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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127029
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】歯科用焼成炉
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
A61C13/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035864
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】滝原 悠世
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一雄
(72)【発明者】
【氏名】星野 晃佑
(72)【発明者】
【氏名】新井 祈
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎也
(57)【要約】
【課題】被焼成物を焼成室の直下で炉床にセットしなくてはならず、作業スペースが狭く、作業しづらい。
【解決手段】焼成室40の内部を加熱する加熱手段と、焼成室40の下方に設けられた開口部と、開口部に嵌合する炉床2と、炉床2を移動させる駆動手段10とを備え、炉床2が、開口部に嵌合して加熱手段と対向する位置に収容される収容位置5と、開口部直下の最下端から作業者側に位置する下降位置6との間を駆動手段10により移動可能であることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を加熱する焼成室と、
前記焼成室の下方に設けられた開口部と、
前記開口部に嵌合する炉床と、
前記炉床を移動させる駆動手段と
を備え、
前記炉床が、前記開口部に嵌合して被焼成物が前記焼成室に収容される収容位置と、前記開口部直下の最下端から作業者側に位置する下降位置との間を前記駆動手段により移動可能であることを特徴とする歯科用焼成炉。
【請求項2】
前記炉床が前記下降位置にあるとき、前記炉床が前記開口部の幅の少なくとも1個分、前記開口部の直下から外れていることを特徴とする請求項1に記載の歯科用焼成炉。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記炉床の両側部から突出するように固定されたシャフトが係合するカム溝を有し、
前記カム溝は前記下降位置側で前記作業者側に向けて延びて屈曲しており、
前記駆動手段により前記炉床を下降させることに伴い、前記カム溝に沿って前記炉床が前記作業者側に移動することを特徴とする請求項1または2に記載の歯科用焼成炉。
【請求項4】
前記収容位置から前記下降位置までの前記炉床の移動は、前記炉床、前記炉床上に載置された断熱材、および前記被焼成物を重ねた高さの2個分下降しつつ、前記開口部の幅の少なくとも1個分、前記開口部の直下から手前の位置まで移動することを特徴とする請求項3に記載の歯科用焼成炉。
【請求項5】
前記炉床が前記収容位置から前記下降位置に向かって移動するときに、前記収容位置側においては前記炉床を鉛直に下降させることで、前記開口部と前記炉床が干渉せずに前記炉床を下降させることを特徴とする請求項4に記載の歯科用焼成炉。
【請求項6】
前記駆動手段は、前記炉床が前記収容位置および前記下降位置それぞれへ到達する直前で減速することを特徴とする請求項1に記載の歯科用焼成炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニアの焼成を行う歯科用焼成炉に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用焼成炉において、ジルコニアを炉内へ移動させるため、カムやロボットなどの昇降機構を用いることはよく知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-274597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炉床にセットした被焼成物を焼成室下部から焼成室に挿入する方式の歯科用焼成炉では、被焼成物を焼成室の直下で炉床にセットする必要があり、作業スペースが狭く、作業しづらい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上を鑑み、本発明に係る歯科用焼成炉は、
焼成室の内部を加熱する加熱手段と、
前記焼成室の下方に設けられた開口部と、
前記開口部に嵌合する炉床と、
前記炉床を移動させる駆動手段と
を備え、
前記炉床が、前記開口部に嵌合して前記加熱手段と対向する位置に収容される収容位置と、前記開口部直下の最下端から作業者側に位置する下降位置との間を前記駆動手段により移動可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、炉床が作業者側にせり出されることにより、作業者の被焼成物セット時、取り外し時の作業性と安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る歯科用焼成炉の斜視図
図2】本発明の一実施形態に係る歯科用焼成炉の上面から見た断面図
図3】本発明の一実施形態に係る歯科用焼成炉の右側から見た右断面図
図4】本発明の一実施形態に係る歯科用焼成炉の左側から見た左断面図
図5】本発明の一実施形態に係る歯科用焼成炉の昇降機構の斜視図
図6】本発明の一実施形態に係る歯科用焼成炉の昇降機構の左断面図
図7】本発明の一実施形態に係る歯科用焼成炉の概略断面図
図8】本発明の一実施形態に係る歯科用焼成炉の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る歯科用焼成炉100の外観斜視図である。
【0009】
図1は、底部が開放された焼成室40(図3参照)をその上方に備え、各部品が垂直に配向された歯科用焼成炉100を示している。焼成室40に被焼成物を収容し、焼成室40の内部に設けられた加熱手段により被焼成物を焼成する。加熱手段による熱処理(焼成)中は、焼成室40の開口部に対応する位置である収容位置5(図3参照)に位置する炉床2(図3参照)によって焼成室40を閉鎖することができる。なお、このとき炉床2は焼成室40の開口部に嵌合している。焼成室40の開放された底部の下方には炉床2が下降するスペースである冷却空間50が設けられており、この冷却空間50に位置する炉床2および被焼成物3を冷却可能な冷却ファン20が歯科用焼成炉100の外装カバー101における左右の側壁に設けられている。また、焼成中および焼成終了後に冷却が完了するまでの間、この冷却空間50を閉鎖する安全扉102が設けられている。なお、図1に示すように、装置左右方向をX軸(向かって右が正)、奥行き方向をY軸(奥側に向かう方向が正)、高さ方向をZ軸(上方が正)として説明する。
【0010】
図2は、本実施形態に係る歯科用焼成炉100において、炉床2の収容位置5の少し下の位置での水平断面図を示している。歯科用焼成炉100は図2に示すように、外装カバー101(図1参照)内に焼成室40の支持部材としてのフレーム1の面1eに支持されたカム機構10と、被焼成物3を熱処理後に冷却する冷却ファン20と、被焼成物3が載置される断熱材4を備えた炉床2とを収容している。外装カバー101の一部には安全扉102を有しており、安全扉102を開けることで被焼成物3の出し入れが可能となっている。
【0011】
図3には本実施形態に係る歯科用焼成炉100の右断面図、図4には左断面図を示しており、いずれも炉床2の両脇あたりでの断面を示している。
【0012】
歯科用焼成炉100の上方には焼成室40が配置されており、被焼成物3を載置した炉床2は、焼成室40の下方に設けられた冷却空間50に位置する下降位置6から、モーター11が駆動することによりベルト(不図示)、カム機構10を介して上方に移動され、炉床2が焼成室40の開口部を塞ぐ位置(収容位置5)まで上昇する。炉床2はカム機構10に係合する係合部が設けられており、モーター11の駆動によりベルトから上下方向へ移動するための駆動力が伝達され、カム機構10によってガイドされる。
【0013】
また、図3に示す冷却ファン20は、フレーム1の面1b(図7参照)に支持されており、炉床2が下降位置6に向けて降下した際に冷却ファン20が作動し、風を吹き付けることで炉床2上の被焼成物3の温度を下げる。
【0014】
なお、図3に示す本実施形態に係る歯科用焼成炉100の冷却ファン20は、作業者からみて炉床2の左右の位置に配置してあるが、被焼成物3に冷却ファン20の風を吹き付けて冷却できればよく、装置の正面側または背面側に冷却ファンを配置してもよい。
【0015】
また、装置の下方には電装ユニット30が設けられている。この電装ユニット30は、図7に示すフレーム1の面1cに支持されており、焼成室40を動作させる電力を供給するための電源回路やその他の構成を制御する制御部(CPU)が実装された制御基板を備えている。
【0016】
図5は本実施形態におけるカム機構10を説明するための斜視図であり、図7はカム機構10が支持されるフレーム1を説明するための斜視図、図8はフレーム1の背面側からの斜視図である。上述した通り、カム機構10は、図8に示すフレーム1の面1e8に背面側から取り付けられており、後述する駆動伝達部材に連結した炉床2を上下方向に昇降させることができる。図7に示す面1a7に支持されたカム溝部材にはカム溝12が設けられており、炉床2に固定されたシャフト固定軸14がカム溝12に挿通されたシャフト13を固定している。
【0017】
また、駆動手段であるカム機構10はフレーム1の面1eに支持されており、モーター11と、Z軸方向に延在して配置されているベルト15、位置固定用のブレーキ17、昇降時のブレを矯正するガイド16(図6参照)を有している。
【0018】
図6は、本実施形態に係る歯科用焼成炉の昇降機構の左断面図である。この図においては、炉床2の位置を3箇所同時に示している。すなわち上から順に、収容位置5、被焼成物3が開口部に干渉しない位置7、下降位置6である。図6の、モーター11の駆動によりZ軸方向に配置されているベルト15を回転させることで、ベルト15に接続している炉床2を焼成室40の開口部に対応する位置である収容位置5から、炉床2および断熱材4、被焼成物3が開口部に干渉しない位置7まで垂直方向に一定距離移動後、開口部直下の最下端から作業者側に位置する下降位置6にかけて垂直方向に往復移動(昇降)することができる。
【0019】
カム機構10内の炉床2に連結した部材をフレーム1の面1aに支持されているカム溝12に通過させることで、焼成室40の開口部に対応する位置である収容位置5から、開口部を干渉せずに鉛直に一定距離移動させると例えば45度の角度でカム溝12に沿って降下し、開口部直下の最下端から作業者側に位置する下降位置6まで移動する。
【0020】
カム溝12に沿って鉛直に下降した炉床2、断熱材4、被焼成物3は、被焼成物3に対し、合わせて配置された冷却ファン20から風を吹き付けられ、高速で被焼成物3を冷却することで歯科用焼成炉100の焼成動作における全体の作業時間を短縮することが出来る。また、冷却ファン20による冷却が完了するまでの間は、安全扉102が開けることが出来ないようにすることで、熱風が直接作業者に当たることはないように構成することも好ましい。
【0021】
カム溝12は、炉床2を焼成室40の開口部に対応する位置である収容位置5から開口部直下の最下端から作業者側に位置する下降位置6までの一定距離の長さを有しており、シャフト13を有するシャフト固定軸14に係合する駆動伝達部に駆動力を伝達するモーター11によって、カム溝12に沿って炉床を往復移動(昇降)させることができる。
【0022】
カム機構10は、ブレーキ17を有しており、モーター11によりカム溝12に沿って移動する炉床2が落下しないようにその地点を保持し続けることができる。
【0023】
シャフト13は、シャフト固定軸14の中央の穴に通されており、炉床2の両側部から突出するように延在するシャフト13の両端はカム溝12に接続されている。
【0024】
シャフト固定軸14は、シャフト13を有しており、シャフト13と炉床2を中継している。よって炉床2はモーター11によりカム溝12に沿って昇降する。
【0025】
炉床2は、熱対策のための断熱材4を載置しており焼成室40を構成している。また断熱材4の上部に被焼成物3を載置している。このように、熱処理中又は熱処理後の高温な被焼成物3、焼成室40の熱による炉床2へのダメージを軽減するために炉床2上に断熱材4を載置している。
【0026】
炉床2は、焼成室40の開口部に対応する位置である収容位置5から、開口部に干渉せずに鉛直に一定距離下降し、開口部直下の最下端から作業者側に位置する下降位置6(図3参照)へカム溝12に沿って、例えば45度の角度でせり出し移動する。
【0027】
炉床2の位置が開口部直下の最下端から作業者側に位置する下降位置6のとき、焼成室40で熱処理される予定の、または熱処理後の被焼成物3は、炉床2に載置された断熱材4の上部で出し入れすることができる。
【0028】
なお、炉床2の下降位置6は、焼成室40の開口部に対応する位置である収容位置5から、開口部直下(Z軸方向)に炉床2と断熱材4と被焼成物3を重ねた高さのおよそ2個分下降した位置から、X軸方向に焼成室40の開口部の幅1.5個分手前(作業者側)に外れた位置であるが、本実施例における移動量に限定するものではない。また、上述したように、炉床2は、開口部に干渉しないように、鉛直に下降した開口部直下の最下端の位置から、斜め45度の角度で手前にせり出すように移動するが、その境界(屈曲部)は、概ね炉床2と断熱材4と被焼成物3を重ねた高さ1個分開口部から下降させた位置となっている。このように構成することで、被焼成物3と開口部との干渉を防ぎつつ手前にせり出す構造を、装置の高さを無闇に大型化することなく実現することができる。
【0029】
焼成室40の開口部に対応する位置である収容位置5は、モーター11によりカム溝12に沿って上昇した炉床2の最高位の位置であり、前述した通り焼成室40の開口部に対応する位置である収容位置5に炉床2が位置することで焼成室40の開口部を閉鎖することができる。
【0030】
焼成室40の開口部直下の最下端から作業者側に位置する下降位置6は、モーター11によりカム溝12に沿って鉛直に下降する炉床2の最下位の位置であり、炉床2が開口部直下の最下端から開口部の幅の1.5個分手前(作業者側)に外れる。よって、熱処理後の焼成室40の開口部からの落下物が被焼成物3に付着するのを防止することができる。また、炉床2が開口部の幅の1.5個分手前(作業者側)に外れるので、被焼成物3の出し入れが容易に行える。
【0031】
なお、開口部からの落下物とは、焼成室40内のヒーター(二珪化モリブデン)の表面に析出した酸化膜や断熱材のカス、埃などであり、これらの落下物が外部からの振動などにより、熱処理後の被焼成物3に付着する可能性がある。落下物が付着した被焼成物3は研磨作業に時間がかかることとなる。
【0032】
焼成室40は、フレーム1の面1bに支持されており、カム機構10により上昇する炉床2と被焼成物3を、焼成室40の開口部に対応する位置である収容位置5にて最高1600度で熱処理を行う。熱処理が終了した後はカム機構10により、焼成室40の開口部に対応する位置である収容位置5から、開口部に干渉せずに垂直方向で一定距離移動後、開口部直下の最下端から作業者側に位置する下降位置6に向けて冷却ファン20で冷却されながらカム溝12に沿って鉛直に下降する。
【0033】
外装カバー101内に歯科用焼成炉支持部材としてのフレーム1(図3参照)と、それぞれフレーム1(図3参照)に支持されたカム機構10(図3参照)と、被焼成物3を焼成後に冷却する冷却ファン20と、電装ユニット30(図3参照)と、断熱材を備えた焼成室40(図3参照)とを収容している。
【0034】
外装カバー101は安全扉102を有しており、安全扉102を開閉することで被焼成物3の出し入れが可能になっている。
【0035】
炉床2は、焼成室40の開口部に対応する位置である収容位置5から、開口部直下の最下端から作業者側に位置する下降位置6へカム溝12に沿って昇降移動する。炉床2の移動速度は、例えば2mm/sである。
【0036】
電装ユニット30に組み込まれたモーター11を制御するマイコンにより、焼成室40の開口部に対応する位置である収容位置5及び開口部直下の最下端から作業者側に位置する下降位置6のそれぞれの地点へ炉床2が到達する直前、例えば2秒前に減速するプログラムを書き込み、炉床2の移動速度を、例えば2mm/sから1mm/sまで減速させることができる。
【0037】
焼成室40の開口部に対応する位置である収容位置5及び開口部直下の最下端から作業者側に位置する下降位置6のそれぞれの地点へ到達する直前に炉床を減速させることで急停止による衝撃や慣性による被焼成物3の転倒を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0038】
1 フレーム
2 炉床
3 被焼成物
4 断熱材
5 収容位置
6 下降位置
7 開口部に干渉しない位置
10 カム機構
11 モーター
12 カム溝
13 シャフト
14 シャフト固定軸
15 ベルト
16 ガイド
17 ブレーキ
20 冷却ファン
30 電装ユニット
40 焼成室
100 歯科用焼成炉
101 外装カバー
102 安全扉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8