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特開2024-127022移動体制御システム、その制御方法、プログラム、及び移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127022
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】移動体制御システム、その制御方法、プログラム、及び移動体
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240912BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G05D1/02 W
G08G1/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035849
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 航輝
【テーマコード(参考)】
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA05
5H181AA20
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL09
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD17
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG09
5H301HH15
5H301LL06
(57)【要約】
【課題】本発明は、車両の位置姿勢を考慮した走行経路を好適に生成することにある。
【解決手段】本移動体制御システムは、移動体の現在位置と目標位置とを設定し、移動体の現在位置と目標位置とを結ぶ直線をl軸とし該l軸に直交する直線をw軸とするlw座標上で、所定の境界条件を満たすように現在位置から目標位置への第1経路を生成し、生成した第1経路を、移動体の進行方向をx軸とし該x軸と直交する軸をy軸とするxy座標へ変換する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体制御システムであって、
移動体の現在位置と目標位置とを設定する設定手段と、
前記移動体の現在位置と目標位置とを結ぶ直線をl軸とし該l軸に直交する直線をw軸とするlw座標上で、所定の境界条件を満たすように前記現在位置から前記目標位置への第1経路を生成する経路生成手段と、
生成した前記第1経路を、前記移動体の進行方向をx軸とし該x軸と直交する軸をy軸とするxy座標へ変換する変換手段と
を備えることを特徴とする移動体制御システム。
【請求項2】
前記経路生成手段は、前記所定の境界条件として前記現在位置及び前記目標位置の少なくとも一方における経路の曲率を0に設定して、曲線の経路を生成することを特徴とする請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項3】
移動体の周辺の撮像画像を取得する取得手段と、
前記撮像画像に含まれる障害物を検出する検出手段と、
前記移動体の周辺の領域を複数に分割し、格子ごとに前記検出手段によって検出された障害物の占有を示す占有地図を生成する地図生成手段と、
変換された前記第1経路が前記占有地図に含まれる障害物に衝突するが否かを判定する判定手段と、をさらに備え、
前記経路生成手段は、前記判定手段によって前記第1経路が前記占有地図に含まれる障害物に衝突すると判定されると、探索アルゴリズムを用いて該障害物を回避する第2経路を生成することを特徴とする請求項2に記載の移動体制御システム。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記検出手段によって検出された障害物の領域を、車幅を考慮した領域に変換した第1マップを生成する手段と、
前記第1経路を前記占有地図にマッピングした第2マップを生成する手段と、
前記第1マップと前記第2マップとのアダマール積により前記第1経路が前記検出手段によって検出された障害物に衝突するか否かを示す第3マップを生成する手段と
を備えることを特徴とする請求項3に記載の移動体制御システム。
【請求項5】
移動体の周辺の撮像画像を取得する取得手段と、
前記撮像画像に含まれる道路形状を認識する認識手段と、をさらに備え、
前記設定手段は、前記撮像画像に関する情報と、前記認識手段による認識情報とに基づき、前記現在位置と、前記目標位置を設定することを特徴とする請求項2に記載の移動体制御システム。
【請求項6】
前記経路生成手段は、交差点における経路を生成し、
前記設定手段は、前記移動体が交差点へ進入する際に、前記目標位置として交差点の出口となるレーンを設定することを特徴とする請求項5に記載の移動体制御システム。
【請求項7】
移動体の周辺の撮像画像を取得する取得手段と、
前記撮像画像に含まれる障害物を検出する検出手段と、
前記移動体の周辺の領域を複数に分割し、格子ごとに前記検出手段によって検出された障害物の占有を示す占有地図を生成する地図生成手段と
をさらに備え、
前記経路生成手段は、前記障害物が存在しない付近では前記第1経路の生成を優先し、前記障害物が存在する付近では障害物を回避する第2経路の生成を優先することを特徴とする請求項2に記載の移動体制御システム。
【請求項8】
移動体制御システムの制御方法であって、
移動体の現在位置と目標位置とを設定する設定工程と、
前記移動体の現在位置と目標位置とを結ぶ直線をl軸とし該l軸に直交する直線をw軸とするlw座標上で、所定の境界条件を満たすように前記現在位置から前記目標位置への第1経路を生成する経路生成工程と、
生成した前記第1経路を、前記移動体の進行方向をx軸とし該x軸と直交する軸をy軸とするxy座標へ変換する変換工程と
を含むことを特徴とする移動体制御システムの制御方法。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1から7のいずれか1項に記載の移動体制御システムの各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
移動体であって、
移動体の現在位置と目標位置とを設定する設定手段と、
前記移動体の現在位置と目標位置とを結ぶ直線をl軸とし該l軸に直交する直線をw軸とするlw座標上で、所定の境界条件を満たすように前記現在位置から前記目標位置への第1経路を生成する経路生成手段と、
生成した前記第1経路を、前記移動体の進行方向をx軸とし該x軸と直交する軸をy軸とするxy座標へ変換する変換手段と
を備えることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体制御システム、その制御方法、プログラム、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超小型モビリティ(マイクロモビリティとも称する。)と呼ばれる、乗車定員が1~2名程度の電動車両や、人に対して種々のサービスを提供する移動型ロボットなどの小型の移動体が知られている。このような移動体には、目的地までの走行経路を周期的に生成しながら自律走行を行うものがある。
【0003】
特許文献1は、乗員に与える負荷が少なくなるような快適な移動経路を設定する移動経路生成装置を提案している。具体的には、移動経路生成装置は、現在位置の車両の進行方向及び目標位置の車両の進行方向が成す角度と、車両の操舵角に応じた走行軌跡の曲率及び走行距離とに基づいて、走行距離当たりの曲率の変化度合が最も緩やかな走行軌跡を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-2082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイクロモビリティには、例えば、前輪と、前輪の駆動に追従して動作する尾輪(従動輪)とを備える三輪車両がある。このような車両では、走行開始時や到達判定時において、車両の姿勢角の目標値に従ってその場での旋回が発生する可能性がある。その場での旋回が発生すると尾輪の角度が大きくなり、乗員の乗り心地に悪影響を与えてしまう。また、小型のマイクロモビリティはハードウェア資源の使用をできる限り抑える必要がある。従って、走行経路を生成する際の処理量をできる限り軽減させ、限りあるハードウェア資源を効率的に利用することが望ましい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、車両の位置姿勢を考慮した走行経路を低計算コストで生成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、例えば、移動体制御システムであって、移動体の現在位置と目標位置とを設定する設定手段と、前記移動体の現在位置と目標位置とを結ぶ直線をl軸とし該l軸に直交する直線をw軸とするlw座標上で、所定の境界条件を満たすように前記現在位置から前記目標位置への第1経路を生成する経路生成手段と、生成した前記第1経路を、前記移動体の進行方向をx軸とし該x軸と直交する軸をy軸とするxy座標へ変換する変換手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の位置姿勢を考慮した走行経路を低計算コストで生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る移動体のハードウェアの構成例を示すブロック図
図2】一実施形態に係る移動体の制御構成を示すブロック図
図3】一実施形態に係る移動体の機能構成を示すブロック図
図4】一実施形態に係る占有格子地図を示す図
図5】一実施形態に係る占有格子地図の生成方法を示す図
図6】一実施形態に係る大域経路及び局所経路を示す図
図7】一実施形態に係る移動体の位置姿勢を考慮した経路生成を示す図
図8】一実施形態に係る移動体の位置姿勢を考慮した経路生成を示す図
図9】一実施形態に係る移動体の位置姿勢を考慮して生成した経路(多項式曲線)を示す図
図10】一実施形態に係る移動体の走行を制御する処理手順を示すフローチャート
図11】一実施形態に係る大域経路を生成する処理手順を示すフローチャート
図12】一実施形態に係る多項式パスの障害物衝突の判定手順を説明する図
図13】一実施形態に係る移動体の位置姿勢を考慮した交差点での経路生成を示す図
図14】一実施形態に係る移動体の位置姿勢を考慮した交差点での経路生成を示す図
図15】一実施形態に係る交差点における大域経路を生成する処理手順を示すフローチャート
図16】一実施形態に係る移動体の車線変更における経路生成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<移動体の構成>
図1を参照して、本実施形態に係る移動体100の構成について説明する。図1(A)は本実施形態に係る移動体100の側面を示し、図1(B)は移動体100の内部構成を示している。図中矢印Xは移動体100の前後方向を示しFが前をRが後を示す。矢印Y、Zは移動体100の幅方向(左右方向)、上下方向を示す。
【0012】
移動体100は、バッテリ113を搭載しており、例えば、主にモータの動力で移動する超小型モビリティである。超小型モビリティとは、一般的な自動車よりもコンパクトであり、乗車定員が1又は2名程度の超小型車両である。移動体100は、車道や歩道に加えて、各種施設の敷地内、公開空地なども走行可能である。本実施形態では、移動体100の一例として三輪の超小型モビリティを例に説明するが、本発明を限定する意図はなく例えば四輪車両や鞍乗型車両であってもよい。また、本発明の車両は、乗り物に限らず、荷物を積載して人の歩行に並走する車両や、人を先導する車両であってもよい。さらに、本発明には、四輪や二輪等の車両に限らず、自律移動が可能な歩行型ロボットなども適用可能である。
【0013】
移動体100は、走行ユニット112を備え、バッテリ113を主電源とした電動自律式車両である。バッテリ113は例えばリチウムイオンバッテリ等の二次電池であり、バッテリ113から供給される電力により走行ユニット112によって移動体100は自走する。走行ユニット112は、左右一対の前輪120と、尾輪(従動輪)121とを備えた三輪車である。走行ユニット112は四輪車の形態等、他の形態であってもよい。移動体100は、一人用又は二人用の座席111を備える。
【0014】
走行ユニット112は操舵機構123を備える。操舵機構123はモータ122a、122bを駆動源として一対の前輪120の舵角を変化させる機構である。一対の前輪120の舵角を変化させることで移動体100の進行方向を変更することができる。尾輪121は個別に駆動源を有しておらず一対の前輪120の駆動に追従して動作する従動輪である。また、尾輪121は移動体100の車体に対して旋回部を有して連結される。当該旋回部は、尾輪121の回転とは別に尾輪121の向きが変化するように回転する。このように、本実施形態に係る移動体100は、尾輪付きの差動二輪型モビリティを採用するものであるが、これに限るものではない。
【0015】
移動体100は、移動体100の前方の平面を認識する検知ユニット114を備える。検知ユニット114は、移動体100の前方を監視する外界センサであり、本実施形態の場合、移動体100の前方の画像を撮像する撮像装置である。本実施形態では、検知ユニット114は、例えば、2つのレンズなどの光学系とそれぞれのイメージセンサとを有するステレオカメラを例に説明する。しかし、撮像装置に代えて又は追加して、レーダやライダ(Light Detection and Ranging)を採用することも可能である。また、本実施形態では、移動体100の前方にのみ設ける例について説明するが、本発明を限定する意図はなく、移動体100の後方や左右に設けてもよい。
【0016】
本実施形態に係る移動体100は、検知ユニット114を用いて移動体100の前方領域を撮像し、撮像画像から障害物や地形(交差点)等を検出する。さらに移動体100は、移動体100の周辺領域を格子状に分割し、各格子(以下では、グリッドとも称する。)に障害物情報を蓄積した占有格子地図を生成しながら走行を制御することができる。なお、占有格子地図は歩道走行や施設内の走行などにおいて生成し、障害物を回避する経路計画を行うことに有用である。一方、車道走行においては、道路構造を認識して経路計画を行うため必ずしも占有格子地図を生成する必要はない。しかしながら、車道走行であっても、レーンの境界や駐車車両等を障害物とみなして占有格子地図を生成し、それらの障害物を回避するような車線変更を含む経路計画に用いてもよい。即ち、多項式曲線によって大域経路の生成を行う本発明においては、必ずしも占有格子地図を生成する必要はないが、障害物が存在する可能性のある走行シーンにおいては占有格子地図を生成することが望ましい。占有格子地図の詳細については後述する。
【0017】
<移動体の制御構成>
図2は、本実施形態に係る移動体100の制御系のブロック図である。ここでは本発明を実施する上で必要な構成を主に説明する。従って、以下で説明する構成に加えてさらに他の構成が含まれてもよい。また、本実施形態では、以下で説明する各部が移動体100に含まれるものとして説明するが、本発明を限定する意図はなく、複数のデバイスを含む移動体制御システムとして実現されてもよい。例えば、制御ユニット130の一部の機能が通信可能に接続されたサーバ装置によって実現されてもよいし、検知ユニット114やGNSSセンサ134が外部デバイスとして設けられてもよい。移動体100は、制御ユニット(ECU)130を備える。制御ユニット130は、CPUに代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェース等を含む。記憶デバイスにはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。プロセッサ、記憶デバイス、インタフェースは、移動体100の機能別に複数組設けられて互いに通信可能に構成されてもよい。
【0018】
制御ユニット130は、検知ユニット114の検知結果、操作パネル131の入力情報、音声入力装置133から入力された音声情報、GNSSセンサ134からの位置情報、及び通信ユニット136を介した受信情報を取得して、対応する処理を実行する。制御ユニット130は、モータ122a、122bの制御(走行ユニット112の走行制御)、操作パネル131の表示制御、スピーカ132の音声による移動体100の乗員への報知、情報の出力を行う。
【0019】
音声入力装置133は、移動体100の乗員の音声を収音する。制御ユニット130は、入力された音声を認識して、対応する処理を実行可能である。GNSS(Global Navigation Satellite system)センサ134は、GNSS信号を受信して移動体100の現在位置を検知する。記憶装置135は、検知ユニット114による撮像画像、障害物(物標)情報、過去に生成した経路、及び占有格子地図等を記憶する記憶デバイスである。記憶装置135にも、プロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納されてよい。記憶装置135は、制御ユニット130によって実行される音声認識や画像認識用の機械学習モデルの各種パラメータ(例えばディープニューラルネットワークの学習済みパラメータやハイパーパラメータなど)を格納してもよい。
【0020】
通信ユニット136は、例えば、Wi‐Fiや第5世代移動体通信などの無線通信を介して外部装置である通信装置140と相互に通信を行う。通信装置140は、例えばスマートフォンであるが、これに限らず、イヤフォン型の通信端末であってもよいし、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、ゲーム機などであってもよい。通信装置140は、例えば、Wi‐Fiや第5世代移動体通信などの無線通信を介してネットワークに接続する。
【0021】
通信装置140を所有するユーザは、当該通信装置140を介して移動体100に対して指示を行うことができる。当該指示は、例えば移動体100をユーザが所望する位置へ呼び寄せて合流するための指示を含む。当該指示を受信すると、移動体100は指示に含まれる位置情報に基づいて目標位置を設定する。なお、移動体100はこのような指示以外にも、検知ユニット114の撮像画像から目標位置を設定したり、移動体100に乗車するユーザからの操作パネル131を介した指示に基づいて目標位置を設定したりすることができる。撮像画像から目標位置を設定する場合は、例えば撮像画像内に移動体100に向かって手を挙げている人を検出し、検出された人の位置を推定して目標位置として設定する。
【0022】
<移動体の機能構成>
次に、図3を参照して、本実施形態に係る移動体100の機能構成について説明する。ここで説明する機能構成は、制御ユニット130において、例えばCPUがROM等のメモリに格納されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。なお、以下で説明する機能構成は、本発明を説明する上で必要な機能のみについて説明するものであり、移動体100に実際に含まれる機能構成の全てを説明するものではない。つまり、本発明に係る移動体100の機能構成を以下で説明する機能構成に限定するものではない。
【0023】
ユーザ指示取得部301は、ユーザからの指示を受け付ける機能を有し、操作パネル131を介したユーザ指示や、通信ユニット136を介して通信装置140等の外部装置からユーザ指示、音声入力装置133を介してユーザの発話による指示を受け付けることができる。ユーザ指示には上述したように、移動体100の目標位置(目的地とも称する。)を設定する指示や、移動体100の走行制御に関わる指示が含まれる。
【0024】
画像情報処理部302は、検知ユニット114によって取得された撮像画像を処理する。具体的には、画像情報処理部302は、検知ユニット114によって取得されたステレオ画像から深度画像を作成して3次元点群化する。3次元点群化された画像データは、移動体100の走行を妨げる障害物や物標を検出するために利用される。また、画像情報処理部302は、画像情報を処理する機械学習モデルを含み、当該機械学習モデルの学習段階の処理や推論段階の処理を実行してもよい。画像情報処理部302の機械学習モデルは、例えば、ディープニューラルネットワーク(DNN)を用いた深層学習アルゴリズムの演算を行って、画像情報に含まれる立体物等を認識する処理を行うことができる。
【0025】
格子地図生成部303は、3次元点群の画像データに基づいて、所定サイズ(例えば、20mX20mの領域において各セルが10cmX10cm)のグリッドマップを作成する。これは、3次元点群のデータ量が多くリアルタイム処理が困難であるため、軽量化することを目的としている。当該グリッドマップは、例えば、グリッド内点群の最大高さと最小高さの差を示すグリッドマップ(当該セルが段差であるかどうかを表現)と、基準点からグリッド内点群の最大高さを示すグリッドマップ(当該セルの地形形状を表現)とを含んで構成される。さらに、格子地図生成部303は、生成したグリッドマップに含まれるスパイクノイズやホワイトノイズを除去し、所定以上の高さを有する障害物を検知し、グリッドごとに障害物となる立体物が存在するか否かを示す占有格子地図を生成する。
【0026】
経路生成部304は、ユーザ指示取得部301によって設定された目標位置に対しての移動体100の走行経路を生成する。具体的には、経路生成部304は、高精度地図の障害物情報を必要とすることなく、検知ユニット114の撮像画像から格子地図生成部303によって生成された占有格子地図を用いて経路を生成する。なお、検知ユニット114が移動体100の前方領域を撮像するステレオカメラであるため、他方向の障害物や地形等を認識することができない。従って、移動体100は、視野角外の障害物への衝突や袋小路でのスタックを回避するため、検出した障害物情報を所定期間記憶しておくことが望ましい。これにより、移動体100は、過去に検出した障害物と、リアルタイムで検出した障害物との両方を考慮して経路生成を行うことができる。
【0027】
また、経路生成部304は、占有格子地図を用いて大域経路(global path)を周期的に生成し、さらに大域経路に追従するように局所経路(local path)を周期的に生成する。つまり、大域経路によって局所経路の目標位置が決定される。また、各径路の生成周期として、本実施形態では大域経路の生成周期を100msとし、局所経路の生成周期を50msとするが、本発明を限定するものではない。大域経路を生成するアルゴリズムとしては、RRT(Rapid-exploring Random Tree)、PRM(Probabilistic Road Map)、A*など種々のアルゴリズムが知られている。また、移動体100として尾輪付きの差動二輪型のモビリティを採用しているため、経路生成部304は従動輪である尾輪121を考慮した局所経路を生成する。また、本実施形態によれば、経路生成部304は、大域経路を生成する際に、移動体100の現在位置における姿勢角と、経路の目標位置での姿勢角とを考慮する。このように移動体100の位置及び姿勢角を考慮することにより、現在位置や目標位置で旋回が生じることを回避することができる。
【0028】
走行制御部305は、局所経路に従って移動体100の走行を制御する。具体的には、走行制御部305は、局所経路に従って走行ユニット112を制御して移動体100の速度及び角速度を制御する。更に、走行制御部305は、運転者の各種操作に応じて走行を制御する。走行制御部305は、運転者の操作によって局所経路の運転計画にずれが生じた場合において、再度、経路生成部304によって生成された新たな局所経路を取得して走行を制御してもよいし、使用中の局所経路からのずれを解消するように移動体100の速度及び角速度を制御してもよい。
【0029】
<占有格子地図>
図4は、本実施形態に係る障害物情報を含む占有格子地図400を示す。本実施形態に係る移動体100は、高精度地図の障害物情報に頼らずに走行するため、障害物情報はすべて検知ユニット114の認識結果から取得する。このとき視野角外の障害物への衝突や袋小路でのスタック回避のため、障害物情報を記憶する必要がある。そこで、本実施形態では、障害物情報を記憶する方法として、ステレオ画像の3次元点群の情報量の削減と経路計画での扱いやすさの観点から占有格子地図を利用する。ここでは、障害物情報を含む地図について説明するが、障害物情報に代えて又は加えて、他の物標情報や交差点等の情報を含むものであってもよい。
【0030】
本実施形態に係る格子地図生成部303は、移動体100の周辺領域を格子状に分割し、格子(分割領域)ごとに、障害物の有無を示す情報を含ませた占有格子地図を生成する。なお、ここでは、所定領域を格子状に分割する例で説明するが、格子状に分割するのではなく、他の形状で分割して、分割した領域ごとに障害物の有無を示す占有地図を作成するようにしてもよい。また、本発明においては、分割した領域に依存しない滑らかな曲線の経路を生成するものであるため、複数の領域に分割する制御を必須とするものではない。占有格子地図400は、移動体100の周辺の例えば40mX40mや20mx20mのサイズの領域を周辺領域とし、当該領域を20cmX20cmや10cmx10cmの格子(グリッド)に分割され、移動体100の移動に応じて動的に設定する。つまり、占有格子地図400は、移動体100の移動に合わせて常に移動体100が中心にくるようにシフトされ、リアルタイムで変動する領域である。なお、領域のサイズについては、移動体100のハードウェア資源に応じて任意に設定することができる。
【0031】
また、占有格子地図400には、検知ユニット114による撮像画像から検出された障害物の有無情報が各グリッドに定義される。有無情報としては、例えば走行可能領域を”0”とし、走行不可能領域(即ち、障害物有り)を”1”として定義される。図4において401は、障害物が存在するグリッドを示す。障害物が存在する領域は、移動体100が通過できない領域を示し、例えば5cm以上の立体物で構成される。従って、移動体100は、これらの障害物401を回避するように、経路を生成する。
【0032】
<障害物情報の蓄積>
図5は、本実施形態に係る占有格子地図における障害物情報の蓄積について説明する。500は、移動体100の移動に合わせて移動するローカルマップを示す。ローカルマップ500は、格子地図上のx軸方向、y軸方向に対する移動体100の移動に応じてシフトされる。ローカルマップ500は、例えば移動体100のx軸方向への移動量Δxに応じて、501の点線領域を削除して、502の実線領域を追加する様子を示す。削除する領域は移動体100の進行方向とは反対の領域となり、追加する領域は当該進行方向の領域となる。同様に、y軸方向についても移動体100の移動に応じて領域の削除及び追加が行われる。また、ローカルマップ500は、過去に検出された障害物情報を蓄積している。なお、削除領域に含まれるグリッドに障害物が存在する場合には、当該障害物情報についてはローカルマップ500からは削除するものの、一定期間の間、ローカルマップ500とは別に保持しておくことが望ましい。このような情報は、例えば移動体100が進路を変更して再度、削除領域がローカルマップ500内に含まれることとなった場合に有効であり、移動体100の障害物に対する回避精度を向上させることができる。
【0033】
510は、移動体100の検知ユニット114によって撮像された撮像画像から移動体100の前方に存在する障害物の検出情報を示す障害物検出マップを示す。障害物検出マップ510は、リアルタイムの情報を示すものであり、検知ユニット114から取得される撮像画像に応じて周期的に生成される。なお、人や車両など移動する障害物も想定されるため、移動体100の前方領域である検知ユニット114の視野角内511においては、過去に検出された障害物を固定して蓄積するのではなく、周期的に生成された障害物検出マップ510によって更新することが望ましい。これにより、移動する障害物についても認識することができ、必要以上に回避する経路の生成を防止することができる。一方で、移動体100の後方領域(厳密には、検知ユニット114の視野角外)については、ローカルマップ500に示すように、過去に検出された障害物が蓄積される。これにより、例えば、前方領域に障害物が検出され、迂回路を生成する際に、通過した障害物への衝突を回避した経路を容易に生成することができる。
【0034】
520は、ローカルマップ500と障害物検出マップ510とを加算して生成された占有格子地図を示す。このように、占有格子地図520は、リアルタイムで変動するローカルマップ及び障害物検出情報と、過去に検出して蓄積した障害物情報とを合成した格子地図として生成される。
【0035】
<経路生成>
図6は、本実施形態に係る移動体100において生成される走行経路を示す。本実施形態に係る経路生成部304は、設定された目標位置601に応じて、占有格子地図を用いて大域経路(global path)602を周期的に生成し、さらに大域経路に追従するように局所経路(local path)603を周期的に生成する。
【0036】
目標位置601は、種々の指示に基づいて設定される。例えば、移動体100に乗車している乗員からの指示や、移動体100外のユーザからの指示が含まれる。乗員からの指示は、操作パネル131や音声入力装置133を介して行われる。操作パネル131を介する指示は、操作パネル131に表示した格子地図の所定のグリッドを指定する方法でもよい。この場合は、各グリッドのサイズを大きく設定し、より広範囲の地図上から選択可能としてもよい。音声入力装置133を介する指示は、周辺の物標を目印とする指示でもよい。物標は、発話情報に含まれる通行人、看板、標識、自動販売機など野外に設置される設備、窓や入口などの建物の構成要素、道路、車両、二輪車、などを含んでよい。音声入力装置133を介する指示を受け付けると、経路生成部304は、検知ユニット114によって取得された撮像画像から指定された物標を検出して目標位置として設定する。
【0037】
これらの音声認識や画像認識については、機械学習モデルを利用する。機械学習モデルは、例えば、ディープニューラルネットワーク(DNN)を用いた深層学習アルゴリズムの演算を行って、発話情報や画像情報に含まれる場所名、建造物などのランドマーク名、店舗名、物標の名称などを認識する。音声認識のDNNは、学習段階の処理を行うことにより学習済みの状態となり、新たな発話情報を学習済みのDNNに入力することにより新たな発話情報に対する認識処理(推論段階の処理)を行うことができる。また、画像認識のDNNは、画像内に含まれる通行人、看板、標識、自動販売機など野外に設置される設備、窓や入口などの建物の構成要素、道路、車両、二輪車の認識を行うことができる。
【0038】
また、移動体100外のユーザからの指示については、所有する通信装置140を介した指示を通信ユニット136を介して移動体100へ通知したり、図6に示すように移動体100に向けて手を挙げるなどの動作によって移動体100を呼び寄せることも可能である。通信装置140による指示は、上記乗員からの指示と同様に操作入力や音声入力によって行われる。
【0039】
目標位置601が設定されると、経路生成部304は、生成した占有格子地図を用いて大域経路602を生成する。大域経路の生成手法としては、まず後述する多項式(媒介変数)を利用して低計算コストでパス(第1経路)を生成し、生成したパスが検出された障害物に衝突しなければ当該パスを大域経路として採用する。多項式を利用したパスの生成方法では、低計算コストでパスを生成できることに加えて、現在位置(自車位置)と目標位置での移動体100の姿勢を考慮したパスを生成し、姿勢補正の旋回制御を極力減らすことができる。一方、生成したパスが障害物に衝突する場合には、障害物を回避する経路生成として、RRT、PRM、A*など種々の探索アルゴリズムが知られているが任意の手法を用いてもよい。つまり、本実施形態によれば、先ずは簡易的に後述する多項式を用いてパスを生成し、障害物が存在する付近では障害物を回避する経路生成を行う。
なお、本発明を限定する意図はなく、例えば、まず走行付近周辺に障害物が検出されているかどうかを判断し、障害物が無ければ多項式によりパス生成を行い、障害物があれば障害物を回避する探索アルゴリズムで大域経路を生成するようにしてもよい。つまり、障害物の有無によりパスの生成方法を切り替えるようにしてもよい。
【0040】
大域経路を生成すると、経路生成部304は、生成された大域経路602に追従するように局所経路603を生成する。局所経路計画の手法としては、DWA(Dynamic Window Approach)や、MPC(Model Predictive Control)、clothoid tentacles、PID(Proportional-Integral-Differential)制御など種々の手法が存在する。なお、図6に示す大域経路602は障害物を回避するように生成された占有格子地図のグリッドに依存した経路となっており、移動体100の位置姿勢を考慮していない経路を示している。このような経路に基づいて生成される局所経路では滑らかな曲線となっており、乗員の乗り心地を向上することができる。一方で、位置姿勢を考慮していないため、停車時の尾輪の角度によっては次回発車する際に急旋回が生じる可能性もある。一方、多項式を利用したパス生成では、移動体100の現在位置の姿勢角と目標位置の姿勢角とを考慮して大域経路を生成する。この場合、大域経路自体が連続的な曲線で生成されるため、滑らかな曲線により形成された経路となる。
【0041】
<多項式を用いた経路生成>
次に、図7及び図8を参照して、本実施形態に係る多項式を用いた経路の生成方法について説明する。ここでは、歩道や公開空地等において多項式(媒介変数)を用いた曲線の経路を生成する例について説明する。図7及び図8は多項式を用いて生成した曲線経路を示す。なお、以下で示す多項式曲線を生成するアルゴリズムに加えて、多項式曲線の前後の少なくとも一方に直線を繋げるような経路を生成してもよい。
【0042】
700は多項式を用いた経路生成を示す。701は生成される曲線(多項式曲線)の経路を示す。702は移動体100の現在位置を示す。703は移動体100の目標位置を示す。目標位置703は、設定された最終的な目標位置601とは異なり、目標位置601までの経路を分割した複数の中間地点のうち、移動体100に最も近い地点を示す。705は現在位置702における移動体100の進行方向(姿勢角)を示す。706は目標位置703における移動体100の方向(姿勢角)を示す。704は、現在位置の進行方向705の直線と、目標位置での方向706の直線との交点を示す。
【0043】
ここで、移動体100の進行方向705をx軸とし、x軸に直交する軸をy軸とする(xy座標)。また、移動体100の現在位置702と目標位置703を結ぶ直線をl軸とし、l軸に直交する直線をw軸とする(lw座標)。本実施形態によれば、経路生成部304は、所定の境界条件710に基づいて、lw座標をxy座標へ変換して、現在位置702から目標位置703への経路を以下の数式(1)を用いて生成する。なお、Rは回転行列を示す。
【0044】
【数1】
【0045】
上記境界条件とは、移動体100における現在位置702と目標位置703での条件を示す。図7に示すように、上記所定の境界条件710は例えば以下のように設定される。
w(0)=0、
w(L)=0、
dw(0)/dl=-tanφ、
dw(L)/dl=tan(θmax-φ)
Lは現在位置702から目標位置703までの距離(長さ)を示す。φはx軸とl軸とが成す角を示す。θmaxは交点704において、x軸と方向706の直線とが成す角を示す。
【0046】
ここで、w=w(l)では表現しきれないため、媒介変数(パラメータ)を用いて以下のように示す。
l(t)=a+at+a+a
w(t)=b+bt+b+b
t:0→1として、媒介変数表示で上記所定の境界条件710を書き直すと、以下の数式(2)のように表すことができる。
【0047】
【数2】
【0048】
上記数式(2)からa~aと、b~bが取得される。なお、パラメータk、kを調整することにより曲率を変更することができる。最適なパラメータk、kを求めることも可能であるが、最適化を行うと本実施形態における低計算コストでの大域経路の生成に影響を与えてしまうため、近似解を求める手法を採用することが望ましい。例えば、パラメータk、kの近似解法では、現在位置と目標位置とで曲率が0になるという条件を与えると解析的に解くことができる。
【0049】
図8の800は図7と同様の歩道や公開空地等において、移動体100の現在位置802を変更した場合に生成される曲線の経路801を示す。同様に、803は移動体100の目標位置を示す。805は現在位置802における移動体100の進行方向(姿勢角)を示す。806は目標位置803における移動体100の方向(姿勢角)を示す。804は、現在位置の進行方向805の直線と、目標位置での方向806の直線との交点を示す。経路生成部304は、図7を用いて説明したように、上記数式(1)と境界条件810とを用いて、現在位置802から目標位置803までの曲線の経路を生成する。経路801は複数の曲線を含む多項式曲線として生成されていることが分かる。このように、本実施形態における多項式曲線による経路生成においては、現在位置での姿勢と目標位置での姿勢とに応じて、種々の形状の曲線を生成することができる。さらに、曲線の前後において直線を繋げる経路を生成することにより、最終的な目標位置までの経路を生成することができる。
【0050】
図9は本実施形態に係る経路生成部304によって生成される多項式曲線のバリエーションを示す。900は移動体100が左折する場合の多項式曲線を示す。910は移動体100が右折する場合の多項式曲線を示す。920は移動体100が車線変更する場合の多項式曲線を示す。930は、移動体100がUターンを行う場合の多項式曲線を示す。図9に示す各グラフにおいては、横軸をx、縦軸をyとし、(0,0)を移動体100の現在位置としている。また、各グラフではそれぞれ複数の目標位置における曲線を示す。
【0051】
<移動体の基本制御>
図10は、本実施形態に係る移動体100の基本制御を示すフローチャートである。以下で説明する処理は、制御ユニット130において、例えばCPUがROM等のメモリに格納されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。
【0052】
S101で制御ユニット130は、ユーザ指示取得部301によって受信したユーザ指示に基づいて、移動体100の目標位置を設定する。ユーザ指示については、上述したように、種々の方法で受け付けることができる。続いて、S102で制御ユニット130は、検知ユニット114によって移動体100の前方領域を撮像し、撮像画像を取得する。取得した撮像画像は画像情報処理部302によって処理され、深度画像が作成され3次元点群化される。S103で制御ユニット130は、3次元点群化された画像から、例えば5cm以上の立体物となる障害物を検出する。S104で制御ユニット130は、検出された障害物と、移動体100の位置情報とに応じて、移動体100を中心とした所定領域の占有格子地図を生成する。
【0053】
次に、S105で制御ユニット130は、経路生成部304によって移動体100の走行経路を生成する。経路生成部304は、上述したように、多項式曲線を用いて大域経路を生成し、生成した経路が障害物と衝突するかどうかを判断し、衝突する場合は占有格子地図を用いて探索アルゴリズムにより大域経路を生成する。また、経路生成部304は生成した大域経路に従って局所経路を生成する。続いて、S106で制御ユニット130は、生成した局所経路に従って移動体100の速度及び角速度を決定し、走行を制御する。その後、S107で制御ユニット130は、移動体100が目標位置へ到達したかどうかをGNSSセンサ134からの位置情報に基づいて判断し、目標位置へ到達していない場合は処理をS102に戻して、占有格子地図を更新しながら経路を生成し、走行を制御する処理を繰り返し行う。一方、目標位置へ到達した場合は、本フローチャートの処理を終了する。
【0054】
<大域経路の生成手順>
図11は、本実施形態に係る上記S105の経路生成において行われる大域経路の生成手順を示すフローチャートである。以下で説明する処理は、制御ユニット130において、例えばCPUがROM等のメモリに格納されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。
【0055】
S201からS207までは10Hzでの繰り返し処理を示す。S202で制御ユニット130は、現在位置及び目標位置と、各位置での移動体100の姿勢とを取得する。ここで取得する目標位置はS101で取得された目標位置であってもよいし、当該目標位置までを細分化した場合の最寄りの位置であってもよい。また、制御ユニット130は、現在位置として、前回生成した占有格子地図における現在の自車位置とその姿勢に関する情報を取得する。姿勢に関する情報については、検知ユニット114などのセンサ群から取得される。
【0056】
続いてS203で制御ユニット130は、S202で取得した情報と、上記数式(1)とを用いて多項式パスを生成する。さらにS204で制御ユニット130は、S203で生成した多項式パスをS104で生成した占有格子地図にマッピングし、当該パスが障害物と衝突するか否かを判断する。詳細な判断手法については図12を用いて後述する。多項式パスが障害物に衝突すると判定されるとS205に進み、制御ユニット130は、S203で生成した多項式パスに代えて、占有格子地図を用いた探索アルゴリズムにより大域経路を生成し、S206に処理を進める。一方、多項式パスが障害物に衝突しないと判定されるとS206に進む。
【0057】
S206で制御ユニット130は、S203で生成された多項式パスか、或いはS205で探索アルゴリズムにより大域経路が生成されている場合は当該パスを大域経路として出力する。その後、制御ユニット130は、出力された大域経路に基づいて局所経路を生成し、S106の走行制御を行う。
【0058】
<障害物衝突判定>
図12は、本実施形態に係る多項式パスの障害物衝突判定の判定手法を示す図である。1201は、生成した占有格子地図上に、検出した障害物1210と、生成した多項式パス1211とを重ねて表示した様子を示す。1210は、検出した障害物を占有格子地図上にマッピングした様子を示す。1211は生成した多項式パスを示す。1212は現在位置及びその姿勢を示す。1213は目標位置及びその姿勢を示す。
【0059】
1202は、1201から障害物マップのみを抽出した様子を示す。1203は、障害物マップ1202から車幅のマージンを考慮した場合のminkowski距離マップ(第1マップ)を示す。minkowski距離マップ1203は、一様フィルタやガウシアンフィルタ等のフィルタを用いて生成される。領域1214が車幅マージンを考慮した障害物領域となる。
【0060】
一方1204は、1201から、生成した多項式パス1211を抽出したものを示す。1205は、多項式パス1211を占有格子地図にマッピングした様子を示す(第2マップ)。1215は、占有格子地図上において多項式パス1211が通過する領域を示す。
【0061】
本実施形態によれば、車幅のマージンを考慮した障害物の領域を示すminkowski距離マップ1203と、多項式パスのマップ1205とのアダマール積により、コストマップ1206(第3マップ)を生成する。つまり、コストマップ1206では、車幅を考慮した障害物を示す領域1214と、多項式パスが通過する領域1215とが重なる位置が取得される。1216は重なった位置が示され、このような領域が存在する場合は、生成した多項式パスが障害物に衝突するものと判定される。一方、1216に示す領域が存在しない場合は、生成した多項式パスは障害物に衝突しないものと判定される。
【0062】
このように、本実施形態によれば、歩道や公開空地等において、まず低計算コストで生成可能な多項式パスを生成し、当該多項式パスが障害物に衝突するか否かを判断して、衝突する場合は占有格子地図を用いた探索アルゴリズムにより大域経路を生成する。一方、多項式パスが障害物に衝突しない場合は多項式パスを大域経路として利用することにより、低計算コストでパスを生成することができる。さらに、多項式パスを生成する際には、現在位置と目標位置における移動体100の姿勢を考慮した経路を生成し、急旋回などの乗員に不快感を与えるような走行制御を回避することができる。
【0063】
<第2の実施形態>
以下では、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、上記実施形態とは異なり、車道での多項式パスの利用方法について説明する。本実施形態では、車道で多項式パスを利用するケースとして、交差点での経路生成を例に説明する。ここでは交差点に障害物が存在しないことを前提とした制御について説明する。したがって、本実施形態においては、移動体100の基本制御を示す図10のうち、S103及びS104を省略してもよい。なお、本発明を限定する意図はなく、上記第1の実施形態で説明したように、交差点においても障害物の有無を検出し、生成した多項式パスが障害物に衝突するか否かを判断するようにしてもよい。
【0064】
<多項式を用いた交差点における経路生成>
次に、図13及び図14を参照して、本実施形態に係る多項式を用いた経路の生成方法について説明する。ここでは、交差点等において多項式曲線の経路を生成する例について説明する。以下で説明する生成方法は、車道において、交差点に限らず、カーブや車線変更等により移動体100の進行方向が変わるシーンにおいて曲線の経路を生成する際に適用することができる。また、図13は上記第1の実施形態の図7に対応し、図14図8に対応する。
【0065】
1300は交差点における経路生成を示す。1301は生成される多項式曲線の経路を示す。1302は移動体100の現在位置を示す。1303は移動体100の目標位置(ここでは、交差点の出口を設定している)を示す。目標位置1303は、設定された最終的な目標位置601とは異なり、目標位置601までの経路を分割した複数の中間地点のうち、移動体100に最も近い地点を示す。例えば、交差点に進入する際には、交差点の出口が目標位置として設定される。1305は現在位置1302における移動体100の進行方向(姿勢角)を示す。1306は目標位置1303における移動体100の方向(姿勢角)を示す。1304は、現在位置の進行方向1305の直線と、目標位置での方向1306の直線との交点を示す。
【0066】
ここで、移動体100の進行方向1305をx軸とし、x軸に直交する軸をy軸とする(xy座標)。また、移動体100の現在位置1302と目標位置1303を結ぶ直線をl軸とし、l軸に直交する直線をw軸とする(lw座標)。本実施形態によれば、経路生成部304は、所定の境界条件1310に基づいて、lw座標をxy座標へ変換して、現在位置1302から目標位置1303への経路を上記数式(1)を用いて生成する。詳細については図7で既に説明しているため省略する。
【0067】
図14の1400は図13と同様の交差点において、移動体100の現在位置1402を変更した場合に生成される曲線の経路1401を示す。同様に、1403は移動体100の目標位置を示す。1405は現在位置1402における移動体100の進行方向(姿勢角)を示す。1406は目標位置1403における移動体100の方向(姿勢角)を示す。1404は、現在位置の進行方向1405の直線と、目標位置での方向1406の直線との交点を示す。経路生成部304は、図7を用いて説明したように、上記数式(1)と境界条件810とを用いて、現在位置1402から目標位置1403までの曲線の経路を生成する。
【0068】
<大域経路の生成手順>
図15は、本実施形態に係る上記S105の経路生成において行われる大域経路の生成手順を示すフローチャートである。以下で説明する処理は、制御ユニット130において、例えばCPUがROM等のメモリに格納されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。
【0069】
S301からS306までは10Hzでの繰り返し処理を示す。S302で制御ユニット130は、認識情報と、現在位置及び当該位置での移動体100の姿勢とを取得する。ここで認識情報とは、道路構造の認識情報を示す。道路構造の認識情報とは、検知ユニット114によって撮像された画像から白線等を認識して、道路の走行レーンや交差点、横断歩道等を認識するものである。当該認識情報については、画像情報(撮像画像)を処理する機械学習モデルによって出力される。機械学習モデルは、例えば、ディープニューラルネットワーク(DNN)を用いた深層学習アルゴリズムの演算を行って、画像情報に含まれる道路形状を認識する処理を行う。認識情報には、道路の各種ラインや各種レーン情報、自車両が位置するレーン(Ego lane)、各種のインターセクション(交差点など、Intersection)、各種道路への入り口(Road entrance)などが含まれる。なお、ここでは交差点でのパス生成を想定しているため、取得される認識情報としては少なくとも交差点の情報が含まれる。また、制御ユニット130は、現在位置として、GNSSセンサ134のセンサ情報を取得する。姿勢に関する情報については、検知ユニット114などのセンサ群から取得される。
【0070】
続いてS203で制御ユニット130は、S202で取得した認識情報に基づいて、交差点を抜ける目標レーンと目標位置とを決定する。例えば、認識情報から、交差点の出口となるレーンが複数存在する場合にはそれらのうちどのレーンへの経路を生成するかを決定する。なお、交差点での進行方向は乗員からの方向指示に基づくものであり、乗員による操舵に関する情報となる。
【0071】
目標レーン及び目標位置を決定すると、S304で制御ユニット130は、S302及びS303で取得した情報と、上記数式(1)とを用いて多項式パスを生成する。その後、S305で制御ユニット130は、S304で生成した多項式パスを大域経路として出力する。その後、制御ユニット130は、出力された大域経路に基づいて局所経路を生成し、S106の走行制御を行う。
【0072】
このように、本実施形態によれば、障害物の有無を検知する必要のない走行シーンにおいて現在位置と目標位置との姿勢を考慮した多項式パスを生成する。これにより、道路認識情報を用いて経路生成を行う場合であっても、急旋回などの乗員に不快感を与えるような走行制御を回避することができる。
【0073】
<車線変更>
図16は車道を走行中の移動体100が車線変更を行う場合に生成される多項式パスを示す。1601は移動体100の現在位置とその方向(姿勢)を示す。1602は目標位置とその方向(姿勢)を示す。1603は現在位置1601及び目標位置1602を考慮して生成した多項式パスを示す。1603に示すように、現在位置1601及び目標位置1602での姿勢を考慮することにより、滑らかな曲線での経路を生成することができ、本発明における多項式曲線は車線変更にも有用であることがわかる。
【0074】
<実施形態のまとめ>
1.上記実施形態の移動体制御システム(例えば、100)は、
移動体の現在位置と目標位置とを設定する設定手段(301、S101、S201)と、
前記移動体の現在位置と目標位置とを結ぶ直線をl軸とし該l軸に直交する直線をw軸とするlw座標上で、所定の境界条件を満たすように前記現在位置から前記目標位置への第1経路を生成する経路生成手段(図2、304、S105)と
を備えることを特徴とする。
【0075】
この実施形態によれば、車両の位置姿勢を考慮した走行経路を好適に生成することができる。
【0076】
2.上記実施形態の移動体制御システムでは、前記経路生成手段は、前記所定の境界条件として前記現在位置及び前記目標位置の少なくとも一方における経路の曲率を0に設定して、曲線の経路を生成する(図7)。
【0077】
この実施形態によれば、現在位置及び目標位置の曲率を0に設定し、多項式を解析的に解くことができ、より低計算コストを実現することができる。
【0078】
3.上記実施形態の移動体制御システムは、
移動体の周辺の撮像画像を取得する取得手段(114)と、
前記撮像画像に含まれる障害物を検出する検出手段(302)と、
前記移動体の周辺の領域を複数に分割し、格子ごとに前記検出手段によって検出された障害物の占有を示す占有地図を生成する地図生成手段(303)と、
変換された前記第1経路が前記占有地図に含まれる障害物に衝突するが否かを判定する判定手段(S204)と、をさらに備え、
前記経路生成手段は、前記判定手段によって前記第1経路が前記占有地図に含まれる障害物に衝突すると判定されると、探索アルゴリズムを用いて該障害物を回避する第2経路を生成する(S205)。
【0079】
この実施形態によれば、まずは低計算コストで多項式パスを生成し、当該パスが障害物に衝突する場合は探索アルゴリズムにより障害物を回避するパスを生成することができ、できるだけ計算コストを抑えつつ、障害物を回避することができる。
【0080】
4.上記実施形態の移動体制御システムでは、
前記判定手段は、
前記検出手段によって検出された障害物の領域を、車幅を考慮した領域に変換した第1マップを生成する手段(1203)と、
前記第1経路を前記占有地図にマッピングした第2マップを生成する手段(1205)と、
前記第1マップと前記第2マップとのアダマール積により前記第1経路が前記検出手段によって検出された障害物に衝突するか否かを示す第3マップを生成する手段(1206)と
を備える。
【0081】
この実施形態によれば、低計算コストで生成した多項式パスの障害物への衝突を簡易的に且つより安全に判定することができる。
【0082】
5.上記実施形態の移動体制御システムでは、
移動体の周辺の撮像画像を取得する取得手段(114)と、
前記撮像画像に含まれる道路形状を認識する認識手段(302)と、をさらに備え、
前記設定手段は、前記撮像画像に関する情報と、前記認識手段による認識情報とに基づき、前記現在位置と、前記目標位置を設定する(S302)。
【0083】
この実施形態によれば、占有格子地図を生成しないような車道においても多項式パスを用いて車両の位置姿勢を考慮したパスを生成することができる。
【0084】
6.上記実施形態の移動体制御システムでは、
前記経路生成手段は、交差点における経路を生成し、
前記設定手段は、前記移動体が交差点へ進入する際に、前記目標位置として交差点の出口となるレーンを設定する(S302、図13図14)。
【0085】
この実施形態によれば、交差点において多項式パスを用いて車両の位置姿勢を考慮したパスを生成することができる。
【0086】
7.上記実施形態の移動体制御システムでは、
移動体の周辺の撮像画像を取得する取得手段(114)と、
前記撮像画像に含まれる障害物を検出する検出手段(302)と、
前記移動体の周辺の領域を複数に分割し、格子ごとに前記検出手段によって検出された障害物の占有を示す占有地図を生成する地図生成手段(303)と
をさらに備え、
前記経路生成手段は、前記障害物が存在しない付近では前記第1経路の生成を優先し、前記障害物が存在する付近では障害物を回避する第2経路の生成を優先する。
【0087】
この実施形態によれば、障害物の有無に応じて車両の位置姿勢を考慮したパスを生成しつつ、障害物を的確に回避することができる。
【符号の説明】
【0088】
100…移動体、111…座席、112…走行ユニット、113…バッテリ、114…検知ユニット、120…前輪、121…尾輪、122a、122b…モータ、123…操舵機構、130…制御ユニット、131…操作パネル、132…スピーカ、133…音声入力装置、134…GNSSセンサ、135…記憶装置、136…通信ユニット、140…通信装置、301…ユーザ指示取得部、302…画像情報処理部、303…格子地図生成部、304…経路生成部、305…走行制御部
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