(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127053
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/155 20060101AFI20240912BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H02M7/155 G
H02M7/12 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035899
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】馬場 雄介
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA04
5H006CA03
5H006CA12
5H006CB01
5H006CC05
5H006DA04
5H006DB03
5H006DC05
5H006FA01
5H006FA04
(57)【要約】
【課題】複数のスイッチング素子の所定の抵抗値を持った故障の発生を検出することができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】複数のスイッチ部のスイッチングにより電力の変換を行う主回路部と、主回路部による電力の変換を制御する制御装置と、を備え、複数のスイッチ部のそれぞれは、直列に接続された複数のスイッチング素子を有し、制御装置は、複数の順電圧信号のいずれかの順電圧が印加されていることを表す期間が、複数の逆電圧信号のいずれかの逆電圧が印加されていることを表す期間と重なる場合に、複数のスイッチング素子のいずれかに所定の抵抗値を持った故障が発生していると検出することにより、所定の抵抗値を持った故障の発生したスイッチング素子を含むスイッチ部を特定する電力変換装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチ部を有し、前記複数のスイッチ部のスイッチングにより、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方を行う主回路部と、
前記主回路部による電力の変換を制御する制御装置と、
を備え、
前記複数のスイッチ部のそれぞれは、直列に接続された複数のスイッチング素子を有し、
前記主回路部は、前記スイッチング素子に順電圧が印加されていることを表す順電圧信号と、前記スイッチング素子に逆電圧が印加されていることを表す逆電圧信号と、を前記複数のスイッチング素子に応じて複数取得するともに、前記複数の順電圧信号及び前記複数の逆電圧信号の取得を前記複数のスイッチ部のそれぞれについて行い、取得した前記複数の順電圧信号及び前記複数の逆電圧信号を前記制御装置に送信し、
前記複数の順電圧信号のそれぞれは、対応する前記スイッチング素子に順電圧が印加されていることを表す期間と、対応する前記スイッチング素子に順電圧が印加されていないことを表す期間と、を有し、
前記複数の逆電圧信号のそれぞれは、対応する前記スイッチング素子に逆電圧が印加されていることを表す期間と、対応する前記スイッチング素子に逆電圧が印加されていないことを表す期間と、を有し、
前記制御装置は、前記複数の順電圧信号のいずれかの前記順電圧が印加されていることを表す期間が、前記複数の逆電圧信号のいずれかの前記逆電圧が印加されていることを表す期間と重なる場合に、前記複数のスイッチング素子のいずれかに所定の抵抗値を持った故障が発生していると検出することにより、前記所定の抵抗値を持った故障の発生した前記スイッチング素子を含む前記スイッチ部を特定する電力変換装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記複数の順電圧信号の論理和を演算した順電圧の論理和信号と、前記複数の逆電圧信号の論理和を演算した逆電圧の論理和信号と、を前記複数のスイッチ部毎に演算し、
前記順電圧の論理和信号は、前記複数のスイッチング素子のいずれかに順電圧が印加されていることを表す期間と、前記複数のスイッチング素子のいずれにも順電圧が印加されていないことを表す期間と、を有し、
前記逆電圧の論理和信号は、前記複数のスイッチング素子のいずれかに逆電圧が印加されていることを表す期間と、前記複数のスイッチング素子のいずれにも逆電圧が印加されていないことを表す期間と、を有し、
前記制御装置は、前記順電圧の論理和信号の前記順電圧が印加されていることを表す期間が、前記逆電圧の論理和信号の前記逆電圧が印加されていることを表す期間と重なる場合に、前記複数の順電圧信号のいずれかの前記順電圧が印加されていることを表す期間が、前記複数の逆電圧信号のいずれかの前記逆電圧が印加されていることを表す期間と重なると判断する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記主回路部は、前記複数のスイッチング素子のそれぞれに対応する前記複数の順電圧信号を取得し、
前記制御装置は、前記複数の順電圧信号のそれぞれの前記順電圧が印加されていることを表す期間と、前記複数の逆電圧信号のそれぞれの前記逆電圧が印加されていることを表す期間と、の比較により、前記複数のスイッチング素子のうちのいずれの前記スイッチング素子に前記所定の抵抗値を持った故障が発生しているかを特定する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御装置は、1つの前記スイッチ部において、前記所定の抵抗値を持った故障の発生した前記スイッチング素子の数が所定数未満である場合には、前記主回路部の動作を継続させる請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
複数のスイッチ部を有し、前記複数のスイッチ部のスイッチングにより、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方を行う主回路部と、
前記主回路部による電力の変換を制御する制御装置と、
を備え、
前記複数のスイッチ部のそれぞれは、直列に接続された複数のスイッチング素子を有し、
前記主回路部は、前記スイッチング素子に順電圧が印加されていることを表す順電圧信号の取得を前記複数のスイッチング素子のそれぞれについて行うことにより、複数の前記順電圧信号を取得するとともに、前記複数のスイッチ部のそれぞれの両端に印加される交流電圧を取得し、取得した前記複数の順電圧信号及び前記複数の交流電圧を前記制御装置に送信し、
前記複数の順電圧信号のそれぞれは、対応する前記スイッチング素子に順電圧が印加されていることを表す期間と、対応する前記スイッチング素子に順電圧が印加されていないことを表す期間と、を有し、
前記制御装置は、1つの前記スイッチ部において、前記複数の順電圧信号のそれぞれの前記順電圧が印加されていることを表す期間と、前記スイッチ部の両端に印加される交流電圧と、を比較し、前記順電圧信号の前記順電圧が印加されていることを表す期間が、前記スイッチ部の両端に印加される交流電圧の負側の期間と重なる場合に、そのスイッチング素子に所定の抵抗値を持った故障が発生していると検出することにより、前記複数のスイッチング素子のうちのいずれの前記スイッチング素子に前記所定の抵抗値を持った故障が発生しているかを特定する電力変換装置。
【請求項6】
複数のスイッチ部を有し、前記複数のスイッチ部のスイッチングにより、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方を行う主回路部と、
前記主回路部による電力の変換を制御する制御装置と、
を備え、
前記複数のスイッチ部のそれぞれは、直列に接続された複数のスイッチング素子を有し、
前記主回路部は、前記スイッチング素子に順電圧が印加されていることを表す順電圧信号の取得を前記複数のスイッチング素子のそれぞれについて行うことにより、複数の前記順電圧信号を取得し、取得した前記複数の順電圧信号を前記制御装置に送信し、
前記複数の順電圧信号のそれぞれは、対応する前記スイッチング素子に順電圧が印加されていることを表す期間と、対応する前記スイッチング素子に順電圧が印加されていないことを表す期間と、を有し、
前記制御装置は、1つの前記スイッチ部において、前記複数の順電圧信号のそれぞれの前記順電圧が印加されていることを表す期間のタイミングを比較し、他の前記順電圧信号に比べて、前記順電圧が印加されていることを表す期間のタイミングの異なる前記順電圧信号が存在する場合に、その順電圧信号に対応する前記スイッチング素子に所定の抵抗値を持った故障が発生していると検出することにより、前記複数のスイッチング素子のうちのいずれの前記スイッチング素子に前記所定の抵抗値を持った故障が発生しているかを特定する電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方を行う主回路部と、主回路部の動作を制御する制御装置と、を備えた電力変換装置が知られている。主回路部は、複数のスイッチング素子を直列に接続した複数のスイッチ部を有し、複数のスイッチ部のスイッチングにより、電力の変換を行う。制御装置は、複数のスイッチ部のそれぞれに対応した複数の制御信号を主回路部に送信し、複数のスイッチ部のスイッチングを制御することにより、主回路部による電力の変換を制御する。
【0003】
複数のスイッチング素子は、様々な要因により、短絡故障を起こしてしまう場合がある。複数のスイッチング素子が直列に接続された主回路部では、スイッチ部に含まれる複数のスイッチング素子のうちの数個のスイッチング素子が短絡故障を起こしたとしても、残りのスイッチング素子で運転を継続することができる。
【0004】
一方で、複数のスイッチング素子は、完全な短絡まで至らず、所定の抵抗値を持った状態で故障してしまう場合もある。この場合には、制御装置又は制御装置の動作を制御する上位装置が、主回路部の動作異常と判断し、1つのスイッチング素子の異常でも、主回路部の動作を停止させてしまう可能性がある。例えば、複数のスイッチング素子がサイリスタである場合に、制御装置又は上位装置が、サイリスタの転流失敗が発生していると判断し、主回路部の動作を停止させてしまう可能性がある。
【0005】
複数のスイッチング素子のいずれかに所定の抵抗値を持った故障が発生した際に、制御装置又は上位装置が主回路部の動作異常を検出して主回路部の動作を停止させた場合には、動作停止の原因の特定に時間がかかり、復旧に時間を要してしまう可能性がある。
【0006】
このため、複数のスイッチング素子を直列に接続した複数のスイッチ部を有し、複数のスイッチ部のスイッチングにより、電力の変換を行う電力変換装置では、複数のスイッチング素子の所定の抵抗値を持った故障の発生を検出できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
実施形態は、複数のスイッチング素子を直列に接続した複数のスイッチ部を有し、複数のスイッチ部のスイッチングにより、電力の変換を行うとともに、複数のスイッチング素子の所定の抵抗値を持った故障の発生を検出することができる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態によれば、複数のスイッチ部を有し、前記複数のスイッチ部のスイッチングにより、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方を行う主回路部と、前記主回路部による電力の変換を制御する制御装置と、を備え、前記複数のスイッチ部のそれぞれは、直列に接続された複数のスイッチング素子を有し、前記主回路部は、前記スイッチング素子に順電圧が印加されていることを表す順電圧信号と、前記スイッチング素子に逆電圧が印加されていることを表す逆電圧信号と、を前記複数のスイッチング素子に応じて複数取得するともに、前記複数の順電圧信号及び前記複数の逆電圧信号の取得を前記複数のスイッチ部のそれぞれについて行い、取得した前記複数の順電圧信号及び前記複数の逆電圧信号を前記制御装置に送信し、前記複数の順電圧信号のそれぞれは、対応する前記スイッチング素子に順電圧が印加されていることを表す期間と、対応する前記スイッチング素子に順電圧が印加されていないことを表す期間と、を有し、前記複数の逆電圧信号のそれぞれは、対応する前記スイッチング素子に逆電圧が印加されていることを表す期間と、対応する前記スイッチング素子に逆電圧が印加されていないことを表す期間と、を有し、前記制御装置は、前記複数の順電圧信号のいずれかの前記順電圧が印加されていることを表す期間が、前記複数の逆電圧信号のいずれかの前記逆電圧が印加されていることを表す期間と重なる場合に、前記複数のスイッチング素子のいずれかに所定の抵抗値を持った故障が発生していると検出することにより、前記所定の抵抗値を持った故障の発生した前記スイッチング素子を含む前記スイッチ部を特定する電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本実施形態では、複数のスイッチング素子を直列に接続した複数のスイッチ部を有し、複数のスイッチ部のスイッチングにより、電力の変換を行うとともに、複数のスイッチング素子の所定の抵抗値を持った故障の発生を検出することができる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係るスイッチ部を模式的に表すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る制御装置の一部を模式的に表すブロック図である。
【
図4】第1の実施形態に係る電力変換装置の動作の一例を模式的に表す波形図である。
【
図5】第1の実施形態に係る電力変換装置の動作の一例を模式的に表す波形図である。
【
図6】第2の実施形態に係る制御装置の一部を模式的に表すブロック図である。
【
図7】第3の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
【
図8】第4の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、主回路部12と、制御装置14と、を備える。
【0014】
主回路部12は、複数のスイッチ部20を有する。主回路部12は、複数のスイッチ部20のスイッチングにより、電力の変換を行う。複数のスイッチ部20は、例えば、ブリッジ接続される。この例において、主回路部12は、三相ブリッジ接続された6つのスイッチ部20からなる2つのブリッジ回路を有し、2つのブリッジ回路を直列に接続した12相変換器である。スイッチ部20は、例えば、ブリッジ回路の1つのアームを構成する部分である。主回路部12は、例えば、複数のスイッチ部20のスイッチングにより、交流電力から直流電力への変換を行う。
【0015】
但し、主回路部12の構成は、12相変換器に限ることなく、三相ブリッジ接続された6つのスイッチ部20からなる三相変換器や、単相ブリッジ接続された4つのスイッチ部20からなる単相変換器などでもよい。主回路部12は、例えば、3レベル変換器などのマルチレベル変換器などでもよい。主回路部12の構成は、複数のスイッチ部20のスイッチングによって電力の変換を行うことが可能な任意の構成でよい。また、主回路部12による電力の変換は、交流電力から直流電力への変換に限ることなく、直流電力から交流電力への変換、あるいは交流電力から別の交流電力への変換でもよい。主回路部12による電力の変換は、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方を行う任意の変換でよい。
【0016】
図2は、第1の実施形態に係るスイッチ部を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、複数のスイッチ部20のそれぞれは、複数のスイッチング素子22と、複数のスナバ回路24と、複数の電圧検出器26と、を有する。複数のスイッチング素子22は、直列に接続されている。これにより、主回路部12では、スイッチ部20の両端に印加される電圧を複数のスイッチング素子22で分担することができる。従って、複数のスイッチング素子22に高い耐圧が必要となることを抑制しつつ、比較的高い電圧の電力変換を行うことができる。
【0017】
複数のスイッチング素子22は、例えば、サイリスタである。複数のスイッチ部20は、例えば、サイリスタバルブである。複数のスイッチング素子22は、例えば、一対の主端子と、制御端子と、を有する。また、複数のスイッチング素子22は、オン状態と、オフ状態と、を有する。オン状態は、一対の主端子間に電流を流す状態である。オフ状態は、一対の主端子間の電流の流れを遮断する状態である。なお、オフ状態は、一対の主端子間に完全に電流が流れない状態に限ることなく、主回路部12の動作に影響の無い範囲の微弱な電流が一対の主端子間に流れる状態でもよい。複数のスイッチング素子22は、一対の主端子間の電圧、及び制御端子の電圧に応じて、オン状態及びオフ状態を切り替える。
【0018】
但し、複数のスイッチング素子22は、サイリスタに限ることなく、他の他励式のスイッチング素子でもよいし、GTO、MOSFET、IGBTなどの自励式のスイッチング素子でもよい。複数のスイッチング素子22は、一対の主端子間の電圧、及び制御端子の電圧に応じて、オン状態及びオフ状態を切り替え可能な任意のスイッチング素子でよい。
【0019】
複数のスナバ回路24のそれぞれは、複数のスイッチング素子22のそれぞれと並列に接続される。スナバ回路24は、スイッチング素子22の遮断時に生じる過渡的な高電圧を抑制する。
【0020】
スナバ回路24は、例えば、抵抗器24aとコンデンサ24bとの直列接続体を有する。抵抗器24aは、換言すれば、スイッチング素子22の一対の主端子間に設けられる。コンデンサ24bは、換言すれば、抵抗器24aとスイッチング素子22の一方の主端子との間に設けられる。
【0021】
この例において、スナバ回路24は、いわゆるRCスナバ回路である。但し、スナバ回路24の構成は、RCスナバ回路に限ることなく、スイッチング素子22に並列に接続され、スイッチング素子22の遮断時に生じる過渡的な高電圧を抑制可能な任意の構成でよい。
【0022】
複数の電圧検出器26のそれぞれは、複数のスイッチング素子22のそれぞれに設けられる。複数の電圧検出器26は、複数のスイッチング素子22の一対の主端子間の電圧を検出する。
【0023】
図1に戻って、制御装置14は、複数のスイッチ部20のそれぞれに対応した複数の制御信号GPを主回路部12に送信し、複数のスイッチ部20のスイッチングを制御することにより、主回路部12による電力の変換を制御する。
【0024】
制御装置14は、上位装置2と通信を行う。上位装置2は、例えば、電力変換装置10の動作を制御する上位のコントローラである。制御装置14は、上位装置2からの指令に基づいて複数の制御信号GPを生成し、生成した複数の制御信号GPを主回路部12に送信する。
【0025】
但し、制御装置14は、必ずしも上位装置2と通信を行わなくてもよい。制御装置14は、例えば、予め設定された情報に基づいて、主回路部12の動作を制御する構成でもよい。制御装置14は、例えば、電力変換装置10の管理者などからの操作指示の入力を受け付けるための操作部を有し、操作部を介して入力された情報を基に、主回路部12の動作を制御する構成などでもよい。
【0026】
主回路部12は、制御装置14から受信した複数の制御信号GPを基に、複数のスイッチ部20のスイッチングを駆動することにより、電力の変換を行う。また、主回路部12は、複数のスイッチ部20のそれぞれについて、複数のスイッチング素子22の複数の順電圧信号FV及び複数の逆電圧信号RVの取得を行う。
【0027】
順電圧信号FVは、スイッチング素子22に順電圧が印加されていることを表す信号である。逆電圧信号RVは、スイッチング素子22に逆電圧が印加されていることを表す信号である。より詳しくは、順電圧信号FVは、スイッチング素子22の一対の主端子間に順電圧が印加されていることを表す信号であり、逆電圧信号RVは、スイッチング素子22の一対の主端子間に逆電圧が印加されていることを表す信号である。
【0028】
主回路部12は、例えば、電圧検出器26でスイッチング素子22の両端の電圧を検出することにより、順電圧信号FV及び逆電圧信号RVを取得する。
【0029】
主回路部12は、例えば、複数のスイッチ部20の複数のスイッチング素子22のそれぞれに対応する複数の順電圧信号FVを取得する。一方、主回路部12は、例えば、複数のスイッチ部20のそれぞれについて、複数のスイッチング素子22のうちの代表する所定数のスイッチング素子22に対応する所定数の逆電圧信号RVを取得する。
【0030】
但し、主回路部12は、複数のスイッチ部20のそれぞれについて、複数のスイッチング素子22のうちの代表する所定数のスイッチング素子22に対応する所定数の順電圧信号FVを取得してもよい。主回路部12は、複数のスイッチ部20の複数のスイッチング素子22のそれぞれに対応する複数の逆電圧信号RVを取得してもよい。
【0031】
主回路部12の取得する順電圧信号FVの数は、取得する逆電圧信号RVの数と同じでもよいし、異なってもよい。1つのスイッチ部20において、順電圧信号FVを取得するスイッチング素子22は、逆電圧信号RVを取得するスイッチング素子22と同じでもよいし、異なってもよい。主回路部12の取得する順電圧信号FVの数及び逆電圧信号RVの数は、任意の数でよい。
【0032】
主回路部12は、取得した複数の順電圧信号FV及び複数の逆電圧信号RVを制御装置14に送信する。
【0033】
制御装置14は、複数のスイッチ部20のそれぞれの複数の順電圧信号FV及び複数の逆電圧信号RVを主回路部12から受信する。制御装置14は、受信した複数の順電圧信号FV及び複数の逆電圧信号RVを上位装置2に送信する。制御装置14は、例えば、上位装置2からの指令、受信した複数の順電圧信号FV、及び受信した複数の逆電圧信号RVに基づいて複数の制御信号GPを生成することにより、主回路部12の動作を制御する。
【0034】
また、制御装置14及び上位装置2は、受信した複数の順電圧信号FV及び複数の逆電圧信号RVを基に、主回路部12の異常の検出を行う。制御装置14及び上位装置2は、主回路部12の異常を検出した場合には、主回路部12の動作を停止させる。
【0035】
制御装置14は、順電圧信号FVについては、複数のスイッチ部20に含まれる複数のスイッチング素子22の全てに対応する複数の順電圧信号FVを取得する。これにより、主回路部12の異常を適切に検出することができる。そして、制御装置14は、逆電圧信号RVについては、複数のスイッチング素子22のうちの代表する所定数のスイッチング素子22に対応する所定数の逆電圧信号RVを取得する。これにより、主回路部12の異常の検出精度を高めつつ、逆電圧信号RVを取得するための電圧検出器26や逆電圧信号RVを通信するための通信機器など、主回路部12及び制御装置14の構成の複雑化や部品点数の増加を抑制することができる。例えば、主回路部12及び制御装置14の大型化や製造コストの増加などを抑制することができる。但し、主回路部12に関する説明と同様に、制御装置14の取得する順電圧信号FVの数及び逆電圧信号RVの数は、任意の数でよい。
【0036】
図3は、第1の実施形態に係る制御装置の一部を模式的に表すブロック図である。
図3に表したように、制御装置14は、OR回路30、32を有する。OR回路30、32は、換言すれば、論理和回路である。
図3では図示を簡略化しているが、制御装置14は、例えば、主回路部12の複数のスイッチ部20のそれぞれに対応する複数のOR回路30、及び主回路部12の複数のスイッチ部20のそれぞれに対応する複数のOR回路32を有する。
【0037】
OR回路30は、対応する1つのスイッチ部20の複数の順電圧信号FVの論理和を演算し、順電圧の論理和信号FVORを出力する。制御装置14は、複数のOR回路30により、複数のスイッチ部20のそれぞれに対応する複数の論理和信号FVORを演算する。
【0038】
OR回路32は、対応する1つのスイッチ部20の複数の逆電圧信号RVの論理和を演算し、逆電圧の論理和信号RVORを出力する。制御装置14は、複数のOR回路32により、複数のスイッチ部20のそれぞれに対応する複数の論理和信号RVORを演算する。
【0039】
図3では、例えば、1つのスイッチ部20において40個のスイッチング素子22が直列に接続されている場合に、10番目、20番目、30番目、40番目の4つのスイッチング素子22に対応する4つの逆電圧信号RVの論理和を演算する例を表している。但し、取得する逆電圧信号RVの数は、4つに限ることなく、任意の数でよい。逆電圧信号RVを取得するスイッチング素子22は、10番目、20番目、30番目、40番目に限ることなく、任意のスイッチング素子22でよい。
【0040】
制御装置14は、例えば、上位装置2からの指令、順電圧の論理和信号FVOR、及び逆電圧の論理和信号RVORを基に、複数の制御信号GPの生成を行う。これにより、主回路部12の状態(各スイッチング素子22の両端に印加される電圧の状態)に応じて、主回路部12の動作を適切に制御することができる。
【0041】
図4は、第1の実施形態に係る電力変換装置の動作の一例を模式的に表す波形図である。
図4は、1つのスイッチ部20の両端に印加される交流電圧、1番目のスイッチング素子22の両端に印加される交流電圧vt1、1番目のスイッチング素子22の順電圧信号FV1、2番目~n番目のスイッチング素子22のそれぞれの両端に印加される交流電圧vt2~vt(n)、2番目~n番目のスイッチング素子22の順電圧信号FV2~FV(n)、順電圧の論理和信号FVOR、及び逆電圧の論理和信号RVORの一例を模式的に表している。また、
図4では、1つのスイッチ部20に含まれる複数のスイッチング素子22のそれぞれが正常である場合の各信号の一例を模式的に表している。
【0042】
図4に表したように、順電圧信号FV(FV1~FV(n))は、例えば、スイッチング素子22に順電圧が印加されている時にHi(電圧の高い状態)、スイッチング素子22に順電圧が印加されていない時にLo(電圧の低い状態)となるパルス状の信号である。換言すれば、順電圧信号FVは、例えば、スイッチング素子22に順電圧が印加されている時に「1」、スイッチング素子22に順電圧が印加されていない時に「0」となるデジタル信号である。
【0043】
1つのスイッチ部20において、複数のスイッチング素子22は、直列に接続されている。従って、複数のスイッチング素子22のそれぞれが正常である場合には、
図4に表したように、スイッチ部20の両端に印加される交流電圧と実質的に同期した交流電圧が、複数のスイッチング素子22のそれぞれに印加され、複数の順電圧信号FV1~FV(n)は、実質的に同じ信号となる。
【0044】
複数の順電圧信号FV1~FV(n)の論理和を演算した論理和信号FVORは、例えば、複数の順電圧信号FV1~FV(n)の全てが「0」の時に「0」となり、複数の順電圧信号FV1~FV(n)のいずれかが「1」の時に「1」となる。換言すれば、順電圧の論理和信号FVORは、複数のスイッチング素子22のいずれかに順電圧が印加されている時に「1」となり、複数のスイッチング素子22のいずれにも順電圧が印加されていない時に「0」となる。
【0045】
上記のように、複数のスイッチング素子22のそれぞれが正常である場合には、複数の順電圧信号FV1~FV(n)は、実質的に同じ信号である。従って、複数のスイッチング素子22のそれぞれが正常である場合には、順電圧の論理和信号FVORも、複数の順電圧信号FV1~FV(n)と実質的に同じ信号となる。
【0046】
逆電圧信号RVは、例えば、スイッチング素子22に逆電圧が印加されている時にHi、スイッチング素子22に逆電圧が印加されていない時にLoとなるパルス状の信号である。逆電圧信号RVは、例えば、同じスイッチング素子22の順電圧信号FVを反転させた信号となる。従って、複数のスイッチング素子22のそれぞれが正常である場合には、1つのスイッチ部20の複数の逆電圧信号RVも、実質的に同じ信号となる。逆電圧の論理和信号RVORも、複数の逆電圧信号RVと実質的に同じ信号となる。複数のスイッチング素子22のそれぞれが正常である場合、逆電圧の論理和信号RVORは、例えば、順電圧の論理和信号FVORを反転させた信号となる。
【0047】
このように、複数のスイッチング素子22が正常である場合には、例えば、逆電圧の論理和信号RVORは、順電圧の論理和信号FVORを反転させた信号であり、逆電圧の論理和信号RVORの「1」の期間は、順電圧の論理和信号FVORの「1」の期間と重ならない。換言すれば、逆電圧の論理和信号RVORの逆電圧が印加されていることを表す期間は、順電圧の論理和信号FVORの順電圧が印加されていることを表す期間と重ならない。
【0048】
なお、順電圧信号FV及び逆電圧信号RVは、上記に限定されるものではない。順電圧信号FVは、対応するスイッチング素子22に順電圧が印加されていることを表す期間と、対応するスイッチング素子22に順電圧が印加されていないことを表す期間と、を有する任意の信号でよい。逆電圧信号RVは、対応するスイッチング素子22に逆電圧が印加されていることを表す期間と、対応するスイッチング素子22に逆電圧が印加されていないことを表す期間と、を有する任意の信号でよい。
【0049】
また、順電圧の論理和信号FVORは、複数のスイッチング素子22のいずれかに順電圧が印加されていることを表す期間と、複数のスイッチング素子22のいずれにも順電圧が印加されていないことを表す期間と、を有する任意の信号でよい。逆電圧の論理和信号RVORは、複数のスイッチング素子22のいずれかに逆電圧が印加されていることを表す期間と、複数のスイッチング素子22のいずれにも逆電圧が印加されていないことを表す期間と、を有する任意の信号でよい。
【0050】
図5は、第1の実施形態に係る電力変換装置の動作の一例を模式的に表す波形図である。
図5は、1つのスイッチ部20に含まれる複数のスイッチング素子22のうちの1番目のスイッチング素子22に、所定の抵抗値を持った故障が発生した場合の、
図3と同じ各信号の一例を模式的に表している。
【0051】
スイッチング素子22が短絡故障を起こした場合には、スイッチング素子22の一対の主端子間の電圧が実質的にゼロとなるため、順電圧信号FVは、常にスイッチング素子22に順電圧が印加されていないことを表す期間となる。同様に、スイッチング素子22が短絡故障を起こした場合には、逆電圧信号RVは、常にスイッチング素子22に逆電圧が印加されていないことを表す期間となる。
【0052】
このため、制御装置14及び上位装置2は、順電圧信号FV及び逆電圧信号RVが変化せず、順電圧及び逆電圧が印加されていないことを表す期間が続いている場合に、そのスイッチング素子22に短絡故障が発生していることを検出する。換言すれば、制御装置14及び上位装置2は、順電圧及び逆電圧が印加されていることを表す期間となるはずの期間においても、順電圧及び逆電圧が印加されていないことを表す期間が続いている場合に、そのスイッチング素子22に短絡故障が発生していると検出する。
【0053】
複数のスイッチング素子22が直列に接続されたスイッチ部20では、直列に接続された複数のスイッチング素子22のうちの数個が短絡故障を起こしたとしても、残りのスイッチング素子22で運転を継続することができる。制御装置14及び上位装置2は、短絡故障を起こしたスイッチング素子22の数を数え、短絡故障を起こしたスイッチング素子22の数が所定数未満である場合には、主回路部12の動作を継続させ、短絡故障を起こしたスイッチング素子22の数が所定数以上となった場合には、主回路部12の動作を停止させる。これにより、例えば、主回路部12の動作の安定性を高めつつ、残りの健全なスイッチング素子22の拡大故障などを抑制することができる。
【0054】
なお、
図4及び
図5では、説明を容易にするため、便宜的に複数のスイッチング素子22がオフ状態の時の電圧波形及び各信号の例を模式的に表している。主回路部12を動作させている場合には、スイッチング素子22をオン状態に切り替えた際に、スイッチング素子22の両端の電圧(交流電圧vt1~vt(n))が実質的にゼロになる。従って、順電圧信号FVは、スイッチング素子22をオフ状態からオン状態に切り替えた際に、順電圧が印加されていることを表す期間から順電圧が印加されていないことを表す期間に切り替わる。
【0055】
一方で、スイッチング素子22が所定の抵抗値を持った故障状態となった場合には、スイッチング素子22の抵抗値及び両端に印加される交流電圧に応じて、スイッチング素子22に順電圧が印加された期間、及び逆電圧が印加された期間が発生する。
【0056】
この際、
図5に表したように、所定の抵抗値を持った故障の発生したスイッチング素子22の両端に印加される交流電圧は、スイッチ部20の両端に印加される交流電圧、及び他の正常なスイッチング素子22の両端に印加される交流電圧と位相の異なる交流電圧となる。これは、スイッチング素子22と並列に接続されたスナバ回路24の影響に起因する。例えば、スナバ回路24が、コンデンサ24bを有する場合には、所定の抵抗値を持った故障の発生したスイッチング素子22の両端に印加される交流電圧は、スイッチ部20の両端に印加される交流電圧、及び他の正常なスイッチング素子22の両端に印加される交流電圧よりも位相の進んだ交流電圧となる。例えば、
図5では、所定の抵抗値を持った故障の発生したスイッチング素子22の両端に印加される交流電圧の位相が、スイッチ部20の両端に印加される交流電圧の位相よりも80°進んだ例を表している。
【0057】
このため、所定の抵抗値を持った故障の発生したスイッチング素子22の順電圧信号FVは、他の正常なスイッチング素子22の順電圧信号FVと異なる信号となる。所定の抵抗値を持った故障の発生したスイッチング素子22の順電圧信号FVの順電圧が印加されていることを表す期間は、他の正常なスイッチング素子22の順電圧信号FVの順電圧が印加されていることを表す期間とタイミングが異なる。
【0058】
従って、複数の順電圧信号FV1~FV(n)の論理和を演算した論理和信号FVORは、所定の抵抗値を持った故障の発生したスイッチング素子22の順電圧信号FVのタイミングのずれの分だけ変化する。論理和信号FVORは、複数のスイッチング素子22のそれぞれが正常である場合と比べて、上記のタイミングのずれの分だけ、複数のスイッチング素子22のいずれかに順電圧が印加されていることを表す期間が長くなる。
【0059】
また、例えば、逆電圧信号RVを取得するスイッチング素子22に所定の抵抗値を持った故障が発生した場合には、順電圧の論理和信号FVORと同様に、上記のタイミングのずれの分だけ、逆電圧の論理和信号RVORの複数のスイッチング素子22のいずれかに逆電圧が印加されていることを表す期間が長くなる。
【0060】
このように、複数のスイッチング素子22のそれぞれが正常である場合には、逆電圧の論理和信号RVORの逆電圧が印加されていることを表す期間は、順電圧の論理和信号FVORの順電圧が印加されていることを表す期間と重ならない。そして、複数のスイッチング素子22のいずれかに所定の抵抗値を持った故障が発生した場合には、逆電圧の論理和信号RVORの逆電圧が印加されていることを表す期間に、順電圧の論理和信号FVORの順電圧が印加されていることを表す期間と重なる期間が発生する。
【0061】
制御装置14は、複数の順電圧信号FV及び複数の逆電圧信号RVを基に、複数のスイッチング素子22の所定の抵抗値を持った故障の発生の検出を行う。制御装置14は、複数の順電圧信号FVのそれぞれの順電圧が印加されていることを表す期間が、複数の逆電圧信号RVのそれぞれの逆電圧が印加されていることを表す期間と重ならない場合に、複数のスイッチング素子22のいずれにも所定の抵抗値を持った故障が発生していないと検出する。
【0062】
そして、制御装置14は、複数の順電圧信号FVのいずれかの順電圧が印加されていることを表す期間が、複数の逆電圧信号RVのいずれかの逆電圧が印加されていることを表す期間と重なる場合に、複数のスイッチング素子22のいずれかに所定の抵抗値を持った故障が発生していると検出する。そして、制御装置14は、複数のスイッチング素子22のいずれかに所定の抵抗値を持った故障が発生していると検出することにより、所定の抵抗値を持った故障の発生したスイッチング素子22を含むスイッチ部20を特定する。
【0063】
この例において、制御装置14は、複数の順電圧信号FVの論理和を演算した論理和信号FVORと、複数の逆電圧信号RVの論理和を演算した論理和信号RVORと、を演算する。
【0064】
制御装置14は、順電圧の論理和信号FVORの順電圧が印加されていることを表す期間が、逆電圧の論理和信号RVORの逆電圧が印加されていることを表す期間と重ならない場合に、複数の順電圧信号FVのそれぞれの順電圧が印加されていることを表す期間が、複数の逆電圧信号RVのそれぞれの逆電圧が印加されていることを表す期間と重ならないと判断する。換言すれば、制御装置14は、順電圧の論理和信号FVORの順電圧が印加されていることを表す期間が、逆電圧の論理和信号RVORの逆電圧が印加されていることを表す期間と重ならない場合に、複数のスイッチング素子22のいずれにも所定の抵抗値を持った故障が発生していないと検出する。
【0065】
そして、制御装置14は、順電圧の論理和信号FVORの順電圧が印加されていることを表す期間が、逆電圧の論理和信号RVORの逆電圧が印加されていることを表す期間と重なる場合に、複数の順電圧信号FVのいずれかの順電圧が印加されていることを表す期間が、複数の逆電圧信号RVのいずれかの逆電圧が印加されていることを表す期間と重なると判断する。換言すれば、制御装置14は、順電圧の論理和信号FVORの順電圧が印加されていることを表す期間が、逆電圧の論理和信号RVORの逆電圧が印加されていることを表す期間と重なる場合に、複数のスイッチング素子22のいずれかに所定の抵抗値を持った故障が発生していると検出する。
【0066】
このように、制御装置14は、例えば、順電圧の論理和信号FVOR及び逆電圧の論理和信号RVORを基に、複数のスイッチング素子22の所定の抵抗値を持った故障の発生の検出を行う。これにより、例えば、複数の順電圧信号FVと複数の逆電圧信号RVとのそれぞれを比較する場合などと比べて、制御装置14における演算負荷を抑制することができる。複数のスイッチング素子22の所定の抵抗値を持った故障をより簡単な構成で検出することができる。
【0067】
制御装置14は、複数のスイッチング素子22のいずれかに所定の抵抗値を持った故障が発生していると検出した場合には、例えば、主回路部12の動作を停止させる。これにより、残りの健全なスイッチング素子22の拡大故障などを抑制することができる。
【0068】
なお、複数のスイッチング素子22の所定の抵抗値を持った故障は、複数の順電圧信号FV及び複数の逆電圧信号RVを上位装置2に送信することにより、上位装置2で検出するようにしてもよい。
【0069】
以上、説明したように、本実施形態によれば、複数のスイッチング素子22を直列に接続した複数のスイッチ部20を有し、複数のスイッチ部20のスイッチングにより、電力の変換を行うとともに、複数のスイッチング素子22の所定の抵抗値を持った故障の発生を検出することができる電力変換装置10を提供することができる。
【0070】
例えば、複数のスイッチング素子22のいずれかに所定の抵抗値を持った故障が発生した際に、故障の発生したスイッチング素子22の順電圧信号FVが、本来とは異なるタイミングで順電圧が印加されていることを表す期間となるため、制御装置14又は上位装置2が、主回路部12の動作異常(例えばサイリスタ素子の転流失敗)と判断し、主回路部12の動作を停止させる構成もある。この構成の場合には、動作停止の原因の特定に時間がかかり、復旧に時間を要してしまう可能性がある。
【0071】
これに対し、本実施形態に係る電力変換装置10では、制御装置14が、複数のスイッチング素子22のいずれかに所定の抵抗値を持った故障が発生していると検出することにより、所定の抵抗値を持った故障の発生したスイッチング素子22を含むスイッチ部20を特定する。このため、電力変換装置10では、例えば、主回路部12の動作を停止させた後、特定したスイッチ部20に含まれる複数のスイッチング素子22の点検を行い、故障したスイッチング素子22の特定及び交換などの作業を行えばよい。これにより、電力変換装置10では、例えば、複数のスイッチ部20に含まれる全てのスイッチング素子22の点検を行わなければならない場合などと比べて、主回路部12の復旧の作業を容易にすることができる。例えば、復旧に要する時間を短縮することができる。
【0072】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る制御装置の一部を模式的に表すブロック図である。
図6に表したように、この例における制御装置14aは、複数のAND回路40と、複数のNOTゲート42と、複数のAND回路44と、OR回路46と、を有する。なお、上記第1の実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は、省略する。また、
図6では、制御装置14aにおいて、1つのスイッチ部20に対応する部分のみを表している。複数のAND回路40、複数のNOTゲート42、複数のAND回路44、及びOR回路46は、例えば、複数のスイッチ部20毎に設けられる。
【0073】
複数のAND回路40、複数のNOTゲート42、及び複数のAND回路44は、1つのスイッチ部20に含まれる複数のスイッチング素子22のそれぞれに対応して設けられる。AND回路40及びAND回路44は、換言すれば、論理積回路である。
【0074】
制御装置14aは、複数のスイッチング素子22のそれぞれの順電圧信号FVを複数のAND回路40のそれぞれに入力するとともに、逆電圧の論理和信号RVORを複数のAND回路40のそれぞれに入力する。逆電圧の論理和信号RVORは、
図3に関して説明したOR回路32の出力を用いることができる。制御装置14aは、例えば、OR回路32をさらに有する(図示は省略)。逆電圧の論理和信号RVORは、上記第1の実施形態に関して説明したものと同様のものを用いることができる。
【0075】
AND回路40は、入力された1つのスイッチング素子22の順電圧信号FVと論理和信号RVORとの論理積を演算する。制御装置14aは、複数のAND回路40により、複数のスイッチング素子22のそれぞれに対応する複数の順電圧信号FVのそれぞれについて、逆電圧の論理和信号RVORとの論理積を演算する。
【0076】
AND回路40の出力は、順電圧信号FV及び論理和信号RVORがともに「1」の時に「1」となり、それ以外の時に「0」となる。すなわち、AND回路40の出力は、順電圧信号FVがスイッチング素子22に順電圧が印加されていることを表す期間であり、かつ論理和信号RVORが複数のスイッチング素子22のいずれかに逆電圧が印加されていることを表す期間である時に「1」となり、それ以外の時に「0」となる。
【0077】
前述のように、スイッチング素子22が正常である場合には、順電圧信号FVのスイッチング素子22に順電圧が印加されていることを表す期間は、論理和信号RVORの逆電圧が印加されていることを表す期間と重ならない。従って、AND回路40の出力が「1」となるのは、対応するスイッチング素子22に所定の抵抗値を持った故障が発生している時であると考えることができる。
【0078】
制御装置14aは、AND回路40の出力が「1」となった際に、対応するスイッチング素子22の故障を検出する。制御装置14aは、複数のAND回路40の出力を基に、所定の抵抗値を持った故障の発生したスイッチング素子22の数を数える。制御装置14aは、1つのスイッチ部20において、所定の抵抗値を持った故障の発生したスイッチング素子22の数が所定数未満である場合には、主回路部12の動作を継続させる。そして、制御装置14aは、1つのスイッチ部20において、所定の抵抗値を持った故障の発生したスイッチング素子22の数が所定数以上である場合には、主回路部12の動作を停止させる。
【0079】
なお、制御装置14aは、例えば、AND回路40の出力が一度「1」となった場合に、対応するスイッチング素子22の点検などが行われるまで、AND回路40の出力を「1」のままで固定するラッチ回路などをさらに有してもよい。
【0080】
また、AND回路40は、論理積の演算結果をNOTゲート42に入力する。NOTゲート42は、AND回路40の論理積の演算結果を反転させてAND回路44に入力する。AND回路44には、NOTゲート42の出力が入力されるとともに、1つのスイッチング素子22の順電圧信号FVが入力される。AND回路44は、順電圧信号FVとNOTゲート42の出力との論理積を演算し、論理積の演算結果をOR回路46に入力する。
【0081】
OR回路46は、複数のAND回路44のそれぞれの論理積の演算結果の論理和を演算し、順電圧の論理和信号FVORを出力する。制御装置14aは、例えば、複数のOR回路46により、複数のスイッチ部20のそれぞれに対応する複数の論理和信号FVORを演算する。
【0082】
スイッチング素子22が正常である場合、AND回路40の出力は、「0」である。従って、スイッチング素子22が正常である場合には、AND回路40の出力をNOTゲート42で反転させた「1」が、AND回路44の一方の入力端子に入力される。これにより、AND回路44の出力は、AND回路44の他方の入力端子に入力される順電圧信号FVに応じて決定される。スイッチング素子22が正常である場合、AND回路44の出力は、順電圧信号FVが「0」の時に「0」となり、順電圧信号FVが「1」の時に「1」となる。
【0083】
一方、スイッチング素子22に所定の抵抗値を持った故障が発生している場合には、AND回路40の出力をNOTゲート42で反転させた「0」が、AND回路44の一方の入力端子に入力される。従って、AND回路44の出力は、順電圧信号FVの状態に関わらず「0」となる。これにより、所定の抵抗値を持った故障が発生しているスイッチング素子22の順電圧信号FVを順電圧の論理和信号FVORの演算から除外することができる。これにより、1つのスイッチ部20において、所定の抵抗値を持った故障の発生したスイッチング素子22の数が所定数未満である場合に、故障したスイッチング素子22の順電圧信号FVを除外して順電圧の論理和信号FVORを演算することができる。
【0084】
制御装置14aは、例えば、上位装置2からの指令、順電圧の論理和信号FVOR、及び逆電圧の論理和信号RVORを基に、複数の制御信号GPの生成を行う。この際、上記のように、故障したスイッチング素子22の順電圧信号FVを除外して順電圧の論理和信号FVORを演算することにより、順電圧の論理和信号FVORを適切に演算することができる。これにより、1つのスイッチ部20において、所定の抵抗値を持った故障の発生したスイッチング素子22の数が所定数未満である場合に、複数の制御信号GPを適切に生成し、主回路部12の動作の継続を適切に行うことができる。
【0085】
このように、本実施形態に係る制御装置14aは、複数の順電圧信号FVのそれぞれの順電圧が印加されていることを表す期間と、複数の逆電圧信号RVのそれぞれの逆電圧が印加されていることを表す期間と、の比較により、複数のスイッチング素子22のうちのいずれのスイッチング素子22に所定の抵抗値を持った故障が発生しているかを特定する。
【0086】
従って、本実施形態では、主回路部12の動作を停止させた後、故障の発生を特定したスイッチング素子22の点検を行い、故障したスイッチング素子22の交換などの作業を行えばよい。このため、主回路部12の復旧の作業をより容易にすることができる。例えば、復旧に要する時間をより短縮することができる。
【0087】
制御装置14aは、例えば、複数の順電圧信号FVのそれぞれの順電圧が印加されていることを表す期間と、逆電圧の論理和信号RVORの逆電圧が印加されていることを表す期間と、の比較により、複数のスイッチング素子22のうちのいずれのスイッチング素子22に所定の抵抗値を持った故障が発生しているかを特定する。これにより、例えば、複数の順電圧信号FVと複数の逆電圧信号RVとのそれぞれを比較する場合などと比べて、制御装置14における演算負荷を抑制することができる。
【0088】
この例では、複数のAND回路40により、複数の順電圧信号FVのそれぞれの順電圧が印加されていることを表す期間と、逆電圧の論理和信号RVORの逆電圧が印加されていることを表す期間と、の比較を行っている。両者の比較を行う構成は、上記に限ることなく、所定の抵抗値を持った故障のスイッチング素子22を適切に特定することができる任意の構成でよい。
【0089】
また、制御装置14aは、1つのスイッチ部20において、所定の抵抗値を持った故障の発生したスイッチング素子22の数が所定数未満である場合には、主回路部12の動作を継続させる。これにより、スイッチング素子22の故障にともなう主回路部12の意図しない動作の停止を抑制し、主回路部12の動作の安定性をより高めることができる。
【0090】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図7に表したように、電力変換装置10bでは、主回路部12bが、複数の電圧検出器50をさらに有する。複数の電圧検出器50は、複数のスイッチ部20のそれぞれに対応して設けられる。複数の電圧検出器50は、複数のスイッチ部20のそれぞれの両端に印加される交流電圧を検出する。
【0091】
主回路部12bは、複数の順電圧信号FV及び複数の逆電圧信号RVを制御装置14bに送信するとともに、複数の電圧検出器50の検出結果を制御装置14bに送信する。このように、主回路部12bは、スイッチング素子22に順電圧が印加されていることを表す順電圧信号FVの取得を複数のスイッチング素子22のそれぞれについて行うことにより、複数の順電圧信号FVを取得するとともに、複数のスイッチ部20のそれぞれの両端に印加される交流電圧を取得し、取得した複数の順電圧信号FV及び複数の交流電圧を制御装置14bに送信する。
【0092】
制御装置14bは、複数の順電圧信号FVのそれぞれの順電圧が印加されていることを表す期間と、電圧検出器50によって検出されたスイッチ部20の両端に印加される交流電圧と、の比較により、複数のスイッチング素子22のうちのいずれのスイッチング素子22に所定の抵抗値を持った故障が発生しているかを特定する。
【0093】
図4及び
図5に関して説明したように、スイッチング素子22が正常である場合には、順電圧信号FVは、スイッチ部20の両端に印加される交流電圧と実質的に同期した信号となる。スイッチング素子22が正常である場合には、順電圧信号FVのスイッチング素子22に順電圧が印加されていることを表す期間は、スイッチ部20の両端に印加される交流電圧の正側の期間のみと重なり、スイッチ部20の両端に印加される交流電圧の負側の期間とは重ならない。一方、スイッチング素子22に所定の抵抗値を持った故障が発生した場合には、順電圧信号FVのタイミングがずれ、そのスイッチング素子22の順電圧信号FVのスイッチング素子22に順電圧が印加されていることを表す期間が、スイッチ部20の両端に印加される交流電圧の負側の期間と重なる。
【0094】
従って、制御装置14bは、1つのスイッチ部20において、順電圧信号FVのスイッチング素子22に順電圧が印加されていることを表す期間が、スイッチ部20の両端に印加される交流電圧の負側の期間と重ならない場合に、そのスイッチング素子22を正常と検出する。そして、制御装置14bは、1つのスイッチ部20において、順電圧信号FVのスイッチング素子22に順電圧が印加されていることを表す期間が、スイッチ部20の両端に印加される交流電圧の負側の期間と重なる場合に、そのスイッチング素子22に所定の抵抗値を持った故障が発生していると検出する。また、制御装置14bは、スイッチング素子22に所定の抵抗値を持った故障が発生していると検出することにより、複数のスイッチング素子22のうちのいずれのスイッチング素子22に所定の抵抗値を持った故障が発生しているかを特定する。
【0095】
このように、複数の順電圧信号FVのそれぞれの順電圧が印加されていることを表す期間と、複数の逆電圧信号RVのそれぞれの逆電圧が印加されていることを表す期間と、の比較に限ることなく、複数の順電圧信号FVのそれぞれの順電圧が印加されていることを表す期間と、スイッチ部20の両端に印加される交流電圧と、の比較によって、複数のスイッチング素子22のうちのいずれのスイッチング素子22に所定の抵抗値を持った故障が発生しているかを特定してもよい。この場合にも、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
(第4の実施形態)
図8は、第4の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図8に表したように、制御装置14cは、比較回路60を有する。制御装置14cは、主回路部12から受信した複数の順電圧信号FVのそれぞれを比較回路60に入力する。比較回路60は、複数の順電圧信号FVのそれぞれの順電圧が印加されていることを表す期間のタイミングを比較する。
【0097】
図4及び
図5に関して説明したように、所定の抵抗値を持った故障が発生したスイッチング素子22の順電圧信号FVのスイッチング素子22に順電圧が印加されていることを表す期間及びスイッチング素子22に順電圧が印加されていないことを表す期間の各期間のタイミングは、正常なスイッチング素子22の順電圧信号FVの各期間のタイミングと異なる。
【0098】
このため、制御装置14cは、1つのスイッチ部20において、複数の順電圧信号FVのそれぞれの順電圧が印加されていることを表す期間のタイミングを比較し、他の順電圧信号FVに比べて、順電圧が印加されていることを表す期間のタイミングの異なる順電圧信号FVが存在する場合に、その順電圧信号FVに対応するスイッチング素子22に所定の抵抗値を持った故障が発生していると検出することにより、複数のスイッチング素子22のうちのいずれのスイッチング素子22に所定の抵抗値を持った故障が発生しているかを特定する。
【0099】
このように、複数の順電圧信号FVのそれぞれの順電圧が印加されていることを表す期間のタイミングを比較することにより、複数のスイッチング素子22のうちのいずれのスイッチング素子22に所定の抵抗値を持った故障が発生しているかを特定してもよい。この場合にも、上記第2及び第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0100】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0101】
2…上位装置、 10、10b…電力変換装置、 12、12b…主回路部、 14、14a、14b、14c…制御装置、 20…スイッチ部、 22…スイッチング素子、 24…スナバ回路、 24a…抵抗器、 24b…コンデンサ、 26…電圧検出器、 30、32…OR回路、 40…AND回路、 42…NOTゲート、 44…AND回路、 46…OR回路、 50…電圧検出器、 60…比較回路