(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127024
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
G01K 7/01 20060101AFI20240912BHJP
G05F 3/26 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G01K7/01 C
G05F3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035851
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯部 太輔
【テーマコード(参考)】
2F056
5H420
【Fターム(参考)】
2F056JT01
5H420NA27
5H420NC02
5H420NC18
(57)【要約】
【課題】回路素子の特性ずれを抑制して温度検出精度の向上を図る。
【解決手段】半導体装置1は、定電流源1a、カレントミラー回路1b、温度検出回路1c、基準電圧生成回路1dおよび比較回路1eを有する。カレントミラー回路1bは、定電流源1aからの電流を複製して複製電流icpを生成する。温度検出回路1cは、温度検出用ダイオード1c1と、温度検出用ダイオード1c1に直列に接続される温度検出用電圧生成回路1c2とを含み、複製電流icpにもとづいて温度検出電圧V1を出力する。基準電圧生成回路1dは、複製電流icpにもとづいて基準電圧Vrを生成する。比較回路1eは、温度検出電圧V1と、基準電圧Vrとの比較結果にもとづいて、温度検出信号s0を出力する。また、温度検出用電圧生成回路1c2と基準電圧生成回路1dとは、同一の特性を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電流源と、
前記定電流源からの電流を複製して複製電流を生成するカレントミラー回路と、
温度検出用ダイオードと、前記温度検出用ダイオードに直列に接続される温度検出用電圧生成回路とを含み、前記複製電流にもとづいて温度検出電圧を出力する温度検出回路と、
前記複製電流にもとづいて基準電圧を生成し、前記温度検出用電圧生成回路と同一の特性を有する基準電圧生成回路と、
前記温度検出電圧と、前記基準電圧との比較結果にもとづいて、温度検出信号を出力する比較回路と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記温度検出用電圧生成回路は、ダイオード接続された第1のMOSトランジスタであり、前記基準電圧生成回路は、ダイオード接続された第2のMOSトランジスタである、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1のMOSトランジスタは、第1のNMOSトランジスタであり、前記第2のMOSトランジスタは、第2のNMOSトランジスタであり、
前記複製電流が出力される前記カレントミラー回路の第1の端子は、前記温度検出用ダイオードのアノード部と、前記比較回路の反転入力端子とに接続され、
前記温度検出用ダイオードのカソード部は、前記第1のNMOSトランジスタのゲートと、前記第1のNMOSトランジスタのドレインとに接続され、前記第1のNMOSトランジスタのソースは、基準電位に接続され、
前記複製電流が出力される前記カレントミラー回路の第2の端子は、前記比較回路の非反転入力端子と、前記第2のNMOSトランジスタのゲートと、前記第2のNMOSトランジスタのドレインとに接続され、前記第2のNMOSトランジスタのソースは、前記基準電位に接続される、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1のMOSトランジスタは、第1のPMOSトランジスタであり、前記第2のMOSトランジスタは、第2のPMOSトランジスタであり、
前記複製電流が流れる前記カレントミラー回路の第1の端子は、前記温度検出用ダイオードのカソード部と、前記比較回路の非反転入力端子とに接続され、
前記温度検出用ダイオードのアノード部は、前記第1のPMOSトランジスタのゲートと、前記第1のPMOSトランジスタのドレインとに接続され、前記第1のPMOSトランジスタのソースおよびバックゲートは、電源電圧に接続され、
前記複製電流が流れる前記カレントミラー回路の第2の端子は、前記比較回路の反転入力端子と、前記第2のPMOSトランジスタのゲートと、前記第2のPMOSトランジスタのドレインとに接続され、前記第2のPMOSトランジスタのソースおよびバックゲートは、前記電源電圧に接続される、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記電流源回路と前記基準電圧生成回路は、前記同一の特性として、動作点が同一、または所定条件において動作点の温度変化量が同一である、請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1のMOSトランジスタと前記第2のMOSトランジスタは、前記同一の特性として、動作点として閾値電圧が同一、または前記第1のMOSトランジスタと前記第2のMOSトランジスタに対して所定のドレイン電流が流れる条件において前記閾値電圧の温度変化量が同一である、請求項2記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体素子を駆動する半導体装置では、パワー半導体素子の故障防止のための保護機能が備えられている。例えば、パワー半導体素子の温度を検出して、パワー半導体素子に流す電流を制限する保護機能がある。
【0003】
関連技術としては、例えば、温度検出用ダイオードと閾値電圧との比較を行って温度状態に応じたレベル出力を行い、ダイオードの順方向電流の補正を行って検出精度を向上させる技術が提案されている(特許文献1)。また、複数経路のダイオードの順方向電圧をコンパレータにより比較する技術が提案されている(特許文献2)。さらに、定電流源から生成される電流によって動作し、半導体基板の温度に応じて変動する電圧が閾値電圧を下回ったことに応じて過熱検出を行う技術が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-184351号公報
【特許文献2】特開2021-124342号公報
【特許文献3】特許第4981267号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、半導体装置内の回路素子の特性ずれを抑制して、温度検出精度の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、半導体装置が提供される。半導体装置は、定電流源と、定電流源からの電流を複製して複製電流を生成するカレントミラー回路と、温度検出用ダイオードと、温度検出用ダイオードに直列に接続される温度検出用電圧生成回路とを含み、複製電流にもとづいて温度検出電圧を出力する温度検出回路と、複製電流にもとづいて基準電圧を生成し、温度検出用電圧生成回路と同一の特性を有する基準電圧生成回路と、温度検出電圧と、基準電圧との比較結果にもとづいて、温度検出信号を出力する比較回路と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
1側面によれば、回路素子の特性ずれを抑制して、温度検出精度の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】半導体装置の一例を説明するための図である。
【
図2】回路素子の特性ずれ抑制機能を持たない半導体装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】インバータ素子の回路構成の一例を示す図である。
【
図4】過熱検出信号の出力動作の一例を示す図である。
【
図5】回路素子の特性ばらつきによる過熱検出信号の変動の一例を示す図である。
【
図6】本発明の半導体装置の構成の一例を示す図である。
【
図7】過熱検出信号の出力動作の一例を示す図である。
【
図8】回路素子の特性ばらつきによる過熱検出信号の変動の一例を示す図である。
【
図10】過熱検出信号の出力動作の一例を示す図である。
【
図11】MOSトランジスタのゲート電圧とドレイン電流の特性の一例を示す図である。
【
図12】MOSトランジスタのゲート電圧とドレイン電流の特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は半導体装置の一例を説明するための図である。半導体装置1は、定電流源1a、カレントミラー回路1b、温度検出回路1c、基準電圧生成回路1dおよび比較回路1eを有する。定電流源1aは例えば、デプレッションMOS(Metal Oxide Semiconductor)トラジスタで構成される。
【0010】
カレントミラー回路1bは、定電流源1aからの電流を複製して複製電流icpを生成する。温度検出回路1cは、温度検出用ダイオード1c1と、温度検出用ダイオード1c1に直列に接続される温度検出用電圧生成回路1c2とを含み、複製電流icpにもとづいて温度検出電圧V1を出力する。
【0011】
基準電圧生成回路1dは、複製電流icpにもとづいて基準電圧Vrを生成する。比較回路1eは、温度検出電圧V1と、基準電圧Vrとの比較結果にもとづいて、温度検出信号s0を出力する。また、温度検出用電圧生成回路1c2と基準電圧生成回路1dとは、同一の特性を有する。
【0012】
このような構成の半導体装置1では、温度検出用ダイオード1c1に接続した温度検出用電圧生成回路1c2と基準電圧生成回路1dとが同一の特性を有するため、特性ずれ(特性ばらつき)が同じ傾向を示す。
【0013】
さらに、定電流源1aに特性ずれが生じた場合も、カレントミラー回路1bで定電流源1aの電流を複製した複製電流で装置全体が動作するため特性ずれが同じ傾向を示すことになる。これにより、回路素子の特性ずれが発生しても、特性ずれの傾向が装置全体で同方向にずれるために特性ずれを抑制することができ、温度検出精度の向上を図ることが可能になる。
【0014】
次に本発明の詳細を説明する前に、回路素子の特性ずれ抑制機能を持たない半導体装置について、
図2から
図5を用いて説明する。
図2は回路素子の特性ずれ抑制機能を持たない半導体装置の構成の一例を示す図である。半導体装置20は、定電流源21、温度検出回路22およびインバータ素子23を備える。
【0015】
温度検出回路22は、定電流源21からの電流にもとづく温度検出電圧が変化する温度検出用ダイオードD1、・・・、D4を含む。インバータ素子23は、素子の温度状態が非過熱状態の場合にLレベルの過熱検出信号s2を出力し、素子の温度状態が過熱状態の場合にHレベルの過熱検出信号s2を出力する。
【0016】
構成素子の接続関係において、定電流源21の入力端は、電源電圧Vccに接続される。定電流源21の出力端は、温度検出用ダイオードD1のアノードおよびインバータ素子23の入力端に接続される。
【0017】
温度検出用ダイオードD1のカソードは、温度検出用ダイオードD2のアノードに接続され、温度検出用ダイオードD2のカソードは、温度検出用ダイオードD3のアノードに接続され、温度検出用ダイオードD3のカソードは、温度検出用ダイオードD4のアノードに接続される。温度検出用ダイオードD4のカソードは基準電位(以下、GND)に接続される。
【0018】
ここで、定電流源21から温度検出用ダイオードD1、・・・、D4に向けて流れる電流i1は、温度検出用ダイオードD1、・・・、D4に対して順方向電流となるため、ノードn1における電圧(温度検出電圧)は、温度検出用ダイオードD1、・・・、D4それぞれの順方向電圧(以下、順方向電圧VFと表記する場合がある)の合計となる。例えば、温度検出用ダイオードD1、・・・、D4の順方向電圧VFそれぞれを0.8Vとすると、ノードn1における温度検出電圧は、3.2(=0.8×4)Vとなる。
【0019】
また、温度検出用ダイオードD1、・・・、D4は、温度特性を有しており、順方向電圧VFは温度によって変化する。例えば、温度が1℃上昇すると、ノードn1における順方向電圧VFはおよそ2mV低下する。
【0020】
したがって、例えば、温度が25℃から温度が50℃まで上昇したような場合、1つの温度検出用ダイオードの順方向電圧VFの低下は0.05(=0.002×25)Vになる。
【0021】
よって、温度が25℃のときの順方向電圧VFが0.8Vであって、温度が50℃まで上昇した場合、温度検出用ダイオードD1、・・・、D4の順方向電圧VFの合計の低下分は0.2(=0.05×4)Vになり、ノードn1における温度検出電圧は、3.0(3.2-0.2)Vとなる。
【0022】
このように、ノードn1における温度検出電圧は、温度が25℃のときは3.2Vであり、温度が50℃のときは3.0Vになるので、温度変化によって変化し、温度の上昇にともなって低下することになる。
【0023】
図3はインバータ素子の回路構成の一例を示す図である。インバータ素子23は、定電流源23aおよびNMOSトランジスタ23bを含む。定電流源23aの入力端は、電源電圧Vccに接続される。定電流源23aの出力端は、NMOSトランジスタ23bのドレインに接続される。
【0024】
NMOSトランジスタ23bのゲートは、インバータ素子23の入力端となり、
図2に示したノードn1に接続される。NMOSトランジスタ23bのソースは、GNDに接続される。また、定電流源23aの出力端と、NMOSトランジスタ23bのドレインとの接続点は、過熱検出信号s2が出力されるインバータ素子23の出力端となる。
【0025】
図4は過熱検出信号の出力動作の一例を示す図である。横軸は温度、縦軸は電圧である。閾値温度Trは、非過熱状態と過熱状態との切り分けを行うための温度である。ノードn1における順方向電圧VF(温度検出電圧)は、温度が低い状態から高い状態になるにしたがって低下していく。
【0026】
このため、インバータ素子23の閾値電圧(NMOSトランジスタ23bの閾値電圧)Vth0よりも順方向電圧VFが高い温度状態は、温度状態が非過熱状態であると判定される。この場合、NMOSトランジスタ23bのゲートはHレベルになってNMOSトランジスタ23bはオンするので、インバータ素子23の出力端からは非過熱状態を表すLレベルの過熱検出信号s2が出力される。
【0027】
また、インバータ素子23の閾値電圧Vth0よりも順方向電圧VFが低い温度状態は、過熱状態であると判定される。この場合、NMOSトランジスタ23bのゲートはLレベルになってNMOSトランジスタ23bはオフするので、インバータ素子23の出力端からは過熱状態を表すHレベルの過熱検出信号s2が出力される。
【0028】
図5は回路素子の特性ばらつきによる過熱検出信号の変動の一例を示す図である。横軸は温度、縦軸は電圧である。検出温度が閾値温度Tr以上になった場合に、過熱状態を通知するHレベルの過熱検出信号s2が出力される状態を目標状態とする。
【0029】
上記の半導体装置20では、温度検出用ダイオードD1、・・・、D4に流す定電流源21から出力される電流i1、温度検出用ダイオードD1、・・・、D4の順方向電圧VF、インバータ素子23を構成する複数の素子など、特性に関与するばらつき要因がある。このようなばらつき要因のうちでも特に、定電流源21から出力される電流i1およびインバータ素子23内のNMOSトランジスタ23bの閾値電圧Vth0が温度検出に与える影響が大きい。
【0030】
例えば、定電流源21から出力される電流i1が低下すると、順方向電圧VFが順方向電圧VF1に低下する。この場合、検出ポイントp1が検出ポイントp11に移動してしまい、閾値温度Trが低い方向に変動して閾値温度Tr1になる。このため、本来は閾値温度Tr以上で過熱状態と判定したいが、閾値温度Trよりも低い閾値温度Tr1以上で過熱状態であると判定してしまうことになる。
【0031】
または、インバータ素子23内のNMOSトランジスタ23bの閾値電圧Vth0が閾値電圧Vth1に低下する。この場合、検出ポイントp1が検出ポイントp12に移動してしまい、閾値温度Trが高い方向に変動して閾値温度Tr2になる。このため、本来は閾値温度Tr以上で過熱状態と判定したいが、閾値温度Trよりも高い閾値温度Tr2以上で過熱状態であると判定してしまうことになる。
【0032】
なお、上記では、特性ばらつきとして、定電流源21から出力される電流i1の低下およびNMOSトランジスタ23bの閾値電圧Vth0の低下について示したが、定電流源21から出力される電流i1の増加およびNMOSトランジスタ23bの閾値電圧Vth0の増加の場合は上記と逆の動作になる。
【0033】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、予め決められた閾値温度での検出を安定して行うことができるように、回路素子の特性ずれを抑制して温度検出精度の向上を可能にした半導体装置を提供するものである。
【0034】
次に本発明の半導体装置の構成および動作について以降詳しく説明する。
図6は本発明の半導体装置の構成の一例を示す図である。半導体装置10は、
図1に示した半導体装置1の機能を有し、温度検出回路11、カレントミラー回路12、基準電圧生成回路13、定電流源IR1およびコンパレータcmp1を備える。
【0035】
温度検出回路11は、温度検出用ダイオードD1、D2、およびダイオード接続されたNMOSトランジスタMN1(第1のMOSトランジスタ)を含む。直列接続している温度検出用ダイオードD1、D2の個数は2個に限らず任意の個数で構成することができる。また、NMOSトランジスタMN1は、
図1に示した温度検出用電圧生成回路1c2に対応する。
【0036】
カレントミラー回路12は、PMOSトランジスタMP1、MP2、MP3を含む。基準電圧生成回路13は、ダイオード接続されたNMOSトランジスタMN2(第2のMOSトランジスタ)を含む。なお、NMOSトランジスタMN1とNMOSトランジスタMN2は、温度特性や動作点等の特性が同一の素子である。
【0037】
構成素子の接続関係において、PMOSトランジスタMP1のソースは、PMOSトランジスタMP1のバックゲート、PMOSトランジスタMP2のソース、PMOSトランジスタMP2のバックゲート、PMOSトランジスタMP3のソース、PMOSトランジスタMP3のバックゲートおよび電源電圧Vccに接続される。
【0038】
PMOSトランジスタMP1のゲートは、PMOSトランジスタMP1のドレイン、定電流源IR1の入力端、PMOSトランジスタMP2のゲートおよびPMOSトランジスタMP3のゲートに接続される。定電流源IR1の出力端はGNDに接続される。
【0039】
PMOSトランジスタMP2のドレイン(カレントミラー回路12の第1の端子)は、温度検出用ダイオードD1のアノードおよびコンパレータcmp1の反転入力端子(-)に接続される。
【0040】
温度検出用ダイオードD1のカソードは、温度検出用ダイオードD2のアノードに接続される。温度検出用ダイオードD2のカソードは、NMOSトランジスタMN1のドレインおよびNMOSトランジスタMN1のゲートに接続される。NMOSトランジスタMN1のソースは、GNDに接続される。
【0041】
PMOSトランジスタMP3のドレイン(カレントミラー回路12の第2の端子)は、コンパレータcmp1の非反転入力端子(+)、NMOSトランジスタMN2のドレインおよびNMOSトランジスタMN2のゲートに接続される。NMOSトランジスタMN2のソースは、GNDに接続される。
【0042】
このように、半導体装置10では、温度検出用ダイオードD1、D2に対し、ダイオード接続のMOSFET(MOS Field effect transistor)であるNMOSトランジスタMN1が直列接続された温度検出回路11を有する。また、定電流源IR1の出力電流をコピーするカレントミラー回路12が設けられ、カレントミラー回路12でコピーされた電流が温度検出回路11に入力される。
【0043】
さらに、カレントミラー回路12でコピーされた電流で基準電圧Vrを生成するダイオード接続のMOSFET(NMOSトランジスタMN2)が設けられる。そして、温度検出回路11内のMOSFETと基準電圧Vrを生成するMOSFETとは同一の特性の素子とし、ノードn1における順方向電圧VF(温度検出電圧)と、基準電圧Vrと比較するコンパレータcmp1を配置して過熱検出信号s1を出力する。
【0044】
図7は過熱検出信号の出力動作の一例を示す図である。横軸は温度、縦軸は電圧である。なお、図中の基準電圧Vrは、基準電圧生成回路13で生成される電圧であり、NMOSトランジスタMN2のドレイン電圧(ドレイン-ソース間電圧)に相当する。
【0045】
ここで、ノードn1における順方向電圧VFは、温度が低い状態から高い状態になるにしたがって低下していく。このため、コンパレータcmp1の非反転入力端子(+)に入力される基準電圧Vrよりも順方向電圧VFが高い温度状態は、温度状態が非過熱状態であると判定される。
【0046】
この場合、コンパレータcmp1の反転入力端子(-)の入力レベルは、基準電圧Vrが入力されるコンパレータcmp1の非反転入力端子(+)の入力レベルよりも高くなる。したがって、コンパレータcmp1の出力端からは、非過熱状態を表すLレベルの過熱検出信号s1が出力される。
【0047】
また、コンパレータcmp1の非反転入力端子(+)に入力される基準電圧Vrよりも順方向電圧VFが低い温度状態は、温度状態が過熱状態であると判定される。この場合、コンパレータcmp1の非反転入力端子(+)の入力レベルは、ノードn1における順方向電圧VFが入力されるコンパレータcmp1の反転入力端子(-)の入力レベルよりも高くなる。したがって、コンパレータcmp1の出力端からは、過熱状態を表すHレベルの過熱検出信号s1が出力される。
【0048】
なお、閾値温度Tr以上の過熱状態においては、順方向電圧VFがコンパレータcmp1の非反転入力端子(+)の入力電圧(基準電圧Vr)を下回ることを要する。そのため、例えば、温度検出用ダイオードD2に接続されるNMOSトランジスタMN1のサイズを大きくして抵抗値を減らす、または、NMOSトランジスタMN2のみの経路に流れる電流を増加させて、NMOSトランジスタMN2のドレイン電圧を上げる等の調整が行われてもよい。
【0049】
図8は回路素子の特性ばらつきによる過熱検出信号の変動の一例を示す図である。横軸は温度、縦軸は電圧である。検出温度が閾値温度Tr以上になった場合に、過熱状態を通知するHレベルの過熱検出信号s1が出力される状態を目標状態とする。
【0050】
半導体装置10では、ばらつき要因の現象として、例えば、定電流源IR1から出力される電流の低下が生じた場合、カレントミラー回路12でコピーされる電流も同じように低下し、そのように低下した電流が温度検出回路11および基準電圧生成回路13に流れることになる。したがって、電流の低下により、順方向電圧VFが順方向電圧VF1に低下し、基準電圧Vrも基準電圧Vr1に低下する。
【0051】
このように、定電流源IR1からの出力電流が低下すると、順方向電圧VFおよび基準電圧Vrが共に低下することになるので、定電流源IR1からの出力電流のばらつきが相殺されることになり、閾値温度Trのずれを抑制することができる。すなわち、検出ポイントp1が検出ポイントp2に移動するので閾値温度Trの変動幅が小さい。
【0052】
なお、定電流源IR1から出力される電流が増加するような、ばらつきが生じた場合には、順方向電圧VFおよび基準電圧Vrが共に増加する上記とは逆の動作になって、定電流源IR1からの出力電流のばらつきが相殺されることになり、閾値温度Trのずれを抑制することができる。
【0053】
このように、半導体装置10では、定電流源IR1からの電流がカレントミラー回路12によってコピーされ、コピーされた電流が温度検出回路11および基準電圧生成回路13に入力される。
【0054】
そして、コピーされた電流にもとづいて、温度検出電圧(ノードn1における順方向電圧VF)と基準電圧Vrが生成され、コンパレータcmp1によって、温度検出電圧と、基準電圧Vrとが比較され、比較結果にもとづいて過熱検出信号s1が出力される。また、温度検出回路11内にはダイオード接続したNMOSトランジスタMN1が配置され、基準電圧生成用のNMOSトランジスタMN2と、NMOSトランジスタMN1とを同一の特性を有する素子で構成している。
【0055】
これにより、予め決められた閾値温度での検出を安定して行うことができ、回路素子の特性ずれを抑制して温度検出精度の向上が可能になる。また、ばらつきを補正する回路(例えばトリミング回路など)を追加搭載することが不要となるので、装置サイズの増加を抑制するという効果も奏している。
【0056】
図9は半導体装置の構成の変形例を示す図である。変形例の半導体装置10aは、温度検出回路11a、カレントミラー回路12a、基準電圧生成回路13a、定電流源IR11およびコンパレータcmp11を有する。
【0057】
温度検出回路11aは、温度検出用ダイオードD11、D12およびダイオード接続されたPMOSトランジスタMP11(第1のMOSトランジスタ)を含む。直列接続している温度検出用ダイオードD11、D12の個数は2個に限らず任意の個数で構成することができる。また、PMOSトランジスタMP11は、
図1に示した温度検出用電圧生成回路1c2に対応する。
【0058】
カレントミラー回路12aは、NMOSトランジスタMN11、MN12、MN13を含む。基準電圧生成回路13aは、ダイオード接続されたPMOSトランジスタMP12(第2のMOSトランジスタ)を含む。なお、PMOSトランジスタMP11とPMOSトランジスタMP12は、温度特性や動作点等の特性が同一の素子である。
【0059】
構成素子の接続関係において、PMOSトランジスタMP11のソースは、PMOSトランジスタMP11のバックゲート、PMOSトランジスタMP12のソース、PMOSトランジスタMP12のバックゲート、定電流源IR11の入力端および電源電圧Vccに接続される。
【0060】
定電流源IR11の出力端は、NMOSトランジスタMN11のドレイン、NMOSトランジスタMN11のゲート、NMOSトランジスタMN12のゲートおよびNMOSトランジスタMN13のゲートに接続される。
【0061】
PMOSトランジスタMP11のゲートは、PMOSトランジスタMP11のドレインおよび温度検出用ダイオードD11のアノードに接続される。温度検出用ダイオードD11のカソードは、温度検出用ダイオードD12のアノードに接続される。温度検出用ダイオードD12のカソードは、コンパレータcmp11の非反転入力端子(+)およびNMOSトランジスタMN12のドレイン(カレントミラー回路12aの第1の端子)に接続される。
【0062】
PMOSトランジスタMP12のゲートは、PMOSトランジスタMP12のドレイン、コンパレータcmp11の反転入力端子(-)およびNMOSトランジスタMN13のドレイン(カレントミラー回路12aの第2の端子)に接続される。NMOSトランジスタMN11のソース、NMOSトランジスタMN12のソースおよびNMOSトランジスタMN13のソースはGNDに接続される。
【0063】
このように、半導体装置10aでは、温度検出用ダイオードD11、D12に対し、ダイオード接続のMOSFET(PMOSトランジスタMP11)が直列接続された温度検出回路11aを有する。また、定電流源IR11の出力電流をコピーするカレントミラー回路12aが設けられ、カレントミラー回路12aでコピーされた電流が温度検出回路11aに流れる。
【0064】
さらに、カレントミラー回路12aでコピーされた電流で基準電圧Vrを生成するダイオード接続のMOSFET(PMOSトランジスタMP12)が設けられる。そして、温度検出回路11a内のMOSFETと基準電圧Vrを生成するMOSFETとは同一特性の素子とし、ノードn2における順方向電圧VF(温度検出電圧)と、基準電圧Vrと比較するコンパレータcmp11を配置して過熱検出信号s1を出力する。
【0065】
図10は過熱検出信号の出力動作の一例を示す図である。横軸は温度、縦軸は電圧である。なお、図中の基準電圧Vrは、基準電圧生成回路13aで生成される電圧であり、PMOSトランジスタMP12のドレイン電圧に相当する。
【0066】
ここで、ノードn2における順方向電圧VFは、温度が低い状態から高い状態になるにしたがって上昇していく。このため、コンパレータcmp11の反転入力端子(-)に入力される基準電圧Vrよりも順方向電圧VFが低い温度状態は、温度状態が非過熱状態であると判定される。
【0067】
この場合、コンパレータcmp11の非反転入力端子(+)の入力レベルは、基準電圧Vrが入力されるコンパレータcmp11の反転入力端子(-)の入力レベルよりも低くなる。したがって、コンパレータcmp11の出力端からは、非過熱状態を表すLレベルの過熱検出信号s1が出力される。
【0068】
また、コンパレータcmp11の反転入力端子(-)に入力される基準電圧Vrよりもノードn2における順方向電圧VFが高い温度状態は、温度状態が過熱状態であると判定される。
【0069】
この場合、コンパレータcmp11の反転入力端子(-)の入力レベルは、ノードn2における順方向電圧VFが入力されるコンパレータcmp11の非反転入力端子(+)の入力レベルよりも低くなる。したがって、コンパレータcmp11の出力端からは、過熱状態を表すHレベルの過熱検出信号s1が出力される。
【0070】
なお、過熱状態においては、ノードn2における順方向電圧VFがコンパレータcmp11の反転入力端子(-)の入力電圧(基準電圧Vr)を上回ることを要する。そのため、例えば、温度検出用ダイオードD11に接続されているPMOSトランジスタMP11のサイズを大きくして抵抗値を減らす、またはPMOSトランジスタMP12のみの経路に流れる電流を増加させて、PMOSトランジスタMP12のドレイン電圧を下げる等の調整が行われてもよい。
【0071】
次に同一の特性について、
図11、
図12を用いて説明する。
図11はMOSトランジスタのゲート電圧とドレイン電流の特性の一例を示す図である。横軸はゲート電圧VG、縦軸はドレイン電流IDである。なお、縦軸は対数目盛である。ここで、素子Aと素子Bが同一の特性を有するとした場合、素子Aと素子Bの動作点が同一である。したがって、素子Aを温度検出用電圧生成回路1c2、素子Bを基準電圧生成回路1dとすれば、温度検出用電圧生成回路1c2と基準電圧生成回路13は、同一の特性として、動作点が同一である。
【0072】
具体的には、素子Aを第1のMOSトランジスタ、素子Bを第2のMOSトランジスタとすれば、第1、第2のMOSトランジスタは、同一の特性として、動作点として閾値電圧(ゲート電圧VG)が同一である。
【0073】
図11に示す素子Aの波形g1、素子Bの波形g2において、素子Aと素子Bは、素子定数(ゲート長やゲート幅等)によって概ね倍数の特性を有しているとする。この場合、例えば、素子Aがドレイン電流IDを1μA流す場合に要するゲート電圧VGが0.8Vであり(0.8V@1μA)、素子Bがドレイン電流IDを2μA流す場合に要するゲート電圧VGは0.8Vとなる(0.8V@2μA)。
【0074】
このように、同一のゲート電圧VGで特性が等倍(この例では、同一のゲート電圧VGでドレイン電流IDが2倍)になる場合、素子Aと素子Bは同一の特性を有するものである。したがって、このような素子A、素子Bをダイオード接続の第1、第2のMOSトランジスタとして温度検出用電圧生成回路1c2と基準電圧生成回路1dに対してそれぞれ適用して、カレントミラー回路1bによって電流を調整することで、ダイオード接続の第1、第2のMOSトランジスタの特性を適切に調整することができ、特性ばらつきを効率よく抑制することができる。
【0075】
図12はMOSトランジスタのゲート電圧とドレイン電流の特性の一例を示す図である。横軸はゲート電圧VG、縦軸はドレイン電流IDである。ここで、素子Aと素子Bが同一の特性を有するとした場合、所定条件において素子Aと素子Bの動作点の温度変化量(温度依存性)が同一である。したがって、素子Aを温度検出用電圧生成回路1c2、素子Bを基準電圧生成回路1dとすれば、温度検出用電圧生成回路1c2と基準電圧生成回路1dは、同一の特性として、所定条件において動作点の温度変化量が同一である。
【0076】
具体的には、素子Aを第1のMOSトランジスタ、素子Bを第2のMOSトランジスタとすれば、第1、第2のMOSトランジスタは、同一の特性として、所定のドレイン電流IDが流れる条件において閾値電圧(ゲート電圧VG)の温度変化量が同一である。
【0077】
図12に示す25℃の波形g11と、175℃の波形g12において、素子Aと素子Bは、所定のドレイン電流IDを流すのに要するゲート電圧VGの温度変化量が同一であるとする。この場合、例えば、素子Aと素子Bに対して共に、ドレイン電流IDを1μA流すのに要するゲート電圧VGは25℃で800mVであり(800mV@25℃)、175℃で600mV(600mV@175℃)となる。
【0078】
または、素子Aに対して、ドレイン電流IDを1μA流すのに要するゲート電圧VGは25℃で800mVであり(800mV@25℃)、素子Bに対して、ドレイン電流IDを1μA流すのに要するゲート電圧VGは175℃で600mV(600mV@175℃)となる。
【0079】
さらにまた、素子Aに対して、ドレイン電流IDを2μA流すのに要するゲート電圧VGは25℃で800mVであり(800mV@25℃)、素子Bに対して、ドレイン電流IDを2μA流すのに要するゲート電圧VGは175℃で600mV(600mV@175℃)となる。
【0080】
上記のいずれの例においても、素子Aと素子Bの温度変化量は同じになる。したがって、所定のドレイン電流IDが流れる条件において閾値電圧(ゲート電圧VG)の温度変化量が同一になる場合、素子Aと素子Bは同一の特性を有するものである。したがって、このような素子A、素子Bをダイオード接続の第1、第2のMOSトランジスタとして温度検出用電圧生成回路1c2と基準電圧生成回路1dに対してそれぞれ適用することで、ダイオード接続の第1、第2のMOSトランジスタの特性を適切に調整することができ、特性ばらつきを効率よく抑制することができる。
【0081】
以上説明したように、本発明によれば、装置を構成する定電流源、MOSFETの閾値電圧のばらつき等を相殺することができるので、特性ずれを抑制して温度検出精度を向上させることが可能になる。また、特性ずれを補正するための補正回路やトリミング回路等が不要となるので回路実装規模の増加を抑制することができる。
【0082】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。さらに、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 半導体装置
1a 定電流源
1b カレントミラー回路
1c 温度検出回路
1c1 温度検出用ダイオード
1c2 温度検出用電圧生成回路
1d 基準電圧生成回路
1e 比較回路
icp 複製電流
V1 温度検出電圧
Vr 基準電圧
s0 温度検出信号