5~#13の操作が行われる。
【0070】
前述の構成によると、道路工事等により地図データが変更された場合に対応し易い。前述の(発明の実施の第4別形態)に記載の第1所定値B1及び第2所定値B2の変更が行い易い。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の運転制御システムは、燃料電池車(FCV)に加えて、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)に対しても用いることができる。
【符号の説明】
【0072】
5 モータユニット(ジェネレータ)(走行駆動モータ)
12 サプライバッテリ(バッテリ)
21 位置情報取得部
22 充電率取得部
23 予測部
24 制御部
A21 充電率
A22 充電率
A31 予測充電率
A32 予測充電率
A4 抑制電力量
B1 第1所定値(所定値)
B2 第2所定値(閾値)
図1
図2
図3