(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127002
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電力量評価装置、電力量評価プログラム、および、電力量評価方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20240912BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240912BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240912BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20240912BHJP
G16Y 10/35 20200101ALI20240912BHJP
G16Y 20/30 20200101ALI20240912BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20240912BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20240912BHJP
G16Y 40/30 20200101ALI20240912BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/32
H02J3/38 120
H02J3/00 130
G06Q50/06
G16Y10/35
G16Y20/30
G16Y40/10
G16Y40/20
G16Y40/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035819
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000233491
【氏名又は名称】株式会社日立システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敬
(72)【発明者】
【氏名】小松 大輝
(72)【発明者】
【氏名】植田 良一
(72)【発明者】
【氏名】勝又 大介
(72)【発明者】
【氏名】仲村柄 真人
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AA03
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA07
5G066JB03
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】再エネ発電デバイスと蓄電池を備えた自家消費型再エネ発電システムにおいて、システムの各種状態が望ましい状態からどれだけ異なっているかの差分と、その差分要因を表示する。
【解決手段】電力量評価装置4は、ソーラパネル12が発電した電力または/および系統電力を、蓄電池13に充電するか、または、負荷3に供給する自家消費型太陽光発電システム1にて、運用期間における実際の電力量、および運用期間における実データから推定された電力量、運用期間について予測された電力量のうちの2つの差分である差分電力を複数の期間毎に計算し、差分電力の差分要因を複数の期間毎に推定する集計計算部44と、集計計算部44により算出された差分電力と差分要因を表示部に表示するする記憶部406とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーにより発電デバイスが発電した電力または/および系統電力を、充放電手段に充電するか、または、負荷に供給するシステムにて、運用期間における実際の電力量、および前記運用期間における実データから推定された電力量、前記運用期間について予測された電力量のうちの2つの差分である差分電力を複数の期間毎に計算し、前記差分電力の差分要因を複数の期間毎に推定する集計計算部と、
前記集計計算部により算出された前記差分電力と前記差分要因を表示部に表示する選択表示部と、
を備えることを特徴とする電力量評価装置。
【請求項2】
前記差分電力と前記差分要因を複数の時間単位毎に保持する記憶部、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の電力量評価装置。
【請求項3】
前記集計計算部は、前記差分電力の種類と波形パターンの形状に基づき、前記差分要因を推定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力量評価装置。
【請求項4】
前記選択表示部は、前記差分要因に基づき、過去の事例および/または改善案を更に選択して表示部に表示する、
ことを特徴とする請求項3に記載の電力量評価装置。
【請求項5】
前記差分要因と前記差分要因に対する前記改善案を格納・蓄積する事例格納テーブルが格納されている記憶部、
を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の電力量評価装置。
【請求項6】
前記事例格納テーブルには更に、前記改善案の効果または/および前記改善案の費用が格納されており、
前記選択表示部は、前記差分要因に基づき、前記改善案の効果または/および前記改善案の費用を選択して表示部に表示する、
ことを特徴とする請求項5に記載の電力量評価装置。
【請求項7】
前記集計計算部は、過去の稼働実績から前記運用期間について前記負荷が使用すると予測された需要電力量のデータと、前記運用期間に前記負荷が実際に使用した需要電力量のデータとの差分電力を複数の期間毎に計算する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力量評価装置。
【請求項8】
前記運用期間に実際に測定された気象データから前記発電デバイスの発電量をシミュレーションする第1発電シミュレータと、を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電力量評価装置。
【請求項9】
過去の気象データから前記運用期間について前記発電デバイスの発電量をシミュレーションする第2発電シミュレータと、
前記集計計算部は、前記第1発電シミュレータがシミュレーションした発電量と、前記第2発電シミュレータがシミュレーションした発電量との差分電力を複数の期間毎に計算する、
ことを特徴とする請求項8に記載の電力量評価装置。
【請求項10】
前記集計計算部は、前記第1発電シミュレータがシミュレーションした発電量と、前記運用期間における前記発電デバイスの実際の発電量との差分電力を複数の期間毎に計算する、
ことを特徴とする請求項8に記載の電力量評価装置。
【請求項11】
前記運用期間に前記負荷が実際に使用した需要電力量のデータおよび前記運用期間に測定された気象データに基づき推定される前記発電デバイスの発電量に基づいて前記充放電手段の充放電量をシミュレーションするシステムシミュレータを更に備え、
前記集計計算部は、前記システムシミュレータがシミュレーションした前記充放電手段の充放電量と、前記運用期間における前記充放電手段の充放電量との差分電力を複数の期間毎に計算する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力量評価装置。
【請求項12】
前記集計計算部は、系統電力が停電した際に、前記発電デバイスと前記充放電手段だけで運用できる時間の期待値を計算する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力量評価装置。
【請求項13】
前記集計計算部は、前記システムによる二酸化炭素排出量の削減分を計算する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力量評価装置。
【請求項14】
コンピュータに、
再生可能エネルギーにより発電デバイスが発電した電力または/および系統電力を、充放電手段に充電するか、または、負荷に供給するシステムの運用期間における実際の電力量、および前記運用期間における実データから推定された電力量、前記運用期間について予測された電力量のうちの2つの差分である差分電力を複数の期間毎に計算する手順、
前記差分電力の差分要因を複数の期間毎に推定する手順、
算出された前記差分電力と前記差分要因を表示部に表示する手順、
を実行させるための電力量評価プログラム。
【請求項15】
再生可能エネルギーにより発電デバイスが発電した電力または/および系統電力を、充放電手段に充電するか、または、負荷に供給するシステムの運用期間における実際の電力量、および前記運用期間における実データから推定された電力量、前記運用期間について予測された電力量のうちの2つの差分である差分電力を複数の期間毎に計算するステップと、
前記差分電力の差分要因を複数の期間毎に推定するステップと、
算出された前記差分電力と前記差分要因を表示部に表示するステップと、
を備えることを特徴とする電力量評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力量評価装置、電力量評価プログラム、および、電力量評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自家消費型太陽光発電とは、太陽光発電パネルを敷地内に設置し、発電された電力を所有者が自家消費することをいう。所有者は、会社の屋根・空きスペースで太陽光発電を行い、売電せずに会社内で電力を使用する。これにより二酸化炭素排出量を削減することができる。
【0003】
2020年に電力の固定価格買取制度が抜本的に見直され、ソーラパネルの設置容量が50kW未満の発電設備は自家消費が前提となった。あわせて、発電量の30%以上は自家消費する設計になっていることが電力の固定価格買取制度認定をうける条件となっている。電力の固定価格買取制度が自家消費を前提にする内容に改定されたことから、自家消費型太陽光発電の需要が増加している。
【0004】
更に近年では、太陽光発電などの再生可能エネルギーによる発電デバイスに加えて、蓄電池を備えた自家消費型太陽光発電システムが増加している。これにより、天候要因などで太陽光発電が行えない夜間や曇天時でも系統電力の買電を削減できる。そして、電気料金の安い夜間に系統電力を買電することでも、系統電力の買電料金を削減可能である。更に蓄電池と発電デバイスを災害時の非常用電源として使い、BCP(Business Continuity Plan)対策とすることも可能である。
【0005】
更に、太陽光発電デバイスと蓄電池を備えた自家消費型太陽光発電システムにおいて、事前に予測した購入電力削減量と実際に稼働させた際の購入電力削減量を比較し、より効率良く電力を利用して購入電力量を削減する方法を提案するシステムが発明されている。特許文献1には、電力需要量の予測値から発電量の予測値を差し引いた実需要量の予測値に基づいて、電力削減量創出指令の電力削減量の各需要家50への割振りを決定する割振り決定部33とを備える発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
太陽光発電等の再生可能エネルギーによる発電デバイスと蓄電池を備えた自家消費型再エネ発電システムでは、自家消費する需要パターンと気象条件による発電パターンに応じて、適切に再エネ発電の発電電力を、蓄電池の充放電と自家消費の何れに用いるかを制御する。より効率良く電力を利用するには、このシステムの管理者が、システムの各種状態が望ましい状態からどれだけ異なっているかの差分と、その差分要因を知る必要がある。
そこで、本発明は、再エネ発電デバイスと蓄電池を備えた自家消費型再エネ発電システムにおいて、システムの各種状態が望ましい状態からどれだけ異なっているかの差分と、その差分要因を表示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するため、本発明の電力量評価装置は、再生可能エネルギーにより発電デバイスが発電した電力または/および系統電力を、充放電手段に充電するか、または、負荷に供給するシステムにて、運用期間における実際の電力量、および前記運用期間における実データから推定された電力量、前記運用期間について予測された電力量のうちの2つの差分である差分電力を複数の期間毎に計算し、前記差分電力の差分要因を複数の期間毎に推定する集計計算部と、前記集計計算部により算出された前記差分電力と前記差分要因を表示部に表示する選択表示部と、を備える。
【0009】
本発明の電力量評価プログラムは、コンピュータに、再生可能エネルギーにより発電デバイスが発電した電力または/および系統電力を、充放電手段に充電するか、または、負荷に供給するシステムの運用期間における実際の電力量、および前記運用期間における実データから推定された電力量、前記運用期間について予測された電力量のうちの2つの差分である差分電力を複数の期間毎に計算する手順、前記差分電力の差分要因を複数の期間毎に推定する手順、算出された前記差分電力と前記差分要因を表示部に表示する手順、を実行させるための電力量評価プログラム。
【0010】
本発明の電力量評価方法は、再生可能エネルギーにより発電デバイスが発電した電力または/および系統電力を、充放電手段に充電するか、または、負荷に供給するシステムの運用期間における実際の電力量、および前記運用期間における実データから推定された電力量、前記運用期間について予測された電力量のうちの2つの差分である差分電力を複数の期間毎に計算するステップと、前記差分電力の差分要因を複数の期間毎に推定するステップと、算出された前記差分電力と前記差分要因を表示部に表示するステップと、を備えることを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、再エネ発電デバイスと蓄電池を備えた自家消費型再エネ発電システムにおいて、システムの各種状態が望ましい状態からどれだけ異なっているかの差分と、その差分要因を表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る自家消費型再エネ発電システムおよび電力量評価装置の概略の構成図である。
【
図3】事例データベースの検索部分の内部構成を説明する図である。
【
図4】事例格納テーブルの内部構成を説明する図である。
【
図5】実発電量と推定発電量と差分波形を示すグラフである。
【
図6】差分要因解析ダッシュボードを示す図である。
【
図7】大分類と中分類と要因と差分パターンを示した図である。
【
図8】試算時の気象データと運用時の気象データの発電シミュレーションの発電量の差分と要因を算出するフローチャートである。
【
図9】運用時の気象データで発電シミュレーションした発電量と実発電量との差分を算出するフローチャートである。
【
図10】システムシミュレーションによる買電/充放電/充電率と実際の買電/充放電/充電率との差分を算出するフローチャートである。
【
図11】停電時にシステムだけで運用できる期待値と、システムによる二酸化炭素排出量削減分を計算するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る自家消費型太陽光発電システム1および電力量評価装置4の概略の構成図である。
【0014】
自家消費型太陽光発電システム1は、一方が電力系統2に接続され、他方が負荷3に接続されている。自家消費型太陽光発電システム1には、電力系統2から系統電力が供給され、負荷3に電力を供給する。電力系統2は、電力を受電設備に供給するための、発電・変電・送電・配電を統合したシステムである。負荷3は、例えば事業所・工場・倉庫などで電力を消費するものであり、照明・モータ・工作機械・空気調和機などである。
【0015】
自家消費型太陽光発電システム1は、パワーコンディショナ11と、ソーラパネル12と、充放電手段である蓄電池13と、電力計14~17を備えている。パワーコンディショナ11は、ソーラパネル12と蓄電池13を電力系統2に連系させる機器である。パワーコンディショナ11は、ソーラパネル12で発電した直流電力を交流電力に変換し、蓄電池13の電力を交流電力に変換して変換後の交流電力を負荷3に出力する。パワーコンディショナ11は更に、ソーラパネル12で発電した直流電力を変換した交流電力、または/および系統電力を直流電力に変換して蓄電池13を充電する。
この自家消費型太陽光発電システム1は、ソーラパネル12が発電した電力または/および系統電力を、蓄電池13に充電するか、または、負荷3に供給する。
【0016】
電力計16は、電力系統2から供給される系統電力量を計測する。電力計17は、負荷3に供給する電力量を計測する。電力計14は、ソーラパネル12が発電した電力量を計測する。電力計15は、蓄電池13に充放電した電力量を計測する。
【0017】
自家消費型太陽光発電システム1は、ソーラパネル12の発電電力の有効活用と、最大電力の低減(ピークカット)または電力購入コストの削減が目的として導入されることが多い。また、顧客によってはCO2排出量削減やBCP対策を優先する目的として導入されることもある。
【0018】
電力量評価装置4は、CPU(Central Processing Unit)401、ROM(Read Only Memory)402、RAM(Random Access Memory)403、通信部404、表示部405、記憶部406を備えるコンピュータである。
【0019】
CPU401は、この電力量評価装置4を統括制御するプロセッサであり、RAM403を一時的記憶領域として、ROM402または記憶部406のデータやプログラムにアクセスする。通信部404は、ネットワークを介して外部装置と通信する部位であり、例えばパワーコンディショナ11と相互に通信する。表示部405は、例えば液晶ディスプレイであり、文字・図形・画像などを表示する。記憶部406は、例えばハードディスクまたはSSD(Solid State Drive)であり、事例データベース407と事例格納テーブル90と電力量評価プログラム408を格納している。
【0020】
事例データベース407は、この自家消費型太陽光発電システム1を稼働していたときの要因と値と事例を対応づけて格納するデータベースである。事例データベース407は、集計計算部44により算出された差分電力の値と差分要因と事例IDを日・週・月・四半期・年などの複数の時間単位毎に保持する。
【0021】
事例格納テーブル90は、事例IDと、要因、サイト、事象、改善案、費用・進捗、関連資料を格納したテーブルである。事例データベース407と事例格納テーブル90は、記憶部406に格納されている。事例格納テーブル90に格納される各事例は、例えば、要因と事象の組み合わせで表される。例えば、スイッチ切断という要因に対して、作業員が誤って配電盤中のソーラパネル12の電力系統のスイッチをオフにしたという事象が発生したという事例が考えられる。あるいは、ピークカット失敗という要因に対して、電力需要急増時に契約電力を超えた買電が多発するという事象が発生したという事例が考えられる。改善案とは、例えば、前者の事例に対しては作業マニュアルの整備や、配電盤開閉の監視センサの設置がある。また、後者の事例に対する改善案には、蓄電池の増設が考えられる。事例格納テーブル90の事例と事象と改善案と費用・進捗と関連資料は、例えば自家消費型太陽光発電システム1の管理者によって入力される。
【0022】
電力量評価プログラム408は、この自家消費型太陽光発電システム1の電力量を評価するプログラムである。CPU401が電力量評価プログラム408を実行することにより、
図2の各機能部が具現化される。
【0023】
図2は、電力量評価装置4のブロック図である。
電力量評価装置4には、試算時需要データ51、実運用時需要データ52、試算時気象データ53、運用期間気象データ54、運用期間実発電データ55、運用期間実買電/充放電/充電率データ56、運用期間充放電電圧/電流データ57が入力される。
【0024】
試算時需要データ51は、導入前試算時の需要データであり、過去の稼働実績から運用期間について負荷3が使用すると予測された需要電力量のデータである。
実運用時需要データ52は、運用期間の実運用時に負荷が実際に使用した需要電力量のデータである。
試算時気象データ53は、過去の日射量統計であり、例えばMETPV-20である。METPV-20とは、代表年(平均年、多照年、寡照年)における時別データであり、各地点における長期間の観測資料から月毎に最も日射量が平均的な年(平均年)、多い年(多照年)、少ない年(寡照年)を抽出し、それらを1年間分つなぎ合わせた人工的なデータである。
【0025】
運用期間気象データ54は、運用期間における推定日射量であり、アメダス由来または、衛星画像による日射量統計データ、もしくはソーラパネル12が設置されている場所に設置されている運用期間における日射量計の記録データである。
運用期間実発電データ55は、運用期間に実際にソーラパネル12が発電した電力量である。
【0026】
運用期間実買電/充放電/充電率データ56は、運用期間における実際の買電データと、蓄電池13の充放電データと、蓄電池13の充電率データである。
運用期間充放電電圧/電流データ57は、運用期間における蓄電池13の実際の充放電電圧データと、充放電電流データである。
【0027】
電力量評価装置4は、比較器411~414と、発電シミュレータ421,422と、システムシミュレータ43と、計算部415と、集計計算部44と、選択表示部45を含んで構成される。
【0028】
比較器411は、試算時需要データ51と実運用時需要データ52から分/時/日/週/月/季節(四半期)毎の需要の差分データ71を作成する。差分データ71は、負荷3の実際の需要が事前の想定とどれだけ異なっているかを示している。
発電シミュレータ421は、試算時気象データ53からシミュレーションで太陽光発電量を算出する第1発電シミュレータである。発電シミュレータ422は、運用期間気象データ54からシミュレーションで太陽光発電量を算出する第2発電シミュレータである。比較器412は、発電シミュレータ421が算出した発電量と、発電シミュレータ422が算出した発電量から、分/時/日/週/月/季節(四半期)毎の太陽光発電量の差分データ72を作成する。差分データ72は、過去の気象データに基づいて事前に想定した発電量と、実際の発電量とがどれだけ異なっているかを示している。
【0029】
比較器413は、発電シミュレータ422がシミュレーションした太陽光発電量と、運用期間実発電データ55から、分/時/日/週/月/季節(四半期)毎の発電抑制、短期差分、長期差分の差分データ73を作成する。差分データ73は、実測された太陽光でシミュレーションされた発電量と、実際の発電量とがどれだけ異なっているかを示している。
【0030】
システムシミュレータ43は、実運用時需要データ52と発電シミュレータ422が算出した発電量から、買電量と充放電量と充電率をシミュレーションする。そして比較器414は、システムシミュレータ43がシミュレーションした買電量、充放電量、および充電率と、運用期間実買電/充放電/充電率データ56とから、蓄電池制御由来の分/時/日/週/月/季節(四半期)毎の差分データ74を作成する。差分データ74は、シミュレーションされた買電量と充放電量と充電率と、実際の買電量と充放電量と充電率とがどれだけ異なっているかを示している。
【0031】
計算部415は、運用期間充放電電圧/電流データ57から蓄電池劣化度合いと劣化に影響する充放電の挙動の回数のデータ75を作成する。
集計計算部44は、これらの差分データ71~74とデータ75から、それぞれの差分要因に対する差分の電力量、その際の買電量、その際の電気料金を算出する。集計計算部44は更に、それらの分毎、時間毎、日毎、週毎、月毎、季節(四半期)毎年間の集計値を算出し、差分分類テーブルとして集計する。
【0032】
集計計算部44は更に、運用期間における実際の電力量、および運用期間における実データから推定された電力量、運用期間について予測された電力量のうちの2つの差分である差分電力を複数の期間毎に計算し、前記差分電力の差分要因を複数の期間毎に推定する。そして集計計算部44は、差分電力の種類と波形パターンの形状に基づき、差分要因を推定する。集計計算部44の処理は、後記する
図8から
図11で詳細に説明する。
選択表示部45は、それら差分分類テーブルを大きさ順、発生頻度順に選択して表示する。選択表示部45は、差分要因に基づき、過去の事例および改善案を選択して表示部405に表示する。
【0033】
図3は、事例データベース407の検索部分の内部構成を説明する図である。
事例データベース407は、差分電力の値と差分要因と事例IDを時/日/週/月/四半期/年間毎に階層的に保持する。
【0034】
具体的には、「2023年」キー81は、例えば「第1四半期」キー82と「1月」キー831と「2月」キー832にリンクしている。なお「2023年」キー81は、2023年3月から12月までのキーにもリンクしているが、図示を省略している。
「第1四半期」キー82は、例えば「1月」キー831と「2月」キー832と、「第6週」キー841と「第7週」キー842にリンクしている。なお、「第1四半期」キー82は、1月から3月までのキーと、第1週から第13週までのキーにもリンクしているが、図示を省略している。
【0035】
「1月」キー831は、例えば「第6週」キー841と、「31日」キー851にリンクしている。なお「1月」キー831は、第1週から第5週までのキーと、1月1日から30日までのキーにもリンクしているが、図示を省略している。
「2月」キー832は、例えば「第6週」キー841と「第7週」キー842にリンクしている。なお「2月」キー832は、第6週から第10週までのキーと、2月1日から28日までのキーにもリンクしているが、図示を省略している。
「31日」キー851は、例えば「11時」キー861と、「12時」キー862と、「13時」キー863にリンクしている。なお「31日」キー851は、同日の0時から23時までのキーにそれぞれリンクしているが、図示を省略している。
「7日」キー852は、例えば「3時」キー864にリンクしている。なお「7日」キー852は、同日の0時から23時までのキーにそれぞれリンクしているが、図示を省略している。
【0036】
そして、「11時」キー861は、要因・差分値テーブル871にリンクしている。要因・差分値テーブル871は、2023年1月31日11時における時系列の差分データ71~74と、差分の要因と、要因に係る過去の事例を示す事例IDを保持するテーブルである。
「12時」キー862は、要因・差分値テーブル872にリンクしている。要因・差分値テーブル871は、2023年1月31日12時における時系列の差分データ71~74と、差分の要因と、要因に係る過去の事例を示す事例IDを保持するテーブルである。
【0037】
「13時」キー863は、要因・差分値テーブル873にリンクしている。要因・差分値テーブル871は、2023年1月31日13時における時系列の差分データ71~74と、差分の要因と、要因に係る過去の事例を示す事例IDを保持するテーブルである。
「3時キー」864は、要因・差分値テーブル874にリンクしている。要因・差分値テーブル871は、2023年2月7日3時における時系列の差分データ71~74と、差分の要因と、要因に係る過去の事例を示す事例IDを保持するテーブルである。
【0038】
「7日」キー852と「31日」キー851は、それぞれ不図示の要因・差分値テーブルにリンクしている。これにより、日毎の時間単位の差分データに容易にアクセス可能である。
【0039】
「第6週」キー841と「第7週」キー842は、それぞれ不図示の要因・差分値テーブルにリンクしている。これにより、週毎の時間単位の差分データに容易にアクセス可能である。
【0040】
「1月」キー831と「2月」キー832は、それぞれ不図示の要因・差分値テーブルにリンクしている。これにより、月毎の時間単位の差分データに容易にアクセス可能である。
【0041】
「第1四半期」キー82は、それぞれ不図示の要因・差分値テーブルにリンクしている。これにより、四半期毎の時間単位の差分データに容易にアクセス可能である。
「2023年」キー81は、それぞれ不図示の要因・差分値テーブルにリンクしている。これにより、年毎の時間単位の差分データに容易にアクセス可能である。
【0042】
また、要因・差分値テーブル871~874には、その差分に対する過去の対応を記録した事例格納テーブル90を参照するための事例IDも保持されている。これにより、期間を変えた集計を容易に実施できる。ここで差分電力とは、実際の電力量と事前予測や別の推定値(実際の日射量から求めた太陽光発電量)との差分である。
【0043】
また、2月の集計値を参照する場合、選択表示部45は、2月に属する週のキーから日のキーを辿り、それぞれの日にリンクされた時刻のキーを辿ることで、要因・差分値テーブル874を参照する。これに限られず、選択表示部45は、日毎のキーにリンクされた不図示の要因・差分値テーブルを参照してもよい。
【0044】
図4は、事例格納テーブル90の内部構成を説明する図である。1つの事例はテーブルの1行に対応する。
事例格納テーブル90は、テーブル構造である。選択表示部45は、要因・差分値テーブル871~874の事例IDに対応した事例格納テーブル90の行を参照する。事例格納テーブル90は、事例ID欄901、要因欄902、サイト欄903、事象欄904、改善案欄905、費用・進捗欄906、関連資料欄907を含んで構成される。
【0045】
事例ID欄901は、各事例を示す固有の識別番号を格納する欄である。要因欄902は、各事例の発生要因を格納する欄である。サイト欄903は、各事例が発生したサイトの名称を格納する欄である。事象欄904は、各事例における事象を格納する欄である。改善案欄905は、各事例で発生した事象を改善する案を格納する欄である。費用・進捗欄906は、各事例にて生じた費用とその進捗を格納する欄である。関連資料欄907は、各事例の関連資料を格納する欄である。
【0046】
事例格納テーブル90の1行目は、事例ID欄901に1が格納され、その要因欄902には、「スイッチ誤切断」が格納されている。サイト欄903には、その要因が起こった事象の場所を表す「大森C」が格納されている。事象欄904には、「作業員が誤って配電盤のソーラパネルの電力系統のスイッチをオフにした」と記録されている。更に改善案欄905には、マニュアルの作成や表示の改善、監視装置の取り付けなどが記録されている。費用・進捗欄906には、更にそれぞれの改善案に対応した費用の見積もりや進捗状況が記録されるが、
図4では図示を省略している。また、関連資料欄907には、具体的な改善提案等の資料の参照情報である「C社提案230301」が記録される。
【0047】
事例格納テーブル90の2行目は、事例ID欄901に2が格納され、その要因欄902には、「ピークカット失敗」が格納されている。サイト欄903には、その要因が起こった事象の場所を表す「茨城A」が格納されている。事象欄904には、「需要急増時に契約電力を超える事象が多発」と記録されている。更に改善案欄905には、蓄電池容量の増強、生産計画と天気予報に連動した電力需要、予測システム導入による生産計画の最適化などが記録されている。費用・進捗欄906には、更にそれぞれの改善案に対応した費用の見積もりや進捗状況が記録されるが、
図4では図示を省略している。また、関連資料欄907には、具体的な改善提案等の資料の参照情報である「A社提案220520」が記録される。なお、ピークカット失敗は、後述する
図7に記載していないが、例えば、購入電力量の30分平均が契約量を超えたかどうかで判定することができる。
【0048】
事例格納テーブル90の3行目は、事例ID欄901に3が格納され、その要因欄902には、「影」が格納されている。サイト欄903には、その要因が起こった事象の場所を表す「勝田B」が格納されている。事象欄904には、「中・遠距離の遮蔽物がソーラパネルに影を落とした」と記録されている。更に改善案欄905には、遮蔽物の特定と撤去、ソーラパネルの設置位置の変更などが記録されている。費用・進捗欄906には、更にそれぞれの改善案に対応した費用の見積もりや進捗状況が記録されるが、
図4では図示を省略している。また、関連資料欄907には、具体的な改善提案等の資料の参照情報である「B社提案220521」が記録される。
【0049】
事例格納テーブル90の4行目は、事例ID欄901が4である。その要因欄902には、「パネル故障」が格納されている。サイト欄903には、その要因が起こった事象の場所を表す「戸塚D」が格納されている。事象欄904には、「ソーラパネルが故障した」と記録されている。更に改善案欄905には、ソーラパネルの修理または交換などが記録されている。費用・進捗欄906には、更にそれぞれの改善案に対応した費用の見積もりや進捗状況が記録されるが、
図4では図示を省略している。また、関連資料欄907には、具体的な改善提案等の資料の参照情報である「D社提案220522」が記録される。
【0050】
事例を参照する際、選択表示部45は、注目する差分要因の種類と発生時期(月、時刻など)に基づいて事例格納テーブル90を検索し、関連する事例IDを抽出する。選択表示部45は更に、事例格納テーブル90からその事例IDに対応する事例を表示する。
【0051】
事例データベース407は、通常のRDB(リレーショナルデータベース)を用いて構築する以外に、Keyに年-四半期-月-週-日-時-要因、差分値をvalueとするKey-value型のデータベースを用いて構築することもできる。
【0052】
電力量評価装置4を利用するにあたり、まず、対象サイト(発電・蓄電システムがある場所)の評価期間のデータを、この電力量評価装置4の入力とする。これらのデータは、遠隔地からオンラインで適宜入手することもあるし、遠隔地に保存されているデータをコピーして利用する場合もあるし、別の手段(記録媒体等)に記録されたものを利用する場合もある。
【0053】
電力量評価装置4を起動すると、データ分析を開始し、期間毎(年、四半期、月、週、日)・差分要因毎に、差分の電力量を計算し、記憶する。電力量評価装置4を利用する利用者は、まず、前提となる需要と天候の差分を確認し、提案につながる情報を探す。利用者とは、電力量評価装置4を利用し、購入電力削減量を削減できる可能性のある個所を発見する作業を行う人である。
【0054】
需要の差は、例えば、需要が増減にかかわらず、その差分の要因がポジティブな理由とネガティブな理由がある。ポジティブな理由とは、例えば、受注が増えて工場の稼働率が向上し電力需要が増加した、あるいは、設備の省エネ化を進めて需要が減少した、などである。
【0055】
需要の差のネガティブな理由は、その要因が改善提案につながる。ポジティブな理由は、将来にわたり需要が増える事が見込まれるのであれば、発電設備や蓄電池の最適化が提案につながる。
【0056】
天候に関しては、毎年変動があるものなので主に、良かった、悪かったといった相対的な情報を把握する。実運用期間における気象データに基づき推定される発電デバイスの発電量と、実運用期間における発電デバイスの実際の発電量と、の差分に関しては、その差分の時系列の波形の形状(波形パターン)とその他のデータから要因を推定できる。
【0057】
例えば、蓄電池の充電率SOC(State Of Charge)の値が100%に近く、気象データに基づき推定される太陽光発電の発電量と実際の発電量に差異がある場合、その差分は発電・充電の制御の結果として発電抑制を行った事がわかる。
この要因の発生状況を、日毎の集計情報や週毎の集計情報により、年間で何回発生し、抑制した電力量の総量を計算できる。また、発生日を確認し、どのような場合に発生しているかを確認することで、対策を考えることができる。
【0058】
例えば、総量が多ければ、蓄電池13の容量を増やすという改善策がある。また、晴天が多い、あるいは日照時間が長い時期の休日に多く発生している事がわかれば、休日に回せる需要を増やすことで抑制量を減らす、あるいはそのための設備を増強する、例えば、ボイラーを増やし、これにより抑制した電力で熱水を作るなどの対策を検討する。
【0059】
図5は、実発電量と推定発電量と差分波形を示すグラフである。
上側のグラフは発電量の時系列グラフである。下側のグラフは充電率の時系列グラフである。
P
0は、実運用期間におけるソーラパネル12(発電デバイス)の実際の発電量である。P
1は、気象データに基づき推定されるソーラパネル12(発電デバイス)の発電量である。ΔPは、P
0とP
1の差分の時系列の波形である。
【0060】
図6は、差分要因解析ダッシュボード画面6を示す図である。
この差分要因解析ダッシュボード画面6は、選択表示部45によって表示部405に表示される。
差分要因解析ダッシュボード画面6の左側には、電気料金差分表示欄611、発電量差分表示欄612、需要量差分表示欄613、買電量差分表示欄614、BCP差分表示欄615、CO2排出量差分表示欄616、発電量グラフ欄62が表示されている。
電気料金差分表示欄611には、電気料金の実績値、予測値、差分がそれぞれ表示されている。発電量差分表示欄612には、ソーラパネル12の発電量の実績値、予測値、差分がそれぞれ表示されている。
【0061】
需要量差分表示欄613には、負荷3の需要量の実績値、予測値、差分がそれぞれ表示されている。買電量差分表示欄614には、買電量の実績値、予測値、差分がそれぞれ表示されている。
【0062】
BCP差分表示欄615には、蓄電池13の充電量であるBCP値の実績値、予測値、差分がそれぞれ表示されている。BCP値は、停電時であっても負荷3が使用可能な電力量を示している。
CO2排出量差分表示欄616には、自家消費型太陽光発電システム1によって削減できた二酸化炭素の排出量の実績値、予測値、差分がそれぞれ表示されている。
【0063】
発電量グラフ欄62には、発電量、買電量、需要量、蓄電池放電量、蓄電池充電量を示す所定期間毎の棒グラフが表示されている。発電量グラフ欄62の年ボタン、四半期ボタン、月ボタン、週ボタン、日ボタンをクリックすることで、選択した集計期間のグラフに切り替わる。更に月単位の表示をクリックすることで、その月に関する発電量グラフに切り替わる。
【0064】
差分要因解析ダッシュボード画面6の右側には、ピークカット失敗回数表示欄631、契約電力表示欄632、故障断線疑い表示欄633、差分要因テーブル64、発生日時テーブル65がそれぞれ表示されている。
【0065】
ピークカット失敗回数表示欄631、ピークカットの失敗回数が表示されている。
契約電力表示欄632には、契約電力が表示されている。
故障断線疑い表示欄633には、故障断線疑いの回数が表示されている。
差分要因テーブル64には、要因と差分に分けて集計表示されている。
発生日時テーブル65には、発生日時の一覧が表示されている。その発生日時を選択すると、例えば
図5に示したグラフに切り替わる。
【0066】
図7は、大分類と中分類と要因と差分パターンを示した図である。
大分類欄には、要因の大分類が格納されている。中分類欄には、要因の中分類が格納されている。要因欄には、詳細な要因が格納されている。差分パターン欄には、具体的なサ分パターンを示す文章が格納されている。差分波形パターン欄には、差分波形パターンがグラフとして格納されている。差分波形パターンは、試算時需要データ51、実運用時需要データ52、試算時気象データ53、運用期間気象データ54、運用期間実発電データ55、および運用期間実買電/充放電/充電率データ56の夫々の記録データの時間粒度単位の値の差分値となる。記録データの時間粒度は、例えば1分単位、15分単位、30分単位、1時間単位などである。
【0067】
1行目は、差分データ72に係る差分パターンとその要因を示すものである。差分データ72は、試算時気象データから算出した発電量と、実際の運用期間の気象データから算出した発電量との差である。
【0068】
試算時気象データ63は、例えば過去のある年の気象データ、または、統計に基づいて算出された気象テータである。時間単位、日単位、週単位のように細かな時間粒度でみると、試算時気象データ63と、運用期間気象データ54とは一致しない。よって、試算時気象データ63による発電シミュレータ421の集計値と、運用期間気象データ54による発電シミュレータ422の集計値とも一致しない。
【0069】
しかし、年単位、季節単位、月単位などのように粗い時間粒度でみると、実際の運用期間が例年並みの気象であれば、試算時気象データ63と運用期間気象データ54とは一致する。よって、試算時気象データ63による発電シミュレータ421の集計値と、運用期間気象データ54による発電シミュレータ422の集計値は概ね一致し、差分パターンは小さな差になる、逆に、或る時期の集計値に大きな差分パターンが週単位、月単位、年単位で発生するならば、その要因は悪天候または異常気象であると推定可能である。
【0070】
2~3行目は、差分データ73に係る差分パターンとその要因を示すものである。この場合の時間粒度は、1分から1時間程度と細かい。差分データ73は、実際の運用期間の気象データから算出した発電量と、実際の発電量との差である。この差分パターンが円状波形パターンの場合、負荷3の需要に対してソーラパネル12の発電量が大きい場合に意図的に発電量を抑制する発電抑制、近距離の遮蔽物がソーラパネル12に落とす影、ソーラパネル12への積雪などで発生したことが考えられる。差分パターンが短期での一定差分の場合、例えば、ソーラパネル12の送電系にあるスイッチの誤切断によって発生したことが考えられる。これらはソーラパネル12が要因であり、本来発電できた電力量を抑制する短期変動である。
【0071】
4~6行目は、差分データ73に係る差分パターンとその要因を示すものである。この場合の時間粒度は1分から1時間程度と細かいが、何日にもわたり影響が出るため、夜間等の発電をしない時間帯を含む断続的なパターンをつなげた波形となる。
例えば、この差分パターンが冬だけに発生する定期的な変動の場合、中距離または遠距離の遮蔽物がソーラパネル12に落とす影などで発生したことが考えられる。
差分パターンが次第に大きくなるなどの長期の時系列の変化である場合、ソーラパネル12の劣化による要因で、この差分パターンが発生したことが考えられる。差分パターンが長期での一定差分である場合、ソーラパネル12の故障や断線による要因で、この差分パターンが発生したことが考えられる。つまり、この差分パターンは、ソーラパネル12が要因であり、本来発電できた電力量を抑制する長期変動である。
【0072】
7行目は、差分データ73に係る差分パターンとその要因を示すものである。この差分パターンが恒常的な差分の場合、運用期間の気象データからソーラパネル12の発電量を推定する発電シミュレータ422のシミュレーション誤差が要因で、この差分パターンが発生したことが考えられる。
【0073】
8~10行目は、差分データ74に係る差分パターンとその要因を示すものである。実際の自家消費型太陽光発電システム1の動作と、この自家消費型太陽光発電システム1を模擬するシステムシミュレータ43の動作が完全に一致していれば、細かい時間粒度でも、自家消費型太陽光発電システム1の集計値とシステムシミュレータ43の集計値は一致するはずである。しかし、実際には蓄電池13の充放電の制御などに差異があるため、細かな時間粒度では、自家消費型太陽光発電システム1の集計値とシステムシミュレータ43の集計値は大きく異なる。そのため、集計計算部44は、1日または週単位のような粗い時間粒度の集計値で比較することになる。その際、大きな差分パターンが週単位、月単位、年単位で発生するならば、その要因として、システムシミュレータ43のシミュレーションモデルが実際のシステムと大きく相違していることが考えられる。これらは蓄電池13の制御または蓄電池13が要因であることが多い。
【0074】
差分パターンが時系列で増大する変化ならば、蓄電池13の劣化による要因で、差分パターンが発生したことが考えられる。差分パターンが一定の差分または恒常的な差分ならば、その要因はシミュレーション誤差または断線による要因で、差分パターンが発生したことが考えられる。
【0075】
集計計算部44は、太陽光発電量の差分の波形パターンの形状に基づき、そのパターンに紐づく要因を差分要因とする。
事例データベース407に、システムの仕様(太陽光発電や蓄電池の仕様、需要量等)、差分要因、差分量、買電量、改善案とその効果、改善費用、を格納・蓄積する。事例データベース407は更に、システムの仕様や差分要因に基づき、類似の事例を検索可能である。これにより選択表示部45は、類似事例における改善案と効果を、当該事例における改善案とその効果として表示することができる。
【0076】
図8は、試算時の気象データと運用時の気象データの発電シミュレーションの発電量の差分と要因を算出するフローチャートである。
発電シミュレータ421は、試算時の気象データによる発電シミュレーションを実施する(ステップS50)。そして、発電シミュレータ422は、運用期間の気象データによる発電シミュレーションを実施する(ステップS51)。そして、集計計算部44は、両者の差分を集計する(ステップS52)。ここで集計計算部44は、試算時の気象データによる発電シミュレーションと運用期間の気象データによる発電シミュレーションの差分を集計する。
【0077】
集計計算部44は、差分パターンが週単位、月単位、年単位の何れかで存在するか否かを判定する(ステップS53)。差分パターンが週単位、月単位、年単位の何れかで存在するならば(Yes)、集計計算部44は、悪天候または異常気象が差分パターンの要因と推定して要因・差分テーブルに記録し(ステップS54)、処理がステップS55に進む。差分パターンが週単位、月単位、年単位の何れにも存在しないならば(No)、処理がステップS55に進む。
【0078】
ステップS55にて、集計計算部44は、差分要因があるか否かを判定する。差分要因があるならば(Yes)、選択表示部45は、事例格納テーブル90を差分要因で検索して差分要因に対する改善案とその改善案の費用と事例IDを取得して(ステップS56)、事例IDを要因・差分テーブルに記録し(ステップS57)、
図8の処理が終了する。差分要因がないならば(No)、
図8の処理が終了する。事例IDを要因・差分テーブルに記録することで、短時間で事例格納テーブル91から差分要因に対する改善案とその費用を取得可能である。
【0079】
図9は、運用時の気象データで発電シミュレーションした発電量と実発電量との差分を算出するフローチャートである。
【0080】
最初、発電シミュレータ422は、運用期間の気象データによる発電シミュレーションを実施する(ステップS10)。そして、集計計算部44は、両者の差分を集計する(ステップS11)。
【0081】
集計計算部44は、差分パターンが短期の円状波形であるか否かを判定する(ステップS12)。集計計算部44は、差分パターンが短期の円状波形ならば(Yes)、近距離の遮蔽物がソーラパネル12に落とす影またはソーラパネル12への積雪が差分パターンの要因と推定し(ステップS13)、処理がステップS14に進む。差分パターンが短期の円状波形でないならば(No)、処理がステップS14に進む。
【0082】
ステップS14にて、集計計算部44は、差分パターンが短期の一定差分であるか否かを判定する。差分パターンが短期の一定差分ならば(Yes)、集計計算部44は、ソーラパネル12の送電系にあるスイッチの誤切断が差分パターンの要因と推定し(ステップS15)、処理がステップS16に進む。差分パターンが短期の一定差分でないならば(No)、処理がステップS16に進む。
【0083】
ステップS16にて、集計計算部44は、差分パターンが長期の定期的変動であるか否かを判定する。差分パターンが長期の定期的変動ならば(Yes)、集計計算部44は、中距離から遠距離の遮蔽物がソーラパネル12へ落とす影が差分パターンの要因と推定し(ステップS17)、処理がステップS18に進む。差分パターンが長期の定期的変動でないならば(No)、処理がステップS18に進む。
【0084】
ステップS18にて、集計計算部44は、差分パターンが次第に大きくなるなどの長期の時系列での変化であるか否かを判定する。差分パターンが長期の時系列での変化ならば(Yes)、集計計算部44は、ソーラパネル12の劣化が差分パターンの要因と推定し(ステップS19)、処理がステップS20に進む。差分パターンが長期の時系列での変化でないならば(No)、処理がステップS20に進む。
【0085】
ステップS20にて、集計計算部44は、差分パターンが長期の一定差分であるか否かを判定する。差分パターンが長期の一定差分ならば(Yes)、集計計算部44は、ソーラパネル12の故障または断線が差分パターンの要因と推定し(ステップS21)、処理がステップS22に進む。差分パターンが長期の一定差分でないならば(No)、処理がステップS22に進む。
【0086】
ステップS22にて、集計計算部44は、差分要因があるか否かを判定する。差分要因があるならば(Yes)、選択表示部45は、事例格納テーブル90を差分要因で検索して差分要因に対する改善案その改善案の費用を取得して(ステップS23)、事例IDを要因・差分テーブルに記録し(ステップS24)、
図9の処理が終了する。差分要因がないならば(No)、
図9の処理が終了する。事例IDを要因・差分テーブルに記録することで、短時間で事例格納テーブル91から差分要因に対する改善案とその費用を取得可能である。
【0087】
図10は、システムシミュレータ43による買電/充放電/充電率と実際の買電/充放電/充電率との差分を算出するフローチャートである。
【0088】
最初、発電シミュレータ422は、運用期間の気象データによる発電シミュレーションを実施する(ステップS30)。
PCSを模擬するシステムシミュレータ43は、買電/充放電/充電率のシミュレーションを実施する(ステップS31)。そして、集計計算部44は、買電/充放電/充電率の実データをシミュレーションとの差分を集計する(ステップS32)。
【0089】
集計計算部44は、差分パターンが一定差分であるか否かを判定する(ステップS33)。差分パターンが一定差分ならば(Yes)、集計計算部44は、システムシミュレータ43のシミュレーション誤差または断線が差分パターンの要因と推定し(ステップS34)、処理がステップS35に進む。差分パターンが一定差分でないならば(No)、処理がステップS35に進む。
【0090】
ステップS35にて、集計計算部44は、差分パターンが恒常的差分であるか否かを判定する。差分パターンが恒常的差分ならば(Yes)、集計計算部44は、システムシミュレータ43のシミュレーション誤差、または、ソーラパネル12の断線が差分パターンの要因と推定し(ステップS36)、処理がステップS37に進む。差分パターンが恒常的差分でないならば(No)、処理がステップS37に進む。
【0091】
ステップS37にて、集計計算部44は、差分パターンが週・月・年毎に発生しているか否かを判定する。差分パターンが週・月・年毎に発生しているならば(Yes)、集計計算部44は、システムシミュレータ43のシミュレーションモデルの相違が差分パターンの要因と推定し(ステップS38)、処理がステップS37に進む。差分パターンが週・月・年毎に発生していないならば(No)、処理がステップS39に進む。
【0092】
ステップS39にて、集計計算部44は、差分要因があるか否かを判定する。差分要因があるならば(Yes)、選択表示部45は、事例格納テーブル90を事例IDで検索して差分要因に対する改善案とその改善案の費用を取得して(ステップS40)、事例IDを要因・差分テーブルに記録し(ステップS41)、
図10の処理が終了する。差分要因がないならば(No)、
図10の処理が終了する。事例IDを要因・差分テーブルに記録することで、短時間で事例格納テーブル91から差分要因に対する改善案とその費用を取得可能である。
【0093】
図11は、停電時にシステムだけで運用できる期待値と、システムによる二酸化炭素排出量削減分を計算するフローチャートである。
最初、集計計算部44は、買電量と電気料金以外に、BCP対策として、系統電力が停電した際に、太陽光発電と蓄電池だけで運用できる時間の期待値を算出する(ステップS60)。そして集計計算部44は、システムによる二酸化炭素排出量の削減分を計算し(ステップS61)、
図11の処理が終了する。
【0094】
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0095】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0096】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
本発明の変形例として、例えば、次の(a)~(b)のようなものがある。
【0097】
(a)上記実施形態では太陽光発電と蓄電池を備えたシステムを記載しているが、天候要因などで予測通りには発電しない発電方法、例えば、風力発電。波力、潮力、地熱などに適用してもよい。
(b)「事前に予測した購入電力削減量」の代わりに「過去の購入電力削減量」でもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 自家消費型太陽光発電システム
11 パワーコンディショナ
12 ソーラパネル
13 蓄電池 (充放電手段)
14~17 電力計
2 電力系統
3 負荷
4 電力量評価装置
401 CPU
402 ROM
403 RAM
404 通信部
405 表示部
406 記憶部
407 事例データベース
408 電力量評価プログラム
411~414 比較器 (集計計算部の一部)
415 計算部
421 発電シミュレータ (第1発電シミュレータ)
422 発電シミュレータ (第2発電シミュレータ)
43 システムシミュレータ
44 集計計算部
45 選択表示部
51 試算時需要データ
52 実運用時需要データ
53 試算時気象データ
54 運用期間気象データ
55 運用期間実発電データ
56 運用期間実買電/充放電/充電率データ
57 運用期間充放電電圧/電流データ
6 差分要因解析ダッシュボード画面
611 電気料金差分表示欄
612 発電量差分表示欄
613 需要量差分表示欄
614 買電量差分表示欄
615 BCP差分表示欄
616 CO2排出量差分表示欄
62 発電量グラフ欄
631 ピークカット失敗回数表示欄
632 契約電力表示欄
633 故障断線疑い表示欄
64 差分要因テーブル
65 発生日時テーブル
90 事例格納テーブル