(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127031
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/167 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
H02K5/167
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035866
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】新谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小幡 修平
(72)【発明者】
【氏名】新井 忠
(72)【発明者】
【氏名】川島 琴司
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA05
5H605BB05
5H605CC04
5H605CC05
5H605DD03
5H605EB07
(57)【要約】
【課題】軸受とヨークの同軸度がよい、静音で安定した動作をするモータを提供することである。
【解決手段】磁気回路を形成するヨーク3と、ヨーク3を励磁する励磁コイル4と、ロータマグネット6と軸7とを有するロータ12と、軸7の一方端部を支持する第1軸受部9と、軸7の他方端部7-aを支持する第2軸受2とを備え、第2軸受2は、ヨーク3の内径にその外径部2-bが圧入保持されており、第2軸受2の外径部2-bと内径部2ーfとの間に、軸方向の厚みが周辺部よりも薄い薄肉部2-aが設けられていることを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気回路を形成するヨークと、
前記ヨークを励磁する励磁コイルと、
ロータマグネットと軸とを有するロータと、
前記軸の一方端部を支持する第1軸受と、
前記軸の他方端部を支持する第2軸受と
を備え、
前記第2軸受は、
前記ヨークの内径にその外径部が圧入保持されており、
前記第2軸受の外径部と内径部との間に、軸方向の厚みが周辺部よりも薄い薄肉部が設けられていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記第2軸受は、前記軸の前記他方端部を円錐形状で受けることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記薄肉部は、前記第2軸受における軸方向のいずれかの面に設けられた環状の溝であることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記第2軸受の薄肉部は、同心円状に少なくとも2箇所以上配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【請求項5】
前記溝は、前記第2軸受の軸方向における前記ロータマグネット側の面に設けられたことを特徴とする請求項3に記載のモータ。
【請求項6】
前記第2軸受は押さえ板と一体化されていることを特徴とする請求項5に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータ等に代表されるモータの軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータは、例えば特許文献1に記載されているように、反出力側の樹脂からなる軸受がヨーク内径部に嵌められた構造としており、これによりモータ回転軸の中心出しがされ、軸振れを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ヨーク内径部と軸受が圧入設定の場合、樹脂からなる軸受の外径部がヨーク内径部から受ける圧入力により軸受が変形し、軸と摺動する軸受面が変形することがある。軸受面が変形すると、軸受とヨークの同軸度が悪くなり、軸ブレが起こりやすくなることに伴い、駆動音が大きくなることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記を鑑み、本発明にかかるモータは、
磁気回路を形成するヨークと、
前記ヨークを励磁する励磁コイルと、
ロータマグネットと軸とを有するロータと、
前記軸の一方端部を支持する第1軸受と、
前記軸の他方端部を支持する第2軸受と
を備え、
前記第2軸受は、
前記ヨークの内径にその外径部が圧入保持されており、
前記第2軸受の外径部と内径部との間に、軸方向の厚みが周辺部よりも薄い薄肉部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、軸受とヨークの同軸度がよく、静音で安定した動作が可能なモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】本発明の実施例1の分解斜視図(押さえ板と軸受)。
【
図5】本発明の実施例1の第2軸受とヨークの位置関係を示す断面図。
【
図7】本発明の実施例1の第2軸受形状の異なる凹形状を示す図。
【
図8】本発明の実施例1の第2軸受が貫通形状となる構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1に係るモータMの一例としてのPM(Permanent Magnet)型ステッピングモータの出力軸にリードスクリューが取り付けられたモータユニットの構造を示す分解斜視図であり、
図2は断面図である。なお、以下の説明においてはこのモータユニットをモータと称するが、これに限られない。
【0009】
本実施例のモータMは、回転駆動されるリードスクリュー(回転軸)7とマグネット6からなるロータ部12と、リードスクリュー7の一方端部を回転自在に軸支する第1軸受部9及びリードスクリュー7の端部をスラスト方向に付勢する板バネ10及び前記第1軸受9を保持するコの字形状のアングル8を有するベース部11と、外ヨーク3、内ヨーク5、コイル4、第2軸受2、押さえ板1からなるステータ部13とで構成される。
【0010】
ステータ部13は、ロータ12の周囲、特にマグネット6の周囲に外ヨーク3、内ヨーク5と、励磁コイル3を備え、外ヨーク3と内ヨーク5は、例えば、軟磁性材で構成されて磁気回路を形成するものであり、周方向に配設された複数の櫛歯を有する。リードスクリュー7の他方端部の外周面には円周方向に多極着磁された永久磁石からなるロータマグネット12が嵌装されており、リードスクリュー7の一方端部からロータマグネット6付近までの外周面にはらせん状のネジ部7-bが形成されている。
【0011】
ステータ部13は、外ヨーク3がアングル8に立設された第1の取付部8aに溶着により固定される。更にアングル部8には第2の取付部8bが立設されており、中空円筒形状をした第1軸受9が第2の取付部8bの取付穴に嵌合もしくは圧入固定され、板バネ10が第2の取付部8bを覆うように取付られている。
【0012】
図3は本実施例に係るモータMの一部分解斜視図である。
図3(a)は第2軸受2側から見たもので、
図3(b)はリードスクリュー7の軸方向でその反対側から見たものである。第2軸受2は、外ヨーク3に対し圧入固定された上で押さえ板1によって押さえられることで取り付けられている。第2軸受2は樹脂材料からなり、袋形状(非貫通形状)でリードスクリュー7の先端部7-aを受ける軸受である。
図4に示すように外ヨーク3の櫛歯内径部3-aに第2軸受2の外径部2-bを圧入保持することで外ヨーク3と同軸に位置決めされる(
図4は押さえ板1を外した状態図である)。
図3(b)や
図5の断面図(
図4のA-A断面)に示すように、第2軸受2のリードスクリュー7側には、環状の凹部2-aが設けられている。この凹部2-aについて詳しくは後述する。
【0013】
第2軸受2はスラスト方向凸部2-dと押さえ板1の穴1-aとが嵌合されており(
図2参照)、押さえ板1は外ヨーク3に対して溶着されているため、第2軸受2は押さえ板1によりスラスト方向に位置決め・保持されている。なお、第2軸受2のラジアル凸部2-cは外ヨーク3の切り欠き部3-bに嵌合することによって位置決めされるため、第2軸受2と外ヨーク3が相対的に回転方向に位置ずれを起こすことを防止している。
【0014】
ここで本実施例の軸受形状について説明する。上記のように、第2軸受2は樹脂材料からなり、袋形状(非貫通形状)で、例えば
図4、
図5、
図6に示すように外ヨーク3の櫛歯内径部3-aに第2軸受2の外径部2-bを圧入保持することで同軸に位置決めされる。なお、先端部7-aを受ける袋形状の部分には円錐形状が設けられており、リードスクリュー7の軸振れを防止しているが、本実施例では後述する凹部2-aによってさらに軸振れを低減している。詳しくは後述する。
【0015】
本実施例では、このように第2軸受2が外ヨーク3に圧入により保持されるため、クリアランスによる同軸ずれは発生せず、クリアランス設定するものに比べて同軸精度がよくなる。しかし、樹脂からなる第2軸受2が外ヨーク3の内径に圧入されるため、圧入力が大きいと第2軸受2の外径部2-bが外ヨーク3内径から受ける反力(圧入力)により変形を起こし、軸(リードスクリュー7の先端部7-a)と接触する面2-eや面2-f(
図5参照)が変形を起こしやすい。先端部7-aと接触する面が変形を起こすと接触面の平面度が悪化し、先端部7-aと円周方向で均等に当接しなくなるため、軸振れが発生し、振動や騒音の悪化に繋がっていた。また、圧入により樹脂からなる軸受の外径部にバリや削れが発生し、バリの滑落や削れたものがモータ本体に入り込むと、例えばマグネットとヨークの隙間に入り作動を悪化させることがあった。
【0016】
それに対し本実施例は、
図6に示すように、第2軸受2の外径部2-bと先端部7-aと摺接する内径部(面2-f)との間に円環状の凹部2-a(溝)を設けることで圧入力が直接第2軸受2の内径部側(面2-f側)に伝達されないため、軸との摺動面である面2-fの変形を防止することができる。また、凹部2-aにより軸受の圧入部付近の剛性を下げることができるため、圧入力が下がり、軸受の削れへの影響を低減することができる。
【0017】
(実施例2)
以下、本発明の実施例2に係るモータMについて
図7を用いて説明する。基本的な構成は実施例1と同様であり同じ構成については同じ符号を用いたうえで詳細な説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
図7は本実施例に係るモータMの第2軸受2を示しており、外ヨーク3への圧入箇所である外径部2-bとラジアル方向で重なる位置(5か所)にのみ凹部2-aを設けた例である。
【0018】
このように、凹部2-aを周方向で環状に設けなくてもよく、本実施例のように少なくとも圧入力のかかる部分である外径部2-bとラジアル方向で重なる位置に設けてあると、効果的に面2-fの変形を防止することができる。
【0019】
ただし、本発明においては外径部2-bとラジアル方向で重なる位置に設けることは必須ではなく、例えば外径部2-bとラジアル方向で重なる部分の一部(例えば3か所。好ましくは複数箇所。)にのみ凹部2-aを設けてもよいし、外径部2-bとラジアル方向で重なる部分の5か所に対し、それぞれの箇所の一部(例えば半分)の部分にのみ凹部2-aを設けてもよい。
【0020】
さらに、外径部2-bとラジアル方向で重なる部分には凹部2-aを設けずに、外径部2-bとラジアル方向で重ならない部分にのみ凹部2-aを設けてもよい。さらに、外径部2-bとラジアル方向で重なる部分の位置に関わらず、周方向に等間隔あるいは不規則な間隔で凹部2-aを配置してもよい。いずれの場合も、第2軸受2を外ヨーク3に圧入した際の圧入力の影響による面2-fの変形を防止することができる。
【0021】
また、環状に凹部2-aを設ける場合には、円形状、あるいは円弧形状に限らず、周方向の位置において凹部2-aの位置や幅が異なるように設けてもよい。また、周方向に複数の凹部2-aを設ける場合には、同心円状でなくてもよい。
【0022】
(実施例3)
以下、本発明の実施例3に係るモータMについて
図8を用いて説明する。基本的な構成は実施例1と同様であり同じ構成については同じ符号を用いたうえで詳細な説明を省略し、相違点についてのみ説明する。本実施例は、第2軸受14が貫通形状となっている構造のモータである。本実施例においても実施例1の第2軸受2と同様に、外径部14-bと内径部(リードスクリュー16との摺接面である面14-f)の間に円環状の凹部14-aを設けることで、リードスクリュー16の先端部16-aをラジアル受けする第2軸受14の内径部の変形を防止でき、内径変形(径が小さくなる方向への変形)により軸と軸受間のクリアランスがなくなることによる動作不良の発生をも防止することができる。
【0023】
なお、上述した各実施例においては、凹部2-aをリードスクリュー7側に設けているが、これに限られず、リードスクリュー7の軸方向で押さえ板1側の面に設けられてもよい。ただし、リードスクリュー7の先端部7-aとの摺接部(面2-f)とラジアル方向に重なる位置に凹部2-aが設けられることによって、効果的に面2-fの変形を防止することができ、好適である。
【0024】
また、凹部2-aを設けた第2軸受と押さえ板1とを一体に形成してもよい。この場合、凹部2-aを設ける位置も、軸方向においてろーたマグネット6側の面であってもよいし、その反対側の面であってもよい。
【0025】
また、以上説明した各実施形態においては、圧入力を調整する調整部の一例として凹部2-aや凹部14-aについて説明したが、周辺部よりも軸方向における肉厚が薄い薄肉部が設けられていればよく、軸方向に貫通していてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 押さえ板
1-a 押さえ板穴
2 第2軸受け
2-a 第2軸受け円環状の凹部
2-b 第2軸受け内径ストレート部
2-c 第2軸受けラジアル凸部
2-d 第2軸受けスラスト凸部
2-e 軸と接触する面
2-f 軸と接触する面(内径部)
3 外ヨーク
3-a 外ヨーク櫛歯内径部
3-b 外ヨーク切り欠き部
4 コイル
5 内ヨーク
6 マグネット
7 リードスクリュー(軸)
7-a リードスクリュー先端部
7-b ネジ部
8 アングル
8-a 第1の取付部
8-b 第2の取付部
9 第1軸受
10 板バネ
11 ベース部
12 ロータ部
13 ステータ部
14 実施例3の第2軸受
14-a 実施例2の第2軸受の凹部
15 実施例3の押さえ板
16 実施例3の軸